特開2021-189435(P2021-189435A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-189435(P2021-189435A)
(43)【公開日】2021年12月13日
(54)【発明の名称】トナーバインダーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20211115BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20211115BHJP
【FI】
   G03G9/087 325
   G03G9/08 381
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2021-52940(P2021-52940)
(22)【出願日】2021年3月26日
(31)【優先権主張番号】特願2020-90233(P2020-90233)
(32)【優先日】2020年5月25日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】本夛 将
(72)【発明者】
【氏名】千葉 宙
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500BA22
2H500CA03
2H500EA17B
2H500EA39B
2H500EA41B
2H500EA42B
2H500EA44B
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、低温定着性及び耐ホットオフセット性を維持しつつ、定着幅、耐熱保存性、帯電維持率、画像強度及び耐久性のすべてを満足する優れたトナーバインダーを提供することを目的とする。
【解決手段】非晶性ビニル樹脂(A)及び結晶性ビニル樹脂(B)を含有するトナーバインダーの製造方法であって、結晶性ビニル樹脂(B)の存在下で非晶性ビニル樹脂(A)の単量体組成物(A0)を重合する工程を有し、結晶性ビニル樹脂(B)が単量体(a)及び単量体(b)を含む単量体組成物(B0)の重合体であり、単量体(a)が鎖状炭化水素基を有する炭素数21〜40の(メタ)アクリレートであり、単量体(b)がビニル基を有する炭素数6以下の単量体であり、結晶性ビニル樹脂(B)の100℃における粘度が10〜10,000Pa・sであるトナーバインダーの製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶性ビニル樹脂(A)及び結晶性ビニル樹脂(B)を含有するトナーバインダーの製造方法であって、
結晶性ビニル樹脂(B)の存在下で非晶性ビニル樹脂(A)の単量体組成物(A0)を重合する工程を有し、
結晶性ビニル樹脂(B)が単量体(a)及び単量体(b)を含む単量体組成物(B0)の重合体であり、
単量体(a)が鎖状炭化水素基を有する炭素数21〜40の(メタ)アクリレートであり、単量体(b)がビニル基を有する炭素数6以下の単量体であり、
結晶性ビニル樹脂(B)の100℃における粘度が10〜10,000Pa・sであるトナーバインダーの製造方法。
【請求項2】
前記単量体組成物(B0)中の単量体(a)の重量割合が、前記単量体組成物(B0)の重量を基準として30〜93重量%である請求項1に記載のトナーバインダーの製造方法。
【請求項3】
前記単量体組成物(B0)中の単量体(b)の重量割合が、前記単量体組成物(B0)の重量を基準として7〜70重量%である請求項1又は2に記載のトナーバインダーの製造方法。
【請求項4】
非晶性ビニル樹脂(A)が、スチレンを含む単量体組成物(A0)の重合体であり、前記単量体組成物(A0)中のスチレンの重量割合が、前記単量体組成物(A0)の重量を基準として50重量%以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載のトナーバインダーの製造方法。
【請求項5】
結晶性ビニル樹脂(B)の存在下で非晶性ビニル樹脂(A)の単量体組成物(A0)を重合する工程における、反応前の非晶性ビニル樹脂(A)の単量体組成物(A0)と結晶性ビニル樹脂(B)の重量比[(A0):(B)]が、[20:80]〜[65:35]である請求項1〜4のいずれか1項に記載のトナーバインダーの製造方法。
【請求項6】
結晶性ビニル樹脂(B)の存在下で非晶性ビニル樹脂(A)の単量体組成物(A0)を重合する工程における重合温度が110℃〜190℃である請求項1〜5のいずれか1項に記載のトナーバインダーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトナーバインダーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真システムの発展に伴い、複写機やレーザープリンター等の電子写真装置の需要は急速に増加しており、それらの性能に対するトナーへの要求も高度化している。また、トナー中の主成分であるトナーバインダーへの要求も同様に高度化している。
【0003】
従来、フルカラー電子写真用においては、電子写真感光体等の潜像坦持体に色画像情報に基づく潜像を形成し、該潜像を対応する色のトナーにより現像し、次いで該トナー像を転写材上に転写するといった画像形成工程を繰り返した後、転写材上のトナー像を加熱定着して多色画像を得る方法や装置が知られている。これらのプロセスを問題なく通過するためには、トナーはまず安定した帯電量を保持することが必要であり、次に紙への定着性が良好であることが必要とされる。
【0004】
また、電子写真装置の小型化、高速化、高画質化の促進とともに、定着工程における消費エネルギーを低減するという省エネルギーの観点から、トナーの低温定着性の向上が強く求められている。
最近では、表面凹凸の大きい再生紙や、表面が平滑なコート紙など多くの種類の紙が転写材として用いられる。これらの転写材の表面性状に対応するために、ソフトローラーやベルトローラーなどのニップ幅の広い定着器が好ましく用いられている。しかし、ニップ幅を広くすると、トナーと定着ローラーとの接触面積が増え、定着ローラーに溶融トナーが付着する、いわゆる高温オフセット現象が発生しやすくなるため、耐ホットオフセット性が要求されるのが前提である。
【0005】
上述のようなトナー特性を実現可能なトナーバインダー用の材料としては、ビニル樹脂(ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂等)、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂等が知られているが、最近では、帯電維持率と定着性のバランスを取りやすいことから、ビニル樹脂及びポリエステル樹脂が特に注目されている。
【0006】
帯電維持率と定着性のバランスをさらに向上させる方法として、長鎖アルキルアクリレートを重合させたビニル樹脂と、不飽和カルボン酸を構成成分とするポリエステル樹脂を組み合わせたトナーバインダーが提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術によればビニル樹脂による低温定着性の向上と、ポリエステル樹脂による耐ホットオフセット性の両立を図ることが可能である。特許文献1に記載のトナーバインダーの製造工程において、ビニル樹脂及びポリエステル樹脂は、粉体混合、溶融混合、溶剤混合等の方法により混合されるが、その混ざり性の悪さから分散径が大きく、定着性や画像強度および耐久性などのトナー性能が不充分である。
【0007】
これらの問題を改良したものとしては、特許文献2の記載の技術が知られている。特許文献2に記載の技術によれば、結晶性ビニル樹脂と非晶性ビニル樹脂を併用することで海島構造を有するトナーとし、これにより、定着性を維持しつつ、こすりや引っ掻きなどの外力に強いトナーを実現できる。しかし、結晶性ビニル樹脂の構成成分として長鎖アルキルアクリレートを多量(例えば93重量%以上)に用いると、混ざり性や耐久性が不充分である。
【0008】
以上、述べたように、低温定着性、耐熱保存性、耐ホットオフセット性、定着幅、帯電維持率、画像強度、耐久性のすべてを満足する優れたトナーバインダーは、これまでなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2019/073731号
【特許文献2】特開2014−142632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、低温定着性及び耐熱保存性を維持しつつ、耐ホットオフセット性、定着幅、帯電維持率、画像強度、耐久性に優れたトナーバインダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち本発明は非晶性ビニル樹脂(A)及び結晶性ビニル樹脂(B)を含有するトナーバインダーの製造方法であって、結晶性ビニル樹脂(B)の存在下で非晶性ビニル樹脂(A)の単量体組成物(A0)を重合する工程を有し、結晶性ビニル樹脂(B)が単量体(a)及び単量体(b)を含む単量体組成物(B0)の重合体であり、単量体(a)が鎖状炭化水素基を有する炭素数21〜40の(メタ)アクリレートであり、単量体(b)がビニル基を有する炭素数6以下の単量体であり、結晶性ビニル樹脂(B)の100℃における粘度が10〜10,000Pa・sであるトナーバインダーの製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低温定着性及び耐熱保存性を維持しつつ、耐ホットオフセット性、定着幅、帯電維持率、画像強度、耐久性に優れたトナーバインダーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のトナーバインダーは、非晶性ビニル樹脂(A)及び結晶性ビニル樹脂(B)を含有するトナーバインダーの製造方法であって、結晶性ビニル樹脂(B)の存在下で非晶性ビニル樹脂(A)の単量体組成物(A0)を重合する工程を有し、結晶性ビニル樹脂(B)が単量体(a)及び単量体(b)を含む単量体組成物(B0)の重合体であり、単量体(a)が鎖状炭化水素基を有する炭素数21〜40の(メタ)アクリレートであり、単量体(b)がビニル基を有する炭素数6以下の単量体であり、結晶性ビニル樹脂(B)の100℃における粘度が10〜10,000Pa・sであるトナーバインダーの製造方法である。
以下に、本発明のトナーバインダーの製造方法を順次、説明する。
【0014】
本発明のトナーバインダーの製造方法では、結晶性ビニル樹脂(B)の存在下で、単量体組成物(A0)を重合させ非晶性ビニル樹脂(A)とするため、非晶性ビニル樹脂(A)と結晶性ビニル樹脂(B)とをそれぞれ別に作成し混合した場合よりも、非晶性ビニル樹脂(A)がトナーバインダー中に分散しやすく、結晶性ビニル樹脂(B)との相溶性が向上するため、低温定着性、定着幅、帯電維持率及び耐久性に優れるトナーバインダーを得ることができる。
【0015】
本発明における非晶性ビニル樹脂(A)は単量体組成物(A0)の重合体であり、非晶性のビニル樹脂であればその樹脂の組成は特に限定されないが、耐熱保存性、帯電維持率及び耐久性の観点から、スチレンを含む単量体組成物(A0)の重合体であることが好ましい。
本発明において、「非晶性」とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて試料の転移温度測定を行った場合に、吸熱ピークのピークトップ温度が存在しないことを意味する。
【0016】
単量体組成物(A0)は、スチレンに加えて必要により他の単量体を併用してもよく、例えば、スチレン以外のスチレン系モノマー、(メタ)アクリル系モノマー、ビニルエステルモノマー、脂肪族炭化水素系ビニルモノマー及びニトリル基含有モノマー等が挙げられる。これらの単量体は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
スチレン以外のスチレン系モノマーとしてはアルキル基の炭素数が1〜3のアルキルスチレン(例えばα−メチルスチレン、及びp−メチルスチレン)等が挙げられる。これらの単量体は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
(メタ)アクリル系モノマーとしては、アルキル基の炭素数が1〜16のアルキルエステル類[例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等]、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート[例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等]、アルキル基の炭素数1〜16のアミノ基含有(メタ)アクリレート[例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。なお、本発明において「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び/又は「メタクリレート」を意味する。
【0019】
ビニルエステルモノマーとしては脂肪族ビニルエステル(炭素数4〜15、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及びイソプロペニルアセテート等)等が挙げられる。
【0020】
脂肪族炭化水素系ビニルモノマーとしてはオレフィン(炭素数2〜10、例えばエチレン、プロピレン、ブテン及びオクテン等)、ジエン(炭素数4〜10、例えばブタジエン、イソプレン及び1,6−ヘキサジエン等)等が挙げられる。
【0021】
ニトリル基含有モノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリロニトリルのメチル基が炭素数2〜16のアルキル基に置き換えられたニトリル基含有モノマー等が挙げられる。
【0022】
スチレン以外の単量体のうち、好ましくは(メタ)アクリル系モノマー及びニトリル基含有モノマーであり、より好ましくはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルである。
【0023】
上記単量体組成物(A0)がスチレンを含む場合、単量体組成物(A0)中のスチレンの重量割合は、耐熱保存性、帯電維持率および耐久性の観点から、上記単量体組成物(A0)の重量を基準として好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは50〜100重量%であり、さらに好ましくは50〜80重量%であり、特に好ましくは57〜72重量%である。
【0024】
本発明における結晶性ビニル樹脂(B)は単量体(a)及び単量体(b)を含む単量体組成物(B0)の重合体であり、結晶性のビニル樹脂である。また、単量体(a)は鎖状炭化水素基を有する炭素数21〜40の(メタ)アクリレートであり、単量体(b)はビニル基を有する炭素数6以下の単量体である単量体(b)である。なお、本発明における「結晶性」とは下記に記載の示差走査熱量測定(DSC測定ともいう)において、DSC曲線が吸熱ピークのピークトップ温度を有することを意味する。
【0025】
結晶性ビニル樹脂(B)の吸熱ピークのピークトップ温度の測定方法を以下に記載する。
示差走査熱量計{例えば「DSCQ20」[TA Instruments(株)製]}を用いて測定する。結晶性ビニル樹脂(B)を20℃から10℃/分の条件で150℃まで第1回目の昇温を行い、続いて150℃から10℃/分の条件で0℃まで冷却し、続いて0℃から10℃/分の条件で150℃まで第2回目の昇温をした際の第2回目の昇温過程の吸熱ピークのトップを示す温度を結晶性ビニル樹脂(B)の吸熱ピークのピークトップ温度とする。
【0026】
単量体(a)は、鎖状炭化水素基を有する炭素数21〜40の(メタ)アクリレートである。単量体(a)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0027】
単量体(a)としては直鎖のアルキル基(アルキル基の炭素数18〜36)を有する(メタ)アクリレート[オクタデシル(メタ)アクリレート(ステアリル(メタ)アクリレート)、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ヘンエイコサニル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、リグノセリル(メタ)アクリレート、セリル(メタ)アクリレート、モンタニル(メタ)アクリレート、トリアコンチル(メタ)アクリレート(ミリシル(メタ)アクリレート)及びドドリアコンチル(メタ)アクリレート等]及び分岐のアルキル基(アルキル基の炭素数18〜36)を有する(メタ)アクリレート[2−デシルテトラデシル(メタ)アクリレート等]が挙げられる。
【0028】
これらの内、低温定着性および耐熱保存性の観点から、直鎖のアルキル基(アルキル基の炭素数18〜36)を有する(メタ)アクリレートが好ましく、より好ましくは直鎖のアルキル基(アルキル基の炭素数18〜30)を有する(メタ)アクリレートであり、さらに好ましくはオクタデシル(メタ)アクリレート、アラキジル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、リグノセリル(メタ)アクリレート、セリル(メタ)アクリレート、及びトリアコンチル(メタ)アクリレートであり、特に好ましくはオクタデシルアクリレート、アラキジルアクリレート、ベヘニルアクリレート及びリグノセリルアクリレートである。
【0029】
単量体(b)は、ビニル基を有する炭素数6以下の単量体である。単量体(b)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
単量体(b)としては炭素数6以下の(メタ)アクリル系モノマー[(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びエチル−2−(ヒドロキシメチル)アクリラート等]、炭素数6以下のビニルエステルモノマー[酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及び酢酸イソプロペニル等]、炭素数6以下の脂肪族炭化水素系ビニルモノマー[エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、イソプレン及び1,5−ヘキサジエン等]、及びニトリル基を有する炭素数6以下の単量体[(メタ)アクリロニトリル等]等が挙げられる。
これらのうち、耐ホットオフセット性、画像強度および耐久性の観点から、炭素数6以下の(メタ)アクリル系モノマー、炭素数6以下のビニルエステルモノマー及びニトリル基を有する炭素数6以下の単量体が好ましく、より好ましくは(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル及び2−ヒドロキシプロピルアクリレートであり、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロニトリルである。また、本発明において「(メタ)アクリロニトリル」は、「アクリロニトリル」及び/又は「メタクリロニトリル」を意味する。
【0030】
単量体(a)及び単量体(b)を含む単量体組成物(B0)は、必要により他の単量体を併用してもよく、例えば、単量体(a)及び単量体(b)以外の単量体(d)が挙げられる。単量体(d)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
単量体(d)としては、スチレン系モノマー(d1)、炭素数が6を超える(メタ)アクリル系モノマーのうち(a)を除く(メタ)アクリル系モノマー(d2)、炭素数が6を超えるビニルエステルモノマー(d3)、並びに単量体(a)、単量体(b)及び単量体(d1)〜(d3)以外の単量体(d4)等が挙げられる。
【0031】
スチレン系モノマー(d1)としては、スチレン、アルキル基の炭素数が1〜3のアルキルスチレン(例えばα−メチルスチレン及びp−メチルスチレン等)などが挙げられる。
これらのうち好ましくはスチレンである。
【0032】
(メタ)アクリル系モノマー(d2)としては、アルキル基の炭素数が4〜17のアルキル(メタ)アクリレート[ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート及びラウリル(メタ)アクリレート等]、アルキル基の炭素数が4〜17のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルキル基の炭素数が4〜17のアミノアルキル基含有(メタ)アクリレート[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、炭素数8〜20の不飽和カルボン酸と多価アルコールとのエステル[エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等]等が挙げられる。
【0033】
ビニルエステルモノマー(d3)としては、炭素数7〜15の脂肪族ビニルエステル及び炭素数9〜15の芳香族ビニルエステル(例えばメチル−4−ビニルベンゾエート等)等が挙げられる。
【0034】
単量体(d4)としては、アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(例えばメトキシポリエチレングリコールアクリレート等)が挙げられる。
【0035】
これらの単量体(d)のうち、帯電維持率および耐久性の観点から、スチレン系モノマー(d1)及び炭素数が6を超える(メタ)アクリル系モノマーのうち(a)を除く(メタ)アクリル系モノマー(d2)が好ましく、より好ましくはスチレン、アルキル基の炭素数が4〜17のアルキル(メタ)アクリレート及び炭素数8〜20の不飽和カルボン酸と多価アルコールとのエステルであり、さらに好ましくはスチレン、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートである。
【0036】
結晶性ビニル樹脂(B)における単量体組成物(B0)中の単量体(a)の重量割合は、低温定着性および耐熱保存性の観点から、単量体組成物(B0)の重量を基準として30〜93重量%であることが好ましく、より好ましくは35〜90重量%であり、さらに好ましくは40〜80重量%であり、特に好ましくは50〜80重量%である。
【0037】
結晶性ビニル樹脂(B)における単量体組成物(B0)中の単量体(b)の重量割合は、耐ホットオフセット性、画像強度および耐久性の観点から、単量体組成物(B0)の重量を基準として7〜70重量%であることが好ましく、より好ましくは7〜50重量%であり、さらに好ましくは8〜30重量%である。
【0038】
結晶性ビニル樹脂(B)における単量体組成物(B0)に単量体(d)を含む場合は、帯電維持率および耐久性の観点から、単量体組成物(B0)中の単量体(d)の重量割合は単量体組成物(B0)の重量を基準として9〜32重量%であることが好ましい。
【0039】
本発明における結晶性ビニル樹脂(B)は、単量体組成物(B0)を公知の方法(例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、リビングラジカル重合、リビングアニオン重合及びリビングカチオン重合等)で重合することで製造できる。ラジカル重合の場合は、例えば、前記単量体を溶媒(トルエン等)中でラジカル反応開始剤(c)とともに反応させる溶液重合法(特開平5−117330号公報等)により合成することが出来る。ラジカル重合の場合のラジカル反応開始剤(c)はトナーバインダーの製造で後述するものと同様のものが挙げられる。
本発明の方法により得られるトナーバインダーは、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記の結晶性ビニル樹脂(B)の重合時に使用した化合物及びその残渣を含んでいてもよい。
【0040】
ラジカル反応開始剤(c)の使用量は、特に制限されないが、単量体組成物(B0)の合計重量に基づいて、0.01〜2重量%であることが好ましい。
【0041】
本発明における結晶性ビニル樹脂(B)の100℃における粘度は10〜10,000Pa・sである。粘度が10Pa・s以上であると耐オフセット性及び定着幅が良好となり、10,000Pa・s以下であると低温定着性及び定着幅が良好となる。また、トナーバインダーを製造する際に、結晶性ビニル樹脂(B)の100℃における粘度が上記範囲であると非晶性ビニル樹脂(A)及び非晶性ビニル樹脂(A)の単量体組成物(A0)との粘度差が抑えられ混合性が良好となる。結晶性ビニル樹脂(B)の100℃における粘度の下限は、より好ましくは20Pa・s以上であり、さらに好ましくは40Pa・sである。上限は、より好ましくは6500Pa・s以下であり、さらに好ましくは3000Pa・sである。
結晶性ビニル樹脂(B)の100℃における粘度は、結晶性ビニル樹脂(B)を構成する単量体の種類や構成比率(例えば、結晶性ビニル樹脂(B)を構成する単量体(a)の炭素数を調整すること及び結晶性ビニル樹脂(B)を構成する単量体(a)の重量比率を調整すること等)、重量平均分子量などで調整することができる。例えば単量体(a)の重量比率を減らす、結晶性ビニル樹脂(B)の重量平均分子量を増やす等の方法により結晶性ビニル樹脂(B)の100℃における粘度を上げることができる。
【0042】
本発明における結晶性ビニル樹脂(B)の100℃における粘度は、下記粘弾性測定装置により得られる100℃における複素粘性率のことであり、下記条件を用いて測定することができる。
装置 :ARES−24A(レオメトリック社製)
治具 :25mmパラレルプレート
周波数 :1Hz
歪み率 :5%
昇温速度:5℃/min
【0043】
本発明における結晶性ビニル樹脂(B)の吸熱ピークのピークトップ温度は低温定着性、耐熱保存性、耐久性及び画像強度の観点から、40〜100℃であることが好ましい。結晶性ビニル樹脂(B)の吸熱ピークのピークトップ温度が40℃以上であると耐熱保存性、及び耐久性及び画像強度が良好となり、100℃以下であると低温定着性が良好となる。
結晶性ビニル樹脂(B)の吸熱ピークのピークトップ温度は、より好ましくは45〜95℃であり、さらに好ましくは50〜90℃であり、特に好ましくは53〜75℃である。
【0044】
本発明における結晶性ビニル樹脂(B)の前記ピークトップ温度を示す吸熱ピークの半値幅は、低温定着性および耐熱保存性の観点から、6℃以下であることが好ましい。
結晶性ビニル樹脂(B)の前記ピークトップ温度を示す吸熱ピークの半値幅とは、吸熱ピークのピークトップ温度の測定によって得られるDSC曲線に基づいて、吸熱ピークのベースラインからピーク最大高さにおける2分の1高さにおけるピークの温度幅をいう。
【0045】
本発明における結晶性ビニル樹脂(B)の酸価は60mgKOH/g以下が好ましい。酸価が60mgKOH/g以下であると吸熱ピークのピークトップ温度Tmが上がることや吸湿性が下がることにより耐熱保存性が良好になる。結晶性ビニル樹脂(B)の酸価は、より好ましくは50mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは40mgKOH/g以下であり、特に好ましくは0〜30mgKOH/gである。
結晶性ビニル樹脂(B)の酸価は、単量体の酸価及び酸価を有する単量体の含有量で調整できる。(B)の酸価は、例えばJISK0070などの方法で測定される。
【0046】
本発明における結晶性ビニル樹脂(B)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)における重量平均分子量は、低温定着性、耐ホットオフセット性及び定着幅の観点から2,000〜200,000であることが好ましく、より好ましくは5,000〜100,000であり、さらに好ましくは15,000〜80,000であり、特に好ましくは25,000〜80,000である。
【0047】
本発明における結晶性ビニル樹脂(B)の数平均分子量(以下、Mnと略称することがある。)、重量平均分子量(以下、Mwと略称することがある。)は、GPCを用いて以下の条件で測定することができる。
装置(一例) : HLC−8120 [東ソー(株)製]
カラム(一例): TSK GEL GMH6 2本 [東ソー(株)製]
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.25重量%のTHF溶液
移動相 : テトラヒドロフラン(重合禁止剤を含まない)
溶液注入量 : 100μL
検出装置 : 屈折率検出器
基準物質 : 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量 500 1,050 2,800 5,970 9,100 18,100 37,900 96,400 190,000 355,000 1,090,000 2,890,000)
分子量の測定は、0.25重量%になるように試料をTHFに溶解し、不溶解分を口径1μmのPTFEフィルターでろ別したものを試料溶液とする。
【0048】
本発明におけるトナーバインダーは、非晶性ビニル樹脂(A)及び結晶性ビニル樹脂(B)以外のトナーバインダー用樹脂として公知であるその他の樹脂(C)(特許第4493080号公報及び特開平06−194876号公報に記載の重合体等)を使用して製造しても良い。(C)は1種類の樹脂でもよく、2種類以上の樹脂の混合物であってもよい。
【0049】
上述の通り、本発明のトナーバインダーの製造方法は、結晶性ビニル樹脂(B)の存在下で非晶性ビニル樹脂(A)の単量体組成物(A0)を重合する工程を有する。
【0050】
本発明における単量体組成物(A0)の重合方法は、結晶性ビニル樹脂(B)の存在下であれば特に限定されず、公知の方法(例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、リビングラジカル重合、リビングアニオン重合及びリビングカチオン重合等)が挙げられる。ラジカル重合の場合は、ラジカル反応開始剤(c)とともに反応させることができ、ラジカル反応開始剤(c)としては、特に制限されず、無機過酸化物(c1)、有機過酸化物(c2)及びアゾ化合物(c3)等が挙げられる。また、これらのラジカル反応開始剤は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
無機過酸化物(c1)としては、特に限定されないが、例えば過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0052】
有機過酸化物(c2)としては、特に制限されないが、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、α、α−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)へキサン、ジ−t−へキシルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシへキシン−3、アセチルパーオキシド、イソブチリルパーオキシド、オクタニノルパーオキシド、デカノリルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド、m−トルイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート及びt−ブチルパーオキシアセテート等が挙げられる。
【0053】
アゾ化合物(c3)としては、特に制限されないが、例えば、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)及びアゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0054】
ラジカル反応開始剤(c)の使用量は、特に制限されないが、単量体組成物(A0)の合計重量に基づいて、0.01〜1重量%であることが好ましい。
【0055】
本発明における単量体組成物(A0)の重合方法は、一括重合でも分割重合(滴下重合)でもよいが、均一性の観点から分割重合(滴下重合)が好ましい。
【0056】
重合工程において単量体組成物(A0)と結晶性ビニル樹脂(B)を混合する方法は一般的に行われる公知の方法等でよく、必要により溶剤(トルエン、キシレン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン及びメチルエチルケトン等)を使用してもよい。
混合装置としては、反応槽等のバッチ式混合装置及び連続式混合装置が挙げられる。加圧や減圧等の圧力調整が容易なことからバッチ式の混合装置が好ましい。
【0057】
本発明のトナーバインダーの製造方法は、結晶性ビニル樹脂(B)の存在下で非晶性ビニル樹脂(A)の単量体組成物(A0)を重合する際に、結晶性ビニル樹脂(B)の存在下で非晶性ビニル樹脂(A)の単量体組成物(A0)を加圧しながら重合することが均一性や生産性の観点から好ましい。単量体組成物(A0)を重合する圧力は、好ましくは0.01〜0.5MPaであり、より好ましくは0.03〜0.4MPaである。
【0058】
結晶性ビニル樹脂(B)の存在下で非晶性ビニル樹脂(A)の単量体組成物(A0)を重合する工程における重合温度は110℃〜190℃であることが均一性や生産性の観点から好ましい。重合温度は、より好ましくは120〜190℃であり、さらに好ましくは130〜190℃であり、特に好ましくは140〜170℃であり、最も好ましくは140〜155℃である。重合温度が190℃以下であると結晶性ビニル樹脂(B)の分解が起こりにくく耐熱保存性を良好なものとすることができる。重合温度が110℃以上であると結晶性ビニル樹脂(B)の粘度が低くなり、結晶性ビニル樹脂(B)と単量体組成物(A0)との均一性が良好なものとすることができ、より均一性に優れたトナーバインダーを得ることが可能になる。
【0059】
本発明の結晶性ビニル樹脂(B)の存在下で非晶性ビニル樹脂(A)の単量体組成物(A0)を重合する工程における、反応前の非晶性ビニル樹脂(A)の単量体組成物(A0)と結晶性ビニル樹脂(B)の重量比[(A0):(B)]が、[20:80]〜[65:35]であることは、低温定着性、耐熱保存性、耐ホットオフセット性、帯電維持率、耐久性及び画像強度の観点から好ましく、より好ましくは[30:70]〜[65:35]であり、さらに好ましくは[40:60]〜[60:40]である。
【0060】
本発明において、結晶性ビニル樹脂(B)の存在下で非晶性ビニル樹脂(A)の単量体組成物(A0)を重合する工程は、重合工程以外の他の工程を含んでいてもよい。他の工程としては特に制限されず、一般的なトナーバインダーの製造工程で行われる工程を採用することができる。
他の工程としては、例えば、有機溶剤や開始剤分解残渣等を除去するため重合工程後に反応系内を減圧する工程(減圧工程)、重合工程により得られたトナーバインダーを取り出して粉砕する工程(粉砕工程)等挙げられる。
【0061】
前記減圧工程の温度は好ましくは110〜190℃であり、より好ましくは130〜190℃であり、更に好ましくは140〜170℃である。
【0062】
前記減圧工程の減圧度は、耐熱保存性、耐ホットオフセット性及び生産性の観点から、好ましくは0.01〜30kPa、より好ましくは0.05〜20kPa、更に好ましくは0.08〜10kPa、特に好ましくは0.1〜5kPaである。
【0063】
本発明により得られるトナーバインダーのガラス転移温度(Tg)は、低温定着性と耐熱保存性の観点から、25〜80℃であることが好ましく、さらに好ましくは40〜65℃であり、特に好ましくは44〜54℃である。
Tgが80℃以下であると低温定着性が良好になり、25℃以上であると耐熱保存性が良好になる。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、例えばTA Instruments(株)製、DSCQ20を用いて、ASTM D3418−82に規定の方法(DSC法)で測定することができる。
【0064】
本発明により得られるトナーバインダーは、吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)を40〜100℃の範囲に少なくとも1個有することが好ましい。Tmが本範囲にあると、トナーバインダーの低温定着性及び耐熱保存性のバランスが良い。Tmは好ましくは43〜95℃であり、より好ましくは45〜90℃であり、さらに好ましくは50〜90℃であり、特に好ましくは51〜88℃である。吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)は示差走査熱量計{例えば「DSCQ20」[TA Instruments(株)製]}を用いて測定され、トナーバインダーを20℃から10℃/分の条件で150℃まで第1回目の昇温を行い、続いて150℃から10℃/分の条件で0℃まで冷却し、続いて0℃から10℃/分の条件で150℃まで第2回目の昇温をした際の第2回目の昇温過程での吸熱ピークのトップを示す温度である。
本発明においては、上記吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)は、結晶性ビニル樹脂(B)に由来する吸熱ピークのピークトップ温度であることが好ましい
【0065】
本発明により得られるトナーバインダーは、トナーバインダーのピークトップ温度(Tm)を示す吸熱ピークの半値幅が6℃以下であることが、低温定着性、定着幅及び耐熱保温性の観点で好ましく、より好ましくは5℃以下であり、特に好ましくは2〜5℃である。
トナーバインダーのピークトップ温度(Tm)を示す吸熱ピークの半値幅は、吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)の測定によって得られるDSC曲線に基づいて、吸熱ピークのベースラインからピーク最大高さにおける2分の1高さにおけるピークの温度幅とする。
【0066】
本発明により得られるトナーバインダーの酸価は、耐熱保存性および帯電維持率の観点から、60mgKOH/g以下であることが好ましい。酸価が60mgKOH/g以下であると吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)が上がることや吸湿性が下がることで耐熱保存性が良好になる。トナーバインダーの酸価は、より好ましくは30mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは0〜22mgKOH/gである。
トナーバインダーの酸価は、非晶性ビニル樹脂(A)及び結晶性ビニル樹脂(B)を構成する単量体の酸価や酸価を有する単量体の含有量で調整できる。トナーバインダーの酸価は、例えばJISK0070などの方法で測定される。
【0067】
本発明により得られるトナーバインダーの重量平均分子量(Mw)は、トナーの耐ホットオフセット性と低温定着性との両立の観点から、5,000〜200,000が好ましく、より好ましくは10,000〜200,000、さらに好ましくは50,000〜200,000であり、特に好ましくは75,000〜190,000である。
トナーバインダーの重量平均分子量は非晶性ビニル樹脂(A)と同様の条件で測定することができる。
【0068】
本発明により得られるトナーバインダーを用いてトナーを製造する際に、本発明のトナーバインダー以外に、必要により着色剤、離型剤、荷電制御剤及び流動化剤等から選ばれる1種以上の公知の添加剤等を用いることができる。
【0069】
着色剤としては、トナー用着色剤として使用されている染料及び顔料等のすべてを使用することができる。例えば、カーボンブラック、鉄黒、スーダンブラックSM、ファーストイエローG、ベンジジンイエロー、ピグメントイエロー、インドファーストオレンジ、イルガシンレッド、パラニトロアニリンレッド、トルイジンレッド、カーミンFB、ピグメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、ブリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、カヤセットYG、オラゾールブラウンB及びオイルピンクOP等が挙げられ、着色剤は、これらは単独であってもよく、2種以上が混合されたものであってもよい。また、必要により磁性粉(鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属の粉末若しくはマグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の化合物)を着色剤としての機能を兼ねて含有させることができる。
着色剤の含有量は、トナーバインダー100重量部に対して、好ましくは1〜40重量部、より好ましくは3〜10重量部である。着色剤として磁性粉を用いる場合は、好ましくは20〜150重量部、より好ましくは40〜120重量部である。
【0070】
離型剤としては、定試験力押出形細管式レオメータフローテスタによるフロー軟化点〔T1/2〕が50〜170℃のものが好ましく、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物、カルナバワックス、モンタンワックス及びそれらの脱酸ワックス、エステルワックス、脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0071】
フロー軟化点〔T1/2〕の測定方法を記載する。
定試験力押出形細管式レオメータフローテスタ{たとえば、(株)島津製作所製、CFT−500D}を用いて、1gの測定試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出して、「プランジャー降下量(流れ値)」と「温度」とのグラフを描き、プランジャーの降下量の最大値の1/2に対応する温度をフロー軟化点〔T1/2〕とする。
【0072】
ポリオレフィンワックスとしては、オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセン及びこれらの混合物等)の(共)重合体[(共)重合により得られるもの及びそれをさらに熱減成して得られるものを含む]、(例えば低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンポリエチレン共重合体)、オレフィンの(共)重合体の酸素及び/又はオゾンによる酸化物、オレフィンの(共)重合体のマレイン酸変性物[例えばマレイン酸及びその誘導体(無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル及びマレイン酸ジメチル等)変性物]、オレフィンと不飽和カルボン酸[(メタ)アクリル酸、イタコン酸及び無水マレイン酸等]及び/又は不飽和カルボン酸アルキルエステル[(メタ)アクリル酸アルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステル及びマレイン酸アルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステル等]等との共重合体等が挙げられる。
【0073】
マイクロクリスタリンワックスとしては、例えば、日本精蝋(株)製のHi−Mic−2095、Hi−Mic−1090、Hi−Mic−1080、Hi−Mic−1070、Hi−Mic−2065、Hi−Mic−1045、Hi−Mic−2045等が挙げられる。
【0074】
パラフィンワックスとしては、例えば、日本精蝋(株)製のParaffin WAX−155、Paraffin WAX−150、Paraffin WAX−145、Paraffin WAX−140、Paraffin WAX−135、HNP−3、HNP−5、HNP−9、HNP−10、HNP−11、HNP−12、HNP−51等が挙げられる。
【0075】
フィッシャートロプシュワックスとしては、サゾール社製のSasolwax C80、日本精蝋(株)製のFT−0070等が挙げられる。
【0076】
カルナバワックスとしては、株式会社加藤洋行社製の精製カルナウバワックス 特製1号等が挙げられる。
【0077】
エステルワックスとしては、脂肪酸エステルワックス(例えば、日油社製のニッサンエレクトールWEP−2、WEP−3、WEP−4、WEP−5及びWEP−8等)等が挙げられる。
【0078】
高級アルコール類としては、炭素数30〜50の脂肪族アルコールなどであり、例えばトリアコンタノールが挙げられる。脂肪酸類としては、炭素数30〜50の脂肪酸などであり、例えばトリアコンタンカルボン酸が挙げられる。
【0079】
脂肪酸アミドとしては、三菱ケミカル社製のダイヤミッドY、ダイヤミッド200等が挙げられる。
【0080】
荷電制御剤としては、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよく、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン染料、4級アンモニウム塩、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体、4級アンモニウム塩基含有ポリマー、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸金属塩、ベンジル酸のホウ素錯体、スルホン酸基含有ポリマー、含フッ素ポリマー及びハロゲン置換芳香環含有ポリマー等が挙げられる。
【0081】
流動化剤としては、シリカ、チタニア、アルミナ、炭酸カルシウム、脂肪酸金属塩、シリコーン樹脂粒子及びフッ素樹脂粒子等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。トナーの帯電性の観点からシリカが好ましい。また、シリカは、トナーの転写性の観点から疎水性シリカであることが好ましい。また、シリカは、トナーの転写性の観点から疎水性シリカであることが好ましい。
【0082】
トナー中のトナーバインダーの含有量はトナー重量に基づき、好ましくは30〜97重量%、より好ましくは40〜95重量%、更に好ましくは45〜92重量%である。
着色剤の含有量はトナー重量に基づき、好ましくは0.05〜60重量%、より好ましくは0.1〜55重量%、更に好ましくは0.5〜50重量%である。
離型剤の含有量はトナー重量に基づき、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0.5〜20重量%、更に好ましくは1〜10重量%である。
荷電制御剤の含有量はトナー重量に基づき、好ましくは0〜20重量%、より好ましくは0.1〜10重量%、更に好ましくは0.5〜7.5重量%である。
流動化剤の含有量はトナー重量に基づき、好ましくは0〜10重量%、より好ましくは0〜5重量%、更に好ましくは0.1〜4重量%である。
また、添加剤の含有量の合計量はトナー重量に基づき、好ましくは3〜70重量%、より好ましくは4〜58重量%、更に好ましくは5〜50重量%である。
【0083】
本発明により得られるトナーバインダーを含有するトナーは、公知の混練粉砕法、乳化転相法、乳化重合法、懸濁重合法、溶解懸濁法及び乳化凝集法等の公知のいずれの方法により得られたものであってもよい。
例えば、混練粉砕法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分をヘンシェルミキサー、ナウターミキサー及びバンバリーミキサー等で乾式ブレンドした後、二軸混練機、エクストルーダー、コンティニアスニーダー及び3本ロール等の連続式の混合装置で溶融混練し、その後ミル機等粗粉砕し、最終的に気流式微粉砕機等を用いて微粒化して、さらにエルボージェット等の分級機で粒度分布を調整することにより、トナー粒子[好ましくは体積平均粒径(D50)が5〜20μmの粒子]とした後、流動化剤を混合して製造することができる。
【0084】
なお、トナー粒子(トナー)の体積平均粒径(D50)はコールターカウンター[例えば、商品名:マルチサイザーIII(ベックマン・コールター(株)製)]を用いて測定することができる。
具体的には、電解水溶液であるISOTON−II(ベックマン・コールター社製)100〜150mL中に分散剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5mL加える。さらに測定試料を2〜20mg加え、試料を懸濁した電解液を、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記測定装置により、アパチャーとして50μmアパチャーを用いて、トナー粒子の体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナー粒子の体積平均粒径(D50)(μm)、個数平均粒径(μm)、粒度分布(体積平均粒径/個数平均粒径)を求める。
【0085】
また、乳化転相法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分を有機溶剤に溶解又は分散後、水を添加する等によりエマルジョン化し、次いで分離、分級して製造することができる。トナーの体積平均粒径は、3〜15μmが好ましい。
【0086】
本発明により得られるトナーバインダーを含有するトナーは、必要に応じて鉄粉、ガラスビーズ、ニッケル粉、フェライト、マグネタイト及び樹脂(アクリル樹脂、シリコーン樹脂等)により表面をコーティングしたフェライト等のキャリア粒子と混合されて電気的潜像の現像剤として用いられる。キャリア粒子を用いる場合、トナーとキャリア粒子との重量比は、1/99〜99/1が好ましい。また、キャリア粒子の代わりに帯電ブレード等の部材と摩擦し、電気的潜像を形成することもできる。
なお、本発明により得られるトナーバインダーを含有するトナーは、キャリア粒子を含まなくてもよい。
【0087】
本発明により得られるトナーバインダーを含有するトナーは、複写機、プリンター等により支持体(紙、ポリエステルフィルム等)に定着して記録材料とされる。支持体に定着する方法としては、公知の熱ロール定着方法及びフラッシュ定着方法等が適用できる。
【0088】
本発明により得られたトナーバインダーを用いて作製したトナーは、電子写真法、静電記録法や静電印刷法等において、静電荷像または磁気潜像の現像に用いられる。さらに詳しくは、特にフルカラー用に好適な静電荷像または磁気潜像の現像に用いられる。
【実施例】
【0089】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り「部」は重量部を示す。
【0090】
結晶性ビニル樹脂(B)及びトナーバインダーの各物性値については次の方法により測定した。
【0091】
[酸価]
酸価は、JIS K0070に規定の方法で測定した。ただし、測定溶媒はアセトン、メタノール及びトルエンの混合溶媒(アセトン:メタノール:トルエン=12.5:12.5:75)とした。
【0092】
[重量平均分子量]
重量平均分子量は、下記の条件でGPCを用いて測定した。
装置:HLC−8120 [東ソー(株)製]
カラム:TSK GEL GMH6 2本 [東ソー(株)製]
測定温度:40℃
試料溶液:0.25重量%のTHF溶液
移動相: テトラヒドロフラン(重合禁止剤を含まない)
試料溶液注入量:100μL
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量 500 1,050 2,800 5,970 9,100 18,100 37,900 96,400 190,000 355,000 1,090,000 2,890,000)[東ソー(株)製]
重量平均分子量の測定では、0.25重量%になるように試料をTHFに溶解し、不溶解分をアパチャー1μmのPTFEフィルターでろ別したものを試料溶液とした。
【0093】
[ガラス転移温度]
ガラス転移温度(Tg)は、TA Instruments(株)製DSC Q20を用いて、ASTM D3418−82に規定の方法(DSC法)で測定した。ガラス転移温度の測定条件を記載する。
<測定条件>
(1)30℃から20℃/分で150℃まで昇温
(2)150℃で10分間保持
(3)20℃/分で−35℃まで冷却
(4)−35℃で10分間保持
(5)20℃/分で150℃まで昇温
(6)(5)の過程にて測定される示差走査熱量曲線を解析した。
【0094】
[吸熱ピークのピークトップ温度および半値幅]
吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)及びTmを示す吸熱ピークの半値幅は示差走査熱量計{「DSCQ20」[TA Instruments(株)製]}を用いて以下の条件で測定した。
<測定条件>
(1)20℃から10℃/分で150℃まで昇温
(2)150℃から10℃/分で0℃まで冷却
(3)0℃から10℃/分で150℃まで昇温
(4)(3)の過程にて測定される示差走査熱量曲線を解析した。
なお、結晶性ビニル樹脂(B)の前記ピークトップ温度を示す吸熱ピークの半値幅は、吸熱ピーク温度の測定によって得られるDSC曲線に基づいて、吸熱ピークのベースラインからピーク最大高さにおける2分の1高さにおけるピークの温度幅とする。
【0095】
[100℃における粘度]
100℃における粘度は、下記粘弾性測定装置及び条件を用いて測定した。
装置 :ARES−24A(レオメトリック社製)
治具 :25mmパラレルプレート
周波数 :1Hz
歪み率 :5%
昇温速度:5℃/min
【0096】
[単量体(a)の反応率の算出方法]
製造例1〜8及び比較製造例1〜3における、単量体(a)の反応率(%)はNMRを用いて、残存する単量体量を同定する方法で算出した。測定条件、サンプル調整方法、解析及び計算方法は以下の通りである。
<測定条件>
装置:ブルカーバイオスピン社製「AVANCE III HD400」
積算回数:4回
緩和時間:1秒
<サンプル調製>
NMRチューブにサンプルを100mg、重水素化溶媒(例えば重クロロホルム)を0.8mL加え樹脂を溶解させた。
<解析及び計算>
反応前の単量体(a)のプロトンの面積、残存する単量体(a)のプロトンの面積並びに単量体(a)及び結晶性ビニル樹脂(B)の鎖状炭化水素基の末端メチル基のプロトンの面積に基づき、下記の式により反応率を算出した。
反応率:100×[{反応前の単量体(a)の二重結合炭素に結合しているプロトンの面積/単量体(a)及び結晶性ビニル樹脂(B)の鎖状炭化水素基の末端メチル基のプロトンの面積}−{残存する単量体(a)の二重結合炭素に結合しているプロトンの面積/単量体(a)及び結晶性ビニル樹脂(B)の鎖状炭化水素基の末端メチル基のプロトンの面積}]/{反応前の単量体(a)の二重結合炭素に結合しているプロトンの面積/単量体(a)及び結晶性ビニル樹脂(B)の鎖状炭化水素基の末端メチル基のプロトンの面積}
例えば単量体(a)がベヘニルアクリレートであれば、二重結合炭素に結合しているプロトン(約6.4ppm)と、鎖状炭化水素基の末端メチル基のプロトン(約0.9ppm)を使用した。
【0097】
[スチレンの反応率の算出方法]
実施例及び比較例における、スチレンの反応率(%)は以下の方法で算出した。測定条件、サンプル調整方法、解析及び計算方法は以下の通りである。
<測定条件>
装置 :(株)島津製作所製GC−14A
カラム :PEG20M20% クロモソルブW担持 2mガラスカラム(phenomenex社製)
内部標準 :アミルアルコール
検出器 :FID検出器
カラム温度:100℃
試料濃度 :5%DMF溶液
<サンプル調整方法、解析及び計算方法>
スチレンとアミルアルコールの検量線を予め作成しておき、この検量線をもとに試料中のスチレンモノマーの含有量を求め、仕込量に対するスチレンモノマーの残存量から重合率を算出した。また、5重量%になるように試料をジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、10分間静置した上澄み液を試料溶液とした。
【0098】
[非晶性ビニル樹脂の分散状態の確認方法]
実施例及び比較例で得られたトナーバインダーを約100μmの厚みに超薄切片化し、非晶性ビニル樹脂(A)の分散状態を四酸化ルテニウムにより真空電子染色装置(フィルジェン株式会社製 VSC1R1H)を使用し、濃度1で3分間染色した後、四酸化ルテニウム染色により灰色もしくは黒色に表示された非晶性ビニル樹脂(A)の分散状態を透過型電子顕微鏡(TEM)により倍率10,000倍でトナーバインダーの断面を観察して確認した。
【0099】
<製造例1> [結晶性ビニル樹脂(B−1)の製造]
オートクレーブにベヘニルアクリレート[日触テクノファインケミカル(株)製、以下同様]260部、キシレン140部を仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温し、170℃で2時間温調した。スチレン234部、メチルアクリレート130部、アクリル酸26部、ジ−t−ブチルパーオキシド[日油(株)製、以下同様]1.5部、及びキシレン203部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、1.5時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン7部で洗浄した。更に同温度で0.5時間保持した後、70℃まで冷却後に単量体(a)の反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(B−1)を得た。
【0100】
<製造例2> [結晶性ビニル樹脂(B−2)の製造]
オートクレーブにベヘニルアクリレート600部、キシレン138部を仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温し、170℃で2時間温調した。スチレン50部、メチルメタクリレート50部、アクリロニトリル[ナカライテスク(株)製、以下同様]50部、ジ−t−ブチルパーオキシド2.8部、及びキシレン100部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、2時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン12部で洗浄した。更に同温度で0.5時間保持した後、70℃まで冷却後に単量体(a)の反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(B−2)を得た。
【0101】
<製造例3> [結晶性ビニル樹脂(B−3)の製造]
オートクレーブにキシレン138部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で165℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート450部、スチレン75部、アクリロニトリル225部、ジ−t−ブチルパーオキシド3.5部、及びキシレン100部の混合溶液を60℃に温調し、オートクレーブ内温度を165℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン12部で洗浄した。更に同温度で0.5時間保持した後、70℃まで冷却後に単量体(a)の反応率を確認した。単量体(a)の反応率が95%未満であったため、さらにジ−t−ブチルパーオキシドを1.8部投入し、反応率が95%以上まで反応させた。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(B−3)を得た。
【0102】
<製造例4> [結晶性ビニル樹脂(B−4)の製造]
オートクレーブにベヘニルアクリレート450部、キシレン150部を仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温し、170℃で2時間温調した。スチレン240部、メチルアクリレート38部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート[共栄社化学(株)製、以下同様]3.8部、メタクリル酸19部、ジ−t−ブチルパーオキシド1.2部、及びキシレン93部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、2時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン7部で洗浄した。更に同温度で0.5時間保持した後、70℃まで冷却後に単量体(a)の反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(B−4)を得た。
【0103】
<製造例5> [結晶性ビニル樹脂(B−5)の製造]
オートクレーブにステアリルアクリレート[共栄社化学(株)製、以下同様]375部、キシレン150部を仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温し、170℃で2時間温調した。スチレン290部、メチルメタクリレート75部、アクリル酸10部、ジ−t−ブチルパーオキシド0.7部、及びキシレン93部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、2時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン7部で洗浄した。更に同温度で0.5時間保持した後、70℃まで冷却後に単量体(a)の反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(B−5)を得た。
【0104】
<製造例6> [結晶性ビニル樹脂(B−6)の製造]
オートクレーブにベヘニルアクリレート335部、酢酸エチル[三協化学(株)製、以下同様]363部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で78℃まで昇温した。アクリロニトリル50部、スチレン79部、メチルアクリレート15部、メタクリル酸21部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)[富士フイルム和光純薬(株)製、以下同様]9部、酢酸エチル112部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を78℃にコントロールしながら、2時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインを酢酸エチル25部で洗浄した。同温度で5時間保った後、1時間かけてオートクレーブ内温度を92℃まで昇温した。更に同温度で2時間保持した後、60℃まで冷却後に単量体(a)の反応率を確認した。単量体(a)の反応率が95%未満であったため、80℃まで昇温し、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)[富士フイルム和光純薬(株)製、以下同様]2.0部と酢酸エチル38部の混合溶液を1時間かけて滴下した。滴下後80℃で2時間保持し、反応率が95%以上まで反応させた。110℃で6時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(B−6)を得た。
【0105】
<製造例7> [トリアコンチルアクリレートの合成]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、空気導入管、減圧装置、減水装置を備えた反応容器に、1−トリアコンタノール50部、トルエン50部、アクリル酸12部、ハイドロキノン0.05部を投入し、撹拌して均一化した。その後、パラトルエンスルホン酸2部を加え、30分撹拌した後、空気を30mL/分の流量で吹き込みながら100℃で生成する水を除去しながら5時間反応させた。その後、反応容器内の圧力を300mmHgに調整し、生成する水を除去しながらさらに3時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却後、10重量%水酸化ナトリウム水溶液30部を加えて1時間撹拌したのち静置して有機相と水相を分離させた。有機相を分液及び遠心分離操作で採取し、ハイドロキノン0.01部を投入し、空気を吹き込みながら減圧で溶媒を除去し、トリアコンチルアクリレートを得た。
【0106】
<製造例8> [結晶性ビニル樹脂(B−7)の製造]
オートクレーブに製造例7で得られたトリアコンチルアクリレートを375部、キシレン125部を仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温し、170℃で2時間温調した。スチレン163部、ブチルアクリレート97部、メチルメタクリレート100部、アクリル酸15部、ジ−t−ブチルパーオキシド2.9部、及びキシレン118部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、2時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン7部で洗浄した。更に同温度で0.5時間保持した後、70℃まで冷却後に単量体(a)の反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(B−7)を得た。
【0107】
<比較製造例1> [結晶性ビニル樹脂(B’−1)の製造]
オートクレーブにベヘニルアクリレートを750部、キシレン175部を仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温し、170℃で2時間温調した。ジ−t−ブチルパーオキシド1.1部、及びキシレン65部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、2時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン10部で洗浄した。更に同温度で0.5時間保持した後、70℃まで冷却後に単量体(a)の反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(B’−1)を得た。
【0108】
<比較製造例2> [非晶性ビニル樹脂(B’−2)の製造]
オートクレーブにキシレン175部を仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、密閉にした。スチレン538部、ブチルアクリレート202部、アクリル酸10部、ジ−t−ブチルパーオキシド1.0部、及びキシレン65部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を140℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン10部で洗浄した。更に140で1時間保持した後、170℃まで1時間かけて昇温し、開始剤を分解させた。120℃まで冷却後にスチレンの反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、非晶性ビニル樹脂(B’−2)を得た。
【0109】
<比較製造例3> [結晶性ビニル樹脂(B’−3)の製造]
オートクレーブにメチルエチルケトン390部、ベヘニルアクリレート420部、ブチルアクリレート180部、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート[アルケマ吉富(株)製、以下同様]6部を仕込み、80℃まで昇温後、撹拌密閉状態で4時間重合を行った。その後t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート6部をさらに加え、4時間撹拌した後、120℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(B’−3)を得た。
【0110】
結晶性ビニル樹脂(B−1)〜(B−7)及び(B’−1)〜(B’−3)の組成と物性値を表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
<実施例1> [トナーバインダー(C−1)の製造]
オートクレーブに製造例1で得られた結晶性ビニル樹脂(B−1)を60.0部仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態にした。スチレン28.6部、ブチルアクリレート10.8部、アクリル酸0.6部、ジ−t−ブチルパーオキシド0.06部、及びキシレン9.4部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を140℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン0.6部で洗浄した。更に140で1時間保持した後、170℃まで1時間かけて昇温し、開始剤を分解させた。120℃まで冷却後にスチレンの反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行った。得られたものを冷却することにより、トナーバインダー(C−1)を得た。また、非晶性ビニル樹脂の分散状態を確認したところ、トナーバインダー中に非晶性ビニル樹脂が分散していた。
【0113】
<実施例2> [トナーバインダー(C−2)の製造]
オートクレーブに製造例2で得られた結晶性ビニル樹脂(B−2)を50.0部仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態にした。スチレン35.8部、ブチルアクリレート13.5部、アクリル酸0.8部、ジ−t−ブチルパーオキシド0.08部、及びキシレン10.4部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を140℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン0.7部で洗浄した。更に140で1時間保持した後、170℃まで1時間かけて昇温し、開始剤を分解させた。120℃まで冷却後にスチレンの反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行った。得られたものを冷却することにより、トナーバインダー(C−2)を得た。また、非晶性ビニル樹脂の分散状態を確認したところ、トナーバインダー中に非晶性ビニル樹脂が分散していた。
【0114】
<実施例3> [トナーバインダー(C−3)の製造]
オートクレーブに製造例3で得られた結晶性ビニル樹脂(B−3)を40.0部仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態にした。スチレン42.9部、ブチルアクリレート16.2部、アクリル酸0.9部、ジ−t−ブチルパーオキシド0.09部、及びキシレン9.9部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を140℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン0.6部で洗浄した。更に140で1時間保持した後、170℃まで1時間かけて昇温し、開始剤を分解させた。120℃まで冷却後にスチレンの反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行った。得られたものを冷却することにより、トナーバインダー(C−3)を得た。また、非晶性ビニル樹脂の分散状態を確認したところ、トナーバインダー中に非晶性ビニル樹脂が分散していた。
【0115】
<実施例4> [トナーバインダー(C−4)の製造]
オートクレーブに製造例4で得られた結晶性ビニル樹脂(B−4)を35.0部仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態にした。スチレン46.5部、ブチルアクリレート17.6部、アクリル酸1.0部、ジ−t−ブチルパーオキシド0.1部、及びキシレン6.5部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を140℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン0.4部で洗浄した。更に140で1時間保持した後、170℃まで1時間かけて昇温し、開始剤を分解させた。120℃まで冷却後にスチレンの反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行った。得られたものを冷却することにより、トナーバインダー(C−4)を得た。また、非晶性ビニル樹脂の分散状態を確認したところ、トナーバインダー中に非晶性ビニル樹脂が分散していた。
【0116】
<実施例5> [トナーバインダー(C−5)の製造]
オートクレーブに製造例5で得られた結晶性ビニル樹脂(B−5)を45.0部仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態にした。スチレン39.3部、ブチルアクリレート14.9部、アクリル酸0.8部、ジ−t−ブチルパーオキシド0.11部、及びキシレン5.5部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を140℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン0.3部で洗浄した。更に140で1時間保持した後、170℃まで1時間かけて昇温し、開始剤を分解させた。120℃まで冷却後にスチレンの反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行った。得られたものを冷却することにより、トナーバインダー(C−5)を得た。また、非晶性ビニル樹脂の分散状態を確認したところ、トナーバインダー中に非晶性ビニル樹脂が分散していた。
【0117】
<実施例6> [トナーバインダー(C−6)の製造]
オートクレーブに製造例6で得られた結晶性ビニル樹脂(B−6)を70.0部仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態にした。スチレン21.5部、ブチルアクリレート8.1部、アクリル酸0.5部、ジ−t−ブチルパーオキシド0.06部、及びキシレン10.4部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を140℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン0.7部で洗浄した。更に140で1時間保持した後、170℃まで1時間かけて昇温し、開始剤を分解させた。120℃まで冷却後にスチレンの反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行った。得られたものを冷却することにより、トナーバインダー(C−6)を得た。また、非晶性ビニル樹脂の分散状態を確認したところ、トナーバインダー中に非晶性ビニル樹脂が分散していた。
【0118】
<実施例7> [トナーバインダー(C−7)の製造]
オートクレーブに製造例8で得られた結晶性ビニル樹脂(B−7)を80.0部仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態にした。スチレン14.3部、ブチルアクリレート5.4部、アクリル酸0.3部、ジ−t−ブチルパーオキシド0.04部、及びキシレン4.7部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を140℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン0.3部で洗浄した。更に140で1時間保持した後、170℃まで1時間かけて昇温し、開始剤を分解させた。120℃まで冷却後にスチレンの反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行った。得られたものを冷却することにより、トナーバインダー(C−7)を得た。また、非晶性ビニル樹脂の分散状態を確認したところ、トナーバインダー中に非晶性ビニル樹脂が分散していた。
【0119】
<実施例8> [トナーバインダー(C−8)の製造]
オートクレーブに製造例2で得られた結晶性ビニル樹脂(B−2)を40.0部仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態にした。スチレン39.0部、ブチルアクリレート20.3部、アクリル酸0.7部、ジ−t−ブチルパーオキシド0.12部、及びキシレン14.1部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を140℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン0.9部で洗浄した。更に140で1時間保持した後、170℃まで1時間かけて昇温し、開始剤を分解させた。120℃まで冷却後にスチレンの反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行った。得られたものを冷却することにより、トナーバインダー(C−8)を得た。また、非晶性ビニル樹脂の分散状態を確認したところ、トナーバインダー中に非晶性ビニル樹脂が分散していた。
【0120】
<実施例9> [トナーバインダー(C−9)の製造]
オートクレーブに製造例3で得られた結晶性ビニル樹脂(B−3)を40.0部仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態にした。スチレン39.0部、ブチルアクリレート20.3部、アクリル酸0.7部、ジ−t−ブチルパーオキシド0.12部、及びキシレン14.1部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を140℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン0.9部で洗浄した。更に140で1時間保持した後、170℃まで1時間かけて昇温し、開始剤を分解させた。120℃まで冷却後にスチレンの反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行った。得られたものを冷却することにより、トナーバインダー(C−9)を得た。また、非晶性ビニル樹脂の分散状態を確認したところ、トナーバインダー中に非晶性ビニル樹脂が分散していた。
【0121】
<実施例10> [トナーバインダー(C−10)の製造]
オートクレーブに製造例4で得られた結晶性ビニル樹脂(B−4)を40.0部仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態にした。スチレン39.0部、ブチルアクリレート20.3部、アクリル酸0.7部、ジ−t−ブチルパーオキシド0.12部、及びキシレン14.1部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を140℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン0.9部で洗浄した。更に140で1時間保持した後、170℃まで1時間かけて昇温し、開始剤を分解させた。120℃まで冷却後にスチレンの反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行った。得られたものを冷却することにより、トナーバインダー(C−10)を得た。また、非晶性ビニル樹脂の分散状態を確認したところ、トナーバインダー中に非晶性ビニル樹脂が分散していた。
【0122】
<実施例11> [トナーバインダー(C−11)の製造]
オートクレーブに製造例5で得られた結晶性ビニル樹脂(B−5)を40.0部仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態にした。スチレン39.0部、ブチルアクリレート20.3部、アクリル酸0.7部、ジ−t−ブチルパーオキシド0.12部、及びキシレン14.1部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を140℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン0.9部で洗浄した。更に140で1時間保持した後、170℃まで1時間かけて昇温し、開始剤を分解させた。120℃まで冷却後にスチレンの反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行った。得られたものを冷却することにより、トナーバインダー(C−11)を得た。また、非晶性ビニル樹脂の分散状態を確認したところ、トナーバインダー中に非晶性ビニル樹脂が分散していた。
【0123】
<実施例12> [トナーバインダー(C−12)の製造]
オートクレーブに製造例6で得られた結晶性ビニル樹脂(B−6)を40.0部仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態にした。スチレン39.0部、ブチルアクリレート20.3部、アクリル酸0.7部、ジ−t−ブチルパーオキシド0.12部、及びキシレン14.1部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を140℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン0.9部で洗浄した。更に140で1時間保持した後、170℃まで1時間かけて昇温し、開始剤を分解させた。120℃まで冷却後にスチレンの反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行った。得られたものを冷却することにより、トナーバインダー(C−12)を得た。また、非晶性ビニル樹脂の分散状態を確認したところ、トナーバインダー中に非晶性ビニル樹脂が分散していた。
【0124】
<実施例13> [トナーバインダー(C−13)の製造]
オートクレーブに製造例8で得られた結晶性ビニル樹脂(B−7)を40.0部仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態にした。スチレン39.0部、ブチルアクリレート20.3部、アクリル酸0.7部、ジ−t−ブチルパーオキシド0.12部、及びキシレン14.1部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を140℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン0.9部で洗浄した。更に140で1時間保持した後、170℃まで1時間かけて昇温し、開始剤を分解させた。120℃まで冷却後にスチレンの反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行った。得られたものを冷却することにより、トナーバインダー(C−13)を得た。また、非晶性ビニル樹脂の分散状態を確認したところ、トナーバインダー中に非晶性ビニル樹脂が分散していた。
【0125】
<実施例14> [トナーバインダー(C−14)の製造]
オートクレーブに製造例2で得られた結晶性ビニル樹脂(B−2)を40.0部仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態にし、170℃まで昇温した。スチレン39.0部、ブチルアクリレート20.3部、アクリル酸0.7部、ジ−t−ブチルパーオキシド0.3部、及びキシレン14.1部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン0.9部で洗浄し、30分間保持して開始剤を分解させた。120℃まで冷却後にスチレンの反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行った。得られたものを冷却することにより、トナーバインダー(C−14)を得た。また、非晶性ビニル樹脂の分散状態を確認したところ、トナーバインダー中に非晶性ビニル樹脂が分散していた。
【0126】
<実施例15> [トナーバインダー(C−15)の製造]
オートクレーブに製造例2で得られた結晶性ビニル樹脂(B−2)を40.0部仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態にし、190℃まで昇温した。スチレン39.0部、ブチルアクリレート20.3部、アクリル酸0.7部、ジ−t−ブチルパーオキシド0.5部、及びキシレン14.1部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を190℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン0.9部で洗浄した。120℃まで冷却後にスチレンの反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行った。得られたものを冷却することにより、トナーバインダー(C−15)を得た。また、非晶性ビニル樹脂の分散状態を確認したところ、トナーバインダー中に非晶性ビニル樹脂が分散していた。
【0127】
<実施例16> [トナーバインダー(C−16)の製造]
オートクレーブに製造例2で得られた結晶性ビニル樹脂(B−2)を40.0部仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で110℃まで昇温後、撹拌下密閉状態にした。スチレン39.0部、ブチルアクリレート20.3部、アクリル酸0.7部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート[日油(株)製、以下同様]0.2部、及びキシレン14.1部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン0.9部で洗浄し、30分間保持して開始剤を分解させた。120℃まで冷却後にスチレンの反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行った。得られたものを冷却することにより、トナーバインダー(C−16)を得た。また、非晶性ビニル樹脂の分散状態を確認したところ、トナーバインダー中に非晶性ビニル樹脂が分散していた。
【0128】
<実施例17> [トナーバインダー(C−17)の製造]
オートクレーブに製造例2で得られた結晶性ビニル樹脂(B−2)を40.0部仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態にした。スチレン34.0部、ブチルアクリレート20.0部、アクリロニトリル6.0部、ジ−t−ブチルパーオキシド0.12部、及びキシレン14.1部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を140℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン0.9部で洗浄した。更に140で1時間保持した後、170℃まで1時間かけて昇温し、開始剤を分解させた。120℃まで冷却後にスチレンの反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行った。得られたものを冷却することにより、トナーバインダー(C−17)を得た。また、非晶性ビニル樹脂の分散状態を確認したところ、トナーバインダー中に非晶性ビニル樹脂が分散していた。
【0129】
<実施例18> [トナーバインダー(C−18)の製造]
オートクレーブに製造例3で得られた結晶性ビニル樹脂(B−3)を40.0部仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態にした。スチレン34.0部、ブチルアクリレート20.0部、アクリロニトリル6.0部、ジ−t−ブチルパーオキシド0.12部、及びキシレン14.1部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を140℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン0.9部で洗浄した。更に140で1時間保持した後、170℃まで1時間かけて昇温し、開始剤を分解させた。120℃まで冷却後にスチレンの反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行った。得られたものを冷却することにより、トナーバインダー(C−18)を得た。また、非晶性ビニル樹脂の分散状態を確認したところ、トナーバインダー中に非晶性ビニル樹脂が分散していた。
【0130】
<実施例19> [トナーバインダー(C−19)の製造]
オートクレーブに製造例4で得られた結晶性ビニル樹脂(B−4)を40.0部仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態にした。スチレン34.0部、ブチルアクリレート20.0部、アクリロニトリル6.0部、ジ−t−ブチルパーオキシド0.12部、及びキシレン14.1部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を140℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン0.9部で洗浄した。更に140で1時間保持した後、170℃まで1時間かけて昇温し、開始剤を分解させた。120℃まで冷却後にスチレンの反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行った。得られたものを冷却することにより、トナーバインダー(C−19)を得た。また、非晶性ビニル樹脂の分散状態を確認したところ、トナーバインダー中に非晶性ビニル樹脂が分散していた。
【0131】
<実施例20> [トナーバインダー(C−20)の製造]
オートクレーブに製造例3で得られた結晶性ビニル樹脂(B−3)を40.0部仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態にした。スチレン30.0部、ブチルアクリレート24.0部、アクリロニトリル6.0部、ジ−t−ブチルパーオキシド0.12部、及びキシレン14.1部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を140℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン0.9部で洗浄した。更に140で1時間保持した後、170℃まで1時間かけて昇温し、開始剤を分解させた。120℃まで冷却後にスチレンの反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行った。得られたものを冷却することにより、トナーバインダー(C−20)を得た。また、非晶性ビニル樹脂の分散状態を確認したところ、トナーバインダー中に非晶性ビニル樹脂が分散していた。
【0132】
<比較例1> [トナーバインダー(C’−1)の製造]
オートクレーブに比較製造例1で得られた結晶性ビニル樹脂(B’−1)を40.0部仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態にした。スチレン39.0部、ブチルアクリレート20.3部、アクリル酸0.7部、ジ−t−ブチルパーオキシド0.12部、及びキシレン14.1部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を140℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン0.9部で洗浄した。更に140で1時間保持した後、170℃まで1時間かけて昇温し、開始剤を分解させた。120℃まで冷却後にスチレンの反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行った。得られたものを冷却することにより、トナーバインダー(C’−1)を得た。
【0133】
<比較例2> [トナーバインダー(C’−2)の製造]
オートクレーブに比較製造例2で得られた結晶性ビニル樹脂(B’−2)を40.0部仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態にした。スチレン39.0部、ブチルアクリレート20.3部、アクリル酸0.7部、ジ−t−ブチルパーオキシド0.12部、及びキシレン14.1部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を140℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン0.9部で洗浄した。更に140で1時間保持した後、170℃まで1時間かけて昇温し、開始剤を分解させた。120℃まで冷却後にスチレンの反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行った。得られたものを冷却することにより、トナーバインダー(C’−2)を得た。
【0134】
<比較例3> [トナーバインダー(C’−3)の製造]
オートクレーブにキシレン10部を仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、密閉にした。スチレン39.0部、ブチルアクリレート20.3部、アクリル酸0.7部、ジ−t−ブチルパーオキシド0.12部、及びキシレン4部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を140℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン1部で洗浄した。更に140で1時間保持した後、170℃まで1時間かけて昇温し、開始剤を分解させた。120℃まで冷却後にスチレンの反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い非晶性ビニル樹脂(A)を得た。この非晶性ビニル樹脂(A)60.0部及び製造例2で得られた結晶性ビニル樹脂(B−2)40.0部を粉体で混合し、二軸混練機に供給し、140℃で2分間混錬した。得られたものを冷却することにより、トナーバインダー(C’−3)を得た。
【0135】
<比較例4> [トナーバインダー(C’−4)の製造]
非晶性ビニル樹脂(A)としてFSR−055[藤倉化成(株)製]98部と比較製造例3で得られた結晶性ビニル樹脂(B’−3)2部を粉体で混合し、二軸混練機に供給し、140℃で2分間混錬した。得られたものを冷却することにより、トナーバインダー(C’−4)を得た。
【0136】
トナーバインダー(C−1)〜(C−20)及び(C’−1)〜(C’−4)の組成と物性値を表2及び表3に示す。
【0137】
【表2】
【0138】
【表3】
【0139】
<実施例21> [トナー(T−1)の製造]
実施例1に係るトナーバインダー(C−1)86部に対して、顔料のカーボンブラック[三菱ケミカル(株)製、MA−100]7部、離型剤のフィッシャー・トロプッシュワックス[日本精蝋(株)製、FT−0070]5部、荷電制御剤[保土谷化学工業(株)製、T−77]1部を加え下記の方法でトナー化した。
まず、ヘンシェルミキサー[日本コークス工業(株)製、FM10B]を用いて予備混合した後、二軸混練機[(株)池貝製、PCM−30]で混練した。ついで超音速ジェット粉砕機ラボジェット[(株)栗本鐵工所製、KJ−25]を用いて微粉砕した後、エルボージェット分級機[(株)マツボー製、EJ−L−3(LABO)型]で分級し、体積平均粒径D50が7μmのトナー粒子を得た。
ついで、トナー粒子100部に流動化剤として疎水性シリカ[日本アエロジル(株)製、アエロジルR972]1部をサンプルミルにて混合して、実施例21に係るトナー(T−1)を得た。
【0140】
<実施例22〜40> [トナー(T−2)〜(T−20)の製造]
表4及び表5に記載した原料の配合部数で、実施例21と同様にトナーを製造し、実施例22〜40に係るトナー(T−2)〜(T−20)を得た。
【0141】
<比較例5〜8> [トナー(T’−1)〜(T’−4)の製造]
表5に記載した原料の配合部数で、実施例21と同様にトナーを製造し、比較例5〜8に係るトナー(T’−1)〜(T’−4)を得た。
【0142】
各実施例及び比較例で得られたトナーバインダーを使用したトナーの組成と評価結果を表4及び表5に示す。
【0143】
【表4】
【0144】
【表5】
【0145】
[評価方法]
以下に、得られたトナー(T−1)〜(T−20)及び(T’−1)〜(T’−4)の低温定着性、耐ホットオフセット性、定着幅、耐熱保存性、帯電維持率、画像強度及び耐久性の測定方法と評価方法を、判定基準を含めて説明する。
【0146】
<低温定着性>
トナーを紙面上に1.00mg/cmとなるよう均一に載せた。このとき粉体を紙面に載せる方法は、熱定着機を外したプリンターを用いた。この紙をソフトローラーに定着速度(加熱ローラーの周速)213mm/秒、加熱ローラーの温度90〜230℃の範囲を5℃刻みで通した。次に定着画像へのコールドオフセットの有無を目視し、コールドオフセットの発生温度(MFT)を測定した。
コールドオフセットの発生温度が低いほど、低温定着性に優れることを意味し、この評価条件では、MFTは一般には125℃以下であることが好ましい。
【0147】
<耐ホットオフセット性>
上記低温定着性に記載した方法と同じ方法で、トナーを紙面上に載せ、この紙をソフトローラーに定着速度(加熱ローラーの周速)213mm/秒、加熱ローラーの温度90〜230℃の範囲を5℃刻みで通した。次に定着画像へのホットオフセットの有無を目視し、ホットオフセットの発生温度を測定した。
ホットオフセットの発生温度が高いほど、耐ホットオフセット性に優れることを意味する。この評価条件では、180℃以上であることが好ましい。
【0148】
<定着幅>
上記低温定着温度と耐ホットオフセット温度の差を定着幅とした。
定着幅が広いほど優れることを意味する。この評価条件では、70℃以上であることが好ましい。
【0149】
<耐熱保存性>
トナー1gとアエロジルR8200(エボニックジャパン(株)製)0.01gをシェイカーで1時間混合する。混合物を密閉容器に入れ、温度40℃、湿度80%の雰囲気で48時間静置し、ブロッキングの程度を目視で判断し、下記判定基準で耐熱保存性を評価した。
【0150】
[判定基準]
◎:ブロッキングが全く発生しておらず、耐熱保存性に優れる。
○:一部にブロッキングが発生しているが、触れると容易に崩れる。
△:一部にブロッキングが発生しており、触れても容易には崩れない。
×:全体にブロッキングが発生しており、耐熱保存性が大きく劣る。
【0151】
<帯電維持率>
(1)トナー0.5gとフェライトキャリア(パウダーテック(株)製、F−150)20gとを50mLのガラス瓶に入れ、これを23℃、相対湿度50%で8時間以上調湿した。
(2)ターブラーシェーカーミキサーにて50rpmで10分間及び60分間摩擦撹拌し、それぞれの時間での帯電量をブローオフ帯電量測定装置[京セラケミカル(株)製]を用いて測定した。
得られた値を用いて「摩擦時間60分後の帯電量/摩擦時間10分後の帯電量」を計算し、これを帯電安定性指数とした。
本帯電安定性指数が大きいほど帯電安定性に優れることを意味する。この評価条件では0.8以上であると好ましい。
【0152】
<画像強度>
上記の低温定着性の評価で定着した画像を、JIS K5600−5−4(1999)に準じて、斜め45度に固定した鉛筆の真上から10gの荷重が加わる様にして手かき法によりかけ引っ掻き硬度試験を行い、傷のつかない鉛筆硬度から画像強度を評価した。
鉛筆硬度が高いほど画像強度に優れることを意味する。一般にはHB以上であることが好ましい。
【0153】
<耐久性>
トナーを二成分現像剤として、市販モノクロ複写機[シャープ(株)製、AR5030]を用いて連続コピーを行い、以下の基準で耐久性を評価した。
【0154】
[判定基準]
◎:1万枚目のコピーで画質に変化なく、カブリの発生もない。
○:1万枚目のコピーでカブリが発生している。
△:6千枚目のコピーでカブリが発生している。
×:2千枚目のコピーでカブリが発生している。
【0155】
表4及び表5の評価結果から明らかなように、実施例21〜40に係るトナー(T−1)〜(T−20)はいずれもすべての性能評価において優れた結果が得られた。一方、比較例5〜8に係るトナー(T’−1)〜(T’−4)は、いくつかの性能項目が不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明により得られるトナーバインダーは、低温定着性及び耐ホットオフセット性を維持しつつ、耐熱保存性、定着幅、帯電維持率、画像強度及び耐久性に優れ、電子写真、静電記録や静電印刷等に用いる、静電荷像現像用トナーバインダーとして好適に使用できる。
さらに、塗料用添加剤、接着剤用添加剤、電子ペーパー用粒子などの用途として好適である。