特開2021-190603(P2021-190603A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2021190603-保持装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-190603(P2021-190603A)
(43)【公開日】2021年12月13日
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20211115BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20211115BHJP
【FI】
   H01L21/68 R
   H02N13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-95853(P2020-95853)
(22)【出願日】2020年6月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 貴幹
(72)【発明者】
【氏名】岐部 太一
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA03
5F131BA01
5F131BA19
5F131CA03
5F131CA68
5F131EB12
5F131EB13
5F131EB14
5F131EB18
5F131EB22
5F131EB72
5F131EB78
5F131EB81
5F131EB82
5F131EB84
5F131KA23
5F131KA54
(57)【要約】
【課題】対象物の温度を精度よく測定し、対象物の温度ばらつきを低減する。
【解決手段】本開示の保持装置は、表面および裏面を有する絶縁体30と、絶縁体30の内部または裏面に配された発熱体41を有するヒータ部材と、絶縁体30の裏面側に配された測温素子と、を備え、絶縁体30の表面上に対象物を保持する保持装置において、絶縁体30を形成する材料よりも熱伝導率が大きい材料によって構成され、かつ、絶縁体30における測温素子近傍から絶縁体30の表面側に向かって配置される伝熱部25を備えた保持装置である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面および裏面を有する絶縁体と、
前記絶縁体の内部または前記裏面に配された発熱体を有するヒータ部材と、
前記絶縁体の前記裏面側に配された測温素子と、を備え、前記絶縁体の前記表面上に対象物を保持する保持装置において、
前記絶縁体を形成する材料よりも熱伝導率が大きい材料によって構成され、かつ、前記絶縁体における前記測温素子近傍から前記絶縁体の前記表面側に向かって配置される伝熱部を備えた保持装置。
【請求項2】
前記絶縁体は、前記裏面に対して前記表面側に凹んで設けられた凹部を有し、
前記凹部の底面は、前記ヒータ部材よりも前記裏面側に配されており、
前記測温素子の先端は前記凹部に配されている、請求項1に記載の保持装置。
【請求項3】
前記絶縁体の前記表面と略直交する方向を上下方向とし、前記表面側を上側とした場合に、前記絶縁体は、前記凹部と上下方向に重なり合う直上部分を有しており、
前記伝熱部は、前記直上部分に配されている、請求項2に記載の保持装置。
【請求項4】
前記伝熱部は、前記絶縁体の外部に露出した端子接続部を備え、前記測温素子の先端は前記端子接続部に接触している、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の保持装置。
【請求項5】
前記伝熱部は、前記表面側に位置する表面側端部を有し、
前記表面側端部は、前記ヒータ部材よりも前記表面側に配されている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体を製造する際にウェハを保持する保持装置として、例えば静電チャックが用いられる。静電チャックは、吸着面を有するセラミックス部材と、セラミックス部材の内部に設けられたチャック電極と、を備えており、チャック電極に電圧が印加されることにより発生する静電引力を利用して、セラミックス部材の吸着面にウェハを吸着して保持する。
【0003】
静電チャックの吸着面に保持されたウェハの温度が所望の温度にならないと、ウェハに対する各処理(成膜、エッチング等)の精度が低下するおそれがある。このため、静電チャックはウェハの温度を制御する必要があり、例えば、セラミックス部材の内部に複数のヒータ電極が設けられる。各ヒータ電極に電圧が印加されると、各ヒータ電極が発熱することによってセラミックス部材が加熱され、これにより、セラミックス部材の吸着面の温度(吸着面に保持されたウェハの温度)が所望の温度に近づくように制御される。
【0004】
例えば、特開2016−72477号公報(下記特許文献1)の図2に記載の静電チャック1では、本体基板11の内部に複数のヒータ41が配設されている。ヒータ41は、本体基板11の内部において吸着用電極21よりも下方に配置されている。ヒータ41の直下には、ヒータ41の温度を測定するための温度センサ341が設けられているため、温度センサ341によってヒータ41の温度を測定し、測定された温度に基づいて基板表面111の温度を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−72477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、基板表面111の温度を制御するのであれば、基板表面111の温度を精度よく測定することが好ましく、基板表面111の温度を精度よく測定するには、温度センサ341を基板表面111に近づけることが好ましい。ところが、温度センサ341を基板表面111に近づけていくと、温度センサ341が収容される内部穴34がその分だけ長くなるため、内部穴34における熱引き性能が悪化する。この結果、内部穴34の近傍がその周囲よりも高温になり、基板表面111の温度がばらつくことになる。このように基板表面111の温度を精度よく測定することで、基板表面111の温度ばらつきをなくすことは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の保持装置は、表面および裏面を有する絶縁体と、前記絶縁体の内部または前記裏面に配された発熱体を有するヒータ部材と、前記絶縁体の前記裏面側に配された測温素子と、を備え、前記絶縁体の前記表面上に対象物を保持する保持装置において、前記絶縁体を形成する材料よりも熱伝導率が大きい材料によって構成され、かつ、前記絶縁体における前記測温素子近傍から前記絶縁体の前記表面側に向かって配置される伝熱部を備えた保持装置である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、対象物の温度を精度よく測定でき、対象物の温度ばらつきを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態の静電チャックを一部破断して示す斜視図である。
図2図2は、実施形態の静電チャックを厚み方向に破断しその一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の保持装置は、表面および裏面を有する絶縁体と、前記絶縁体の内部または前記裏面に配された発熱体を有するヒータ部材と、前記絶縁体の前記裏面側に配された測温素子と、を備え、前記絶縁体の前記表面上に対象物を保持する保持装置において、前記絶縁体を形成する材料よりも熱伝導率が大きい材料によって構成され、かつ、前記絶縁体における前記測温素子近傍から前記絶縁体の前記表面側に向かって配置される伝熱部を備えた保持装置である。
【0011】
測温素子が絶縁体の裏面側に配されているから、絶縁体の内部に測温素子を配するための大きな空間が不要になり、測温素子の近傍で熱引き性能が低下することを抑制できる。絶縁体の表面の熱は伝熱部を伝って裏面側に向かい、測温素子によって測温されるため、絶縁体の表面の温度を精度よく測定できる。
【0012】
(2)前記絶縁体は、前記裏面に対して前記表面側に凹んで設けられた凹部を有し、前記凹部の底面は、前記ヒータ部材よりも前記裏面側に配されており、前記測温素子の先端は前記凹部に配されていることが好ましい。
凹部の底面はヒータ部材よりも裏面側に設けられているから、凹部の大きさを最小限に留めることができ、凹部によって熱引き性能が低下することを抑制できる。
【0013】
(3)前記絶縁体の前記表面と略直交する方向を上下方向とし、前記表面側を上側とした場合に、前記絶縁体は、前記凹部と上下方向に重なり合う直上部分を有しており、前記伝熱部は、前記直上部分に配されていることが好ましい。
伝熱部が直上部分に配されているから、伝熱部の長さを最短にすることができ、絶縁体の表面の温度を迅速に測定できる。
【0014】
(4)前記伝熱部は、前記絶縁体の外部に露出した端子接続部を備え、前記測温素子の先端は前記端子接続部に接触していることが好ましい。
測温素子の先端が端子接続部に接触しているため、伝熱部からの熱を測温素子の先端に直接伝えることができる。
【0015】
(5)前記伝熱部は、前記表面側に位置する表面側端部を有し、前記表面側端部は、前記ヒータ部材よりも前記表面側に配されていることが好ましい。
伝熱部の表面側端部を絶縁体の表面に近づけることができるため、絶縁体の表面の温度をさらに精度よく測定できる。
【0016】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の保持装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0017】
<静電チャック>
本開示の保持装置は、半導体ウェハ、ガラス基板など(以下「ウェハ80」という)を吸着保持できる静電チャック10である。静電チャック10は、図2に示すように、図示上方に向けられたチャック面21にて加熱対象(ワーク)であるウェハ80を吸着できるものであり、(例えば直径300mm×厚み3mmの)円盤状のセラミック基板20と、(例えば直径340mm×厚み20mmの)円盤状のベース部材60とが、ボンド材70によって接合されたものである。ベース部材60は、セラミック基板20の下側に配されている。
【0018】
静電チャック10は、減圧されたチャンバー内でプラズマを用いてエッチングなどを行うプロセスでウェハ80を載置するテーブルとして使用される。静電チャック10には、セラミック基板20とベース部材60の双方を上下方向に貫くピン挿通孔11が形成されている。このピン挿通孔11には図示しないリフトピンが挿通されており、このリフトピンを上方に移動させることでウェハ80をチャック面21から持ち上げることができる。
【0019】
静電チャック10には、ピン挿通孔11とは別に、不活性ガスをチャック面21側に供給するための図示しない流路(ガス孔)が設けられている。不活性ガスとしては、例えばヘリウムガスや窒素ガス等の不活性ガスなどを用いることができる。ウェハ80とセラミック基板20との間に不活性ガスを流すことによって、ウェハ80とセラミック基板20との間の熱伝導を向上させることができる。
【0020】
<セラミック基板>
セラミック基板20は、セラミックからなる絶縁体30と、絶縁体30の内部に配されたヒータ電極40と、絶縁体30の内部においてヒータ電極40とチャック面21との間に配されたチャック電極50と、を有する。ヒータ電極40とチャック電極50は上下方向に並んで配置され、チャック面21に近い側にチャック電極50が配置され、チャック電極50の下側にヒータ電極40が配置されている。
【0021】
ヒータ電極40とチャック電極50には、それぞれ図示しない端子が接続されている。各端子はベース部材60を上下方向に貫通する形態で配置されている。各端子は図示しない電源にそれぞれ接続されており、各電源からの電力は各端子を通じてチャック電極50とヒータ電極40とに供給可能とされている。
【0022】
<絶縁体>
絶縁体30は上面34および下面35を有し、複数のセラミック層が積層されたものである。以下においては絶縁体30の上面34と直交する軸線の方向を上下方向として説明する。ここで、直交とは、軸線と上面34が90°の角度で交わる場合のみならず、85から90°の角度で交わる場合も含むものとする。絶縁体30の上面34は、図2に示すように、セラミック基板20のチャック面21より下方に位置している。一方、絶縁体30の下面35は、セラミック基板20の下面と同じ高さに位置している。絶縁体30は、アルミナ、窒化アルミニウム、イットリア、またはアルミナと炭化珪素の複合材などを主成分とする焼結体である。絶縁体30の熱膨張係数は、3から8ppm/℃の範囲(例えば7.6ppm/℃)であり、その熱伝導率は、10から150W/m・Kである。
【0023】
<ヒータ電極>
絶縁体30の内部には、ヒータ電極40を構成する複数の発熱体41が配されている。発熱体41は、タングステン、モリブデン、またはこれらの合金、またはこれらの炭化物を主成分として構成されている。
【0024】
本開示のヒータ電極40は絶縁体30の内部に配されているものの、絶縁体30の表面や絶縁体30とは別体のヒータ部材(ポリイミドヒータ)の内部に配されているものでもよい。本開示の発熱体41としては、導体ペーストを印刷した導電パターンを焼結した導電体を使用しているものの、金属箔、金属メッシュなどを使用してもよい。
【0025】
<チャック電極>
チャック電極50は、タングステン、モリブデン、またはこれらの合金を主成分として構成されている。チャック電極50は、電圧を印加することで静電吸着力を発現するものである。静電吸着力の種類としては、クーロン力、ジョンセン・ラーベック力、またはグラディエント力などを用いることができる。本開示のチャック電極50としては、導体ペーストを印刷した導電パターンを焼結した導電体を使用しているものの、金属箔、金属メッシュなどを使用してもよい。
【0026】
<ベース部材>
ベース部材60は、アルミニウム、アルミニウム合金、金属とセラミックスの複合体(Al−SiC)、またはセラミックス(SiC)を主成分として構成されている。ベース部材60は、セラミック基板20の全体を載置できるように、セラミック基板20より大径とされている。ベース部材60は、冷媒を流す冷媒流路61を有している。ベース部材60の熱膨張係数は、5から9ppm/℃の範囲(例えば6.9ppm/℃)で、熱伝導率は、180W/m・Kであり、絶縁体30と比べて高い熱伝導性を有している。
【0027】
<ボンド材>
ベース部材60の上面62とセラミック基板20の下面との間には、ボンド材70が配置されている。ボンド材70は、シリコーン樹脂またはエポキシ樹脂を主成分として構成されている。本開示のボンド材70は、ペースト状やシート状のシリコーン接着剤を使用したものである。ボンド材70は、セラミック基板20とベース部材60を接着する役割以外に、セラミック基板20とベース部材60との間の熱伝導を行う役割と、セラミック基板20とベース部材60の熱膨張に起因する応力を緩和する役割と、を果たしている。
【0028】
<温度センサ>
本開示の静電チャック10は、絶縁体30の上面34およびセラミック基板20のチャック面21の温度を測定するための温度センサ90を備えている。温度センサ90は、ベース部材60の内部からセラミック基板20の下端部にかけて上下方向に長い棒状とされており、熱電対やサーミスタなどの測温素子を有している。温度センサ90の先端は、温度を検知するための端子91とされている。なお、本開示の温度センサ90に代えて、チップ状のサーミスタを絶縁体30の下端部に埋設するようにしてもよい。
【0029】
ベース部材60の内部には、温度センサ90を収容するための内部孔63が設けられており、内部孔63の内周には、温度センサ90の外周を囲むように、電気絶縁性を有する絶縁筒64が配置されている。絶縁体30の下面35において内部孔63と対応する位置には、端子91を収容するための凹部31が設けられている。
【0030】
凹部31は絶縁体30に設けられ、下方に開口する有底の凹部31とされている。凹部31の内面のうち絶縁体30の上面34側の内面は底面32とされている。底面32は、ヒータ電極40よりも絶縁体30の下面35側に配されている。底面32には、絶縁体30の外部に露出した端子接続部26が形成されており、この端子接続部26の表面には、めっきが形成されている。温度センサ90の端子91は、端子接続部26に接触した状態で凹部31に配されている。端子接続部26の材料としては、例えばタングステン、モリブデン、またはこれらの合金を主に用いられる。
【0031】
<伝熱部>
さて、本開示のセラミック基板20は、絶縁体30を形成する材料よりも熱伝導率が大きい材料によって構成され、絶縁体30における温度センサ90の端子91から上面34側に向かう伝熱部25を備えている。伝熱部25は、上記した端子接続部26と、水平方向に延びる複数の内部配線27と、上下方向に延びる複数のビア28と、によって構成されている。伝熱部25は導電性とされているものの、通電のためには用いられないダミー回路である。伝熱部25は絶縁体30の内部に埋設されているため、絶縁体30の内部に伝熱部25を収容するための空間は形成されていない。伝熱部25は、絶縁体30を形成する材料よりも熱伝導率が大きい材料によって構成されている。伝熱部25の材料としては、例えばタングステン、モリブデン、またはこれらの合金を主に用いられる。
【0032】
伝熱部25は、端子接続部26の上面にビア28が接合され、ビア28の上端に内部配線27が接合され、以降、ビア28と内部配線27が交互に配された構成である。本開示の伝熱部25の上端は内部配線27によって構成され、上面側端部25Uとされている。絶縁体30は、凹部31と上下方向に重なり合う直上部分33を有しており、伝熱部25は、直上部分33において上下方向に延びる形態で配されている。伝熱部25の上面側端部25Uは、ヒータ電極40よりも上方でかつチャック電極50よりも下方に配されている。
【0033】
伝熱部25は絶縁体30よりも熱伝導率が大きいから、絶縁体30の上面34の熱は主として伝熱部25を介して端子接続部26に迅速に伝わる。このため、絶縁体30の上面34の温度と端子接続部26の温度とを近づけることができる。端子接続部26に伝わる熱は、温度センサ90の端子91によって測温される。また、絶縁体30における伝熱部25の周囲に空間が形成されていないため、熱引き性能の低下によって伝熱部25の周囲の温度が高くなることはない。この結果、チャック面21に吸着保持されたウェハ80の温度を精度よく測定でき、ウェハ80の温度ばらつきを低減できる。
【0034】
<本実施形態の効果>
以上のように本実施形態の静電チャック10は、上面34および下面35を有する絶縁体30と、絶縁体30の内部に配された発熱体41を有するヒータ電極40と、絶縁体30の下面35側に配された温度センサ90と、を備え、絶縁体30の上面34上にウェハ80を保持する静電チャック10において、絶縁体30を形成する材料よりも熱伝導率が大きい材料によって構成され、かつ、絶縁体30における温度センサ90近傍から絶縁体30の上面34側に向かって配置される伝熱部25を備えた静電チャック10である。
【0035】
温度センサ90が絶縁体30の下面35側に配されているから、絶縁体30の内部に温度センサ90を配するための大きな空間が不要になり、温度センサ90の近傍で熱引き性能が低下することを抑制できる。絶縁体30の上面34の熱は伝熱部25を伝って下面35側に向かい、温度センサ90によって測温されるため、絶縁体30の上面34の温度を精度よく測定できる。
【0036】
絶縁体30は、下面35に対して上面34側に凹んで設けられた凹部31を有し、凹部31の底面32は、ヒータ電極40よりも下面35側に配されており、温度センサ90の先端は凹部31に配されていることが好ましい。
凹部31の底面32はヒータ電極40よりも下面35側に設けられているから、凹部31の大きさを最小限に留めることができ、凹部31によって熱引き性能が低下することを抑制できる。
【0037】
絶縁体30の上面34と略直交する方向を上下方向とし、上面34側を上側とした場合に、絶縁体30は、凹部31と上下方向に重なり合う直上部分33を有しており、伝熱部25は、直上部分33に配されていることが好ましい。
伝熱部25が直上部分33に配されているから、伝熱部25の長さを最短にすることができ、絶縁体30の上面34の温度を迅速に測定できる。
【0038】
伝熱部25は、絶縁体30の外部に露出した端子接続部26を備え、温度センサ90の端子91は端子接続部26に接触していることが好ましい。
温度センサ90の端子91が端子接続部26に接触しているため、伝熱部25からの熱を温度センサ90の端子91に直接伝えることができる。
【0039】
伝熱部25は、上面34側に位置する上面側端部25Uを有し、上面側端部25Uは、ヒータ電極40よりも上面34側に配されていることが好ましい。
伝熱部25の上面側端部25Uを絶縁体30の上面34に近づけることができるため、絶縁体30の上面34の温度をさらに精度よく測定できる。
【0040】
<他の実施形態>
(1)上記実施形態では、伝熱部25の下面35側の端部が温度センサ90の端子91に接触しているものの、伝熱部の下面35側の端部が温度センサ90の端子91に接触しておらず、端子91の近傍に配されているものでもよい。
【0041】
(2)上記実施形態では、温度センサ90の端子91が凹部31に配されているものの、端子91が絶縁体30の下面35に配されているものでもよい。
【0042】
(3)上記実施形態では、伝熱部25が凹部31の直上部分33において上下方向に延びて配されているものの、伝熱部の一部が凹部31から斜め上方向に延びて直上部分33以外の領域に配されているものでもよい。
【0043】
(4)上記実施形態では、端子接続部26が絶縁体30の外部に露出しているものの、端子接続部が下面35付近において絶縁体30の内部に埋設されているものでもよい。
【0044】
(5)上記実施形態では、伝熱部25の温度が周囲と同じであることを前提にして説明しているが、例えば伝熱部25が周囲よりも温度が低い温度特異点になる場合には、伝熱部25の周囲のヒータ電極40を加熱するように温度調整を行ってもよい。
【0045】
(6)上記実施形態では、伝熱部25がビア28と内部配線27によって構成されているが、伝熱部として金属のバルク体を入れる形態でもよい。
【符号の説明】
【0046】
10…静電チャック 11…ピン挿通孔
20…セラミック基板 21…チャック面 25…伝熱部 25U…上面側端部(表面側端部) 26…端子接続部 27…内部配線 28…ビア
30…絶縁体 31…凹部 32…底面 33…直上部分 34…上面(表面) 35…下面(裏面)
40…ヒータ電極(ヒータ部材) 41…発熱体
50…チャック電極
60…ベース部材 61…冷媒流路 62…上面 63…内部孔 64…絶縁筒
70…ボンド材
80…ウェハ(対象物)
90…温度センサ 91…端子(先端)
図1
図2