本発明の実施形態によるバルク音響共振器は、基板と、上記基板上に第1電極、圧電層、及び第2電極が順に積層される共振部と、を含み、上記圧電層は、スカンジウム(Sc)を含有する窒化アルミニウム(AlN)で形成され、上記圧電層の漏れ電流に関連し、下記式1及び式2を満たすことができる。
前記圧電層の破壊電圧(breakdown voltage)と前記圧電層の厚さの比(V/Å)は0.025以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載のバルク音響共振器。
前記共振部を横切るように切断した断面において、前記第2電極の先端は、前記中央部と前記拡張部との境界、又は前記傾斜部上に配置される、請求項6に記載のバルク音響共振器。
前記AlScN薄膜を形成する段階は、アルミニウム−スカンジウム(AlSc)ターゲットにするスパッタリング(Sputtering)工程を介して行われる、請求項9または10に記載のバルク音響共振器の製造方法。
前記圧電層の破壊電圧(breakdown voltage)と前記圧電層の厚さの比(V/Å)は0.025以上である、請求項9から12のいずれか一項に記載のバルク音響共振器の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、具体的な実施形態及び添付された図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0013】
併せて、明細書全体において、ある構成が他の構成と「連結」されるというのは、かかる構成が「直接的に連結」される場合だけでなく、他の構成を挟んで「間接的に連結」される場合も含まれることを意味する。また、ある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態による音響共振器を示す平面図であり、
図2は
図1のI−I'線に沿った断面図であり、
図3は
図1のII−II'線に沿った断面図であり、
図4は
図1のIII−III'線に沿った断面図である。
【0015】
図1〜
図4を参照すると、本発明の一実施形態による音響共振器100は、バルク音響共振器(BAW、Bulk Acoustic Wave Resonator)であってもよく、基板110、犠牲層140、共振部120、及び挿入層170を含むことができる。
【0016】
基板110はシリコン基板であることができる。例えば、基板110として、シリコンウェハを用いてもよく、SOI(Silicon On Insulator)タイプの基板を用いてもよい。
【0017】
基板110の上面には絶縁層115が設けられ、基板110と共振部120とを電気的に絶縁させることができる。また、絶縁層115は、音響共振器の製造過程においてキャビティCを形成する際に、エッチングガスによって基板110がエッチングされることを防止する。
【0018】
この場合、絶縁層115は、二酸化ケイ素(SiO
2)、窒化ケイ素(Si
3N
4)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、及び窒化アルミニウム(AlN)のうち少なくとも一つで形成されることができ、化学気相蒸着(Chemical vapor deposition)、RFマグネトロンスパッタリング(RF Magnetron Sputtering)、及び蒸発(Evaporation)のうちいずれか一つの工程を介して形成されることができる。
【0019】
犠牲層140は絶縁層115上に形成され、犠牲層140の内部にはキャビティC及びエッチング防止部145が配置される。
【0020】
キャビティCは、空き空間に形成され、犠牲層140の一部を除去することによって形成されることができる。
【0021】
キャビティCが犠牲層140内に形成されることにより、犠牲層140の上部に形成される共振部120は全体的に平らに形成されることができる。
【0022】
エッチング防止部145は、キャビティCの境界に沿って配置される。エッチング防止部145は、キャビティCの形成過程において、キャビティ領域を超えてエッチングが進行することを防止するために備えられる。
【0023】
膜層150は、犠牲層140上に形成され、キャビティCの上部面を形成する。これにより、膜層150もキャビティCを形成する過程において容易に除去されない材料で形成される。
【0024】
一例として、犠牲層140の一部(例えば、キャビティ領域)を除去するためにフッ素(F)や塩素(Cl)などのハロゲン化物系エッチングガスを用いる場合、膜層150は、上述したエッチングガスと反応性が低い材料からなることができる。この場合、膜層150は、二酸化ケイ素(SiO
2)及び窒化ケイ素(Si
3N
4)のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0025】
また、膜層150は、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、窒化アルミニウム(AlN)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ガリウム砒素(GaAs)、酸化ハフニウム(HfO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化チタン(TiO
2)、及び酸化亜鉛(ZnO)のうち少なくとも一つの材料を含有する誘電体層(Dielectric layer)からなるか、又はアルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、白金(Pt)、ガリウム(Ga)、及びハフニウム(Hf)のうち少なくとも一つの材料を含有する金属層からなることができる。
【0026】
共振部120は、第1電極121、圧電層123、及び第2電極125を含む。共振部120は、下から第1電極121、圧電層123、及び第2電極125が順に積層される。これにより、共振部120における圧電層123は、第1電極121と第2電極125との間に配置される。
【0027】
共振部120は膜層150上に形成されるため、結果として、基板110の上部には膜層150、第1電極121、圧電層123、及び第2電極125が順に積層されて共振部120を形成する。
【0028】
共振部120は、第1電極121及び第2電極125に印加される信号に応じて圧電層123を共振させることにより共振周波数及び反共振周波数を発生させることができる。
【0029】
共振部120は、第1電極121、圧電層123、及び第2電極125がおおむね平らに積層される中央部Sと、第1電極121と圧電層123との間に挿入層170が介在する拡張部Eに区分されることができる。
【0030】
中央部Sは、共振部120の中心に配置される領域であり、拡張部Eは、中央部Sの周囲に沿って配置される領域である。すなわち、拡張部Eとは、中央部Sから外側に延長される領域であって、中央部Sの周囲に沿って連続した環状に形成される領域を意味する。但し、必要に応じて、一部の領域が断絶された不連続な環状に構成されてもよい。
【0031】
それに応じて、
図2に示すように、中央部Sを横切るように共振部120を切断した断面において、中央部Sの両端にはそれぞれ拡張部Eが配置される。また、中央部Sの両端に配置される拡張部Eの両方に挿入層170が配置される。
【0032】
挿入層170は、中央部Sから離れるほど厚さが厚くなる傾斜面Lを備える。
【0033】
拡張部Eにおける圧電層123及び第2電極125は挿入層170上に配置される。そのため、拡張部Eに位置する圧電層123及び第2電極125は、挿入層170の形状に沿って傾斜面を備える。
【0034】
一方、本実施形態では、拡張部Eが共振部120に含まれるものと定義する。これにより、拡張部Eにおいても共振が行われることができる。しかし、これに限定されるものではなく、拡張部Eの構造により、拡張部Eでは共振が行われず、中央部Sでだけ共振が行われることもできる。
【0035】
第1電極121及び第2電極125は、導電体で形成されることができ、例えば、金、モリブデン、ルテニウム、イリジウム、アルミニウム、白金、チタン、タングステン、パラジウム、タンタル、クロム、ニッケル、又はこれらのうち少なくとも一つを含む金属で形成されることができるが、これに限定されるものではない。
【0036】
共振部120における第1電極121は、第2電極125よりも広い面積で形成され、第1電極121上には第1電極121の外側に沿って第1金属層180が配置される。これにより、第1金属層180は、第2電極125と一定距離離隔配置され、共振部120を囲む形で配置されることができる。
【0037】
第1電極121は、膜層150上に配置されるため、全体的に平らに形成される。これに対し、第2電極125は、圧電層123上に配置されるため、圧電層123の形状に対応して屈曲が形成されることができる。
【0038】
第1電極121は、RF(Radio Frequency)信号などの電気信号を入出力する入力電極及び出力電極のいずれかとして用いられることができる。
【0039】
第2電極125は、中央部S内に全体的に配置され、拡張部Eに部分的に配置される。これにより、第2電極125は、後述する圧電層123の圧電部123a上に配置される部分と、圧電層123の屈曲部123b上に配置される部分に区分されることができる。
【0040】
より具体的には、本実施形態において、第2電極125は、圧電部123aの全体、及び圧電層123の傾斜部1231のうち一部を覆う形で配置される。これにより、拡張部E内に配置される第2電極(
図4の125a)は、傾斜部1231の傾斜面よりも小さい面積で形成され、共振部120内における第2電極125は、圧電層123よりも小さい面積で形成される。
【0041】
それに応じて、
図2に示すように、中央部Sを横切るように共振部120を切断した断面において、第2電極125の先端は拡張部E内に配置される。また、拡張部E内に配置される第2電極125の先端は少なくとも一部が挿入層170と重なるように配置される。ここで、重なるとは、挿入層170が配置される平面に第2電極125を投影した際に、上記平面に投影された第2電極125の形状が挿入層170と重なることを意味する。
【0042】
第2電極125は、RF(Radio Frequency)信号などの電気信号を入出力する入力電極及び出力電極のうちいずれかとして用いられることができる。すなわち、第1電極121が入力電極として用いられる場合には第2電極125は出力電極として用いられ、第1電極121が出力電極として用いられる場合には第2電極125は入力電極として用いられることができる。
【0043】
一方、
図4に示すように、第2電極125の先端が後述する圧電層123の傾斜部1231上に位置する場合、共振部120の音響インピーダンス(acoustic impedance)は、局部的な構造が中央部Sから疎/密/疎/密の構造で形成されるため、水平波を共振部120の内側に反射させる反射界面が増加する。その結果、ほとんどの水平波(lateral wave)が共振部120の外部に抜け出せず、共振部120の内部に反射されて入るため、音響共振器の性能が向上することができる。
【0044】
圧電層123は、電気的エネルギーを弾性波の形の機械的エネルギーに変換する圧電効果を引き起こす部分的であって、第1電極121及び後述する挿入層170上に形成される。
【0045】
圧電層123の材料として、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)、ドープされた窒化アルミニウム(Doped Aluminum Nitride)、ジルコンチタン酸鉛(Lead Zirconate Titanate)、クォーツ(Quartz)などが選択的に用いられることができる。ドープされた窒化アルミニウム(Doped Aluminum Nitride)の場合には、希土類金属(Rare earth metal)、遷移金属、又はアルカリ土類金属(alkaline earth metal)をさらに含むことができる。上記希土類金属は、スカンジウム(Sc)、エルビウム(Er)、イットリウム(Y)、及びランタン(La)のうち少なくとも一つを含むことができる。上記遷移金属は、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、及びニオブ(Nb)のうち少なくとも一つを含むことができる。また、アルカリ土類金属は、マグネシウム(Mg)を含むことができる。
【0046】
圧電特性を向上させるために窒化アルミニウム(AlN)にドープされる元素の含有量が0.1at%よりも少ない場合には、窒化アルミニウム(AlN)よりも高い圧電特性を実現することができず、元素の含有量が30at%を超える場合、蒸着のための製作及び組成の調整(control)が難しく、不均一相が形成される可能性がある。
【0047】
したがって、本実施形態において、窒化アルミニウム(AlN)にドープされた元素の含有量は0.1〜30at%の範囲で構成されることができる。
【0048】
本実施形態において、圧電層は、窒化アルミニウム(AlN)にスカンジウム(Sc)をドープして用いる。この場合、圧電定数が増加し、音響共振器のK
t2を増加させることができる。
【0049】
本実施形態による圧電層123は、中央部Sに配置される圧電部123a、及び拡張部Eに配置される屈曲部123bを含む。
【0050】
圧電部123aは、第1電極121の上部面に直接積層される部分である。これにより、圧電部123aは、第1電極121と第2電極125との間に介在し、第1電極121及び第2電極125と平らな形で形成される。
【0051】
屈曲部123bは、圧電部123aから外側に延長されて、拡張部E内に位置する領域として定義することができる。
【0052】
屈曲部123bは、後述する挿入層170上に配置され、挿入層170の形状に沿って上部面が隆起される形で形成される。これにより、圧電層123は圧電部123aと屈曲部123bとの境界で屈曲され、屈曲部123bは挿入層170の厚さ及び形状に対応して隆起される。
【0053】
屈曲部123bは、傾斜部1231と延長部1232に区分されることができる。
【0054】
傾斜部1231とは、後述する挿入層170の傾斜面Lに沿って傾斜するように形成される部分を意味する。そして、延長部1232とは、傾斜部1231から外側に延長される部分を意味する。
【0055】
傾斜部1231は、挿入層170の傾斜面Lと平行に形成され、傾斜部1231の傾斜角は、挿入層170の傾斜面Lの傾斜角と同一に形成されることができる。
【0056】
挿入層170は、膜層150、第1電極121、及びエッチング防止部145によって形成される表面に沿って配置される。これにより、挿入層170は、共振部120内に部分的に配置され、第1電極121と圧電層123との間に配置される。
【0057】
挿入層170は、中央部Sの周囲に配置され、圧電層123の屈曲部123bを支持する。これにより、圧電層123の屈曲部123bは、挿入層170の形状に沿って傾斜部1231と延長部1232に区分されることができる。
【0058】
本実施形態において、挿入層170は、中央部Sを除いた領域に配置される。例えば、挿入層170は、基板110上の中央部Sを除いた領域全体に配置されてもよく、又は一部の領域に配置されてもよい。
【0059】
挿入層170は、中央部Sから離れるほど厚さが厚くなる形状に形成される。これにより、挿入層170は、中央部Sと隣接するように配置される側面が一定の傾斜角θを有する傾斜面Lに形成される。
【0060】
挿入層170の側面の傾斜角θが5°よりも小さく形成されると、これを製造するために、挿入層170の厚さを非常に薄く形成するか、又は傾斜面Lの面積を過度に大きく形成する必要があるため実質的な実現が難しくなる。
【0061】
また、挿入層170の側面の傾斜角θが70°よりも大きく形成されると、挿入層170上に積層される圧電層123又は第2電極125の傾斜角が70°よりも大きく形成される。この場合、傾斜面Lに積層される圧電層123又は第2電極125が過度に屈曲されるため、屈曲部分においてクラック(crack)が発生する可能性がある。
【0062】
したがって、本実施形態における上記傾斜面Lの傾斜角θは、5°以上70°以下の範囲で形成される。
【0063】
一方、本実施形態において、圧電層123の傾斜部1231は、挿入層170の傾斜面Lに沿って形成され、挿入層170の傾斜面Lと同一の傾斜角で形成される。したがって、傾斜部1231の傾斜角も挿入層170の傾斜面Lと同様に5°以上70°以下の範囲で形成される。このような構成は、挿入層170の傾斜面Lに積層される第2電極125にも同様に適用されることは言うまでもない。
【0064】
挿入層170は、酸化ケイ素(SiO
2)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、窒化ケイ素(Si
3N
4)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ガリウム砒素(GaAs)、酸化ハフニウム(HfO
2)、酸化チタン(TiO
2)、及び酸化亜鉛(ZnO)などの誘電体で形成されてもよいが、圧電層123とは異なる材料で形成される。
【0065】
また、挿入層170は金属材料で実現可能である。本実施形態のバルク音響共振器が5G通信に用いられる場合には、共振部において熱が多く発生するため、かかる熱が円滑に放出されるようにする必要がある。このために、本実施形態の挿入層170は、スカンジウム(Sc)を含有するアルミニウム合金材料からなることができる。
【0066】
さらに、挿入層170は、窒素(N)やフッ素(F)を注入したSiO
2薄膜で形成されることができる。
【0067】
共振部120は、空き領域に形成されるキャビティCを介して基板110と離隔配置される。
【0068】
キャビティCは、音響共振器の製造過程においてエッチングガス(又はエッチング溶液)を流入ホール(
図1のH)に供給して犠牲層140の一部を除去することによって形成されることができる。
【0069】
保護層160は、音響共振器100の表面に沿って配置され、音響共振器100を外部から保護する。保護層160は、第2電極125、及び圧電層123の屈曲部123bが形成される表面に沿って配置されることができる。
【0070】
一方、第1電極121及び第2電極125は、共振部120の外側に延長されることができる。そして、延長形成される部分の上部面にはそれぞれ第1金属層180及び第2金属層190が配置されることができる。
【0071】
第1金属層180及び第2金属層190は、金(Au)、金−スズ(Au−Sn)合金、銅(Cu)、銅−スズ(Cu−Sn)合金、アルミニウム(Al)、及びアルミニウム合金のうちいずれか一つの材料からなることができる。ここで、アルミニウム合金は、アルミニウム−ゲルマニウム(Al−Ge)合金又はアルミニウム−スカンジウム(Al−Sc)合金であってもよい。
【0072】
第1金属層180及び第2金属層190は、基板110上において、本実施形態による音響共振器の第1電極121及び第2電極125と、隣接するように配置される他の音響共振器の電極とを電気的に連結する連結配線としての機能を行うことができる。
【0073】
第1金属層180は、保護層160を貫通して第1電極121に接合される。
【0074】
また、共振部120における第1電極121は、第2電極125よりも広い面積で形成され、第1電極121の周囲の部分には第1金属層180が形成される。
【0075】
これにより、第1金属層180は、共振部120の周囲に沿って配置され、第2電極125を囲む形で配置される。しかし、これに限定されるものではない。
【0076】
また、本実施形態において、共振部120上に位置する保護層160は、少なくとも一部が第1金属層180及び第2金属層190と接触するように配置される。第1金属層180及び第2金属層190は、熱伝導率が高い金属材料で形成され、且つ体積が大きいため熱放出効果が大きい。
【0077】
これにより、圧電層123で発生した熱が保護層160を経由して第1金属層180及び第2金属層190に迅速に伝達されることができるように、保護層160は、第1金属層180及び第2金属層190と連結される。
【0078】
本実施形態において、保護層160は、少なくとも一部が第1金属層180及び第2金属層190の下部に配置される。具体的には、保護層160は、第1金属層180と圧電層123との間、及び第2金属層190と第2電極125及び圧電層123との間にそれぞれ挿入されて配置される。
【0079】
このように構成される本実施形態によるバルク音響共振器100は、共振部120の帯域幅(band width)を広げるために、窒化アルミニウム(AlN)にスカンジウム(Sc)のような元素をドープして圧電層123を形成することができる。
【0080】
上述のように、窒化アルミニウム(AlN)にスカンジウム(Sc)をドープして圧電層123を形成する場合には、圧電定数が増加し、音響共振器のK
t2を増加させることができる。
【0081】
本実施形態のバルク音響共振器が5G通信に用いられるようにするために、 圧電層123は、該当周波数において円滑に動作できる高圧電定数を有する必要がある。測定の結果、圧電層123が5G通信に用いられるようにするためには、10wt%以上のスカンジウム(Sc)を窒化アルミニウム(AlN)に含有させる必要があることが分かった。そのため、本実施形態において、圧電層123は、スカンジウム(Sc)の含有量が10wt%以上であるAlScN材料で形成することができる。
【0082】
ここで、スカンジウム(Sc)の含有量は、アルミニウム及びスカンジウムの重量を基準に規定される。すなわち、スカンジウム(Sc)の含有量が10wt%の場合には、アルミニウム及びスカンジウムの全重量が100gである際に、スカンジウムの重量が10gであることを意味する。
【0083】
一方、圧電層123の形成は、スパッタリング(Sputtering)工程を介して行われ、スパッタリング工程に用いられるスパッタリングターゲット(Sputtering target)は、アルミニウム−スカンジウム(AlSc)をターゲットに、アルミニウム及びスカンジウムを溶融させた後、硬化させる溶融(melting)法を用いて製作することができる。
【0084】
ところが、スカンジウム(Sc)の含有量が40wt%以上であるアルミニウム−スカンジウム(AlSc)ターゲットを製造する場合には、Al
3Sc相だけでなくAl
2Sc相が形成されるため、脆いAl
2Sc相によってターゲットの取り扱い過程においてターゲットが容易に破損するという問題がある。また、スパッタリング工程においてスパッタリング装置に装着されたスパッタリングターゲットに1kW以上の高い電力が印加される場合には、スパッタリングターゲットにクラック(crack)が発生する可能性もある。
【0085】
したがって、本実施形態では、スカンジウム(Sc)の含有量が10wt%〜40wt%からなるAlScN材料で圧電層123を形成することができる。
【0086】
一方、AlScN薄膜内のSc元素の含有量は、SEM(Scanningelectron microscopy)、TEM(Transmission Electron Microscope)のEDS(Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)分析を介して確認可能であるが、これに限定されるものではなく、XPS(X−ray photoelectron spectroscopy)分析などを用いることも可能である。
【0087】
一方、スカンジウム(Sc)が含有された窒化アルミニウム(AlN)で圧電層123を構成する場合には、スカンジウム(Sc)の含有量が増加するにつれて、圧電層123で発生する漏れ電流(leakage current)も増加することが測定された。
【0088】
漏れ電流の密度は、単位面積当たりの漏れ電流を示すものであって、圧電層123で発生する漏れ電流が主な因子である。圧電層123内の漏れ電流の発生は、電極界面とのショットキー放出(Schottky emission)、及び圧電層内部に発生するプールフレンケル効果(Poole−Frenkel emission)の二つを原因としてみなすことができる。
【0089】
また、漏れ電流は、AlScNからなる圧電層の結晶構造であるHCP(hexagonal closed packed)結晶構造から(0002)結晶面への配向性が悪い場合にも増加する可能性がある。AlScNからなる圧電層123は、アルミニウム(Al)原子よりも大きいスカンジウム(Sc)原子がアルミニウム(Al)のサイト(site)に置換されることによって、AlScN単位格子に変形が発生することがある。その結果、圧電層123内にボイド(void)や転位(dislocation)などの欠陥サイト(defect site)が増加する際に漏れ電流が増加する可能性がある。
【0090】
圧電層123におけるスカンジウム(Sc)の含有量が増加する場合、圧電層123内には欠陥サイトが増加する可能性があり、かかる欠陥サイトは、圧電層123の異常成長の要因として作用するおそれがある。
【0091】
したがって、AlScN材料で圧電層123を形成する場合には、漏れ電流の密度だけでなく、圧電層123のスカンジウム(Sc)の含有量も考慮する必要がある。
【0092】
また、5G通信用バルク音響共振器は、周波数が高くなるにつれて、共振部120の厚さが薄くなるようにする必要がある。これにより、本実施形態のバルク音響共振器は、圧電層の厚さを5000Å以下に形成することができる。しかし、圧電層123の厚さが薄くなると、圧電層123から漏れる電流(leakage current)の量が増加する傾向がある。
【0093】
上記漏れ電流が大きい場合には、圧電層123の破壊電圧(breakdown voltage)が低くなり、高電圧/高電力の環境下で圧電層が容易に破損する可能性がある。
【0094】
そこで、本実施形態のバルク音響共振器は、高電圧/高電力の環境下で安定して動作できるように、圧電層の漏れ電流及びスカンジウム(Sc)の含有量に関連し、下記式1及び式2を満たすように構成される。
(式1)漏れ電流特性<20
(式2)漏れ電流特性=漏れ電流の密度(μA/cm
2)×スカンジウム(Sc)の含有量(wt%)
ここで、漏れ電流の密度(Leakage current density)は圧電層の漏れ電流の密度を意味し、スカンジウム(Sc)の含有量は圧電層に含有されるスカンジウム(Sc)の含有量である。また、上記した漏れ電流特性は、5G通信でフィルタとして利用可能なバルク音響共振器の性能を規定する要素である。
【0095】
本実施形態のバルク音響共振器は、漏れ電流特性が20未満の場合、圧電層の漏れ電流の密度が純粋な窒化アルミニウムにおける漏れ電流の密度と同一のサイズを有する。これにより、圧電層123における損失が最小限に抑えられるため、バルク音響共振器は、5G通信フィルタとして最適な性能を提供することができる。
【0096】
これに対し、漏れ電流特性が20以上の場合には、漏れ電流が過度に増加(例えば、2μA/cm
2以上)して圧電層の破壊電圧が非常に低くなったり、スカンジウム(Sc)の含有量が過多(例えば、40wt%以上)になって圧電層123で異常成長が増加したりして、結果として、バルク音響共振器の特性が劣化するため、上記したフィルタとしての性能を確保することが難しい。
【0097】
そのため、本実施形態のバルク音響共振器は、AlScN材料の圧電層123における漏れ電流の密度を最小限にすることで上記式1を満たすように構成される。
【0098】
圧電層123の漏れ電流を最小限に抑えるために、本実施形態のバルク音響共振器は、製造過程において圧電層123を熱処理することができる。
【0099】
圧電層の熱処理は、RTA(Rapid Thermal Annealing)工程を介して行うことができる。本実施形態におけるRTA工程は、400℃以上の温度で1分〜30分間行われることができる。
【0100】
図5は圧電層のスカンジウム(Sc)の含有量に応じた漏れ電流の密度を測定して示した表であって、
図6は
図5の漏れ電流特性に基づいて作成されたグラフである。ここで、漏れ電流の密度(Leakage current density)は、第1電極121と第2電極125との間に0.1V/nmの同一の電界を形成して測定を行った。
【0101】
図5を参照すると、本実施形態の圧電層は、スカンジウム(Sc)の含有量が0である純粋な窒化アルミニウム(AlN)の場合には漏れ電流の密度が0.33μA/cm
2と測定され、スカンジウム(Sc)を含有する場合には2.35μA/cm
2、2.81μA/cm
2、4.40μA/cm
2などのように漏れ電流の密度が大幅に増加することが分かった。
【0102】
これに対し、窒化アルミニウム(AlN)にスカンジウム(Sc)をドープした後、500℃以上の温度で熱処理を行った場合には、漏れ電流の密度が0.78μA/cm
2、0.001μA/cm
2、0.47μA/cm
2、0.27μA/cm
2などであった。したがって、熱処理を行った場合には、スカンジウム(Sc)が含まれていない純粋な窒化アルミニウム(AlN)と同一のレベルの漏れ電流の密度が測定された。
【0103】
また、窒化アルミニウム(AlN)にスカンジウム(Sc)をドープした後、500℃以下の温度で熱処理を行った場合には、RTA工程を介しても漏れ電流の密度が依然として増加することが確認された。
【0104】
尚、
図6に示すように、熱処理を行わなかった圧電層又は500℃未満の温度で熱処理を行った圧電層は、漏れ電流特性がすべて20以上であることが分かった。これにより、本実施形態によるバルク音響共振器は、窒化アルミニウム(AlN)にスカンジウム(Sc)をドープした後、500℃以上の温度で熱処理を行った圧電層を含むことができる。
【0105】
上述のように、圧電層における漏れ電流の密度が大きい場合には、高電圧/高電力の環境下で圧電層が容易に破損する可能性がある。そのため、これを防止し、且つバルク音響共振器を5G通信でフィルタとして用いられるようにするために、本実施形態のバルク音響共振器は、漏れ電流特性が20未満の圧電層を備えるようにすることができる。
【0106】
一方、スカンジウム(Sc)を含有する窒化アルミニウム(AlN)を500℃以上の温度で熱処理した場合、漏れ電流特性はすべて10未満と測定された。そのため、熱処理を行った測定データに基づいて、本実施形態のバルク音響共振器は、圧電層の漏れ電流特性を10未満に規定することも可能である。
【0107】
また、
図5を参照すると、熱処理が行われていない圧電層及び500℃以下の温度で熱処理を行った圧電層の場合には、漏れ電流の密度がすべて2μA/cm
2以上と測定された。これにより、漏れ電流の密度が2μA/cm
2以下の範囲で漏れ電流特性が20以下であることを確認することができる。したがって、本実施形態における圧電層の漏れ電流の密度は2μA/cm
2以下と規定することができる。
【0108】
一方、500℃以上の温度で熱処理が行われたAlScN材料の圧電層は、漏れ電流の密度がすべて1μA/cm
2以下と測定された。したがって、500℃以上の温度で熱処理が行われた圧電層だけを考慮した場合、圧電層の漏れ電流の密度を1μA/cm
2以下と規定することも可能である。
【0109】
また、本実施形態において、圧電層がスカンジウム(Sc)を含有する場合、圧電層の破壊電圧(breakdown voltage)は100V以上であることができる。
【0110】
図5に示すように、漏れ電流特性が20以下の場合、圧電層の破壊電圧はすべて100V以上であると測定された。これにより、本実施形態の圧電層は、スカンジウム(Sc)を含有し、且つ破壊電圧が100V以上の場合、フィルタとしての活用が可能であることが分かる。
【0111】
また、圧電層の厚さと関連し、漏れ電流特性が20以下の場合、圧電層の厚さに対する圧電層の破壊電圧(breakdown voltage)の比(V/Å)はすべて0.025以上と測定された。
【0112】
そこで、本実施形態において、圧電層の厚さに対する圧電層の破壊電圧(breakdown voltage)の比(V/Å)が0.025以上になるように圧電層を形成することができる。
【0113】
一方、圧電層は、熱処理温度に応じて漏れ電流特性を変化させることができる。
【0114】
図7は、RTA工程温度に応じた漏れ電流を測定したグラフであって、スカンジウム(Sc)が10wt%含有されたAlScNからなる圧電層を4000Åの厚さで形成し、様々な温度で熱処理を行ってから漏れ電流を測定したものである。
【0115】
これを参照すると、熱処理工程を行っていない場合に比べて熱処理を行った場合、漏れ電流が大幅に減少することが分かる。また、熱処理温度が高くなるにつれて、漏れ電流がさらに減少することが分かる。
【0116】
そのため、スカンジウム(Sc)の含有量が多くなる場合でも、熱処理温度を最適化して上記式1を満たす圧電層を製造することができる。
【0117】
図8は、本実施形態のバルク音響共振器を用いたフィルタの特性を測定したグラフであって、周波数帯域に応じた挿入損失を示す。また、
図8には、熱処理を介して上記式1を満たすバルク音響共振器、及び上記式1を満たさないバルク音響共振器(熱処理未実施)のグラフがともに示されている。
【0118】
図8を参照すると、上記式1を満たすバルク音響共振器は、上記式1を満たさないバルク音響共振器に比べて挿入損失(insertion loss)が−1.23dBから−1.12dBに改善され、3.6GHzの特性が−1.55dBから−1.36dBに改善されることが確認された。
【0119】
これにより、漏れ電流特性が上記式1を満たすように圧電層を形成する場合には、圧電層の損失が最小限に抑えられ、バルク音響共振器フィルタの特性も改善されることが分かる。
【0120】
このように構成される本実施形態によるバルク音響共振器100は、
図2に示すように、基板110上に、第1電極121、圧電層123、及び第2電極125を順に積層して共振部120を形成することができる。また、共振部120を形成する段階は、第1電極121の下部、又は第1電極121と圧電層123との間に挿入層170を配置する段階を含むことができる。
【0121】
これにより、挿入層170を第1電極121上に積層配置するか、又は第1電極121を挿入層170上に積層配置することができる。
【0122】
圧電層123及び第2電極125は挿入層170の形状に沿って部分的に隆起することができ、圧電層123は第1電極121又は挿入層170上に形成されることができる。
【0123】
また、圧電層123を製造する段階は、アルミニウム−スカンジウム(AlSc)ターゲットにスパッタリング(Sputtering)工程を介してスカンジウム(Sc)が含有されたAlScN薄膜を形成する段階と、AlScN薄膜にRTA工程を行って圧電層123を完成する段階と、を含むことができる。
【0124】
上述した本実施形態によるバルク音響共振器100は、RTA工程を介してAlScNからなる圧電層内に形成される欠陥が除去されることができるため、漏れ電流特性が20未満の圧電層を備えることができる。これにより、圧電層がスカンジウム(Sc)を含有しても、純粋な窒化アルミニウム(AlN)のレベルで漏れ電流が発生するため、バルク音響共振器のK
t2を増加させるとともに、高電圧/高電力の条件下でも安定した特性を維持することができる。
【0125】
図9は本発明の他の実施形態によるバルク音響共振器を概略的に示す断面図である。
【0126】
本実施形態に示されるバルク音響共振器は、共振部120内で第2電極125が圧電層123の上面全体に配置され、結果として、第2電極125は、少なくとも一部が圧電層123の傾斜部1231と同様に延長部1232上にも形成されることができる。
【0127】
図10は本発明のさらに他の実施形態によるバルク音響共振器を概略的に示す断面図である。
【0128】
図10を参照すると、本実施形態による音響共振器は、中央部Sを横切るように共振部120を切断した断面において、第2電極125の先端部分が圧電層123の圧電部123aの上面にのみ形成され、屈曲部123b上には形成されない。これにより、第2電極125の先端は、圧電部123aと傾斜部1231との境界に沿って配置されることができる。
【0129】
このように、本発明によるバルク音響共振器は、必要に応じて、様々な形態に変形することができる。
【0130】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは、当技術分野における通常の知識を有する者には自明である。