【解決手段】実施形態に係る車両制御装置は、演算部と、通信部と、依頼部とを備える。演算部は、自車両の車両状態に関する演算処理を行う。通信部は、外部装置と通信を行う。依頼部は、充電設備から供給される電力によってバッテリが充電中である場合に、演算部が充電中に実行すべき演算処理を通信部を介して外部装置へ依頼する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係る車両制御装置および車両制御方法について説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
まず、
図1Aおよび
図1Bを用いて、実施形態に係る車両制御装置および車両制御方法の概要について説明する。
図1Aおよび
図1Bは、車両制御方法の概要を示す図である。なお、かかる車両制御方法は、
図1Aに示すECU10によって実行される。なお、ECU10は、車両制御装置の一例である。
【0012】
図1Aに示すように、実施形態に係るECU10は、自車両MCおよび他車両Cにそれぞれ搭載される。自車両MCおよび他車両Cは、それぞれ例えば、電動モータを動力源とするハイブリッド車両や電気自動車である。
【0013】
また、
図1Aでは、自車両MCが充電設備50から給電される電力によってバッテリの充電中である場合を示す。なお、
図1Aでは、自車両MCの充電方式が、自車両MCと充電設備50とがプラグで接続されたいわゆるプラグイン充電である場合を示しているが、非接触充電とすることにしてもよい。
【0014】
ECU10は、車両情報に関する演算処理を行う電子制御装置である。ここで、車両情報に関する演算処理とは、自車両MCの停車中あるいは充電中において、ECU10で実行すべき処理であり、バッテリの電池残量(SOC;State Of Charge)の推定処理や、自車両MCのセキュリティー等に関する各種処理などが含まれる。
【0015】
しかしながら、自車両MCの充電中にECU10で演算処理を行うと、ECU10によって電力が消費され、ECU10によって消費された電力分だけ、充電時間の遅延を招くことになる。
【0016】
このため、実施形態に係る車両制御方法では、自車両MCが充電中である場合に、ECU10で実行すべき演算処理を外部装置に依頼することとした。なお、以下では、外部装置が自車両MCの周囲に存在する他車両CのECU10である場合について説明するが、外部装置は、自車両MCへ給電する充電設備50やサーバであってもよい。
【0017】
ここで、
図1Aに示す例では、自車両MCのECU10が自車両MCの周辺に存在する他車両CのECU10へ演算処理の依頼を行い、他車両CのECU10から依頼を承認された場合を示す。
【0018】
これにより、自車両MCのECU10によって実行すべき演算処理をECU10で代替して行うことが可能となる。その後、自車両MCのECU10は、最低限のハードウェアのみを起動させ、不要なハードウェアを休止させる。
【0019】
図1Bに示す例では、ECU10がそれぞれ通信部11とマイコンとを備える場合を示し、マイコンが複数のチップで構成される場合を示す。また、
図1Bに示すように、自車両MCのECU10は、他車両CのECU10で演算処理に必要となる演算入力情報を他車両CのECU10へ送信し、他車両CのECU10では、かかる演算入力情報に基づいて、代替処理が実行される。なお、代替処理とは、自車両MCのECU10に代わって実行する処理を示す。
【0020】
その後、他車両CのECU10は、代替処理の演算結果を示す演算結果情報を自車両MCのECU10へ送信する。これにより、自車両MCのECU10では、これらの一連の処理に必要なハードウェアのみを起動させておけばよく、不要なハードウェアを休止させることができる。
【0021】
しがって、実施形態に係る車両制御方法では、ハードウェアを休止させる分だけ、充電中の消費電力を抑えることができるので、充電時間の短縮を図ることができる。なお、上述の例では、自車両MCおよび他車両Cに搭載されるECU10がそれぞれ1つである場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、自車両MCおよび他車両Cに搭載されるECU10は複数であってもよい。
【0022】
次に、
図2を用いて、実施形態に係るECU10の構成例について説明する。
図2は、ECU10のブロック図である。なお、
図2に示す例では、センサ群20をあわせて示す。センサ群20には、自車両MCに関する各種状態を検出するセンサが含まれる。たとえば、センサ群20には、バッテリの状態を検出するセンサ(電圧センサ、電流センサ、温度センサ等)や、自車両MCの周囲状況を検出するセンサ(撮像センサ、測距センサ等)などが含まれる。センサ群20による検出結果は、ECU10へ通知される。なお、センサ群20をECU10内部に設けることにしてもよい。
【0023】
図2に示すように、実施形態に係るECU10は、通信部11と、記憶部12と、制御部13とを備える。なお、制御部13は、
図1Bに示したマイコンに対応する。通信部11は、例えば、Bluetooth(登録商標)や、BLE(Bluetooth Low Energy)等の通信規格に準じて外部装置との間で無線通信を行う通信モジュールである。なお、通信部11は、例えば、
図1Aに示した充電設備50と通信を行う場合には、充電ケーブルを介して充電設備50との間で有線接続を行うことにしてもよい。
【0024】
記憶部12は、例えば、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)に対応する。RAMやHDDは、演算項目情報12aを記憶する。演算項目情報12aは、自車両MCの充電中にECU10で演算すべき演算処理の項目に関する情報である。
【0025】
ここで、
図3を用いて、演算項目情報12aの一例について説明する。
図3に示す例において、演算項目情報12aは、「機種」と、「演算項目」とを互いに対応付けた情報である。
【0026】
「機種」は、演算処理を委託する外部装置の機種を示す。例えば、機種は、製造メーカ、型番、および、OS(Operating System)のバージョン、演算能力等で分類するとよい。「演算項目」は、自車両MCの充電中(停車中を含む)にECU10で実行すべき演算処理の項目を示す。
【0027】
図3に示す例では、演算項目に、「セキュリティー」や「SOC」等が含まれる場合を示す。また、
図3に示す例において、「○」や「×」は、対応する演算項目を外部装置で実行か否かを示す。具体的には、機種「A1」については、セキュリティーおよびSOCの双方の演算処理を実行可能であることを示す。なお、ECU10は、演算項目情報12aを予め記憶しておく必要はなく、外部装置へ演算処理を依頼する際に、外部装置へ演算処理が可能であるかを問い合わせ、その結果を受信して記憶することにしてもよい。
【0028】
図2の説明に戻り、制御部13について説明する。制御部13は、演算部13aと、依頼部13bとを備える。制御部13は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。
【0029】
コンピュータのCPUは、例えば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部13の演算部13aおよび依頼部13bとして機能する。また、制御部13の演算部13aおよび依頼部13bの少なくともいずれか一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0030】
演算部13aは、自車両MCの車両状態に関する各種演算処理を実行する。例えば、演算部13aは、センサ群20の検出結果に基づいて、セキュリティーやSOCに関する演算を実行する。
【0031】
なお、演算部13aは、演算処理の演算項目ごとに異なるハードウェアで構成されるものとし、演算処理が不要となった場合には、ハードウェアを停止するものとする。すなわち、外部装置へ依頼された演算項目の演算処理を実行するハードウェアは、外部装置で演算処理が実行される期間において停止する。
【0032】
続いて、依頼部13bについて説明する。依頼部13bは、演算処理の依頼に関する一連の処理を実行する処理部である。依頼部13bは、例えば、充電設備50から供給される電力によって自車両MCのバッテリが充電中である場合に、通信部11を介して外部装置へ対して演算処理を依頼する。
【0033】
例えば、依頼部13bは、自車両MCが充電中となった場合に、通信部11を介して自車両MCの周囲に存在する外部装置の探索を行う。例えば、かかる探索は、通信部11から同報通信を用いてビーコン信号を送信し、送信したビーコン信号に対する応答の有無によって行われる。すなわち、通信部11の通信エリア内に存在する外部装置を探索する。
【0034】
例えば、同報通信により送信されるビーコン信号には、「外部装置を搭載した車両が停車中(例えば、IG−OFF)であるか?」、「外部装置の「機種」は何か?」、「位置情報は?」などいった問いが含まれ、ビーコン信号を受信した外部装置は、上記の問いに対する返答を行う。
【0035】
依頼部13bは、ビーコン信号に対して外部装置から応答があった場合、通信部11を介して応答があった外部装置と個別に通信を行い、演算処理の依頼等を行う。この際、例えば、依頼部13bは、外部装置を搭載した他車両Cが走行中である場合には、依頼対象から除外する。これは、他車両Cが走行中である場合には、通信部11の通信エリアから逸脱するためである。
【0036】
また、依頼部13bは、停車中の他車両Cに搭載された外部装置のうち、例えば、他車両Cが充電中である場合には、かかる外部装置を依頼対象から除外することにしてもよい。これは、演算処理を依頼することによる他車両Cの消費電力の増大を招くためである。すなわち、充電中の他車両Cに演算処理を依頼すると、他車両Cにおける充電時間の遅延に繋がるためである。
【0037】
このように、依頼部13bは、自車両MCの周囲に存在する他車両C(あるいは充電設備50)へ演算処理を依頼することで、比較的消費電力が低い短距離無線通信(例えば、Bluetooth(登録商標))を用いて通信を行うことができるので、充電中の消費電力を抑制することができる。
【0038】
依頼部13bは、依頼対象を除外後に応答があった外部装置の中から、「機種」に基づいて、演算処理を依頼する外部装置を選択する。依頼部13bは、演算項目情報12aを参照し、演算項目ごとに演算処理を実行可能な外部装置として選択する。
【0039】
この際、依頼部13bは、同一の外部装置で、複数の演算項目を実行である場合、かかる外部装置を優先的に選択する。言い換えれば、依頼部13bは、できるだけ少ない外部装置へ演算処理を依頼するように外部装置の選択を行う。この際、演算部13aは、自装置(ECU10)と同一規格の外部装置を優先的に選択することが好ましい。
【0040】
ここで、同一規格の外部装置とは、自車両MCのECU10と、同一の機種、同一のプログラムを実行する外部装置、あるいは、自車両MCのECU10と相互に互換性を有する外部装置を指す。
【0041】
すなわち、依頼部13bは、同一規格の外部装置を優先的に選択することで、外部装置で依頼された演算処理をスムーズに実行することが可能となる。また、依頼部13bは、同じ演算項目を演算可能な外部装置が複数存在した場合には、外部装置との通信状態に応じて外部装置を選択することにしてもよい。例えば、依頼部13bは、最も自車両MCに近い外部装置あるいは、通信の信号強度が最も強い外部装置を選択することにしてもよい。
【0042】
依頼部13bは、外部装置の選択を終えると、演算項目を設定したうえで、選択した外部装置に対して演算処理の依頼を実行する。その後、外部装置から演算処理の依頼に対する承認を受領した場合に、演算部13aを休止させるとともに、演算入力情報の送信、演算結果情報の受信に関する一連の処理を実行する。
【0043】
例えば、演算入力情報は、センサ群20の検出結果に関する情報、RAMに記憶されたRAM値に関する情報が含まれる。外部装置では、これら演算入力情報に基づいて、依頼された演算項目の演算処理を実行する。
【0044】
このように、依頼部13bは、外部装置ごとに演算項目を選択することで、演算部13aおよび外部装置によって、自車両MCの充電中に実行すべき演算処理の全てを停止させることなく、実行することができる。
【0045】
ところ、外部装置との間で、通信異常が発生する場合や、外部装置を搭載した他車両が自車両MCの充電が完了するよりも早く動き出す場合も想定される。このため、依頼部13bは、演算処理の依頼を行った外部装置との通信状態を監視し、通信異常が発生した場合には、演算処理の依頼を中止し、演算部13aを停止状態から起動させる。
【0046】
図4は、通信異常時の処理の一例を示す図である。
図4には、自車両MCのECU10と、他車両CのECU10との間で通信異常が発生した場合を示す。この場合、自車両MCのECU10から他車両CのECU10へ演算入力情報の送信を行うことができず、他車両CのECU10から自車両MCのECU10へ演算結果情報を送信することもできない。
【0047】
そのため、通信異常が発生した場合には、演算部13aによる演算を開始し、外部装置に依頼していた演算処理を実行する。言い換えれば、通信異常が生じた場合には、外部装置へ依頼していた演算処理を自車両MCのECU10で引き継いで実行する。具体的には、自車両MCのECU10から他車両CのECU10へ演算入力情報の送信を行った後、他車両CのECU10から演算結果情報を受信する前に通信異常が発生した場合は、自車両MCのECU10は、当該演算入力情報に基づく演算から引き継ぐ。一方、他車両CのECU10から演算結果情報を受信し、次の演算入力情報を他車両CのECU10に送信する前に通信異常が発生した場合は、自車両MCのECU10は、当該次の演算入力情報に基づく演算から引き継ぐ。
【0048】
これにより、通信異常が生じた場合であっても、演算処理を継続して行うことが可能となる。なお、ここでは、通信異常が生じた場合に、自車両MCのECU10で演算処理を実行する場合について、これに限定されるものではない。すなわち、自車両MCの周辺に存在するその他の外部装置へ演算処理の依頼を行うことにしてもよい。また、ここでは、通信異常が生じた場合について説明したが、例えば、駐車していた他車両Cが自車両MCより先に走行を開始した場合についても同様である。
【0049】
次に、
図5を用いて、実施形態に係るECU10が実行する処理手順について説明する。
図5は、ECU10が実行する処理手順を示すフローチャートである。なお、以下に示す処理手順は、自車両MCのECU10によって繰り返し実行される。
【0050】
図5に示すように、ECU10は、自車両MCのバッテリが充電中か否かを判定し(ステップS101)、充電中である場合(ステップS101,Yes)、演算処理を依頼可能な外部装置があるか否かを判定する(ステップS102)。
【0051】
ECU10は、ステップS102の判定において、依頼可能な外部装置が存在していた場合(ステップS102,Yes)、外部装置に対して依頼する演算項目を選択し(ステップS103)、演算項目を実行していた不要な機能を停止させる(ステップS104)。
【0052】
その後、ECU10は、外部装置に対して演算入力情報の送信を開始するとともに(ステップS105)、演算結果情報の受信を開始する(ステップS106)。続いて、ECU10は、外部装置との間で通信異常が発生したか否かを判定し(ステップS107)、通信異常が発生していない場合(ステップS107,Yes)、バッテリの充電が終了したか否かを判定する(ステップS108)。
【0053】
ECU10は、ステップS108の判定において、バッテリの充電が終了した場合(ステップS108,Yes)、処理を終了し、バッテリの充電が終了していない場合には(ステップS108,No)、ステップS101の処理へ移行する。
【0054】
また、ECU10は、ステップS101の判定において、充電中でない場合、ステップS102の判定において、依頼可能な外部装置が存在しない場合、あるいは、ステップS107の判定において、通信異常が生じた場合(ステップS101/ステップS102/ステップS107,No)、通常制御を実行した後に(ステップS109)、ステップS108の処理へ移行する。
【0055】
上述したように、実施形態に係るECU10(車両制御装置の一例)は、演算部13aと、通信部11と、依頼部13bとを備える。演算部13aは、自車両MCの車両状態に関する演算処理を行う。通信部11は、外部装置と通信を行う。依頼部13bは、充電設備50から供給される電力によってバッテリが充電中である場合に、演算部13aが充電中に実行すべき演算処理を通信部11を介して外部装置へ依頼する。したがって、実施形態に係る車両制御装置によれば、充電時間の短縮を図ることができる。
【0056】
ところで、上述した実施形態では、外部装置が他車両CのECU10である場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、外部装置は、サーバ装置であってもよい。例えば、ECU10は、自車両MCの充電中である場合、サーバ装置と所定のネットワークを介して通信を行い、演算処理を依頼する。また、この際、ECU10は、例えば、充電設備50を介してサーバ装置と情報の送受信を行うことにしてもよい。
【0057】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。