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特開2021-191075送電装置及びワイヤレス給電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-191075(P2021-191075A)
(43)【公開日】2021年12月13日
(54)【発明の名称】送電装置及びワイヤレス給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/10 20160101AFI20211115BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20211115BHJP
【FI】
   H02J50/10
   H02J7/00 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-93270(P2020-93270)
(22)【出願日】2020年5月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】築山 大輔
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA11
5G503DA04
5G503DA19
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】より簡便な構成で、受電装置の存否を検出しなくとも送電装置単独で、受電装置側の状態に応じた出力の制御を実施することが可能な送電装置及びワイヤレス給電システムを提供する。
【解決手段】受電装置20に非接触により送電する送電コイル120と、送電コイル120に電力を供給する電源100と、電源100の出力電圧及び出力電流に基づいて、電源100に電気的に接続された回路のインピーダンスに関わるパラメータを算出する算出部114と、パラメータに基づいて電源100の出力を制御する制御部116と、を備える、送電装置10。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電装置に非接触により送電する送電コイルと、
前記送電コイルに電力を供給する電源と、
前記電源の出力電圧及び出力電流に基づいて、前記電源に電気的に接続された回路のインピーダンスに関わるパラメータを算出する算出部と、
前記パラメータに基づいて前記電源の出力を制御する制御部と、
を備える、送電装置。
【請求項2】
前記受電装置は、前記送電コイルから非接触により受電する受電コイルを備え、
前記パラメータは、前記送電コイルと前記受電コイルとの相互インダクタンスを含む、
請求項1に記載の送電装置。
【請求項3】
前記受電装置は、前記送電コイルから非接触により受電する受電コイルに接続された負荷を備え、
前記パラメータは、前記負荷の抵抗値を含む、
請求項1又は2に記載の送電装置。
【請求項4】
前記受電装置は、前記送電コイルから非接触により受電する受電コイルと、前記受電コイルに接続された負荷と、を備え、
前記算出部は、測定された前記出力電圧及び前記出力電流に基づいて前記インピーダンスの大きさと位相差とを算出し、算出した前記インピーダンスの大きさと位相差とに基づいて、前記パラメータに含まれる前記送電コイルと前記受電コイルとの相互インダクタンス及び前記負荷の抵抗値を算出する、
請求項1に記載の送電装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記パラメータと前記電源の出力の制御内容とを対応付けたテーブルに基づいて、前記電源の出力を制御する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の送電装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記パラメータと所定の閾値とを比較し、比較結果に基づいて前記電源の出力を制御する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の送電装置。
【請求項7】
受電装置と、
前記受電装置に非接触により送電する送電コイルと、
前記送電コイルに電力を供給する電源と、
前記電源の出力電圧及び出力電流に基づいて、前記電源に電気的に接続された回路のインピーダンスに関わるパラメータを算出する算出部と、
前記パラメータに基づいて前記電源の出力を制御する制御部と、
を備える、ワイヤレス給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電装置及びワイヤレス給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレス給電システムでは、送電装置の送電コイルから受電装置の受電コイルに非接触で電力が伝送され、受電装置からバッテリ等の給電対象に電力が供給される。従来、受電装置側の状態に応じて、送電装置の出力を制御する技術が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、バッテリが満充電状態になった場合には、送電装置が通常送電を停止して間欠送電を行い、バッテリが再充電必要状態になった場合には、送電装置が通常送電を再開する技術が記載されている。このとき、受電装置が備える回路によりバッテリの状態が検出され、バッテリの状態に応じたコマンドが受電装置から送電装置に送信され、そのコマンドを受信した送電装置が、バッテリが満充電状態あるいは再充電必要状態であるのかどうかを検知する。
【0004】
また、特許文献2には、送電装置が受電装置の状態を示す情報を受信して、その情報に基づいて送電装置が受電装置に送電する技術が記載されている。このとき、送電装置及び受電装置のそれぞれに設けられた通信回路により、情報の送受信が行われる。
【0005】
さらに、特許文献3には、給電エリア内に受電装置が侵入したことを検出したときに、所定周波数の交流電力を送電装置の送電用アンテナに供給し、送電用アンテナから受電装置の受電用アンテナに送電する技術が記載されている。特許文献3では、周波数走査により複数の異なる周波数の交流電力が送信用アンテナに供給され、周波数走査の際に送信用アンテナ及び受信用アンテナを含む系の反射特性が検出される。上述の所定周波数は、反射特性が共振状態となる共振周波数である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−178195号公報
【特許文献2】特開2019−004694号公報
【特許文献3】特開2011−177009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の技術では、ワイヤレス給電を行う上で必須の回路とは別に追加の回路が必要となり、回路が複雑化していた。例えば、特許文献1に記載の技術では、バッテリの状態を検知するための回路が受電装置に追加で必要となる。また、特許文献2に記載の技術では、送電装置及び受電装置の両装置において通信回路を設ける必要がある。さらに、特許文献3に記載の技術では、周波数走査を行うための回路が送電装置に必要となる。
【0008】
また、受電装置の存否を検出しなくとも送電装置単独で出力を制御できることが好ましい。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、受電装置がバッテリの状態を送電装置に通知する必要がある。また、特許文献2に記載の技術では、受電装置の状態を受電装置が送電装置に送信する必要がある。さらに、特許文献3に記載の技術では、給電エリア内に受電装置が存在することを送電装置が検出する必要がある。
【0009】
そこで、本発明は、より簡便な構成で、受電装置の存否を検出しなくとも送電装置単独で、受電装置側の状態に応じた出力の制御を実施することが可能な送電装置及びワイヤレス給電システムを提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る送電装置は、送電コイルに電力を供給する電源と、電源の出力電圧及び出力電流に基づいて、電源に電気的に接続された回路のインピーダンスに関わるパラメータを算出する算出部と、パラメータに基づいて電源の出力を制御する制御部と、を備える。
【0011】
この態様によれば、送電装置は、出力電圧及び出力電流を用いて出力を制御できるため、受電装置から情報を受信しなくとも、受電装置側の状態に応じた出力の制御を実行することができる。このとき、送電装置は、受電装置の存否を検出する必要がない。また、制御に必要な情報は出力電圧及び出力電流であり、通常の送電装置は、この出力電圧及び出力電流を測定する装置を当然に備えている。このため、送電装置は、追加で装置を備える必要がなく、簡便な構成で受電装置側の状態に応じた出力の制御を実行することが可能になる。
【0012】
上記態様において、受電装置は、送電コイルから非接触により受電する受電コイルを備え、パラメータは、送電コイルと受電コイルとの相互インダクタンスを含んでもよい。
【0013】
この態様によれば、相互インダクタンスは、送電コイルと受電コイルとの結合の強さを示している。送電装置は、相互インダクタンスを用いることにより受電装置の状態を推定することができるため、より適切に受電装置の状態に応じた出力の制御を実行することができる。
【0014】
上記態様において、受電装置は、送電コイルから非接触により受電する受電コイルに接続された負荷を備え、パラメータは、負荷の抵抗値を含んでもよい。
【0015】
この態様によれば、算出される負荷の抵抗値は、例えば、負荷の接続状態などに応じて変化する。このため、送電装置は、負荷の抵抗値を用いることにより、より適切に受電装置側の状態に応じた出力の制御を実行することが可能になる。
【0016】
上記態様において、受電装置は、送電コイルから非接触により受電する受電コイルと、受電コイルに接続された負荷と、を備え、算出部は、測定された出力電圧及び出力電流に基づいてインピーダンスの大きさと位相差とを算出し、算出したインピーダンスの大きさと位相差とに基づいて、前記パラメータに含まれる送電コイルと受電コイルとの相互インダクタンス及び負荷の抵抗値を算出してもよい。
【0017】
この態様によれば、送電装置は、より簡便な処理により、インピーダンスに関わるパラメータに含まれる相互インダクタンス及び負荷の抵抗値を算出することができる。
【0018】
上記態様において、制御部は、パラメータと電源の出力の制御内容とを対応付けたテーブルに基づいて、電源の出力を制御してもよい。
【0019】
この態様によれば、送電装置は、簡便な処理により、電源の出力を制御することができる。
【0020】
上記態様において、制御部は、パラメータと所定の閾値とを比較し、比較結果に基づいて電源の出力を制御してもよい。
【0021】
この態様によれば、送電装置は、簡便な処理により、電源の出力を制御することができる。
【0022】
本発明の他の態様に係るワイヤレス給電システムは、受電装置と、受電装置に非接触により送電する送電コイルと、送電コイルに電力を供給する電源と、電源の出力電圧及び出力電流に基づいて、電源に電気的に接続された回路のインピーダンスに関わるパラメータを算出する算出部と、パラメータに基づいて電源の出力を制御する制御部と、を備える。
【0023】
この態様によれば、送電装置は、出力電圧及び出力電流を用いて出力を制御できるため、受電装置から情報を受信しなくとも、受電装置側の状態に応じた出力の制御を実行することができる。このとき、送電装置は、受電装置の存否を検出する必要がない。また、制御に必要な情報は出力電圧及び出力電流であり、通常の送電装置は、この出力電圧及び出力電流を測定する装置を当然に備えている。このため、送電装置は、追加で装置を備える必要がなく、簡便な構成で受電装置側の状態に応じた出力の制御を実行することが可能になる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、より簡便な構成で、受電装置の存否を検出しなくとも送電装置単独で、受電装置側の状態に応じた出力の制御を実施することが可能な送電装置及びワイヤレス給電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係るワイヤレス給電システムの構成の概略図である。
図2】同実施形態に係る送電装置の構成の概略図である。
図3図1に示す回路の等価回路を示す図である。
図4図3に示す回路から負荷を除去した回路を示す図である。
図5】ワイヤレス給電システムの構成を簡略化して示す図である。
図6図5に示す回路の等価回路を示す図である。
図7】制御テーブルの一例を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る送電装置による処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係るワイヤレス給電システム1の構成の概略図である。本実施形態に係るワイヤレス給電システム1は、送電装置10及び受電装置20を備える。
【0028】
送電装置10は、非接触により受電装置20に交流電力を送電する装置である。受電装置20は、送電装置10から交流電力を受電し、受電装置20に接続された負荷30に電力を供給する装置である。負荷30は、例えば、受電装置20から供給された電力を蓄電することが可能な蓄電装置等である。
【0029】
本実施形態では、ワイヤレス給電システム1が1つの送電装置10を備えるものとして説明するが、ワイヤレス給電システム1は、複数の送電装置10を備えてもよい。また、本実施形態では、ワイヤレス給電システム1が1つの受電装置20を備えるものとして説明するが、ワイヤレス給電システム1は、複数の受電装置20を備えてもよい。
【0030】
本実施形態に係る送電装置10は、主として、電源100、制御装置110及び送電コイル120を備える。電源100は、送電コイル120に高周波の交流電力を供給する電圧源である。また、制御装置110は、電源100の出力を制御する装置である。さらに、送電コイル120は、受電装置20に非接触により交流電力を送電するコイルである。
【0031】
本実施形態に係る受電装置20は、主として、受電コイル200、整流回路210及び平滑回路230を備える。また、受電装置20は、配線のインダクタ220を含んでいる。受電コイル200は、送電装置10の送電コイル120から非接触により交流電力を受電する。整流回路210は、受電コイル200が受電した交流電力を整流することができる。また、平滑回路230は、整流回路210の出力電力を平滑することができる。また、受電コイル200には、整流回路210及び平滑回路230を介して、負荷30が接続されており、平滑回路230により平滑された電力は負荷30に供給される。
【0032】
図2を参照して、本実施形態に係る送電装置10の構成について、より詳細に説明する。送電装置10は、電源100の出力電圧を測定する電圧計102(測定部)及び電源100の出力電流を測定する電流計104(測定部)をさらに備えている。電圧計102及び電流計104の測定結果は、制御装置110に伝達される。
【0033】
制御装置110は、電源100の出力を制御することができる。制御装置110の動作は、処理部111及び記憶部118が協働することにより実行される。
【0034】
処理部111は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備える。処理部111が備えるROMには、各種の処理を実行するための処理プログラム等が記憶される。また、CPUは、ROMに記憶された処理プログラム又は記憶部118に記憶された各種プログラムを実行し、各種の処理を実行する。なお、処理部111が備えるRAMには、各種プログラムの実行中に一時的に利用されるデータが記憶される。
【0035】
記憶部118は、SRAM(Static Random Access Memory)、フラッシュメモリ又はハードディスク等を含む記憶装置を備える。記憶部118には、各種データ及びCPUによって実行される各種コンピュータプログラム及び電源100の出力を制御するための情報(例えば、後述する制御テーブル等)等が記憶される。
【0036】
処理部111は、電源100の出力の制御に関わる各種の処理を行う。処理部111の動作は、取得部112、算出部114及び制御部116が協働することにより実行される。
【0037】
取得部112は、測定部から測定結果を取得することができる。本実施形態では、取得部112は、電圧計102から測定された出力電圧を取得し、電流計104から測定された出力電流を取得することができる。取得部112は、取得した出力電圧及び出力電流を算出部114に伝達する。
【0038】
算出部114は、電源100の出力電圧及び出力電流に基づいて、電源100に電気的に接続された回路のインピーダンスに関わるパラメータを算出することができる。具体的には、算出部114は、電源100に配線により接続された送電コイル120と、送電コイル120に接続される受電装置20と、負荷30とを含む回路のインピーダンスに関わるパラメータを算出する。なお、電源100に電気的に接続された回路は、電源100に機械的に接続されていなくてもよい。したがって、電源100に電気的に接続された回路には、非接触で給電される受電装置20及び負荷30が含まれる。
【0039】
図3を参照しながら、算出部114が算出するパラメータについて説明する。図3は、図1に示す回路の等価回路を示す図である。ワイヤレス給電システム1を含む回路は、一般的に、図3に示すように、送電コイル120と受電コイル200とが結合した等価回路により表され得る。
【0040】
図3に示す等価回路では、図1の送電コイル120及び受電コイル200が、3つのインダクタンス(第1インダクタ122、第2インダクタ124及び第3インダクタ126)を含む回路に置き換えられている。ここで、送電コイル120のインダクタンスをLS、受電コイル200のインダクタンスをLLとすると、第1インダクタ122、第2インダクタ124及び第3インダクタ126のそれぞれのインダクタンスは、LS−M、LL−M及びMで表される。ここで、Mは、送電コイル120と受電コイル200との相互インダクタンスである。
【0041】
相互インダクタンスMは、次の式で表される。
M=k√(LSL)・・・(1)
【0042】
結合係数kは、0から1の範囲の値であり、送電コイル120と受電コイル200との結合の度合いを示している。送電コイル120及び受電コイル200のそれぞれの寸法と、それぞれの周囲の環境が変化しない場合には、結合係数kは、送電コイル120と受電コイル200と相対的な位置関係により変化する。具体的には、送電コイル120と受電コイル200と距離が小さくなるほど、送電コイル120と受電コイル200との結合が強くなり、結合係数kが1に近づく。一方、送電コイル120と受電コイル200と距離が大きくなるほど、送電コイル120と受電コイル200との結合が弱くなり、結合係数kが0に近づく。
【0043】
本実施形態では、算出部114は、電源100の出力電圧及び出力電流に基づいて、電源100に電気的に接続された回路(以下、「負荷側回路22」とも称する。)のインピーダンスに関わるパラメータに含まれる、相互インダクタンスM及び負荷30の抵抗値RLを算出することができる。より具体的には、算出部114は、負荷側回路22のインピーダンスの大きさ及び位相差を算出して、算出したインピーダンスの大きさ及び位相差に基づいて、相互インダクタンスM及び抵抗値RLを算出することができる。算出部114がパラメータを算出する方法の詳細については後述する。算出部114は、算出したパラメータを制御部116に伝達する。
【0044】
制御部116は、算出部114が算出したパラメータに基づいて、電源100の出力を制御することができる。本実施形態では、制御部116は、算出部114が算出した相互インダクタンスM及び抵抗値RLの少なくともいずれかに基づいて、電源100の出力を制御することができる。制御部116による電源100の出力を制御する方法の詳細については後述する。
【0045】
以下では、算出部114が算出する負荷側回路22のパラメータについて、より詳細に説明する。電源100に電気的に接続されている回路には、例えば、以下の3つの状態が考えられる。
第1状態:送電コイル120と受電コイル200とが電磁的に結合しており、負荷30に電力が供給されている状態
第2状態:送電コイル120と受電コイル200とが電磁的に全く結合していない状態
第3状態:送電コイル120と受電コイル200とが電磁的に結合しているが、負荷30に電力が供給されていない状態
【0046】
第1状態は、上述した図1及び図3に示す回路の状態である。第1状態をもとに、第2状態について説明する。第2状態は、送電装置10が存在するが、受電装置20が存在しない状態を考えることができる。第2状態は、図3の回路において、相互インダクタンスMが0である状態とみなすことができる。このとき、第3インダクタ126が短絡状態となるため、電源100から出力された電力は、第1インダクタ122及び第3インダクタ126の経路を通過して電源100に戻る。
【0047】
次いで、第3状態について説明する。図4は、図3に示す回路から負荷30を除去した回路を示す図である。図4に示す回路の状態が、第3状態の一例である。一般的には、負荷30が除去されている状態では、負荷30が接続さえれていた2つの端子(すなわち、第1端子302及び第2端子304)の間のインピーダンスが無限大であるとみなせる。したがって、図4の状態は、図3においてRLが無限大となっている状態である。
【0048】
上述のように、第1〜第3状態では、電源100に電気的に接続されている回路(負荷側回路22,26)が異なっている。電源100が高周波の交流電力を供給するとき、負荷側回路の違いは、交流電力の出力電圧及び出力電流の絶対値及び位相差の違いとなって表れる。換言すれば、送電装置10は、電源100の出力電圧及び出力電流を取得することにより、負荷側回路の状態を推定することができる。
【0049】
以下では、出力電圧及び出力電流の関係式を導出し、負荷側回路のインピーダンスに関わるパラメータを算出部114が算出する方法について説明する。ここでは、計算を簡略化するため、受電装置20に整流回路210、インダクタ220及び平滑回路230が存在しないものとして説明する。具体的には、図5に示す回路図を用いて説明する。図5は、ワイヤレス給電システム2の構成を簡略化して示す図である。ワイヤレス給電システム2には負荷32が接続されており、ワイヤレス給電システム2は負荷32に電力を供給しているものとする。
【0050】
なお、受電装置20が整流回路210及び平滑回路230を備えており、交流電力が直流電力に変換される場合にも、送電装置10は、以下で説明する方法により負荷側回路のインピーダンスに関わるパラメータを算出し、電源100の出力を制御することができる。
【0051】
図6は、図5に示す回路の等価回路を示す図である。ここで、第3インダクタ126のインピーダンスをZ2、第2インダクタ124及び負荷32の直列回路のインピーダンスをZ3とする。この直列回路と第3インダクタ126とは並列に接続されているため、Z2及びZ3の合成インピーダンスZ23は、次式で表される。
23=Z23/(Z2+Z3)・・・(2)
23は、第3インダクタ126と上述の直列回路との並列回路27のインピーダンスである。
【0052】
また、電源100から見た負荷側回路28は、第1インダクタ122と並列回路27との直列回路である。したがって、負荷側回路28のインピーダンスをZ0とし、第1インダクタ122のインピーダンスをZ1とすると、Z0は次式で表される。
0=Z1+Z23・・・(3)
【0053】
ここで、電源100が出力する交流電力の角周波数をω、虚数単位をjとすると、Z1は、次式で表される。
1=jω(LS−M)・・・(4)
【0054】
また、上述の式(2)より、Z23は次式で表される。
23=[{jω(LL−M)RL}−ω2M(LL−M)]/(RL+jωLL
・・・(5)
【0055】
さらに、上述の式(3)、(4)及び(5)より、Z0は、次式で表される。
0=jω(LS−M)+[{jω(LL−M)RL}−ω2M(LL−M)]/(RL+jωLL
=Re{Z0}+Im{Z0
・・・(6)
ここで、Re{Z0}は、複素平面上で表現されるZ0の実部であり、Im{Z0}は複素平面上で表現されるZ0の虚部である。Z0が複素平面上で虚数成分を有することは、負荷側回路28に印加される電圧(すなわち、出力電圧)と、負荷側回路28に流れる電流(すなわち、出力電流)との間に位相差があることと同義である。
【0056】
また、任意のZ0に対して、電源100の複素平面上における出力電圧V(t)及び出力電流I(t)は、次の式を満たす。
V(t)=Z0I(t)・・・(7)
I(t)=(1/Z0)V(t)・・・(8)
【0057】
ここで、tは、時間を表している。ここで、説明を簡単にするため、V(t)が正弦波の交流電圧であると仮定する。V0をV(t)の最大値とすると、V(t)は次式で表される。
V(t)=V0exp{jωt}・・・(9)
なお、一般的な電源100において、V0及びωは、設定値等となっており、既知の値である。
【0058】
式(9)を式(8)に代入すると、出力電圧V(t)と出力電流I(t)との位相差をθとして、次式が得られる。
I(t)=|V0/Z0|exp{j(ωt−θ)}・・・(10)
【0059】
以上より、算出部114は、測定された出力電圧V(t)及び出力電流I(t)を用いて、Z0の大きさ|Z0|及び位相差θを算出することができる。また、算出部114は、|Z0|及びθに基づいて、複素平面上のZ0を算出することができる。さらに、算出部114は、算出したZ0と上述の式(6)に基づいて、M及びRLを算出することができる。
【0060】
このように、本実施形態に係るワイヤレス給電システムでは、送電装置10が電源100の出力電圧及び出力電流を測定して、測定した出力電圧及び出力電流に基づいてM及びRLを算出することが可能である。このため、送電装置10は、受電装置20から受電装置20の状態などを示す信号を受信しなくとも、受電装置20側の状態を推定することが可能になる。
【0061】
なお、電源100の出力電圧及び出力電流を測定する装置(例えば、電圧計102及び電流計104)は、通常の電源には、電力制御及び機器保護のために当然に実装されている。すなわち、本実施形態によれば、新たに追加コストを支払うことなく、送電装置10単独で、受電装置20への電力の供給が必要か否かを推定することができる。
【0062】
次に、本実施形態に係る制御部116が、算出部114により算出されたパラメータに基づいて電源100の出力を制御する方法を具体的に説明する。本実施形態に係る制御部116は、算出されたパラメータと電源100の出力の制御内容とを対応付けた制御テーブルに基づいて、電源100の出力を制御することができる。
【0063】
図7は、制御テーブル130の一例を示す図である。制御テーブル130では、M及びRLの値が複数のランク(制御No)に分けられており、それぞれの制御Noには制御内容が対応付けられている。例えば、MがM1〜M2であり、RLがR1〜R2である制御No1には、出力を継続する制御内容が対応付けられている。これは、M及びRLが制御No1の値に合致する場合には、ワイヤレス給電システムがワイヤレス給電を行うのに適切な状態であると推定されるためである。
【0064】
また、MがM3〜M4であり、RLがR3〜R4である制御No2には、出力を低下させる制御内容が対応付けられている。ここで、出力を低下させることは、出力電圧を低下させることがあってもよいし、出力を間欠出力にすることであってもよい。さらに、MがM5〜M6であり、RLがR5〜R6である制御No3には、出力を停止させる制御内容が対応付けられている。これは、M及びRLが制御No2又は制御No3の値に合致する場合には、ワイヤレス給電システムがワイヤレス給電を行うのに適切でない状態であると推定されるためである。例えば、Mが極めて0に近い値であったり、RLが極めて高い値であったりするときに、M及びRLの組み合わせが制御No2又は制御No3の値に合致する。
【0065】
なお、制御内容には、M及びRLのいずれかのパラメータのみが対応付けられていてもよい。また、制御内容には、M及びRLのパラメータに加えて、各種の情報が対応付けられていてもよい。さらに、制御内容には、設定される出力電圧の大きさなど、各種の制御内容が含まれていてもよい。
【0066】
制御部116は、制御テーブル130を用いて、電源100の出力を制御することができる。具体的には、制御部116は、制御テーブルを参照して、算出されたM及びRLの組み合わせに対応付けられた制御内容を実現するように、電源100の出力を制御することができる。例えば、Mの値がM1とM2との間の値であり、RLの値がR1とR2との間の値である場合には、制御部116は、電源100に適切な出力電圧を継続して出力させることができる。また、Mの値がM3とM4との間の値であり、RLの値がR3とR4との間の値である場合には、制御部116は、電源100の出力を低下させることができる。
【0067】
図8は、本実施形態に係る送電装置10による処理の一例を示すフローチャートである。以下、図8に沿って、送電装置10による処理の流れを説明する。図8に示す処理が開始される時点では、送電装置10が受電装置20に非接触により送電しており、送電装置10の電源100の出力電圧及び出力電流が測定されているものとする。
【0068】
まず、取得部112は、測定された電源100の出力電圧及び出力電流を、電圧計102及び電流計104から取得する(ステップS101)。
【0069】
次いで、算出部114は、ステップS101において取得された出力電圧及び出力電流に基づいて、電源100に電気的に接続された回路のインピーダンスに関わるパラメータを算出する(ステップS103)。具体的には、算出部114は、出力電圧及び出力電流に基づいて、インピーダンスの大きさ及び位相差を算出し、算出したインピーダンスの大きさ及び位相差に基づいて、相互インダクタンスM及び負荷の抵抗値RLを算出する。
【0070】
次いで、制御部116は、ステップS103において算出されたパラメータに基づいて、電源100の出力を制御する(ステップS105)。具体的には、制御部116は、ステップS103において算出されたM及びRLが合致する制御テーブルの制御内容を実現するように、電源100の出力を制御する。制御部116が電源の出力を制御すると、図8に示す処理は終了する。なお、図8に示す処理が終了したあと、図8に示す処理が繰り返し実施されてもよい。
【0071】
本実施形態に係る送電装置10は、電源100の出力電圧及び出力電流に基づいて、電源100に接続された回路のインピーダンスに関わるパラメータを算出し、算出したパラメータに基づいて電源100の出力を制御することができる。このため、送電装置10は、受電装置20の存否を検出しなくとも送電装置10単独で、受電装置20の状態に応じた出力の制御を実施することが可能である。
【0072】
また、一般的な送電装置には、電源100の出力電圧及び出力電流を測定する装置及び電源の出力を制御する装置を当然に備えている。このため、本実施形態に係る送電装置10は、ワイヤレス給電を行うために必要な構成に加えて新たな回路及び装置を備える必要がなくなり、簡便な構成で受電装置20の状態に応じた出力の制御を行うことができる。
【0073】
さらに、本実施形態に係る送電装置10は、算出したパラメータに基づいて、受電装置20の状態を推定することが可能である。送電装置10は、その推定結果に基づいて、電源100の出力を制御することができる。このため、送電装置10は、受電装置20に負荷が接続されていない場合及びそもそも受電装置20が存在しない場合には、送電装置10が不要に電力を放射することを抑制できる。
【0074】
以上より、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1によれば、追加設備のコストをかけなくとも、送電装置10による電力の供給を高効率化することができる。
【0075】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【0076】
上記実施形態では、電源100が電圧源であるものとして説明したが、電源100は、電流源であってもよい。
【0077】
上記実施形態では、制御部116は、制御テーブル130に基づいて電源100の出力を制御するものとして説明したが、制御部116は、制御テーブル130を用いずに電源100の出力を制御してもよい。例えば、制御部116は、リアルタイムでパラメータ(例えば、M及びRL)を算出し続け、算出したパラメータに応じて電源100の出力を制御してもよい。
【0078】
また、制御部116は、算出されたパラメータと所定の閾値とを比較して、比較結果に基づいて電源100の出力を制御してもよい。閾値は、予め設定されており記憶部118に記憶されていてよい。制御部116は、算出されたパラメータが閾値以下(あるいは閾値以上)である場合には、電源100の出力を低下又は停止させてもよい。例えば、制御部116は、Mが閾値以下である場合には、電源100の出力を低下又は停止させてもよい。また、制御部116は、RLが閾値以上である場合には、電源100の出力を低下又は停止させてもよい。これにより、送電装置10は、受電装置20と通信したり、受電装置20から電力の制御に関する信号を受信したりしなくとも、受電装置20の状態に応じて、不要な電力の供給を抑制して電力の損失を低減することができる。
【0079】
また、上記実施形態では、制御部116は、インピーダンスに関わるパラメータに含まれるM及びRLに基づいて、電源100の出力を制御するものとして説明した。制御部116が電源100の出力を制御するために用いるパラメータは、M及びRLに限定されるものではなく、インピーダンスに関わる各種のパラメータであり得る。例えば、制御部116は、インピーダンスの大きさあるいは位相をパラメータして、そのパラメータに基づいて電源100の出力を制御してもよい。
【符号の説明】
【0080】
1,2…ワイヤレス給電システム、10…送電装置、100…電源、102…電圧計、104…電流計、110…制御装置、111…処理部、112…取得部、114…算出部、116…制御部、118…記憶部、120…送電コイル、122…第1インダクタ、124…第2インダクタ、126…第3インダクタ、130…制御テーブル、20…受電装置、22,28…負荷側回路、200…受電コイル、210…整流回路、230…平滑回路、30,32…負荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8