)に基づいて出力トランジスタ(TR)のゲート信号(Vg)を生成する。ゲート信号レベルがハイレベル、ローレベルであるとき、出力トランジスタは、夫々、オン、オフとなる。異常判定部(126)は、ゲート信号レベルが継続してハイレベルに維持される時間を対象時間として計測し、対象時間を判定時間と比較することで対象時間に関わる異常の有無を判定する。対象時間が上限判定時間よりも長い場合など、異常が有ると判定された場合には、制御装置の制御に依らず出力トランジスタを強制オフする。
前記異常判定部は、前記出力トランジスタのゲート信号に基づき、前記出力トランジスタのゲート信号レベルが継続して前記オン制御レベルに維持される時間を前記対象時間として計測する
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のゲートドライバ装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、素子又は部位等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、素子又は部位等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“111”によって参照される第1信号処理回路は(
図1参照)、第1信号処理回路111と表記されることもあるし、信号処理回路111、処理回路111又は回路111と略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
【0021】
まず、本発明の実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。レベルとは電位のレベルを指し、任意の信号又は電圧についてハイレベルはローレベルよりも高い電位を有する。任意の信号又は電圧について、信号又は電圧がハイレベルにあるとは信号又は電圧のレベルがハイレベルにあることを意味し、信号又は電圧がローレベルにあるとは信号又は電圧のレベルがローレベルにあることを意味する。信号についてのレベルは信号レベルと表現されることがあり、電圧についてのレベルは電圧レベルと表現されることがある。任意の信号又は電圧において、ローレベルからハイレベルへの切り替わりをアップエッジと称し、ローレベルからハイレベルへの切り替わりのタイミングをアップエッジタイミングと称する。同様に、任意の信号又は電圧において、ハイレベルからローレベルへの切り替わりをダウンエッジと称し、ハイレベルからローレベルへの切り替わりのタイミングをダウンエッジタイミングと称する。
【0022】
MOSFETを含むFET(電界効果トランジスタ)として構成された任意のトランジスタについて、オン状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が導通している状態を指し、オフ状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が非導通となっている状態(遮断状態)を指す。FETに分類されないトランジスタについても同様である。従って、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)として構成された任意のトランジスタについて、オン状態とは、当該トランジスタのコレクタ及びエミッタ間が導通している状態を指し、オフ状態とは、当該トランジスタのコレクタ及びエミッタ間が非導通となっている状態(遮断状態)を指す。以下、任意のトランジスタについて、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。尚、MOSFETは、特に記述無き限り、エンハンスメント型のMOSFETであると解される。MOSFETは“metal-oxide-semiconductor field-effect transistor”の略称である。
【0023】
ハイレベル又はローレベルの信号レベルをとる任意の信号について、当該信号のレベルがハイレベルとなる区間をハイレベル区間と称し、当該信号のレベルがローレベルとなる区間をローレベル区間と称する。ハイレベル又はローレベルの電圧レベルをとる任意の電圧についても同様である。
【0024】
図1に、本発明の実施形態に係る負荷駆動システムSYSの概略全体構成を示す。負荷駆動システムSYSは、本発明に係るゲートドライバ装置の例であるゲートドライバ100と、ゲートドライバ100の外部に設けられた制御装置200及び出力トランジスタTRと、を備える。出力トランジスタTRはゲートを有する電圧制御型のトランジスタであり、ゲートドライバ100により出力トランジスタTRのゲートが駆動される。ゲートドライバ100には、異常検出に関わる特徴的な構成が設けられているが、その特徴的な構成の明示は
図1では省略されている。特徴的な構成については、他の図面を参照しつつ、後述される。
【0025】
図2はゲートドライバ100の外観斜視図である。ゲートドライバ100は、半導体集積回路を、樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで形成された電子部品(半導体装置)である。ゲートドライバ100の筐体に複数の外部端子が露出して設けられている。
図1の構成例において、ゲートドライバ100に設けられる上記複数の外部端子には、電源端子P
VCC1及びP
VCC2と、グランド端子P
GND1及びP
GND2と、制御入力端子P
CNTと、フィードバック端子P
FBと、出力端子P
OUTH及びP
OUTLと、モニタ端子P
MNTと、が含まれる。これら以外の端子も上記複数の外部端子に含まれうる。尚、
図2に示されるゲートドライバ100の外部端子の数及びゲートドライバ100の外観は例示に過ぎない。
【0026】
負荷駆動システムSYSを構成する回路は一次側回路と二次側回路とに大別される。負荷駆動システムSYSにおいて、一次側回路と二次側回路は互いに絶縁されている(詳細には直流において絶縁されている)。二次側回路には一次側回路と比べて高い電位の電圧が加わりうる。この際、一次側回路、二次側回路は、夫々、低電圧側回路、高電圧側回路として機能する。但し、本発明において、一次側回路及び二次側回路間における電位の高低関係は任意である。
【0027】
ゲートドライバ100は、一次側回路に設けられた一次側チップ110と、二次側回路に設けられた二次側チップ120と、トランスチップ130とを備え、チップ110、120及び130が単一の筐体(パッケージ)内に封入及び封止される。トランスチップ130は、一次側回路及び二次側回路間の絶縁を保ちつつ、一次側回路及び二次側回路に亘って設けられる。トランスチップ130は複数のパルストランスから成るパルストランス部131を備える。
【0028】
一次側回路におけるグランドは“GND1”にて参照される。制御装置200は一次側チップ110と共に一次側回路に設けられる。制御装置200及び一次側チップ110内の各回路はグランドGND1の電位を基準に動作し、制御装置200の内部信号及び入出力信号並びに一次側チップ110内の各回路の内部信号及び入出力信号は、グランドGND1の電位を基準とした信号レベルを有する。グランド端子P
GND1はグランドGND1に接続される。電源端子P
VCC1にはグランドGND1から見て所定電圧値だけ高い電位を有する電源電圧VCC1が加わる。一次側チップ110内の各回路は電源電圧VCC1に基づいて動作する。
【0029】
二次側回路におけるグランドは“GND2”にて参照される。出力トランジスタTRは二次側チップ120と共に二次側回路に設けられる。二次側チップ120内の各回路はグランドGND2の電位を基準に動作し、二次側チップ120内の各回路の内部信号及び入出力信号は、グランドGND2の電位を基準とした信号レベルを有する。グランド端子P
GND2はグランドGND2に接続される。電源端子P
VCC2にはグランドGND2から見て所定電圧値だけ高い電位を有する電源電圧VCC2が加わる。二次側チップ120内の各回路は電源電圧VCC2に基づいて動作する。
【0030】
一次側チップ110には第1信号処理回路111が設けられ、二次側チップ120には第2信号処理回路121及びドライバ122が設けられる。制御装置200は一次側回路に設けられた制御信号配線WR
CNTを介して制御入力端子P
CNTに接続され、制御信号配線WR
CNTを通じて制御入力端子P
CNTに制御信号S
CNT0を供給する。制御入力端子P
CNTに加わる制御信号を特に記号S
CNT1で表す。負荷駆動システムSYS内に一切の故障及び異常が無い状態(以下、正常状態と称する)において、制御信号S
CNT1は制御信号S
CNT0と一致する(但し、信号伝搬時の歪みを無視)。
【0031】
第1信号処理回路111は制御入力端子P
CNTに接続され、制御信号S
CNT1は第1信号処理回路111に供給される。第1信号処理回路111はパルストランス部131を通じ制御信号S
CNT1を絶縁形式で第2信号処理回路121に伝達する。第2信号処理回路121及びドライバ122は、第1信号処理回路111から伝達された信号に基づき、出力トランジスタTRのゲートに接続される出力端子(
図1の構成例では、ゲート抵抗部Rgを介して出力トランジスタTRのゲートに接続される出力端子P
OUTH及びP
OUTL)を通じて、出力トランジスタTRのゲートを駆動する。上記出力端子(
図1の構成例では出力端子P
OUTH及びP
OUTL)を通じ、ドライバ122が出力トランジスタTRのゲートとの間で電流を入力又は出力することにより出力トランジスタTRのゲートが駆動され、ゲートの駆動によって出力トランジスタTRの状態がオン状態又はオフ状態に制御される。
【0032】
図1の構成例において、ドライバ122は、Pチャネル型のMOSFETとして構成されたトランジスタ122H及びNチャネル型のMOSFETとして構成されたトランジスタ122Lから成る。トランジスタ122Hのソースには電源電圧VCC2が印加され、トランジスタ122Hのドレインは出力端子P
OUTHに接続される。トランジスタ122Lのドレインは出力端子P
OUTLに接続され、トランジスタ122LのソースはグランドGND2に接続される。
図1の負荷駆動システムSYSにおいて、出力端子P
OUTH及びP
OUTLと出力トランジスタTRのゲートとの間にはゲート抵抗部Rgが設けられる。ゲート抵抗部Rgは抵抗Rg0、Rg1及びRg2から成る。抵抗Rg0の一端は出力トランジスタTRのゲートに接続される。抵抗Rg0の他端と抵抗Rg1及びRg2の各一端は互いに接続され、抵抗Rg1、Rg2の他端は、夫々、出力端子P
OUTH、P
OUTLに接続される。また、ゲートドライバ100の外部において出力トランジスタTRのゲートは適宜抵抗を介しモニタ端子P
MNTに接続され、ゲートドライバ100の内部においてモニタ端子P
MNTは第2信号処理回路121に接続される。
【0033】
図1の構成例において、出力トランジスタTRはNチャネル型のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)として構成され、出力トランジスタTRのエミッタはグランドGND2に接続される。出力トランジスタTRのコレクタは、出力トランジスタTRを通じて電流が供給されるべき負荷に接続され、出力トランジスタTRがオン状態であるとき出力トランジスタTRのコレクタ電流が上記負荷に供給される。出力トランジスタTRがオフ状態であるとき出力トランジスタTRにコレクタ電流は流れない。
【0034】
例えば、負荷はモータ(直流モータ)であって良く、この場合、
図3に示す如く、モータMTの電機子巻線の一端に出力トランジスタTRのコレクタが接続され、電機子巻線の他端には二次側回路における正の直流電圧が印加される。電機子巻線に対して並列に還流ダイオードが接続される。
図3の構成において、出力トランジスタTRがオン状態であるとき、出力トランジスタTRのコレクタ電流が電機子巻線に流れる。
図3の構成は例に過ぎず、発光素子などが負荷であっても良い。
【0035】
出力トランジスタTRのゲートに加わる信号をゲート信号と称し、記号“Vg”で表す。また、出力トランジスタTRのゲート信号Vgが有するレベルをゲート信号レベルと称することがある。第2信号処理回路121において出力トランジスタTRのゲート信号レネルが検出され、ゲート信号レベルの検出結果を示す信号がパルストランス部131を通じ絶縁形式で第1信号処理回路111に伝達される。第1信号処理回路111は、ゲート信号レベルの検出結果を示す信号を、フィードバック端子P
FBを介しフィードバック信号S
FBとして制御装置200に送信する。
【0036】
図4に、ゲートドライバ100内における、制御信号S
CNT1の伝達に関わる構成を簡易的に示す。パルス送信回路111aは第1信号処理回路111に設けられ、パルス受信回路121aは第2信号処理回路121に設けられる。パルストランス131a_up及び131a_downは、パルストランス部131に設けられる。パルス送信回路111aは、制御信号S
CNT1に基づいてパルストランス131a_up又は131a_downの一次側巻線にパルス状の電流を供給することでパルストランス131a_up又は131a_downの二次側巻線にパルス状の電圧を発生させる。パルス受信回路121aは、パルストランス131a_up又は131a_downの二次側巻線に生じたパルス状の電圧に基づき、制御信号S
CNT1を再現した信号である制御信号S
CNT2を生成する。
【0037】
特に図示しないが、ゲート信号レベルの検出結果を示す信号も、
図4の構成に類似した構成にて第2信号処理回路121から第1信号処理回路111に伝達され、これによってフィードバック信号S
FBが生成される。勿論、フィードバック信号S
FBの生成にあたっては、回路121がパルスの送信側となり且つ回路111がパルスの受信側となる。
【0038】
図5に、制御信号S
CNT1、制御信号S
CNT2、ゲート信号Vg及びフィードバック信号S
FB間の関係を示す。上述したように、正常状態において制御信号S
CNT1は制御信号S
CNT0と等しい。
【0039】
制御信号S
CNT0及びS
CNT1並びにフィードバック信号S
FBの夫々は、グランドGND1を基準とするデジタル信号(二値化信号)であり、ローレベル又はハイレベルの信号レベルを有する。制御信号S
CNT0及びS
CNT1並びにフィードバック信号S
FBの夫々において、ローレベルとは所定の一次側閾電圧(例えば電源電圧VCC1の半分)よりも低い電圧のレベルを指し、ハイレベルとは一次側閾電圧よりも高い電圧のレベルを指す。ここにおける一次側閾電圧は、グランドGND1よりも高く且つ電源電圧VCC1よりも低い所定電圧値を有する。
【0040】
制御信号S
CNT2は、グランドGND2を基準とするデジタル信号(二値化信号)であり、ローレベル又はハイレベルの信号レベルを有する。制御信号S
CNT2において、ローレベルとは所定の二次側閾電圧(例えば電源電圧VCC2の半分)よりも低い電圧のレベルを指し、ハイレベルとは二次側閾電圧よりも高い電圧のレベルを指す。ここにおける二次側閾電圧は、グランドGND2よりも高く且つ電源電圧VCC2よりも低い所定電圧値を有する。
【0041】
ゲート信号Vgはドライバ122により電位が制御されるアナログ信号であり、基本的にはローレベル又はハイレベルの信号レベルを有する。ゲート信号Vgのローレベルは実質的にグランドGND2のレベルと一致する。ゲート信号Vgのハイレベルは実質的に電源電圧VCC2のレベルと一致する。ゲート信号Vgのレベルは、無視できない程度の時間をかけてローレベル及びハイレベル間で遷移するが、
図4では、その様子の図示は省略されている。ローレベルのゲート信号Vgは出力トランジスタTRのゲート−エミッタ閾値電圧よりも十分に小さな電圧を有し、従ってゲート信号Vgがローレベルを有するとき出力トランジスタTRはオフ状態となる。ハイレベルのゲート信号Vgは出力トランジスタTRのゲート−エミッタ閾値電圧よりも十分に大きな電圧を有し、従ってゲート信号Vgがハイレベルを有するとき出力トランジスタTRはオン状態となる。
【0042】
制御信号S
CNT1及びS
CNT2間には、
図4に示す回路の特性に依存した信号遅延が存在するが、その信号遅延を無視すれば、制御信号S
CNT1がローレベルであるとき制御信号S
CNT2もローレベルとなり、制御信号S
CNT1がハイレベルであるとき制御信号S
CNT2もハイレベルとなる。
【0043】
ドライバ122は制御信号S
CNT2に基づきゲート信号Vgを生成する。具体的には、ドライバ122は、第2信号処理回路121の制御の下、制御信号S
CNT2がローレベルであるときには出力ロー状態となり、制御信号S
CNT2がハイレベルであるときには出力ハイ状態となる(但し、後述の出力強制オフ処理が実行されてないと仮定)。ドライバ122の出力ロー状態においてトランジスタ122Hはオフ且つトランジスタ122Lはオンであり、このとき、ドライバ回路122は、出力トランジスタTRのゲートから抵抗Rg0及びRg2並びにトランジスタ122Lを介しグランドに向けて電流を引き込むことでゲート信号Vgをローレベルとする。ドライバ122の出力ハイ状態においてトランジスタ122Hはオン且つトランジスタ122Lはオフであり、このとき、ドライバ回路122は、電源電圧VCC2の印加端からトランジスタ122H並びに抵抗Rg1及びRg0を介し出力トランジスタTRのゲートに向けて電流を出力することで(正の電荷を供給することで)ゲート信号Vgをハイレベルとする。
【0044】
モニタ端子P
MNTに加わるゲート信号Vgは第2信号処理回路121内において二値化される。二値化されたゲート信号Vgが回路121からパルストランス部131を通じ回路111へと伝達され、伝達されたゲート信号Vgに基づくフィードバック信号S
FBが回路111にて生成される。ここでは、ゲート信号Vgの論理を反転した信号がフィードバック信号S
FBとして生成されるものとする。即ち、ゲート信号Vgがローレベルであるときにはフィードバック信号S
FBはハイレベルとなり、ゲート信号Vgがハイレベルであるときにはフィードバック信号S
FBはローレベルとなる(但し、それらの信号間の信号遅延を無視)。このような論理反転を行わずにフィードバック信号S
FBを生成するようにしても良い。
【0045】
図1に示すドライバ122の構成並びにドライバ122及び出力トランジスタTRの接続関係は様々に変更可能である。例えば、
図6に示すような構成が採用されても良い。
図6の構成例では、ドライバ122としてドライバ122aが用いられると共にゲート抵抗部Rgとしてゲート抵抗部Rgaが用いられ、且つ、出力端子P
OUTH及びP
OUTLが単一の出力端子P
OUTに置換されている。ゲート抵抗部Rgaは抵抗Rg0のみから成る。ドライバ122aは、トランジスタ122H及び122Lのハーフブリッジ回路から成る。具体的には、
図6の構成例において、トランジスタ122Hのソースは電源電圧VCC2の印加端に接続され、トランジスタ122LのソースはグランドGND2に接続され、トランジスタ122H及び122Lのドレイン同士が単一の出力端子P
OUTに共通接続され、出力端子P
OUTが抵抗Rg0を介して出力トランジスタTRのゲートに接続される。
【0046】
図6のドライバ122aは、
図1のドライバ122と同様に、第2信号処理回路121の制御の下、制御信号S
CNT2がローレベルであるときには出力ロー状態となり、制御信号S
CNT2がハイレベルであるときには出力ハイ状態となる(但し、後述の出力強制オフ処理が実行されてないと仮定)。ドライバ122aの出力ロー状態においてトランジスタ122Hはオフ且つトランジスタ122Lはオンであり、このとき、ドライバ回路122aは、出力トランジスタTRのゲートから抵抗Rg0及びトランジスタ122Lを介しグランドに向けて電流を引き込むことでゲート信号Vgをローレベルとする。ドライバ122aの出力ハイ状態においてトランジスタ122Hはオン且つトランジスタ122Lはオフであり、このとき、ドライバ回路122aは、電源電圧VCC2の印加端からトランジスタ122H及びRg0を介し出力トランジスタTRのゲートに向けて電流を出力することで(正の電荷を供給することで)ゲート信号Vgをハイレベルとする。
【0047】
尚、
図1の構成では、抵抗Rg1及びRg2の各抵抗値の設定を通じて、ゲート信号Vgの上昇時のスルーレートと下降時のスルーレートを個別に調整することができるというメリットがある。但し、
図1の構成において抵抗Rg0、Rg1及びRg2の全部又は一部を省略することも可能であり(即ち、抵抗Rg0、Rg1及びRg2の内、全部又は一部の抵抗の抵抗値をゼロにすることも可能であり)、
図6の構成において抵抗Rg0を省略することも可能である(即ち、抵抗Rg0の抵抗値をゼロにすることも可能である)。
【0048】
何れにせよ、制御信号S
CNT2がローレベルであるときにゲート信号Vgがローレベルとされ且つ制御信号S
CNT2がハイレベルであるときにゲート信号Vgがハイレベルとされるよう(但し、後述の出力強制オフ処理が実行されてないと仮定)、ドライバ122が構成され且つドライバ122が出力トランジスタTRのゲートに接続される限り、それらの構成及び接続関係は任意である。
【0049】
また、出力トランジスタTRは
図7に示すようなセンスIGBTであっても良い。センスIGBTとして構成された出力トランジスタTRは、ゲート及びコレクタを備えると共に、主エミッタとセンスエミッタを備える。
図7の構成において、主エミッタはグランドGND2に直接接続され、センスエミッタはセンス抵抗R
SNSを介してグランドGND2に接続される。センスIGBTにおいて、コレクタ電流は主エミッタ及びセンスエミッタに分流される。即ち、コレクタ電流の一部が主エミッタに流れ、コレクタ電流の残部がセンスエミッタに流れる。ここで、コレクタ電流の大半が主エミッタに流れる。即ち、主エミッタに流れる電流の方がセンスエミッタに流れる電流よりも遥かに大きい。更に、センスエミッタに流れる電流は主エミッタに流れる電流に比例し、その比例係数は負荷駆動システムSYS及びモータドライバ100にとって既知である。このため、センス抵抗R
SNSの電圧降下に基づき、センスIGBTのコレクタ電流(又は主エミッタに流れる電流)を検出することができ、その検出結果を利用して過電流保護等を行うことができる。
【0050】
尚、特に図示しないが、ゲートドライバ100はスイッチングコントローラを内蔵していても良い。当該スイッチングコントローラは、一次側回路に加わる直流の一次側入力電圧(例えばバッテリの出力電圧)をスイッチングすることにより、ゲートドライバ100の外部に設けられるトランス(不図示)と協働して、二次側回路の電源電圧VCC2を生成する。この際、一次側チップ110内にて一次側入力電圧に基づき電源電圧VCC1が生成されて良い。この他、一次側入力電圧、電源電圧VCC1及びVCC2に対する低電圧保護回路や、温度保護回路、出力トランジスタTRの過電流保護回路などが、ゲートドライバ100に設けられていて良い。
【0051】
以下、複数の実施例の中で、負荷駆動システムSYS又はゲートドライバ100に関わる特徴的な構成例、応用技術、変形技術等を説明する。本実施形態にて上述した事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の各実施例に適用される。各実施例において、上述の事項と矛盾する事項がある場合には、各実施例での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、以下に示す複数の実施例の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0052】
<<実施例EX_A1>>
実施例EX_A1を説明する。制御装置200は、交互にローレベル及びハイレベルの信号レベルをとる制御信号S
CNT0を出力することで、出力トランジスタTRをパルス駆動することができる。この際、何らかの故障により、出力トランジスタTRのゲート信号Vgが過剰に長くハイレベルで維持されると、負荷(例えば
図3のモータMT)に供給される電流が過大となり、負荷自体又は負荷に接続される部品(出力トランジスタTRを含む)の劣化、破損等を招きうる。
【0053】
図1に示す如く、制御装置200に対しフィードバック信号S
FBが与えられる構成であれば、制御装置200においてフィードバック信号S
FBに基づきゲート信号Vgの異常を検出することが可能であり、制御装置200にて異常を検出後、制御信号S
CNT0をローレベルに固定するといった処置も可能である。しかしながら、その処置では、ゲート信号Vgの異常発生から出力トランジスタTRが実際にオフとされるまでに相応の時間がかかる(即ち、即時の対応が困難である)。また、制御信号配線WR
CNTの断線及び天絡(電源電圧ラインへの短絡)により制御入力端子P
CNTに加わる制御信号S
CNT1がハイレベルに固定されるような故障モードでは、制御装置200による制御自体が不能となる。制御信号配線WR
CNTの完全なる断線には至らなくても、制御信号配線WR
CNTの半壊などにより、制御装置200からゲートトライバ100への制御信号S
CNT0の伝達が不安定となると、負荷(例えば
図3のモータMT)を正常に制御できない。
【0054】
これらを考慮し、実施例EX_A1に係るゲートドライバ100には異常対応部が設けられる。
図8には、実施例EX_A1に係るゲートドライバ100であるゲートドライバ100Aが、その周辺回路と共に示されている。ゲートドライバ100Aでは異常対応部が二次側チップ120に設けられ、当該異常対応部は判定時間指定部125及び異常判定部126を備える。
【0055】
判定時間指定部125は、異常判定部126にて参照される判定時間t
TH2を指定する。判定時間t
TH2を示す判定時間情報は異常判定部126に提供される。判定時間情報を格納した記憶部(レジスタ又は不揮発性メモリ)にて判定時間指定部125が構成されていて良い。実施例EX_A1において、判定時間指定部125により指定される判定時間t
TH2は上限判定時間t
TH2_Hであるとする或いは上限判定時間t
TH2_Hを含むものとする(
図11参照)。上限判定時間t
TH2_Hは、予め不変に定められた固定時間であっても良いし、後述されるよう可変時間であっても良い。制御装置200がパルス幅変調された制御信号S
CNT0を出力する際、上限判定時間t
TH2_Hは、制御信号S
CNT0の周波数の逆数より長くて良い。
【0056】
異常判定部126はモニタ端子P
MNTに接続され、モニタ端子P
MNTを通じてゲート信号Vgを受ける。異常判定部126は、ゲート信号Vgに基づき、出力トランジスタTRのゲート信号レベルが継続してハイレベルに維持される時間を対象時間として計測する。異常判定部126によって計測される対象時間を特に対象時間t
TG2と称する。
図9に示す如く、ゲート信号Vgの信号レベルは交互にローレベル、ハイレベルとなることが期待されるが、ゲート信号Vgの信号レベルがローレベルからハイレベルに切り替わった後、ゲート信号Vgの信号レベルがローレベルとなることなくハイレベルに維持される時間が、対象時間t
TG2として計測される。対象時間t
TG2はゲート信号Vgにおけるハイレベルのパルス幅を表している、とも言える。対象時間t
TG2は、ゲート信号Vgがローレベルからハイレベルに切り替わるたびに計測される。
【0057】
異常判定部126は、二次側チップ120に設けられたタイマを用いて対象時間t
TG2を計測して良い。具体的には例えば、二次側回路にて生成されるクロック信号を用いて対象時間t
TG2を計測して良い。そして、異常判定部126は、計測した対象時間t
TG2を上限判定時間t
TH2_Hと比較することで、対象時間t
TG2に関わる異常の有無を判定し、その判定結果を示す判定信号S
D2を第2信号処理回路121に出力する。
【0058】
図10に異常判定部126の構成例を示す。
図10の異常判定部126は、シュミットバッファ126a、カウンタ126b及び比較判定部126cを備える。
図11は、実施例EX_A1に係る異常判定部126の動作に注目したタイミングチャートである。
【0059】
シュミットバッファ126aは、モニタ端子P
MNTに加わるゲート信号Vgを波形整形することで(二値化することで)デジタルのゲート信号Vgであるゲート信号Vg’を生成する。ゲート信号Vg’はハイレベル又はローレベルの信号レベルをとるデジタル信号である。ゲート信号Vg’のハイレベルは実質的に電源電圧VCC2のレベルと一致し、ゲート信号Vg’のローレベルは実質的にグランドGND2のレベルと一致する。シュミットバッファ126aは、ゲート信号Vgのレベルが二次側閾電圧より高ければゲート信号Vg’をハイレベルとし、そうでなければゲート信号Vg’をローレベルとする。実際には二次側閾電圧に対してヒステリシス特性が付与される。シュミットバッファ126aでの二次側閾電圧はグランドGND2よりも高く且つ電源電圧VCC2よりも低い所定電圧値(例えば電源電圧VCC2の半分)を有する。
【0060】
尚、シュミットバッファ126aは異常判定部126の外部に設けられた回路であると考えても良く、
図12に示す如くモニタ端子P
MNTと第2信号処理回路121との間に設けられる回路であっても良い。この場合、シュミットバッファ126aから出力されるゲート信号Vg’がカウンタ126b及び第2信号処理回路121に対し共通に供給され、ゲート信号Vg’に基づきフィードバック信号S
FBの生成が行われて良い。
【0061】
カウンタ126bには、ゲート信号Vg’とクロック信号CLK2が供給される。クロック信号CLK2は所定の第2クロック周波数を有する矩形波信号である。ゲートドライバ100(ここではゲートドライバ100A)の外部のクロック発生部(不図示)からゲートドライバ100に対してクロック信号CLK2が供給されても良いし、二次側チップ120内でクロック信号CLK2が生成されても良い。カウンタ126bは、クロック信号CLK2を用い、ゲート信号Vg’のハイレベル区間の長さをカウントすることでカウント値C
VAL2を生成する。より具体的には、ゲート信号Vg’のローレベル区間においてカウント値C
VAL2をゼロとし、ゲート信号Vg’のハイレベル区間においてクロック信号CLK2を用い第2クロック周波数の逆数分の時間が経過するたびに(例えばクロック信号CLK2のアップエッジ又はダウンエッジが生じるたびに)カウント値C
VAL2に“1”を加算する。
【0062】
比較判定部126cには、カウンタ126bからのカウント値C
VAL2と上限判定時間t
TH2_Hを示す判定時間情報とが与えられ、比較判定部126cから判定信号S
D2が出力される。
【0063】
ゲート信号Vg’のハイレベル区間において、カウント値C
VAL2と第2クロック周波数の逆数との積が対象時間t
TG2に相当する。故に、比較判定部126cは、カウント値C
VAL2に基づく対象時間t
TG2を上限判定時間t
TH2_Hと比較し、上限判定時間t
TH2_Hを超える対象時間t
TG2が検出されたとき、対象時間t
TG2が過剰に長い異常(以下、二次側上限異常と称する)が発生したと判定する。対象時間t
TG2が上限判定時間t
TH2_Hと一致した時点で二次側上限異常が発生したと判定するようにしても良い。比較判定部126cは、二次側上限異常が発生したと判定したとき、自身が管理するフラグFLG2の値に“1”を設定する。尚、本実施形態において、“異常が発生したと判定される”という表現の代わりに、“異常が有ると判定される”、“異常の発生が検出される”又は“異常が検出される”という表現が用いられることがあるが、それらの表現の意味するところは互いに同じである。
【0064】
判定時間指定部125において、上限判定時間t
TH2_Hはカウント値C
VAL2との対比に適した形態で定められていると良い。即ち例えば、上限判定時間t
TH2_Hを示す判定時間情報は、上限判定時間t
TH2_Hを第2クロック周波数の逆数で割って得た商の値C
VAL2_H_LIMであると良い(
図11参照)。そうすると、カウント値C
VAL2が値C
VAL2_H_LIMに超えたとき“t
TH2_H<t
TG2”が検出されることになり、そのとき、二次側上限異常が発生したと判定されてフラグFLG2に“1”が設定される。制御装置200が出力又は認識している制御信号S
CNT0のパルス幅(ハイレベルのパルス幅)が上限判定時間t
TH2_Hより短いにも関わらず、制御信号配線WR
CNTの断線及び天絡等により制御信号S
CNT1がハイレベルに固定されたときなどにおいて、二次側上限異常が検出される。
【0065】
フラグFLG2の初期値はゼロであり、フラグFLG2の値がゼロであるとき判定信号S
D2はローレベルに維持される。従って、ゲートドライバ100(ここではゲートドライバ100A)の起動後、正常状態が維持される限り、判定信号S
D2はローレベルに維持される(
図11参照)。一旦、フラグFLG2に“1”が設定されると、所定のリセット条件が成立しない限り、フラグFLG2の値は“1”に維持され、フラグFLG2の値が“1”であるときには判定信号S
D2はハイレベルに維持される。リセット条件は、例えば、制御装置200からゲートドライバ100(ここではゲートドライバ100A)に対して所定のリセット信号が供給されることで、或いは、ゲートドライバ100(ここではゲートドライバ100A)が再起動することで成立する。
【0066】
第2信号処理回路121は、異常判定部126により異常(実施例EX_A1において二次側上限異常)が有ると判定されておらず、従って判定信号S
D2がローレベルであるときにおいては、原則通り、制御信号S
CNT1に基づく制御信号S
CNT2に従ってドライバ122を制御する。故に、判定信号S
D2がローレベルである区間においては、第2信号処理回路121及びドライバ122により、制御信号S
CNT1がハイレベルであるとき(従って制御信号S
CNT2がハイレベルであるとき)ゲート信号Vgがハイレベルに制御され、制御信号S
CNT1がローレベルであるとき(従って制御信号S
CNT2がローレベルであるとき)ゲート信号Vgがローレベルに制御される。
【0067】
一方、第2信号処理回路121は、異常判定部126により異常(実施例EX_A1において二次側上限異常)が有ると判定され、従って判定信号S
D2がハイレベルであるときにおいては、出力強制オフ処理を実行する。出力強制オフ処理は、制御信号S
CNT1に依らず出力トランジスタTRのゲート信号レベルをローレベルに維持する(即ち出力トランジスタTRをオフ状態にラッチする)処理であり、第2信号処理回路121にとっては制御信号S
CNT2に依らず出力トランジスタTRのゲート信号レベルをローレベルに維持する処理であるとも言える。従って、制御信号S
CNT1がハイレベルであっても(従って制御信号S
CNT2がハイレベルであっても)、判定信号S
D2がローレベルからハイレベルに切り替わると、第2信号処理回路121はドライバ122の状態を出力ハイ状態から出力ロー状態へと即座に切り替えて出力トランジスタTRを強制的にオフとする。
【0068】
本実施例によれば、何らかの故障により、出力トランジスタTRのゲート信号レベルがシステムSYSで想定される上限の時間(t
TH2_H)を超えてハイレベルに維持されるとき、上記制御装置200の制御を待たず即座に出力トランジスタTRをオフさせることができる。このため、例えば負荷(例えば
図3のモータMT)に供給される電流が過大となるといったような不都合の発生を抑制することが可能となり、システムSYSの安全性向上が図られる。
【0069】
<<実施例EX_A2>>
実施例EX_A2を説明する。実施例EX_A2は実施例EX_A1を基礎とする実施例であり、実施例EX_A2においてもゲートドライバ100として
図8のゲートドライバ100Aが用いられる。実施例EX_A1における記載事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、実施例EX_A2にも適用されて良い。
【0070】
制御装置200は、交互にローレベル及びハイレベルの信号レベルをとる制御信号S
CNT0を出力することで、出力トランジスタTRをパルス駆動することができる。この際、何らかの故障により、出力トランジスタTRのオン時間がシステムSYSで想定されえない程度に短くなる可能性もある。出力トランジスタTRのオン時間が過度に短い場合には、出力トランジスタTRのオン時間が過度に長い場合よりも安全性に関する懸念は少ないとも言える。しかしながら、出力トランジスタTRのオン時間がシステムSYSで想定されえない程度に短くなる状態は、制御装置200の制御から外れた状態で出力トランジスタTRが駆動される状態に相当し、そのような状態での駆動の継続は望ましくないとも言える。
【0071】
これを考慮し、実施例EX_A2では、判定時間指定部125により指定される判定時間t
TH2が下限判定時間t
TH2_Lとされる或いは下限判定時間t
TH2_Lを含む(
図14参照)。下限判定時間t
TH2_Lは、予め不変に定められた固定時間であっても良いし、後述されるよう可変時間であっても良い。但し、下限判定時間t
TH2_Lは実施例EX_A1で述べた上限判定時間t
TH2_Hよりも短い。そして、実施例EX_A2に係る異常判定部126は、自身が計測した対象時間t
TG2を下限判定時間t
TH2_Lと比較することで、対象時間t
TG2に関わる異常の有無を判定し、その判定結果を示す判定信号S
D2を第2信号処理回路121に出力する。
【0072】
図13に示す異常判定部126の構成が用いられる場合を考える。
図14は、実施例EX_A2に係る異常判定部126の動作に注目したタイミングチャートである。
図13に示す構成自体は
図10のそれと同じであり、比較判定部126cへの入力情報が
図10及び
図13間で異なる。シュミットバッファ126a及びカウンタ126bの動作は上述した通りである。比較判定部126cには、カウンタ126bからのカウント値C
VAL2と下限判定時間t
TH2_Lを示す判定時間情報とが与えられ、比較判定部126cから判定信号S
D2が出力される。
【0073】
ゲート信号Vg’のハイレベル区間において、カウント値C
VAL2と第2クロック周波数の逆数との積が対象時間t
TG2に相当する。故に、比較判定部126cは、カウント値C
VAL2に基づく対象時間t
TG2を下限判定時間t
TH2_Lと比較し、下限判定時間t
TH2_Lを下回る対象時間t
TG2が検出されたとき、対象時間t
TG2が過剰に短い異常(以下、二次側下限異常と称する)が発生したと判定する。対象時間t
TG2が下限判定時間t
TH2_Lと同じであるときも二次側下限異常が発生したと判定するようにしても良い。比較判定部126cは、二次側下限異常が発生したと判定したとき、自身が管理するフラグFLG2の値に“1”を設定する。
【0074】
判定時間指定部125において、下限判定時間t
TH2_Lはカウント値C
VAL2との対比に適した形態で定められていると良い。即ち例えば、下限判定時間t
TH2_Lを示す判定時間情報は、下限判定時間t
TH2_Lを第2クロック周波数の逆数で割って得た商の値C
VAL2_L_LIMであると良い。そうすると(
図14参照)、カウント値C
VAL2が値C
VAL2_L_LIMに達する前にゲート信号Vg’のダウンエッジに応答してカウント値C
VAL2がゼロとなったとき、“t
TH2_L>t
TG2”が検出されることになり、そのとき、二次側下限異常が発生したと判定されてフラグFLG2に“1”が設定される。値C
VAL2_L_LIMは実施例EX_A1で述べた値C
VAL2_H_LIM(
図11参照)よりも小さい。制御装置200が出力又は認識している制御信号S
CNT0のパルス幅(ハイレベルのパルス幅)が下限判定時間t
TH2_Lより長いにも関わらず、制御信号配線WR
CNTの半壊等により二次側下限異常が発生しうる。
【0075】
上述したように、フラグFLG2の初期値はゼロであり、フラグFLG2の値がゼロであるとき判定信号S
D2はローレベルに維持される。従って、ゲートドライバ100(ここではゲートドライバ100A)の起動後、正常状態が維持される限り、判定信号S
D2はローレベルに維持される(
図14参照)。一旦、フラグFLG2に“1”が設定されると、上記リセット条件が成立しない限り、フラグFLG2の値は“1”に維持され、フラグFLG2の値が“1”であるときには判定信号S
D2はハイレベルに維持される。
【0076】
判定信号S
D2のレベルに応じたゲートドライバ100Aの各回路の動作(特に第2信号処理回路121及びドライバ122の動作)は実施例EX_A1で述べた通りである。
【0077】
本実施例によれば、制御装置200の制御から外れた状態で出力トランジスタTRが駆動され続けることを抑制することができる。結果、負荷が想定外の動作を行うといったことが防止される。
【0078】
<<実施例EX_A3>>
実施例EX_A3を説明する。実施例EX_A3では実施例EX_A1及びEX_A2を組み合わせて実施する。即ち、実施例EX_A3においては、判定時間指定部125により指定される判定時間t
TH2が上限判定時間t
TH2_H及び下限判定時間t
TH2_Lを含む。そして、異常判定部126は、対象時間t
TG2を上限判定時間t
TH2_H及び下限判定時間t
TH2_Lと比較することで対象時間t
TG2に関わる異常の有無を判定し、その判定結果を示す判定信号S
D2を第2信号処理回路121に出力する。この際、比較判定部126c(
図10及び
図13参照)は、実施例EX_A1で述べた方法を用い、上限判定時間t
TH2_Hを超える対象時間t
TG2が検出されたとき二次側上限異常が発生したと判定し、実施例EX_A2で述べた方法を用い、下限判定時間t
TH2_Lを下回る対象時間t
TG2が検出されたとき二次側下限異常が発生したと判定する。
【0079】
フラグFLG2の初期値はゼロであり、フラグFLG2の値がゼロであるとき判定信号S
D2はローレベルに維持される。比較判定部126cは、二次側上限異常及び二次側下限異常の何れかが発生したと判定したとき、自身が管理するフラグFLG2の値に“1”を設定する。一旦、フラグFLG2に“1”が設定されると、上記リセット条件が成立しない限り、フラグFLG2の値は“1”に維持され、フラグFLG2の値が“1”であるときには判定信号S
D2はハイレベルに維持される。判定信号S
D2のレベルに応じたゲートドライバ100Aの各回路の動作(特に第2信号処理回路121及びドライバ122の動作)は実施例EX_A1で述べた通りである。
【0080】
<<実施例EX_B1>>
実施例EX_B1を説明する。実施例EX_B1では、上述の二次側上限異常(
図11参照)に対応する異常を一次側回路で検出する。
図15には、実施例EX_B1に係るゲートドライバ100であるゲートドライバ100Bが、その周辺回路と共に示されている。ゲートドライバ100Bでは異常対応部が一次側チップ110に設けられ、当該異常対応部は判定時間指定部115及び異常判定部116を備える。
【0081】
判定時間指定部115は、異常判定部116にて参照される判定時間t
TH1を指定する。判定時間t
TH1を示す判定時間情報は異常判定部116に提供される。判定時間情報を格納した記憶部(レジスタ又は不揮発性メモリ)にて判定時間指定部115が構成されていて良い。実施例EX_B1において、判定時間指定部115により指定される判定時間t
TH1は上限判定時間t
TH1_Hであるとする或いは上限判定時間t
TH1_Hを含むものとする(
図18参照)。上限判定時間t
TH1_Hは、予め不変に定められた固定時間であっても良いし、後述されるよう可変時間であっても良い。制御装置200がパルス幅変調された制御信号S
CNT0を出力する際、上限判定時間t
TH1_Hは、制御信号S
CNT0の周波数の逆数より長くて良い。
【0082】
異常判定部116は制御入力端子P
CNTに接続され、制御入力端子P
CNTを通じて制御信号S
CNT1を受ける。異常判定部116は、制御信号S
CNT1に基づき、制御信号S
CNT1の信号レベルが継続してハイレベルに維持される時間を対象時間として計測する。異常判定部116によって計測される対象時間を特に対象時間t
TG1と称する。
図16に示す如く、制御信号S
CNT1の信号レベルは交互にローレベル、ハイレベルとなることが期待されるが、制御信号S
CNT1の信号レベルがローレベルからハイレベルに切り替わった後、制御信号S
CNT1の信号レベルがローレベルとなることなくハイレベルに維持される時間が、対象時間t
TG1として計測される。対象時間t
TG1は制御信号S
CNT1におけるハイレベルのパルス幅を表している、とも言える。対象時間t
TG1は、制御信号S
CNT1がローレベルからハイレベルに切り替わるたびに計測される。
【0083】
異常判定部116は、一次側チップ110に設けられたタイマを用いて対象時間t
TG1を計測して良い。具体的には例えば、一次側回路にて生成されるクロック信号を用いて対象時間t
TG1を計測して良い。そして、異常判定部116は、計測した対象時間t
TG1を上限判定時間t
TH1_Hと比較することで、対象時間t
TG1に関わる異常の有無を判定し、その判定結果を示す判定信号S
D1を第1信号処理回路111に出力する。
【0084】
図17に異常判定部116の構成例を示す。
図17の異常判定部116は、シュミットバッファ116a、カウンタ116b及び比較判定部116cを備える。
図18は、実施例EX_B1に係る異常判定部116の動作に注目したタイミングチャートである。
【0085】
シュミットバッファ116aは、制御入力端子P
CNTに加わる制御信号S
CNT1を波形整形することで制御信号S
CNT1’を生成する。シュミットバッファ116aは、制御信号配線WR
CNTにおける信号伝搬で生じた歪みを除去するためのバッファであり、当該歪みの存在を無視すれば、制御信号S
CNT1と制御信号S
CNT1’は同じ波形を持つ。
【0086】
尚、シュミットバッファ116aは異常判定部116の外部に設けられた回路であると考えても良く、
図19に示す如く制御入力端子P
CNTと第1信号処理回路111との間に設けられる回路であっても良い。この場合、シュミットバッファ116aから出力される制御信号S
CNT1’がカウンタ116b及び第1信号処理回路111に対し共通に供給され、第1信号処理回路111は、制御入力端子P
CNTに加わる制御信号S
CNT1を、制御信号S
CNT1’に基づいて第2信号処理回路121に伝達する。
【0087】
カウンタ116bには、制御信号S
CNT1’とクロック信号CLK1が供給される。クロック信号CLK1は所定の第1クロック周波数を有する矩形波信号である。ゲートドライバ100(ここではゲートドライバ100B)の外部のクロック発生部(不図示)からゲートドライバ100に対してクロック信号CLK1が供給されても良いし、一次側チップ110内でクロック信号CLK1が生成されても良い。カウンタ116bは、クロック信号CLK1を用い、制御信号S
CNT1’のハイレベル区間の長さをカウントすることでカウント値C
VAL1を生成する。より具体的には、制御信号S
CNT1’のローレベル区間においてカウント値C
VAL1をゼロとし、制御信号S
CNT1’のハイレベル区間においてクロック信号CLK1を用い第1クロック周波数の逆数分の時間が経過するたびに(例えばクロック信号CLK1のアップエッジ又はダウンエッジが生じるたびに)カウント値C
VAL1に“1”を加算する。
【0088】
比較判定部116cには、カウンタ116bからのカウント値C
VAL1と上限判定時間t
TH1_Hを示す判定時間情報とが与えられ、比較判定部116cから判定信号S
D1が出力される。
【0089】
制御信号S
CNT1’のハイレベル区間において、カウント値C
VAL1と第1クロック周波数の逆数との積が対象時間t
TG1に相当する。故に、比較判定部116cは、カウント値C
VAL1に基づく対象時間t
TG1を上限判定時間t
TH1_Hと比較し、上限判定時間t
TH1_Hを超える対象時間t
TG1が検出されたとき、対象時間t
TG1が過剰に長い異常(以下、一次側上限異常と称する)が発生したと判定する。対象時間t
TG1が上限判定時間t
TH1_Hと一致した時点で一次側上限異常が発生したと判定するようにしても良い。比較判定部116cは、一次側上限異常が発生したと判定したとき、自身が管理するフラグFLG1の値に“1”を設定する。
【0090】
判定時間指定部115において、上限判定時間t
TH1_Hはカウント値C
VAL1との対比に適した形態で定められていると良い。即ち例えば、上限判定時間t
TH1_Hを示す判定時間情報は、上限判定時間t
TH1_Hを第1クロック周波数の逆数で割って得た商の値C
VAL1_H_LIMであると良い(
図18参照)。そうすると、カウント値C
VAL1が値C
VAL1_H_LIMに超えたとき“t
TH1_H<t
TG1”が検出されることになり、そのとき、一次側上限異常が発生したと判定されてフラグFLG1に“1”が設定される。制御装置200が出力又は認識している制御信号S
CNT0のパルス幅(ハイレベルのパルス幅)が上限判定時間t
TH1_Hより短いにも関わらず、制御信号配線WR
CNTの断線及び天絡等により制御入力端子P
CNTに加わる制御信号S
CNT1がハイレベルに固定されたときなどにおいて、一次側上限異常の発生が検出される。
【0091】
フラグFLG1の初期値はゼロであり、フラグFLG1の値がゼロであるとき判定信号S
D1はローレベルに維持される。従って、ゲートドライバ100(ここではゲートドライバ100B)の起動後、正常状態が維持される限り、判定信号S
D1はローレベルに維持される(
図18参照)。一旦、フラグFLG1に“1”が設定されると、所定のリセット条件が成立しない限り、フラグFLG1の値は“1”に維持され、フラグFLG1の値が“1”であるときには判定信号S
D1はハイレベルに維持される。リセット条件は、例えば、制御装置200からゲートドライバ100(ここではゲートドライバ100B)に対して所定のリセット信号が供給されることで、或いは、ゲートドライバ100(ここではゲートドライバ100B)が再起動することで成立する。
【0092】
異常判定部116により異常(実施例EX_B1において一次側上限異常)が有ると判定されておらず、従って判定信号S
D1がローレベルであるとき、ゲートドライバ100Bにおいて正常状態での動作が実行される。即ち、判定信号S
D1がローレベルであるとき、第1信号処理回路111は、原則通り、パルストランス部131を通じ制御信号S
CNT1を絶縁形式で第2信号処理回路121に伝達し、第2信号処理回路121及びドライバ122は、第1信号処理回路111から伝達された信号に基づき出力トランジスタTRのゲートを駆動する。故に、判定信号S
D1がローレベルである区間においては、第2信号処理回路121及びドライバ122により、制御信号S
CNT1がハイレベルであるとき(従って制御信号S
CNT2がハイレベルであるとき)ゲート信号Vgがハイレベルに制御され、制御信号S
CNT1がローレベルであるとき(従って制御信号S
CNT2がローレベルであるとき)ゲート信号Vgがローレベルに制御される。
【0093】
一方、異常判定部116により異常(実施例EX_B1において一次側上限異常)が有ると判定され、従って判定信号S
D1がハイレベルであるとき、第1信号処理回路111は、パルストランス部131及び第2信号処理回路121と協働して出力強制オフ処理を実行する。上述したように、出力強制オフ処理は、制御信号S
CNT1に依らず出力トランジスタTRのゲート信号レベルをローレベルに維持する(即ち出力トランジスタTRをオフ状態にラッチする)処理である。具体的には、判定信号S
D1がローレベルからハイレベルに切り替わると、第1信号処理回路111は、パルストランス部131及び第2信号処理回路121と協働して即座に制御信号S
CNT2をローレベルとし、以後、制御信号S
CNT2をローレベルに維持させることで出力トランジスタTRをオフ状態に保つ。
【0094】
本実施例によれば、何らかの故障により、出力トランジスタTRのゲート信号レベルがシステムSYSで想定される上限の時間(t
TH1_H)を超えてハイレベルに維持されるような状況において、上記制御装置200の制御を待たず即時に力トランジスタTRをオフさせることができる。このため、例えば負荷(例えば
図3のモータMT)に供給される電流が過大となるといったような不都合の発生を抑制することが可能となり、システムSYSの安全性向上が図られる。
【0095】
<<実施例EX_B2>>
実施例EX_B2を説明する。実施例EX_B2は実施例EX_B1を基礎とする実施例であり、実施例EX_B2においてもゲートドライバ100として
図15のゲートドライバ100Bが用いられる。実施例EX_B1における記載事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、実施例EX_B2にも適用されて良い。
【0096】
実施例EX_B2では、上述の二次側下限異常(
図14参照)に対応する異常を一次側回路で検出する。故に、実施例EX_B2では、判定時間指定部115により指定される判定時間t
TH1が下限判定時間t
TH1_Lとされる或いは下限判定時間t
TH1_Lを含む(
図21参照)。下限判定時間t
TH1_Lは、予め不変に定められた固定時間であっても良いし、後述されるよう可変時間であっても良い。但し、下限判定時間t
TH1_Lは実施例EX_B1で述べた上限判定時間t
TH1_Hよりも短い。そして、実施例EX_B2に係る異常判定部116は、自身が計測した対象時間t
TG1を下限判定時間t
TH1_Lと比較することで、対象時間t
TG1に関わる異常の有無を判定し、その判定結果を示す判定信号S
D1を第1信号処理回路111に出力する。
【0097】
図20に示す異常判定部116の構成が用いられる場合を考える。
図21は、実施例EX_B2に係る異常判定部116の動作に注目したタイミングチャートである。
図20に示す構成自体は
図17のそれと同じであり、比較判定部116cへの入力情報が
図17及び
図20間で異なる。シュミットバッファ116a及びカウンタ116bの動作は上述した通りである。比較判定部116cには、カウンタ116bからのカウント値C
VAL1と下限判定時間t
TH1_Lを示す判定時間情報とが与えられ、比較判定部116cから判定信号S
D1が出力される。
【0098】
制御信号S
CNT1’のハイレベル区間において、カウント値C
VAL1と第1クロック周波数の逆数との積が対象時間t
TG1に相当する。故に、比較判定部116cは、カウント値C
VAL1に基づく対象時間t
TG1を下限判定時間t
TH1_Lと比較し、下限判定時間t
TH1_Lを下回る対象時間t
TG1が検出されたとき、対象時間t
TG1が過剰に短い異常(以下、一次側下限異常と称する)が発生したと判定する。対象時間t
TG1が下限判定時間t
TH1_Lと同じであるときも一次側下限異常が発生したと判定するようにしても良い。比較判定部116cは、一次側下限異常が発生したと判定したとき、自身が管理するフラグFLG1の値に“1”を設定する。
【0099】
判定時間指定部115において、下限判定時間t
TH1_Lはカウント値C
VAL1との対比に適した形態で定められていると良い。即ち例えば、下限判定時間t
TH1_Lを示す判定時間情報は、下限判定時間t
TH1_Lを第1クロック周波数の逆数で割って得た商の値C
VAL1_L_LIMであると良い。そうすると(
図21参照)、カウント値C
VAL1が値C
VAL1_L_LIMに達する前に制御信号S
CNT1’のダウンエッジに応答してカウント値C
VAL1がゼロとなったとき、“t
TH1_L>t
TG1”が検出されることになり、そのとき、一次側下限異常が発生したと判定されてフラグFLG1に“1”が設定される。値C
VAL1_L_LIMは実施例EX_B1で述べた値C
VAL1_H_LIM(
図18参照)よりも小さい。制御装置200が出力又は認識している制御信号S
CNT0のパルス幅(ハイレベルのパルス幅)が下限判定時間t
TH1_Lより長いにも関わらず、制御信号配線WR
CNTの半壊等により一次側下限異常が発生しうる。
【0100】
上述したように、フラグFLG1の初期値はゼロであり、フラグFLG1の値がゼロであるとき判定信号S
D1はローレベルに維持される。従って、ゲートドライバ100(ここではゲートドライバ100B)の起動後、正常状態が維持される限り、判定信号S
D1はローレベルに維持される(
図21参照)。一旦、フラグFLG1に“1”が設定されると、上記リセット条件が成立しない限り、フラグFLG1の値は“1”に維持され、フラグFLG1の値が“1”であるときには判定信号S
D1はハイレベルに維持される。
【0101】
判定信号S
D1のレベルに応じたゲートドライバ100Bの各回路の動作(特に第1信号処理回路111の動作、並びに、その動作に基づく第2信号処理回路121及びドライバ122の動作)は実施例EX_B1で述べた通りである。
【0102】
本実施例によれば、制御装置200の制御から外れた状態で出力トランジスタTRが駆動され続けることを抑制することができる。結果、負荷が想定外の動作を行うといったことが防止される。
【0103】
<<実施例EX_B3>>
実施例EX_B3を説明する。実施例EX_B3では実施例EX_B1及びEX_B2を組み合わせて実施する。即ち、実施例EX_B3においては、判定時間指定部115により指定される判定時間t
TH1が上限判定時間t
TH1_H及び下限判定時間t
TH1_Lを含む。そして、異常判定部116は、対象時間t
TG1を上限判定時間t
TH1_H及び下限判定時間t
TH1_Lと比較することで対象時間t
TG1に関わる異常の有無を判定し、その判定結果を示す判定信号S
D1を第1信号処理回路111に出力する。この際、比較判定部116c(
図17及び
図20参照)は、実施例EX_B1で述べた方法を用い、上限判定時間t
TH1_Hを超える対象時間t
TG1が検出されたとき一次側上限異常が発生したと判定し、実施例EX_B2で述べた方法を用い、下限判定時間t
TH1_Lを下回る対象時間t
TG1が検出されたとき一次側下限異常が発生したと判定する。
【0104】
フラグFLG1の初期値はゼロであり、フラグFLG1の値がゼロであるとき判定信号S
D1はローレベルに維持される。比較判定部116cは、一次側上限異常及び一次側下限異常の何れかが発生したと判定したとき、自身が管理するフラグFLG1の値に“1”を設定する。一旦、フラグFLG1に“1”が設定されると、上記リセット条件が成立しない限り、フラグFLG1の値は“1”に維持され、フラグFLG1の値が“1”であるときには判定信号S
D1はハイレベルに維持される。判定信号S
D1のレベルに応じたゲートドライバ100Bの各回路の動作(特に第1信号処理回路111の動作、並びに、その動作に基づく第2信号処理回路121及びドライバ122の動作)は実施例EX_B1で述べた通りである。
【0105】
<<実施例EX_C1>>
実施例EX_C1を説明する。実施例EX_C1並びに後述の実施例EX_C2及びEX_C3は、上述の実施例EX_A1〜EX_A3及びEX_B1〜EX_B3の内の任意の実施例と組み合わせて実施される。
図22に示す如く、ゲートドライバ100には異常通知部150が設けられていると良い。
図22において、装置AP
EXTは、ゲートドライバ100の外部に設けられた装置であって、ゲートドライバ100に接続される外部装置である。
【0106】
異常通知部150は、ゲートドライバ100にて特定の異常が有ると判定されたとき、所定の異常通知を外部装置AP
EXTに対して行う。ここで、特定の異常とは、上述の二次側上限異常、二次側下限異常、一次側上限異常及び一次側下限異常の内、任意の何れかの異常を指す。異常通知の形態は任意である。異常通知は、例えば、ゲートドライバ100に設けられた1以上の外部端子を通じ所定の異常信号を外部装置AP
EXTに出力することで実現される。
【0107】
外部装置AP
EXTは典型的には制御装置200と一致するが、一次側回路又は二次側回路に設けられた任意の装置(但しゲートドライバ100以外)が外部装置AP
EXTであっても良い。
【0108】
外部装置AP
EXTが一次側回路に設けられる第1ケースにおいて、異常通知部150は一次側チップ110に配置される。第1ケースにおいて、
図8の異常判定部126にて二次側上限異常又は二次側下限異常が有ると判定されたときには、その旨がパルストランス部131を通じて異常通知部150に伝達されることで外部装置AP
EXTへの異常通知が実現される。第1ケースにおいて、
図15の異常判定部116にて一次側上限異常又は一次側下限異常が有ると判定されたときにあっては、異常通知の実現にあたりパルストランス部131の利用は不要である。
【0109】
外部装置AP
EXTが二次側回路に設けられる第2ケースにおいて、異常通知部150は二次側チップ120に配置される。第2ケースにおいて、
図15の異常判定部116にて一次側上限異常又は一次側下限異常が有ると判定されたときには、その旨がパルストランス部131を通じて異常通知部150に伝達されることで外部装置AP
EXTへの異常通知が実現される。第2ケースにおいて、
図8の異常判定部126にて二次側上限異常又は二次側下限異常が有ると判定されたときにあっては、異常通知の実現にあたりパルストランス部131の利用は不要である。
【0110】
上述の異常通知部150を設けておくことにより、異常発生時に外部装置AP
EXTにて必要な措置を講じることが可能となり、これによってシステムSYSの安全性向上が期待される。必要な措置として、例えば、制御信号S
CNT0をローレベルに固定する、ゲートドライバ100に対する電源電圧VCC1及びVCC2の供給を遮断する、負荷駆動システムSYS及び外部装置AP
EXTが組み込まれた機器(不図示)のユーザに警告通知を行う、ネットワーク網におけるサーバ装置(不図示)に所定信号を送信する、といったことが可能となる。
【0111】
尚、上述の実施例EX_A1〜EX_A3及びEX_B1〜EX_B3においては、所定の出力強制オフ機能が有効とされている。出力強制オフ機能とは、特定の異常が有ると判定された場合において、制御信号S
CNT1に依らず出力トランジスタTRのゲート信号レベルをローレベルに制御する機能(即ち、制御信号S
CNT1に依らず出力トランジスタTRをオフ状態に維持する機能)を指す。出力強制オフ機能が有効であるとは、上述の出力強制オフ処理の実行が許可されている状態を指し、出力強制オフ機能が無効であるとは、上述の出力強制オフ処理の実行が禁止されている状態を指す、とも言える。特定の異常が有ると判定されたときに異常通知を行う場合にあっては、出力強制オフ機能を無効にしておくこともできる。出力強制オフ機能が無効とされている場合、特定の異常が有ると判定されたとしても判定信号S
D2又はS
D1はローレベルに維持され、正常状態と同様に、制御信号S
CNT1に基づく出力トランジスタTRのゲートの駆動が行われる。但し、システムSYSの安全性増強のためには出力強制オフ機能を有効にしておくことが好ましい。
【0112】
<<実施例EX_C2>>
実施例EX_C2を説明する。
図23に示す如く、ゲートドライバ100の外部から判定時間t
THを設定するための第1設定用インターフェース160(判定時間設定用インターフェース)がゲートドライバ100に設けられていても良く、これにより判定時間t
THを可変時間とすることができる。ここで、設定の対象となる判定時間t
THは、上述の上限判定時間t
TH2_H、下限判定時間t
TH2_L、上限判定時間t
TH1_H及び下限判定時間t
TH1_L(
図11、
図14、
図18、
図21参照)の内、任意の1つ、2つ、3つ又は4つの時間を指す。
【0113】
第1設定用インターフェース160は第1設定用外部端子161を備える。第1設定用外部端子161は、ゲートドライバ100の筐体に設けられた複数の外部端子に含まれる1以上の外部端子から成る。第1設定用外部端子161にて受けた第1設定用信号又は第1設定用電圧に基づき判定時間t
THが設定されて良い。第1設定用信号又は第1設定用電圧は、一次側回路における信号又は電圧であっても良いし、二次側回路における信号又は電圧であっても良い。具体的には例えば、以下の第1又は第2設定方法にて判定時間t
THが設定されて良い。
【0114】
第1設定方法では、ゲートドライバ100の外部に設けられた装置(制御装置200又は外部装置AP
EXTであっても良い)から通信により第1設定用信号を第1設定用外部端子161にて受ける。この場合、第1設定用信号に基づきインターフェース160又は判定時間指定部125若しくは115にて判定時間t
THが設定され、判定時間t
THを示す判定時間情報が判定時間指定部125又は115を構成する記憶部(レジスタ又は不揮発性メモリ)に格納される。
【0115】
第2設定方法では、第1設定用外部端子161がプルアップ又はプルダウン等されることで第1設定用外部端子161に対し第1設定用電圧が印加される。この場合、第1設定用電圧に基づきインターフェース160又は判定時間指定部125若しくは115にて判定時間t
THが設定される。例えば、設定の対象となる判定時間t
THが上限判定時間t
TH2_Hである場合において、第1設定用電圧を二次側回路内の単一の外部端子から成る第1設定用外部端子161にて受ける場合、第1設定用電圧が所定の二次側閾電圧(例えば電源電圧VCC2の半分)より高ければ上限判定時間t
TH2_Hを所定の第1候補時間に設定し、第1設定用電圧が二次側閾電圧より低ければ上限判定時間t
TH2_Hを第1候補時間と異なる所定の第2候補時間に設定する。上限判定時間t
TH2_Hが3つ以上の候補時間の中から選択設定されるようにしても良い。判定時間t
TH2_L、t
TH1_H及びt
TH1_Lについても同様である。
【0116】
また、
図23に示す如く、ゲートドライバ100の外部から出力強制オフ機能の有効又は無効を設定するための第2設定用インターフェース170(有効/無効設定用インターフェース)がゲートドライバ100に設けられていても良い。出力強制オフ機能の意義は実施例EX_C1で述べた通りである。信号処理回路111及び121は出力強制オフ機能の有効又は無効を選択可能に構成されている。
【0117】
第2設定用インターフェース170は第2設定用外部端子171を備える。第2設定用外部端子171は、ゲートドライバ100の筐体に設けられた複数の外部端子に含まれる1以上の外部端子から成る。第2設定用外部端子171にて受けた第2設定用信号又は第2設定用電圧に基づき出力強制オフ機能の有効又は無効が設定されて良い。第2設定用信号又は第2設定用電圧は、一次側回路における信号又は電圧であっても良いし、二次側回路における信号又は電圧であっても良い。具体的には例えば、以下の第3又は第4設定方法にて出力強制オフ機能の有効又は無効が設定されて良い。
【0118】
第3設定方法では、ゲートドライバ100の外部に設けられた装置(制御装置200又は外部装置AP
EXTであっても良い)から通信により第2設定用信号を第2設定用外部端子171にて受ける。この場合、第2設定用信号に基づく設定情報がゲートドライバ内の所定の記憶部(レジスタ又は不揮発性メモリ)に格納され、当該記憶部に格納された設定情報に従って出力強制オフ機能が有効又は無効とされる。
【0119】
第4設定方法では、第2設定用外部端子171がプルアップ又はプルダウン等されることで第2設定用外部端子171に対し第2設定用電圧が印加される。この場合、第2設定用電圧に基づき出力強制オフ機能の有効又は無効が設定される。例えば、第2設定用電圧を二次側回路内の単一の外部端子から成る第2設定用外部端子171にて受ける場合、第2設定用電圧が所定の二次側閾電圧(例えば電源電圧VCC2の半分)より高ければ出力強制オフ機能を無効とし、第2設定用電圧が二次側閾電圧より低ければ出力強制オフ機能を有効とする。
【0120】
<<実施例EX_C3>>
実施例EX_C3を説明する。
図24には、実施例EX_C3に係るゲートドライバ100であるゲートドライバ100Cが、その周辺回路と共に示されている。
図24に示す如く、異常対応部を二次側チップ120及び一次側チップ110の双方に設けるようにしても良い。即ち、ゲートドライバ100Cでは、判定時間指定部125及び異常判定部126から成る二次側異常対応部が二次側チップ120に設けられ、且つ、判定時間指定部115及び異常判定部116から成る一次側異常対応部が一次側チップ110に設けられる。判定時間指定部125及び異常判定部126の動作を含む、二次側チップ120内の各回路の動作は実施例EX_A1〜EX_A3の何れかに示した通りである。判定時間指定部115及び異常判定部116の動作を含む、一次側チップ110内の各回路の動作は実施例EX_B1〜EX_B3の何れかに示した通りである。
【0121】
<<実施例EX_D>>
実施例EX_D1を説明する。実施例EX_D1に記載の事項は、上述の任意の実施例に適用可能である。
【0122】
本実施形態に係る負荷駆動システムSYSを任意の機器に搭載することができ、例えば車両に搭載することができる。車両として路面上を走行可能な自動車等が想定されるが、車両の種類は任意である。負荷駆動システムSYSが自動車等の車両に搭載される場合、制御装置200は車両の走行制御を行うECU(Electronic Control Unit)を含んでいて良く、出力トランジスタTRに接続される負荷は車両を走行させるためのモータであっても良い。車載用途においては安全性が重要視されため、本発明の安全性向上に関わる技術は有望である。特に二次側上限異常又は一次側上限異常の検出時に(
図11又は
図18参照)、制御装置200からの制御を待たずに出力トランジスタTRを強制オフすることにより、車両の暴走等を未然に防ぐことが可能となる。
【0123】
車両を走行させるためのモータは出力トランジスタの直列回路から成るハーフブリッジ回路又は4つの出力トランジスタから成るフルブリッジ回路で駆動されて良い。各々の出トランジスタは対応するゲートドライバ100にてゲート駆動されて良い。ハイブリッド型の車両などにおけるブレーキ動作では、モータを発電機とした回生電流が1以上の出力トランジスタに流れるが、この際、回生電流が流れるべき1以上の出力トランジスタが上述の上限判定時間t
TH2_H及びt
TH1_Hを超えて継続的にオン状態とされることも多い。故に、このようなブレーキ動作時においては上述の出力強制オフ機能を無効にしておくと良い。また、ブレーキ動作時においては、外部装置AP
EXTにて(
図22)上述の異常通知を正常な回生対応通知として受け取ることで、出力トランジスタが回生のために正しく制御されていることを認識することができ、フィードバック信号S
FBと合わせて確認することで安全性を更に高めることが可能となる。
【0124】
出力トランジスタTRをNチャネル型のFET(電界効果トランジスタ)にて構成しても良い。この場合、出力トランジスタTRをNチャネル型のIGBTにて構成することを前提とした上述の各説明において、出力トランジスタTRについてのコレクタ、エミッタを、夫々、ドレイン、ソースに読み替えれば良い。また、出力トランジスタTRとしてPチャネル型のIGBT又はFETを用いることも可能であり、この場合、上述の主旨を行わない形で出力トランジスタTRの周辺回路に必要な変形が施される。出力トランジスタTRとして用いられうるFETの種類は任意であるが、例えば、MOSFETが好適である。FET又はIGBTとして構成されたトランジスタは、第1電極、第2電極及び制御電極を有する。FETにおいて、第1及び第2電極の内の一方がドレインで他方がソースであり且つ制御電極がゲートであり、ゲート−ソース間電圧に応じFETがオン又はオフする。IGBTにおいて、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がゲートであり、ゲート−エミッタ間電圧に応じIGBTがオン又はオフする。
【0125】
出力トランジスタTRのチャネル型の変更にも関係するが、任意の信号又は電圧に関し、上述の主旨を損なわない形で、それらのハイレベルとローレベルの関係は上述したものの逆とされ得る。
【0126】
<<本発明の考察>>
上述の実施形態にて具体化された本発明について考察する。
【0127】
本発明の一側面に係るゲートドライバ装置は、 出力トランジスタ(TR)のゲートを駆動するゲートドライバ装置(100、100A、100B又は100C)であって、出力トランジスタのゲートを駆動するゲートドライバ装置において、オン対応レベル又はオフ対応レベルの信号レベルを持つ制御信号(S
CNT0)の入力を受けるべき制御入力端子(P
CNT)と、前記制御入力端子に接続され、前記制御入力端子に加わる入力制御信号(S
CNT1)に基づいて、前記出力トランジスタのゲート信号レベルを前記出力トランジスタをオン状態とするためのオン制御レベル又は前記出力トランジスタをオフ状態とするためのオフ制御レベルに制御する主回路(111、131、121及び122)と、判定時間(t
TH2_H、t
TH2_L、t
TH1_H又はt
TH1_L)を指定する判定時間指定部(125又は115)と、前記出力トランジスタのゲート信号レベルが継続して前記オン制御レベルに維持される時間(t
TG2)又は前記入力制御信号が継続して前記オン対応レベルに維持される時間(t
TG1)を対象時間として計測し、前記判定時間と前記対象時間との比較結果に基づき、前記対象時間に関わる異常の有無を判定する異常判定部(126又は116)と、を備える。
【0128】
そして、上記のゲートドライバ装置において、前記主回路は、前記異常が有ると判定されていない場合において、前記入力制御信号が前記オン対応レベル、前記オフ対応レベルを有するとき、前記出力トランジスタのゲート信号レベルを、夫々、前記オン制御レベル、前記オフ制御レベルに制御し、前記異常が有ると判定された場合、前記入力制御信号に依らず前記出力トランジスタのゲート信号レベルを前記オフ制御レベルに制御することを特徴とする。これに加えて又はこれに代えて、前記異常が有ると判定された場合、当該ゲートドライバ装置に接続された外部装置に対して所定の異常通知を行う異常通知部(150)をゲートドライバ装置に設けたことを特徴とする。
【0129】
上述の実施形態では、ハイレベルがオン対応レベルに相当し且つローレベルがオフ対応レベルに相当するが、ローレベルがオン対応レベルに相当し且つハイレベルがオフ対応レベルに相当するように変形することも可能である。同様に、上述の実施形態では、ハイレベルがオン制御レベルに相当し且つローレベルがオフ制御レベルに相当するが、ローレベルがオン制御レベルに相当し且つハイレベルがオフ制御レベルに相当するように変形することも可能である(この変形を行う際には、出力トランジスタのチャネル型をPチャネル型とすれば良い)。
【0130】
主回路は、
図1等に示される構成例においては、第1信号処理回路111、パルストランス部131、第2信号処理回路121及びドライバ122を含んで構成される。
図1等に示される構成例において、主回路は互いに絶縁された2つの回路(一次側回路及び二次側回路)に亘って形成されている。本発明において、これは必須ではないが、互いに絶縁された2つの回路に亘って主回路を形成する場合には、以下のような構成を採用できる。
【0131】
即ち、上記のゲートドライバ装置において、例えば、前記主回路は、互いに絶縁された第1回路(111)及び第2回路(121及び122)を有し、前記第1回路は、前記制御入力端子に接続され、前記入力制御信号に応じた信号を絶縁形式で前記第2回路に伝達し、前記第2回路は、前記第1回路から伝達された信号に基づき、前記出力トランジスタのゲートに接続される出力端子を通じ前記出力トランジスタのゲートとの間で電流を入出力することにより、前記出力トランジスタのゲート信号レベルを前記オン制御レベル又は前記オフ制御レベルに制御すると良い。
【0132】
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。