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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-190186(P2021-190186A)
(43)【公開日】2021年12月13日
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20211115BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20211115BHJP
   H01M 50/10 20210101ALI20211115BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20211115BHJP
【FI】
   H01M10/058
   H01M10/052
   H01M2/02 K
   H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-91368(P2020-91368)
(22)【出願日】2020年5月26日
(71)【出願人】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
(72)【発明者】
【氏名】川崎 洋志
(72)【発明者】
【氏名】水野 雄介
(72)【発明者】
【氏名】那須 浩太郎
【テーマコード(参考)】
5H011
5H029
5H030
【Fターム(参考)】
5H011CC10
5H029AJ12
5H029AJ14
5H029BJ26
5H029DJ02
5H029HJ04
5H029HJ12
5H030AA03
5H030FF41
(57)【要約】
【課題】組電池を構成する各単電池が有する発光部から光信号を出力する構成において、配線の手間の煩雑性を削減し、位置ずれ許容量の増大を可能にするリチウムイオン電池を提供する。
【解決手段】外装体(70)内に、積層された複数の単電池(30)で構成された組電池(50)を収容したリチウムイオン電池(1)において、各単電池に当該単電池の特性に基づいて発光して光信号を出力する発光部(20)を備えるとともに、発光部の発光面に隣接または近接して導光板(60)を配置して複数の単電池の発光部からの光信号の共通伝送経路となるようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の単電池であって、各単電池が、当該単電池の特性を測定する測定部および前記単電池の前記特性に基づいて発光して光信号を出力する発光部を有する、前記複数の単電池と、
前記発光部の発光面に隣接または近接して配置された導光板であって、入射し伝搬した前記光信号が出射する光出力部を有する、前記導光板と、
前記複数の電池および前記導光板を収容する外装体と
を備え、
前記導光板は、前記複数の単電池からの前記光信号の共通伝送経路となっている、リチウムイオン電池。
【請求項2】
前記外装体は、ラミネートフィルムで形成され、
前記導光板は、樹脂で形成されている、請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【請求項3】
前記導光板の延伸方向に直交する前記導光板の幅方向寸法が前記発光面の最大寸法よりも大きく、且つ、前記導光板は、積層された前記複数の単電池に対応する前記発光部の前記発光面を覆うように配置されている、請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池。
【請求項4】
前記導光板は、前記発光部の発光素子の発光方向のすべてを覆うように配設されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項5】
前記導光板は、前記複数の単電池の体積変形に追従して変形可能な材料で構成されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項6】
前記導光板の一部は、前記ラミネートフィルムの山折り部分または前記ラミネートフィルムが重なった平坦部分から引き出されている、請求項2に記載のリチウムイオン電池。
【請求項7】
前記導光板は、前記複数の単電池の積層方向に直交する方向に延伸し、前記導光板の幅は、光出力部に向かって減少する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項8】
前記導光板の一部は、散乱加工または反射加工が施され、前記光信号は、前記導光板中を散乱または反射して伝搬して前記光出力部から出力する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車およびハイブリッド電気自動車等の電源携帯型電子機器の電源としてリチウムイオン電池の単電池を複数個積層した組電池が用いられている。このような組電池を充電する場合、過充電状態になる単電池が存在することがないように充電管理を行う必要がある。
【0003】
特許文献1には、外部の充電装置に対して、金属の配線および端子などの電気的な接続を介して、電池パック内の各単電池の端子間の電圧を伝達することが記載されている(例えば、特許文献1の第0040段落、第4図参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/119075号公報
【特許文献2】特開平11−341693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、外部の装置に対して、電気的な接続を介して、電池パック内の各単電池の特性に関する情報を伝達する場合には、積層された単電池の数に応じて配線数や端子数が増加するため、配線や端子に起因する重量の増加やスペースの増加が問題となる。また、電気的配線を設置すれば、単電池間の短絡のリスクと、配線の手間が煩雑という問題もある。
【0006】
このような問題を解決することを意図して、光信号を伝送するための光ファイバーを利用するという考え方がある。例えば特許文献2には、直列に接続された単電池を含む電池モジュールの両端に、発光ダイオードを含む過充電発熱回路を並列に接続し、過充電が生じたときに発光ダイオードの発光が共通の光ファイバーにより受光ダイオードに送られることが開示されている(例えば、特許文献2の第0012、0023−0024段落、第5図参照)。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の技術によれば、光ファイバーの手段を採ることにより単電池間の短絡のリスクを解決できたものの、光ファイバーも前述した電気的配線と同様に配線接続が必要となるため、結局配線の手間が多く、前述した問題は依然として解決されていなかった。また、光ファイバーにより光信号をまとめて伝送する構成とすると、位置合わせが厳密に必要となるので、位置ずれに弱いという問題もあった。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、組電池を構成する各単電池が有する発光部から光信号を出力する構成において、配線の手間の煩雑性を削減し、位置ずれ許容量の増大を可能にするリチウムイオン電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本願発明の一実施形態に係るリチウムイオン電池は、
積層された複数の単電池であって、各単電池が、当該単電池の特性を測定する測定部および当該単電池の特性に基づいて発光して光信号を出力する発光部を有する、複数の単電池と、
発光部の発光面に隣接または近接して配置された導光板であって、入射し伝搬した光信号が出射する光出力部を有する、導光板と、
複数の電池および導光板を収容する外装体と
を備え、
導光板は、複数の単電池からの前記光信号の共通伝送経路となっている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明によれば、リチウムイオン電池の外装体の内に収容した組電池を構成する各単電池が有する発光部から出力された光信号を、共通伝送経路となる導光板により伝送するように構成することで、配線の手間の煩雑性を削減し、位置ずれ許容量の増大を可能にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態にかかるリチウムイオン電池の構成を示す図であり、(a)は一部を切り欠いた斜視図であり、(b)は外観を示す斜視図である。
図2図1に示すリチウムイオン電池の概略断面構造を示す図である。
図3】本発明の他の実施形態にかかるチウムイオン電池の構成を示す図であり、(a)は一部を切り欠いた斜視図であり、(b)は外観を示す斜視図である。
図4図3に示すリチウムイオン電池の変形例を示す図である。
図5】本発明の他の実施形態にかかるチウムイオン電池が有する導光板を示す図であり、(a)は錐状(線形テーパー)の断面形状を有する導光板を示す図であり、(b)は指数関数テーパまたは放物線テーパの断面形状を有する導光板を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。同一または類似の符号は、同一または類似の要素を示すものとし、繰り返しの説明を省略する場合がある。以下に説明される数値および材料は例示であり、したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で他の数値および材料を用いて実施することができることは言うまでもない。
【0012】
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン電池は、積層された複数の単電池であって、各単電池が、単電池の特性を測定する測定部および単電池の特性に基づいて発光して光信号を出力する発光部を有する、複数の単電池と、発光部の発光面に隣接または近接して配置された導光板であって、入射し伝搬した光信号が出射する光出力部を有する、導光板と、複数の電池および導光板を収容する外装体とを備え、導光板は、複数の単電池からの光信号の共通伝送経路となっている。導光板の一部は、外装体外へ引き出されるとともに外装体に密着され、光出力部とされてもよい。あるいは、光出力部を含む導光板の全体は、外装体内に収容されていてもよい。
【0013】
典型的に、単電池は、下から順に正極集電体と、正極活物質層と、セパレータと、負極活物質層と、負極集電体とを積層したものである。また、単電池は、略矩形平板状の正極集電体の表面に正極活物質層が形成された正極と、同様に略矩形平板状の負極集電体の表面に負極活物質層が形成された負極とが、略平板状のセパレータを介して積層されて形成されている。単電池は、正極集電体と負極集電体との間に環状の枠部材を配置し、当該枠部材により、正極集電体と負極集電体の間にセパレータの周縁部を固定するとともに、正極活物質層、セパレータおよび負極活物質層を封止している。例えば、発光部は、枠部材の側面に露出するように、枠部材内に埋め込まれるまたは枠部材に取り付けられてもよい。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態にかかるリチウムイオン電池の構成を示す図である。図(a)は一部を切り欠いた斜視図であり、(b)は外観を示す斜視図である。
【0015】
図1に示すように、リチウムイオン電池1は積層された複数の単電池30を有する。また、リチウムイオン電池1は、発光部20の発光面に隣接または近接して配置された導光板60を有する。さらに、リチウムイオン電池1は複数の単電池30および導光板60を収容する外装体70を有する。
【0016】
積層された複数の単電池30は組電池50を構成している。図1は、5つの単電池30を積層した形態を示しているが、単電池の積層数は5より多くても、または5より少なくてもよい。各単電池30は、負極集電体(不図示)および負極集電体と対向する正極集電体(不図示)を有する。組電池50内において隣り合う2つの単電池30は、一方の単電池30の負極集電体の上面と他方の単電池30の正極集電体の下面が隣接するように積層されている。図1は、5つの単電池30を直列接続した組電池50を示している。
【0017】
正極集電体および負極集電体は、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケルおよびこれらの合金などの金属材料、ならびに焼成炭素、導電性高分子材料、導電性ガラス等のいずれかを用いて構成され得る。
【0018】
組電池50の最上面の負極集電体の上には導電性シートが設けられている。導電性シートの一部が外装体70から引き出されて引出配線57となっている。また、組電池50の最下面の正極集電体の下には導電性シートが設けられている。導電性シートの一部が外装体70から引き出されて引出配線59となっている。導電性シートは、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケルおよびこれらの合金などの金属材料のいずれかを用いて構成され得るが、導電性を有す材料であればこれらに限定されない。導電性シートは、導電性高分子材料を用いて構成されてもよい。
【0019】
各単電池30は、当該単電池の特性を測定する測定部(不図示)および当該測定された特性に基づいて発光して光信号を出力する発光部20を有する。
【0020】
測定部は、単電池30の電圧を測定し、測定された電圧に基づいて、発光部20の発光を制御するように構成され得る。より具体的には、測定部は、正極集電体および負極集電体にそれぞれ接する電圧測定端子(不図示)と、電圧測定端子に電気的に結合されると共に発光部20に電気的に結合された制御素子(不図示)とを備える。制御素子は、IC、LSIなどの任意の半導体素子を用いて構成され得る。制御素子は、単電池30から電力供給され、正極集電体と負極集電体との間の電圧に応じた制御信号を発光部20に供給するように構成され得る。
【0021】
発光部20は、LED素子、有機EL素子などの発光素子を用いて構成され得る。発光部20は、単電池30から電力供給され、測定部を構成する制御素子からの制御信号に基づいて駆動する(すなわち、発光する)ように構成され得る。
【0022】
発光部20は、単電池30の短辺の一方に配置されている。好ましくは、複数の単電池30を積層した状態で、複数の発光部20の発光面が、組電池50の側面に複数の単電池30の積層方向に一列に並ぶように配置される。
【0023】
導光板60は、入射し伝搬した光信号が出射する光出力部を有する。本実施形態において、導光板60の一部は、外装体70から引き出されて、光出力部となっている。光出力部から出射した光信号は、受光部80により受信される。受光部80は、フォトダイオード、フォトトランジスタなどを用いて構成することができる。発光素子であるLED素子を受光素子として用いて受光部80を構成してもよい。なお、上述したように、光出力部を含む導光板60の全体は外装体70の内部に収容されていてもよい。この場合、後述するように導光板60の一部を外装体70に密着させる必要はない。導光板60の全体を外装体70の内部に収容する場合、光出力部から出射した光信号は、外装体70の内部に配置された受光部80により受信される。
【0024】
図2は、図1に示すリチウムイオン電池の概略断面構造を示す図である。図2に示すように、単電池の積層方向に延伸した導光板60は、発光部20の発光面に隣接または近接して配置される。導光板60は、発光部20からの光信号を受光するのに十分な幅(単電池の積層方向に直交する方向の長さ)を有する。導光板60の幅方向寸法は発光部20の発光面の最大寸法(発光面が円形の場合は直径、矩形の場合は対角線)よりも大きい。導光板60は、複数の発光部20の発光面(各々が積層された複数の単電池に対応する)を覆う(好ましくは発光面のすべてを覆う)ように配置されている。導光板60は、発光部20の発光方向(発光面の鉛直方向に一致する場合および発光面の鉛直方向にから傾斜している場合を含む)のすべてを覆うように配置されている。なお、導光板60の厚み方向寸法(1つの単電池の発光部20に対応する積層方向寸法)は特に限定されないが、例えば、単電池の厚み(積層方向の厚み)より大きいと好適である。
【0025】
導光板60は、周囲の媒質(例えば、空気)の屈折率に比べ高屈折率の材料で構成されている。ここで、高屈折率とは、周囲の媒質の屈折理との間の差が、入射した光を導光板内に閉じ込めて伝搬させることができる程度の値になる屈折率をいう。たとえば、導光板60は、高屈折利率の樹脂製フィルムまたは樹脂製板を用いて構成することができる。好ましくは、導光板60は、約90度程度の曲げ部分を形成することができる程度に、変形可能な樹脂製フィルムまたは樹脂製板を用いて構成される。変形可能な樹脂製フィルムまたは樹脂製板は、常温または室温で柔らかいものであってもよく、常温または室温で硬いものであってもよい。導光板60は、例えば、発光部20の発光面に対向する導光板60の表面うち光の光入力部(発光部20の発光面に隣接または近接する部分)と光出力部だけ低屈折率物質が無い状態(閉じ込め能力を下げる)とし、当該入力部と光出力部以外の部分(導光板60の裏面および側面)を真空より低い屈折率の物質で覆う構成としてもよい。
【0026】
導光板60を構成する樹脂製フィルムまたは樹脂製板を形成する樹脂は、限定するものでは無いが、アクリル樹脂等とすることができる。例えば、樹脂製フィルムまたは樹脂製板は、光学材料と呼ばれる高屈折率樹脂の中から柔軟なものを選択することができる。発光素子の発光波長帯域が吸収され難い材料のフィルム導光板60を構成する樹脂製フィルムまたは樹脂製板を形成する樹脂が好ましい。発光素子の発光波長帯域が赤外光の場合には、850nm〜950nmの赤外吸収ピークが低い材料のフィルムが望ましい。
【0027】
導光板60は、光信号を受光する表面の位置に対応する裏面の位置に、散乱加工60aが施されている。散乱加工60aは、隣接または近接する発光部20の発光面に対応する位置に施されている。散乱加工60aは、例えば、凹凸加工であり得る。導光板60に入射し散乱加工60aにより散乱した光信号の一部は、光出力部の方向に伝搬する。
【0028】
導光板60は、曲げ部分に反射加工60bが施されており、これにより曲げ部分により散乱した光信号を光出力部の方向へ反射することができる。また、導光板60の光出力部となる端部と反対の端部および曲げ部分に反射加工60bが施されており、これにより凹凸加工により光出力部の方向と反対方向に散乱した光を、光出力部の方向反射することができる。
【0029】
再び、図1を参照すると、外装体70は、金属缶ケースまたは高分子金属複合フィルムを用いて構成することができる。外装体70は、内部の減圧を保つように封止される。
【0030】
以上の構成により、本実施形態のリチウムイオン電池は、外装体の内に収容した組電池を構成する各単電池が有する発光部から出力された光信号を、外装体の外部または内部で受光して利用することが可能となる。
【0031】
上述したように、本実施形態のリチウムイオン電池は、組電池を構成する各単電池が有する発光部から出力された光信号を伝送する共通伝送経路として導光板を用いたので、光ファイバーを共通伝送経路として用いた場合に比べ、共通伝送経路の位置決めの手間の煩雑性が削減される、または位置ずれ許容量が増大される。
【0032】
さらに、共通伝送経路として導光板を用いたので、光ファイバーを共通伝送経路として用いた場合に比べ、発光部から出力された光信号が受光され易く、よって充放電中における単電池の体積の変化によって発光部と共通伝送経路の相対的な位置が変化したとしても、該変化によって生じ得る発光部と共通伝送経路との間の位置ずれ耐性が増大される。また、共通伝送経路として導光板を用いたので、比較的広い面で効率的に光信号を受光することが可能であり、よって発光部から出力された光信号を集光して共通伝送経路へ入射させるためのレンズ等の追加部品の必要がなくなる。
【0033】
また、変形可能な樹脂製フィルムを用いて構成された導光板を共通伝送路として用いことにより、単電池の変形等に伴う発光部の位置の変化が生じたとしても、当該位置の変化に追従して、共通伝送路を変形しての発光部と共通伝送経路との相対的な位置を容易に調整することが可能となる。
【0034】
(第2の実施形態)
本実施形態は、高分子金属複合フィルムを用いて構成した外装体70を用いたリチウムイオン電池1を提供する。積層された複数の単電池30を含む組電池50は、アルミ箔やスチール箔とプラスチックフィルムとが積層されたラミネートフィルム(高分子金属複合フィルム)を用いて構成された外装体70内に収容される。外装体70内は減圧の状態に維持される。
【0035】
図3は本発明の第2の実施形態にかかるリチウムイオン電池1の構成を示す図である。図3(a)は一部を切り欠いた斜視図であり、図3(b)は外観を示す斜視図である。
【0036】
本実施形態のリチウムイオン電池1は、図1に示すリチウムイオン電池1と同様に、積層された複数の単電池30を有する。また、リチウムイオン電池1は、発光部20の発光面に隣接または近接して配置された導光板60を有する。さらに、リチウムイオン電池1は複数の単電池30および導光板60を収容する外装体70を有する。
【0037】
図3に示すように、単電池の積層方向に略直交する方法に延伸した導光板60は、発光部20の発光面に隣接または近接して配置される。導光板60は、単電池の積層方向に並んだ複数の発光部20からの光信号を受光するのに十分な幅(単電池の積層方向の長さ)を有する。図1に示すリチウムイオン電池1における導光板60は、複数の単電池30の積層方向に延伸する構造を有するため、単電池30の積層数の増加に応じて、光信号の伝搬距離が長くなり、光出力部における光の強度が小さくなる可能性がある。これに対して本実施形態のように単電池の積層方向に略直交する方法に延伸した導光板60では、単電池30の積層数の増加に応じて長くなる光信号の伝搬距離は小さくすることができ、光出力部における光の強度が小さくなる可能性を低くできる。
【0038】
導光板60は、図1を参照して説明した実施形態と同様に、高屈折利率を有する、約90度程度の曲げ部分を形成することができる程度に、変形可能な樹脂製フィルムまたは樹脂製板を用いて構成され得る。また、導光板60は、光信号を受光する表面に対応する裏面における隣接または近接する発光部20の発光面に対応する位置に、散乱加工60aが施されていてもよい。導光板60に入射し散乱加工60aにより散乱した光信号の一部は、光出力部の方向に伝搬する。また、導光板60は、曲げ部分に反射加工60bが施されていてもよい。
【0039】
組電池50は、外装体70を構成する2枚のラミネートフィルムを用いて収容される。より具体的には、平面状の第1のラミネートフィルム上に配置した組電池50に、箱状に折り畳んだ第2のラミネートフィルムを被せ、内部を減圧するとともに、第1のラミネートフィルムの縁部と第2のラミネートフィルムの縁部とをヒートシールで密着させることによって、組電池50を外装体70の内部に収容することができる。
【0040】
組電池50の最上面の負極集電体の上に設けられた導電性シートの一部は、外装体70の縁部(第1のラミネートフィルムと第2のラミネートフィルムとが重なる部分)から引き出されて引出配線57となっている。同様に、組電池50の最下面の正極集電体の下に設けられた導電性シートの一部も、外装体70の縁部から引き出されて引出配線59となっている。引出配線57および引出配線59はそれぞれ、第1のラミネートフィルムおよび第2のラミネートフィルムの縁部にヒートシールで密着される。
【0041】
導光板60の一部は、箱状に折り畳んだ第2のラミネートフィルムにおける山折り部分の折線に沿って形成された切り込み(スリット)から引き出されて、光出力部となっている。光出力部は、ヒートシールにより第2のラミネートフィルムにおける山折り部分に密着される(光出力部の表面および裏面が第2のラミネートフィルムに密着される)。
【0042】
図3に示すように、導光板60は、第2のラミネートフィルムにおける山折り部分の位置(スリットの位置)に応じて、曲げ部分が生じる。導光板60は、常温、室温又は電池が使用される温度域で変形可能な樹脂製フィルムまたは樹脂製板を用いて形成されているため、製造プロセスで容易に曲げ部分を形成することができる。なお、導光板60は、常温または室温で硬い樹脂で形成されてもよく、この場合、導光板60の曲げ部分は製造プロセス中に加熱処理して一時的に変形可能とすればよい。常温または室温で硬い樹脂で導光板60を形成した場合、常温または室温で柔らかい樹脂で形成した場合に比べて、単電池の体積の変化によって生じ得る発光部と共通伝送経路である導光板60との間の位置ずれに追従して、導光板60を変形することによる発光部20と導光板60との相対的な位置の調整範囲が減少し得る。
【0043】
図4は、図3に示すリチウムイオン電池1の変形例を示す図である。図4に示すリチウムイオン電池1の導光板60は、曲げ部分を含まない点で、図3のリチウムイオン電池1と異なる。曲げ部分を含まないため、導光板60における散乱または反射が低減し、光信号の損失が低減する。
【0044】
外装体を形成する第2のラミネートフィルムの山折り部分のスリットの幅は、導光板60の幅に応じて決定される。製造プロセスにおける内部の減圧およびラミネートフィルムの縁部の密着を考慮すると、導光板60の幅を狭くして、スリットの幅を狭くする方が有利である。
【0045】
図5は、本実施形態にかかるチウムイオン電池が有する導光板60を示す図である。図5(a)は錐状(線形テーパー)の断面形状を有する導光板60を示す図であり、図5(b)は指数関数テーパまたは放物線テーパの断面形状を有する導光板60を示す図である。
【0046】
任意選択により、導光板60の形状を図5(a)の導光板60または図5(b)の導光板60のようにすることで、伝搬損失を低減して光信号を高効率に伝搬させるとともに、導光板60の幅を減少させることができる。
【0047】
以上の構成により、本実施形態のリチウムイオン電池は、外装体の内に収容した組電池を構成する各単電池が有する発光部から出力された光信号を、外装体の外部で受光して利用することが可能となる。
【0048】
上述したように、本実施形態のリチウムイオン電池は、組電池を構成する各単電池が有する発光部から出力された光信号を伝送する共通伝送経路として導光板を用いたので、光ファイバーを共通伝送経路として用いた場合に比べ、共通伝送経路の位置決めの手間の煩雑性が削減される、または位置ずれ許容量が増大される。特に、光ファイバーを共通伝送経路として用いた場合に生じ得る、ラミネート材を用いて構成された外装体の内部を減圧するときの外装体の変形に伴う光ファイバーの位置ずれの可能性を考慮すると、本実施形態のリチウムイオン電池は顕著である。
【0049】
なお、図1を参照して説明したリチウムイオン電池の外装体70を、図3を参照して説明したように第1のラミネートフィルムおよび第2のラミネートフィルムを用いて構成してもよい。この場合、発光部20が配列された方向に延伸した導光板60の一部は、外装体70の縁部(第1のラミネートフィルムと第2のラミネートフィルムとが重なった平坦部分)から引き出されて、ヒートシールにより第1のラミネートフィルムおよび第2のラミネートフィルムの縁部に密着されて、光出力部となる。
【0050】
以上、種々の実施形態およびその変形例を説明したが、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、構成要素の一部または全部を置換して、若しくは、構成要素を追加して、実施することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0051】
1 リチウムイオン電池
20 発光部
30 単電池
50 組電池
57、59 引出配線
60 導光板
70 外装体
80 受光部
図1
図2
図3
図4
図5