【解決手段】第1端部と第2端部との間に切断部23を有し、第1端部から第2端部に向かう第1方向に通電されるヒューズエレメント2と、切断部23を挟み込むように対向配置された可動部材3および凹状部材4と、可動部材3と凹状部材4とで切断部23を挟み込む方向の相対的な距離を縮めるように力を加える押圧手段5とを備え、ヒューズエレメント2の軟化温度以上の温度において、押圧手段5の前記力により切断部23が切断される保護素子100とする。
前記ヒューズエレメントの前記押圧手段側もしくは前記凹状部材側に、前記切断部に接して配置もしくは近接して配置された発熱部材を備える請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の保護素子。
前記発熱部材の前記第1方向の長さが、前記第1方向および前記第1方向と交差する第2方向と交差する、第3方向における前記凹部の長さよりも短い請求項5に記載の保護素子。
前記低融点金属は、SnもしくはSnを主成分とする金属からなり、前記高融点金属は、AgもしくはCu、またはAgもしくはCuを主成分とする金属からなる請求項7に記載の保護素子。
前記発熱部材が、給電部材により第3端子、もしくは第3端子および第4端子と、電気的に接続され、前記給電部材を介した通電により前記抵抗体が発熱する請求項13に記載の保護素子。
前記ケースの一部材が、前記押圧手段の伸縮方向に対向する第1内壁面と第2内壁面と、前記第1内壁面と前記第2内壁面とを繋ぐ側壁面とが同一部材で一体形成された収容部を有し、
前記ヒューズエレメントが切断されていない状態で、前記押圧手段より発生するケース内部の応力を前記第1内壁面と前記側壁面と前記第2内壁面とで鎹状に支え保持する請求項15に記載の保護素子。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0019】
[第1実施形態]
(保護素子)
図1〜
図3は、第1実施形態に係る保護素子を示した模式図である。第1実施形態の保護素子100は、平面視で略長方形である。以下の説明で用いる図面において、Xで示す方向は保護素子100の長手方向である。また、以下の説明で用いる図面において、Yで示す方向はX方向(第2方向)と直交する方向(第1方向)であり、Zで示す方向は、X方向およびY方向に直交する方向(第3方向)である。
【0020】
図1は、第1実施形態に係る保護素子100の全体構造を示した斜視図である。
図2は、第1実施形態に係る保護素子100の外観を示した図面である。
図2(a)は平面図であり、
図2(b)および
図2(c)は側面図であり、
図2(d)は斜視図である。
図3は、第1実施形態に係る保護素子100を
図2に示すA−A´線に沿って切断した断面図である。
図4は、第1実施形態に係る保護素子100の分解斜視図である。
【0021】
図15〜
図18は、第1実施形態の保護素子100において、ヒューズエレメントの切断部の切断前と切断後の状態を説明するための断面図である。
図15は、第1実施形態に係る保護素子100を
図2に示すA−A´線に沿って切断した断面図である。
図16は、
図15(a)の一部を拡大して示した拡大断面図である。
図17は、第1実施形態の保護素子100を
図2に示すB−B´線に沿って切断した断面図である。
図18は、
図17(a)の一部を拡大して示した拡大断面図である。
図15(a)および
図17(a)は切断前の状態である。
図15(b)および
図17(b)は切断後の状態である。
【0022】
本実施形態の保護素子100は、
図3および
図4に示すように、切断部23を有するヒューズエレメント2と、可動部材3と、凹状部材4と、押圧手段5と、ケース6とを備えている。本実施形態の保護素子100は、ヒューズエレメント2の軟化温度以上の温度において、ヒューズエレメント2の切断部23が切断される。
【0023】
(ヒューズエレメント)
図5は、第1実施形態の保護素子100の一部を説明するための拡大図であり、ヒューズエレメント2を示した平面図である。
図4および
図5に示すように、ヒューズエレメント2は、第1端部21と、第2端部22と、第1端部21と第2端部22との間に設けられた切断部23とを有している。ヒューズエレメント2は、第1端部21から第2端部22に向かう方向であるY方向(第1方向)に通電される。
図4に示すように、第1端部21は、第1端子61と電気的に接続されている。第2端部22は、第2端子62と電気的に接続されている。
【0024】
第1端子61と第2端子62とは、
図4に示すように、略同形であってもよいし、それぞれ異なる形状であってもよい。第1端子61および第2端子62の厚みは、限定されるものではないが、目安を言えば、0.3〜1.0mmとすることができる。第1端子61と第2端子62の厚みは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
図4に示すように、第1端子61は、外部端子孔61aを備えている。また、第2端子62は、外部端子孔62aを備えている。外部端子孔61a、外部端子孔62aのうち、一方は電源側に接続するために用いられ、他方は負荷側に接続するために用いられる。外部端子孔61aおよび外部端子孔62aは、
図4に示すように、平面視略円形の貫通孔とすることができる。
【0025】
第1端子61および第2端子62としては、例えば、銅、黄銅、ニッケルなどからなるものを用いることができる。第1端子61および第2端子62の材料として、剛性強化の観点からは黄銅を用いることが好ましく、電気抵抗低減の観点からは銅を用いることが好ましい。第1端子61と第2端子62とは、同じ材料からなるものであってもよいし、異なる材料からなるものであってもよい。
【0026】
第1端子61および第2端子62の形状は、図示しない電源側の端子あるいは負荷側の端子に係合可能な形状であればよく、例えば、一部に開放部分を有するつめ形状であってもよいし、
図4に示すように、ヒューズエレメント2と接続される側の端部に、ヒューズエレメント2に向かって両側に拡幅された鍔部(
図4において符号61c、62cで示す。)を有していてもよく、特に限定されない。第1端子61および第2端子62が鍔部61c、62cを有する場合、ケース6の開口部61d、62dから第1端子61および第2端子62が抜けにくく、信頼性および耐久性の良好な保護素子100となる。
【0027】
図3および
図4に示すように、ヒューズエレメント2の厚みは、均一であってもよいし、部分的に異なっていてもよい。厚みが部分的に異なっているヒューズエレメントとしては、例えば、切断部23から第1端部21および第2端部22に向かって徐々に厚みが厚くなっているものなどが挙げられる。このようなヒューズエレメント2は、過電流が流れた時に切断部23がヒートスポットとなって、切断部23が優先的に昇温して軟化され、より確実に切断される。
【0028】
図5に示すように、ヒューズエレメント2の切断部23、第1端部21および第2端部22は、平面視略長方形の形状を有している。
図5に示すように、第1端部21におけるX方向の幅21Dと、第2端部22におけるX方向の幅22Dとは、略同じとされている。切断部23におけるX方向の幅23Dは、第1端部21におけるX方向の幅21Dおよび第2端部22におけるX方向の幅22Dよりも細くなっている。このことにより、切断部23の幅23Dは、切断部23以外の幅よりも狭くなっている。
【0029】
図4および
図5に示すように、第1端部21におけるY方向の長さL21は、第1端子61と平面視で重なる領域に対応する寸法とされている。第2端部22におけるY方向の長さL22は、第2端子62と平面視で重なる領域から切断部23側に延在している。したがって、第2端部22におけるY方向L22の長さは、第1端部21におけるY方向の長さL21よりも長くなっている。
【0030】
図5に示すように、切断部23と第1端部21との間には、平面視略台形の第1連結部25が配置されている。平面視略台形の第1連結部25における平行な辺の長い方が、第1端部21と結合されている。また、切断部23と第2端部22との間には、平面視略台形の第2連結部26が配置されている。平面視略台形の第2連結部26における平行な辺の長い方が、第2端部22と結合されている。第1連結部25と第2連結部26とは、切断部23に対して対称となっている。このことにより、ヒューズエレメント2におけるX方向の幅は、切断部23から第1端部21および第2端部22に向かって徐々に広くなっている。その結果、ヒューズエレメント2に過電流が流れた時に、切断部23がヒートスポットとなって、切断部23が優先的に昇温して軟化され、容易に切断される。
【0031】
すなわち、本実施形態では、ヒューズエレメント2に過電流が流れた時には、ヒューズエレメント2に1箇所のみ設けられた切断部23が切断される。したがって、本実施形態では、例えば、ヒューズエレメント2におけるX方向の幅が均一である場合や、ヒューズエレメント2に複数の切断部が形成されている場合と比較して、ヒューズエレメント2が容易に切断される。よって、本実施形態では、強度の低い押圧手段5を用いることができ、押圧手段5およびケース6の小型化を図ることができる。
【0032】
図4および
図5に示すように、ヒューズエレメント2の切断部23は、第1端部21および第2端部22よりもX方向の幅が狭い。それによって、切断部23は、切断部23と第1端部21との間の領域、および切断部23と第2端部22との間の領域よりも切断されやすくなっている。ヒューズエレメント2の切断部23は、可動部材3と凹状部材4とによって切断される部分であればよく、第1端部21および第2端部22よりも幅狭であるものに限定されない。
【0033】
図5に示すように、ヒューズエレメント2全体の平面形状は、略矩形であり、一般的なヒューズエレメントと比較して、X方向の幅が相対的に広く、Y方向の長さが相対的に短い。本実施形態の保護素子100では、ヒューズエレメント2を物理的に切断し、切断されたヒューズエレメントの切断面同士の距離を短時間で引き離すことにより、切断時に発生するアーク放電を低減できるとともに、発生したアーク放電の継続を抑制できる。このため、アーク放電を抑制するために、ヒューズエレメント2におけるX方向の幅を狭くする必要がなく、ヒューズエレメント2におけるX方向の幅を広く、Y方向の長さを短くできる。このようなヒューズエレメント2を有する保護素子100は、保護素子100の設置される電流経路における抵抗値上昇を抑制できるため、大電流の電流経路にも好ましく設置できる。
【0034】
ヒューズエレメント2の材料としては、合金を含む金属材料など、公知のヒューズエレメントに用いられる材料を用いることができる。具体的には、ヒューズエレメント2の材料として、Pb85%/Sn、Sn/Ag3%/Cu0.5%などの合金を例示できる。
ヒューズエレメント2は、通常作動中の通電によっては実質的に変形しない。ヒューズエレメント2は、ヒューズエレメント2を構成する材料の軟化温度以上の温度で切断される。軟化温度以上の温度であるから、「軟化温度」で切断されてもよい。
本明細書において「軟化温度」とは、固相と液相とが混在あるいは共存する温度、あるいは温度範囲を意味する。軟化温度は、ヒューズエレメント2が外力により変形するくらい柔らかくなる温度あるいは温度帯(温度範囲)である。
【0035】
例えば、ヒューズエレメント2が2成分系合金からなる場合、固相線(溶融を始める温度)と液相線(完全に溶融する温度)との間の温度範囲では、固相と液相が混じり合った、いわばシャーベット状の状態となっている。この固相と液相が混在あるいは共存する温度範囲は、ヒューズエレメント2が外力により変形するくらい柔らかくなる温度範囲である。この温度範囲が「軟化温度」である。
【0036】
ヒューズエレメント2が3成分系合金あるいは多成分系合金からなる場合、上記固相線および液相線を固相面および液相面と読み替えて、同様に固相と液相が混在あるいは共存する温度範囲が「軟化温度」である。
ヒューズエレメント2が合金からなる場合、固相線と液相線との間に温度差があるので、「軟化温度」は温度範囲を有する。
ヒューズエレメント2が単一金属からなる場合、固相線/液相線は存在せず、1点の融点/凝固点が存在する。ヒューズエレメント2が単一金属からなる場合、融点または凝固点において、固相と液相の混在あるいは共存する状態になるので、融点または凝固点が本明細書における「軟化温度」である。
【0037】
固相線と液相線測定は、温度上昇過程において相状態変化に伴う潜熱による不連続点(時間変化におけるプラトーな温度)として行うことができる。固相と液相が混在あるいは共存する温度あるいは温度範囲を有する合金材料および単一金属共に、本実施形態のヒューズエレメント2の材料として用いることができる。
【0038】
ヒューズエレメント2は、
図4および
図5に示すように、1個の部材(パーツ)からなるものであってもよいし、材料の異なる複数個の部材(パーツ)からなるものであってもよい。
ヒューズエレメント2が材料の異なる複数個の部材で形成されている場合、各部材の形状は、ヒューズエレメント2の用途、材料などに応じて決定でき、特に限定されない。
【0039】
材料の異なる複数個の部材で形成されているヒューズエレメント2としては、例えば、軟化温度の異なる材料からなる複数個の部材で形成されている場合が挙げられる。ヒューズエレメント2が、軟化温度の異なる材料からなる複数個の部材で形成されている場合、軟化温度の低い材料から順に固相と液相の混在状態となり、軟化温度の最も低い材料の軟化温度以上で切断される。
【0040】
材料の異なる複数個の部材で形成されているヒューズエレメント2としては、種々の構造をとることができる。
例えば、内層の外面が外層で被覆された断面形状を有する構造であって、内層と外層とが軟化温度の異なる材料からなるものであってもよい。この場合の断面形状は、矩形であってもよいし、円形であってもよく、特に限定されない。また、この場合、内層が低融点金属からなり、外層が高融点金属からなるものであることが好ましい。
【0041】
また、軟化温度の異なる材料からなる層状部材が、厚み方向に複数積層された積層体であってもよい。この場合、軟化温度の異なる材料からなる層状部材の積層数は、2層であってもよいし、3層であってもよく、4層以上であってもよい。
このようなヒューズエレメント2は、積層体が、軟化温度の高い材料からなる層を含むため、剛性が確保されたものとなる。また、積層体が、軟化温度の低い材料からなる層を含むため、低温で柔らかくなり、低温で切断可能とされる。すなわち、ヒューズエレメント2が、上記積層体である場合、軟化温度の低い材料の層から順に固相と液相の混在状態となり、積層体全体が軟化温度に達しなくてもヒューズエレメント2は切断され得る。
【0042】
具体的には、ヒューズエレメント2は、内層と、これを挟む外層とが厚み方向に積層された3層構造の積層体であって、内層と外層とが軟化温度の異なる材料からなるものであってもよい。このようなヒューズエレメント2では、積層体の内層と外層のうち、軟化温度の低い材料の層において固相と液相の混在状態が先に始まり、軟化温度の高い材料の層が軟化温度に達する前に切断され得る。3層構造の積層体は、内層が低融点金属からなり、外層が高融点金属からなるものであることが好ましい。
【0043】
ヒューズエレメント2の材料として使用される低融点金属としては、SnもしくはSnを主成分とする金属を用いることが好ましい。Snの融点は232℃であるため、Snを主成分とする金属は低融点であり、低温で柔らかくなる。例えば、Sn/Ag3%/Cu0.5%合金の固相線は217℃である。
【0044】
ヒューズエレメント2の材料として使用される高融点金属としては、AgもしくはCu、またはAgもしくはCuを主成分とする金属を用いることが好ましい。例えば、Agの融点は962℃であるため、Agを主成分とする金属からなる層は、低融点金属からなる層が柔らかくなる温度では剛性が維持される。
【0045】
ヒューズエレメント2は、公知の方法により製造できる。
例えば、ヒューズエレメント2が、内層が低融点金属からなり、外層が高融点金属からなる3層構造の積層体である場合、以下に示す方法により製造できる。まず、低融点金属からなる金属箔を用意する。次に、金属箔の表面全面に、めっき法を用いて高融点金属層を形成し、積層板とする。その後、積層板を切断して所定の形状とする。以上の工程により、3層構造の積層体からなるヒューズエレメント2が得られる。
【0046】
(可動部材)
本実施形態の保護素子100では、
図3および
図4に示すように、ヒューズエレメント2の切断部23を挟み込むように、可動部材3と凹状部材4とが対向配置されている。
本実施形態において、可動部材3および凹状部材4がヒューズエレメント2の切断部23を挟み込むとは、可動部材3および凹状部材4がヒューズエレメント2を上下から挟み込んでおり、かつ、Z方向から平面視して、可動部材3および凹状部材4が切断部23と重なっていることを意味する。可動部材3および凹状部材4のいずれもが、切断部23と接しているか否かは問わない。
【0047】
可動部材3は、押圧手段5からの押圧力によってヒューズエレメント2を切断するものである。可動部材3は、単体の部材からなるものであってもよいし、複数の部材からなるもの(
図3参照)であってもよい。
【0048】
本実施形態の保護素子100は、可動部材3として、
図3および
図4に示すように、凸状部材33と非凸状部材である発熱部材31とを有する。可動部材3は、凸状部材33のみであってもよいし、非凸状部材のみであってもよい。可動部材3は、凸状部材33と非凸状部材の両方を有することが好ましい。本実施形態では、凸状部材33が、押圧手段5と切断部23との間に備えられている。非凸状部材(発熱部材31)は、切断部23に接して配置されることにより、凸状部材33と切断部23との間に備えられている。
【0049】
<非凸状部材>
可動部材3として用いられる非凸状部材は、ヒューズエレメント2側に凸状部分を有さない部材であり、例えば、板状部材である。非凸状部材は、発熱部材であってもよい。本実施形態では、非凸状部材として発熱部材31を備える場合を例に挙げて説明する。
本実施形態の保護素子100では、発熱部材31が、ヒューズエレメント2の押圧手段5側に、切断部23に接して配置されている。発熱部材31は、切断部23に接して配置されておらず、切断部23に近接して配置されていてもよい。切断部23に近接して配置されているとは、例えば、発熱部材31と切断部23との間の距離が1mm以下である場合が挙げられる。
【0050】
図6は、第1実施形態の保護素子100におけるヒューズエレメント2と発熱部材31との配置関係を説明するための図面であり、
図6(a)は押圧手段5側から見た平面図であり、
図6(b)は凹状部材4側から見た斜視図である。
図7は、第1実施形態の保護素子100に備えられた発熱部材31の構造を説明するための図面であり、
図7(a)はY方向から見た断面図であり、
図7(b)はX方向から見た断面図であり、
図7(c)は平面図である。
【0051】
図7(a)〜
図7(c)に示すように、発熱部材31は、板状部材であり、絶縁基板31aと、発熱部31bと、絶縁層31cと、エレメント接続電極31dと、給電線電極31e、31fとを有する。発熱部材31は、ヒューズエレメント2の切断部23を加熱して軟化させる機能と、押圧手段5の押圧力を切断部23に負荷する機能とを有する可動部材3である。
絶縁基板31aは、
図7(a)〜
図7(c)に示すように、X方向を長辺の延在方向とする平面視略長方形を有する。
絶縁基板31aとしては、公知の絶縁性を有する基板を用いることができ、例えば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどからなるものが挙げられる。
【0052】
図7(a)〜
図7(c)に示すように、発熱部31bは、絶縁基板31aの第2表面(
図7(a)〜
図7(c)における下面)上に形成されている。
図7(c)に示すように、発熱部31bは、平面視略長方形の絶縁基板31aの一方の長辺縁部に沿って、X方向に延在して帯状に設けられている。
発熱部31bは、給電線63b、64bを介して通電されることにより発熱する導電性材料からなる抵抗体であることが好ましい。発熱部31bの材料としては、例えば、ニクロム、W、Mo、Ruなどの金属を含む材料が挙げられる。
【0053】
図7(a)〜
図7(c)に示すように、給電線電極31e、31fは、絶縁基板31aのX方向端部に設けられ、一部が発熱部31bの両端部31g、31gとそれぞれ平面視で重なる位置に設けられている。給電線電極31e、31fは、公知の電極材料で形成できる。給電線電極31e、31fは、発熱部31bと電気的に接続されている。
給電線電極31e、31fは、ヒューズエレメント2に定格電流を越えた電流が流れた場合など、保護素子100の通電経路となる外部回路に異常が発生し、通電経路を遮断する必要が生じた場合に、外部回路に設けられた電流制御素子によって発熱部31bに通電するためのものである。
【0054】
図7(a)〜
図7(c)に示すように、絶縁層31cは、発熱部31bの形成されている側の絶縁基板31aの表面上に設けられている。絶縁層31cは、発熱部31bと、絶縁層31c上に露出されている発熱部31bと給電線電極31e、31fとの接続部とを覆うように、絶縁基板31aのX方向中央部に設けられている。絶縁層31cは、絶縁基板31aのX方向端部には設けられていない。このことにより、給電線電極31e、31fの一部は、絶縁層31cに被覆されておらず、露出されている。
絶縁層31cは、発熱部31bを保護し、発熱部31bの発熱した熱を効率よくヒューズエレメント2に伝えるとともに、発熱部31bとエレメント接続電極31dとの絶縁を図る。絶縁層31cは、ガラスなどの公知の絶縁材料で形成できる。
【0055】
図7(a)〜
図7(c)に示すように、エレメント接続電極31dは、絶縁層31c上の発熱部31bと平面視で重なる位置に設けられている。エレメント接続電極31dは、公知の電極材料で形成できる。エレメント接続電極31dは、ヒューズエレメント2と接続されている。
【0056】
図7(a)〜
図7(c)に示す発熱部材31では、平面視略長方形の絶縁基板31aの一方の長辺縁部に沿って、発熱部31bと、絶縁層31cと、エレメント接続電極31dと、給電線電極31e、31fとが設けられているが、これらは絶縁基板31aの両方の長辺縁部に沿って設けられていてもよい。この場合、例えば、発熱部材31と給電線63b、64bとを電気的に接続する際に、給電線電極31e、31fの設けられていない端部と、給電線電極31e、31fとを間違えることによる歩留まりの低下を防止できる。
【0057】
図7(a)〜
図7(c)に示す発熱部材31は、エレメント接続電極31d側の面をヒューズエレメント2と対向させて配置される。したがって、発熱部31bとヒューズエレメント2との間には、絶縁基板31aが配置されない。このため、発熱部31bとヒューズエレメント2との間に、絶縁基板31aが配置されている場合と比較して、発熱部31bで発生した熱が、効率よくヒューズエレメント2に伝えられる。
【0058】
図7(a)〜
図7(c)に示す発熱部材31は、例えば、以下に示す方法により製造できる。まず、絶縁基板31aを用意する。また、発熱部31bとなる材料と樹脂バインダとを含むペースト状の組成物を作製する。その後、絶縁基板31aの第2表面(
図7(a)〜
図7(c)における下面)上に、上記の組成物をスクリーン印刷して所定のパターンを形成し、焼成する。このことにより、発熱部31bが形成される。
【0059】
次に、給電線電極31e、31fを公知の方法により形成し、発熱部31bの両端部31g、31gとそれぞれ電気的に接続する。次に、絶縁層31cを公知の方法により形成し、絶縁層31cによって発熱部31bを覆うとともに、発熱部31bと給電線電極31e、31fとの接続部を覆う。
その後、絶縁層31c上に、公知の方法により、エレメント接続電極31dを形成する。
以上の工程により、
図7(a)〜
図7(c)に示す発熱部材31が得られる。
【0060】
図8は、発熱部材の他の例を説明するための図面であり、
図8(a)は発熱部材32をY方向から見た断面図であり、
図8(b)は
図8(a)に示す発熱部材32のX方向中央部をX方向から見た断面図である。
図8(c)は発熱部材310をY方向から見た断面図であり、
図8(d)は
図8(c)に示す発熱部材310のX方向中央部をX方向から見た断面図である。
【0061】
本実施形態の保護素子100においては、
図7(a)〜
図7(c)に示す発熱部材31に代えて、
図8(a)および
図8(b)に示す発熱部材32が備えられていてもよい。
図8(a)および
図8(b)に示す発熱部材32において、
図7(a)〜
図7(c)に示す発熱部材31と同じ部材については、同じ符号を付し、説明を省略する。
図8(a)および
図8(b)に示す発熱部材32における各部材の平面配置は、
図7(a)〜
図7(c)に示す発熱部材31の各部材の平面配置と同じである。
【0062】
図8(a)および
図8(b)に示す発熱部材32は、板状部材であり、
図7(a)〜
図7(c)に示す発熱部材31と同様に、絶縁基板31aと、発熱部31bと、絶縁層31cと、エレメント接続電極31dと、給電線電極31e、31fとを有する。
図8(a)および
図8(b)に示すように、発熱部31bは、絶縁基板31aの第1表面(
図8(a)および
図8(b)における上面)上に形成されている。
【0063】
図8(a)および
図8(b)に示すように、給電線電極31e、31fは、一部が発熱部31bの両端部とそれぞれ平面視で重なる位置に設けられている。絶縁層31cは、発熱部31bの形成されている側の絶縁基板31aの表面上に設けられている。絶縁層31cは、発熱部31bと、絶縁層31c上に露出されている発熱部31bと給電線電極31e、31fとの接続部とを覆うように、絶縁基板31aのX方向中央部に設けられている。絶縁層31cは、絶縁基板31aのX方向端部には設けられていない。このことにより、給電線電極31e、31fの一部は、絶縁層31cに被覆されておらず、露出されている。絶縁層31cは、発熱部31bを保護し、発熱部31bが発熱した熱を効率よくヒューズエレメント2に伝える。
【0064】
図8(a)および
図8(b)に示すように、発熱部材32におけるエレメント接続電極31dは、
図7(a)〜
図7(c)に示す発熱部材31とは異なり、絶縁基板31aの発熱部31bが設けられている側と反対側の表面である第2表面(
図8(a)および
図8(b)における下面)上に形成されている。エレメント接続電極31dは、絶縁基板31aを介して、絶縁層31cと対向して配置されている。エレメント接続電極31dは、
図7(a)〜
図7(c)に示す発熱部材31と同様に、ヒューズエレメント2と接続されている。
【0065】
本実施形態の保護素子100においては、
図7(a)〜
図7(c)に示す発熱部材31に代えて、
図8(c)および
図8(d)に示す発熱部材310が備えられていてもよい。
図8(c)および
図8(d)に示す発熱部材310において、
図7(a)〜
図7(c)に示す発熱部材31と同じ部材については、同じ符号を付し、説明を省略する。
図8(c)および
図8(d)に示す発熱部材310のX方向中央部をX方向から見た断面における各部材の配置は、
図7(a)〜
図7(c)に示す発熱部材31の各部材と同じである。
【0066】
図8(c)および
図8(d)に示す発熱部材310は、板状部材であり、
図7(a)〜
図7(c)に示す発熱部材31と同様に、絶縁基板31aと、発熱部31bと、絶縁層31cと、エレメント接続電極31dと、給電線電極31e、31fとを有する。
図8(c)に示すように、発熱部31bは、絶縁基板31aの第2表面(
図8(c)における下面)上に形成されている。
図8(c)に示すように、発熱部31bは、平面視略長方形の絶縁基板31aの一端から他端まで、一方の長辺縁部に沿ってX方向に延在して帯状に設けられている。
【0067】
図8(c)に示すように、発熱部31b上には、絶縁層31cが設けられている。絶縁層31cは、発熱部31bの両端部31g、31gを除く領域上を覆うように、絶縁基板31aのX方向中央部に設けられている。したがって、発熱部31bの両端部31g、31gは、絶縁層31cに被覆されておらず、露出されている。
図8(c)に示すように、給電線電極31e、31fは、絶縁基板31aのX方向端部に設けられ、発熱部31bの両端部31g、31gとそれぞれ平面視で重なっている。このことにより、給電線電極31e、31fは、発熱部31bと電気的に接続されている。
【0068】
図8(c)に示すように、エレメント接続電極31dは、絶縁層31c上の給電線電極31e、31fが設けられている領域を除く領域に設けられている。
図8(c)に示すように、エレメント接続電極31dは、給電線電極31e、31fと離間して配置されている。エレメント接続電極31dは、絶縁層31c上の発熱部31bと平面視で重なる位置に設けられている。
【0069】
図3に示すように、発熱部材31は、ヒューズエレメント2の切断部23上(
図3における上面)に接して配置されている。
図6(a)および
図6(b)に示すように、発熱部材31は、ヒューズエレメント2の切断部23と、第2連結部26と、第2端部22の第2連結部26側の一部と、平面視で重なって配置されている。しかも、本実施形態では、
図7(a)に示すように、発熱部材31の発熱部31bが、平面視略長方形の絶縁基板31aの一方の長辺縁部に沿って設けられている。このため、発熱部材31が、ヒューズエレメント2の切断部23と平面視で重なって配置されている。したがって、本実施形態の保護素子100では、発熱部材31によって、効率よく切断部23が加熱される。
【0070】
図4、
図6(a)および
図6(b)に示すように、発熱部材31の給電線電極31e、31f(
図7(a)〜
図7(c)参照)は、それぞれ給電線63b、64bによって第3端子63、第4端子64と、電気的に接続されている。本実施形態では、発熱部材31と、第3端子63および第4端子64とを、給電線63b、64bからなる給電部材によって電気的に接続している場合を例に挙げて説明する。給電部材は、発熱部材31と、第3端子63および第4端子64とを電気的に接続できればよく、給電部材の形状は、給電線63b、64bのような線形状に限定されるものではない。
図4に示すように、第3端子63は、外部端子孔63aを備えている。また、第4端子64は、外部端子孔64aを備えている。外部端子孔63aおよび外部端子孔64aは、
図4に示すように、平面視略円形の貫通孔とすることができる。
【0071】
第3端子63および第4端子64の形状は、図示しない外部端子に係合可能な形状であればよく、例えば、一部に開放部分を有するつめ形状であってもよいし、
図4に示すように、給電線63b、64bと接続される側の端部に、給電線63b、64bに向かって両側に拡幅された鍔部(
図4において符号63c、64cで示す。)を有していてもよく、特に限定されない。第3端子63および第4端子64が鍔部63c、64cを有する場合、ケース6のスリット63d、64dから第3端子63および第4端子64が抜けにくく、信頼性および耐久性の良好な保護素子100となる。
【0072】
図4に示すように、第3端子63と第4端子64とは、略同形であってもよいし、それぞれ異なる形状であってもよい。第3端子63および第4端子64に用いられる材料としては、第1端子61および第2端子62と同様のものが挙げられる。
本実施形態では、
図4に示すように、第3端子63、第4端子64、第1端子61、第2端子62として、同じ材料からなる略同形のものを用いることができる。
【0073】
<凸状部材>
図9は、第1実施形態の保護素子100に備えられた凸状部材33の構造を説明するための図面である。
図9(a)は第1表面から見た図であり、
図9(b)はX方向から見た側面図であり、
図9(c)はY方向から見た側面図であり、
図9(d)は第2表面から見た図であり、
図9(e)および
図9(f)は斜視図である。
【0074】
凸状部材33は、
図3に示すように、ヒューズエレメント2側に凸状部分を有する部材である。凸状部材33は、押圧手段5の押圧力を、ヒューズエレメント2の切断部23に負荷する機能を有する可動部材である。
図9(a)および
図9(d)に示すように、凸状部材33は、平面視略矩形の形状を有している。凸状部材33の平面視で対向する二辺には、それぞれ外方(X方向)に向かって延びる凸状領域33d、33dが設けられている。
【0075】
図9(a)〜
図9(c)、
図9(e)に示すように、凸状部材33の第1表面(上面)側には、第1ガイド部材33aおよび第2ガイド部材33bが立設されている。第1ガイド部材33aおよび第2ガイド部材33bの高さ(上面からZ方向の長さ)は、
図9(c)に示すように全て同じであってもよいし、例えば、第1ガイド部材33aと第2ガイド部材33bとで異なっていてもよい。第1ガイド部材33aおよび第2ガイド部材33bの高さは、押圧手段5の形状に応じて適宜決定できる。
【0076】
第1ガイド部材33aは、
図9(a)に示すように、凸状部材33の凸状領域33d、33dの縁部にそれぞれ設けられている。各第1ガイド部材33aは、凸状部材33の縁部に沿う方向を長辺方向とする平面視略長方形の柱状形状を有している。各第1ガイド部材33aの外面は、凸状部材33を凹状部材4の所定の位置に設置するためのガイドとして機能する。
【0077】
第2ガイド部材33bは、
図9(a)に示すように、凸状部材33の四隅にそれぞれ設けられている。各第2ガイド部材33bは、略三角柱状である。第1ガイド部材33aの内面および第2ガイド部材33bの内面は、第1ガイド部材33aと第2ガイド部材33bとに囲まれた押圧手段収納領域33h内に、押圧手段5を設置するためのガイドとして機能する。
【0078】
図9(b)〜
図9(d)、
図9(f)に示すように、凸状部材33の第2表面(下面)側には、第2表面から突出した凸部33cが設けられている。凸部33cは、平面視で凸状部材33の2つの凸状領域33d、33d間を繋ぐように帯状に設けられている。したがって、
図9(d)に示すように、凸部33cの長さL33は、凸状部材33のX方向の幅と同じとされている。
【0079】
図9(d)に示すように、凸部33cは、幅広部33f、33fと、中央部33eと、高さの低い領域33g、33gとを有している。
幅広部33f、33fは、凸状領域33d、33dに配置されている。中央部33eは、幅広部33f、33fの間の中央部分に配置されている。高さの低い領域33g、33gは、幅広部33f、33fと中央部33eとの間にそれぞれ設けられている。高さの低い領域33g、33gは、
図9(c)に示すように、中央部33eよりも第2表面から凸出している高さの低い領域である。
【0080】
凸部33cの高さの低い領域33gは、発熱部材の給電線電極31e、31fと平面視で重なる位置に設けられていることが好ましい。高さの低い領域33gは、凸状部材33と発熱部材とを積層することにより、凸部33cと発熱部材との間に隙間を形成する。高さの低い領域33gが、発熱部材の給電線電極31e、31fと平面視で重なる位置に設けられ、発熱部材が、
図8(a)および
図8(b)に示す発熱部材32のように、凸状部材33側の面に給電線電極31e、31fが配置されたものである場合、高さの低い領域33gによって形成される凸部33cと発熱部材との間の隙間は、発熱部材32の給電線電極31eと給電線63bとを接続するための領域、および給電線電極31fと給電線64bとを接続するための領域として利用できる。
【0081】
凸部33cの幅広部33f、33fの幅D1(
図9(d)参照)は、凸状領域33d、33dの幅と同じである。高さの低い領域33g、33gの幅および中央部33eの幅D2は、幅広部33f、33fの幅D1よりも片側の幅が狭くなっている。
図16に示すように、中央部33eの幅D2は、発熱部材31のY方向の幅D3よりも狭い。このことにより、押圧手段5による押圧が、凸状部材33の凸部33cと発熱部材31とを介して、ヒューズエレメント2の切断部23に、効率よく負荷される。
【0082】
凸部33cにおける中央部33eの幅D2と、発熱部材31のY方向の幅D3との比(D2:D3)は、1:1.2〜1:5であることが好ましく、1:1.5〜1:4であることがより好ましい。D2とD3との比が上記範囲内である場合、D2がD3よりも十分に狭いため、押圧手段5による押圧力を切断部23に効率よく伝えることができる。また、D2とD3との比が上記範囲内である場合、D2が狭すぎて、凸部33cのヒューズエレメント2側の面と、ヒューズエレメント2の凸部33c側の面とが平行に配置されにくくなることがなく、好ましい。凸部33cのヒューズエレメント2側の面と、ヒューズエレメント2の凸部33c側の面とが平行に配置されている場合、押圧手段5による押圧力を切断部23に効率よく伝えることができる。
【0083】
図9(b)に示すように、凸部33cの高さ33Hは、
図9(c)に示すように、幅広部33f、33fと中央部33eとは略同じである。
図16に示すように、凸部33cの高さ33Hは、凹状部材4における凹部46の深さH46よりも短い。
凹部46の深さH46に対する凸部33cの高さ33Hの割合(33H/H46)は、0.1〜0.8であることが好ましく、0.2〜0.6であることがより好ましい。上記割合が上記範囲内であると、凹部46内に入り込んだ凸部33cによって、ヒューズエレメント2の切断された両端部間が、より確実に遮蔽される。その結果、ヒューズエレメント2の切断された両端部間の距離が長くなり、ヒューズエレメント2の切断時に発生するアーク放電の継続をより短時間で抑制できる。
【0084】
図9(d)に示す凸部33cの中央部33eの長さL2(
図18参照)は、発熱部材31の長さ(X方向の幅)L3(
図6(a)、
図18参照)よりも狭くなっている。このことにより、押圧手段5による押圧が、凸状部材33の凸部33cと発熱部材31とを介して、ヒューズエレメント2の切断部23に、効率よく負荷される。中央部33eの長さL2は、押圧手段5による押圧を切断部23に均一に負荷できるため、切断部23におけるX方向の幅23D(
図5、
図17(b)参照)以上の寸法であることが好ましい。
【0085】
凸状部材33は、ヒューズエレメント2を構成する材料の軟化温度においても硬い状態を維持できる絶縁材料、あるいは実質的に変形しない絶縁材料からなる。具体的には、凸状部材33の材料として、セラミックス材料、ガラス転移温度の高い樹脂材料などを用いることができる。
樹脂材料のガラス転移温度(Tg)とは、軟質のゴム状態から硬質のガラス状態になる温度をいう。樹脂をガラス転移温度以上に加熱すると、分子が運動しやすくなり、軟質のゴム状態になる。一方、樹脂が冷えていくと、分子の運動が制限されて、硬質のガラス状態になる。
【0086】
セラミックス材料としては、アルミナ、ムライト、ジルコニアなどを例示でき、アルミナなどの熱伝導率の高い材料を用いることが好ましい。凸状部材33がセラミックス材料などの熱伝導率の高い材料で形成されている場合、ヒューズエレメント2の切断時に発生した熱を効率よく外部に放熱でき、ヒューズエレメント2の切断時に発生するアーク放電の継続がより効果的に抑制される。
【0087】
ガラス転移温度の高い樹脂材料としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂などのエンジニアリングプラスチック、ナイロン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂などを例示できる。樹脂材料は、一般にセラミックス材料よりも熱伝導率は低いが、低コストである。
【0088】
樹脂材料の中でも、ナイロン系樹脂は、耐トラッキング性(トラッキング(炭化導電路)破壊に対する耐性)が高く、好ましい。ナイロン系樹脂の中でも、特に、ナイロン46、ナイロン6T、ナイロン9Tを用いることが好ましい。耐トラッキング性は、IEC60112に基づく試験により求めることができる。ナイロン系樹脂としては、耐トラッキング性が、250V以上であるものを用いることが好ましく、600V以上のものを用いることがより好ましい。
【0089】
凸状部材33は、例えば、セラミックス材料などの樹脂以外の材料で作製し、凸部33cの一部をナイロン系樹脂で被覆してもよい。
凸状部材33は、公知の方法により製造できる。
【0090】
(凹状部材)
図10は、第1実施形態の保護素子100に備えられた凹状部材4の構造を説明するための図面である。
図10(a)は第1表面から見た図であり、
図10(b)はX方向から見た側面図であり、
図10(c)はY方向から見た側面図であり、
図10(d)は第2表面から見た図であり、
図10(e)は斜視図である。
図10(a)および
図10(d)に示すように、凹状部材4は、X方向を長辺方向とする平面視略長方形の形状を有している。
【0091】
図10(a)〜
図10(c)、
図10(e)に示すように、凹状部材4の第1表面(上面)側には、端子設置領域41、42、43、44と、凹部46と、第1ガイド部材4aと、第2ガイド部材4bとが設けられている。
端子設置領域41、42、43、44は、略同型であり、平面視略長方形の凹状部材4の各辺に沿って帯状に設けられた周囲の高さよりも低い平面からなる。
【0092】
図1および
図4に示すように、端子設置領域41には、ヒューズエレメント2の第1端部21と第1端子61との結合部が載置される。端子設置領域41と周囲の高さとの差は、第1端子61の厚みに対応する寸法とされている。端子設置領域42には、ヒューズエレメント2の第2端部22と第2端子62との結合部が載置される。端子設置領域42と周囲の高さとの差は、第2端子62の厚みに対応する寸法とされている。端子設置領域43には、第3端子63の給電線63bとの結合部が載置される。端子設置領域43と周囲の高さとの差は、第3端子63の厚みに対応する寸法とされている。端子設置領域44には、第4端子64の給電線64bとの結合部が載置される。端子設置領域44と周囲の高さとの差は、第4端子64の厚みに対応する寸法とされている。
【0093】
図10(a)および
図10(e)に示すように、第1ガイド部材4a、4aおよび第2ガイド部材4b、4bは、平面視で端子設置領域41、42、43、44に囲まれた領域の内側に、端子設置領域43または端子設置領域44に接して配置されている。第1ガイド部材4a、4aは、平面視略L字型柱状である。第2ガイド部材4b、4bは、平面視略矩形柱状である。2つの第2ガイド部材4b、4bは、平面視略長方形の凹状部材4における対向する長辺のうち、一方の長辺側に配置されている。第1ガイド部材4a、4aおよび第2ガイド部材4b、4bは、凸状部材33を凹状部材4の所定の位置に設置するためのガイドとして機能する。
【0094】
第1ガイド部材4a、4aおよび第2ガイド部材4b、4bの高さ(上面からZ方向の長さ)は、
図10(c)に示すように略同じとされている。第1ガイド部材4a、4aおよび第2ガイド部材4b、4bの高さは、
図3に示すように、ケース6の収容部65内の形状に応じて適宜決定できる。
【0095】
図10(a)および
図10(e)に示すように、凹部46は、平面視で凹状部材4の中央部に設けられている。凹部46は、幅の広い幅広部46aと、幅広部46aを挟むように配置され、幅広部46aよりも第1ガイド部材4a、4a側のみ幅が狭い幅狭部46b、46cとを有する。
図10(a)に示すように、幅狭部46bは、端子設置領域43と第1ガイド部材4aと第2ガイド部材4bと接している。幅狭部46cは、端子設置領域44と第1ガイド部材4aと第2ガイド部材4bと接している。
【0096】
凹部46の幅広部46aにおけるY方向の幅D4(
図10(a)、
図16参照)は、凸状部材33の凸部33cにおける幅広部33f、33fの幅D1(
図16には不図示、
図9(d)参照)、および中央部33eの幅D2(
図16参照)よりも広く、かつ発熱部材31のY方向の幅D3(
図16参照)よりも広い。また、凹部46の幅広部46aにおけるX方向の長さL4(
図10(a)、
図18参照)は、凸状部材33の凸部33cの長さL33(
図18参照)より長く、かつ発熱部材31の長さ(X方向の幅)L3(
図18参照)よりも長い。また、
図16に示すように、平面視で凹部46の幅広部46a内の位置に、切断部23、発熱部材31、凸状部材33の凸部33cが配置されている。すなわち、平面視で凹部46の内側のエリアの少なくとも一部と外周が重なる位置であって、切断部23の一部と重なる位置に凸部33cが配置されている。したがって、本実施形態の保護素子100では、切断部23が切断されることにより、
図15(b)および
図17(b)に示されるように、凹部46の幅広部46a内に、凸状部材33の凸部33cが挿入されるとともに、発熱部材31が収容される。
【0097】
図10(a)に示す平面視で凹部46の内壁面46dに近接する位置には、
図3に示すように、ヒューズエレメント2の切断部23における第1端部21側の縁部が配置され、凹部46の幅広部46aにおけるX方向の長さL4が、切断部23におけるX方向の幅23D(
図17(b)参照)よりも長い。このため、切断部23が切断されると、
図15(b)および
図17(b)に示すように、切断部23で分断されたヒューズエレメント2の一部が折れ曲がるように凹部46内に収容される。
【0098】
平面視で凹部46の内壁面46dと、切断部23における第1端部21側の縁部とが、近接する位置に配置されている場合の両者間の距離の目安は、例えば、0.1〜0.5mmであり、好ましくは0.2〜0.4mmである。両者が近接する位置に配置されている場合、凹部46の幅広部46a内に、凸状部材33の凸部33cが挿入される際に、切断部23における第1端部21側の縁部が、凹部46の内壁面46dに接触しつつ差し込まれる。その結果、切断部23における第1端部21側の縁部が、切断されやすく、好ましい。平面視で凹部46の内壁面46dと、切断部23における第1端部21側の縁部との間の距離が0.2mm以上であると、切断部23の熱が凹部46に伝わってヒューズエレメント2の軟化を妨げることを防止でき、より好ましい。
【0099】
また、凹部46の幅狭部46b、46cにおけるY方向の幅D5(
図10(a)、
図16参照)は、給電線63b、64b(
図6(a)参照)のY方向の幅よりも広い。しかも、凹部46全体のX方向の長さL5(
図10(a)、
図18参照)は、発熱部材31の長さ(X方向の幅)L3(
図18参照)よりも長い。このため、切断部23が切断されることにより、
図17(b)に示すように、切断部23の切断に伴って切断される給電線63b、64bにおける切断部23と切り離された部分が、凹部46の縁部に沿って折れ曲がるように凹部46内に収容される。
【0100】
また、
図16に示すように、発熱部材31のY方向の幅(Y方向の長さ)D3は、凹部46の深さ(Z方向の長さ)H46の寸法よりも短い。このため、切断部23が切断されても発熱部材31は折れ曲がらず、
図15(b)および
図17(b)に示されるように、全体形状を維持したまま凹部46内に収容される。
【0101】
図10(b)〜
図10(d)に示すように、凹状部材4の第2表面(下面)47b側の中央部には、凹状部材4の長さ方向に帯状に凸部47が配置されている。凸部47の頂部47aは、ケース6から露出される。
【0102】
凹状部材4の材料としては、凸状部材33と同様のものを用いることができる。凹状部材4の材料としては、低コストおよび耐トラッキング性の観点から、ナイロン系樹脂またはフッ素系樹脂を用いることが好ましい。凹状部材4の材料と、凸状部材33との材料とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
凹状部材4が、セラミックス材料などの熱伝導率の高い材料で形成されている場合、ヒューズエレメント2の切断時に発生した熱を効率よく外部に放熱でき、ヒューズエレメント2の切断時に発生するアーク放電の継続がより効果的に抑制される。
凹状部材4は、セラミックス材料などの樹脂以外の材料で作製し、凹部46の一部をナイロン系樹脂で被覆してもよい。
凹状部材4は、公知の方法により製造できる。
【0103】
(押圧手段)
押圧手段5は、可動部材3と凹状部材4とが切断部23を挟み込む方向(Z方向)に、相対的な距離を縮めるように力を加えるものである。本実施形態の保護素子100における押圧手段5は、可動部材3の凸状部材33と凹状部材4との切断部23を挟み込む方向(Z方向)の相対的な距離を縮めるように力を加えるものである。
【0104】
押圧手段5としては、例えば、バネ、ゴムなど、弾性力を付与できる公知の手段を用いることができる。
本実施形態の保護素子100においては、押圧手段5としてバネが用いられている。バネ(押圧手段5)は、
図9(e)に示す凸状部材33の押圧手段収納領域33h上に載置され、縮められた状態で保持されている。
【0105】
押圧手段5として用いるバネの材料としては、公知のものを用いることができる。
押圧手段5として用いられるバネとしては、円筒状のものを用いてもよいし、円錐状のものを用いてもよい。押圧手段5として円錐状のバネを用いる場合、外径の小さい側を切断部23側に向けて配置してもよいし、外径の大きい側を切断部23側に向けて配置してもよい。
【0106】
押圧手段5として用いられるバネとしては、
図3に示すように、収縮長を短くできるため円錐状のものを用いることが好ましい。また、押圧手段5として円錐状のバネを用いる場合、外径の小さい側を切断部23側に向けて配置することがより好ましい。このことにより、例えば、バネが金属などの導電性材料で形成されている場合に、ヒューズエレメント2の切断時に発生するアーク放電の継続をより効果的に抑制できる。これは、アーク放電の発生場所と、バネを形成している導電性材料との距離が確保されやすくなるためである。また、押圧手段5として円錐状のバネを用い、外径の大きい側を切断部23側に向けて配置した場合、押圧手段5から可動部材3により均等に弾性力を付与でき、好ましい。
【0107】
本実施形態の保護素子100においては、押圧手段5を切断部23の可動部材3側に1つのみ設置しているが、切断部23の可動部材3側に複数個の押圧手段5を設置してもよい。
保護素子100が複数個の押圧手段5を備える場合、各押圧手段5の縮める程度を異なるものとすることにより、保護素子100全体における弾性力を調整してもよい。
【0108】
(ケース)
本実施形態の保護素子100におけるケース6は、
図1、
図3、
図4に示すように、押圧手段5と可動部材3とヒューズエレメント2と凹状部材4の凹部46とを収容する。ケース6は、
図1〜
図4に示すように、第1ケース6aと、第1ケース6aと対向配置されて接合された第2ケース6bの2つの部材からなる。
図1〜
図4に示すように、ケース6の一部材である第1ケース6aと第2ケース6bとは同じものである。
【0109】
図11は、第1実施形態の保護素子100に備えられた第1ケース6aおよび第2ケース6bの構造を説明するための図面である。
図11(a)は押圧手段5側から見た図であり、
図11(b)はX方向から見た側面図であり、
図11(c)はY方向から見た側面図であり、
図11(d)は凹状部材4側から見た図であり、
図11(e)は斜視図である。
【0110】
図11(a)〜
図11(d)に示すように、第1ケース6aおよび第2ケース6bは、それぞれ、X方向の面の長さよりもY方向の面の長さが短い略直方体形状を有している。
図3に示すように、第1ケース6a内および第2ケース6b内には、それぞれ第1ケース6aと第2ケース6bとを接合することにより一体化される収容部65が形成されている。収容部65は、押圧手段5を縮められた状態に保持する保持枠として機能する。すなわち、押圧手段5は、可動部材3と凹状部材4とでヒューズエレメント2の切断部23を挟み込む方向の相対的な距離を縮めるように力を加えた状態で、ケース6内に収容されている。
図11(a)〜
図11(d)に示すように、第1ケース6aおよび第2ケース6bにおいては、X方向に延びる2つの面のうち一方の面が、対向配置される面であり、収容部65の開口部とされている。
【0111】
図11(c)に示すように、第1ケース6aおよび第2ケース6bの有する収容部65は、それぞれ第1内壁面6cと第2内壁面6dと側壁面66とを有する。各収容部65における第1内壁面6cと第2内壁面6dと側壁面66とは、同一部材で一体形成されており、第1内壁面6cと第2内壁面6dと側壁面66は、一体化されている。第1ケース6aおよび第2ケース6bはそれぞれ、ヒューズエレメント2が切断されていない状態で、押圧手段5より発生するケース6内部の応力を、第1内壁面6cと側壁面66と第2内壁面6dとで、凸状部材33とヒューズエレメント2を介して鎹状に支え保持する。第1実施形態の保護素子100は発熱部材31を備えているので、第1ケース6aおよび第2ケース6bはそれぞれ、ヒューズエレメント2が切断されていない状態で、押圧手段5より発生するケース6内部の応力を、第1内壁面6cと側壁面66と第2内壁面6dとで、凸状部材33と発熱部材31とヒューズエレメント2を介して鎹状に支え保持する。
【0112】
図11(c)〜
図11(e)に示すように、第1内壁面6cと、第2内壁面6dとは、押圧手段5の伸縮方向(Z方向)に対向して配置されている。第1内壁面6cは、収容部65の天面を形成している。
図15(a)および
図17(a)に示すように、第1内壁面6cは、押圧手段5に接して配置される。第2内壁面6dは、収容部65の底面を形成している。第2内壁面6dは、
図15(a)に示すように、凹状部材4の第2表面(下面)47bに接して配置される。
【0113】
第1内壁面6cおよび第2内壁面6dは、一体化された側壁面66とともに枠状構造を形成し、押圧手段5を縮められた状態に保持する。そして、第1ケース6aと第2ケース6bとは、
図11(c)および
図11(e)に示す段差67、68に、接着剤を塗布して対向配置されることによって接合される。このため、本実施形態の保護素子100では、例えば、押圧手段5の伸縮方向(Z方向)に開口する開口部を有し、接着剤を用いて開口部に蓋を接合するケースを用いる場合のように、縮められた状態の押圧手段5からの応力が接合面にかかることがなく、押圧手段5を縮められた状態で安定して保持できるとともに、押圧手段5の押圧力を長期間保持できる。
【0114】
側壁面66は、
図11(c)〜
図11(e)に示すように、第1内壁面6cと第2内壁面6dとを押圧手段5の伸縮方向(Z方向)に繋ぐものであり、収容部65の側面を形成している。
図11(c)および
図11(e)に示すように、側壁面66は、X方向に延在する第1側壁面6hと、Y方向に延在して対向配置された第2側壁面6fおよび第3側壁面6gとを有する。
【0115】
図11(c)および
図11(e)に示すように、第1側壁面6hのX方向中央における高さ方向(Z方向)中心部には、X方向に細長い略長円形状の貫通孔からなる開口部61d(または62d)が設けられている。開口部61d(または62d)には、
図1、
図2(a)〜
図2(d)に示すように、第1端子61(または第2端子62)が貫通される。したがって、開口部61d(または62d)の幅および長さは、第1端子61(または第2端子62)のケース6から露出される部分の形状に応じて決定される。
【0116】
図11(c)に示すように、第2側壁面6fの縁部における高さ方向(Z方向)中心部には、Y方向に細長いスリット63dが設けられている。第2側壁面6fのY方向の幅は、スリット63dより上の部分が、スリット63dより下の部分よりも広くなっている。
第3側壁面6gの縁部における高さ方向(Z方向)中心部には、Y方向に細長いスリット64dが設けられている。第3側壁面6gのY方向の幅は、スリット64dより上の部分が、スリット64dより下の部分よりも狭くなっている。
【0117】
第1ケース6aの第2側壁面6fの縁部は、第2ケース6bの第3側壁面6gの縁部と接合されることにより一体化され、ケース6のY方向に延びる一方の側面を形成する。また、第1ケース6aの第3側壁面6gの縁部は、第2ケース6bの第2側壁面6fの縁部と接合されることにより一体化され、ケース6のY方向に延びる他方の側面を形成する。
第1ケース6aと第2ケース6bとが接合されることにより、スリット64dとスリット63dとが連結される。このことにより、ケース6のY方向に延びる2つの側面には、それぞれY方向に細長い略長円形状の貫通孔からなる開口部が形成される。形成された開口部には、第3端子63(または第4端子64)が貫通される。したがって、スリット64dおよびスリット63dの幅および長さは、第3端子63(または第4端子64)のケース6から露出される部分の形状に応じて決定される。
【0118】
図11(a)、
図11(c)、
図11(e)に示すように、第1内壁面6cの縁部におけるX方向中心位置から、第3側壁面6gにおけるスリット64dよりも第1内壁面6c側の縁部は、厚みが薄くなっており、外面の延在面との段差68が形成されている。第1内壁面6cの縁部におけるX方向中心位置から、第2側壁面6fにおけるスリット63dよりも第1内壁面6c側の縁部は、厚みが薄くなっており、内面の延在面に段差67が形成されている。第1内壁面6cおよび側壁面66の縁部に連続して形成されている段差67、68は、第1ケース6aと第2ケース6bとの接合面である。段差67、68は、第1ケース6aと第2ケース6bとを接合する際の位置ずれを防止するとともに、接合面を増加させて接合強度を向上させる。
【0119】
第1内壁面6cと第2内壁面6dと側壁面66の形状は、
図1および
図3に示すように、縮められた状態の押圧手段5と可動部材3とヒューズエレメント2と凹状部材4とが積層された形状に対応する形状とされている。
本実施形態におけるケース6は、
図2(a)〜
図2(d)および
図3に示すように、第1ケース6aと第2ケース6bとを対向配置して接合して用いられる。ケース6内には、押圧手段5が縮められた状態で収容される。
【0120】
ケース6の材料としては、凸状部材33と同様のものを用いることができる。ケース6の材料と、凸状部材33との材料とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
ケース6がセラミックス材料などの熱伝導率の高い材料で形成されている場合、ヒューズエレメント2の切断時に発生した熱を効率よく外部に放熱でき、ヒューズエレメント2の切断時に発生するアーク放電の継続がより効果的に抑制される。
ケース6は、公知の方法により製造できる。
【0121】
(保護素子の製造方法)
次に、本実施形態の保護素子100の製造方法について、例を挙げて説明する。
図12〜
図14は、第1実施形態の保護素子100の製造方法の一例を説明するための工程図である。
本実施形態の保護素子100を製造するには、
図12(a)に示すように、第1端子61、第2端子62、第3端子63、第4端子64を用意する。
【0122】
次に、
図5に示すヒューズエレメント2を用意する。そして、
図12(b)に示すように、第1端子61上に、ヒューズエレメント2の第1端部21をハンダ付けすることにより接続する。また、第2端子62上に、第2端部22をハンダ付けすることにより接続する。本実施形態においてハンダ付けに使用されるハンダ材料としては、公知のものを用いることができ、抵抗率と融点の観点からSnを主成分とするものを用いることが好ましい。
第1端部21、第2端部22と、第1端子61、第2端子62とは、溶接による接合によって接続されていてもよいし、リベット接合、ネジ接合などの機械的接合によって接続されていてもよく、公知の接合方法を用いることができる。
【0123】
次に、給電線63b、64bを用意する。そして、
図12(b)に示すように、第3端子63上に、給電線63bをハンダ付けすることにより接続する。また、第4端子64上に、給電線64bをハンダ付けすることにより接続する。給電線63b、64bと第3端子63および第4端子64とは、溶接による接合によって接続されていてもよく、公知の接合方法を用いることができる。
【0124】
次に、
図7(a)〜
図7(c)に示す発熱部材31を用意する。そして、
図12(c)に示すように、発熱部材31の第2表面(
図12(c)における下面)に配置された給電線電極31e、31f(
図12(c)においては不図示)と給電線63b、64bとを、例えば、ハンダ付けする方法により接続する。さらに、発熱部材31の第2表面(
図12における下面)に配置されたエレメント接続電極31d(
図12(c)においては不図示)とヒューズエレメント2とを、例えば、ハンダ付けする方法により接続する。
【0125】
次に、
図10(a)〜
図10(e)に示す凹状部材4を用意する。そして、
図13(a)に示すように、凹状部材4の凹部46上に発熱部材31を載置するとともに、端子設置領域41に第1端子61を、端子設置領域42に第2端子62を、端子設置領域43に第3端子63を、端子設置領域44に第4端子64をそれぞれ設置する。
【0126】
次に、
図9(a)〜
図9(f)に示す凸状部材33を用意する。そして、
図13(b)に示すように、凸部33cを発熱部材31側に向けて、発熱部材31上に凸状部材33を設置する。このとき、凹状部材4の第1ガイド部材4aと第2ガイド部材4bの間に、凸部33cの第1ガイド部材33aを設置する。
次に、
図13(c)に示すように、凸状部材33の押圧手段収納領域33h内に、押圧手段5を設置する。本実施形態においては、
図13(c)に示すように、押圧手段5としての円錐状のバネを使用する。円錐状のバネは、外径の小さい側を切断部23側に向けて、押圧手段収納領域33h内に設置する。
【0127】
次に、
図14(a)に示すように、第1ケース6aと第2ケース6bとを用意する(
図11(a)〜
図11(e)参照)。そして、第1ケース6aの開口部61dに、第1端子61を貫通させる。また、第1ケース6aと第2ケース6bとを対向配置させて、第2ケース6bの開口部62dに、第2端子62を貫通させる。
【0128】
その後、第1ケース6aと第2ケース6bとを接合する。第1ケース6aと第2ケース6bとを接合する際には、第1ケース6aの第1内壁面6cおよび側壁面66の縁部に連続して形成された段差67と、第2ケース6bの第1内壁面6cおよび側壁面66の縁部に連続して形成され段差68とを接合するとともに、第2ケース6bに形成された段差67と、第1ケース6aに形成された段差68とを接合する。
【0129】
第1ケース6aと第2ケース6bとの接合には、必要に応じて接着剤を用いることができる。接着剤としては、例えば、熱硬化性樹脂を含む接着剤を用いることができる。
また、第1ケース6aと第2ケース6bとを接合する際には、必要に応じて、第1ケース6aと凹状部材4、および/または第2ケース6bと凹状部材4を、接着剤を用いて接合してもよい。
【0130】
第1ケース6aと第2ケース6bとを接合する際には、
図3に示すように、第1ケース6aおよび第2ケース6bの第2内壁面6dに接するように、凹状部材4の第2表面(下面)47bを配置する。また、
図3に示すように、第1ケース6aおよび第2ケース6bの第1内壁面6cに接するように、縮められた状態で押圧手段5を配置する。このことにより、ケース6の収容部65内に、縮められた状態の押圧手段5収容される。
【0131】
また、第1ケース6aと第2ケース6bとを接合する際には、対向配置された第1ケース6aのスリット63dと、第2ケース6bのスリット64dとに、第3端子63(または第4端子64)を挿入する。その結果、第1ケース6aと第2ケース6bとを接合することにより、スリット64dとスリット63dとが連結して形成された開口部から、第3端子63(または第4端子64)の一部が、ケース6の外部に露出された状態となる(
図14(b)参照)。
以上の工程により、本実施形態の保護素子100が得られる。
【0132】
(保護素子の動作)
次に、本実施形態の保護素子100のヒューズエレメント2に定格電流を越えた電流が流れた場合における保護素子100の動作について、図面を用いて説明する。
図15〜
図18は、第1実施形態の保護素子100において、ヒューズエレメントの切断部の切断前と切断後の状態を説明するための断面図である。
図15は、第1実施形態に係る保護素子100を
図2に示すA−A´線に沿って切断した断面図である。
図16は、
図15(a)の一部を拡大して示した拡大断面図である。
図17は、第1実施形態の保護素子100を
図2に示すB−B´線に沿って切断した断面図である。
図18は、
図17(a)の一部を拡大して示した拡大断面図である。
図15(a)および
図17(a)は切断前の状態である。
図15(b)および
図17(b)は切断後の状態である。
【0133】
本実施形態の保護素子100のヒューズエレメント2に定格電流を越えた電流が流れると、ヒューズエレメント2は、過電流による加熱および発熱部材31による加熱によって昇温する。そして、昇温して軟化したヒューズエレメント2の切断部23は、凸状部材33の凸部33cと発熱部材31とを介して負荷される押圧手段5からの押圧力によって切断され、通電が遮断される。
【0134】
保護素子100では、ヒューズエレメント2の切断部23が軟化温度で切断される。すなわち、ヒューズエレメント2が完全溶融状態に至る前の柔らかくなる温度あるいは固相と液相とが混在する温度で、切断部23が切断される。したがって、保護素子100では、ヒューズエレメント2の切断時に発生する熱量が少なくて済み、切断部23の切断時に発生するアーク放電自体を低減できる。
【0135】
本実施形態の保護素子100においては、ヒューズエレメント2に、凸状部材33の凸部33cと発熱部材31とを介して、押圧手段5による押圧が負荷されている。このため、ヒューズエレメント2の温度が、ヒューズエレメント2を構成する材料の軟化温度以上の温度になっていなくても切断されることのないように、ヒューズエレメント2の構成、押圧手段5の弾性力などを適正に設定する必要がある。
【0136】
本実施形態の保護素子100に備えられている発熱部材31は、保護素子100の通電経路となる外部回路に異常が発生して通電経路を遮断する必要が生じた場合に、外部回路に設けられた電流制御素子によって通電される発熱部31bを有する。このため、ヒューズエレメント2に定格電流を越えた電流が流れると発熱部材31が発熱する。よって、ヒューズエレメント2に定格電流を越えた電流が流れた場合におけるヒューズエレメント2の昇温速度が速く、迅速にヒューズエレメント2の切断部23が切断される。
【0137】
アーク放電は、電位間距離に反比例する電界強度に依存する。本実施形態の保護素子100において電位間距離とは、切断された切断部23の両切断面同士の最短距離を意味する。
本実施形態の保護素子100では、押圧手段5の押圧力によって、凹状部材4の凹部46内に凸状部材33の凸部33cが挿入され、切断されたヒューズエレメント2が凸状部材33の凸部33cおよび発熱部材31とともに凹状部材4に収容される。このことにより、
図15(b)および
図17(b)に示すように、切断されたヒューズエレメント2の切断面同士の距離が、急速に広げられる。その結果、ヒューズエレメント2の切断時にアーク放電が発生しても、アーク放電は速やかに低減される。したがって、本実施形態の保護素子100は、例えば、高電圧かつ大電流の電流経路に設置された場合であっても、ヒューズエレメント2の切断時に発生するアーク放電の継続を抑制できる。
【0138】
本実施形態の保護素子100では、ヒューズエレメント2の切断部23が切断されると、
図15(b)および
図17(b)に示すように、発熱部材31に接していないヒューズエレメント2が凹部46の縁部に沿って折れ曲がり、発熱部材31に接していたヒューズエレメント2が発熱部材31とともに凹部46内に収容される。したがって、ヒューズエレメント2を介した通電経路は、物理的に確実に遮断される。
【0139】
本実施形態の保護素子100では、押圧手段5からの押圧力によって凹状部材4の凹部46内に凸状部材33の凸部33cが挿入されることで、給電線63b、64bが給電線電極31e、31fと切り離され、ヒューズエレメント2の第2端部22が凹部46内に収容される(
図15(a)および
図15(b)参照)。したがって、ヒューズエレメント2が切断されると、発熱部材31への給電が遮断され、発熱部材31の発熱が停止する。よって、本実施形態の保護素子100は、優れた安全性を有する。
【0140】
以上説明したように、本実施形態の保護素子100は、ヒューズエレメント2の切断部23を挟み込むように、可動部材3および凹状部材4が対向配置され、可動部材3と凹状部材4との切断部23を挟み込む方向の相対的な距離を縮めるように力を加える押圧手段5が備えられている。このため、ヒューズエレメント2の軟化温度以上の温度において切断部23が切断される。その結果、本実施形態の保護素子100では、ヒューズエレメント2の切断時に発生する熱量が少なくて済み、切断時に発生するアーク放電を低減できる。また、本実施形態の保護素子100では、押圧手段5の押圧力によって、切断されたヒューズエレメント2が可動部材3とともに凹状部材4に収容される。このことにより、切断されたヒューズエレメント2の切断面同士の距離が、急速に広げられる。その結果、ヒューズエレメント2の切断時にアーク放電が発生しても、アーク放電は速やかに低減される。
【0141】
[第2実施形態]
図19は、第2実施形態に係る保護素子200の外観を示した図面である。
図19(a)は平面図であり、
図19(b)および
図19(c)は側面図であり、
図19(d)は斜視図である。
図20は、第2実施形態の保護素子200の一部を説明するための拡大図であり、ヒューズエレメント2aを示した平面図である。
図21は、第2実施形態の保護素子200におけるヒューズエレメント2aと発熱部材31との配置関係を説明するための図面である。
図21(a)は押圧手段5側から見た平面図であり、
図21(b)は凹状部材4側から見た斜視図である。
【0142】
第2実施形態に係る保護素子200において、上述した第1実施形態に係る保護素子100と同じ部材については、同じ符号を付し、説明を省略する。
第2実施形態に係る保護素子200が、第1実施形態に係る保護素子100と異なるところは、保護素子100における第4端子64および給電線64bを有さないことと、ヒューズエレメントの形状のみである。
【0143】
第2実施形態に係る保護素子200の有するヒューズエレメント2aは、第1実施形態の保護素子100におけるヒューズエレメント2と同様に、第1端部21と第2端部22との間に設けられた切断部23aを有している(
図20、
図21(a)および
図21(b)参照)。
図20に示すように、ヒューズエレメント2aの切断部23aにおけるX方向の幅23aDは、第1端部21におけるX方向の幅21Dおよび第2端部22におけるX方向の幅22Dよりも細くなっている。
【0144】
本実施形態におけるヒューズエレメント2aでは、第1実施形態におけるヒューズエレメント2とは異なり、
図20における上側の縁部は略直線とされている。一方、
図20におけるヒューズエレメント2aの下側の縁部の切断部23aに対応する部分には、ヒューズエレメント2と同様に切り欠きが設けられている。このことにより、
図20、
図21(a)および
図21(b)に示すように、切断部23の幅23aDは、切断部23a以外の幅よりも狭くなっている。
【0145】
第2実施形態に係る保護素子200では、第1実施形態の保護素子100と同様に、発熱部材31の給電線電極31e(
図7(a)〜
図7(c)参照)が、給電線63bによって第3端子63と電気的に接続されている(
図21(a)および
図21(b)参照)。一方、第2実施形態に係る保護素子200では、第1実施形態の保護素子100とは異なり、発熱部材31の給電線電極31f(
図7(a)〜
図7(c)参照)は、ヒューズエレメント2aと電気的に接続されている。
【0146】
第2実施形態に係る保護素子200においては、本実施形態の保護素子100と同様に、ヒューズエレメント2aの切断部23aを挟み込むように、可動部材3および凹状部材4が対向配置され、可動部材3と凹状部材4との切断部23を挟み込む方向の相対的な距離を縮めるように力を加える押圧手段5が備えられている。このため、本実施形態の保護素子100と同様に、ヒューズエレメント2aの切断時に発生するアーク放電を低減できるとともに、アーク放電が発生しても速やかに低減される。
【0147】
第2実施形態に係る保護素子200では、
図7(a)〜
図7(c)に示す発熱部材31を備える場合を例に挙げて説明したが、第2実施形態に係る保護素子200においても第1実施形態に係る保護素子100と同様に、
図8(a)および
図8(b)に示す発熱部材32が備えられていてもよいし、
図8(c)および
図8(d)に示す発熱部材310が備えられていてもよい。
【0148】
第2実施形態に係る保護素子200では、
図20に示すヒューズエレメント2aを備える場合を例に挙げて説明したが、第2実施形態に係る保護素子200においても第1実施形態に係る保護素子100と同様に、
図5に示すヒューズエレメント2が備えられていてもよい。この場合においても、第2実施形態に係る保護素子200と同様に、第4端子64および給電線64bを有さず、発熱部材31の給電線電極31f(
図7(a)〜
図7(c)参照)をヒューズエレメント2と電気的に接続する。
【0149】
[第3実施形態]
上述した第1実施形態および第2実施形態では、発熱部材31が、ヒューズエレメント2の押圧手段5側に、切断部23に接して配置されている場合を例に挙げて説明したが、発熱部材31は、ヒューズエレメント2の凹状部材4側に、切断部23に接して配置されていてもよい。
図22は、第3実施形態の保護素子300において、ヒューズエレメントの切断部の切断前と切断後の状態を説明するための断面図であり、第1実施形態の保護素子100における
図2に示すA−A´線に対応する位置に沿って切断した断面図である。
図22(a)は切断前の状態である。
図22(b)は切断後の状態である。
【0150】
第3実施形態に係る保護素子300において、上述した第1実施形態に係る保護素子100と同じ部材については、同じ符号を付し、説明を省略する。
第3実施形態に係る保護素子300が、第1実施形態に係る保護素子100と異なるところは、保護素子100における発熱部材31が、ヒューズエレメント2の凹状部材4側に切断部23に接して配置されているところのみである。
【0151】
したがって、第3実施形態に係る保護素子300においても、本実施形態の保護素子100と同様に、ヒューズエレメント2の切断時に発生するアーク放電を低減できるとともに、アーク放電が発生しても速やかに低減される。
【0152】
[他の例]
本発明の保護素子は、上述した第1実施形態〜第3実施形態の保護素子に限定されるものではない。
例えば、上述した第1実施形態〜第3実施形態では、発熱部材31を有する保護素子100、200、300を例に挙げて説明したが、発熱部材31は、必要に応じて設けられるものであり、設けられていなくてもよい。
【0153】
上述した第1実施形態の保護素子100と同様に、発熱部材31が設けられていない保護素子においても、切断部23は、平面視で凹状部材4の凹部46内に配置され、かつ平面視で凹部46の内面に近接する位置に配置されることが好ましい。また、可動部材3についても、上述した第1実施形態の保護素子100と同様に、平面視で凹部46の内側のエリアの少なくとも一部と外周が重なる位置に配置される凸部33cを有することが好ましい。
【0154】
発熱部材31が設けられていない保護素子であっても、ヒューズエレメント2の軟化温度以上の温度において切断部23が切断される。このとき、凹部46内に凸部33cが挿入されるとともに、ヒューズエレメント2の一部が折れ曲がるように凹部46内に収容されることが好ましい。ヒューズエレメント2の切断された両端部間の距離が長くなり、ヒューズエレメント2の切断時に発生するアーク放電の継続をより短時間で抑制できるためである。
【0155】
(保護素子の動作)
次に、発熱部材31が設けられていない保護素子のヒューズエレメント2に定格電流を越えた電流が流れた場合の動作について説明する。
この場合、保護素子のヒューズエレメント2に定格電流を越えた電流が流れると、ヒューズエレメント2は、過電流による加熱によって昇温する。そして、昇温して軟化したヒューズエレメント2の切断部23は、凸状部材33の凸部33cを介して負荷される押圧手段5からの押圧力によって切断され、通電が遮断される。
【0156】
この保護素子では、ヒューズエレメント2に、凸状部材33の凸部33cを介して、押圧手段5による押圧が負荷されている。このため、押圧手段5の押圧力によって、凹状部材4の凹部46内に凸状部材33の凸部33cが挿入され、切断されたヒューズエレメント2が凸状部材33の凸部33cとともに凹状部材4に収容される。このことにより、切断されたヒューズエレメント2の切断面同士の距離が、急速に広げられる。その結果、ヒューズエレメント2の切断時にアーク放電が発生しても、アーク放電は速やかに低減される。したがって、この保護素子は、例えば、高電圧かつ大電流の電流経路に設置された場合であっても、ヒューズエレメント2の切断時に発生するアーク放電の継続を抑制できる。