【解決手段】本発明の高周波誘導加熱ヘッドは、加熱部となる磁気ギャップ(27)を有するコア体(4)と、このコア体(4)に磁束を供給するコイル(5)と、このコイル(5)を冷却する冷却手段とを備え、前記コア体(4)の磁気ギャップ(27)部分を除く外表面の、少なくとも一部を、熱伝導可能に覆う保護板(30)、(31)を設け、この保護板(30)、(31)は、前記コア体(4)よりも比透磁率が低く、かつ、前記コア体(4)よりも電気抵抗値が低い金属材によって構成したものである。
前記コア体は、正面視における左右、外径寸法よりも、表裏方向の厚み寸法が小さい板状体であり、前記板状体の表面と裏面のうち一方又は両方に、前記保護板を配置したことを特徴とする請求項1に記載の高周波誘導加熱ヘッド。
前記コア体は、正面視において、リング形状であり、前記リング形状の一部に、前記磁気ギャップを形成する隙間が形成された構成としたことを特徴とする請求項2に記載の高周波誘導加熱ヘッド。
前記コア体は、Cの字状の第1のサブコア体と、逆Cの字状の第2のサブコア体の、それぞれの一端側を重ね合わせ、前記第1、第2のサブコア体の他端側間に、隙間による磁気ギャップを形成したことを特徴とする請求項3に記載の高周波誘導加熱ヘッド。
前記第1、第2のサブコア体の一端側における重合部には、第1、第2のサブコア体を貫通する第1の貫通孔を設け、この第1の貫通孔に貫通軸を貫通させ、この貫通軸を開閉軸として、前記第1、第2のサブコア体の他端側に形成された隙間による磁気ギャップの大きさを可変可能とする構成としたことを特徴とする請求項4に記載の高周波誘導加熱ヘッド。
前記一対の第1、第2サブコア体の表面と裏面のうち、一方又は両方に設けた前記保護板は、前記第1及び第2のサブコア体にそれぞれ対応して設けた第1及び第2のサブ保護板からなることを特徴とする請求項5記載の高周波誘導加熱ヘッド。
前記コア体はフェライト材により形成し、前記保護板は銅材、あるいはアルミニウム材により形成したことを特徴とする請求項1〜7のうちいずれか一項に記載の高周波誘導加熱ヘッド。
前記冷却手段は、コイルをパイプ状とし、パイプ内に冷却水を流す構成とし、このパイプ状コイルの一部を、熱伝導部材を介して保護板に、熱的に結合したことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の高周波誘導加熱ヘッド。
前記熱伝導部材に貫通軸を保持させるとともに、この熱伝導部材に、保護板のコア体とは反対側の面を当接させたことを特徴とする請求項11に記載の高周波誘導加熱ヘッド。
請求項1〜13のいずれか一項に記載の高周波誘導加熱ヘッドと、この高周波誘導加熱ヘッドの磁気ギャップ部に配置される被加熱体を保持する保持手段と、を備えたことを特徴とする高周波誘導加熱装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記先行技術において、コア体は、フェライト材等によって形成されている。
すなわち、フェライト材は、透磁率が高く、また電気抵抗が高いことから高周波数領域での渦電流損失が小さく、高周波誘導加熱ヘッドのコア体の構成物として、多く用いられている。
しかしながら、フェライト材を焼結させて形成したコア体は、セラミックと同じように、落下や、他物品との衝突による衝撃に対して非常に脆く、簡単に損傷してしまう。
例えば、上記はんだ付け工程において、回路基板をXYテーブルなどで、高周波誘導加熱ヘッド部へ移動させる時に、既に、回路基板上に実装済みの他の電子部品がコア体に衝突すると、コア体が損傷し、その結果として、コア体の交換が必要で、生産性が低くなる虞がある。
そこで、本発明は、コア体の損傷を抑制すること等を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る高周波誘導加熱ヘッドは、加熱部となる磁気ギャップを有するコア体と、前記コア体に磁束を供給するコイルと、前記コイルを冷却する冷却手段とを備え、前記コア体の磁気ギャップ部分を除く外表面の、少なくとも一部を、熱伝導可能に覆う保護板を有し、前記保護板は、前記コア体よりも比透磁率が低く、かつ、前記コア体よりも電気抵抗値が低い金属材であることを特徴とする。
ここで保護板は、コア体を保護するものであり、詳細は後述するが、磁気ギャップの加熱効率を高める。
また、熱伝導可能に覆うことで冷却機能が向上する。
本発明は、そのような目的の範囲で構造や形状に制限がない。
【0006】
本発明において、前記コア体は、正面視における左右、外径寸法よりも、表裏方向の厚み寸法が小さい板状体であり、前記板状体の表面と裏面のうち一方又は両方に、前記保護板を配置してあってもよい。
ここで、コア体の正面視とは磁気ギャップを形成した隙間を透視する方向の一方の面から見た状態をいい、この状態で正面側を表面とし、その反対側を裏面と表現する。
また、コア体の外径寸法とは、コア体の左右の外形間の寸法をいう。
【0007】
本発明において、前記コア体は、Cの字状の第1のサブコア体と、逆Cの字状の第2のサブコア体の、それぞれの一端側を重ね合わせ、前記第1、第2のサブコア体の他端側間に、隙間による磁気ギャップを形成したものであってもよい。
さらに、前記第1、第2のサブコア体の一端側における重合部には、第1、第2のサブコア体を貫通する第1の貫通孔を設け、この第1の貫通孔に貫通軸を貫通させ、この貫通軸を開閉軸として、前記第1、第2のサブコア体の他端側に形成された隙間による磁気ギャップの大きさを調整可能にしてもよい。
【0008】
本発明において、前記一対の第1、第2サブコア体の表面と裏面のうち、一方又は両方に設けた前記保護板は、前記第1及び第2のサブコア体にそれぞれ対応して設けた第1及び第2のサブ保護板からなるようにしてもよい。
前記サブコア体の外形と、前記サブ保護板の外形を、略同一としてもよい。
ここで、外形が略同一とは、形及び大きさが概ね同じであることをいう。
また、前記コア体はフェライト材により形成し、前記保護板は銅材、あるいはアルミニウム材により形成したものであってもよい。
前記コア体と前記保護板間には、熱伝導性グリスを介在させたものであってもよい。
ここで、前記熱伝導性グリスは、シリコーン系グリスが好ましい。
【0009】
さらに、前記冷却手段は、コイルをパイプ状とし、パイプ内に冷却水を流す構成とし、このパイプ状コイルの一部を、熱伝導部材を介して保護板に、熱的に結合したものであってもよい。
また、前記熱伝導部材に貫通軸を保持させるとともに、この熱伝導部材に、保護板のコア体とは反対側の面を当接させたものであってもよい。
【0010】
なお発明は、前記コア体と保護板を空冷する送風手段を設けたものであってもよい。
【0011】
本発明の高周波誘導加熱装置は、上記高周波誘導加熱ヘッドと、この高周波誘導加熱ヘッドの磁気ギャップ部に配置される被加熱体を保持する保持手段と、を備えたことを特徴とする。
被加熱体の例としては、はんだ付け部や、局部的に特定の部位を加熱したい部品等が例として挙げられる。
この場合に加熱部位の温度制御できるように、温度センサーを組み合せることもできる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明に係る高周波誘導加熱ヘッドは、加熱部となる磁気ギャップを有するコア体と、このコア体に磁束を供給するコイルと、このコイルを冷却する冷却手段とを備え、前記コア体の磁気ギャップ部分を除く外表面の、少なくとも一部を、熱伝導可能に覆う保護板を設け、この保護板は、前記コア体よりも比透磁率が低く、かつ、前記コア体よりも電気抵抗値が低い金属材によって構成したものである。
このため、コア体に、直接的に、他の物品が衝突するのを保護板で保護することが出来、この結果として、コア体の損傷を抑制することが出来る。
また、保護板は、前記コア体よりも比透磁率が低く、かつ、前記コア体よりも電気抵抗値が低い金属材によって構成したものであるので、磁気ギャップ部以外への磁束の漏洩量を少なくすることができ、その結果として、磁気ギャップ部における加熱効率を高めることができるとともに、近傍の他の構成体を不用意に加熱することが無くなる。
すなわち、磁束はコア体内、磁気ギャップ部に集中的に流れようとするが、その一部は、コア体外へと漏れ出してしまう。
高周波誘導加熱ヘッドにおいては、大電流を流すので、漏れ磁束といえども、近傍の構成体を十分に加熱、高温化させてしまう。
これに対して本発明では、コア体から漏れ出した磁束は、前記コア体よりも比透磁率が低い保護板を通過し、また、この保護板は、前記コア体よりも電気抵抗値が低い金属材によって構成したものであるので、前記磁束の通過により、渦電流が流れ、この渦電流で、前記保護板を通過する磁束とは反対方向の磁束を発生させ、その結果として、前記コア体から保護板を介して漏れ出す磁束量が減少し、これによって、近傍の他の構成体を不用意に加熱することが無くなるのである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を、添付図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1〜
図4において、本実施形態の高周波誘導加熱ヘッド1は、箱状の本体ケース2を備えている。
本体ケース2の上面2a、下面2b、4枚の外周面2cの、合計六面は、何れも樹脂で形成され、この本体ケース2の上面2aには、IH出力接続コネクター2Aと、2個の冷却水接続コネクター3が設けられている。
また、本体ケース2の下方には、コア体4と、このコア体4に磁束を供給するコイル5が配置されている。
本体ケース2の内部には、
図5〜
図7に示すようにコンデンサ6が配置され、このコンデンサ6の両側には、それぞれ、コンデンサ6側から外方に向けて、電気水路接続体7、8が設けられている。
これらの電気水路接続体7、8はいずれも銅材によって形成され、当接する物品との電気的な導通が図れる構成となっている。
【0015】
先ず、電気水路接続体8は、全体的な形状としてはビル状で、その内部には、上下方向に延びる水路(図示せず)が形成され、この水路の上端には、電気水路接続体8の上面において、冷却水接続コネクター3が結合されている。
また、電気水路接続体8内の水路の下端は、
図7に示すように、電気水路接続体8の下部で、コンデンサ6側において水路結合部9となっている。
次に、電気水路接続体7は、全体的な形状としては板状であるが、下部の基台部10の内部には、電気水路接続体8側への横方向から、その後、下方へと延びる水路(図示せず)が形成されている。
そして、電気水路接続体7の水路で、電気水路接続体8側への端部は、
図6に示すように水路結合部11となっている。
また、電気水路接続体7の水路で、下端側への端部は、
図7に示すように水路結合部12となっている。
以上のような構成で、
図6、
図7に示す金属製のねじ13、14を用いて、左右の電気水路接続体7、8ともコンデンサ6の固定部にねじ止めすると、
図5に示すように、コンデンサ6の両側に、それぞれ、電気水路接続体7、8が一体化された構成となる。
また、この一体化作業により、左右の電気水路接続体7、8とも、それぞれ、冷却水接続コネクター3、電気水路接続体8内の水路、その水路結合部9、電気水路接続体7の水路結合部11、電気水路接続体7の水路、水路結合部12への連続した水路が形成される。
前記コンデンサ6、電気水路接続体7、8の一体化物は、本体ケース2内において、
図5の様に下面2b上に保持された状態となっており、冷却水接続コネクター3は、本体ケース2の上面2aの貫通孔A上に引き出された状態となっている。
また、二つの電気水路接続体7の基台部10の下面は、本体ケース2の下面2bの貫通孔B部に位置し、それによって、基台部10の下面の水路結合部12は、貫通孔Bを介して本体ケース2外に臨んだ状態となっている。
そして、二つの基台部10の下面に、
図6、
図7のねじ16で、コア体4と、コイル5が
図5の様に結合されている。
【0016】
具体的に説明すると、先ず、コイル5は、内部に水路が形成された銅パイプによってU字状に形成され、その一端側と、他端は、それぞれ、銅材製の前、後のコイルベース17、18に結合されている。
前、後のコイルベース17、18は、それぞれの上辺に、ねじ16を貫通させる貫通孔が形成された水平方向のフランジ17a、18aが形成され、このフランジ17a、18aの貫通孔に、下方からねじ16を貫通させ、このねじ16を、電気水路接続体7の基台部10の下面のねじ穴に螺合させることで、前、後のコイルベース17、18は、電気水路接続体7の基台部10に結合される。
また、コイルベース17、18には、それぞれ、上下方向への水路(図示せず)が形成され、コイルベース17の水路の下端には、コイル5の一端側の水路結合部(図示せず)が連結され、コイルベース18の水路の下端には、コイル5の他端側の水路結合部(図示せず)が連結されている。
また、コイルベース17の水路の上端のフランジ17aには、
図6のごとく水路結合部19が形成され、コイルベース18の水路の上端のフランジ18aには、
図6のごとく水路結合部20が形成されている。
このため、二つの基台部10の下面に、
図6、
図7の金属製のねじ16で、コイルベース17、18を固定すると、二つの基台部10の下面の水路結合部12に、コイルベース17、18の水路結合部19、20が、それぞれ、別々にゴムパッキン15を介して連結されることになる。
なお、水路結合部9、11間にも、例えば、
図7に示すようなゴムパッキン15が介在され、水漏れを防ぐ構造となっている。
以上の構成とすることで、一方の冷却水接続コネクター3から、例えば、25℃の冷却水を流し込むと、その冷却水は、一方の電気水路接続体8内の水路、水路結合部9、一方の電気水路接続体7の水路結合部11、一方の電気水路接続体7内の水路、水路結合部12、コイルベース17の水路結合部19、コイルベース17の水路、コイル5の一端側の水路結合部、コイル5の水路、コイル5の他端側の水路結合部、コイルベース18の水路、コイルベース18の水路結合部20、他方の電気水路接続体7の水路結合部12、他方の電気水路接続体7の水路、他方の電気水路接続体8内の水路、他方の冷却水接続コネクター3へと流れて、そのご、本体ケース2外の冷却部で冷却され、再び、上記一方の冷却水接続コネクター3へと循環される。
なお、コイルベース17、18間は、樹脂製の絶縁板21を介して重ね合わせ、しかも、これら両者を結合するねじ22は樹脂製で、絶縁性であるので、コイルベース17、18間における短絡的な電気的導通は起きない。
また、
図5に示す、IH出力接続コネクター2Aの一端子と、一方の電気水路接続体8の端子部23は配線(図面の煩雑化を避けるために図示せず)で接続され、また、IH出力接続コネクター2Aの他端子と、他方の電気水路接続体8の端子部24は配線(図面の煩雑化を避けるために図示せず)で接続されている。
また、コンデンサ6と電気水路接続体7、8も上記金属製のねじ13、14による一体化で、電気的に接続された状態となっている。
さらに、コンデンサ6、電気水路接続体7、8、コイルベース17、18、コイル5も、電気的に接続された状態となっている。
つまり、IH出力接続コネクター2Aからの電源供給を行うと、コンデンサ6とコイル5による共振が発生し、この共振電流が、コイル5に供給され、磁束が発生する状態となる。
【0017】
次に、この磁束による加熱を行うコア体4について説明する。
コア体4は、
図8〜
図10に示すように、Cの字状の第1のサブコア体25と、逆Cの字状の第2のサブコア体26の、それぞれの一端側(上端側)を重ね合わせ、前記サブコア体25、26の他端側(下端側)間に、隙間による磁気ギャップ27を形成した構成としている。
つまり、前記コア体4は、Cの字状のサブコア体25と、逆Cの字状のサブコア体26の、それぞれの一端側(上端側)を重ね合わせることで、正面視の状態で、リング状で、リングの一部に、前記磁気ギャップ27を形成する隙間が形成された構成としている。
そして、リング状のコア体4の内部空間に、コイル5が直線状に貫通した状態となっており、これにより、コイル5で発生した磁束が、コア体4、磁気ギャップ27に流れる構成となっている。
また、前記サブコア体25、26の一端側における重合部には、サブコア体25、26を貫通する貫通孔28を設け、この貫通孔28に貫通軸として金属製のねじ29を貫通させ、このねじ29を開閉軸として、前記磁気ギャップ27の大きさを可変する構成としている。
また、前記コア体4は、正面視の状態で、外径寸法よりも、表裏方向の板厚寸法が小さい板状とし、この板状のコア体4の表面と、裏面には、それぞれ保護板30、31を配置している。
保護板30は、Cの字状の第1のサブ保護板32と、逆Cの字状の第2のサブ保護板33の一端側(上部側)を重ね合わせるとともに、これらサブ保護板32、33の重合部には、サブ保護板32、33を貫通す貫通孔34を設け、この貫通孔34には、前記貫通軸として金属製のねじ29が貫通する。
また、保護板31は、Cの字状の第1のサブ保護板35と、逆Cの字状の第2のサブ保護板36の一端側(上部側)を重ね合わせるとともに、これらサブ保護板35、36の重合部には、サブ保護板35、36を貫通す貫通孔37を設け、この貫通孔37には、前記貫通軸として金属製のねじ29が貫通する。
つまり、貫通軸として金属製のねじ29は、サブ保護板32、33の貫通孔34、次に、サブコア体25、26の貫通孔28、その後、サブ保護板35、36の貫通孔37を貫通し、U字状の熱伝導部材38のねじ穴39にねじ込まれることになる。
そして、この構成により、コア体4は、表面も裏面も、熱伝導が可能な状態で、保護板30、31で覆われた状態となっている。
また、サブ保護板32、33の上部には、サブコア体25、26の上面を覆う様に、後方への折り曲部40が形成され、そこにねじ穴41を形成している。
さらに、サブ保護板35、36の上部には、サブ保護板32、33上部の後方への折り曲げ部を覆う様に、前方への折り曲部42が形成され、そこに貫通孔43を形成している。
また、サブ保護板35、36の上部には外方への取り付け部44を設け、そこに貫通孔45を設けている。
貫通孔43は前後方向への長孔、貫通孔45は外周方向への長孔となっている。
このような構成で、保護板31、コア体4、保護板30を重ね、熱伝導部材38に保持、固定するのであるが、その方法は、一例として、先ず、保護板31、コア体4、保護板30を重ね、貫通孔34、貫通孔28、貫通孔37に棒状の治具(図示せず)を貫通させて、軸合わせをする。
次に、保護板31の上方からねじ46を、貫通孔43を介して保護板30のねじ穴41に螺合させ、これによって、コア体4を前後から、保護板30、31で挟んだ状態とする。
そして、この様に仮のユニット化されたコア体4、保護板30、31から上記棒状の治具を抜き取り、次に、
図9の熱伝導部材38の保持部38aに配置し、保護板31、コア体4、保護板30の貫通孔34、貫通孔28、貫通孔37にねじ29を貫通させ、このねじ29を熱伝導部材38のねじ穴39にねじ込む。
また、ねじ47は保護板31の貫通孔45を貫通させ、熱伝導部材38のねじ穴48にねじ込む。
この状態で、磁気ギャップ27の大きさを調整し、最終的に、上記ねじ29、47を強く締め付け、これによって保護板31、コア体4、保護板30の熱伝導部材38への保持、固定が完了する。
以上の構成とすれば、熱伝導部材38に、保護板31のコア体4とは反対側の面が当接され、熱伝導部材38と保護板31間の熱伝導が行いやすい状態となる。
つまり、コイルベース18が、コイル5を冷却する冷却水で冷却されると、その低温は、銅材製の熱伝導部材38、銅材製の保護板31を介して、フェライト材よりなるコア体4の冷却にも活用されることになり、本実施形態では、連続24時間の稼働をさせても、コア体4の温度を100℃程度に抑制できることとなった。
【0018】
本実施形態の高周波誘導加熱ヘッドは、磁気ギャップ27部分において、回路基板のパッドに、電子部品の端子部をはんだ付けするものであり、このような、はんだ付け作業が24時間連続で行えるという事は、生産性を飛躍的に高めることが出来るものとなる。
なお、このような高周波誘導加熱ヘッドにおいては、良く知られているように、回路基板のパッド、電子部品の端子部、はんだ等が、被加熱体となるものであり、高周波誘導加熱ヘッドを用いた高周波誘導加熱としては、前記回路基板や、はんだを保持する保持手段を設ける必要が有る。
また、本実施形態では、保護板30、31は、前記コア体4よりも比透磁率が低く、かつ、前記コア体4よりも電気抵抗値が低い金属材によって構成した。
具体的には、コア体4はフェライト材により形成し、前記保護板30、31は銅材、あるいはアルミニウム材により形成した。
コア体4を構成するフェライト材の比透磁率が50〜5000であるのに対して、保護板30、31を銅材やアルミニウム材で構成した場合は、その比透磁率は略1であるので、コア体4を流れる磁束は、専らコア体4内を流れ、保護板30、31へと漏洩することは少ない。
しかしながら、本実施形態では、コイル5に100A程度の大きな電流を流すので、漏れ磁束が磁気ギャップ27を流れる磁束量に比較して十分に少なくても、コア体4近傍の構成体を十分に加熱、高温化させてしまうこともある。
これに対して本実施形態では、コア体4から漏れ出した磁束は、前記コア体4よりも比透磁率が低い保護板30、31を通過し、また、この保護板30、31は、前記コア体4よりも電気抵抗値が低い金属材によって構成したものであるので、前記磁束の通過により、渦電流が流れ、この渦電流で、前記保護板30、31を通過する磁束とは反対方向の磁束を発生させ、その結果として、前記コア体4から保護板30、31を介して漏れ出す磁束量が減少し、これによって、近傍の他の構成体を不用意に加熱することが無くなる。
実験によれば、磁気ギャップ27から4mm離れた位置における不用意な加熱を20%減少、8mm離れた位置における不用意な加熱を40%減少させることが出来た。
これにより、本来は加熱するものではない物品が、コア体4からの磁束で不用意に加熱され、それが劣化することが無くなる。
また、磁気ギャップ27近傍で、本来は加熱する予定の無い物品が、磁束によって不用意に加熱されないので、加熱作業の自由度が向上し、生産性も高まる。
また、漏れ磁束が減少するという事は、磁気ギャップ27の磁束が増加するという事でもあり、加熱効率を高めることもできる。
【0019】
なお、保護板30、31を銅材で形成した場合、その電気抵抗値は、1.68×10
−8Ωm、また、保護板30、31をアルミニウム材で形成した場合、その電気抵抗値は、2.83×10
−8Ωmで、フェライト材が略絶縁性であるのに対して、極めての電気抵抗値が小さいものである。
【0020】
また、前記コア体4の外形と、前記保護板30、31の外形を、略同一として、このコア体4の正面と、裏面を保護板30、31で覆ったので、コア体4に、直接的に、他の物品が衝突するのを保護板30、31で保護することが出来、この結果として、コア体4の損傷を抑制することが出来る。
つまり、コア体4は、フェライトで構成されるので、他の物品の衝突や、コア体4自身の落下により損傷を受けやすいものであるが、前記コア体4の外形と、前記保護板30、31の外形を、略同一として、このコア体4の正面と、裏面を保護板30、31で覆えば、コア体4に、直接的に、他の物品が衝突するのを保護板30、31で保護することが出来、この結果として、コア体4の損傷を抑制することが出来るのである。
また、前記保護板31を銅材で形成した場合の熱伝導は、403W/m・K、アルミニウム材により形成した場合の熱伝導は、236W/m・Kと熱伝導度の良いものであるので、上記コイル5を冷却水で冷却すると、保護板31を介してコア体4を十分に冷却することが出来るが、コア体4と前記保護板31間には、例えばシリコーン系グリス等の熱伝導性グリスを介在させると、さらに冷却効果を高めることができる。
【0021】
なお、上記実施形態では、コア体5を水冷する例を示したが、コア体5を空冷する構成としても良い。
例えば、熱伝導部材38、保護板30、31に空冷用の送風を行っても良い。
また、そのために熱伝導部材38、保護板30、31に放熱フィンを設けても良い。
【0022】
(実施の形態2)
図11〜
図21は、本発明の他の実施形態を示すものである。
この実施形態では、上記
図1〜
図10で説明したものをそのまま活用し、それに、温度検知機能を付加したものである。
本実施形態では、説明の煩雑化を避けるために、上記
図1〜
図10で説明した内容については説明を簡略化するが、この(実施の形態2)を正確に理解するためには、上記(実施の形態1)の説明、
図1〜
図10は、全てを理解、活用することが必要である。
また、
図11〜
図21では、図面の煩雑化を避けるために、
図1〜
図10で説明した各部品のすべての符号は付与していないが、
図11〜
図21と
図1〜
図10は、基本的に同一のものである。
【0023】
図11〜
図21の実施形態で特徴的なのは、はんだの供給装置の一例として、糸はんだ供給装置49を設けた事、温度測定手段の一例として放射温度計50、51を設けた事である。
例えば搬送手段の一例として用いたXYΘテーブル(図示せず)によって回路基板52が
図15〜
図19の様に搬送される。
回路基板52のパッド53部分には、回路基板52の裏面に実装された電子部品の端子54が、裏面側から表面側に突出されている。
この端子54は、磁気ギャップ27間に移動され、この状態で、パッド53部分に、端子54がはんだ付けされる。
その状態で、端子54の上端部分の温度を測定するのが放射温度計50、パッド53部分、端子54の下部部分の温度を測定するのが放射温度計51である。
また、これらの放射温度計50、51は
図20のごとく制御部55に接続されている。
制御部55にはタイマ56、メモリ57(
図21のプログラム等を内蔵)、電源部58も接続され、電源部58にコイル5とコンデンサ6が接続された状態となっている。
なお、糸はんだ供給装置49は、
図15に示すように、保持手段59によって、熱伝導部材38に保持させており、磁気ギャップ27部に、糸はんだ供給装置49から適切に糸はんだが供給されるようにしている。
また、放射温度計50、51は、他の保持手段によって、本体ケース2に保持させているが、図面の煩雑化を避けるために、その保持手段は図示していない。
以上の構成において、XYΘテーブル(図示せず)によって回路基板52が搬送され、
図18のように、その端子54が磁気ギャップ27部分に配置されると、予備加熱として、コイル5への電源供給が開始され(
図21のS1)、放射温度計50、51による温度測定も開始される(
図21のS2)。
この予備加熱では、例えば120A、70Wで、加熱が行われる。
放射温度計50は、
図17〜
図19に示すように、端子54の上端部分の温度を測定している。
また、放射温度計51は、
図17〜
図19に示すように、パッド53部分、端子54の下部部分の温度を測定している。
【0024】
まず、放射温度計50による測定温度(端子54の上端部分の温度)が、はんだ溶融温度(例えば300℃)を超えているか、否かの判定が行われる(
図21のS3)。
端子54の上端部分の温度が300℃を超えていなければ、次に、放射温度計51による測定温度(パッド53部分、端子54の下部部分の温度)が過熱閾値温度(例えば350℃)を超えているか、否かの判定が行われる(
図21のS4)。
放射温度計51による測定温度(パッド53部分、端子54の下部部分の温度)が過熱閾値温度(例えば350℃)を超えていなければ(
図21のS3)に戻って予備加熱が継続される。
放射温度計51による測定温度(パッド53部分、端子54の下部部分の温度)が、過熱閾値温度(例えば350℃)を超えていれば、コイル5への電源供給を停止させる(
図21のS5)。
また、(
図21のS3)において、端子54の上端部分の温度が300℃を超えると、次に、放射温度計50による測定温度(端子54の上端部分の温度)が、過熱閾値温度(例えば350℃)を超えているか、否かの判定が行われる(
図21のS6)。
(
図21のS6)において、端子54の上端部分の温度が過熱閾値温度(例えば350℃)を超えていると、コイル5への電源供給を停止させる(
図21のS7)。
(
図21のS6)において、端子54の上端部分の温度が過熱閾値温度(例えば350℃)を超えていなければ、次に、放射温度計51による測定温度(パッド53部分、端子54の下部部分の温度)が、はんだ溶融温度(例えば300℃)を超えているか、否かの判定が行われる(
図21のS8)。
(
図21のS8)において、放射温度計51による測定温度(パッド53部分、端子54の下部部分の温度)が、はんだ溶融温度(例えば300℃)を超えていなければ、(
図21のS3)に戻って、予備加熱が継続される。
また、(
図21のS8)において、放射温度計51による測定温度(パッド53部分、端子54の下部部分の温度)が、はんだ溶融温度(例えば300℃)を超えていれば、次に、放射温度計51による測定温度(パッド53部分、端子54の下部部分、はんだ供給時には、その部分のはんだ温度)が、過熱閾値温度(例えば350℃)を超えているか、否かの判定が行われる(
図21のS9)。
(
図21のS9)において、放射温度計51による測定温度(パッド53部分、端子54の下部部分の温度)が、過熱閾値温度(例えば350℃)を超えている場合には、コイル5への電源供給を停止させる(
図21のS10)。
また、(
図21のS9)において、放射温度計51による測定温度(パッド53部分、端子54の下部部分の温度)が、過熱閾値温度(例えば350℃)を超えていなければ、糸はんだ供給装置49による糸はんだ供給を開始し、また、本加熱として、コイル5への出力を90A、50Wへと変更する(
図21のS11)。
次に、放射温度計50による測定温度(端子54の上端部分の温度)が、過熱閾値温度(例えば350℃)を超えているか、否かの判定が行われる(
図21のS12)。
(
図21のS12)において、放射温度計50による測定温度(端子54の上端部分の温度)が、過熱閾値温度(例えば350℃)を超えていれば、コイル5への電源供給を停止させる(
図21のS13)。
(
図21のS12)において、放射温度計50による測定温度(端子54の上端部分の温度)が、過熱閾値温度(例えば350℃)を超えていなければ、タイマ56のタイマ時間(例えば2秒)を超えるまでは、本加熱が継続される(
図21のS14)。
また、(
図21のS14)において、タイマ時間(例えば2秒)を超えると、コイル5への電源供給を停止させる(
図21のS15)。
以上の様にこの実施形態では、端子54の上端部分の温度を放射温度計50で測定し、また、パッド53部分、端子54の下部部分の温度を放射温度計51で測定するので、適切な加熱による、適切なはんだ付けを行うことが出来る。
また、加熱し過ぎに状況で、回路基板52の損傷を発生させることも無くなる。