特開2021-190669(P2021-190669A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 太陽誘電株式会社の特許一覧
特開2021-190669積層セラミックコンデンサおよび誘電体材料
<>
  • 特開2021190669-積層セラミックコンデンサおよび誘電体材料 図000005
  • 特開2021190669-積層セラミックコンデンサおよび誘電体材料 図000006
  • 特開2021190669-積層セラミックコンデンサおよび誘電体材料 図000007
  • 特開2021190669-積層セラミックコンデンサおよび誘電体材料 図000008
  • 特開2021190669-積層セラミックコンデンサおよび誘電体材料 図000009
  • 特開2021190669-積層セラミックコンデンサおよび誘電体材料 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-190669(P2021-190669A)
(43)【公開日】2021年12月13日
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサおよび誘電体材料
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20211115BHJP
   C04B 35/468 20060101ALI20211115BHJP
【FI】
   H01G4/30 515
   H01G4/30 201L
   C04B35/468 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-98213(P2020-98213)
(22)【出願日】2020年6月5日
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】松本 康宏
(72)【発明者】
【氏名】森田 浩一郎
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E082AB03
5E082BC23
5E082BC38
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG28
5E082MM36
5E082PP03
(57)【要約】
【課題】 高誘電率および優れた温度特性を維持しつつ、高信頼性を実現することができる積層セラミックコンデンサおよび誘電体材料を提供する。
【解決手段】 積層セラミックコンデンサは、BaTiOを主成分とする誘電体層と内部電極層とが交互に積層され、略直方体形状を有し、積層された複数の内部電極層が交互に対向する2端面に露出するように形成された積層構造を備え、異なる端面に露出する内部電極層同士が対向する容量領域における誘電体層において、Ti量に対するZr量の比であるZr/Ti比が0.02以上0.10以下であり、Ti量に対するBa量の比であるBa/Ti比が0.900を上回り、1.010未満であり、Ti量に対するEu量の比であるEu/Ti比が0.005以上0.05以下であり、Ti量に対するMn量の比であるMn/Ti比が0.0005以上0.05以下であり、Eu量と比較して他の希土類元素の合計量が少ない。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BaTiOを主成分とする誘電体層と、内部電極層と、が交互に積層され、略直方体形状を有し、積層された複数の前記内部電極層が交互に対向する2端面に露出するように形成された積層構造を備え、
異なる端面に露出する内部電極層同士が対向する容量領域における前記誘電体層において、Ti量に対するZr量の比であるZr/Ti比が0.02以上、0.10以下であり、Ti量に対するBa量の比であるBa/Ti比が0.900を上回り、1.010未満であり、Ti量に対するEu量の比であるEu/Ti比が0.005以上、0.05以下であり、Ti量に対するMn量の比であるMn/Ti比が0.0005以上、0.05以下であり、Eu量と比較して他の希土類元素の合計量が少ないことを特徴とする積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記容量領域における前記誘電体層において、Eu以外の希土類元素が添加されていないことを特徴とする請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項3】
前記容量領域における前記誘電体層に含まれる結晶粒子の少なくとも1つは、コアシェル構造を有し、
前記コアシェル構造において、シェルにおけるZr濃度がコアにおけるZr濃度よりも高いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項4】
X5R特性を満足することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項5】
BaTiO粉末と添加化合物とを含み、
Ti量に対するZr量の比であるZr/Ti比が0.02以上、0.10以下であり、Ti量に対するBa量の比であるBa/Ti比が0.900を上回り、1.010未満であり、Ti量に対するEu量の比であるEu/Ti比が0.005以上、0.05以下であり、Ti量に対するMn量の比であるMn/Ti比が0.0005以上、0.05以下であり、Eu量と比較して他の希土類元素の合計量が少ないことを特徴とする誘電体材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサおよび誘電体材料に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話を代表とする高周波通信用システムにおいて、ノイズを除去するために、積層セラミックコンデンサ等のセラミック電子部品が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−197492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなセラミック電子部品において、主成分セラミックをコアとし、各種添加物が固溶したシェルでコアを覆うコアシェル構造にすることにより、高い誘電率、優れた温度特性、安定な微細構造が共存した誘電体を得ることができる。シェルを構成する代表的な添加物としてMg(マグネシウム)が挙げられる。ただし、Mgは価数が揺動しない単純なアクセプタであり、固溶して酸素欠陥を生成させるため信頼性は頭打ちとなってしまう。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、高誘電率および優れた温度特性を維持しつつ、高信頼性を実現することができる積層セラミックコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る積層セラミックコンデンサは、BaTiOを主成分とする誘電体層と、内部電極層と、が交互に積層され、略直方体形状を有し、積層された複数の前記内部電極層が交互に対向する2端面に露出するように形成された積層構造を備え、異なる端面に露出する内部電極層同士が対向する容量領域における前記誘電体層において、Ti量に対するZr量の比であるZr/Ti比が0.02以上、0.10以下であり、Ti量に対するBa量の比であるBa/Ti比が0.900を上回り、1.010未満であり、Ti量に対するEu量の比であるEu/Ti比が0.005以上、0.05以下であり、Ti量に対するMn量の比であるMn/Ti比が0.0005以上、0.05以下であり、Eu量と比較して他の希土類元素の合計量が少ないことを特徴とする。
【0007】
上記容量領域における前記誘電体層において、Eu以外の希土類元素が添加されていなくてもよい。
【0008】
上記積層セラミックコンデンサにおいて、前記容量領域における前記誘電体層に含まれる結晶粒子の少なくとも1つは、コアシェル構造を有し、前記コアシェル構造において、シェルにおけるZr濃度がコアにおけるZr濃度よりも高くてもよい。
【0009】
上記積層セラミックコンデンサは、X5R特性を満足してもよい。
【0010】
本発明に係る誘電体材料は、BaTiO粉末と添加化合物とを含み、Ti量に対するZr量の比であるZr/Ti比が0.02以上、0.10以下であり、Ti量に対するBa量の比であるBa/Ti比が0.900を上回り、1.010未満であり、Ti量に対するEu量の比であるEu/Ti比が0.005以上、0.05以下であり、Ti量に対するMn量の比であるMn/Ti比が0.0005以上、0.05以下であり、Eu量と比較して他の希土類元素の合計量が少ないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高誘電率および優れた温度特性を維持しつつ、高信頼性を実現することができる積層セラミックコンデンサおよび誘電体材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】積層セラミックコンデンサの部分断面斜視図である。
図2図1のA−A線断面図である。
図3図1のB−B線断面図である。
図4】(a)はコアシェル粒子を例示する図であり、(b)は誘電体層の模式的な断面図である。
図5】積層セラミックコンデンサの製造方法のフローを例示する図である。
図6】コアシェル構図のサイズを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0014】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100の部分断面斜視図である。図2は、図1のA−A線断面図である。図3は、図1のB−B線断面図である。図1図3で例示するように、積層セラミックコンデンサ100は、略直方体形状を有する積層チップ10と、積層チップ10のいずれかの対向する2端面に設けられた外部電極20a,20bとを備える。なお、積層チップ10の当該2端面以外の4面のうち、積層方向の上面および下面以外の2面を側面と称する。外部電極20a,20bは、積層チップ10の積層方向の上面、下面および2側面に延在している。ただし、外部電極20a,20bは、互いに離間している。
【0015】
積層チップ10は、誘電体として機能するセラミック材料を含む誘電体層11と、卑金属材料を含む内部電極層12とが、交互に積層された構成を有する。各内部電極層12の端縁は、積層チップ10の外部電極20aが設けられた端面と、外部電極20bが設けられた端面とに、交互に露出している。それにより、各内部電極層12は、外部電極20aと外部電極20bとに、交互に導通している。その結果、積層セラミックコンデンサ100は、複数の誘電体層11が内部電極層12を介して積層された構成を有する。また、誘電体層11と内部電極層12との積層体において、積層方向の最外層には内部電極層12が配置され、当該積層体の上面および下面は、カバー層13によって覆われている。カバー層13は、セラミック材料を主成分とする。例えば、カバー層13の材料は、誘電体層11とセラミック材料の主成分が同じである。
【0016】
積層セラミックコンデンサ100のサイズは、例えば、長さ0.25mm、幅0.125mm、高さ0.125mmであり、または長さ0.4mm、幅0.2mm、高さ0.2mm、または長さ0.6mm、幅0.3mm、高さ0.3mmであり、または長さ1.0mm、幅0.5mm、高さ0.5mmであり、または長さ3.2mm、幅1.6mm、高さ1.6mmであり、または長さ4.5mm、幅3.2mm、高さ2.5mmであるが、これらのサイズに限定されるものではない。
【0017】
内部電極層12は、Ni(ニッケル),Cu(銅),Sn(スズ)等の卑金属を主成分とする。内部電極層12として、Pt(白金),Pd(パラジウム),Ag(銀),Au(金)などの貴金属やこれらを含む合金を用いてもよい。
【0018】
誘電体層11は、例えば、一般式ABOで表されるペロブスカイト構造を主相とするセラミック材料を主成分とする。なお、当該ペロブスカイト構造は、化学量論組成から外れたABO3−αを含む。本実施形態においては、当該セラミック材料として、BaTiO(チタン酸バリウム)を用いる。誘電体層11は、例えば、ペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主成分とするセラミック原材料粉末を含む誘電体材料を焼成することによって得られる。
【0019】
図2で例示するように、外部電極20aに接続された内部電極層12と外部電極20bに接続された内部電極層12とが対向する領域は、積層セラミックコンデンサ100において電気容量を生じる領域である。そこで、当該電気容量を生じる領域を、容量領域14と称する。すなわち、容量領域14は、異なる外部電極に接続された隣接する内部電極層12同士が対向する領域である。
【0020】
外部電極20aに接続された内部電極層12同士が、外部電極20bに接続された内部電極層12を介さずに対向する領域を、エンドマージン15と称する。また、外部電極20bに接続された内部電極層12同士が、外部電極20aに接続された内部電極層12を介さずに対向する領域も、エンドマージン15である。すなわち、エンドマージン15は、同じ外部電極に接続された内部電極層12が異なる外部電極に接続された内部電極層12を介さずに対向する領域である。エンドマージン15は、電気容量を生じない領域である。
【0021】
図3で例示するように、積層チップ10において、積層チップ10の2側面から内部電極層12に至るまでの領域をサイドマージン16と称する。すなわち、サイドマージン16は、上記積層構造において積層された複数の内部電極層12が2側面側に延びた端部を覆うように設けられた領域である。サイドマージン16も、電気容量を生じない領域である。
【0022】
このような積層セラミックコンデンサ100において、容量領域14において、誘電体層11が含むBaTiOの結晶粒子の少なくとも一部がコアシェル構造を有すると、容量領域14における誘電体層11が高い誘電率を有し、優れた温度特性を有し、安定な微細構造が共存するようになる。
【0023】
シェルを構成する代表的な添加物として、Mgが挙げられる。しかしながら、Mgは価数が変動しない単純なアクセプタであり、誘電体層11のBaTiOに固溶して酸素欠陥を生成するため、信頼性が頭打ちになってしまう。
【0024】
そこで、本実施形態においては、容量領域14において、誘電体層11が含むBaTiOの結晶粒子の少なくとも一部が、BaTiOをコアとし、Zr(ジルコニウム)の拡散層をシェルとしたコアシェル構造を有している。なお、シェルは、BaTiOを主成分とする。
【0025】
図4(a)で例示するように、コアシェル粒子30は、略球形状のコア部31と、コア部31を囲むように覆うシェル部32とを備えている。コア部31は、添加化合物が固溶していないもしくは添加化合物の固溶量が少ない結晶部分である。シェル部32は、添加化合物が固溶しておりかつコア部31の添加化合物濃度よりも高い添加化合物濃度を有している結晶部分である。本実施形態においては、シェル部32におけるZr濃度が、コア部31におけるZr濃度よりも高くなっている。または、シェル部32にZrが拡散しており、コア部31にはZrが拡散していない。
【0026】
図4(b)は、誘電体層11の模式的な断面図である。図4(b)で例示するように、誘電体層11は、主成分セラミックの複数の結晶粒子17を備えている。これらの結晶粒子17のうち、少なくとも一部が図4(a)で説明したコアシェル粒子30である。
【0027】
耐還元性が高いZrを主成分としたシェルでコアを覆うことにより高誘電率を維持しつつ安定な構造を持ち、かつ高信頼な材料を得ることができる。しかしながら、ZrをドープすることでBaTiO結晶の格子定数が拡大し、寿命の要であるHo(ホルミウム)、Dy(ジスプロシウム)、Y(イットリウム)等の希土類元素がAサイトよりもBサイトに多く固溶するようになり、アクセプタ過剰となってしまうため、寿命改善効果が限定的となる。
【0028】
そこで、本発明者らは、BaTiOのAサイトに置換固溶しやすいイオン半径が大きな希土類元素を検討した結果、Eu(ユウロピウム)を添加することで、Ho、Dy、Y等の希土類元素と比較して、1桁程度寿命が向上することを見出した。Eu添加で寿命が向上する理由は完全に解明されていないが、Euは2価と3価で安定であり、2価と3価に揺動し、2価では安定な希土類イオン中で最大のイオン半径を持つため、選択的にAサイトに置換固溶するためと考えられる。ただし、Euの一部が3価としてAサイトに置換固溶することでドナーとなり絶縁性を悪化させるおそれがあるため、過剰な電子を減らす働きをもつMn(マンガン)を共添加する。Mnは、絶縁性を高めることができ、再酸化処理を行うことで価数が増え、酸素欠陥を低減させて寿命をさらに向上させることができる。なお、Eu以外の希土類元素は、3価で安定であり、2価では不安定となっている。
【0029】
表1は、各希土類元素の6配位のイオン半径を示す。表1の出典は、「R.D.Shannon,Acta Crystallogr.,A32,751(1976)」である。
【表1】
【0030】
Euも、コア部31よりもシェル部32に対して固溶するようになる。したがって、シェル部32におけるEu濃度は、コア部31におけるEu濃度よりも高くなっている。または、シェル部32にEuが固溶しており、コア部31にはEuが固溶していない。
【0031】
容量領域14の誘電体層11に十分な量のZrが添加されていないと、誘電体層11の焼成時に上記のコアシェル構造が維持できず、局所的な異常粒成長が生じ、寿命が発現せずにX5R特性(EIA規格であって、25℃の容量を基準に−55℃から85℃の間の容量変化率が±15%以内)が得られないおそれがある。そこで、本実施形態においては、容量領域14の誘電体層11において、Ti量に対するZr量の比率であるZr/Ti比に下限を設ける。具体的には、Zr/Ti比を0.02以上とする。Zr/Ti比は、0.03以上であることが好ましく、0.04以上であることがより好ましい。
【0032】
一方、容量領域14の誘電体層11におけるZr量が多すぎても、誘電体層11の焼成時に粒成長が生じ、寿命が発現しないおそれがある。そこで、本実施形態においては、Zr/Ti比に上限を設ける。具体的には、Zr/Ti比を0.10以下とする。Zr/Ti比は、0.08以下であることが好ましく、0.06以下であることがより好ましい。
【0033】
次に、容量領域14の誘電体層11において、Ti量に対するBa量の比率であるBa/Ti比が大きすぎると、誘電体層11の焼成時に粒成長が生じ、寿命が発現しないおそれがある。そこで、本実施形態においては、Ba/Ti比に上限を設ける。具体的には、Ba/Ti比を1.010未満とする。Ba/Ti比は、1.005以下であることが好ましく、1.003以下であることがより好ましい。
【0034】
一方、容量領域14の誘電体層11において、Ba/Ti比が小さすぎると、Ti量が相対的に増え、Zr添加効果が小さくなり、寿命が発現しないおそれがある。そこで、本実施形態においては、Ba/Ti比に下限を設ける。具体的には、Ba/Ti比が0.900を上回るようにする。Ba/Ti比は、0.950以上であることが好ましく、1.000以上であることがより好ましい。
【0035】
以上のように、容量領域14の誘電体層11において、0.02≦Zr/Ti比≦0.10とし、0.900<Ba/Ti比<1.010とすることで、BaTiOとBaZrOの2粒子混合ではなく、BaTiOをコアとし、BaTixZr1-xをシェルとするコアシェル構造が得られる。
【0036】
次に、容量領域14の誘電体層11において、Euの添加量が少なすぎると、十分な寿命が得られないおそれがある。そこで、本実施形態においては、Eu添加量に下限を設ける。具体的には、容量領域14の誘電体層11において、Ti量に対するEu量の比率であるEu/Ti比を0.005以上とする。Eu/Ti比は、0.0075以上であることが好ましく、0.01以上であることがより好ましい。
【0037】
容量領域14の誘電体層11に対するEuの添加量が多すぎると、絶縁性が低下するおそれがあり、十分な寿命が得られないおそれがある。そこで、本実施形態においては、Eu添加量の上限を設ける。具体的には、Eu/Ti比を0.05以下とする。Eu/Ti比は、0.03以下であることが好ましく、0.02以下であることがより好ましい。
【0038】
次に、容量領域14の誘電体層11において、Eu以外の希土類元素の添加量が多すぎると、Euによる寿命改善効果が弱まってしまい、十分な寿命が得られないおそれがある。そこで、本実施形態においては、Eu以外の希土類元素の添加量に上限を設ける。具体的には、Eu以外の希土類元素の添加量を、Eu添加量よりも少なくする。Eu以外の希土類元素が複数種類である場合には、当該複数種類の希土類元素の合計の添加量を、Eu添加量よりも少なくする。
【0039】
次に、容量領域14の誘電体層11において、Mnの添加量が少なすぎると、絶縁性が低下するおそれがあり、十分な寿命が得られないおそれがある。そこで、本実施形態においては、Mnの添加量に下限を設ける。具体的には、容量領域14の誘電体層11において、Ti量に対するMn量の比率であるMn/Ti比を0.0005以上とする。Mn/Ti比は、0.001以上であることが好ましく、0.0015以上であることがより好ましい。
【0040】
一方、容量領域14の誘電体層11において、Mn添加量が多すぎると、酸素欠陥が多く生成され、十分な寿命が得られないおそれがある。そこで、本実施形態においては、Mnの添加量に上限を設ける。具体的には、Mn/Ti比を0.05以下とする。Mn/Ti比は、0.02以下であることが好ましく、0.01以下であることがより好ましい。
【0041】
ところで、ZrがBaTiOに拡散固溶した場合は、BaTiOのキュリー温度を低下させる。したがって、Zrの拡散層を必要以上に厚くしてしまうと、高温での容量減少が大きくなり、X5R特性を満たさなくなるおそれがある。そこで、コアシェル構造において、図6で例示するように、粒径の長軸長をDとし、コア径の長軸長をdとする。粒径の長軸長に対するコア径の長軸長の比率d/Dが0.3を下回るとX5R特性を満たさなくなるおそれがある。したがって、d/Dは0.3以上とすることが好ましく、0.4以上とすることがより好ましく、0.5以上とすることがさらに好ましい。一方、d/Dが0.9を上回るとBaTiOにZrやEuといった添加物の拡散固溶が進まず、寿命が短くなる傾向にある。したがってd/Dは、0.9以下とすることが好ましく、0.8以下とすることがより好ましく、0.7以下とすることがさらに好ましい。また、dおよびDは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定することができる。無作為に抽出した20個の誘電体粒子に対して平均を取ることで、dおよびDを算出することとする。コアが存在しない(いわゆる全固溶粒子)はd=0とする。
【0042】
続いて、積層セラミックコンデンサ100の製造方法について説明する。図5は、積層セラミックコンデンサ100の製造方法のフローを例示する図である。
【0043】
(原料粉末作製工程)
まず、誘電体層11を形成するための誘電体材料を用意する。誘電体層11に含まれるAサイト元素およびBサイト元素は、通常はABOの粒子の焼結体の形で誘電体層11に含まれる。例えば、BaTiOは、ペロブスカイト構造を有する正方晶化合物であって、高い誘電率を示す。このBaTiOは、一般的に、二酸化チタンなどのチタン原料と炭酸バリウムなどのバリウム原料とを反応させてチタン酸バリウムを合成することで得ることができる。誘電体層11の主成分セラミックの合成方法としては、従来種々の方法が知られており、例えば固相法、ゾル−ゲル法、水熱法等が知られている。本実施形態においては、これらのいずれも採用することができる。
【0044】
得られたセラミック粉末に、目的に応じて所定の添加化合物を添加する。添加化合物としては、Zr、Mg、Mn、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Euの酸化物、並びに、Co(コバルト),Ni,Li(リチウム),B(ホウ素),Na(ナトリウム),K(カリウム)およびSi(シリコン)の酸化物もしくはガラスが挙げられる。必要に応じて、Eu以外の希土類元素(Sc(スカンジウム),Y,La(ランタン),Ce(セリウム),Pr(プラセオジム),Nd(ネオジム),Pm(プロメチウム),Sm(サマリウム),Gd(ガドリニウム),Tb(テルビウム),Dy,Ho,Er(エルビウム),Tm(ツリウム),Yb(イッテルビウム)およびLu(ルテチウム))の酸化物を添加してもよい。
【0045】
例えば、セラミック原料粉末に添加化合物を含む化合物を湿式混合し、乾燥および粉砕してセラミック材料を調製する。例えば、上記のようにして得られたセラミック材料について、必要に応じて粉砕処理して粒径を調節し、あるいは分級処理と組み合わせることで粒径を整えてもよい。以上の工程により、誘電体材料が得られる。
【0046】
なお、誘電体材料において、Ti量に対するZr量の比であるZr/Ti比は0.02以上、0.10以下であり、Ti量に対するBa量の比であるBa/Ti比は0.900を上回り、1.010未満であり、Ti量に対するEu量の比であるEu/Ti比は0.005以上、0.05以下であり、Ti量に対するMn量の比であるMn/Ti比は0.0005以上、0.05以下であり、Eu量と比較して他の希土類元素の合計量が少なくなっている。
【0047】
(積層工程)
次に、得られた誘電体材料に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合する。得られたスラリを使用して、例えばダイコータ法やドクターブレード法により、基材上に例えば厚み0.5μm以上の帯状の誘電体グリーンシートを塗工して乾燥させる。
【0048】
次に、誘電体グリーンシートの表面に、有機バインダを含む内部電極形成用の金属導電ペーストをスクリーン印刷、グラビア印刷等により印刷することで、極性の異なる一対の外部電極に交互に引き出される内部電極層パターンを配置する。金属導電ペーストには、共材としてセラミック粒子を添加する。セラミック粒子の主成分は、特に限定するものではないが、誘電体層11の主成分セラミックと同じであることが好ましい。例えば、平均粒子径が50nm以下のBaTiOを均一に分散させてもよい。
【0049】
その後、内部電極層パターンが印刷された誘電体グリーンシートを所定の大きさに打ち抜いて、打ち抜かれた誘電体グリーンシートを、基材を剥離した状態で、内部電極層12と誘電体層11とが互い違いになるように、かつ内部電極層12が誘電体層11の長さ方向両端面に端縁が交互に露出して極性の異なる一対の外部電極20a,20bに交互に引き出されるように、所定層数(例えば100〜1000層)だけ積層する。積層した誘電体グリーンシートの上下に、カバー層13を形成するためのカバーシートを圧着させ、所定チップ寸法(例えば1.0mm×0.5mm)にカットする。
【0050】
(焼成工程)
このようにして得られたセラミック積層体を、N雰囲気で脱バインダ処理した後に外部電極20a,20bの下地層となる金属ペーストをディップ法で塗布し、酸素分圧10−12〜10−9atmの還元雰囲気中で1100〜1300℃で10分〜2時間焼成する。このようにして、積層セラミックコンデンサ100が得られる。なお、焼成工程における昇温速度を10℃/h程度とすると、Zrの拡散が過剰に促進され、全固溶粒子が形成されるおそれがある。そこで、本実施形態においては、例えば、6000℃/hという急速昇温を行なう。それにより、Zrの拡散距離が制限され、コアシェル構造を形成することができる。
【0051】
(再酸化処理工程)
その後、Nガス雰囲気中で600℃〜1000℃で再酸化処理を行ってもよい。
【0052】
(めっき処理工程)
その後、外部電極20a,20bの下地層上に、めっき処理により、Cu,Ni,Sn等の金属コーティングを行う。以上の工程により、積層セラミックコンデンサ100が完成する。
【0053】
本実施形態に係る製造方法によれば、容量領域14の誘電体層11の少なくとも一部に図4(a)で例示したコアシェル粒子30が形成される。また、容量領域14の誘電体層11において、Ti量に対するZr量の比であるZr/Ti比が0.02以上、0.10以下であり、Ti量に対するBa量の比であるBa/Ti比が0.900を上回り、1.010未満であり、Ti量に対するEu量の比であるEu/Ti比が0.005以上、0.05以下であり、Ti量に対するMn量の比であるMn/Ti比が0.0005以上、0.05以下であり、Eu量と比較して他の希土類元素の合計量が少なくなっている。それにより、得られる積層セラミックコンデンサ100において、高誘電率および優れた温度特性を維持しつつ、高信頼性を実現することができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施形態に係る積層セラミックコンデンサを作製し、特性について調べた。
【0055】
(実施例1)
平均粒径100nmのチタン酸バリウム粉末を、誘電体材料として用意した。チタン酸バリウム粉末に、ZrO、Eu酸化物、MnCOなどの添加物を添加し、φ0.5mmのジルコニアビーズで混合粉砕して誘電体材料を得た。Zr/Ti比は、0.02とした。Ba/Ti比は、1.003とした。Eu/Ti比は、0.01とした。Mn/Ti比は、0.005とした。
【0056】
誘電体材料に有機バインダおよび溶剤を加えてドクターブレード法にて誘電体グリーンシートを作製した。有機バインダとしてポリビニルブチラール(PVB)等を用い、溶剤としてエタノール、トルエン等を加えた。その他、可塑剤などを加えた。
【0057】
次に、内部電極層12の主成分金属と、共材と、バインダ(エチルセルロース)と、溶剤と、必要に応じてその他助剤を含んでいる内部電極形成用の金属導電ペーストを遊星ボールミルで作製した。
【0058】
誘電体グリーンシートに内部電極形成用の金属導電ペーストをスクリーン印刷した。誘電体グリーンシート上に金属導電ペーストが印刷されたシート部材を15枚重ね、その上下にカバーシートをそれぞれ積層した。その後、熱圧着により積層体を得て、所定の形状に切断した。
【0059】
得られた積層体をN雰囲気中で脱バインダした後に、積層体の両端面から各側面にかけて、Niを主成分とする金属フィラー、共材、バインダ、溶剤などを含む金属導電ペーストを下地層用に塗布し、乾燥させた。その後、還元雰囲気中で1100℃〜1300℃で10分〜2時間、下地層用の金属導電ペーストを積層体と同時に焼成して焼結体を得た。昇温速度は、6000℃/hとした。得られた焼結体の形状寸法は、長さ0.6mm、幅0.3mm、高さ0.3mmであった。その後、再酸化処理を行なった。その後、メッキ処理して下地層の表面にCuめっき層、Niめっき層およびSnめっき層を形成し、積層セラミックコンデンサ100を得た。誘電体層11の平均厚みは、2.0μmであった。
【0060】
(実施例2)
実施例2では、誘電体材料において、Zr/Ti比を、0.04とした。Ba/Ti比を、1.003とした。Eu/Ti比を、0.005とした。Mn/Ti比を、0.005とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0061】
(実施例3)
実施例3では、誘電体材料において、Zr/Ti比を、0.04とした。Ba/Ti比を、1.003とした。Eu/Ti比を、0.01とした。Mn/Ti比を、0.005とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0062】
(実施例4)
実施例4では、誘電体材料において、Zr/Ti比を、0.04とした。Ba/Ti比を、1.003とした。Eu/Ti比を、0.015とした。Mn/Ti比を、0.005とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0063】
(実施例5)
実施例5では、誘電体材料において、Zr/Ti比を、0.04とした。Ba/Ti比を、1.003とした。Eu/Ti比を、0.02とした。Mn/Ti比を、0.005とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0064】
(実施例6)
実施例6では、誘電体材料において、Zr/Ti比を、0.04とした。Ba/Ti比を、1.003とした。Eu/Ti比を、0.03とした。Mn/Ti比を、0.005とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0065】
(実施例7)
実施例7では、誘電体材料において、Zr/Ti比を、0.04とした。Ba/Ti比を、1.003とした。Eu/Ti比を、0.05とした。Mn/Ti比を、0.005とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0066】
(実施例8)
実施例8では、誘電体材料において、Zr/Ti比を、0.04とした。Ba/Ti比を、1.003とした。Eu/Ti比を、0.01とした。Mn/Ti比を、0.005とした。また、Hoを添加し、Ti量に対するHo量の比であるHo/Ti比を0.005とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0067】
(実施例9)
実施例9では、誘電体材料において、Zr/Ti比を、0.04とした。Ba/Ti比を、1.003とした。Eu/Ti比を、0.01とした。Mn/Ti比を、0.0005とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0068】
(実施例10)
実施例10では、誘電体材料において、Zr/Ti比を、0.04とした。Ba/Ti比を、1.003とした。Eu/Ti比を、0.01とした。Mn/Ti比を、0.02とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0069】
(実施例11)
実施例11では、誘電体材料において、Zr/Ti比を、0.04とした。Ba/Ti比を、1.003とした。Eu/Ti比を、0.01とした。Mn/Ti比を、0.05とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0070】
(実施例12)
実施例12では、誘電体材料において、Zr/Ti比を、0.06とした。Ba/Ti比を、1.003とした。Eu/Ti比を、0.01とした。Mn/Ti比を、0.005とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0071】
(実施例13)
実施例13では、誘電体材料において、Zr/Ti比を、0.10とした。Ba/Ti比を、1.003とした。Eu/Ti比を、0.01とした。Mn/Ti比を、0.005とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0072】
(比較例1)
比較例1では、誘電体材料において、Zr/Ti比を、0.01とした。Ba/Ti比を、1.003とした。Eu/Ti比を、0.01とした。Mn/Ti比を、0.005とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0073】
(比較例2)
比較例2では、誘電体材料において、Zr/Ti比を、0.02とした。Ba/Ti比を、1.003とした。Eu酸化物を添加せず、Yを添加し、Ti量に対するY量の比であるY/Ti比を0.01とした。Mn/Ti比を、0.005とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0074】
(比較例3)
比較例3では、誘電体材料において、Zr/Ti比を、0.02とした。Ba/Ti比を、1.003とした。Eu酸化物を添加せず、Hoを添加し、Ti量に対するHo量の比であるHo/Ti比を0.01とした。Mn/Ti比を、0.005とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0075】
(比較例4)
比較例4では、誘電体材料において、Zr/Ti比を、0.02とした。Ba/Ti比を、1.003とした。Eu酸化物を添加せず、Dyを添加し、Ti量に対するDy量の比であるDy/Ti比を0.01とした。Mn/Ti比を、0.005とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0076】
(比較例5)
比較例5では、誘電体材料において、Zr/Ti比を、0.02とした。Ba/Ti比を、1.003とした。Eu酸化物を添加せず、Tbを添加し、Ti量に対するTb量の比であるTb/Ti比を0.01とした。Mn/Ti比を、0.005とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0077】
(比較例6)
比較例6では、誘電体材料において、Zr/Ti比を、0.02とした。Ba/Ti比を、1.003とした。Eu酸化物を添加せず、Gdを添加し、Ti量に対するGd量の比であるGd/Ti比を0.01とした。Mn/Ti比を、0.005とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0078】
(比較例7)
比較例7では、誘電体材料において、Zr/Ti比を、0.02とした。Ba/Ti比を、1.003とした。Eu酸化物を添加せず、Ndを添加し、Ti量に対するNd量の比であるNd/Ti比を0.01とした。Mn/Ti比を、0.005とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0079】
(比較例8)
比較例8では、誘電体材料において、Zr/Ti比を、0.02とした。Ba/Ti比を、1.003とした。Eu酸化物を添加せず、Pr11を添加し、Ti量に対するPr量の比であるPr/Ti比を0.01とした。Mn/Ti比を、0.005とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0080】
(比較例9)
比較例9では、誘電体材料において、Zr/Ti比を、0.02とした。Ba/Ti比を、1.003とした。Eu酸化物を添加せず、CeOを添加し、Ti量に対するCe量の比であるCe/Ti比を0.01とした。Mn/Ti比を、0.005とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0081】
(比較例10)
比較例10では、誘電体材料において、Zr/Ti比を、0.02とした。Ba/Ti比を、1.003とした。Eu酸化物を添加せず、Laを添加し、Ti量に対するLa量の比であるLa/Ti比を0.01とした。Mn/Ti比を、0.005とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0082】
(比較例11)
比較例11では、誘電体材料において、Zr/Ti比を、0.02とした。Ba/Ti比を、1.010とした。Eu/Ti比を、0.01とした。Mn/Ti比を、0.005とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0083】
(比較例12)
比較例12では、誘電体材料において、Zr/Ti比を、0.02とした。Ba/Ti比を、0.900とした。Eu/Ti比を、0.01とした。Mn/Ti比を、0.005とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0084】
(比較例13)
比較例13では、誘電体材料において、Zr/Ti比を、0.04とした。Ba/Ti比を、1.003とした。Eu/Ti比を、0.003とした。Mn/Ti比を、0.005とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0085】
(比較例14)
比較例14では、誘電体材料において、Zr/Ti比を、0.04とした。Ba/Ti比を、1.003とした。Eu/Ti比を、0.07とした。Mn/Ti比を、0.005とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0086】
(比較例15)
比較例15では、誘電体材料において、Zr/Ti比を、0.04とした。Ba/Ti比を、1.003とした。Eu/Ti比を、0.01とした。Mn/Ti比を、0.005とした。また、Hoを添加し、Ti量に対するHo量の比であるHo/Ti比を0.01とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0087】
(比較例16)
比較例16では、誘電体材料において、Zr/Ti比を、0.04とした。Ba/Ti比を、1.003とした。Eu/Ti比を、0.01とした。MnCOを添加せず、Mn/Ti比を、0.00とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0088】
(比較例17)
比較例17では、誘電体材料において、Zr/Ti比を、0.04とした。Ba/Ti比を、1.003とした。Eu/Ti比を、0.01とした。Mn/Ti比を、0.07とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0089】
(比較例18)
比較例18では、誘電体材料において、Zr/Ti比を、0.12とした。Ba/Ti比を、1.003とした。Eu/Ti比を、0.01とした。Mn/Ti比を、0.005とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0090】
(分析)
実施例1〜13および比較例1〜18について、容量を測定し、積層数、交差面積、層厚みから誘電体層の比誘電率を算出した。また、実施例1〜13および比較例1〜18について、125℃、50V/μmという高温高電界の加速寿命試験(HALT)を行い、リーク電流が閾値(1mA)を超えた時間を測定することで、MTTF(Mean Time To Failure)を測定した。また、実施例1〜13および比較例1〜18について、X5R特性を満たすか否かを調べた。結果を表2に示す。
【表2】
【0091】
比誘電率については、1500以上となっていれば合格「〇」と判定した。MTTFについては、1000min以上となっていれば合格「〇」と判定した。X5R特性を満たしていれば合格「〇」と判定した。これら3つの判定結果が合格「〇」と判定されれば、総合判定を合格「〇」と判定した。これら3つの判定結果に1つでも不合格「×」があれば、総合判定を不合格「×」と判定した。
【0092】
実施例1〜13のいずれにおいても、総合判定が合格「〇」と判定された。これは、0.02≦Zr/Ti比≦0.10とし、0.900<Ba/Ti比<1.010とし、0.005≦Eu/Ti比≦0.05とし、0.0005≦Mn/Ti比≦0.05としたことで、高誘電率を維持しつつ安定な構造を持ち、かつ高信頼な材料を得ることができたからであると考えられる。
【0093】
比較例1は、寿命が発現せず、X5R特性も満たさなかった。これは、Zr/Ti比を0.01としたことで、コアシェル構造が得られず、局所的な異常粒成長が生じたからであると考えられる。
【0094】
比較例2〜10では、MTTFが不合格となった。これは、Zrをシェルに拡散させたコアシェル構造では、Eu以外の希土類を添加することで高寿命が得られなかったからであると考えられる。
【0095】
比較例11では、MTTFが不合格となった。これは、Ba/Tiを1.010としたことで、粒成長が生じたからであると考えられる。
【0096】
比較例12では、MTTFが不合格となった。これは、Ba/Tiを0.900としたことで、Ti量が相対的に増え、Zr添加の効果が小さくなったからであると考えられる。
【0097】
比較例13では、MTTFが不合格となった。これは、Eu/Tiを0.003としたために、Eu添加の効果が十分に得られなかったからであると考えられる。
【0098】
比較例14では、寿命が発現しなかった。これは、Eu/Tiを0.07としたためにEu添加量が過剰となったからであると考えられる。
【0099】
比較例15では、MTTFが不合格となった。これは、Eu以外の希土類の添加量をEuの添加量と同等としたことで、十分な寿命が得られなかったからであると考えられる。
【0100】
比較例16では、MTTFが不合格となった。これは、Mnを添加しなかったことで十分な絶縁性が得られなかったからであると考えられる。
【0101】
比較例17では、MTTFが不合格となった。これは、Mn/Ti比を0.07としたことで、Mn添加量が過剰となったからであると考えられる。
【0102】
比較例18では、MTTFが不合格となった。これは、Zr/Ti比を0.12としたために、粒成長が生じたからであると考えられる。
【0103】
なお、実施例2〜7の結果を比較すると、MTTFを長くする観点から、0.01≦Eu/Ti比≦0.02とすることが好ましいことがわかる。
【0104】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0105】
10 積層チップ
11 誘電体層
12 内部電極層
13 カバー層
14 容量領域
15 エンドマージン
16 サイドマージン
17 結晶粒子
20a,20b 外部電極
30 コアシェル粒子
31 コア部
32 シェル部
100 積層セラミックコンデンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6