【解決手段】液晶表示装置は、第1基板と第2基板との間に設けられた液晶層と、外部近接物体を検出するための検出電極31と、平面視において検出電極31とオーバーラップする複数の画素25と、検出電極31に生じる検出容量値を検出する検出回路と、を備える。複数の画素25の各々と検出電極31との間に生じる液晶容量値は、第1階調時における第1容量値と第1階調よりも小さい第2階調時における第2容量値を有する。検出回路は、複数の画素25において、第1階調とされる画素数と第2階調とされる画素数との比率に応じて検出容量値の補正を行う。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施形態に記載した内容により本開示が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、開示の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本開示の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る液晶表示装置の一構成例を示すブロック図である。
【0011】
図1に示すように、液晶表示装置1は、表示パネル10と、ゲートドライバ12と、ソースドライバ13と、検出回路40とを備えている。表示パネル10は、画像を表示する表示部20と、検出面上の外部近接物体を検出するセンサ部30とを含む。
【0012】
表示パネル10は、表示部20に静電容量型のセンサ部30を内蔵して一体化した、所謂インセルタイプあるいはハイブリッドタイプの装置である。具体的には、例えば、表示部20として使用される基板や電極などの一部の部材と、センサ部30として使用される基板や電極などの一部の部材とを兼用する。
【0013】
図2は、1フレーム期間内における表示期間と検出期間との一例を示す図である。本実施形態において、表示パネル10は、
図2に示すように、1フレーム期間1Fにおいて、表示部20に画像を表示する表示期間Pdと、センサ部30によりタッチ検出を行う検出期間Ptとを時分割して設けている。これにより、表示動作と検出動作とを両立している。
図2に示す表示期間Pdと検出期間Ptとの時分割例は一例であってこれに限るものではない。
【0014】
表示部20は、画像を表示するための複数の画素が設けられている。表示部20は、映像信号の入力を受けて画像の表示を行う。本実施形態において、表示部20は、画素を構成する表示素子として液晶表示素子を用いた、例えばVA(Vertical Alignment:垂直配向)やECB(Electrically Controlled Birefringence:電界制御複屈折)等の縦電界型の液晶表示デバイスが用いられる。表示部20は、例えば、FFS(Fringe Field Switching:フリンジフィールドスイッチング)を含むIPS(In-Plane Switching:インプレーンスイッチング)等の横電界型の液晶表示デバイスを用いても良い。
【0015】
センサ部30は、複数の検出電極31が設けられている。複数の検出電極31は、検出回路40に接続されている。なお、
図1では、複数の検出電極31がマトリクス状に配置された例を示したが、検出電極31の配置はこれに限らない。具体的に、例えば、検出電極31は、センサ部30の
図1に示す左右方向あるいは上下方向に延びて設けられた構成であっても良い。
【0016】
図3は、表示パネルの透視図である。
図3に示す例では、センサ部30の検出面上にP列Q行のマトリクス状に複数の検出電極31が並び、表示部20の表示面上にM列N行のマトリクス状に画素25が並ぶ構成を示している。1つの検出電極31には、複数の画素25がオーバーラップして配置されている。すなわち、平面視において、複数の検出電極31は、それぞれ複数の画素25と重なっている。
【0017】
図1において、制御部100は、ゲートドライバ12、ソースドライバ13、及び検出回路40に制御信号を供給する。制御部100は、表示動作及び検出動作を制御する回路である。制御部100は、例えばホストIC(Integrated Circuit)で構成することができる。
【0018】
ゲートドライバ12は、制御部100から供給される制御信号に基づいて、表示パネル10に走査信号Gate(1),Gate(2),・・・,Gate(N)を供給する回路である。より具体的には、ゲートドライバ12は、表示期間Pdにおいて複数の走査線SGLを表示の駆動対象として順次又は同時に選択し、選択した走査線SGLに走査信号Gate(1),Gate(2),・・・,Gate(N)を供給する。なお、走査線SGLは、それぞれ複数の画素が接続される。
【0019】
ソースドライバ13は、制御部100から供給される制御信号に基づいて、表示部20の各画素に画素信号Sig(1),Sig(2),・・・,Sig(M)を供給する回路である。より具体的には、ソースドライバ13は、表示期間Pdにおいてゲートドライバ12により選択された走査線SGLに接続された画素に信号線SDLを介して画素信号Sig(1),Sig(2),・・・,Sig(M)を供給する。なお、信号線SDLは、それぞれ複数の画素が接続される。ソースドライバ13の機能の一部は、表示パネル10に搭載されていてもよい。
【0020】
検出回路40は、例えば検出用IC(Integrated Circuit)で構成することができる。
図4は、センサ部の検出電極と検出回路との接続例を示す模式図である。
図4では、センサ部30に設けられた複数の検出電極31のうちの1つを例示している。本実施形態において、検出回路40は、少なくとも、検出電極31に生じる検出容量値Crawを検出し、当該検出容量値Crawを補正する容量値補正部41と、検出容量値Crawを補正するための各種パラメータが記憶された記憶部42とを備える。容量値補正部41は、例えば制御部100から入力される画素情報と、記憶部42に記憶された各種パラメータを用いて、検出容量値Crawを補正する。なお、検出容量値Crawは、検出回路40から出力された値に基づいた容量値であっても良い。また、検出回路40は、センサ部30の検出面上の外部近接物体を検出するための構成部として、信号処理部、座標抽出部、検出タイミング制御部等を含む構成であっても良い。
【0021】
本実施形態において、検出回路40は、所謂自己静電容量方式又は相互静電容量方式によるタッチ検出の基本原理に基づいて、センサ部30の検出面上の外部近接物体を検出する。
図5は、自己静電容量方式によるタッチ検出を適用する表示パネルの断面構造の概略図である。
図6は、相互静電容量方式によるタッチ検出を適用する表示パネルの断面構造の概略図である。本実施形態では、表示パネル10として、縦電界型の反射型液晶表示デバイスを用いた構成について例示しているが、表示パネル10は、反射型液晶表示デバイスに限らず、透過型液晶表示デバイスや、半透過型液晶表示デバイスであっても良い。なお、
図5及び
図6では、偏光板等の構成要素を省略している。
【0022】
図5及び
図6に示すように、表示パネル10は、アレイ基板(第1基板)22と、対向基板(第2基板)32と、液晶層23とを備えている。対向基板32は、アレイ基板22の表面に垂直な方向に対向する。表示パネル10は、アレイ基板22と対向基板32との間に液晶層23を挟んで構成されている。
【0023】
アレイ基板22は、第1配向膜27を有している。対向基板32は、第2配向膜34を有している。第1配向膜27及び第2配向膜34は、例えば、垂直配向膜である。
【0024】
アレイ基板22は、基材26を有している。なお、表示パネル10として、バックライトを用いてアレイ基板22の背面から光を放射する透過型液晶表示デバイスを用いる場合、基材26は、例えばガラスで形成された透光性基材であっても良い。この場合、基材26は、透光性を有していれば、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂でも良い。
【0025】
アレイ基板22には、基材26の液晶層23側の面に画素電極21が設けられている。画素電極21は、光を反射する性質を有する金属材料によって形成されている。画素電極21の表面には、第1配向膜27が設けられている。対向基板32側から入射する光は、画素電極21で反射されて、対向基板32を通過して観察者の目に到達する。なお、表示パネル10として透過型液晶表示デバイスを用いる場合、画素電極21は、ITOなどの透光性導電材料によって形成されていても良い。
【0026】
対向基板32は、例えばガラスで形成された透光性基材33を有している。透光性基材33は、透光性を有していれば、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂でも良い。
【0027】
図5に示す自己静電容量方式によるタッチ検出を適用する構成において、対向基板32には、透光性基材33の液晶層23側の面に検出電極31が設けられている。検出電極31は、ITOなどの透光性導電材料によって形成されている。検出電極31の表面には、第2配向膜34が設けられている。検出電極31は、表示期間Pdにおいて各画素25の画素電極に対する共通電位を供給する共通電極COMLとして動作する。
【0028】
図6に示す相互静電容量方式によるタッチ検出を適用する構成において、対向基板32には、透光性基材33の液晶層23側の面に駆動電極35が設けられている。駆動電極35は、ITOなどの透光性導電材料によって形成されている。駆動電極35の表面には、第2配向膜34が設けられている。駆動電極35は、表示期間Pdにおいて各画素25の画素電極に対する共通電位を供給する共通電極COMLとして動作する。
【0029】
また、対向基板32には、透光性基材33の液晶層23とは反対側の面に検出電極31が設けられている。検出電極31は、ITOなどの透光性導電材料によって形成されている。
【0030】
検出回路40は、検出期間Ptにおいてセンサ部30の検出電極31に生じる検出容量値Crawに基づき、センサ部30の検出面上の外部近接物体を検出する。表示期間Pdにおいて共通電極COML(
図5に示す構成における検出電極31、又は、
図6に示す構成における駆動電極35)に共通電位を供給する構成部は、検出回路40であっても良いし、検出回路40以外の他の構成部であっても良い。以下、
図5に示す自己静電容量方式によるタッチ検出を適用する構成を一例として、本開示の具体的な概念について説明する。
【0031】
図7は、表示パネル上の1つの検出電極を拡大した透視図である。
図8は、
図7に示すA−A断面概略図である。
図7では、1つの検出電極31にR個の画素25がオーバーラップして配置された例を示している。
図8では、配向膜や偏光板等の構成要素を省略している。
【0032】
画素電極21と検出電極31との間には、液晶層23の誘電率に応じた液晶容量値Cgが生じる。すなわち、検出期間Ptにおいてセンサ部30の検出電極31に生じる検出容量値Crawには、検出電極31に重なる画素25ごとの液晶容量値Cgの総和が含まれている。
【0033】
図9は、画素ごとの表示ON状態における液晶容量値を示す図である。
図10は、画素ごとの表示OFF状態における液晶容量値を示す図である。
【0034】
縦電界型の液晶表示デバイスでは、液晶分子24の配向方向によって液晶層23の誘電率が変化する。これにより、
図9に示す表示ON状態における液晶容量値Cgonと、
図10に示す表示OFF状態における液晶容量値Cgoffとが異なる値となる。より具体的には、表示ON状態における液晶容量値Cgonは、表示OFF状態における液晶容量値Cgoffよりも大きな値となる(Cgon>Cgoff)。このため、表示期間Pdにおいて表示部20に表示される画像によって、検出期間Ptにおいてセンサ部30の検出電極31に生じる検出容量値Crawに含まれる液晶容量値Cgの総和が変動し、適切にタッチ検出を行えない場合がある。
【0035】
なお、本実施形態において、表示ON状態とは液晶の長軸の方向がアレイ基板22および対向基板32の対向表面に対して第1角度以上とされ、表示OFF状態とは液晶の長軸の方向がアレイ基板22および対向基板32の対向表面に対して第2角度以下とされる状態である。ここで、第2角度は第1角度より小さい開度とされる。
【0036】
液晶の誘電率異方性が正であるポジ型液晶では、表示ON状態において、画素電極21と検出電極31の間に第1電圧以上の電圧が印加され、表示OFF状態において、画素電極21と検出電極31の間に第2電圧以下の電圧が印加される。ここで、第2電圧は第1電圧よりも小さい電圧とされる。
【0037】
液晶の誘電率異方性が負であるネガ型液晶では、表示OFF状態において、画素電極21と検出電極31の間に第1電圧以上の電圧が印加され、表示ON状態において、画素電極21と検出電極31の間に第2電圧以下の電圧が印加される。ここで、第2電圧は第1電圧よりも小さい電圧とされる。
【0038】
なお、表示可能な階調を0%〜100%とした場合に、例えば、表示OFF状態は、5%以下の階調とされ、表示ON状態は、95%以上の階調とされる。また、表示可能な階調を0%〜100%とした場合に、例えば、表示OFF状態は、1%以下の階調とされ、表示ON状態は99%以上の階調とすれば、より精度を向上することができる。理想的には、表示可能な階調を0%〜100%とした場合に、例えば、表示OFF状態は、0%の階調とされ、表示ON状態は100%の階調とされる。なお、モノクロ液晶においては、表示OFF状態では黒表示となり、表示ON状態では白表示となる。カラー液晶においては各々の色成分の階調値により、OFF状態およびON状態が定義される。
【0039】
本実施形態において、検出回路40は、表示部20に表示される画像に応じて検出電極31に生じる検出容量値Crawを補正し、補正後の補正容量値に基づき検出動作を行う。以下、検出電極31に生じる検出容量値Crawの補正概念について説明する。以下の説明において、Sフレーム(Sは、整数値)における各値には「
S」を付記している。例えば、Sフレームにおいて検出電極31に生じる検出容量値を「Craw
S」とする。
【0040】
具体的に、本実施形態では、表示OFF状態における液晶容量値Cgoffを基準容量値Cgrefとし、画素25ごとに、検出タイミングにおける液晶容量値Cg
Sre(r)と基準容量値Cgrefとの差分値ΔCg
S(r)を求め、画素25ごとに求めた差分値ΔCg
S(r)を加算し、当該加算した値を検出容量値Craw
Sから差し引く。これにより、表示部20に表示される画像に依らず、検出電極31に重なる全ての画素25が表示OFF状態であると見做した補正容量値Ccor
Sを算出することができる。補正容量値Ccor
Sは、下記(1)式及び下記(2)式で表せる。
【0042】
ΔCg
S(r)=Cg
Sre(r)−Cgref ・・・(2)
【0043】
ここで、まず、表示部20に表示される画像が、表示OFF状態の画素25と表示ON状態の画素25とで構成された2階調の静止画像である場合について考える。1つの検出電極31にオーバーラップして配置されたR個の画素25のうち、表示ON状態である第1階調の画素数をR
1、表示OFF状態である第2階調の画素数をR
2、表示ON状態である第1階調の画素25の液晶容量値Cg
Sre1(r)と基準容量値Cgrefとの差分値をΔCg
S1(r)、表示OFF状態である第2階調の画素25の液晶容量値Cg
Sre2(r)と基準容量値Cgrefとの差分値をΔCg
S2(r)としたとき、上記(1)式は、下記(3)式で表せる。
【0044】
Ccor
S=Craw
S−(R
1×ΔCg
S1(r)+R
2×ΔCg
S2(r)) ・・・(3)
【0045】
すなわち、補正容量値Ccor
Sは、表示部20に表示される画像を構成する画素25において、表示ON状態である第1階調の画素数R
1と、表示OFF状態である第2階調の画素数R
2との比率で決まる。このとき、上述したように、表示OFF状態における液晶容量値Cgoffを基準容量値Cgrefとすると、表示OFF状態である第2階調の画素25では、上記(2)式で示されるΔCg
S2(r)の値は0となる。すなわち、上記(3)式は、下記(4)式で表せる。
【0046】
Ccor
S=Craw
S−R
1×ΔCg
S1(r) ・・・(4)
【0047】
すなわち、表示部20に表示される画像が、表示OFF状態である第2階調の画素と表示ON状態である第1階調の画素とで構成された静止画像であるとき、補正容量値Ccor
Sは、表示ON状態である第1階調の画素25の液晶容量値Cg
Sre1(r)(=Cgon)と基準容量値Cgrefとの差分値ΔCg
S1(r)を、表示ON状態である第1階調の画素数R
1で積算し、当該積算した値を検出容量値Craw
Sから差し引くことで求めることができる。
【0048】
次に、表示部20に表示される画像を構成する各画素25の状態がフレーム間で変化する場合について考える。
【0049】
表示部20に表示される画像を構成する各画素25の状態がフレーム間で変化する場合、検出期間Ptにおいて検出される検出容量値Craw
Sに含まれる画素25ごとの液晶容量値Cg
Sre(r)は、各画素25の選択タイミングTpdによって異なる値となる。
【0050】
各画素25は、表示期間Pdにおいて表示ON状態又は表示OFF状態に制御される。例えば、
図2に示すように、1フレーム期間1Fにおいて表示期間Pdと検出期間Ptとを時分割して設けている場合、当該フレーム期間の表示期間Pdにおける表示状態と前フレーム期間における表示状態とが異なると、時間経過に対する液晶層23の応答速度に応じた所定の傾きで液晶容量値Cgが変化する。
図11は、表示OFF状態から表示ON状態に制御された場合の液晶容量の変化の一例を示す図である。
図12は、表示ON状態から表示OFF状態に制御された場合の液晶容量の変化の一例を示す図である。
【0051】
図11に示すように、表示OFF状態から表示ON状態に制御される画素25は、画素25の選択タイミングTpdにおいて、表示OFF状態から表示ON状態に制御される。同様に、
図12に示すように、表示ON状態から表示OFF状態に制御される画素25は、画素25の選択タイミングTpdにおいて、表示ON状態から表示OFF状態に制御される。
【0052】
各画素25の選択タイミングTpdは、各画素25が接続された走査線SGLに走査信号Gate(1),Gate(2),・・・,Gate(N)が供給されたタイミングである。換言すれば、各画素25の選択タイミングTpdは、表示期間Pdにおいてゲートドライバ12が走査線SGLを選択したタイミングである。
【0053】
図11に示すように、画素25の選択タイミングTpdで画素25が表示OFF状態から表示ON状態に制御された場合、時間経過に対して所定の傾きで液晶容量値がCgref(=Cgoff)からCgonまで変化する。このとき、時間経過に対する液晶容量値の傾きを示す係数をk
1とすると、液晶容量値がCgonとなるまでの期間P
ST(r)は、下記(5)式で表せる。
【0054】
P
ST(r)=(Cgon−Cgref)/k
1 ・・・(5)
【0055】
また、
図12に示すように、画素25の選択タイミングTpdで画素25が表示ON状態から表示OFF状態に制御された場合、時間経過に対して所定の傾きで液晶容量値がCgonからCgref(=Cgoff)まで変化する。このとき、時間経過に対する液晶容量値の傾きを示す係数をk
2とすると、液晶容量値がCgref(=Cgoff)となるまでの期間P
ST(r)は、下記(6)式で表せる。
【0056】
P
ST(r)=(Cgref−Cgon)/k
2 ・・・(6)
【0057】
上記(5)式及び上記(6)式において、係数k
1と係数k
2とは絶対値が同値で極性が異なる。具体的には、係数k
1は正極性、係数k
2は負極性である。これらの係数k
1,k
2は、液晶層23の応答速度に応じた所定値である。
図2に示す1フレーム期間(Sフレーム期間)内の画素25の選択タイミングTpdの直前の画素値、すなわち、当該フレーム(Sフレーム)の前フレーム(S−1フレーム)における画素値に対応する液晶容量値をCg
S−1(r)、画素25の選択タイミングTpdの直後の画素値、すなわち、当該フレームにおける画素値に対応する液晶容量値をCg
S(r)、係数k
1,k
2の絶対値をkとすると、上記(5)式及び上記(6)式に示す期間P
ST(r)は、下記(7)式で表せる。
【0058】
P
ST(r)=|Cg
S(r)−Cg
S−1(r)|/k ・・・(7)
【0059】
検出期間Ptにおいて検出される検出容量値Craw
Sに含まれる各画素25の液晶容量値Cg
Sreは、表示期間Pdにおける各画素25の選択タイミングTpdから、検出期間Ptにおいて検出動作の起点となる検出タイミングTptまでの第1期間P
L(n)に依存する。以下、上記(7)式に示した期間P
ST(r)を、「第2期間P
ST(r)」と呼称する。
【0060】
図13を用いて、検出期間Ptにおいて検出される検出容量値Craw
Sに含まれる各画素25の液晶容量値Cg
Sreの及び算出手法について説明する。
図13は、検出期間において検出される検出容量値に含まれる画素ごとの液晶容量値の算出手法を説明するための図である。
図13では、当該フレームの前フレームにおける画素値に対応する液晶容量値Cg
S−1(r)が、当該フレームにおける画素値に対応する液晶容量値Cg
S(r)よりも小さい場合について例示し、当該フレームの前フレームにおける画素値に対応する液晶容量値Cg
S−1(r)が、当該フレームにおける画素値に対応する液晶容量値Cg
S(r)よりも大きい場合についての例示は省略する。以下、n1ライン及びn2ライン(1≦n1<n2≦N)の走査線SGLに接続されている画素25について説明する。
【0061】
図13では、n1ラインの各画素25の選択タイミングをTpd(n1)とし、n2ラインの各画素25の選択タイミングをTpd(n2)としている。また、
図13では、n1ラインの各画素25における液晶容量値Cg
S−1(r)とn2ラインの各画素25における液晶容量値Cg
S−1(r)を同値とし、n1ラインの各画素25における液晶容量値Cg
S(r)とn2ラインの各画素25における液晶容量値Cg
S(r)とを同値としている。
【0062】
図13に示すように、n1ラインの画素25では、画素25の選択タイミングTpd(n1)から検出タイミングTptまでの第1期間P
L(n1)が、液晶容量値がCg
S−1(r)からCg
S(r)となるまでの第2期間P
ST(r)以上(P
L(n1)≧P
ST(r))となっている。この画素25の選択タイミングTpdから検出タイミングTptまでの第1期間P
L(n)が、液晶容量値がCg
S−1(r)からCg
S(r)となるまでの第2期間P
ST(r)以上(P
L(n)≧P
ST(r))となる領域に存在する画素25では、下記(8)式に示すように、検出タイミングTptにおける液晶容量値Cg
SreがCg
S(r)となる。
【0063】
図13に示すように、n1ラインの画素25では、画素25の選択タイミングTpd(n1)から検出タイミングTptまでの第1期間P
L(n1)が、液晶容量値がCg
S−1(r)からCg
S(r)となるまでの第2期間P
ST(r)以上(P
L(n1)≧P
ST(r))となっている。この画素25の選択タイミングTpd(n)から検出タイミングTptまでの第1期間P
L(n)が、各画素25の選択タイミングTpdから画素25の画素値に対応する液晶容量値となるまでの第2期間P
ST(r)以上(P
L(n)≧P
ST(r))となる領域に存在する画素25では、補正容量値Ccor
Sの算出に用いる液晶容量値Cg
Sre(r)は、下記(8)式で表せる。
【0064】
Cg
Sre(r)=Cg
S(r) ・・・(8)
【0065】
一方、n2ラインの画素25では、画素25の選択タイミングTpd(n2)から検出タイミングTptまでの第1期間P
L(n2)が、液晶容量値がCg
S−1(r)からCg
S(r)となるまでの第2期間P
ST(r)未満(P
L(n2)<P
ST(r))となっている。この各画素25の選択タイミングTpd(n)から検出タイミングTptまでの第1期間P
L(n)が、各画素25の選択タイミングTpdから画素25の画素値に対応する液晶容量値となるまでの第2期間P
ST(r)未満(P
L(n)<P
ST(r))となる領域に存在する画素25では、補正容量値CcorSの算出に用いる液晶容量値Cg
Sre(r)は、下記(9)式及び下記(10)式で表せる。
【0066】
Cg
Sre(r)=(1−α)Cg
S−1(r)+αCg
S(r) ・・・(9)
【0067】
α=P
L(n)/P
ST(r) ・・・(10)
【0068】
上記(8)式、又は、上記(9)式及び上記(10)式を用いて算出した画素25の液晶容量値Cg
Sre(r)を用いて、上記(1)式及び上記(2)式により補正容量値CcorSを算出することにより、表示部20に表示される画像に依らず、検出電極31に重なる全ての画素25が表示OFF状態であると見做した補正容量値Ccor
Sを算出することができる。
【0069】
ここで、各フレームにおける各画素25の状態が表示OFF状態と表示ON状態との何れかを取り得る場合、すなわち、表示部20に表示される画像が、表示OFF状態の画素25と表示ON状態の画素25との2階調で表される場合について考える。
図14は、画素の状態が表示OFF状態と表示ON状態との何れかを取り得る場合の表示部上における領域を示す図である。
図15は、
図14に示す各領域における画素の画素値に対応する液晶容量値を示す図である。
図14及び
図15では、各画素25の選択タイミングTpd(n)から検出タイミングTptまでの第1期間P
L(n)が、画素25の表示OFF状態における画素値に対応する液晶容量値Cgoff(=Cgref)から画素25の表示ON状態における画素値に対応する液晶容量値Cgonとなるまでの第2期間P
ST(r)以上(P
L(n)≧P
ST(r))となる領域(第1領域)をA、各画素25の選択タイミングTpd(n)から検出タイミングTptまでの第1期間P
L(n)が、画素25の表示OFF状態における画素値に対応する液晶容量値Cgoff(=Cgref)から画素25の表示ON状態における画素値に対応する液晶容量値Cgonとなるまでの第2期間P
ST(r)未満(P
L(n)<P
ST(r))となる領域(第2領域)をBとしている。
【0070】
画素25が前フレームの表示OFF状態から表示ON状態に制御される場合、
図14に示す1ライン目からtライン目までの領域A(第1領域)に存在する画素25における液晶容量値Cg
Sre(r)は、上記(8)を変形した下記(11)式で表せる(
図15参照)。
【0071】
Cg
Sre(r)=Cgon ・・・(11)
【0072】
また、
図14に示すt+1ライン目からNライン目までの領域B(第2領域)に存在する画素25における液晶容量値Cg
Sre(r)は、上記(9)式を変形した下記(12)式で表せる(
図15参照)。
【0073】
Cg
Sre(r)=(1−α)Cgoff+αCgon ・・・(12)
【0074】
画素25が前フレームの表示ON状態から表示OFF状態に制御される場合、
図14に示す1ライン目からtライン目までの領域A(第1領域)に存在する画素25における液晶容量値Cg
Sre(r)は、上記(8)を変形した下記(13)式で表せる(
図15参照)。
【0075】
Cg
Sre(r)=Cgoff(=Cgref) ・・・(13)
【0076】
また、
図14に示すt+1ライン目からNライン目までの領域B(第2領域)に存在する画素25における液晶容量値Cg
Sre(r)は、上記(9)式を変形した下記(14)式で表せる(
図15参照)。
【0077】
Cg
Sre(r)=(1−α)Cgon+αCgoff ・・・(14)
【0078】
画素25が前フレームから表示OFF状態のまま変化しない場合、
図14に示す1ライン目からNライン目までの全ての領域に存在する画素25において、液晶容量値Cg
Sre(r)は、上記(8)を変形した下記(15)式で表せる(
図15参照)。
【0079】
Cg
Sre(r)=Cgoff(=Cgref) ・・・(15)
【0080】
画素25が前フレームから表示ON状態のまま変化しない場合、
図14に示す1ライン目からNライン目までの全ての領域に存在する画素25において、液晶容量値Cg
Sre(r)は、上記(8)を変形した下記(16)式で表せる(
図15参照)。
【0081】
Cg
Sre(r)=Cgon ・・・(16)
【0082】
図16は、第1期間と第2期間との比率を係数化した図である。
図16では、領域B(第2領域)における第1期間P
L(n)と第2期間P
ST(r)との比率α(=P
L(n)/P
ST(r))を、α(t+1),α(t+2),・・・,α(N)としている。
【0083】
各画素25の状態が表示OFF状態と表示ON状態との何れかを取り得る場合、表示OFF状態における液晶容量値Cgoff(=Cgref)、表示ON状態における液晶容量値Cgon、及び第2期間P
ST(r)は、固定値と見做すことができる。
【0084】
すなわち、領域A(第1領域)に存在する画素25では、液晶容量値Cg
Sre(r)は常に当該フレームの画素25の表示状態(表示OFF状態又は表示ON状態)における液晶容量値(Cgoff(=Cgref)又はCgon)となる。また、領域B(第2領域)に存在する画素25において、第1期間P
L(n)は、画素25が存在する走査線(ライン)で決まる変数となる。従って、
図16に示すように、領域B(第2領域)に存在する画素25の算出に用いる第1期間P
L(n)と第2期間P
ST(r)との比率α(=P
L(n)/P
ST(r))を、画素25が存在する走査線(ライン)に応じた係数とすることにより、各画素25が存在する領域(より具体的には、画素25が存在する走査線(ライン))、前フレームにおける画素25ごとの表示状態(表示OFF状態又は表示ON状態)、及び当該フレームにおける画素25ごとの表示状態(表示OFF状態又は表示ON状態)を画素情報として得ることで、液晶容量値Cg
Sre(r)を導出することができる。
【0085】
より具体的には、第1期間P
L(n)が第2期間P
ST(r)以上(P
L(n)≧P
ST(r))であるとき、換言すれば、第1期間P
L(n)と第2期間P
ST(r)との比率α(=P
L(n)/P
ST(r))が1以上であるとき、上記(8)式に示すように、当該フレームの画素25の表示状態(表示OFF状態又は表示ON状態)における液晶容量値(Cgoff(=Cgref)又はCgon)を、検出タイミングにおける液晶容量値Cg
Sre(r)とする。また、第1期間P
L(n)が第2期間P
ST(r)未満(P
L(n)<P
ST(r))であるとき、換言すれば、第1期間P
L(n)と第2期間P
ST(r)との比率α(=P
L(n)/P
ST(r))が1未満であるとき、
図16に示す第1期間P
L(n)と第2期間P
ST(r)との比率α(=P
L(n)/P
ST(r))を上記(9)式に代入して、検出タイミングにおける画素25ごとの液晶容量値Cg
Sre(r)を算出する。このようにして算出した検出タイミングにおける画素25ごとの液晶容量値Cg
Sre(r)を用いて、上記(1)式及び上記(2)式により補正容量値Ccor
Sを算出することにより、検出電極31に重なる全ての画素25が表示OFF状態であると見做した補正容量値Ccor
Sを算出することができる。
【0086】
次に、各画素25が表示OFF状態から表示ON状態までの間の中間階調を取り得る場合、すなわち、表示部20に表示される画像が、表示OFF状態と表示ON状態とを含む3階調以上の複数階調で表される場合について考える。
図17は、画素の状態が中間階調を取り得る場合の液晶容量の変化を示す図である。
【0087】
表示部20に表示される画像が、例えば、256階調の画素で構成され、フレーム間で階調が変化する場合、フレームごとの各画素25の液晶容量値は、表示OFF状態における液晶容量値Cgoff(=Cgref)から表示ON状態における液晶容量値Cgonまでの範囲内において、フレームごとの各画素25の階調値に応じた値となる。この場合、
図17に示すように、前フレームにおける画素値(階調値)に対応する液晶容量値Cg
S−1(r)が、当該フレームにおける画素値(階調値)に対応する液晶容量値Cg
S(r)となるまでの第2期間P
ST(r)の値は、液晶容量値Cg
S−1(r)及び液晶容量値Cg
S(r)によって変動する。具体的に、表示部20が256階調の画素25で構成される場合、第2期間P
ST(r)の値が256×256=65536通り存在することとなる。このため、
図16に示すように第1期間P
L(n)と第2期間P
ST(r)との比率を係数化して画素25ごとの液晶容量値Cg
Sre(r)を導出するよりも、上述したように、上記(8)式、又は、上記(9)式及び上記(10)式を用いて、画素25ごとの液晶容量値Cg
Sre(r)を算出することが望ましい。
【0088】
以下、実施形態に係る液晶表示装置1において、画素25の画素値(階調値)に依らず補正容量値Ccor
Sを算出可能な補正容量値算出処理について、
図18を参照して説明する。
図18は、実施形態に係る検出装置における補正容量値算出処理の一例を示すフローチャートである。
図18では、
図2に示すように、1フレーム期間1Fにおいて表示期間Pdと検出期間Ptとを時分割して設けている場合の処理について説明する。
【0089】
図18に示す補正容量値算出処理の前提条件として、検出回路40の記憶部42には、容量値補正部41において検出容量値Craw
Sを補正するための各種パラメータが予め記憶されている。
【0090】
図19は、各画素の画素値(階調値)に対応する液晶容量値テーブルの一例を示す図である。
図20は、各画素が接続された走査線に対応する第1期間テーブルの一例を示す図である。
【0091】
記憶部42には、容量値補正部41において検出容量値Craw
Sを補正するための各種パラメータとして、各画素25の画素値(階調値)に対応する液晶容量値Cgが、
図19に示す液晶容量値テーブルとして記憶されている。表示OFF状態における基準容量値Cgrefは、
図19に示す液晶容量値テーブルにおいて、画素値(階調値)0における液晶容量値として記憶されている。
【0092】
また、記憶部42には、各画素25が接続された走査線(ライン)に対応する第1期間P
L(n)が、
図20に示す第1期間テーブルとして記憶されている。また、記憶部42には、液晶層23の応答速度に応じた係数の絶対値k(以下、単に「係数k」とも称する)が記憶されている。
【0093】
なお、
図19に示す液晶容量値テーブル、
図20に示す第1期間テーブル、及び係数kは、制御部100が保持する態様であっても良い。また、
図19に示す例では、画素25が256階調、すなわち階調値が8bitデータである例を示しているが、本開示は画素25の階調数により限定されるものではない。
【0094】
容量値補正部41は、例えば制御部100から入力される画素情報に基づき、検出電極31に重なる画素25ごとの前回のフレーム期間S−1における画素値(階調値)に対応する液晶容量値Cg
S−1(r)、今回のフレーム期間Sにおける画素値(階調値)に対応する液晶容量値Cg
S(r)、基準容量値Cgref、各画素25の選択タイミングTpdから検出タイミングTptまでの第1期間P
L(n)、及び係数kを記憶部42から取得する(ステップS101)。なお、例えば制御部100から入力される画素情報は、各画素25が存在するライン、前回のフレーム期間S−1における画素25ごとの画素値(階調値)、及び今回のフレーム期間Sにおける画素25ごとの画素値(階調値)等を含む。
【0095】
続いて、容量値補正部41は、上記(7)式を用いて、各画素25の選択タイミングTpdから液晶容量値Cg
S(r)に達するまでの第2期間P
ST(r)を算出する(ステップS102)。
【0096】
容量値補正部41は、第1期間P
L(n)が第2期間P
ST(r)以上(P
L(n)≧P
ST(r))であるか否かを判定する(ステップS103)。
【0097】
第1期間P
L(n)が第2期間P
ST(r)以上(P
L(n)≧P
ST(r))である場合(ステップS103;Yes)、換言すれば、第1期間P
L(n)と第2期間P
ST(r)との比率α(=P
L(n)/P
ST(r))が1以上であるとき、容量値補正部41は、上記(8)式に示すように、今回のフレーム期間Sにおける画素値に対応する液晶容量値Cg
S(r)を検出タイミングにおける画素25ごとの液晶容量値Cg
Sre(r)として(ステップS104)、上記(1)式及び上記(2)式により補正容量値Ccor
Sを算出する(ステップS106)。
【0098】
第1期間P
L(n)が第2期間P
ST(r)未満(P
L(n)<P
ST(r))である場合(ステップS103;No)、換言すれば、第1期間P
L(n)と第2期間P
ST(r)との比率α(=P
L(n)/P
ST(r))が1未満であるとき、容量値補正部41は、上記(9)式及び上記(10)式を用いて、検出タイミングにおける画素25ごとの液晶容量値Cg
Sre(r)を算出し(ステップS105)、算出した検出タイミングにおける画素25ごとの液晶容量値Cg
Sre(r)を用いて、上記(1)式及び上記(2)式により補正容量値Ccor
Sを算出する(ステップS106)。
【0099】
これにより、表示部20に表示される画像に依らず、検出電極31に重なる全ての画素25が表示OFF状態であると見做した補正容量値Ccor
Sを算出することができる。
【0100】
容量値補正部41は、全ての検出電極31に生じる検出容量値Craw
Sに対して、
図18に示す補正容量値算出処理を実施する。これにより、表示動作に伴う検出電極31の容量値の変化による検出精度の低下を抑制することができ、適切にタッチ検出を行うことができる。
【0101】
本実施形態により、液晶表示装置1は、表示動作に伴う検出電極の容量値の変化による検出精度の低下を抑制することができる。
【0102】
以上、本開示の好適な実施の形態を説明したが、本開示はこのような実施の形態に限定されるものではない。実施の形態で開示された内容はあくまで一例にすぎず、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で行われた適宜の変更についても、当然に本発明の技術的範囲に属する。