【解決手段】実施形態によれば、磁気ヘッドは、第1、第2磁極と、積層体と、を含む。積層体は、第1〜第3磁性層と、第1〜第4非磁性層と、を含む。第1磁性層は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む。第2磁性層は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む。第3磁性層は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む第1元素と、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第2元素と、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的断面図である。
図2は、第1実施形態に係る磁気記録装置を例示する模式的断面図である。
図2に示すように、第1実施形態に係る磁気記録装置210は、磁気ヘッド110と、電気回路20Dと、を含む。磁気記録装置210は、磁気記録媒体80を含んでも良い。磁気記録装置210において、例えば、少なくとも記録動作が行われる。記録動作において、磁気ヘッド110を用いて磁気記録媒体80に情報が記録される。
【0009】
磁気ヘッド110は、記録部60を含む。後述するように、磁気ヘッド110は、再生部を含んでも良い。記録部60は、第1磁極31と、第2磁極32と、積層体20と、を含む、積層体20は、第1磁極31と第2磁極32との間に設けられる。
【0010】
例えば、第1磁極31及び第2磁極32は、磁気回路を形成する。第1磁極31は、例えば、主磁極である。第2磁極32は、例えば、トレーリングシールドである。第1磁極31がトレーリングシールドで、第2磁極32が主磁極でも良い。以下では、第1磁極31が主磁極で、第2磁極32がトレーリングシールドであるとする。
【0011】
磁気記録媒体80から磁気ヘッド110への方向をZ軸方向とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向及びX軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。Z軸方向は、例えばハイト方向に対応する。X軸方向は、例えば、ダウントラック方向に対応する。Y軸方向は、例えば、クロストラック方向に対応する。ダウントラック方向に沿って、磁気記録媒体80と磁気ヘッド110とが相対的に移動する。磁気記録媒体80の所望の位置に、磁気ヘッド110から生じる磁界(記録磁界)が印加される。磁気記録媒体80の所望の位置の磁化が、記録磁界に応じた方向に制御される。これにより、磁気記録媒体80に情報が記録される。
【0012】
第1磁極31から第2磁極32への方向を第1方向D1とする。第1方向D1は、実質的にX軸方向に対応する。第1方向D1は、X軸方向に対して、小さい角度で傾斜しても良い。
【0013】
図2に示すように、コイル30cが設けられる。この例では、コイル30cの一部は、第1磁極31と第2磁極32との間にある。この例では、シールド33が設けられている。X軸方向において、シールド33と第2磁極32との間に第1磁極31がある。コイル30cの別の一部が、シールド33と第1磁極31との間にある。これらの複数の要素の間に、絶縁部30iが設けられる。
【0014】
図2に示すように、記録回路30Dから、コイル30cに記録電流Iwが供給される。第1磁極31から、記録電流Iwに応じた記録磁界が磁気記録媒体80に印加される。
【0015】
図2に示すように、第1磁極31は、媒体対向面30Fを含む。媒体対向面30Fは、例えば、ABS(Air Bearing Surface)である。媒体対向面30Fは、例えば、磁気記録媒体80に対向する。媒体対向面30Fは、例えば、X−Y平面に沿う。
【0016】
図2に示すように、電気回路20Dが、積層体20に電気的に接続される。この例では、積層体20は、第1磁極31及び第2磁極32と電気的に接続される。磁気ヘッド110に、第1端子T1及び第2端子T2が設けられる。第1端子T1は、第1配線W1及び第1磁極31を介して積層体20と電気的に接続される。第2端子T2は、第2配線W2及び第2磁極32を介して積層体20と電気的に接続される。電気回路20Dから、例えば、電流(例えば、直流電流)が積層体20に供給される。
【0017】
図1に示すように、積層体20は、第1磁性層21、第2磁性層22、第3磁性層23、第1非磁性層41、第2非磁性層42及び第3非磁性層43を含む。この例では、第4非磁性層44が設けられている。
【0018】
第2磁性層22は、第1磁極31と第1磁性層21との間に設けられる。第3磁性層23は、第1磁極31と第2磁性層22との間に設けられる。第1非磁性層41は、第1磁性層21と第2磁極32との間に設けられる。第2非磁性層42は、第2磁性層22と第1磁性層21との間に設けられる。第3非磁性層43は、第3磁性層23と第2磁性層22との間に設けられる。第4非磁性層44が設けされる場合において、第4非磁性層44は、第1磁極31と第3磁性層23との間に設けられる。
【0019】
第1磁性層21は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む。第2磁性層22は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む。例えば、第1磁性層21及び第2磁性層22は、正のスピン分極を有する。
【0020】
第3磁性層23は、第1元素及び第2元素を含む。第1元素は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む。第2元素は、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2元素は、例えば、添加元素である。第3磁性層23における第2元素の比率(例えば濃度)は、例えば、1原子%以上80原子%以下である。例えば、第3磁性層23は、負のスピン分極を有する。
【0021】
第1磁性層21及び第2磁性層22は、上記の第2元素を実質的に含まない。または、第1磁性層21及び第2磁性層22における第2元素の濃度は、第3磁性層23における第2元素の濃度よりも低い。
【0022】
第1非磁性層41は、例えば、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第1非磁性層41は、例えば、偏極したスピンを伝搬させる層として機能する。
【0023】
第2非磁性層42は、例えば、Ta、Pt、W、Mo、Ir、Ru、Tb、Rh、Cr及びPdよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2非磁性層42は、例えば、偏極したスピンを減衰させる層として機能する。
【0024】
第3非磁性層43は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第3非磁性層43は、例えば、偏極したスピンを伝搬させる層として機能する。
【0025】
第4非磁性層44は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第4非磁性層44は、例えば、偏極したスピンを伝搬させる層として機能する。
【0026】
図1に示すように、例えば、電気回路20D(
図2参照)から積層体20に供給される電流jc1は、第2磁極32から第1磁極31への向きを有する。電流jc1は、第1磁性層21から第2磁性層22への向きを有する。電子流je1は、第1磁極31から第2磁極32への向きを有する。
【0027】
例えば、積層体20に電流jc1が供給されないときは、第1磁性層21の磁化の向きは、第1磁極31の磁化の向き及び第2磁極32の磁化の向きと実質的に同じである。第1磁極31から出た磁界(記録磁界)の一部は、磁気記録媒体80に向かう。一方、第1磁極31から出た磁界(記録磁界)の別の一部は、磁気記録媒体80に向かうことなく、積層体20を通過して、第2磁極32に入る。このため、第1磁極31から出た記録磁界のうちで磁気記録媒体80に向かう割合は、少ない。
【0028】
積層体20に電流jc1が供給されると、第1磁性層21の磁化の向きは、第1磁極31の磁化の向き及び第2磁極32の磁化の向きに対して反転する。これにより、第1磁極31から出た磁界(記録磁界)は、積層体20に向かい難くなる。このため、第1磁極31から出た記録磁界のうちで磁気記録媒体80に向かう割合が、積層体20に電流jc1が供給されない場合に比べて高くなる。第1磁極31から出た記録磁界が効果的に磁気記録媒体80に印加される。
【0029】
この現象は、第1磁極31と第2磁極32との間の距離(記録ギャップ)が短くなると、より顕著になる。このような積層体20を用いることで、記録ギャップが小さくなった場合でも良好な記録が実施できる。第1実施形態によれば、良好な記録ができる記録ギャップを小さくできる。第1実施形態によれば、記録密度の向上が可能な磁気記録装置を提供できる。
【0030】
一方、複数の磁性層を含む積層体から発生した高周波磁界を磁気記録媒体80に印加して、磁気記録媒体80の磁気特性を局部的に制御して記録を行うMAMR(Microwave Assisted Magnetic Recording)がある。MAMRにおいては、磁性層の磁化の発振により高周波磁界が発生する。
【0031】
これに対して、実施形態においては、第1磁性層21の磁化が第1磁極31の磁化及び第2磁極32の磁化に対して反転する。MAMRとは異なる動作により、第1磁極31から出た磁界が磁気記録媒体80に効率的に印加される。
【0032】
以下、実施形態に係る磁気ヘッド110の特性の例について説明する。
【0033】
図3(a)及び
図3(b)は、実施形態に係る磁気記録装置の特性を例示する模式図である。
これらの図は、実施形態に係る積層体20に流れる電流jc1の大きさと、積層体20の電気抵抗との関係を模式的に示している。これらの図の横軸は、電流jc1の大きさである。
図3(a)の縦軸は、積層体20の電気抵抗Rx1である。
【0034】
図3(a)に示すように、電流jc1が大きくなると、電気抵抗Rx1は大きくなる。
図3(a)に示すように、電流jc1の大きさを、第1電流範囲ir1、第2電流範囲ir2及び第3電流範囲ir3に分けることができる。第3電流範囲ir3は、第1電流範囲ir1と第2電流範囲ir2との間にある。
【0035】
第1電流範囲ir1及び第2電流範囲ir2においては、電気抵抗Rx1は、電流jc1の大きさに対して二次関数に従って変化する。これは、電流jc1が大きくなることに応じて積層体20の温度が上昇することに起因すると考えられる。
【0036】
第3電流範囲ir3における電気抵抗Rx1の変化は、温度の上昇の影響とは異なる。第3電流範囲ir3における電気抵抗Rx1の変化は、磁性層の磁化の反転率に基づく磁気抵抗効果によると考えられる。
【0037】
図3(b)において、
図3(a)における二次関数の変化(温度の影響)を除去して、電流jc1の大きさと、電気抵抗Rx2と、の関係が示されている。
図3(b)に示すように、二次関数の影響を除去した場合に、第1電流範囲ir1において、電気抵抗Rx2は実質的に一定である。または、第1電流範囲ir1において、第3電流範囲ir3に比べて、電気抵抗Rx2は、緩やかに変化する。第3電流範囲ir3において、電気抵抗Rx2が変化する。第2電流範囲ir2において、電気抵抗Rx2は実質的に一定である。または、第2電流範囲ir2において、第3電流範囲ir3に比べて、電気抵抗Rx2は、緩やかに変化する。
【0038】
例えば、
図3(b)に示すように、積層体20に流れる電流jc1が第1電流i1のときの積層体20の電気抵抗Rx2は、第1抵抗R1である。第1電流i1は、第1電流範囲ir1にある。
【0039】
図3(b)に示すように、積層体20に流れる電流jc1が第2電流i2のときに、積層体20の電気抵抗Rx2は、第2抵抗R2である。第2電流i2は、第1電流i1よりも大きい。第2電流i2は、第2電流範囲ir2にある。第2抵抗R2は、第1抵抗R1よりも高い。
【0040】
第1電流i1と第2電流i2との間の第3電流i3において、積層体20の電気抵抗Rx2は、第3抵抗R3である。第3電流i3は、第3電流範囲ir3にある。
【0041】
例えば、電流jc1が第1電流i1または第2電流i2のときは、電気抵抗Rx2は、実質的に発振しない。例えば、電流jc1が第3電流i3のときに、電気抵抗Rx2は、発振する。第1電流i1、第2電流i2及び第3電流i3は、第1磁性層21から第2磁性層22への向きを有する。
【0042】
図4(a)〜
図4(c)は、実施形態に係る磁気記録装置の特性を例示する模式図である。
これらの図は、電気抵抗Rx2の信号の一部をFFT(Fast Fourier Transform)処理した信号を例示している。電気抵抗Rx2の信号は、時間的に変化する成分(高周波成分)と、時間的に実質的に変化しない成分(時間的な平均値の成分)と、を含む。FFT処理においては、電気抵抗Rx2の、時間的に変化する成分が処理される。これらの図の横軸は、周波数ffである。縦軸は、信号の強度Intである。
図4(a)は電流jc1が第1電流i1であるときに対応する。
図4(b)は電流jc1が第3電流i3であるときに対応する。
図4(c)は電流jc1が第2電流i2であるときに対応する。
【0043】
図4(b)に示すように、電流jc1が第3電流i3であるとき、1つの周波数fp1にて、ピークp1が観測される。このピークは、積層体20において、高周波の発振が生じていることに対応する。
【0044】
図4(a)及び
図4(c)に示すように、電流jc1が第1電流i1または第2電流i2であるときは、ピークp1が明確に観測されない。これらの電流においては、MAMRに有効な磁化発振は、実質的に生じない。
【0045】
このように、積層体20に流れる電流jc1が第1電流i1と第2電流i2との間の第3電流i3のときに、積層体20の電気抵抗Rx2は発振する。
【0046】
実施形態においては、このような特性を有する積層体20を用いて記録動作が行われる。
【0047】
実施形態において、磁気ヘッド110を用いて磁気記録媒体80に情報を記録する記録動作において、電気回路20Dは、上記の第2電流i2を積層体20に供給することが可能である。上記のような第2電流i2を供給しつつ、記録回路30Dから記録電流Iwをコイルに供給する記録動作を行うことで、第2電流i2を供給しないで記録動作を行う場合に比べて、第1磁極31から磁気記録媒体80に向かう記録磁界の量を増やすことができる。良好な記録ができる記録ギャップを小さくできる。実施形態によれば、記録密度の向上が可能な磁気記録装置を提供できる。
【0048】
以下、磁気記録装置の特性の例について説明する。
図5は、磁気記録装置の特性を例示する模式図である。
図5は、第1条件CH1、第2条件CH2及び第3条件CH3の積層体20を含む磁気ヘッドの特性のシミュレーション結果を例示している。第1条件CH1においては、上記の磁気ヘッド110の構成が適用される。すなわち、第2非磁性層42は、Taであり、第2非磁性層42は、例えば、偏極したスピンを減衰させる。
【0049】
第2条件CH2においては、第2非磁性層42は、Cuであり、第2非磁性層42は、例えば、偏極したスピンを伝搬させる。第2条件CH2におけるこれ以外の構成は、第1条件CH1における構成と同様である。
【0050】
第3条件CH3においては、第2非磁性層42が設けられず、第1磁性層21及び第2磁性層22が互いに接する。第3条件CH3におけるこれ以外の構成は、第1条件CH1における構成と同様である。
【0051】
図5の横軸は、時間tmである。第1時刻t1において、記録電流Iwの極性が反転する。
図5の縦軸は、磁化の反転量に対応するパラメータP1である。第1条件CH1、第2条件CH2及び第3条件CH3においては、パラメータP1は、第1磁極31と第2磁極32との間に存在するの磁化の反転量に対応する。
【0052】
図5には、第1磁極31の磁化の向きの特性PMも例示されている。特性PMに関して、パラメータP1は、第1磁極31の磁化の向きに対応する。
図5の例では、第1時刻t1(時間tmが0.60nsのとき)において、記録電流Iwの極性が反転する。時間tmが0.62nsのときに、第1磁極31の磁化の向きが変化し始める。時間tmが0.67nsのときに、第1磁極31の磁化の向きの変化が、実質的に終了する。
【0053】
図5に示すように、第2条件CH2においては、パラメータP1の絶対値が小さい。第2条件CH2においては、第1磁極31と第2磁極32との間に存在する磁化は、第1磁極31の磁化に対して、明確に反転していない。
【0054】
図5に示すように、第1条件CH1及び第3条件CH3においては、第1磁極31と第2磁極32との間に存在する磁化は、第1磁極31の磁化に対して、実質的に反転していることが分かる。第1条件CH1におけるパラメータP1の変化は、第3条件CH3におけるパラメータP1の変化よりも早い。第1条件CH1においては、高速の磁化反転が得られる。第1条件CH1においては、第1磁性層21の磁化が速く変化するため、第1磁極31の磁化の変化に対して高い追従性が得られる。第1条件CH1においては、例えば、実用的な使用条件において、BER(Bit Error Rate)を効果的に低減できる。
【0055】
第1実施形態においては、BERを効果的に低減して、良好な記録ができる記録ギャップを小さくできる。実施形態によれば、記録密度の向上が可能な磁気記録装置を提供できる。
【0056】
実施形態においては、高い周波数で高速の記録動作時に高い記録能力を得ることができる。記録密度をより効果的に向上できる。
【0057】
図6は、第1実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的断面図である。
図6は、磁気ヘッド110を例示している。
【0058】
図6に示すように、第1磁性層21は、厚さt21を有する。第2磁性層22は、厚さt22を有する。第3磁性層23は、厚さt23を有する。第1非磁性層41は、厚さt41を有する。第2非磁性層42は、厚さt42を有する。第3非磁性層43は、厚さt43を有する。第4非磁性層44は、厚さt44を有する。これらの厚さは、第1方向D1に沿う長さである。既に説明したように、第1方向D1は、X軸方向に対して傾斜しても良い。
【0059】
磁気ヘッド110において、第1磁性層21の厚さt21は、例えば、2nm以上10nm以下である。厚さt21が2nm以上であることで、例えば、磁気記録媒体80に向かう磁界を効果的に増大することができる。厚さt21が8nm以下であることで、例えば、効率的な磁化反転を得易くなる。
【0060】
磁気ヘッド110において、第2磁性層22の厚さt22は、例えば、2nm以上4nm以下である。厚さt22が2nm以上であると、高速動作時に、より高いゲインを得易くなる。厚さt22が4nm以下であることで、安定した動作が得易くなる。
【0061】
磁気ヘッド110において、第3磁性層23の厚さt23は、例えば、2nm以上5nm以下である。厚さt23が2nm以上であると、例えば、第3磁性層23を通過する電子がスピンし易くなる。厚さt23が5nm以下であることで、例えば、第3磁性層23の磁化が安定し易くなる。
【0062】
磁気ヘッド110において、第1非磁性層41の厚さt41は、例えば、1nm以上5nm以下である。厚さt41がこの範囲にあると、例えば、第2磁極32によりスピン偏極された電子が第1磁性層21に到達し易くなる。
【0063】
磁気ヘッド110において、第2非磁性層42の厚さt42は、例えば、1nm以上5nm以下である。厚さt42がこの範囲にあることで、例えば、より高いゲインを得易くなる。
【0064】
磁気ヘッド110において、第3非磁性層43の厚さt43は、例えば、1nm以上5nm以下である。厚さt43がこの範囲にあることで、例えば、第2磁性層22の磁化と第3磁性層23の磁化とが相互に安定化し易く易くなる。
【0065】
磁気ヘッド110において、第4非磁性層44の厚さt44は、例えば、1nm以上5nm以下である。厚さt44がこの範囲にあることで、例えば、第3磁性層23の磁化が安定し易くなる。
【0066】
実施形態において、例えば、第1非磁性層41は、第1磁性層21及び第2磁極32と接する。例えば、第2非磁性層42は、第2磁性層22及び第1磁性層21と接する。例えば、第3非磁性層43は、第3磁性層23及び第2磁性層22と接する。例えば、第4非磁性層44は、第1磁極31及び第3磁性層23と接する。
【0067】
図7は、第1実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的断面図である。
図7に示すように、第1実施形態に係る磁気ヘッド111においては、第4非磁性層44が設けられない。磁気ヘッド111においては、第1磁極31は、第3磁性層23と接する。磁気ヘッド111におけるこれ以外の構成は、磁気ヘッド110の構成と同様でよい。
【0068】
磁気ヘッド111においても、高速の磁化反転が得られる。BERを効果的に低減して、良好な記録ができる記録ギャップを小さくできる。実施形態によれば、記録密度の向上が可能な磁気記録装置を提供できる。
【0069】
磁気ヘッド110及び磁気ヘッド111において、第3非磁性層43は、Crを含むことが好ましい。これにより、例えば、第2磁性層22の磁化を安定化することがより容易になる。
【0070】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態の例について説明する。以下の説明において、第1実施形態と同様の部分の説明は、適宜省略される。
【0071】
図8は、第2実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的断面図である。
図8に示すように、第2実施形態に係る磁気記録装置210は、磁気ヘッド120と、磁気記録媒体80と、電気回路20D(
図2参照)と、を含む。磁気ヘッド120においても、積層体20は、第1磁性層21、第2磁性層22、第3磁性層23、第1非磁性層41、第2非磁性層42及び第3非磁性層43を含む。この例では、第4非磁性層44が設けられている。磁気ヘッド120においても、第2磁性層22は、第1磁極31と第1磁性層21との間に設けられる。第3磁性層23は、第1磁極31と第2磁性層22との間に設けられる。第1非磁性層41は、第1磁性層21と第2磁極32との間に設けられる。第2非磁性層42は、第2磁性層22と第1磁性層21との間に設けられる。第3非磁性層43は、第3磁性層23と第2磁性層22との間に設けられる。第4非磁性層44が設けされる場合において、第4非磁性層44は、第1磁極31と第3磁性層23との間に設けられる。
【0072】
磁気ヘッド120において、第1磁性層21は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む第1元素と、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第2元素と、を含む。第1磁性層21は、例えば、負の分極を有する。第1磁性層21における第2元素の濃度は、例えば、1原子%以上80原子%以下である。
【0073】
磁気ヘッド120において、第2磁性層22は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む。第2磁性層22は、上記の第2元素を実質的に含まない。または、第2磁性層22における第2元素の濃度は、第1磁性層21における第2元素の濃度よりも低い。第2磁性層22は、例えば、正の分極を有する。
【0074】
磁気ヘッド120において、第3磁性層23は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む第3元素と、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第4元素と、を含む。第3磁性層23は、例えば、負の分極を有する。第3磁性層23における第4元素の濃度は、例えば、1原子%以上80原子%以下である。第2磁性層22は、上記の第4元素を実質的に含まない。または、第2磁性層22における第4元素の濃度は、第3磁性層23における第4元素の濃度よりも低い。
【0075】
磁気ヘッド120において、例えば、第1非磁性層41は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。磁気ヘッド120において、第1非磁性層41は、例えば、偏極したスピンを伝搬させる層として機能する。
【0076】
磁気ヘッド120において、例えば、第2非磁性層42は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。磁気ヘッド120において、第2非磁性層42は、例えば、偏極したスピンを伝搬させる層として機能する。
【0077】
磁気ヘッド120において、例えば、第3非磁性層43は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。磁気ヘッド120において、第3非磁性層43は、例えば、偏極したスピンを伝搬させる層として機能する。
【0078】
磁気ヘッド120において、第1磁極31と第3磁性層23との間に第4非磁性層44が設けられても良い。第4非磁性層44は、例えば、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。磁気ヘッド120において、第4非磁性層44は、例えば、偏極したスピンを伝搬させる層として機能する。
【0079】
例えば、第1非磁性層41は、第1磁性層21及び第2磁極32と接しても良い。第2非磁性層42は、第2磁性層22及び第1磁性層21と接しても良い。第3非磁性層43は、第3磁性層23及び第2磁性層22と接しても良い。第4非磁性層44は、第1磁極31及び第3磁性層23と接しても良い。
【0080】
磁気ヘッド120においても、
図3(a)及び
図3(b)に関して説明した動作が実施されても良い。磁気ヘッド120においても、
図3(b)に示すように、積層体20に流れる電流jc1が第1電流i1のときの積層体20の電気抵抗Rx2は、第1抵抗R1である。第1電流i1は、第1電流範囲ir1にある。
【0081】
磁気ヘッド120においても、
図3(b)に示すように、積層体20に流れる電流jc1が第2電流i2のときに、積層体20の電気抵抗Rx2は、第2抵抗R2である。第2電流i2は、第1電流i1よりも大きい。第2電流i2は、第2電流範囲ir2にある。第2抵抗R2は、第1抵抗R1よりも高い。
【0082】
第1電流i1と第2電流i2との間の第3電流i3において、積層体20の電気抵抗Rx2は、第3抵抗R3である。第3電流i3は、第3電流範囲ir3にある。
【0083】
磁気ヘッド120においても、例えば、電流jc1が第1電流i1または第2電流i2のときは、電気抵抗Rx2は、実質的に発振しない。例えば、電流jc1が第3電流i3のときに、電気抵抗Rx2は、発振する。第1電流i1、第2電流i2及び第3電流i3は、第1磁性層21から第2磁性層22への向きを有する。
【0084】
第2実施形態において、磁気ヘッド120を用いて磁気記録媒体80に情報を記録する記録動作において、電気回路20Dは、上記の第2電流i2を積層体20に供給することが可能である。上記のような第2電流i2を供給しつつ、記録回路30Dから記録電流Iwをコイルに供給する記録動作を行うことで、第2電流i2を供給しないで記録動作を行う場合に比べて、第1磁極31から磁気記録媒体80に向かう記録磁界の量を増やすことができる。良好な記録ができる記録ギャップを小さくできる。実施形態によれば、記録密度の向上が可能な磁気記録装置を提供できる。
【0085】
以下、磁気記録装置の特性の例について説明する。
図9は、磁気記録装置の特性を例示する模式図である。
図9は、第4条件CH4、第5条件CH5及び第6条件CH6の積層体20を含む磁気ヘッドの特性のシミュレーション結果を例示している。第4条件CH4においては、上記の磁気ヘッド120の構成が適用される。すなわち、第2非磁性層42は、Cuであり、第2非磁性層42は、例えば、偏極したスピンを伝搬させる。
【0086】
第5条件CH5においては、第2非磁性層42は、Taであり、第2非磁性層42は、例えば、偏極したスピンを減衰させる。第5条件CH5におけるこれ以外の構成は、第4条件CH4における構成と同様である。
【0087】
第6条件CH6においては、第2非磁性層42が設けられず、第1磁性層21及び第2磁性層22が互いに接する。第6条件CH6におけるこれ以外の構成は、第4条件CH4における構成と同様である。
【0088】
図9の横軸は、時間tmである。第1時刻t1(
図5参照:時間tmが0.60nsのとき)において、記録電流Iwの極性が反転する。
図9の縦軸は、磁化の反転量に対応するパラメータP1である。第4条件CH4、第5条件CH5及び第6条件CH6において、パラメータP1は、第1磁極31と第2磁極32との間に存在する磁化の反転量に対応する。
【0089】
図9には、第1磁極31の磁化の向きの特性PMも例示されている。特性PMに関して、パラメータP1は、第1磁極31の磁化の向きに対応する。
図9の例では、第1時刻t1(時間tmが0.60nsのとき)において、記録電流Iwの極性が反転する。時間tmが0.62nsのときに、第1磁極31の磁化の向きが変化し始める。時間tmが0.67nsのときに、第1磁極31の磁化の向きの変化が、実質的に終了する。
【0090】
図9に示すように、第4条件CH4においては、第5条件CH5及び第6条件CH6と比べて、時間tmが0.7ns以降において、パラメータP1が大きい。第4条件CH4においては、第1磁極31と第2磁極32との間に存在する磁化は、第1磁極31の磁化に対して、実質的に反転する。第4条件CH4においては、高速に反転する磁化体積が大きい磁性体を反転できる。第4条件CH4においては、特に、磁気記録におけるOW(Over Write)特性を改善できる。
【0091】
第2実施形態においては、上記の磁気ヘッド120の構成が適用される。これにより、例えば比較的高い記録周波数においても記録能力が効果的に改善され、記録特性が改善される。第2実施形態によれば、記録密度の向上が可能な磁気記録装置を提供できる。
【0092】
磁気ヘッド120において、第1〜第3磁性層21〜23は、厚さt21〜t23をそれぞれ有する(
図6参照)。磁気ヘッド120において、第1〜第4非磁性層41〜44は、厚さt41〜t44を有する(
図6参照)。
【0093】
磁気ヘッド120において、第1磁性層21の厚さt21は、例えば、2nm以上10nm以下である。厚さt21が2nm以上であることで、例えば、磁気記録媒体80に向かう磁界を効果的に増大することができる。厚さt21が8nm以下であることで、例えば、効率的な磁化反転を得易くなる。
【0094】
磁気ヘッド120において、第2磁性層22の厚さt22は、例えば、2nm以上4nm以下である。厚さt22が2nm以上であると、高速動作時に、より高いゲインを得易くなる。厚さt22が4nm以下であることで、安定した動作が得易くなる。
【0095】
磁気ヘッド120において、第3磁性層23の厚さt23は、例えば、2nm以上5nm以下である。厚さt23が2nm以上であると、例えば、第3磁性層23を通過する電子がスピン分極し易くなる。厚さt23が5nm以下であることで、例えば、第3磁性層23の磁化が安定し易くなる。
【0096】
磁気ヘッド120において、第1非磁性層41の厚さt41は、例えば、1nm以上5nm以下である。厚さt41がこの範囲にあると、例えば、効果的にスピンを伝搬することができる。
【0097】
磁気ヘッド120において、第2非磁性層42の厚さt42は、例えば、1nm以上5nm以下である。厚さt42がこの範囲にあると、例えば、効果的にスピンを伝搬することができる。
【0098】
磁気ヘッド120において、第3非磁性層43の厚さt43は、例えば、1nm以上5nm以下である。厚さt43がこの範囲にあると、例えば、効果的にスピンを伝搬することができる。
【0099】
磁気ヘッド120において、第4非磁性層44の厚さt44は、例えば、1nm以上5nm以下である。厚さt44がこの範囲にあると、例えば、効果的にスピンを伝搬することができる。
【0100】
図10は、第2実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的断面図である。
図10に示すように、第2実施形態に係る磁気ヘッド121においては、第4非磁性層44が設けられない。磁気ヘッド121においては、第1磁極31は、第3磁性層23と接する。磁気ヘッド121におけるこれ以外の構成は、磁気ヘッド120の構成と同様でよい。
【0101】
磁気ヘッド121においても、第1磁極31と第2磁極32との間に存在する磁化は、第1磁性層31の磁化に対して反転する。高速に反転する磁化体積が大きい磁性体を反転できる。第2実施形態によれば、記録密度の向上が可能な磁気記録装置を提供できる。
【0102】
磁気ヘッド120及び磁気ヘッド121において、第2非磁性層42及び第3非磁性層43は、Crを含むことが好ましい。これにより、例えば、伝搬するスピン量を改善することがより容易になる。
【0103】
以下、実施形態に係る磁気記録装置210に含まれる磁気ヘッド及び磁気記録媒体80の例について説明する。以下の説明は、第1実施形態及び第2実施形態に係る磁気ヘッド(磁気ヘッド110、111、120及び121など)及びその変形に適用できる。
【0104】
図11は、実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式的断面図である。
図11に示すように、実施形態に係る磁気ヘッド(例えば、磁気ヘッド110)において、第2磁極32から第1磁極31への第1方向D1は、X軸方向に対して傾斜しても良い。第1方向D1は、積層体20の積層方向に対応する。X軸方向は、第1磁極31の媒体対向面30Fに沿う。第1方向D1と媒体対向面30Fとの間の角度を角度θ1とする。角度θ1は、例えば、15度以上30度以下である。角度θ1は、0度でも良い。
【0105】
第1方向D1が、X軸方向に対して傾斜する場合、層の厚さは、第1方向D1に沿う長さに対応する。第1方向D1がX軸方向に対して傾斜する構成は、第1実施形態または第2実施形態に係る任意の磁気ヘッドに適用されて良い。
【0106】
図12は、実施形態に係る磁気記録装置を例示する模式的斜視図である。
図12に示すように、実施形態に係る磁気ヘッド(例えば、磁気ヘッド110)は、磁気記録媒体80と共に用いられる。この例では、磁気ヘッド110は、記録部60及び再生部70を含む。磁気ヘッド110の記録部60により、磁気記録媒体80に情報が記録される。再生部70により、磁気記録媒体80に記録された情報が再生される。
【0107】
磁気記録媒体80は、例えば、媒体基板82と、媒体基板82の上に設けられた磁気記録層81と、を含む。磁気記録層81の磁化83が記録部60により制御される。
【0108】
再生部70は、例えば、第1再生磁気第2磁極72a、第2再生磁気第2磁極72b、及び磁気再生素子71を含む。磁気再生素子71は、第1再生磁気第2磁極72aと第2再生磁気第2磁極72bとの間に設けられる。磁気再生素子71は、磁気記録層81の磁化83に応じた信号を出力可能である。
【0109】
図12に示すように、磁気記録媒体80は、媒体移動方向85の方向に、磁気ヘッド110に対して相対的に移動する。磁気ヘッド110により、任意の位置において、磁気記録層81の磁化83に対応する情報が制御される。磁気ヘッド110により、任意の位置において、磁気記録層81の磁化83に対応する情報が再生される。
【0110】
図13は、実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的斜視図である。
図13は、ヘッドスライダを例示している。
磁気ヘッド110は、ヘッドスライダ159に設けられる。ヘッドスライダ159は、例えばAl
2O
3/TiCなどを含む。ヘッドスライダ159は、磁気記録媒体の上を、浮上または接触しながら、磁気記録媒体に対して相対的に運動する。
【0111】
ヘッドスライダ159は、例えば、空気流入側159A及び空気流出側159Bを有する。磁気ヘッド110は、ヘッドスライダ159の空気流出側159Bの側面などに配置される。これにより、磁気ヘッド110は、磁気記録媒体の上を浮上または接触しながら磁気記録媒体に対して相対的に運動する。
【0112】
図14は、実施形態に係る磁気記録装置を例示する模式的斜視図である。
図15(a)及び
図15(b)は、実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的斜視図である。
図14に示すように、実施形態に係る磁気記録装置150においては、ロータリーアクチュエータが用いられる。記録用媒体ディスク180は、スピンドルモータ180Mに装着される。記録用媒体ディスク180は、スピンドルモータ180Mにより矢印ARの方向に回転する。スピンドルモータ180Mは、駆動装置制御部からの制御信号に応答する。本実施形態に係る磁気記録装置150は、複数の記録用媒体ディスク180を備えても良い。磁気記録装置150は、記録媒体181を含んでもよい。記録媒体181は、例えば、SSD(Solid State Drive)である。記録媒体181には、例えば、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリが用いられる。例えば、磁気記録装置150は、ハイブリッドHDD(Hard Disk Drive)でも良い。
【0113】
ヘッドスライダ159は、記録用媒体ディスク180に記録する情報の、記録及び再生を行う。ヘッドスライダ159は、薄膜状のサスペンション154の先端に設けられる。ヘッドスライダ159の先端付近に、実施形態に係る磁気ヘッドが設けられる。
【0114】
記録用媒体ディスク180が回転すると、サスペンション154による押し付け圧力と、ヘッドスライダ159の媒体対向面(ABS)で発生する圧力と、がバランスする。ヘッドスライダ159の媒体対向面と、記録用媒体ディスク180の表面と、の間の距離が、所定の浮上量となる。実施形態において、ヘッドスライダ159は、記録用媒体ディスク180と接触しても良い。例えば、接触走行型が適用されても良い。
【0115】
サスペンション154は、アーム155(例えばアクチュエータアーム)の一端に接続されている。アーム155は、例えば、ボビン部などを有する。ボビン部は、駆動コイルを保持する。アーム155の他端には、ボイスコイルモータ156が設けられる。ボイスコイルモータ156は、リニアモータの一種である。ボイスコイルモータ156は、例えば、駆動コイル及び磁気回路を含む。駆動コイルは、アーム155のボビン部に巻かれる。磁気回路は、永久磁石及び対向ヨークを含む。永久磁石と対向ヨークとの間に、駆動コイルが設けられる。サスペンション154は、一端と他端とを有する。磁気ヘッドは、サスペンション154の一端に設けられる。アーム155は、サスペンション154の他端に接続される。
【0116】
アーム155は、ボールベアリングによって保持される。ボールベアリングは、軸受部157の上下の2箇所に設けられる。アーム155は、ボイスコイルモータ156により回転及びスライドが可能である。磁気ヘッドは、記録用媒体ディスク180の任意の位置に移動可能である。
【0117】
図15(a)は、磁気記録装置の一部の構成を例示しており、ヘッドスタックアセンブリ160の拡大斜視図である。
図15(b)は、ヘッドスタックアセンブリ160の一部となる磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ:HGA)158を例示する斜視図である。
【0118】
図15(a)に示すように、ヘッドスタックアセンブリ160は、軸受部157と、ヘッドジンバルアセンブリ158と、支持フレーム161と、を含む。ヘッドジンバルアセンブリ158は、軸受部157から延びる。支持フレーム161は、軸受部157から延びる。支持フレーム161の延びる方向は、ヘッドジンバルアセンブリ158の延びる方向とは逆である。支持フレーム161は、ボイスコイルモータ156のコイル162を支持する。
【0119】
図15(b)に示すように、ヘッドジンバルアセンブリ158は、軸受部157から延びたアーム155と、アーム155から延びたサスペンション154と、を有している。
【0120】
サスペンション154の先端には、ヘッドスライダ159が設けられる。ヘッドスライダ159に、実施形態に係る磁気ヘッドが設けられる。
【0121】
実施形態に係る磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ)158は、実施形態に係る磁気ヘッドと、磁気ヘッドが設けられたヘッドスライダ159と、サスペンション154と、アーム155と、を含む。ヘッドスライダ159は、サスペンション154の一端に設けられる。アーム155は、サスペンション154の他端と接続される。
【0122】
サスペンション154は、例えば、信号の記録及び再生用のリード線(図示しない)を有する。サスペンション154は、例えば、浮上量調整のためのヒーター用のリード線(図示しない)を有しても良い。サスペンション154は、例えばスピントランスファトルク発振子用などのためのリード線(図示しない)を有しても良い。これらのリード線と、磁気ヘッドに設けられた複数の電極と、が電気的に接続される。
【0123】
磁気記録装置150において、信号処理部190が設けられる。信号処理部190は、磁気ヘッドを用いて磁気記録媒体への信号の記録及び再生を行う。信号処理部190は、信号処理部190の入出力線は、例えば、ヘッドジンバルアセンブリ158の電極パッドに接続され、磁気ヘッドと電気的に接続される。
【0124】
実施形態に係る磁気記録装置150は、磁気記録媒体と、実施形態に係る磁気ヘッドと、可動部と、位置制御部と、信号処理部と、を含む。可動部は、磁気記録媒体と磁気ヘッドとを離間させ、または、接触させた状態で相対的に移動可能とする。位置制御部は、磁気ヘッドを磁気記録媒体の所定記録位置に位置合わせする信号処理部は、磁気ヘッドを用いた磁気記録媒体への信号の記録及び再生を行う。
【0125】
例えば、上記の磁気記録媒体として、記録用媒体ディスク180が用いられる。上記の可動部は、例えば、ヘッドスライダ159を含む。上記の位置制御部は、例えば、ヘッドジンバルアセンブリ158を含む。
【0126】
実施形態は、以下の構成(例えば技術案)を含んでも良い。
(構成1)
第1磁極と、
第2磁極と、
前記第1磁極と前記第2磁極との間に設けられた積層体と、
を含み、
前記積層体は、
第1磁性層と、
前記第1磁極と前記第1磁性層との間に設けられた第2磁性層と、
前記第1磁極と前記第2磁性層との間に設けられた第3磁性層と、
前記第1磁性層と前記第2磁極との間に設けられた第1非磁性層と、
前記第2磁性層と前記第1磁性層との間に設けられた第2非磁性層と、
前記第3磁性層と前記第2磁性層との間に設けられた第3非磁性層と、
を含み、
前記第1磁性層は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含み、
前記第2磁性層は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含み、
前記第3磁性層は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む第1元素と、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第2元素と、を含み、前記第1磁性層及び前記第2磁性層は、前記第2元素を含まない、または、前記第1磁性層及び前記第2磁性層における前記第2元素の濃度は、前記第3磁性層における前記第2元素の濃度よりも低く、
前記第1非磁性層は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第2非磁性層は、Ta、Pt、W、Mo、Ir、Ru、Tb、Rh、Cr及びPdよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第3非磁性層は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、磁気ヘッド。
【0127】
(構成2)
前記第3非磁性層は、Crを含む、構成1記載の磁気ヘッド。
【0128】
(構成3)
第1磁極と、
第2磁極と、
前記第1磁極と前記第2磁極との間に設けられた積層体と、
を含み、
前記積層体は、
第1磁性層と、
前記第1磁極と前記第1磁性層との間に設けられた第2磁性層と、
前記第1磁極と前記第2磁性層との間に設けられた第3磁性層と、
前記第1磁性層と前記第2磁極との間に設けられた第1非磁性層と、
前記第2磁性層と前記第1磁性層との間に設けられた第2非磁性層と、
前記第3磁性層と前記第2磁性層との間に設けられた第3非磁性層と、
を含み、
前記第1磁性層は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む第1元素と、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第2元素と、を含み、
前記第2磁性層は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含み、前記第2磁性層は、前記第2元素を含まない、または、前記第2磁性層における前記第2元素の濃度は、前記第1磁性層における前記第2元素の濃度よりも低く、
前記第3磁性層は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む第3元素と、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第4元素と、を含み、前記第2磁性層は、前記第4元素を含まない、または、前記第2磁性層における前記第4元素の濃度は、前記第3磁性層における前記第4元素の濃度よりも低く、
前記第1非磁性層は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第2非磁性層は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第3非磁性層は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、磁気ヘッド。
【0129】
(構成4)
前記第2非磁性層及び前記第3非磁性層は、Crを含む、構成3記載の磁気ヘッド。
【0130】
(構成5)
前記第1非磁性層は、前記第1磁性層及び前記第2磁極と接し、
前記第2非磁性層は、前記第2磁性層及び前記第1磁性層と接し、
前記第3非磁性層は、前記第3磁性層及び前記第2磁性層と接した、構成1〜4のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0131】
(構成6)
前記第1磁極は、前記第3磁性層と接した、構成1〜5のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0132】
(構成7)
前記積層体は、第4非磁性層をさらに含み、
前記第4非磁性層は、前記第1磁極と前記第3磁性層との間に設けられ、
前記第4非磁性層は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、構成1〜6のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0133】
(構成8)
前記第4非磁性層は、前記第1磁極及び前記第3磁性層と接した、構成7記載の磁気ヘッド。
【0134】
(構成9)
前記第4非磁性層の厚さは、1nm以上5nm以下である、構成7または8に記載の磁気ヘッド。
【0135】
(構成10)
前記第2電流は、前記第1磁性層から前記第2磁性層への向きを有する、構成1〜9のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0136】
(構成11)
前記第1非磁性層の厚さは、1nm以上5nm以下である、構成1〜10のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0137】
(構成12)
前記第2非磁性層の厚さは、1nm以上5nm以下である、構成1〜11のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0138】
(構成13)
前記第3非磁性層の厚さは、1nm以上5nm以下である、構成1〜12のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0139】
(構成14)
前記第1磁性層の厚さは、2nm以上8nm以下である、構成1〜13のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0140】
(構成15)
前記第2磁性層の厚さは、2nm以上5nm以下である、構成1〜14のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0141】
(構成16)
前記第3磁性層の厚さは、2nm以上5nm以下である、構成1〜15のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0142】
(構成17)
構成1〜16のいずれか1つに記載の磁気ヘッドと、
磁気記録媒体と、
電気回路と、
備え、
前記積層体に流れる電流が第1電流のときの前記積層体の電気抵抗は、第1抵抗であり、
前記積層体に流れる前記電流が前記第1電流よりも大きい第2電流のときに、前記積層体の前記電気抵抗は、前記第1抵抗よりも高い第2抵抗であり、
前記積層体に流れる前記電流が前記第1電流と前記第2電流との間の第3電流のときに、前記積層体の前記電気抵抗は発振し、
前記磁気ヘッドを用いて前記磁気記録媒体に情報を記録する記録動作において、前記電気回路は、前記第2電流を前記積層体に供給することが可能である、磁気記録装置。
【0143】
実施形態によれば、記録密度の向上が可能な磁気ヘッド及び磁気記録装置が提供できる。
【0144】
本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0145】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、磁気記録装置に含まれる磁気ヘッド、磁極、第2磁極、積層体、磁性層、非磁性層、及び配線などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0146】
各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0147】
その他、本発明の実施の形態として上述した磁気記録装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての磁気記録装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0148】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0149】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。