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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-19103(P2021-19103A)
(43)【公開日】2021年2月15日
(54)【発明の名称】磁気結合型リアクトル装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20210118BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20210118BHJP
【FI】
   H01F37/00 A
   H01F37/00 M
   H01F37/00 C
   H01F27/24 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-134174(P2019-134174)
(22)【出願日】2019年7月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000107804
【氏名又は名称】スミダコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097984
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098073
【弁理士】
【氏名又は名称】津久井 照保
(72)【発明者】
【氏名】武内 彬
(57)【要約】
【課題】従来技術と比べて、結合度を高くすることで磁気漏れの低減を図るとともに直流重畳特性の向上を図ることができる磁気結合型リアクトル装置を提供する。
【解決手段】1対の鉄系のE字型コア101A、Bを、中脚コア部101A3、B3が互いに突き合せられるように配設するとともに、中脚コア部101A3、B3の各々に、コイル103A、Bを巻回状態で装着してなる。また、中脚コア部101A3、B3の延びる方向に直交する、中脚コア部101A3、B3の断面積をSi、外脚コア部101A1、B1、A2、B2の延びる方向に直交する、外脚コア部101A1、B1、A2、B2の断面積をSo、としたとき、下記条件式(1)が成り立つように設定されている。
1.0≦Si/So≦5.0 (1)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースコア部分と、このベースコア部分から同一方向に突出する3つ以上の脚部コア部分とを備えた鉄系材料よりなる多脚コア部材を少なくとも1対有し、
これら少なくとも1対の多脚コア部材を、対応する脚部コア部分が互いに突き合せられるように配設するとともに、対応する該脚部コア部分のうち、両外側の脚部コア部分を除く、内側の脚部コア部分であって、少なくとも1つのコイル巻回用脚部コア部分の、当該内側の脚部コア部分の突き合せ部分を挟む、該脚部コア部分の各々に、コイル部を巻回する状態で装着して磁気結合型の構造をなし、
前記コイル巻回用脚部コア部分の延びる方向に直交する、該コイル巻回用脚部コア部分の断面積をSi、前記両外側の脚部コア部分の延びる方向に直交する、該両外側の脚部コア部分の各々の断面積をSo、としたとき、下記条件式(1)が成り立つことを特徴とする磁気結合型リアクトル装置。
1.0≦Si/So≦5.0 (1)
【請求項2】
前記条件式(1)の範囲は、下記条件式(2)の範囲に限定したものとすることを特徴とする請求項1に記載の磁気結合型リアクトル装置。
1.5≦Si/So≦3.5 (2)
【請求項3】
前記多脚コア部材がE字型コア部材からなり、
該E字型コア部材の前記コイル巻回用脚部コア部分である中脚コア部分の各々に、1つのコイル部を巻回する状態で装着してなることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気結合型リアクトル装置。
【請求項4】
前記中脚コア部分が前記両外側の脚部コア部分よりも、少なくとも前記コイル部の幅分だけ上方側にオフセットされていることを特徴とする請求項3に記載の磁気結合型リアクトル装置。
【請求項5】
前記1対の多脚コア部材の対応する前記コイル巻回用脚部コア部分の各々に装着されてなる前記コイル部の入力端が、前記多脚コア部材の軸に対して一側に配されるとともに前記コイル部の巻回方向が互いに逆とされていることを特徴とする請求項4に記載の磁気結合型リアクトル装置。
【請求項6】
前記1対の多脚コア部材の対応する前記コイル巻回用脚部コア部分の各々に装着されてなる前記コイル部の各々の入力端および出力端が、一側の前記外側の脚部コア部分における上端面上に引き出されるように構成し、前記一側の外側の脚部コア部分の高さが、他側の前記外側の脚部コア部分の高さよりも該コイル部の幅分に対応する寸法だけ低く設定されていることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の磁気結合型リアクトル装置。
【請求項7】
一側の前記外側の脚部コア部分の軸に直交する方向の断面の面積が、他側の前記外側の脚部コア部分の軸に直交する方向の断面の面積と等しくなるように形成され、これらの2つの断面において、前記一側に係る断面は、前記他側に係る断面に比べて、高さが低く幅が広くなるように形成されていることを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の磁気結合型リアクトル装置。
【請求項8】
一側の前記外側の脚部コア部分と、他側の前記外側の脚部コア部分との高さの差に相当する厚みの樹脂材料を、前記一側の外側の脚部コア部分の上面上で、前記コイル部の各々の入力端および出力端が非配置とされた部分に取り付けてなることを特徴とする請求項1〜7のうちいずれか1項に記載の磁気結合型リアクトル装置。
【請求項9】
前記中脚コア部分に1つもしくは複数のエアギャップを設けることを特徴とする請求項3〜8のうちいずれか1項に記載の磁気結合型リアクトル装置。
【請求項10】
前記両外脚コア部分の少なくとも一方に1つもしくは複数のエアギャップを設けることを特徴とする請求項4〜9のうちいずれか1項に記載の磁気結合型リアクトル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電気自動車やハイブリッド車に搭載される磁気結合型リアクトル装置に関し、詳しくは、磁路を構成するコアの一部に複数のコイル部を挿通し、これらのコイル部が磁気結合するように構成してなる磁気結合型リアクトル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載の磁気結合型リアクトルとして、1対のU型コアを、両脚部の先端部を互いに突き合せることにより環状のコア部とするとともにUの脚部に各々コイル部を巻回するようにして、合計4つのコイル部を有するように構成された磁気結合型リアクトル装置が知られている。また、磁気結合型リアクトルは、2つのコイルについて、互いに相殺される方向の磁束を発生させることでコアの磁気飽和がされにくいようにし、さらに、相互インダクタンスを利用してリプルを抑制することで小型化・高効率化を達成することができる(下記特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6106646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、磁気結合型のリアクトルにおいては、上述したように、通常、1対のU型コアが用いられていることから、低リプル化のためのキーパラメータである結合度(結合係数)を高くすることが難しく、磁気漏れも大きくなり易い。さらに、結合度が低いと直流重畳特性が悪化しやすい、ということも問題となっていた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、従来技術と比べて、結合度を高くすることで磁気漏れの低減を図るとともに直流重畳特性の向上を図ることができる磁気結合型リアクトル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る磁気結合型リアクトル装置は、
ベースコア部分と、このベースコア部分から同一方向に突出する3つ以上の脚部コア部分とを備えた鉄系材料よりなる多脚コア部材を少なくとも1対有し、
これら少なくとも1対の多脚コア部材を、対応する脚部コア部分が互いに突き合せられるように配設するとともに、対応する該脚部コア部分のうち、両外側の脚部コア部分を除く、内側の脚部コア部分であって、少なくとも1つのコイル巻回用脚部コア部分の、当該内側の脚部コア部分の突き合せ部分を挟む、該脚部コア部分の各々に、コイル部を巻回する状態で装着して磁気結合型の構造をなし、
前記コイル巻回用脚部コア部分の延びる方向に直交する、該コイル巻回用脚部コア部分の断面積をSi、前記両外側の脚部コア部分の延びる方向に直交する、該両外側の脚部コア部分の各々の断面積をSo、としたとき、下記条件式(1)が成り立つことを特徴とするものである。
1.0≦Si/So≦5.0 (1)
ここで、「両外側の脚部コア部分の各々の断面積」とは、外側の脚部コア部分の断面積が互いに異なる場合には、両外側の脚部コア部分の各々について、上記(1)式を満足する必要がある。
【0007】
前記条件式(1)の範囲は、下記条件式(2)の範囲に限定したものとすることが好ましい。
1.5≦Si/So≦3.5 (2)
【0008】
前記多脚コア部材がE字型コア部材からなり、
該E字型コア部材の前記コイル巻回用脚部コア部分である中脚コア部分の各々に、1つのコイル部を巻回する状態で装着してなることが好ましい。
また、前記中脚コア部分が前記両外側の脚部コア部分よりも、少なくとも前記コイル部の幅分だけ上方側にオフセットされていることが好ましい。
【0009】
前記1対の多脚コア部材の対応する前記コイル巻回用脚部コア部分の各々に装着されてなる前記コイル部の入力端が、前記多脚コア部材の軸に対して一側に配されるとともに前記コイル部の巻回方向が互いに逆とされていることが好ましい。
前記1対の多脚コア部材の対応する前記コイル巻回用脚部コア部分の各々に装着されてなる前記コイル部の各々の前記入力端および前記出力端が、一側の前記外側の脚部コア部分における上端面上に引き出されるように構成し、前記一側の外側の脚部コア部分の高さが、他側の前記外側の脚部コア部分の高さよりも該コイル部の幅分に対応する寸法だけ低く設定されていることが好ましい。
【0010】
一側の前記外側の脚部コア部分の軸に直交する方向の断面の面積が、他側の前記外側の脚部コア部分の軸に直交する方向の断面の面積と等しくなるように形成され、これらの2つの断面において、前記一側に係る断面は、前記他側に係る断面に比べて、高さが低く幅が広くなるように形成されていることが好ましい。
【0011】
さらに、一側の前記外側の脚部コア部分と、他側の前記外側の脚部コア部分との高さの差に相当する厚みの樹脂材料を、前記一側の外側の脚部コア部分の上面上で、前記コイル部の各々の入力端および出力端が非配置とされた部分に取り付けてなることが好ましい。
また、前記中脚コア部分に1つもしくは複数のエアギャップを設けることが好ましい。
さらに、前記中脚コア部分に替え、または前記中脚コア部分に加えて、前記両外脚コア部分の少なくとも一方に1つもしくは複数のエアギャップを設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の磁気結合型リアクトル装置によれば、鉄系の多脚コア部材を突き合せてコア部を構成し、多脚コア部材の対向する内側の脚の各々にコイル部を配置することで、前述した特許文献1の磁気結合型リアクトル装置と比べて、コイル部の軸方向に配列されるコイル同士の距離を短くすることができ、結合度を高くすることが容易であり、磁束漏れの割合を低減することができる。
また、外側の脚部コア部分の断面積に対するコイル巻回用脚部コア部分の断面積の比の値を1.0〜5.0の間に設定することで自己インダクタンスを大きな値に設定することができ、かつ、直流重畳特性を所望の値に維持することが可能となる。
また、コイル部は、多脚コア部材の対向する少なくとも1対の内側の脚部コア部分の各々に配置されているため、周囲を磁路で囲まれることになり、外部への磁気漏れを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る、E字型コアの中脚コア部のみにコイル部を巻回した磁気結合型リアクトル装置を示す斜視図である。
図2図1に示す磁気結合型リアクトル装置のコア部のみを示す斜視図である。
図3】本発明の磁気結合型リアクトル装置の外観を示す斜視図である。
図4図1に示す磁気結合型リアクトル装置のコアの断面形状を示す斜視図である。
図5】中脚コア部の断面積/外脚コア部の断面積の値に対するインダクタンスの変化をプロットしたグラフである。
図6】中脚コア部が外脚コア部に対してオフセットされている様子を示す断面図である。
図7】両外脚コア部の高さが互いに異なる様子を示す斜視図である。
図8】両外脚コア部の高さと幅の違いを示す断面図である。
図9】両外脚コア部の高さの違いによる影響を抑制するために所定位置に樹脂部材を配設する様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
以下、本発明の実施形態に係る磁気結合型リアクトル装置について、図1およびその他の図を適宜用いて説明する。なお、本実施形態の磁気結合型リアクトル装置は、上部が開口した金属(アルミニウム等)製等の熱伝導性の良い材料からなるケース108と、その内部に収納されたリアクトル本体100と、ケース108およびリアクトル本体100の間に注入された絶縁性を有する充填材110とを備えてなる。
また、本実施形態においては、特に、ベースコア部(ヨーク部:以下、単にベースコア部と称する)に対して直角に突き出すように配された脚部が3本の場合であるE字型コアを用いた場合について説明する。
【0015】
〈磁気結合型リアクトル装置の主要構成〉
<コア部>
本発明の実施形態に係る磁気結合型リアクトル装置100は磁気結合型の構成とされ、その主要部は、図1および図2に示すように、1対のE字型コア101A、Bを、各ベースコア部101A4、101B4から直角に突出した各脚部(両外脚コア部101A1、A2、中脚コア部101A3、および両外脚コア部101B1、B2、中脚コア部101B3)の先端が互いに対向するように配置することで、図2に示すように、日字状のコア部が形成されている。また、各中脚コア部101A3、B3の各々にコイル103A、Bが巻回されるように装着された構成とされている。
【0016】
また、これらのE字型コア101A、Bの各角部は、各々面取りされて肩部101C1、101C2、101D1、101D2が形成されている。すなわち、このような各角部は磁束が流れにくいので、この角部を除去してコア全体をコンパクト化するように面取りが施されている。
【0017】
また、コア部を構成するコア部材は、鉄材によって形成されている。鉄系を用いることにより、高い磁気密度を実現し、かつ本構造により低下しやすい結合度を高く設定することができる。鉄系材料としては、電磁鋼板、圧粉磁心(純鉄、Fe-Si-AL系合金、Ni-Fe-Mo系合金、Ni-Fe系合金)、アモルファス等を用いることができる。
また、上記E字型コア101A、Bの先端部は直接突き合わせても良いが、両先端部間にスペーサーを介在させてもよいし、エアギャップを設けてもよい。
【0018】
<コイル>
また、上記コイル103A、Bは平角線をエッジワイズ巻きによって巻回することにより形成されている。平角線は、図1等に示すように帯状の扁平な導線であって、例えば、厚みが0.5〜6.0mm、幅が1.0〜16.0mm等とされたものが一般的に用いられる。平角線を用いることで占積率が向上し、コンパクト化を図ることができるとともに表皮効果についても優位とすることができる。ただし、丸線や角線等の他の断面形状のものを用いることも可能である。
【0019】
2つのコイル103Aおよびコイル103Bは、各々から発生する直流磁束が互いに打ち消されるように巻回されている(この点については後述する)。これらのコイル103A、Bは予め筒状に巻回されていて、ケース108に収納される際に、各E字型コア101A、Bの中脚コア部101A3、B3に嵌挿することにより、コア部と組み合わされることになる。
すなわち、コイル103A、およびコイル103Bの一方の端部から他方の端部へ電流が流れたとき、中脚コア部101A3を流れる磁束と、中脚コア部101B3を流れる磁束とが、互いに逆方向となり、2つの中脚コア部103A、B内を貫通する磁束が相殺される。これにより、ベースコア部101A4⇒外脚コア部101A1⇒外脚コア部101B1⇒ベースコア部101B4⇒外脚コア部101B2⇒外脚コア部101A2⇒ベースコア部101A4の順にコア101A、Bを周回する磁束ループが形成される。
なお、これら2つのコイル部103A、Bにより2相のリアクトル装置が構成されるので、1相のリアクトル装置を2つ設けるよりも装置のコンパクト化を図ることができる。
また、E字型コア101A、Bの中脚コア部101A3、101B3に各々コイル部103A、Bを設けることにより、装置全体として対称形状となり、磁気結合が効率的となる。
【0020】
<樹脂成型体>
E字型コア101A、Bは、それぞれ樹脂成型体(コイル103A、Bのボビンや、コア101A、Bのカバーを含む)105A、B内に埋め込まれた状態で収容されており、この状態で、金型中に樹脂が充填されることにより、樹脂成型体105A、Bと一体形成される。E字型コア101A、Bとコイル103A、Bは、この樹脂成型体105A、Bが、間に介在することにより絶縁される。樹脂成型体材料としては、例えば、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等及び上記樹脂成形体材料にガラス及び熱伝導性フィラーを添加したものを用いることができる。
【0021】
<磁気結合型リアクトル装置>
図3は、本実施形態に係る磁気結合型リアクトル装置の概略斜視図を示すものである。この磁気結合型リアクトル装置200は、磁気結合型リアクトル装置200が取り付けられる基部(図示せず)に対してねじ固定される。すなわち、アルミ等の金属からなるケース108は、四方にねじ止め部108Aが形成されており、このねじ止め部108Aのねじ孔108Bを介してねじ(図示せず)を基部に螺入することで、磁気結合型リアクトル装置200を基部に取り付けることができる。上述したE字型コア101A、Bの先端部は直接突き合わせても良いが、間にスペーサーを介在させてもよいし、エアギャップを1つもしくは複数個設けてもよい。すなわち、中脚コア部101A3、101B3にエアギャップを1つもしくは複数個設けてもよいし、これに替えて、またはこれに加えて、両外脚コア部101A1、A2、B1、B2にエアギャップを1つもしくは複数個設けてもよい。ここで、「エアギャップを1つもしくは複数個設ける」とは、コア部を複数に分割し、分割されたコア部の間に空間を設けるか、このコア部の間を非磁性材料(例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、フェノール樹脂、前述の樹脂成型体材料等)で満たす場合のことをいう。
【0022】
また、このケース108内には、E字型コア101A、Bとコイル103A、Bを組み合わせたリアクトル本体が収納されており、樹脂成型体(ボビン)105A、Bが、これらE字型コア101A、Bとコイル103A、Bの間に介在して絶縁をとることができるとともに、上方からリアクトル本体を拘束してこのリアクトル本体をケース108内に固定できるようになっている。なお、この樹脂成型体(ボビン)はボルト107によってケース108に固定される。
【0023】
また、ケース108には2か所に樹脂製の端子台106A、Bが取り付けられており、各コイル103A、Bの入力端103A1、B1および各コイル103A、Bの出力端103A2、B2に接続された金属端子103C1、D1、C2、D2を指示する構成とされている。
さらに、リアクトル本体の温度を測定するサーミスタ109、およびケース108の内部の隙間を充填して熱分布の均一化を図り得る充填材110とを備えている。この充填材110としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂等および上記充填剤に熱伝導性フィラーを添加したもの等からなる液状やゲル状のものを固化することで用いることができる。
【0024】
ところで、本実施形態においては、外脚コア部101A1、101A2に対する中脚コア部101A3の断面積の比率を所定範囲に規定することにより、自己インダクタンスを増加させることができ、直流重畳特性の改善を図ることができる。
【0025】
すなわち、例えば図4に示すように、リアクトル本体の断面図によれば、中央部に、コイル部103Aが巻回装着されてなる中脚コア部101A3が配され、その中脚コア部101A3の両側に、各々外脚コア部101A1、101A2が配されることになる。
ここで、この中脚コア部101A3の断面積をSiとし、この外脚コア部101A1、101A2の断面積(外脚コア部101A1、101A2のいずれか一方の断面積)をSoとしたとき、下記条件式(1)が成り立つように構成されている。なお、ここでの断面とは、各脚部の軸に直交する方向の断面を示す。
1.0≦Si/So≦5.0 (1)
【0026】
図5は、上記Si/Soの値(図5では、中脚断面積/外脚断面積と記す)に対するインダクタンス(μH)の変化を示すグラフである。図5によれば、Si/Soの値が、2〜2.5付近で最大とされており、1未満になるとインダクタンスの値が急激に減少する。
本実施形態においては、Si/Soの下限を1.0、上限を5.0としているので、インダクタンスを400μH程度以上とすることができ、自己インダクタンスをある程度大きな値とすることができるとともに、直流重畳特性をより良化することができる磁気結合型リアクトル装置とすることができる。
【0027】
なお、条件式(1)に替えて、下記条件式(2)とすることがさらに望ましい。
1.5≦Si/So≦3.5 (2)
このように、Si/Soの下限が1.5、上限が3.5となるように設定すれば、インダクタンスを450μH程度以上とすることができ、自己インダクタンスをより大きな値とすることができるとともに、直流重畳特性をより良化することができる磁気結合型リアクトル装置とすることができる。
【0028】
さらに、条件式(2)に替えて、下記条件式(3)とすることがさらに望ましい。
1.5≦Si/So≦3.0 (3)
このように、Si/Soの下限が1.5、上限が3.0となるように設定すれば、インダクタンスを450μH以上とすることができ、自己インダクタンスをさらに大きな値とすることができるとともに、直流重畳特性をさらに良化することができる。
【0029】
本実施形態の磁気結合型リアクトル装置において、低背化を促進するための変型例に係るコア形状について図6を用いて説明する。
すなわち、図6に示すように、リアクトル本体の断面図によれば、中央部に、コイル部103Aが巻回装着されてなる中脚コア部101A3が配され、その中脚コア部101A3の両側に、各々外脚コア部101A1、101A2が配されることになる。各部材の間には、充填材110が注入されている。
【0030】
この変型例においては、図6に示すように、巻回されたコイル103Aから、入力端103A1および出力端103A2が、図中横方向に引き出されており、引き出された入力端103A1は外脚コア部101A2の上方のボビン105A上に載置され、また、引き出された出力端103A2は外脚コア部101A1の上方のボビン105A上に載置されている。このように、図6中、コイル103Aの高さは、巻回部の上辺と、引き出された入力端103A1および引き出された出力端103A2とが一直線になるようにした場合が、最も小さくなる。
【0031】
したがって、この変型例では、中脚コア部101A3が外脚コア部101A1、101A2に対して、上方にオフセットするように配置して、中脚コア部101A3がコイル103Aの中空部に収まるようにすることにより、リアクトル本体の低背化を担保することができる。
【0032】
図6中、コイル103Aの下表面と、図示されないヒートシンクとの間には熱伝導部材111が配されており、コイル103Aがこの熱伝導部材111上に載置されるようになっている。このようにすることでヒートシンクに当接する部材面を平坦とすることが可能であるので、ヒートシンクに対する熱伝導効率を向上させることができ、放熱性を改善することができる。
なお、中脚コア部101A3の上記オフセット量は、コイル103Aの幅に、絶縁性を確保するための距離と、組み立てマージンの総計であるαを加えたものとなる。
【0033】
本実施形態の磁気結合型リアクトル装置において、端子部のレイアウトの自由度を向上させるための態様について説明する。
図3に示すように、この磁気結合型リアクトル装置200の、端子台106Aにおいては、端部接続部103C1、103D1が設けられており、これらの端部接続部103C1、103D1からの電流が、コイルの入力端103A1、B1からコイル103A、Bに入力されるようになっている。すなわち、2つのコイル103A、Bにおいて、電流の入力端がコイル103A、Bの一側に位置するように構成されている。他方、端子台106Bにおいては、端部接続部103C2、103D2が設けられており、コイル103A、Bからの電流が、出力端103A2、B2を介して端部接続部103C2、103D2に出力されるようになっている。すなわち、2つのコイル103A、Bについて、電流の出力端が、電流の入力部とは逆側の、コイル103A、Bの他側に位置するように揃えられている。
【0034】
このように2つのコイル103A、Bの入力端、および出力端の位置が揃えられているので、端子部周りの設計等の効率を図ることができるが、電流がコイル103A、Bに流されたときにコイル103Aとコイル103Bを貫く磁束が、互いに逆方向に流れるようにして、磁束を相殺する構成とする必要があるので、コイル103A、Bの巻回方向は、2つのコイル103A、B間で互いに逆とされている。
これにより、配線における損失の低減、および端子部のレイアウトの自由度向上、低背化を図ることができる。
【0035】
また、本実施形態の磁気結合型リアクトル装置において、低背化を促進するための別の変型例に係るコア形状について図7を用いて説明する。
図7に示す変型例においては、リアクトル本体100Aが、1対のE型コア101A、Bと1対のコイル103A、Bにより構成されている点では、図3に示す磁気結合型リアクトル装置200のリアクトル本体100と同様であるが、コイル113A、Bの入力端113A1、B1および出力端113A2、B2が、全てコイル103A、Bの一側に引き出される構成とされている。そして、このコイル103A、Bが引き出される側の外脚コア部101A2、B2の高さが、他側の外脚コア部101A1、B1やベースコア部101A4、101B4の高さに比べて、コイル113A、Bの幅分だけ低くなるように形成されている。これにより自己インダクタンスの向上、および配線における損失の低減を図ることができる。
【0036】
前述したように、一側(配線取り出し側)の外脚コア部101A2、B2と、他側の外脚コア部101A1、B1の断面積は等しく形成されていることが望ましい。上記のように、一側の外脚コア部101A2、B2と、他側の外脚コア部101A1、B1の高さに差を持たせた結果、両者の断面積を等しくするためには、図8の磁気結合型リアクトル装置200Aに示すように、一側(配線取り出し側)の外脚コア部101A2、B2の横幅を、他側の外脚コア部101A1、B1の横幅よりも長くするように構成する。すなわち、外脚コア部101A2、B2の高さをH1、横幅をW1とし、外脚コア部101A1、B1の高さをH2、横幅をW2とすると、H1×W1=H2×W2との等式が成り立つように、横幅W1、W2を調整する。これにより、リアクトル本体100A全体のサイズを小さくすることができる。
【0037】
また、上記のように、コイル103A、Bが引き出される側の外脚コア部101A2、B2の高さを低くした場合、放熱効果のために充填する充填材110を外脚コア部101A2、B2の高さまでしか充填できない虞がある。
そこで、図9に示すように、外脚コア部101A2、B2の上方の領域に、充填材110とは異なる材料からなる樹脂部材121を配設し、この樹脂部材121を含めた外脚コア部101A2、B2の高さが外脚コア部101A1、B1の高さと同程度となるようにしているので、充填材110を、外脚コア部101A1、B1の高さまで充填することができる。これにより、放熱性能の向上を図ることができる。
上記樹脂部材121としては、充填を容易なものとするために流動性を有する材料とすることが望ましく、さらには絶縁性を有し安価であることが望ましい。具体的な材料としては、例えば、フェノール樹脂やPPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)などが好適である。
【0038】
なお、本実施形態の磁気結合型リアクトル装置の組立工程においては、事前にコイル部103A、Bを筒状に形成しておき、このコイル103A、Bの中空部にE字型コア101A、Bを挿通し、これにより、E字型コア101A、Bの周囲にコイル103A、Bが巻回された状態に形成する。
【0039】
本発明の磁気結合型リアクトル装置としては上記実施形態のものに限られるものではなく、その他の種々の態様の変更が可能である。
例えば、上述した実施形態の磁気結合型リアクトル装置においては、ベースコア部から3つの脚部コア部が突出したE字型コアを2つ組み合わせてコア部が形成されているが、本発明の磁気結合型リアクトル装置としてはこれに限られるものではなく、ベースコア部から4つ以上の任意の数の脚部コア部が突出した多脚コア部材を2つ以上の任意の数だけ設けるように構成することができる。
【0040】
また、ベースコア部から4つ以上の数の脚部コア部が突出した多脚コア部材を用いる場合は、任意の中脚コア部に巻回可能である。また、各多脚コア部材には2相以上の任意の多相のものとすることが可能である。
また、この多脚コア部材の断面形状は矩形でなくてもよく、円、楕円などの他の形状とすることも可能である。
【0041】
上記では、各E字型コアの中脚コア部に設けられたコイルは1つとされているが、1つの中脚コア部101A3、B3に、任意の数のコイルを設けるようにしてもよい。ただし、全体として対称形の形態をなすように構成することが好ましい。
また、2つのコイル部103A、Bは、前述したように、発生する磁束が中脚コア部101A3、B3を互いに打ち消しあうような方向に巻回することになるので、両コイル部に通電される電流の向きを同じとし、前述したように平角線を逆向きに巻回することが好ましいが、両コイル103A、Bに通電される電流の向きを逆向きとし、平角線を同じ向きに巻回することにより、各コイル103A、Bで発生する磁束が互いに打ち消しあうような作用を得ることも可能である。
【符号の説明】
【0042】
100、100A リアクトル本体
200、200A 磁気結合型リアクトル装置
101A、B、 E字型コア
101A1、A2、B1、B2 外脚コア部
101A3、B3 中脚コア部
101A4、B4 ベースコア部
101C1、C2、D1、D2 肩部
103A、B コイル部
103A1、B1、113A1、B1 入力端
103A2、B2、113A2、B2 出力端
103C1、D1、C2、D2 金属端子
105A、B 樹脂成型体
106A、B 端子台
107 ボルト
108 ケース
108A ねじ止め部
108B ねじ孔
109 サーミスタ
110 充填材
111 熱伝導部材
121 樹脂部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9