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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-189711(P2021-189711A)
(43)【公開日】2021年12月13日
(54)【発明の名称】感知器および端子台
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/06 20060101AFI20211115BHJP
   H05K 7/00 20060101ALI20211115BHJP
   H01R 9/22 20060101ALI20211115BHJP
   H01R 4/48 20060101ALI20211115BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20211115BHJP
【FI】
   G08B17/06 K
   H05K7/00 P
   H01R9/22
   H01R4/48 A
   G08B17/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-93891(P2020-93891)
(22)【出願日】2020年5月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】大下 剛
(72)【発明者】
【氏名】秋山 信幸
(72)【発明者】
【氏名】安藤 雅人
【テーマコード(参考)】
4E352
5C085
5E086
5G405
【Fターム(参考)】
4E352BB02
4E352BB05
4E352BB20
4E352CC02
4E352CC12
4E352CC14
4E352CC52
4E352CC53
4E352DD05
4E352DR02
4E352DR25
4E352GG10
5C085AA01
5C085AB01
5C085BA12
5C085CA30
5C085FA17
5E086DD03
5E086DD34
5E086DD42
5E086LL05
5E086LL16
5G405AA10
5G405AB01
5G405CA60
5G405FA12
(57)【要約】
【課題】差込み穴に電線端部を差し込んだ際に、電気的な接続に不良が生じるのを防止することができる差込み式配線接続用端子を備えた感知器を提供する。
【解決手段】本体ケース(12)と該本体ケースの開口側を覆う本体カバー(13)とからなる筐体の内部に、熱、煙、有害ガスなどの事象を検出するための検出素子(11)および検出回路を構成する部品が実装された回路基板(14)が収納され、本体ケースには、筐体内部の回路基板に外部からの電線を電気的に接続するための端子台(18)が設けられている感知器において、前記端子台は、回路基板に電気的に接続される金属製の端子と、該端子を収納する絶縁材料からなる端子台ケースと、前記端子の一部と接触可能な押さえバネを備え、端子台ケースの電線差込み側の所定部位に、電線の端部の挿入方向を端子の壁部に近づけるように偏位させる機能を有する差込み口を形成するようにした。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースと該本体ケースの開口側を覆う本体カバーとからなる筐体の内部に、熱、煙、有害ガスなどの事象を検出するための検出素子および検出回路を構成する部品が実装された回路基板が収容され、前記本体ケースには、前記筐体の内部の前記回路基板に外部からの電線を電気的に接続するための端子台が設けられている感知器であって、
前記端子台は、前記回路基板に電気的に接続される金属製の端子と、該端子を収納する絶縁材料からなる端子台ケースと、前記端子の一部と接触可能な押さえバネと、を備え、
前記端子台ケースの電線差込み側の所定部位に、電線の端部の挿入方向を前記端子の壁部に近づけるように偏位させる機能を有する差込み口が形成されていることを特徴とする感知器。
【請求項2】
前記端子は少なくとも一面が開口した箱形をなし、前記端子台ケースには前記端子を収納する収納部が設けられ、前記差込み口は箱形をなす前記端子の開口に面する前記端子台ケースの壁体に形成され、前記押さえバネは箱形をなす前記端子の内側に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の感知器。
【請求項3】
前記差込み口は、差込み穴と該差込み穴の口径よりも口径の小さな誘導孔とからなり、箱形をなす前記端子の開口の中央に前記差込み穴が形成され、前記差込み穴の奥部から当該差込み穴の中心軸に対して、中心軸が奥へ向かうほど前記端子の壁部に近づく斜め方向となるように前記誘導孔が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の感知器。
【請求項4】
前記差込み口は、差込み穴と該差込み穴の口径よりも口径の小さな誘導孔とからなり、箱形をなす前記端子の開口の中央から前記端子の壁部に近い側に偏位した位置に前記差込み穴が形成され、前記差込み穴の奥部から前記差込み穴の中心軸の延長方向に、中心軸が一致した状態で、前記誘導孔が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の感知器。
【請求項5】
前記差込み口は、差込み穴と該差込み穴の口径よりも口径の小さな誘導孔とからなり、前記端子台ケースの前記壁体の、前記端子の開口の中央から前記端子の壁部に近い側に偏位した位置に、前記差込み穴が形成され、前記差込み穴の奥部から当該差込み穴の中心軸に対して、前記端子の壁部に近い側に中心軸が偏位した状態で前記差込み穴の口径よりも口径の小さな誘導孔が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の感知器。
【請求項6】
前記差込み穴の奥部の前記誘導孔との境界部にはテーパ面が形成されていることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の感知器。
【請求項7】
回路基板に電気的に接続される金属製の端子と、該端子を収納する絶縁材料からなる端子台ケースと、前記端子の一部と接触可能な押さえバネと、を備え、
前記端子台ケースの電線差込み側の所定部位に、電線の端部の挿入方向を前記端子の壁部に近づけるように偏位させる機能を有する差込み口が形成されていることを特徴とする端子台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感知器のケーブル差込み穴構造に関し、例えば熱や煙を検出するための検出素子を備えた火災感知器に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
感知器は、一般に建造物の天井面に設置されており、配管の中や天井裏に敷設されている電線を介して受信機または中継器に接続され、電源や信号の授受を行っている。
感知器には配線接続用の端子が設けられている。従来、感知器の配線接続用端子には、被覆線等の電線の端部をネジで端子に接続するネジ式端子の他、電線の端部を差し込むだけで結線が可能なバネ式差込み端子がある。
【0003】
このうち、バネ式差込み端子は、差込み端子内のバネ固定機構により、電線の端部を差込み穴に挿入するだけで簡単に接続でき簡単には引き抜けない構造になっており、ネジ式端子に比べて結線の手間が少ないという利点がある。なお、バネ式差込み端子を備えた感知器は、例えば特許文献1や2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−246450号公報
【特許文献2】特開2018−67026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、バネ式差込み端子を備えた感知器においては、適正な電線径の指定はあるものの、実際は電線差込み穴の口径と電線径との差が大きいことがあり、その場合、感知器の端子台の差込み穴に電線を差し込む際、差し込む方向が偏りやすく、図6(B)に示すように、電線20の端部の導線21が斜めに差し込まれると、端子台18の内部のバネ固定部や電気的接触部から外れてしまい、しっかり固定(把持)されなかったり、電気的接続が不良になったりすることがあるといった課題があった。なお、図6(A)は電線20の正しい挿入状態である。
【0006】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、差込み穴に電線端部を差し込んだ際に、端子台内部のバネ固定部や電気的接触部から外れてしまうことがなく、しっかり固定(把持)することができ、これにより電気的な接続に不良が生じるのを防止することができる差込み式配線接続用端子を備えた感知器および端子台を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本出願の発明は、
本体ケースと該本体ケースの開口側を覆う本体カバーとからなる筐体の内部に、熱、煙、有害ガスなどの事象を検出するための検出素子および検出回路を構成する部品が実装された回路基板が収容され、前記本体ケースには、前記筐体の内部の前記回路基板に外部からの電線を電気的に接続するための端子台が設けられている感知器において、
前記端子台は、前記回路基板に電気的に接続される金属製の端子と、該端子を収納する絶縁材料からなる端子台ケースと、前記端子の一部と接触可能な押さえバネと、を備え、
前記端子台ケースの電線差込み側の所定部位に、電線の端部の挿入方向を前記端子の壁部に近づけるように偏位させる機能を有する差込み口が形成されているようにしたものである。
本出願の他の発明に係る端子台は、前記回路基板に電気的に接続される金属製の端子と、該端子を収納する絶縁材料からなる端子台ケースと、前記端子の一部と接触可能な押さえバネと、を備え、
前記端子台ケースの電線差込み側の所定部位に、電線の端部の挿入方向を前記端子の壁部に近づけるように偏位させる機能を有する差込み口が形成されているようにしたものである。
【0008】
上記のような構成を有する感知器および端子台によれば、差込み穴が電線の端部の挿入方向を前記端子の壁部に近づけるように偏位させる機能を有しているため、差込み穴に電線端部を差し込んだ際に、端子台内部のバネ固定部や電気的接触部から外れてしまうことがなく、しっかり固定(把持)することができ、これにより電気的な接続に不良が生じるのを防止することができる。
【0009】
ここで、望ましくは、前記端子は少なくとも一面が開口した箱形をなし、前記端子台ケースには前記端子を収納する収納部が設けられ、前記差込み口は箱形をなす前記端子の開口に面する前記端子台ケースの壁体に形成され、前記押さえバネは箱形をなす前記端子の内側に配設されているように構成する。
上記のような構成によれば、押さえバネを箱形の端子内に安定した姿勢で保持しつつ、差込み穴を端子台ケースの適切な位置に設けることができる。
【0010】
さらに、望ましくは、前記差込み口は、差込み穴と該差込み穴の口径よりも口径の小さな誘導孔とからなり、箱形をなす前記端子の開口の中央に前記差込み穴が形成され、前記差込み穴の奥部から当該差込み穴の中心軸に対して、中心軸が奥へ向かうほど前記端子の壁部に近づく斜め方向となるように前記誘導孔が形成されているように構成する。
かかる構成によれば、差込み穴の奥部に形成された斜め方向の誘導孔によって、挿入した電線の端部を、端子の壁部に近づけるように誘導することができ、差込み穴に電線端部を差し込んだ際に、端子内部のバネ固定部や電気的接触部から外れてしまうことがなく、しっかり固定(把持)することができる。
【0011】
また、望ましくは、前記差込み口は、差込み穴と該差込み穴の口径よりも口径の小さな誘導孔とからなり、箱形をなす前記端子の開口の中央から前記端子の壁部に近い側に偏位した位置に前記差込み穴が形成され、前記差込み穴の奥部から前記差込み穴の中心軸の延長方向に、中心軸が一致した状態で、前記誘導孔が形成されているように構成する。
かかる構成によれば、差込み穴の中心軸が端子の壁部に近い側に偏位し中心軸が一致した状態で誘導孔が形成されているため、挿入した電線の端部を、端子の壁部に沿って誘導することができ、それによって端子内部のバネ固定部や電気的接触部から外れてしまうことがなく、しっかり固定(把持)することができる。
【0012】
また、望ましくは、前記差込み口は、差込み穴と該差込み穴の口径よりも口径の小さな誘導孔とからなり、前記端子台ケースの前記壁体の、前記端子の開口の中央から前記端子の壁部に近い側に偏位した位置に、前記差込み穴が形成され、前記差込み穴の奥部から当該差込み穴の中心軸に対して、前記端子の壁部に近い側に中心軸が偏位した状態で前記差込み穴の口径よりも口径の小さな誘導孔が形成されているように構成する。
かかる構成によれば、差込み穴の中心軸に対して、中心軸が端子の壁部に近い側に偏位した状態で誘導孔が形成されているため、偏位した誘導孔によって、挿入した電線の端部を端子の壁部に近づけるように誘導することができ、それによって端子内部のバネ固定部や電気的接触部から外れてしまうことがなく、しっかり固定(把持)することができる。
【0013】
さらに、望ましくは、前記差込み穴の奥部の前記誘導孔との境界部にはテーパ面が形成されているように構成する。
かかる構成によれば、挿入した電線の先端が境界部の段差に引っかかるのを防止して、円滑に挿入することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る感知器および端子台によれば、差込み穴に電線端部を差し込んだ際に、端子台内部のバネ固定部や電気的接触部から外れてしまうことがなく、しっかり固定(把持)することができ、これにより電気的な接続に不良が生じるのを防止することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(A)は本発明を適用して好適な感知器の一例としての熱感知器の外観を示す斜視図、(B)はその内部構造の一例を示す正面断面図である。
図2】(A)は実施例の感知器の端子台の基本的な構造を示す平面断面図、(B)は端子台ケース内に収納される端子と押さえバネおよび抜け防止バネの組立て状態を示す斜視図である。
図3】(a)〜(c)はそれぞれ感知器に設けられる端子台の実施例を示す平面断面図である。
図4】(a)〜(c)は、図3(a)〜(c)に示す端子台に電線端部を挿入した様子を示す平面断面図である。
図5図3(c)の実施例の端子台の応用例を示す平面断面図である。
図6】従来の感知器における端子台の構造の一例を示すもので、(a)は電線の正しい挿入状態を示す平面断面図、(b)、(c)は電線の不適切な挿入状態を示す平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明を熱感知型の火災感知器(熱感知器)に適用した場合の実施形態について説明する。
図1(A)および(B)には、本発明を適用して好適な熱感知器の外観と内部構造の一例が示されている。
本実施例の熱感知器10は、図1(A)に示すように、熱を検出する回路を構成する部品を収容するための収容凹部を有し建造物の天井面に設けられている取付け用開口に設置可能な有底円筒形の本体ケース12と、この本体ケース12の下側の開口部を覆うように本体ケース12に結合される本体カバー13とを備え、本体ケース12と本体カバー13とにより内部に収容空間を有する筐体が形成されている。
【0017】
そして、前記本体ケース12の上面に、配管の中や天井裏に敷設されている電線を筐体内部の回路基板と電気的に接続するための複数(図では3個)の端子部18A〜18Cを有する端子台18が設けられている。
本実施例の熱感知器10は、感熱素子としてサーミスタを用い火災に伴い発生した熱によって熱せられた空気がサーミスタに接触することで生じる電気抵抗の変化を検出して火災を検知可能な感知器である。
【0018】
本体ケース12は、図1(B)に示すように、内部に回路基板14を収容する空間を有しており、回路基板14の中央にはサーミスタ11の先端が下向きとなる姿勢で実装されている。そして、サーミスタ11の先端部を覆うようにして、整流フィン13aと一体化したプロテクタ部13Aを備えた本体カバー13が本体ケース12の下面に結合されている。
【0019】
端子台18には、3個の端子部18A〜18Cが設けられている。これらの端子部のうち、端子部18Aと18Bの前壁には、それぞれ1本の電線の端部を挿入するための差込み穴18aと18bが形成され、端子部18Cの前壁には2本の電線の端部を挿入するための差込み穴18cと18dが形成されている。
各端子部18A〜18Cの内部には、後に詳しく説明するように、前記回路基板14に接続された複数の端子および各端子に対して付勢された状態で接合されている複数の端子用板バネが配設されており、差込み穴18a〜18dに電線の端部を挿入すると芯線が対応する端子と板バネとの間に挟持されて、電気的な導通がとられるように構成されている。
【0020】
回路基板14には、前記サーミスタ11が挿通可能な円筒部15aを有し上記回路基板14の表面にサーミスタ11の基部を挿通した状態にて接合された逆すり鉢状の素子サポート部材15が設けられており、この素子サポート部材15の上部の円筒部15a内に樹脂16が充填、固化されることでサーミスタ11の基部を支えるように構成されている。樹脂16を充填しない構成も可能である。
【0021】
上記素子サポート部材15は、合成樹脂で形成されており、サーミスタ11を挿通するための円筒部15aと、該円筒部15aから斜め下方へ向かって広がるテーパ部15bと、テーパ部15bの下端から水平方向外側へ延びる鍔部15cと、鍔部15cの上面から上方へ向かって立設され先端に外向きの爪を有する複数本(例えば3本)の取付け用の係止片15dとが設けられている。
そして、回路基板14の対応する部位には、前記係止片15dの爪が挿通可能な係合穴が、係止片15dの数に対応した数だけ形成されおり、係止片15dによって素子サポート部材15が回路基板14に装着される。
【0022】
次に、図2図5を用いて上記端子部18A〜18Cの具体的な構造の実施例について説明する。先ず図2を用いて端子部18A(18B)の基本的な構造について説明する。
図2(A)に示すように、端子部18A(18B)は、合成樹脂のような絶縁材で形成され直方体状の収納凹部81aを有する端子台ケース81と、この端子台ケース81の収納凹部81a内に収納された金属製の端子82と、挿入された電線の端部を押さえ込むための押さえバネ83と、挿入された電線の端部が抜けないようにするための抜け防止バネ84と、端子82を本体ケース12に固定しつつ内部の回路基板14の所定部位に電気的接続するための固定ネジ85とを備える。そして、端子台ケース81の前壁81bに、電線の端部を挿入するための差込み穴18aとそれに連続する誘導孔18eとが形成されている。
【0023】
端子82は、図2(B)に示すように、前壁全体と右側壁の上部が開口した箱形をなすように形成されており、その内部に、「く」の字状の押さえバネ83と抜け防止バネ84が、上端が端子82の上壁に接触するように圧縮変形された状態で収納されている。なお、抜け防止バネ84は押さえバネ83よりも差込み口に近い側に配設されている。また、押さえバネ83は上端が「へ」の字状に折曲されており、その折曲片の稜線部と端子82の上壁との間に電線の端部が挿入されると、バネの復元力で折曲片の稜線部が電線の端部を端子82の上壁82aに向かって押圧する。これによって、電線の端部を挟み込んで押さえ込むとともに、電線の端部と端子82とを電気的に導通させる。
【0024】
一方、抜け防止バネ84は上端部のエッジが端子82の上壁に当接されており、そのエッジと端子82の上壁82aとの間に電線の端部が挿入され、その状態で引き抜き方向への力が作用すると、抜け防止バネ84が一方向への移動のみ許容するラチェット爪のように働いて、上端部のエッジが電線の周面に食い込んで電線端部を端子82の上壁82aとの間に挟み込んで抜け止めを行うように構成されている。
【0025】
さらに、端子82の上壁82aには、図2(B)に示すように、抜け防止バネ84の上面に対応した部位に切欠き82bが形成されており、この切欠き82bに図1(A)に示すノブ86が係合され、ノブ86が上から下方へ押圧されると抜け防止バネ84が変形し、上端の縁部が端子82の上壁82aとの間に隙間が生じ、電線の端部を引き抜くことができるように構成されている。
また、端子82の後壁には、後方へ向かって突出する固定翼片82cが設けられており、この固定翼片82cに上記固定ネジ85を挿通するためのネジ挿通孔82dが形成されている。図示しないが、感知器の本体ケース12の上壁には、上記固定翼片82bのネジ挿通孔82dに対応する部位にネジ挿通孔が形成されており、固定ネジ85をこれらのネジ挿通孔に挿通させて先端の雄ネジ部を回路基板に螺合させることができるように構成されている。
【0026】
図3(a)〜(c)はそれぞれ端子部18A(18B)の異なる実施例を示すもので、図3(a)に示す第1の実施例の端子部18A(18B)においては、端子台ケース81の前壁81bの左右方向中央に、電線の差込み穴18a(18b)が形成されているとともに、差込み穴18a(18b)と端子台ケース81の内部空間とを連通するように斜め方向の誘導孔18eが形成されている。そして、この誘導孔18eは、その軸心が、入り口すなわち差込み穴18aから遠ざかるほど端子82の側壁(図では左側壁)に近づくような角度αを有するように形成されている。誘導孔18eの口径は電線端部の径よりも若干大きく設定され、差込み穴18a(18b)の口径は誘導孔18eの口径よりも大きく設定されている。本明細書では、差込み穴18a(18b)と誘導孔18eとを合わせたものを差し込み口と称する。
【0027】
そのため、差込み穴18a(18b)から端子台ケース81の内部へ向けて電線の端部を挿入すると、図4(a)に示すように、電線20の端部の導線21は誘導孔18eに誘導されて斜め方向へ進入して先端が端子82の側壁に当接し、さらに電線を押し込むと導線21の先端が端子82の側壁に沿って移動しつつ押さえバネ83および抜け防止バネ84の上端と端子82の上壁82aとの間に挿入されることとなる。これにより、図6(B)に示すように、電線の導線21が端子内部のバネ固定部や電気的接触部から外れてしまい、しっかり固定(把持)されなかったり、電気的接続が不良になったりするのを防止することができる。
【0028】
図3(b)は端子部18A(18B)の第2の実施例を示す。この実施例の端子部18A(18B)においては、端子台ケース81の前壁81bの左右方向中央から左側へずれた位置に、電線の差込み穴18a(18b)が形成されている。なお、この実施例においては、差込み穴18a(18b)と端子台ケース81の内部空間とを連通する誘導孔18eは、差込み穴18aの中心軸の延長上に誘導孔18eの中心軸が来る、つまり両方の中心軸が一致するように形成されている。
【0029】
そのため、差込み穴18a(18b)から端子台ケース81の内部へ向けて電線20の端部の導線21を挿入すると、図4(b)に示すように、導線21は誘導孔18eに誘導されて進入して先端が端子82の側壁に沿って移動しつつ押さえバネ83および抜け防止バネ84の上端と端子82の上壁との間に挿入されることとなる。この際、電線の挿入方向が多少ずれたとしても、図6(B)に示すように、電線20の端部の導線21が端子内部のバネ固定部や電気的接触部から外れてしまうのを回避することができる。
【0030】
図3(c)は端子部18A(18B)の第3の実施例を示す。この実施例の端子部18A(18B)においては、端子台ケース81の前壁81bの左右方向中央から左側へずれた位置に、電線の差込み穴18a(18b)が形成されているとともに、差込み穴18a(18b)と端子台ケース81の内部空間とを連通する誘導孔18eは、その中心軸が差込み穴18a(18b)の中心軸よりも左側へずれた位置に来るように、偏心した状態となるように形成されている。また、差込み穴18a(18b)の中心よりも右側の奥部の誘導孔18eとの境界部には、角度βを有し口径を小さくするようなテーパ面18fが形成されている。テーパ面18fの角度βは誘導孔18eの角度αよりも大きく設定される。
【0031】
そのため、差込み穴18a(18b)の中心よりも左側から端子台ケース81の内部へ向けて電線の端部を挿入すると、図4(c)に示すように、電線の端部は誘導孔18eに誘導されて進入して先端が端子82の側壁に沿って移動しつつ押さえバネ83および抜け防止バネ84の上端と端子82の上壁との間に挿入される。また、差込み穴18aの中心よりも右側から端子台ケース81の内部へ向けて電線の端部を挿入すると、電線の端部はテーパ面18fに当たって方向を変え、誘導孔18e内に進入して誘導され、その後、先端が端子82の側壁に沿って移動しつつ押さえバネ83および抜け防止バネ84の上端と端子82の上壁との間に挿入される。これにより、図6(B)に示すように、電線の端部が端子内部のバネ固定部や電気的接触部から外れてしまうのを防止することができる。
【0032】
なお、図3(a)、(b)の実施例の端子部18A(18B)においても、差込み穴18aの奥部の誘導孔18eとの境界部に、周方向に沿ったテーパ面18fが形成されており、挿入した電線の端部が境界部の段差に引っかかるのを防止して、円滑に挿入できるように構成されている。ただし、図3(a)、(b)のものにおいては、差込み穴18aの口径と誘導孔18eの口径との差が充分に小さい場合には、テーパ面18fは省略しても良い。
【0033】
図5には、図3(c)の実施例を端子部18Cに応用した場合の構成が示されている。図5の端子部18Cは、感知器内部の回路基板14の1つの端子に対して外部から2本の電線を接続することを可能にするためのものである。
図5に示すように、この応用例における端子部18Cは、端子台ケース81の内部空間が、図3に示す端子部18A,18Bの内部空間よりも幅が約2倍の大きさを有するように形成され、左右対称形状をなす2個の端子82A,82Bが収納されている。
【0034】
また、端子台ケース81の前壁81bには、2個の電線差込み穴18c,18dが形成されているとともに、差込み穴18c,18dと端子台ケース81の内部空間とを連通する2個の誘導孔18eが、その中心軸が差込み穴18c,18dの中心軸よりもそれぞれ外側へずれた位置に来るように形成されている。さらに、差込み穴18c,18dの奥部には、角度βを有し差込み穴18c,18dに挿入された電線の端部を誘導孔18eへ誘導するためのテーパ面18fがそれぞれ形成されている。これにより、電線の端部が端子内部のバネ固定部や電気的接触部から外れてしまうのを防止と、電気的な接続に不良が生じるのを防止することができる。
【0035】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態のものに限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、3個の端子部18A〜18Cを有する端子台を例にとって説明したが、端子台の端子部の数は3個に限定されるものでなく、任意の数の端子部を設けるようにしても良い。また、上記実施形態においては、押さえバネとして「く」の字型のものを示したが、Z型やΣ型など他の形状の板バネを使用しても良い。
【0036】
さらに、上記実施形態においては、端子台を感知器の本体ケースの上壁に設けたものを例にとって説明したが、端子台を感知器の本体ケースの側部に設けたものにも適用することができる。
また、上記実施形態においては、本発明を熱感知器に適用した場合について説明したが、本発明はそれに限定されるものでなく、煙検知タイプの火災感知器や一酸化炭素などの有害なガスを検知するガス検知器さらには監視システムを構成する人体検知器等、感知器一般に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
10 感知器
11 サーミスタ(感熱素子)
12 本体ケース
13 本体カバー
13A プロテクタ部
14 回路基板
15 素子サポート部材
18 端子台
18A〜18C 端子部
18a〜18d 電線端部の差込み穴
18e 誘導孔
18f テーパ面
81 端子台ケース
82 金属製の端子
83 押さえバネ
84 抜け防止バネ
85 固定ネジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6