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特開2021-191283核酸巻き戻し機能を有する膜貫通型ナノポア並びにその構築方法及び用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-191283(P2021-191283A)
(43)【公開日】2021年12月16日
(54)【発明の名称】核酸巻き戻し機能を有する膜貫通型ナノポア並びにその構築方法及び用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/55 20060101AFI20211119BHJP
   C12N 9/14 20060101ALI20211119BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20211119BHJP
   C12N 15/37 20060101ALI20211119BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20211119BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20211119BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20211119BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20211119BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20211119BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20211119BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20211119BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20211119BHJP
【FI】
   C12N15/55
   C12N9/14ZNA
   C12Q1/6869 Z
   C12N15/37
   C12N15/10 200Z
   C12M1/00 A
   C12N15/63 Z
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   A61K47/42
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】51
(21)【出願番号】特願2021-132693(P2021-132693)
(22)【出願日】2021年8月17日
(62)【分割の表示】特願2019-540011(P2019-540011)の分割
【原出願日】2018年1月23日
(31)【優先権主張番号】201710060033.9
(32)【優先日】2017年1月24日
(33)【優先権主張国】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520462023
【氏名又は名称】▲廣▼州孔▲確▼基因科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】耿佳
(72)【発明者】
【氏名】魏于全
【テーマコード(参考)】
4B029
4B050
4B063
4B065
4C076
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB16
4B029BB20
4B050DD01
4B050LL03
4B063QA13
4B063QQ42
4B063QR32
4B063QX05
4B065AA26X
4B065AB01
4B065AC14
4B065CA46
4C076EE41
4C076FF70
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ウシパピローマウイルスDNAヘリカーゼE1の2つの切断型および導電性ナノポアの調製におけるその使用を提供する。
【解決手段】(1)単離されたウシパピローマウイルス二本鎖DNAヘリカーゼの306〜605位のアミノ酸からなり、およびその配列が特定の配列番号に示されている;若しくは(2)前記特定の配列番号に示すアミノ酸配列の変異体であって、前記変異体は、以下の変異の少なくとも1つを含む:前記特定の配列番号に示すアミノ酸配列の421位をKからLに、又は323位をHからWに変異させることによって得られる変異体である;ことを特徴とする、タンパク質の;又は前記(1)及び(2)のいずれかに記載の2以上のタンパク質のサブユニットを含む多量体タンパク質の、導電性チャネルを含むナノポア又は膜の調製のための使用を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)単離されたウシパピローマウイルス二本鎖DNAヘリカーゼの306〜577位
のアミノ酸からなり、およびその配列が配列番号3に示されている;又は
(2)(1)で定義されたタンパク質のアミノ酸配列中の少なくとも1つのアミノ酸の
置換及び/若しくは欠失及び/若しくは挿入によって得られる変異体であることを特徴と
する、タンパク質。
【請求項2】
(1)で定義されたタンパク質のアミノ酸配列中の1〜20個のアミノ酸を置換及び/
又は欠失及び/又は挿入することによって得られる変異体である、請求項1に記載のタン
パク質。
【請求項3】
(1)で定義されたタンパク質のアミノ酸配列中の1〜3個のアミノ酸の置換及び/又
は欠失及び/又は挿入によって得られる変異体である、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項4】
(1)で定義された配列番号3の配列と75%を超えるアミノ酸配列相同性を有する相
同変異体である、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項5】
(1)で定義された配列番号3の配列と90%を超えるアミノ酸配列相同性を有する相
同変異体である、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項6】
(1)で定義された配列番号3の配列と99%を超えるアミノ酸配列相同性を有する相
同変異体である、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項7】
配列番号3に示されるアミノ酸配列の変異体を含み、前記変異体が以下の突然変異:
(a)479位のアミノ酸が、ヒスチジン(H)、リジン(K)、セリン(S)、アス
パラギン(N)、トレオニン(T)である;
(b)489位のアミノ酸が、ヒスチジン(H)、リジン(K)、アスパラギン(N)
、トレオニン(T)およびセリン(S)である;
(c)530位のアミノ酸が、ヒスチジン(H)、リジン(K)、セリン(S)、アス
パラギン(N)、トレオニン(T)である;
(d)529位のアミノ酸が、グルタミン(Q)およびリジン(K)である;
(e)525位のアミノ酸が、ヒスチジン(H)、リジン(K)、セリン(S)、ロイ
シン(L)、トレオニン(T)である;
(f)504位のアミノ酸が、アスパラギン(N)、リジン(K)、アルギニン(R)
、セリン(S)、トレオニン(T)、フェニルアラニン(f)、チロシン(Y)、トリプ
トファン(W)である;
(g)328位のアミノ酸が、グルタミン(Q)、リジン(K)、アルギニン(R)、
フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)である;
(h)360位のアミノ酸が、アスパラギン(N)、リジン(K)、アルギニン(R)
、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)である;
(i)322位のアミノ酸が、アスパラギン(N)、ロイシン(L)、イソロイシン(
I)、バリン(V)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、グルタミン(Q
)である;
(j)372位のアミノ酸が、グルタミン(Q)、ロイシン(L)、イソロイシン(I
)、バリン(V)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、
アスパラギン(N)である;
(k)342位のアミノ酸が、アスパラギン(N)、ロイシン(L)、イソロイシン(
I)、バリン(V)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、グルタミン(Q
)である;
(l)334位のアミノ酸が、アスパラギン(N)、ロイシン(l)、イソロイシン(
I)、バリン(V)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、グルタミン(Q
)である;
(m)392位のアミノ酸が、アスパラギン(N)、ロイシン(L)、イソロイシン(
I)、バリン(V)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、グルタミン(Q
)である;
(n)408位のアミノ酸が、アスパラギン(N)、ロイシン(L)、イソロイシン(
I)、バリン(V)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、グルタミン(Q
)である;
(o)396位のアミノ酸が、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、
フェニルアラニン(F)およびトリプトファン(W)、アラニン(A)およびグリシン(
G)である;
(p)570位のアミノ酸が、バリン(V)、フェニルアラニン(F)、トリプトファ
ン(W)、アラニン(A)、グリシン(G)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)であ
る;
(q)574位のアミノ酸が、トリプトファン(W)、アラニン(A)、グリシン(G
)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)およびフェニルアラニン(F)
である;
(r)417位のアミノ酸が、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、
フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、アラニン(A)およびグリシン(G)
である;
(s)421位のアミノ酸が、バリン(V)、フェニルアラニン(F)、トリプトファ
ン(W)、アラニン(A)、グリシン(G)、ロイシン(L)およびイソロイシン(I)
である;
(t)383位のアミノ酸が、バリン(V)、フェニルアラニン(F)、トリプトファ
ン(W)、アラニン(A)、グリシン(G)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)であ
る;
(u)387位のアミノ酸が、ヒスチジン(H)、フェニルアラニン(F)、トリプト
ファン(W)である;
(v)323位のアミノ酸が、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(v)、
フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、アラニン(A)、グリシン(G)であ
る;
(w)324位のアミノ酸が、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)
およびバリン(V)である;
(x)565位のアミノ酸が、トレオニン(T)、セリン(S)およびチロシン(Y)
である;
(y)426位のアミノ酸が、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、
フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、アラニン(A)、グリシン(G)であ

の少なくとも1つを含み、
前記各突然変異位置の数は、前記ウシパピローマウイルス二本鎖DNAヘリカーゼの完
全長の最初の位置から数え始め、
前記ウシパピローマウイルス二本鎖DNAヘリカーゼの完全長アミノ酸配列が配列番号
5に示されている、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項8】
前記変異体が、配列番号3のアミノ酸配列のタンパク質と同じ又は類似の機能を有し、
前記類似の機能が、多量体タンパク質細孔を形成することができる単量体であり得ること
であり、前記同じ機能が、細孔を形成することができる単量体であり得ること及び形成さ
れた多量体タンパク質細孔もまたヘリカーゼ活性を有することである、請求項1〜7のい
ずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項9】
化学的に修飾されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項10】
前記タンパク質が、分子を1以上のシステインに連結すること、分子を1以上のリジン
に連結すること、及び分子を1以上の非天然アミノ酸に連結すること、エピトープの酵素
修飾又は末端修飾によって化学的に修飾されている、請求項9に記載のタンパク質。
【請求項11】
前記1以上のシステイン又は前記1以上の非天然アミノ酸が置換によって前記タンパク
質に導入されている、請求項10に記載のタンパク質。
【請求項12】
前記分子が、
(a)導電性チャネルを含むタンパク質若しくは膜を含むナノポアと、標的被検体、標
的ヌクレオチド若しくはポリヌクレオチドとの間の相互作用を促進することができる分子
アプタマー;又は
(b)ポリヌクレオチド結合タンパク質;
である、請求項10又は11に記載のタンパク質。
【請求項13】
前記連結がリンカーによって達成される、請求項10〜12のいずれか1項に記載のタ
ンパク質。
【請求項14】
前記分子が前記変異体の1以上の部位に連結されている、請求項10〜13のいずれか
1項に記載のタンパク質。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の2以上のタンパク質のサブユニットを含む、多
量体タンパク質。
【請求項16】
前記多量体タンパク質を構成するサブユニットの数が4〜8である、請求項15に記載
の多量体タンパク質。
【請求項17】
前記多量体タンパク質を構成するサブユニットの数が6である、請求項16に記載の多
量体タンパク質。
【請求項18】
前記多量体タンパク質がホモ多量体又はヘテロ多量体である、請求項15〜17のいず
れか1項に記載の多量体タンパク質。
【請求項19】
(1)単離されたウシパピローマウイルス二本鎖DNAヘリカーゼの306〜605位
のアミノ酸からなり、その配列が配列番号1に示されている;又は
(2)(1)で定義されたタンパク質のアミノ酸配列中の少なくとも1つのアミノ酸の
置換及び/若しくは欠失及び/若しくは挿入によって得られる変異体である;
ことを特徴とする、タンパク質。
【請求項20】
(1)で定義されたタンパク質のアミノ酸配列中の1〜20個のアミノ酸を置換及び/
又は欠失及び/又は挿入することによって得られる変異体である、請求項19に記載のタ
ンパク質。
【請求項21】
(1)で定義されたタンパク質のアミノ酸配列中の1〜3個のアミノ基の置換及び/又
は欠失及び/又は挿入によって得られる変異体である、請求項19に記載のタンパク質。
【請求項22】
(1)で定義された配列番号1の配列と75%を超えるアミノ酸配列相同性を有する相
同変異体である、請求項19に記載のタンパク質。
【請求項23】
(1)で定義された配列番号1の配列と90%を超えるアミノ酸配列相同性を有する相
同変異体である、請求項19に記載のタンパク質。
【請求項24】
(1)で定義された配列番号1の配列と99%を超えるアミノ酸配列相同性を有する相
同変異体である、請求項19に記載のタンパク質。
【請求項25】
配列番号1に示されるアミノ酸配列の変異体を含み、前記変異体が以下の突然変異:
(z)479位のアミノ酸が、ヒスチジン(H)、リジン(K)、セリン(S)、アス
パラギン(N)、トレオニン(T)である;
(aa)489位のアミノ酸が、ヒスチジン(H)、リジン(K)、アスパラギン(N
)、トレオニン(T)およびセリン(S)である;
(bb)530位のアミノ酸が、ヒスチジン(H)、リジン(K)、セリン(S)、ア
スパラギン(N)、トレオニン(T)である;
(cc)529位のアミノ酸が、グルタミン(Q)およびリジン(K)である;
(dd)525位のアミノ酸が、ヒスチジン(H)、リジン(K)、セリン(S)、ロ
イシン(L)、トレオニン(T)である;
(ee)504位のアミノ酸が、アスパラギン(N)、リジン(K)、アルギニン(R
)、セリン(S)、トレオニン(T)、フェニルアラニン(f)、チロシン(Y)、トリ
プトファン(W)である;
(ff)328位のアミノ酸が、グルタミン(Q)、リジン(K)、アルギニン(R)
、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)である;
(gg)360位のアミノ酸が、アスパラギン(N)、リジン(K)、アルギニン(R
)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)である;
(hh)322位のアミノ酸が、アスパラギン(N)、ロイシン(L)、イソロイシン
(I)、バリン(V)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、グルタミン(
Q)である;
(ii)372位のアミノ酸が、グルタミン(Q)、ロイシン(L)、イソロイシン(
I)、バリン(V)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)
、アスパラギン(N)である;
(jj)342位のアミノ酸が、アスパラギン(N)、ロイシン(L)、イソロイシン
(I)、バリン(V)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、グルタミン(
Q)である;
(kk)334位のアミノ酸が、アスパラギン(N)、ロイシン(l)、イソロイシン
(I)、バリン(V)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、グルタミン(
Q)である;
(ll)392位のアミノ酸が、アスパラギン(N)、ロイシン(L)、イソロイシン
(I)、バリン(V)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、グルタミン(
Q)である;
(mm)408位のアミノ酸が、アスパラギン(N)、ロイシン(L)、イソロイシン
(I)、バリン(V)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、グルタミン(
Q)である;
(nn)396位のアミノ酸が、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)
、フェニルアラニン(F)およびトリプトファン(W)、アラニン(A)およびグリシン
(G)である;
(oo)570位のアミノ酸が、バリン(V)、フェニルアラニン(F)、トリプトフ
ァン(W)、アラニン(A)、グリシン(G)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)で
ある;
(pp)574位のアミノ酸が、トリプトファン(W)、アラニン(A)、グリシン(
G)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)およびフェニルアラニン(F
)である;
(qq)417位のアミノ酸が、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)
、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、アラニン(A)およびグリシン(G
)である;
(rr)421位のアミノ酸が、バリン(V)、フェニルアラニン(F)、トリプトフ
ァン(W)、アラニン(A)、グリシン(G)、ロイシン(L)およびイソロイシン(I
)である;
(ss)383位のアミノ酸が、バリン(V)、フェニルアラニン(F)、トリプトフ
ァン(W)、アラニン(A)、グリシン(G)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)で
ある;
(tt)387位のアミノ酸が、ヒスチジン(H)、フェニルアラニン(F)、トリプ
トファン(W)である;
(uu)323位のアミノ酸が、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(v)
、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、アラニン(A)、グリシン(G)で
ある;
(vv)324位のアミノ酸が、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P
)およびバリン(V)である;
(ww)565位のアミノ酸が、トレオニン(T)、セリン(S)およびチロシン(Y
)である;
(xx)426位のアミノ酸が、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)
、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、アラニン(A)、グリシン(G)で
ある
の少なくとも1つを含み、
前記各突然変異位置の数は、前記ウシパピローマウイルス二本鎖DNAヘリカーゼの完
全長の最初の位置から数え始め、
前記ウシパピローマウイルス二本鎖DNAヘリカーゼの完全長アミノ酸配列が配列番号
5に示されている、請求項19〜24のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項26】
前記変異体が、配列番号3のアミノ酸配列のタンパク質と同じ又は類似の機能を有し、
前記類似の機能が、多量体タンパク質細孔を形成することができる単量体であり得ること
であり、前記同じ機能が、細孔を形成することができる単量体であり得ること及び形成さ
れた多量体タンパク質細孔もまたヘリカーゼ活性を有することである、請求項19〜25
のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項27】
前記タンパク質変異体が、配列番号1に示されているアミノ酸配列の421位をKから
Lに、又は323位をHからWに変異させることによって得られる、請求項19〜26の
いずれかに記載のタンパク質。
【請求項28】
前記タンパク質変異体のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号6及び配列番号7に示され
ている、請求項27に記載のタンパク質。
【請求項29】
化学的に修飾されている、請求項19〜28のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項30】
前記タンパク質が、分子を1以上のシステインに連結すること、分子を1以上のリジン
に連結すること、及び分子を1つ以上の非天然アミノ酸に連結すること、エピトープの酵
素修飾又は末端修飾によって化学的に修飾されている、請求項29に記載のタンパク質。
【請求項31】
前記1以上のシステイン又は前記1以上の非天然アミノ酸が置換によって前記タンパク
質に導入されている、請求項30に記載のタンパク質。
【請求項32】
前記分子が、
(a)導電性チャネルを含むタンパク質若しくは膜を含むナノポアと、標的被検体、標
的ヌクレオチド若しくはポリヌクレオチドとの間の相互作用を促進することができる分子
アプタマー;又は
(b)ポリヌクレオチド結合タンパク質;
である、請求項30又は31に記載のタンパク質。
【請求項33】
前記連結がリンカーによって達成される、請求項30〜32のいずれか1項に記載のタ
ンパク質。
【請求項34】
前記分子が前記変異体の1以上の部位に連結されている、請求項30〜32のいずれか
1項に記載のタンパク質。
【請求項35】
請求項19〜34のいずれか1項に記載の2以上のタンパク質のサブユニットを含む、
多量体タンパク質。
【請求項36】
前記多量体タンパク質を構成するサブユニットの数が4〜8である、請求項35に記載
の多量体タンパク質。
【請求項37】
前記多量体タンパク質を構成するサブユニットの数が6である、請求項35に記載の多
量体タンパク質。
【請求項38】
前記多量体タンパク質が、ホモ多量体又はヘテロ多量体である、請求項35〜37のい
ずれか1項に記載の多量体タンパク質。
【請求項39】
請求項1〜14、19〜34、15〜18、及び35〜38のいずれか1項に記載のタ
ンパク質又は多量体タンパク質の、導電性チャネルを含むナノポア又は膜の調製のための
使用。
【請求項40】
(1)膜層;及び
(2)前記多量体タンパク質が前記膜層に埋め込まれてチャネルを形成し、膜貫通電位
が印加されたとき、前記チャネルを通して電気的に伝導され得る、請求項15〜18又は
請求項35〜38のいずれか1項に記載の分離された多量体タンパク質
を含む、導電性チャネルを含む膜。
【請求項41】
前記膜層が、脂質層又は両親媒性ポリマーで形成される単層又は二重層の膜を含む、請
求項40に記載の導電性チャネル含有膜。
【請求項42】
前記脂質層が両親媒性脂質を含む、請求項40又は41に記載の導電性チャネル含有膜
【請求項43】
前記脂質層が平面脂質膜層又はリポソームから選択され、及び前記膜の単層がPMOX
A−PDMS−PMOXAから形成され、PMOXAがジメチルジアゾリンを表し、PD
MSがポリジメチルシロキサンを表す、請求項40〜42のいずれか1項に記載の導電性
チャネル含有膜。
【請求項44】
電位が印加されたときに前記チャネルを通してDNA又はRNAを転位させることがで
きる、請求項40〜43のいずれか1項に記載の導電性チャネル含有膜。
【請求項45】
以下の工程:
(a)乾燥両親媒性脂質を調製する工程;及び
(b)前記乾燥両親媒性脂質を、水性溶媒、浸透剤、及び請求項1〜11又は請求項1
6〜28のいずれか1項に記載のいくつかの分離されたタンパク質を含む溶液に再懸濁す
る工程であって、サブユニットとしての前記タンパク質が六量体タンパク質に自己組織化
することができ、これを、特定の条件下で、導電性チャネルを含む膜を形成するのに十分
な時間、脂質二重層膜に挿入することができる工程;
を含む、導電性チャネルを含む膜を作製する方法。
【請求項46】
前記両親媒性脂質がリン脂質である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記リン脂質が、以下に列挙される1以上のリン脂質:ホスファチジルコリン、ホスフ
ァチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホス
ファチジルグリセロール、カルジオリピン、1,2−ジアスカノイル−sn−グリセロ−
3−ホスホコリン、および1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンか
ら選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
標的試料を特徴付けるための単分子センサ又はキットを調製するための、請求項40〜
44のいずれか1項に記載の導電性チャネル含有膜の使用。
【請求項49】
前記標的試料が、無機小分子、有機小分子、ポリペプチド、アミノ酸、金属イオン、ポ
リヌクレオチド、一本鎖核酸、又は二本鎖核酸の少なくとも1つである、請求項48に記
載の使用。
【請求項50】
医薬担体の調製における、請求項40〜44のいずれか1項に記載の導電性チャネル含
有膜の使用。
【請求項51】
請求項1〜14、19〜34のいずれか1項に記載のタンパク質、又は請求項15〜1
8、35〜38のいずれか1項に記載の多量体タンパク質、又は請求項40〜44のいず
れか1項に記載の導電性チャネル含有膜を含む、単分子センサ又はキット。
【請求項52】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のタンパク質又は請求項19〜34のいずれか1
項に記載のタンパク質をコードする、遺伝子。
【請求項53】
前記遺伝子のヌクレオチド配列が、配列番号2又は配列番号4に示されている、請求項
52に記載の遺伝子。
【請求項54】
請求項52又は53に記載の遺伝子を含む、ベクター。
【請求項55】
請求項54に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項56】
導電性チャネルを含むナノポア又は膜の調製におけるウシパピローマウイルス二本鎖D
NAヘリカーゼタンパク質又はその相同タンパク質の使用であって、前記ウシパピローマ
ウイルス二本鎖DNAヘリカーゼタンパク質のアミノ酸配列が配列番号5に示されている
、使用。
【請求項57】
前記ウシパピローマウイルス二本鎖DNAヘリカーゼタンパク質の相同タンパク質が、
以下の表に示されるタンパク質から選択される、請求項56に記載の使用。
【表1】
【請求項58】
(1)膜層;及び
(2)多量体タンパク質が前記膜層に埋め込まれてチャネルを形成し、バイアス電圧が
印加されたとき電気的に伝導され得る、分離されたウシパピローマウイルス二本鎖DNA
ヘリカーゼタンパク質又はその相同タンパク質;
を含む、導電性チャネルを含む膜。
【請求項59】
前記ウシパピローマウイルス二本鎖DNAヘリカーゼタンパク質のアミノ酸配列が配列
番号5に示されている、請求項58に記載の導電性チャネル含有膜。
【請求項60】
前記ウシパピローマウイルス二本鎖DNAヘリカーゼの相同タンパク質が以下の表から
選択される、請求項58に記載の導電性チャネル含有膜。
【表2】
【請求項61】
前記膜層が、脂質又は両親媒性ポリマーで形成される単層または二重層の膜を含む、請
求項58〜60のいずれか1項に記載の導電性チャネル含有膜。
【請求項62】
前記脂質層が両親媒性脂質を含む、請求項58〜61のいずれか1項に記載の導電性チ
ャネル含有膜。
【請求項63】
前記脂質層が平面脂質膜層又はリポソームから選択される、請求項58〜62のいずれ
か1項に記載の導電性チャネル含有膜。
【請求項64】
電位が印加されたときに前記チャネルを通してDNA又はRNAを転位させることがで
きる、請求項58〜63のいずれか1項に記載の導電性チャネル含有膜。
【請求項65】
標的試料を特徴付けるための単分子センサ又はキットの調製における、請求項58〜6
4のいずれか1項に記載の導電性チャネル含有膜の使用。
【請求項66】
前記標的試料が、無機小分子、有機小分子、ポリペプチド、アミノ酸、金属イオン、ポ
リヌクレオチド、一本鎖核酸、又は二本鎖核酸の少なくとも1つである、請求項65に記
載の使用。
【請求項67】
医薬担体の調製における、請求項58〜64のいずれか1項に記載の導電性チャネル含
有膜の使用。
【請求項68】
請求項58〜64のいずれか1項に記載の導電性チャネル含有膜を含む、単分子センサ
又はキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジーの分野、特に核酸巻き戻し機能を有する膜貫通型ナノポ
ア並びにその構築方法及び用途の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
生物活性物質及び化学活性物質を正確に検出することは、堅固で安定したセンサを必要
とする、長年にわたる産業及び科学研究の標的の1つである。単分子検出の分野における
α溶血素(α−HL)の最初の適用以来、単分子検出のための技術的プラットフォームと
してのナノポアはますます重要な役割を果たしてきている。
【0003】
分子間親和性相互作用(例えば共有結合又は非共有結合誘引)を介した検出のために関
心対象の被検体を結合又は「捕捉すること」は、例えば、α−HLのβバレル領域にヒス
チジンを挿入することによって、ニッケル、銅、及び亜鉛等の二価金属イオンを明確に区
別及び定量化する;遺伝子操作を通して特定のリガンドを内部ナノポアに埋め込むことに
よって小さな有機分子、更にはタンパク質の画分さえも検出することができ、また、銅イ
オンとα−HLナノポアのシステイン(117)を組み合わせることによってアミノ酸配
置を区別することもできる。
【0004】
α−HL以外に、他の研究されているタンパク質ナノポアは、ポリエチレングリコール
の検出に使用されるアラメチシン、現在ハイスループット核酸配列決定に広く使用されて
いるマイコバクテリウムスメグマチス(mycobacterium smegmati
s)組換えタンパク質MspA、二本鎖が通過することを可能にするバクテリオファージ
phi29 DNAパッケージングモータタンパク質等を含む。α−HL及びMspA等
のこれらのタンパク質のナノポアは、被検体の検出を完了するのを助けるための他の酵素
を必要とし、これがその更なる用途を制限している。
【0005】
既存の研究報告から、膜貫通型βバレル領域で1.5nmの最も狭い直径及び5.2n
mの長さを有するα−HLナノポアが他の小分子の配列決定又は検出に使用された場合、
ナノポアの最も狭い部分は、ナノポアを介して核酸鎖をラチェットさせるには長過ぎ、結
果として、一塩基を区別することが困難であり、従って他の小分子の感知分解能が低下し
た。
【0006】
MspAの膜貫通部の長さはα−HLよりも短いが、通常はナノポアとしてのみ機能し
、分子の感知においては人工カーボンナノチューブと同等であり、イオンチャネルとして
存在する。例えば、Ian M,Elizabeth等は、核酸中の一塩基を区別するた
めにHel308ヘリカーゼ又はφ29DNAポリメラーゼをMspAと結合させた。
【0007】
phi29 DNAパッケージングモータタンパク質からの電気信号は、その電圧ゲー
ト特性不良に起因して、微量物質を検出すると、容易に干渉される。
【0008】
当業者は、配列決定の潜在的な用途のために合成金属又はシリコンナノポア等の他の材
料を使用しているが、これらの合成ナノポアは、一貫した反復構造を生成するのに十分な
だけの信頼性がなく、化学修飾の多様性を欠く。従って、より良好なナノポア又はそれら
の代替物を探索することは、依然としてこの分野におけるホットスポットであり、難事で
ある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明において解決されるべき技術的課題は、二本鎖核酸を移動させるときに活性成分
を外部から巻き戻す必要がある、小さなチャネルサイズを有する既存のタンパク質ナノポ
アの欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の欠点を解決するための単量体タンパク質を提供する。単量体タンパク
質は、(1)単離されたウシパピローマウイルス二本鎖DNAヘリカーゼの306〜57
7位のアミノ酸からなり、その配列は配列番号3に示されている、又は(2)(1)で定
義されたタンパク質のアミノ酸配列中の少なくとも1個のアミノ酸の置換及び/若しくは
欠失及び/若しくは挿入によって得られる変異体である。
【0011】
更に、本発明における単量体タンパク質は、(1)で定義されたタンパク質のアミノ酸
配列中の1〜20個のアミノ酸を置換及び/又は欠失及び/又は挿入することによって得
られる変異体である。
【0012】
最適には、それは、(1)で定義されたタンパク質のアミノ酸配列中の1〜15個のア
ミノ酸を置換及び/又は欠失及び/又は挿入することによって得られる変異体である。
【0013】
更に、上記タンパク質は、(1)で定義されたタンパク質のアミノ酸配列中の10個以
下のアミノ酸を置換及び/又は欠失及び/又は挿入することによって得られる、単量体タ
ンパク質と同じ又は類似の機能を有する変異体である。
【0014】
好ましくは、(1)で示されるタンパク質のアミノ酸配列において1〜10個のアミノ
基を置換及び/又は欠失及び/又は挿入することによって得られる(1)を有する限定変
異体。
【0015】
好ましくは、(1)で示されるタンパク質のアミノ酸配列において1〜5個のアミノ基
を置換及び/又は欠失及び/又は挿入することによって得られる(1)を有する限定変異
体。
【0016】
好ましくは、(1)で示されるタンパク質のアミノ酸配列において1〜3個のアミノ基
を置換及び/又は欠失及び/又は挿入することによって得られる(1)を有する限定変異
体。
【0017】
更に、上記タンパク質変異体は、配列番号3のアミノ酸配列を有するタンパク質の42
1位におけるKからLへの変異、又は323位におけるHからWへの変異から得られるタ
ンパク質変異体である。
【0018】
好ましい:上記タンパク質変異体は、(1)で定義された配列番号3の配列と75%を
超えるアミノ酸配列相同性を有する相同変異体である。
【0019】
好ましい:上記タンパク質変異体は、(1)で定義された配列番号3の配列と80%を
超えるアミノ酸配列相同性を有する相同変異体である。
【0020】
より好ましい:上記タンパク質変異体は、(1)で定義された配列番号3の配列と90
%を超えるアミノ酸配列相同性を有する相同変異体である。
【0021】
再最適化:上記タンパク質変異体は、(1)で定義された配列番号3の配列と95%を
超えるアミノ酸配列相同性を有する相同変異体である。
【0022】
更なる最適化:上記タンパク質変異体は、(1)で定義された配列番号3の配列と98
%を超えるアミノ酸配列相同性を有する相同変異体である。
【0023】
最適:上記タンパク質変異体は、(1)で定義された配列番号3の配列と99%を超え
るアミノ酸配列相同性を有する相同変異体である。
【0024】
本発明はまた、上記タンパク質をコードする遺伝子も提供する。
【0025】
更に、上記遺伝子のヌクレオチド配列を配列番号4に示す。
【0026】
同時に、本発明は上記遺伝子を含むベクターも提供する。
【0027】
言うまでもなく、本発明は上記ベクターを含む宿主細胞も提供する。
【0028】
本発明はまた、(1)単離されたウシパピローマウイルス二本鎖DNAヘリカーゼの3
06〜605位のアミノ酸からなり、その配列が配列番号1に示されている;又は(2)
(1)で定義されたタンパク質のアミノ酸配列中の少なくとも1個のアミノ酸の置換及び
/若しくは欠失及び/若しくは挿入によって得られる変異体である、別のタンパク質を提
供する。
【0029】
更に、単量体タンパク質は、(1)で定義されたアミノ酸配列中の1〜20個のアミノ
酸を置換及び/又は欠失及び/又は挿入することによって得られる変異体である。
【0030】
好ましくは、単量体タンパク質は、(1)で定義されたアミノ酸配列中の1〜15個の
アミノ酸を置換及び/又は欠失及び/又は挿入することによって得られる変異体である。
【0031】
さらに、上記タンパク質は、(1)で定義されたタンパク質のアミノ酸配列中の10個
以下のアミノ酸を置換及び/又は欠失及び/又は挿入することによって得られる単量体タ
ンパク質と同じ又は類似の機能を有するタンパク質である。
【0032】
好ましくは、単量体タンパク質は、(1)で定義されたタンパク質のアミノ酸配列にお
いて1〜10個のアミノ酸を置換及び/又は欠失及び/又は挿入することによって得られ
る変異体である。
【0033】
再最適化として、単量体タンパク質は、(1)で定義されたタンパク質のアミノ酸配列
において1〜5個のアミノ酸を置換及び/又は欠失及び/又は挿入することによって得ら
れる変異体である。
【0034】
より最適には、単量体タンパク質は、(1)で定義されたタンパク質のアミノ酸配列に
おいて1〜3個のアミノ酸を置換及び/又は欠失及び/又は挿入することによって得られ
る変異体である。
【0035】
好ましい:上記タンパク質変異体は、(1)で定義された配列番号1の配列と75%を
超えるアミノ酸配列相同性を有する相同変異体である。
【0036】
好ましい:上記タンパク質変異体は、(1)で定義された配列番号1の配列と80%を
超えるアミノ酸配列相同性を有する相同変異体である。
【0037】
より最適には、上記タンパク質変異体は、(1)で定義された配列番号1の配列と90
%を超えるアミノ酸配列相同性を有する相同変異体である。
【0038】
再最適化として、上記タンパク質変異体は、(1)で定義された配列番号1の配列と9
5%を超えるアミノ酸配列相同性を有する相同変異体である。
【0039】
更に好ましくは、上記タンパク質変異体は、(1)で定義された配列番号1の配列と9
8%を超えるアミノ酸配列相同性を有する相同変異体である。
【0040】
最も好ましくは、上記タンパク質変異体は、(1)で定義された配列番号1の配列と9
9%を超えるアミノ酸配列相同性を有する相同変異体である。
【0041】
更に、上記タンパク質は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の4
21位におけるKからLへの変異、又は323位におけるHからWへの変異から得られる
タンパク質変異体である。
【0042】
更に、タンパク質変異体のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号6及び配列番号7に示す。
【0043】
本発明はまた、上記タンパク質をコードする遺伝子も提供する。
【0044】
更に、上記遺伝子のヌクレオチド配列を配列番号2に示す。
【0045】
本発明はまた、タンパク質変異体のコード遺伝子も提供する。ヌクレオチド配列をそれ
ぞれ配列番号8及び配列番号9に示す。
【0046】
同時に、本発明は上記遺伝子を含むベクターも提供する。
【0047】
言うまでもなく、本発明は上記ベクターを含む宿主細胞も提供する。
【0048】
更に、本発明はポリマータンパク質も提供する。ポリマータンパク質は、2つより多く
の上記タンパク質をサブユニットとして含む。
【0049】
更に、多量体タンパク質を構成するサブユニットの数は4〜8である。
【0050】
好ましくは、多量体タンパク質を構成するサブユニットの数は6である。
【0051】
ここで、上記ポリマータンパク質はホモ多量体又はヘテロ多量体である。
【0052】
本発明はまた、導電性細孔を含むナノポア又は膜の調製における上記のタンパク質又は
ポリマータンパク質の使用を提供する。
【0053】
本発明はまた、導電性細孔を含む膜を提供し、これは、(1)膜層;及び(2)膜層に
埋め込まれて、膜貫通電位が印加されたときに細孔を通して電気的に伝導され得る細孔を
形成する、分離された上記ポリマータンパク質を含む。
【0054】
ここで、ナノポア内の膜層は脂質層を含む。
【0055】
ここで、ナノポア内の脂質層は両親媒性脂質を含む。
【0056】
ここで、ナノポア内の脂質層は、平面膜層又はリポソームであり得る。
【0057】
更に、ナノポアに電位が印加されると、導電性細孔膜は細孔を通してDNA又はRNA
を移動させることができる。
【0058】
好ましくは、上記膜層で述べた単層は、PMOXA−PDMS−PMOXAによって形
成され、PMOXAはジメチルジアゾリンであり、PDMSはポリジメチルシロキサンで
ある。
【0059】
さらに、本発明はまた、以下の工程:
(a)乾燥両親媒性脂質を調製する工程;並びに(b)乾燥両親媒性脂質を、水性溶媒
、浸透剤、及び上記のいくつかの分離されたタンパク質を含む溶液に再懸濁する工程であ
って、サブユニットとしてのタンパク質が六量体タンパク質に自己組織化することができ
、これを、特定の条件下で、導電性細孔を含む膜を形成するのに十分な時間、脂質二重層
膜に挿入することができる工程を特徴とする、導電性細孔を含む膜を調製するための方法
を提供する。好ましくは、ポリマータンパク質は六量体である。
【0060】
ここで、上記の両親媒性脂質はリン脂質である。
【0061】
ここで、上記のリン脂質は、以下に列挙されるリン脂質:ホスファチジルコリン、ホス
ファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホ
スファチジルグリセロール、カルジオリピド、1,2−ジフィチル−sn−グリセロール
−3−ホスファチジルコリン、及び1,2−ジフェニル−sn−グリセロール−3−ホス
ファチジルコリンの1以上から選択される。
【0062】
本発明はまた、単分子センサ又はキットの調製におけるナノポアの使用を提供する。
【0063】
本発明はまた、ナノポアを構成要素の1つとして含む単分子センサ又は試薬キットを提
供する。
【0064】
本発明はまた、ナノポア又は導電性細孔を含む膜の調製におけるウシパピローマウイル
ス二本鎖DNAヘリカーゼタンパク質又はその相同タンパク質の用途を提供する。ウシパ
ピローマウイルス二本鎖DNAヘリカーゼタンパク質のアミノ酸配列を配列番号5に示す
。更に、ウシパピローマウイルス二本鎖DNAヘリカーゼタンパク質の相同タンパク質は
、以下の表1から選択される。
【0065】
表1 相同タンパク質
【表1】
【0066】
本発明はまた、導電性細孔を含む膜を提供し、これは、(1)膜層;及び(2)多量体
タンパク質が膜層に埋め込まれて細孔を形成し、バイアス電圧が印加されたとき電気的に
伝導され得る、分離されたウシパピローマウイルス二本鎖DNAヘリカーゼタンパク質又
はその相同タンパク質を含み、ウシパピローマウイルスの二本鎖DNAヘリカーゼタンパ
ク質を配列番号5に示す。
【0067】
ウシパピローマウイルス二本鎖DNAヘリカーゼタンパク質の相同タンパク質は表1か
ら選択される。
【0068】
哺乳動物病原性ウイルス中の重要な成分タンパク質が本発明においてタンパク質工学技
術によって最初に修飾され、その結果、それは核酸及び他の物質のセンシング研究のため
の新規なタンパク質ナノポアを構築するために使用することができる。本発明は、原核生
物発現系によってインビトロでタンパク質を発現及び精製し、同時にそれを人工リン脂質
二重層膜及びポリマー膜に埋め込んでタンパク質ナノポアにする。様々な伝導率緩衝系の
下でのそのコンダクタンス分布、並びに一本鎖DNAと一本鎖RNAの輸送及びそのヘリ
カーゼ活性を検討することによって、ポーリンの特徴とタンパク質のヘリカーゼ活性を組
み合わせた新規ナノポアセンシングシステムを最初に構築し、単腕を有する二本鎖DNA
の巻き戻し及び転位を脂質二重層上で実現した。
【0069】
本発明の有益な効果は以下の通りである:
【0070】
本発明は、ウシパピローマウイルス二本鎖DNAヘリカーゼタンパク質及びその相同タ
ンパク質が、導電性細孔を含む膜を調製するために使用できることを見出し、これは、こ
の分野のための新しい有効な選択を提供する。
【0071】
本発明は、導電性細孔を含む新規で単純な膜として働くポリマーを形成する、E1−1
(306〜577)タンパク質を革新的に発見し、それがリン脂質二重層膜上に安定に存
在し得ること、及びそれが転位核酸の特徴を有することを実証した。
【0072】
本発明は更に、新しいタンパク質E1−2(306〜605)を発見し、それに基づい
て、ヘリカーゼ及びナノポアを結合する必要がある既存のセンシング方法に取って代わる
、ナノポア及びヘリカーゼ統合型センシングシステムを成功裏に構築し、このシステムは
バイオセンサとして使用することができる。現在のφ29とMspA、Hel308とM
spA、並びにφ29とα−HLの結合センシングシステムと比較して、本発明のナノポ
アは、細孔を通して、測定される被検体の捕捉を完了するための単一の酵素を実現するこ
とができ、これは工程を大幅に簡素化する。特に、ナノポアは、二本鎖DNAの巻き戻し
とセンシングの分析、核酸多型の分析、核酸二次構造の分析、核酸長の分析等を同時に実
施することができる。医薬用途に関して、その電位駆動性溶質転位は、適用のための大き
な可能性を有する、リポソーム薬物送達療法(例えば薬物標的化送達)にも適用すること
ができる。
【0073】
本発明は更に、E1−2タンパク質の分子基盤に関する変異研究を実施し、E1−2タ
ンパク質の変異体を得る。人工脂質膜上の突然変異E1−1(306〜577)単量体又
はE1−2(306〜605)単量体によって形成される細孔は、野生型に比べて多くの
利点を有する。具体的には、突然変異単量体から構築された細孔は、野生型よりも負に帯
電した核酸及び他の小分子を捕捉する可能性が高い。更に、突然変異単量体から構築され
た細孔は電流範囲の増加を示し、このため細孔の内腔が野生型のものよりも狭くなり、そ
れによって細孔検出電流がより広範囲で高感度になる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1】アガロースゲル電気泳動による検証のためのベクターとしてpGEX−6P−1を用いて、標的遺伝子の組換えプラスミドE1−1(306〜577)を構築した(pGEX−6P−1は4984bpの長さであり、E1−1遺伝子配列は816bpの長さであったので、消化後に2つのバンドが得られた。それらはそれぞれ4990bp及び822bpであった。)
図2】E1−1(306〜577)タンパク質単量体(57KD)のハイブリッドを分子ふるいに通した後、各ピークの標的タンパク質をポリアクリルアミドゲル電気泳動によって検出した。2番目のチューブをその後の電気生理学的実験に使用した。
図3】E1−1(306〜605)タンパク質単量体(59KD)のハイブリッドを分子ふるいに通した後に、各ピークの標的タンパク質をポリアクリルアミドゲル電気泳動によって検出した。6番目のチューブをその後の電気生理学的実験に使用した。
図4】70mVの膜貫通電圧では、単一細孔の電流は約105pAであり、二重細孔の電流は約200pAである。
図5】単一細孔のコンダクタンス分布は、多数の細孔電流を分析すると約1.3±0.07nSである。
図6】勾配電圧で得られたI−V曲線の勾配は約4.43(4細孔)であるので、単一細孔コンダクタンスは約1.5である。
図7】PBSを導電性緩衝液として使用した場合、タンパク質のコンダクタンス分布は0.2±0.02nSであり、単一細孔の電流は、−70mVの電圧で約23pAである。
図8】50mVの膜貫通電圧で、ssDNA転位は、単一細孔条件下で65pAの阻止電流を生じさせる。
図9】PBS緩衝液中で、細孔中のssRNA転位の阻害は約80%であり、これはKCl緩衝液と同様である。
図10】PBS緩衝液中で、ssRNAによって生じた阻止電流は、−50mVで約8pAであり、転位時間は1〜2ミリ秒である。
図11】80ヌクレオチドの特定の濃度で合成した2つの相補的ssDNAを10倍の濃度勾配に10倍希釈し、定量的Q−PCR分析実験を完了するために隣接濃度の4つのssDNAを選択する。
図12】標準曲線の作成は、Q−PCRから得られたCT値及び上記の一定濃度のssDNAを用いて実施する。
図13】本発明における全ての二本鎖核酸はこの方法によって得られる:二本鎖アニーリングはPCR装置上で行い、変性温度は95℃であり、時間は2分であり、勾配工程は冷却工程(毎分約1度)に設定する。これは1時間20分を要する。得られた核酸産物をポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分析する。
図14】dsDNAの一本の鎖の両端にある蛍光消光基BHQ2で発蛍光団Cy5を消光することによるE1−1(306〜577)のヘリカーゼ活性の検出。
図15】ATP濃度、Mg2+濃度、系の温度等を含む適切な系環境を制御することによって、分子レベルでE1を通る二本鎖DNA輸送の現象を観察した。
図16】本発明者らは、−40mVで多数の巻き戻しdsDNA輸送現象を認めた。巻き戻し工程中に、二本鎖閉塞状態で電圧を+40mVに反転させた。細孔閉塞の現象が継続し、電圧が−50mVに戻ると、巻き戻し現象が再び現れ、巻き戻しが遮断状態から再開することが認められた。
図17】二本鎖の長さが増加すると共にE1−2(306〜605)も巻き戻し時間が増加する:−100mVの電圧、I細孔=−400pA、N=20で、dsDNA鎖の長さが2000bp未満である場合、融解速度は均一に近い。dsDNAの鎖長がより長くなると、E1−2の巻き戻し活性が低下することが認められる。鎖長が5000bpに近づくと、巻き戻し時間は9秒に達する。
図18】実験は、室温(21℃)、37℃、37℃未満、及び37℃超で実施する。温度の上昇と共に、巻き戻しの発生数は明らかに比例して増加することが認められる。温度が37℃を超えると、巻き戻し発生数は再び減少する。
図19】系の温度が低下するにつれて、膜上の巻き戻しが徐々に減少することが分かる。温度が低温から高温に戻ると、巻き戻しが増加することが認められる。
図20】同じ二本鎖DNA基質の場合、−100mVで融解するのに約3秒かかることが分かった。電圧が−20mVになると、融解時間はほぼ30秒である。フィッティングカーブの方向に従って、電圧駆動チェーンはE1−2の巻き戻し方向と同じ方向に移動する。
図21】E1−1(306〜605、K421L、H323W)タンパク質単量体(59KD)及びWT−E1(306〜605)タンパク質を、それぞれポリアクリルアミドゲル電気泳動によって検出した。
図22-23】巨大脂質小胞膜(Talos F200C、スケール90nm)に埋め込まれた突然変異体E1(306〜605、K421L、H323W)の電子顕微鏡写真を図22に示す;巨大脂質小胞膜(Talos F200C、スケール90nm)に埋め込まれた突然変異体E1(306〜605、K421L、H323W)の電子顕微鏡写真を図23に示す。
図24】六量体E1−1(306〜605、K421L、H323W)タンパク質の単一細孔埋め込みは、0.5MのKCl、10mMのHepes(pH7.5)導電性緩衝液中、100mVで約75pAの電流の一過性上昇を誘導する。
図25】ssDNAが突然変異体E1(306〜605、K421L、H323W)の細孔を通過することによって、約78%の遮断及び約0.5ミリ秒の転位時間が誘導される。
図26】巻き戻し電流シグナルは、PBS緩衝液中の人工脂質膜上の突然変異体E1(306〜605、K421L、H323W)の巻き戻し体である、単腕を有するdsDNAの輸送によって誘導される。二本鎖の入口遮断の単腕、巻き戻し工程、一本鎖の閉塞及び開放状態に対応する3つの工程がシグナルに現れる。総巻き戻し時間は270ミリ秒である。
図27-28】巻き戻し電流シグナルは、突然変異体E1(306〜605、K421L、H323W)の巻き戻し作用である非定型のdsDNA輸送によって誘導される。巻き戻しの各工程に対応するシグナル段階は明らかではなく、開口部から次の開口部まで50ミリ秒を要し、これは酵素の活性及びコンダクタンス環境に関連する。
図29-30】50mVのバイアス電圧で、単一細孔によるssDNA転位は約82%の遮断率を生じ、転位時間は1M KCl導電性緩衝液中で約0.4ミリ秒である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
本発明を以下の図面と共に説明する。
【0076】
本発明の目的は、ウシパピローマウイルスのゲノムDNA複製を補助する役割を果たす
、ウシパピローマウイルスの六量体環状ヘリカーゼから始まる。野生型タンパク質は、ウ
イルス複製中に二重らせんのDNAを融解させるために存在するウシパピローマウイルス
のATP依存性ヘリカーゼである。このタンパク質は一本鎖DNAに結合し、ウイルスゲ
ノム複製の開始時に六量体形態でゲノムDNA複製開始部位に付着することが報告されて
いる。ATPのATPアーゼ加水分解によって提供されるエネルギーの条件下で、3’−
5’方向に複製フォークから一本鎖DNAに沿って融解し続ける。
【0077】
野生型ウシパピローマウイルス二本鎖DNAヘリカーゼE1の完全長タンパク質アミノ
酸配列(配列番号5)は、全部で605個のアミノ酸を有する。イタリック体で下線を引
いた部分がE1−1(306〜577)である:
【0078】
【化1】
【0079】
本発明は、ウシパピローマウイルス二本鎖DNAヘリカーゼタンパク質及びその相同タ
ンパク質が、ナノポア及び導電性細孔を含む膜を調製するために使用できることを発見す
る。調製されたナノポア及び導電性細孔を含む膜は、標的試料を特徴付けるための単分子
センサ又はキットの調製に使用することができる。それは、この分野のための新しくい有
効な選択を提供する。
【0080】
ウシパピローマウイルス二本鎖DNAヘリカーゼタンパク質の選択的な情報を以下の表
2に示す:
【0081】
表2 ウシパピローマウイルス二本鎖DNAヘリカーゼタンパク質の情報
【表2】
【0082】
タンパク質の結晶構造及び機能ドメインから、タンパク質の保存領域がアミノ酸1〜1
21及びアミノ酸166〜575に分布していることが分かる。2つの保存領域において
、アミノ酸407〜557はSF3ヘリカーゼ機能ドメインであり、413〜457アミ
ノ酸はATP加水分解酵素のAAA+ファミリーに属し、142〜308アミノ酸はDN
A結合ドメインである。アミノ酸84〜86及び105〜108はそれぞれ核酸ポジショ
ニングシグナル領域である;本発明者らは、類似の構造及び同じ機能(ATP加水分解エ
ネルギーの作用下で二本鎖DNAを巻き戻す)を有する、これらのタンパク質の相同タン
パク質のいくつかを同定した。これらの相同タンパク質も、記載された突然変異を採用し
た後に人工脂質膜上に安定な細孔を形成し、E1−1(306〜577)と同じ膜上核酸
巻き戻し機能を有し、核酸及び小分子の検出のためのツールになると予想される。
【0083】
結晶構造解析によれば、ウシパピローマウイルス二本鎖DNAヘリカーゼタンパク質の
主ならせん状機能ドメインは、308〜577アミノ酸セグメントに存在する。本発明は
、インビトロでE1の切断型ポリペプチドE1−1(306〜577)を構築し、精製す
る。短鎖二本鎖DNA(dsDNA)を使用して、インビトロでその六量体中のATP依
存性ヘリカーゼの活性を特定の条件下で検証する。
【0084】
本発明は更に、ナノポアを調製するために切断型ポリペプチドE1−1(306〜57
7)を利用する。本発明で述べるように、六量体細孔はssDNAの転位を完了させ、一
本鎖DNA(ssDNA)の転位の確率はわずかに異なる。
【0085】
本発明は、更なる研究においてE1のもう1つ別の切断体E1−2(306〜605)
を得る。このタンパク質は、インビトロで様々な導電性緩衝液条件下で人工脂質膜上に安
定なナノポアを成功裏に形成することができる。
【0086】
本発明はまた、パッチクランプ技術を用いて以下の核酸センシングを検討する。構造解
析は、E1−2タンパク質によって形成されたナノポアの内径が約1.3nmであり、膜
領域の長さ及びタンパク質の開口部の直径がそれぞれ約3.2nm及び15nmであるこ
とを示す。
【0087】
実験は、1M、0.3mM KCl、及びPBSの緩衝条件下で、E1(306〜60
5)が人工脂質膜上で六量体に自己集合し、膜上にしっかりと細孔を形成することができ
ることを示す。膜の両側に膜貫通電圧を印加した後、細孔を通過する電流を発生させる。
その後のssDNA輸送実験において、短鎖ssDNAは一連の電流遮断現象を引き起こ
すことができるが、dsDNAを使用して同じ実験を繰り返しても同様の現象を生じさせ
ないことが分かる。膜貫通電流は安定しており、これらの現象はE1の直径と一致する。
dsDNAの直径は約2nmであり、一方E1の内径限界は約1.3nmであるので、平
滑末端を有するdsDNAが膜貫通電圧によって駆動される場合、E1によって捕捉され
る。ほとんどの場合、細孔の50%を超える閉塞による連続的な遮断、又は遮断後の細孔
の即時開口のいずれかが起こる;単腕を有するdsDNAがPBS緩衝液又はPBSと等
しい塩濃度の緩衝液中で膜貫通電圧によって駆動されるE1によって捕捉されたとき、特
定の濃度のATP及びMg2+が添加される。E1自身のヘリカーゼ活性及び生物学的ナ
ノポアとしてのその特性と組み合わせると、E1−2(306〜605)によって形成さ
れた細孔を用いてインビトロで人工脂質膜上での二本鎖巻き戻しが完了されたことが示さ
れる。
【0088】
E1−1(306〜577)及びE1−2(306〜605)の突然変異体もまた、同
じ又は類似の機能を有しており、本発明の保護の範囲内である。
【0089】
E1−1(306〜577)及びE1−2(306〜605)の突然変異体は、その後
のナノポア組み込み及び負に帯電した核酸の捕捉及びssDNA転位のための改善された
特性を示すことが本試験で認められた。具体的には、突然変異体は、驚くほど容易な人工
リポソーム挿入特性、脂質膜上での安定な存在を示し、非特異的な電流変動は、細孔によ
って引き起こされる開放電流のシグナル/ノイズ比の改善によって更に低減される。細孔
のC末端でのssDNAの捕捉効率は更に改善された。核酸転位の過程で、ssDNAに
対する細孔空洞の固有の力は弱められ、転位電流はより迅速で規則的なピークパターンを
示す。突然変異体の別の利点は、突然変異がDNAヘリカーゼとしての細孔それ自体の特
徴に影響を及ぼさないことである。
【0090】
従って、本発明は、配列番号1又は配列番号3に示されるアミノ酸配列の変異体を含む
、突然変異E1−1(306〜577)単量体又は突然変異E1−2(306〜605)
単量体を提供する。ここで、変異体は以下の突然変異の少なくとも1つを含む(以下の各
突然変異部位のビット数は、ウシパピローマウイルス二本鎖DNAヘリカーゼの全長の最
初の位置から計算される。ウシパピローマウイルス二本鎖DNAヘリカーゼの全長アミノ
酸配列を配列番号5に示す):
(a)479位のアミノ酸は、ヒスチジン(H)、リジン(K)、セリン(S)、アス
パラギン(N)、トレオニン(T)である;
(b)489位のアミノ酸は、ヒスチジン(H)、リジン(K)、アスパラギン(N)
、トレオニン(T)及びセリン(S)である;
(c)530位のアミノ酸は、ヒスチジン(H)、リジン(K)、セリン(S)、アス
パラギン(N)、トレオニン(T)である;
(d)529位のアミノ酸は、グルタミン(Q)及びリジン(K)である;
(e)525位のアミノ酸は、ヒスチジン(H)、リジン(K)、セリン(S)、ロイ
シン(L)、トレオニン(T)である;
(f)504位のアミノ酸は、アスパラギン(N)、リジン(K)、アルギニン(R)
、セリン(S)、トレオニン(T)、フェニルアラニン(f)、チロシン(Y)、トリプ
トファン(W)である;
(g)328位のアミノ酸は、グルタミン(Q)、リジン(K)、アルギニン(R)、
フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)である;
(h)360位のアミノ酸は、アスパラギン(N)、リジン(K)、アルギニン(R)
、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)である;
(i)322位のアミノ酸は、アスパラギン(N)、ロイシン(L)、イソロイシン(
I)、バリン(V)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、グルタミン(Q
)である;
(j)372位のアミノ酸は、グルタミン(Q)、ロイシン(L)、イソロイシン(I
)、バリン(V)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、
アスパラギン(N)である;
(k)342位のアミノ酸は、アスパラギン(N)、ロイシン(L)、イソロイシン(
I)、バリン(V)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、グルタミン(Q
)である;
(l)334位のアミノ酸は、アスパラギン(N)、ロイシン(l)、イソロイシン(
I)、バリン(V)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、グルタミン(Q
)である;
(m)392位のアミノ酸は、アスパラギン(N)、ロイシン(L)、イソロイシン(
I)、バリン(V)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、グルタミン(Q
)である;
(n)408位のアミノ酸は、アスパラギン(N)、ロイシン(L)、イソロイシン(
I)、バリン(V)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、グルタミン(Q
)である;
(o)396位のアミノ酸は、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、
フェニルアラニン(F)及びトリプトファン(W)、アラニン(A)及びグリシン(G)
である;
(p)570位のアミノ酸は、バリン(V)、フェニルアラニン(F)、トリプトファ
ン(W)、アラニン(A)、グリシン(G)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)であ
る;
(q)574位のアミノ酸は、トリプトファン(W)、アラニン(A)、グリシン(G
)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)及びフェニルアラニン(F)で
ある;
(r)417位のアミノ酸は、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、
フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、アラニン(A)及びグリシン(G)で
ある;
(s)421位のアミノ酸は、バリン(V)、フェニルアラニン(F)、トリプトファ
ン(W)、アラニン(A)、グリシン(G)、ロイシン(L)及びイソロイシン(I)で
ある;
(t)383位のアミノ酸は、バリン(V)、フェニルアラニン(F)、トリプトファ
ン(W)、アラニン(A)、グリシン(G)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)であ
る;
(u)387位のアミノ酸は、ヒスチジン(H)、フェニルアラニン(F)、トリプト
ファン(W)である;
(v)323位のアミノ酸は、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(v)、
フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、アラニン(A)、グリシン(G)であ
る;
(w)324位のアミノ酸は、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)
及びバリン(V)である;
(x)565位のアミノ酸は、トレオニン(T)、セリン(S)及びチロシン(Y)で
ある;
(y)426位のアミノ酸は、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、
フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、アラニン(A)、グリシン(G)であ
る。
【0091】
本発明は、突然変異E1−1(306〜577)単量体又は突然変異E1−2(306
〜605)単量体を提供する。上記のE1−1(306〜577)変異体又はE1−2(
306〜605)変異体単量体は、本発明において導電性膜細孔を形成するために使用す
ることができる。突然変異E1−1(306〜577)単量体又はE1−2(306〜6
05)単量体は、その配列が野生型E1−1(306〜577)単量体又はE1−2(3
06〜605)単量体と異なる単量体であり、細孔を形成する能力を保持する。細孔を形
成する突然変異単量体の能力を確認するために使用される方法は、本発明で述べる方法と
一致する。
【0092】
突然変異E1−1(306〜577)単量体又はE1−2(306−605)単量体は
、人工脂質膜上に細孔を形成することにおいて野生型単量体よりも優れた多数の利点を有
する。具体的には、突然変異単量体によって構築された細孔は、野生型よりも核酸及び他
の負に帯電した小分子を捕捉する可能性が高く、更に電流範囲の増加を示し、そのため細
孔の内部空洞は野生型より狭くなるので、細孔内の電流検出がより広範囲で高感度である
【0093】
更に、突然変異E1−1(306〜577)又はE1−2(306〜605)単量体が
人工脂質膜上に細孔を形成する場合、細孔の膜貫通領域は膜上に安定に存在する可能性が
より高く、開放電流のシグナル/ノイズ比は野生型のものよりも高い。驚くべきことに、
核酸が突然変異E1−1(306〜577)又はE1−2(306〜605)単量体によ
って構築されたいくつかの細孔を通って移動する場合、電流は更に減少する。これは、こ
の細孔を使用して、核酸が細孔を通って移動するときの核酸配列と電流下降プラットフォ
ームとの間の関係を同定することを可能にし、更にこの変異体細孔を将来の核酸配列決定
に適用する可能性をもたらす。突然変異体の核酸読み取り特性の改善は、3つの主要な機
構を通して、即ち以下の変化:
1.空間(変異アミノ酸残基の増減);
2.電荷(例えば、+ev電荷を誘導して核酸とアミノ酸との間の相互作用を増強する
);
3.非共有結合(例えば、水素結合を有する特定のヌクレオチドと結合することができ
るアミノ酸を誘導する);
を通して実現され、これら3つの機構のいずれか又は複数が、将来本発明の細孔がヌク
レオチド読み取り特性を有する理由となり得る。
【0094】
本発明におけるタンパク質の部位突然変異は主に以下の理由に基づく:
野生型E1−1(306〜577)又はE1−2(306〜605)では、N末端はよ
り狭い末端で開口し、C末端はより広い末端で開口しており、六量体は標準的なキノコ構
造を形成する。多数のアルカリ性アミノ酸が形成細孔の内部空洞に分布しており、これが
ssDNAの負のリン酸基と結合する。従って、野生型E1−1(306〜577)又は
E1−2(306〜605)単量体を人工脂質膜に挿入して、イオンが自由に通過できる
導電性細孔を形成すると、長期間の印加膜貫通電圧で細孔が脂質膜から落下することが認
められた。記録された開放電流ベースラインは変動し、測定されるべき分子が細孔を通過
しない場合、小さな非特異的ピーク電流が時として出現する。
【0095】
本発明者らは、上記の欠点を改善するために突然変異E1−1(306〜577)又は
E1−2(306−605)単量体を使用する。例えば、細孔のC末端の負に帯電した核
酸の捕捉効率を高めるために、479及び489位のアスパラギン酸(D)のようなより
広いC末端のいくつかの酸性アミノ酸をヒスチジン(H)又はリジン(K)に変異させる
。アスパラギン(N)に変異させると、C末端開口部における負に帯電したアミノ酸の密
度が減少し、核酸(主に)又は測定すべき負に帯電した物質に対する静電拮抗作用がそれ
に応じて減少し、細孔の捕捉率を間接的に増加させる。
【0096】
別の例は、504位のアスパラギン酸(D)、328位のグルタミン酸(E)等の細孔
空洞内のいくつかの酸性アミノ酸をアスパラギン(N)、リジン(K)、アルギニン(R
)、グルタミン(Q)等に変異させることである。一方で、酸性アミノ酸(D、E)を中
性アミノ酸に変異させると、核酸転位中の静電拮抗作用を有意に減少させることができ、
他方で、中性アミノ酸が大きな立体障害を有するフェニルアラニン(F)、トリプトファ
ン(W)、又はチロシン(Y)である場合、形成された空洞内のより大きな空間的位置に
起因して、空洞内の非制限部位の直径が有意に減少する。同時に、置換された空洞の内部
のベンゼン環の密度が増加すると、π電子が蓄積してアミノ酸をより密接に整列させ、空
洞の内部収縮が明らかになる。言うまでもなく、これら2つの減少は検出における両刃の
剣である。中性アミノ酸がセリン(S)又はトレオニン(T)等のヒドロキシル基である
場合、ヒドロキシル酸素は水素を形成することによってヌクレオチドと結合することがで
きるので、核酸はC末端から空洞に入って、より緩やかに転位することができる。この機
構は、その後の核酸配列決定の開発においてより有益な価値を有するであろう。
【0097】
膜貫通領域内の322、342、334位のアスパラギン酸(D)、372位のグルタ
ミン酸(E)、396、383位のリジン(K)、323位のヒスチジン(H)、及び5
74位のアルギニン(R)を中性アミノ酸ロイシン(L)、グリシン(G)、アラニン(
A)等に変異させると、細孔の膜貫通領域をより容易且つ安定に長い脂肪酸鎖からなる脂
質二重層の疎水性層に埋め込むことを可能にし、従って開放電流ベースライン変動及び細
孔挿入の不安定性によって引き起こされる低周波ノイズを大幅に減弱させる。特定の突然
変異部位を以下の表3に示す:
【0098】
表3 突然変異部位
【表3】
【実施例】
【0099】
以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
【0100】
実施例1;E1タンパク質及びその突然変異体組換えベクターの構築及び発現精製
【0101】
切断型E1−1(306〜577)のアミノ酸配列(配列番号3):
LQTEKFDFGTMVQWAYDHKYAEESKIAYEYALAAGSDSN
ARAFLATNSQAKHVKDCATMVRHYLRAETQALSMPAYIKA
RCKLATGEGSWKSILTFFNYQNIELITFINALKLWLKGIP
KKNCLAFIGPPNTGKSMLCNSLIHFLGGSVLSFANHKSHF
WLASLADTRAALVDDATHACWRYFDTYLRNALDGYPVSID
RKHKAAVQIKAPPLLVTSNIDVQAEDRYLYLHSRVQTFRF
EQPCTDESGEQPFNITDADWKSFFVRLWGRLDL。
【0102】
切断型E1−1(306〜577)のコード遺伝子配列(配列番号4):
Ttgcagaccgagaaattcgacttcggaactatggtgcaa
tgggcctatgatcacaaatatgctgaggagtctaaaatag
cctatgaatatgctttggctgcaggatctgatagcaatgc
acgggcttttttagcaactaacagccaagctaagcatgtg
aaggactgtgcaactatggtaagacactatctaagagctg
aaacacaagcattaagcatgcctgcatatattaaagctag
gtgcaagctggcaactggggaaggaagctggaagtctatc
ctaactttttttaactatcagaatattgaattaattacct
ttattaatgctttaaagctctggctaaaaggaattccaaa
aaaaaactgtttagcatttattggccctccaaacacaggc
aagtctatgctctgcaactcattaattcattttttgggtg
gtagtgttttatcttttgccaaccataaaagtcacttttg
gcttgcttccctagcagatactagagctgctttagtagat
gatgctactcatgcttgctggaggtactttgacacatacc
tcagaaatgcattggatggctaccctgtcagtattgatag
aaaacacaaagcagcggttcaaattaaagctccacccctc
ctggtaaccagtaatattgatgtgcaggcagaggacagat
atttgtacttgcatagtcgggtgcaaacctttcgctttga
gcagccatgcacagatgaatcgggtgagcaaccttttaat
attactgatgcagattggaaatctttttttgtaaggttat
gggggcgtttagacctg。
【0103】
ベクタープラスミド:pGEX−6p−1。
二重消化:BamH I、Xho I
【0104】
プライマー(小文字は制限部位である):
順方向プライマー:配列番号10;
CGggatccTTGCAGACCGAGAAAT。
逆方向プライマー:配列番号11
CCGctcgagTTAATGATGATGGTGATGATGCAGGTCTAA
ACGCCCC。
【0105】
切断型E1−2(306〜605)のアミノ酸配列(配列番号1):
LQTEKFDFGTMVQWAYDHKYAEESKIAYEYALAAGSDSN
ARAFLATNSQAKHVKDCAMVRHYLRAETQALSMPAYIKAR
CKLATGEGSWKSILTFFNYQNIELITFINALKLWLKGIPK
KNCLAFIGPPNTGKSMLCNSLIHFLGGSVLSFANHKSHFW
LASLADTRAALVDDATHACWRYFDTYLRNALDGYPVSIDR
KHKAAVQIKAPPLLVTSNIDVQAEDRYLYLHSRVQTFRFE
QPCTDESGEQPFNITDADWKSFFVRLWGRLDLIDEEEDSE
EDGDSMRTFTCSARN。
【0106】
切断型E1−2(306〜605)のコード遺伝子配列(配列番号2):
ttgcagaccgagaaattcgacttcggaactatggtgcaa
tgggcctatgatcacaaatatgctgaagagtctaaaatag
cctatgaatatgctttggctgcaggatctgatagcaatgc
acgggcttttttagcaactaacagccaagctaagcatgtg
aaggactgtgcaactatggtaagacactatctaagagctg
aaacacaagcattaagcatgcctgcatatattaaagctag
gtgcaagctggcaactggggaaggaagctggaagtctatt
ctaactttttttaattatcagaatattgaattaattacct
ttattaatgctttaaagctctggctaaaaggaattccaaa
aaaaaactgtttagcatttattggccctccaaacacaggc
aagtctatgctctgcaactcattaattcattttttgggtg
gtagtgttttatcttttgccaaccataaaagtcacttttg
gcttgcttccctagcagatactagagctgctttagtagat
gatgctactcatgcttgctggaggtactttgacacatacc
tcagaaatgcattggatggctaccctgtcagtattgatag
aaaacacaaagcagcggttcaaattaaagctccacccctc
ctggtaaccagtaatattgatgtgcaggcagaggacagat
atttgtacttgcatagtcgggtgcaaacctttcgctttga
gcagccatgcacagatgaatcgggtgagcaaccttttaat
attactgatgcagattggaaatctttttttgtaaggttat
gggggcgtttagacctgattgacgaggaggaggatagtga
agaggatggagacagcatgcgaacgtttacatgtagcgca
agaaacacaaatgcagttgattga。
【0107】
ベクタープラスミド:pGEX−6p−1。
二重消化:BamH I、Xho I
【0108】
プライマー(小文字は制限部位である):
順方向プライマー1:配列番号12
AGTTCTGTTCCAGGGGCCCCTGggatccTTGCAGACCGA
GAAATTCGACTTCG。
逆方向プライマー1:配列番号13
TCAGTCAGTCACGATGCGGCCGctcgagTTAATCAACTG
CATTTGTGTTTCTTGCGCTACATGTAAACGTTCGCA。
【0109】
E1−2突然変異体1(K421L)のアミノ酸配列を配列番号6に示す:
LQTEKFDFGTMVQWAYDHKYAEESKIAYEYALAAGSDSN
ARAFLATNSQAKHVKDCATMVRHYLRAETQALSMPAYIKA
RCKLATGEGSWKSILTFFNYQNIELITFINALKLWLLGIP
KKNCLAFIGPPNTGKSMLCNSLIHFLGGSVLSFANHKSHF
WLASLADTRAALVDDATHACWRYFDTYLRNALDGYPVSID
RKHKAAVQIKAPPLLVTSNIDVQAEDRYLYLHSRVQTFRF
EQPCTDESGEQPFNITDADWKSFFVRLWGRLDLIDEEEDS
EEDGDSMRTFTCSARNTNAVD。
【0110】
E1−2突然変異体1のヌクレオチド配列を配列番号8に示す:
GGATCCTTGCAGACCGAGAAATTCGACTTCGGAACTATG
GTGCAATGGGCCTATGATCACAAATATGCTGAGGAGTCTA
AAATAGCCTATGAATATGCTTTGGCTGCAGGATCTGATAG
CAATGCACGGGCTTTTTTAGCAACTAACAGCCAAGCTAAG
CATGTGAAGGACTGTGCAACTATGGTAAGACACTATCTAA
GAGCTGAAACACAAGCATTAAGCATGCCTGCATATATTAA
AGCTAGGTGCAAGCTGGCAACTGGGGAAGGAAGCTGGAAG
TCTATCCTAACTTTTTTTAACTATCAGAATATTGAATTAA
TTACCTTTATTAATGCTTTAAAGCTCTGGCTACTGGGAAT
TCCAAAAAAAAACTGTTTAGCATTTATTGGCCCTCCAAAC
ACAGGCAAGTCTATGCTCTGCAACTCATTAATTCATTTTT
TGGGTGGTAGTGTTTTATCTTTTGCCAACCATAAAAGTCA
CTTTTGGCTTGCTTCCCTAGCAGATACTAGAGCTGCTTTA
GTAGATGATGCTACTCATGCTTGCTGGAGGTACTTTGACA
CATACCTCAGAAATGCATTGGATGGCTACCCTGTCAGTAT
TGATAGAAAACACAAAGCAGCGGTTCAAATTAAAGCTCCA
CCCCTCCTGGTAACCAGTAATATTGATGTGCAGGCAGAGG
ACAGATATTTGTACTTGCATAGTCGGGTGCAAACCTTTCG
CTTTGAGCAGCCATGCACAGATGAATCGGGTGAGCAACCT
TTTAATATTACTGATGCAGATTGGAAATCTTTTTTTGTAA
GGTTATGGGGGCGTTTAGACCTGATTGACGAGGAGGAGGA
TAGTGAAGAGGATGGAGACAGCATGCGAACGTTTACATGT
AGCGCAAGAAACACAAATGCAGTTGATTAACTCGAG。
【0111】
E1−2突然変異体2(H323W)のアミノ酸配列を配列番号7に示す:
LQTEKFDFGTMVQWAYDWKYAEESKIAYEYALAAGSDSN
ARAFLATNSQAKHVKDCATMVRHYLRAETQALSMPAYIKA
RCKLATGEGSWKSILTFFNYQNIELITFINALKLWLLGIP
KKNCLAFIGPPNTGKSMLCNSLIHFLGGSVLSFANHKSHF
WLASLADTRAALVDDATHACWRYFDTYLRNALDGYPVSID
RKHKAAVQIKAPPLLVTSNIDVQAEDRYLYLHSRVQTFRF
EQPCTDESGEQPFNITDADWKSFFVRLWGRLDLIDEEEDS
EEDGDSMRTFTCSARNTNAVD。
【0112】
E1−2突然変異体2のヌクレオチド配列を配列番号9に示す:
GGATCCTTGCAGACCGAGAAATTCGACTTCGGAACTATG
GTGCAATGGGCCTATGATTGGAAATATGCTGAGGAGTCTA
AAATAGCCTATGAATATGCTTTGGCTGCAGGATCTGATAG
CAATGCACGGGCTTTTTTAGCAACTAACAGCCAAGCTAAG
CATGTGAAGGACTGTGCAACTATGGTAAGACACTATCTAA
GAGCTGAAACACAAGCATTAAGCATGCCTGCATATATTAA
AGCTAGGTGCAAGCTGGCAACTGGGGAAGGAAGCTGGAAG
TCTATCCTAACTTTTTTTAACTATCAGAATATTGAATTAA
TTACCTTTATTAATGCTTTAAAGCTCTGGCTAGGAATTCC
AAAAAAAAACTGTTTAGCATTTATTGGCCCTCCAAACACA
GGCAAGTCTATGCTCTGCAACTCATTAATTCATTTTTTGG
GTGGTAGTGTTTTATCTTTTGCCAACCATAAAAGTCACTT
TTGGCTTGCTTCCCTAGCAGATACTAGAGCTGCTTTAGTA
GATGATGCTACTCATGCTTGCTGGAGGTACTTTGACACAT
ACCTCAGAAATGCATTGGATGGCTACCCTGTCAGTATTGA
TAGAAAACACAAAGCAGCGGTTCAAATTAAAGCTCCACCC
CTCCTGGTAACCAGTAATATTGATGTGCAGGCAGAGGACA
GATATTTGTACTTGCATAGTCGGGTGCAAACCTTTCGCTT
TGAGCAGCCATGCACAGATGAATCGGGTGAGCAACCTTTT
AATATTACTGATGCAGATTGGAAATCTTTTTTTGTAAGGT
TATGGGGGCGTTTAGACCTGATTGACGAGGAGGAGGATAG
TGAAGAGGATGGAGACAGCATGCGAACGTTTACATGTAGC
GCAAGAAACACAAATGCAGTTGATTAACTCGAG。
【0113】
突然変異体組換えプラスミドを構築し、変異ベクターをPCRクローニングによってベ
クタープラスミドpGEX−6P−1に挿入し、二重制限部位はそれぞれ5’BamhI
及び3’XhoIである。
【0114】
順方向プライマー2:配列番号14
AGTTCTGTTCCAGGGGCCCCTGggatccTTGCAGACCGA
GAAATTCGACTTCG。
【0115】
逆方向プライマー2:配列番号15
TCAGTCAGTCACGATGCGGCCGctcgagTTAATCAACTG
CATTTGTGTTTCTTGCGCTACATGTAAACGTTCGCA。
【0116】
全ウシパピローマウイルスゲノムを上記のPCRプライマーを用いて増幅し(上述した
ように)、次いでベクターpGEX−6p−1及び得られたPCR産物を2つの制限酵素
BamH I及びXho Iで消化した。ベクターは、それぞれBamH I及びXho
Iの2つの制限部位を含むGSTタグ親和性を有していた。最後に、二重消化した標的
遺伝子断片及びプラスミドベクターをT4リガーゼによって環状組換えプラスミドに再連
結した。
【0117】
組換えプラスミドの検出は、プラスミドを大腸菌(E.coli)DH5αに形質転換
した後、組換えベクターのアンピシリン耐性を用いて組換えプラスミドが成功裏に形質転
換されたか否かを予備スクリーニングすることである。コロニーPCRの後、核酸ゲル電
気泳動を用いて標的断片がベクターに連結されているかどうかを予備的に確認した(図1
に示すように、pGEX−6p−1は4984bp長であり、E1−1遺伝子配列は81
6bp長であるため、消化後にそれぞれ4990bp及び822bpの2つのバンドが得
られる)。次に、遺伝子配列決定によって得られた配列決定結果を用いて、組換えが完了
し、突然変異が生じていないかどうかを確認した。
【0118】
E1タンパク質の特異的発現及び精製:組換えプラスミドpGEX−6p−1−N−G
STをタンパク質発現のために大腸菌発現株BL21に形質転換した。上記の大腸菌を、
50μg/mLのアンピシリンを含む11mLのLB培地中、37℃及び220rpmで
一晩培養した。その後、50μg/mlのアンピシリンを含む1Lの新鮮LB培地に10
mLの培養液を注入し、細菌濃度が0.6〜0.8単位(OD600)に達したときに0
.5mM(最終濃度)のIPTG(イソプロピルβ−D−チオガラクトシド)を添加して
誘導した。16℃で16時間誘導した後、細菌を4000rpmで20分間遠心分離する
ことによって回収し、懸濁液をタンパク質緩衝液20mMトリス−HCl(pH7.3)
、200mM NaClに再懸濁した。細菌を高圧で4回破砕した後、上清を16000
rpmで40分間遠心分離することによって回収した。次いで、上清を0.45μm細孔
径のフィルタで濾過し、標的タンパク質をGSTアフィニティクロマトグラフィによって
精製すした。ハイブリッドタンパク質が溶出した後、標的タンパク質をPSP酵素カラム
で2時間消化し、次いで標的タンパク質をタンパク質緩衝液で溶出した。
【0119】
GSTアフィニティクロマトグラフィによる精製後、標的タンパク質の純度は高い。最
後に、分子ふるいを使用してポリマーと単量体を分離し、最初のピークタンパク質が純粋
なE1である。同時に、分子ふるいのピーク位置の分析から、得られたE1は六量体の形
態であり、野生型E1は非常に類似している。予想されたサイズを満たすために残りのタ
ンパク質試料をポリアクリルアミドゲル電気泳動によって試験した。図2及び3は、それ
ぞれE1−1及びE1−2 57の分子ふるいピークのポリアクリルアミドゲル電気泳動
パターンである。対応する単量体分子量はそれぞれ57KD及び59KDである。2番目
のチューブ(E1−1)及び6番目のチューブ(E1−2)をその後の電気生理学的実験
に使用した。
【0120】
2つの突然変異体の遺伝子クローニング及び発現精製のための方法は野生型E1(30
6〜605)を参照し、分子ふるい収集後に最初に出現したピークチューブが突然変異体
E1である。残りのタンパク質試料をWT−E1(306〜605)と比較してポリアク
リルアミドゲル電気泳動によって試験し、1つのアミノ酸のみが突然変異しているので、
突然変異体の分子量はWT−E1(306〜605)タンパク質に非常に近い。更に、そ
れらは、図21に示すように、ゲル電気泳動ストリップ上でほぼ同じ位置にある。
【0121】
実施例2;タンパク質切断及びそれらの突然変異体の蛍光標識及び膜融合実験
蛍光標識切断型E1−2(306〜605)タンパク質:使用した材料は、フッ素標識
フルオレセインイソチオシアネート(FITC)コンジュゲートキット(Sigma,S
t.Louis,Missouri)である。キットの説明書に従って、過剰のFITC
をカラムクロマトグラフィによって除去し、FITC結合E1をタンパク質緩衝液(20
mMトリス−HCl(pH7.3)、200mM NaCl)で溶出した。SDS−PA
GEを用いて確認されたFITC標識E1(306〜605)(図省略、SDS−PAG
E上のFITC標識E1−2の位置は、非標識E1−2の位置よりわずかに高い)。
【0122】
切断体E1−2(306〜605)を含む小胞(SUV)の調製:E1タンパク質を含
む約0.1μmのサイズの小胞を調製するために、1mg/mLのDOPCをバイアルに
添加した。クロロホルムを窒素ブロー乾燥した後、タンパク質E1を含む水溶液(濃度約
0.5mg/ml)を添加し、次いで脂質膜を水和して懸濁液を作製し、この懸濁液を、
ポリカーボネート(PC)フィルム(直径100nm)を通してMini squeez
er(AVANTI Co.Ltd,Americaから購入)によって更に押出して、
タンパク質SUVを生成した。得られたSUVは、短期間は4℃で、長期間は−80℃で
保存することができる;蛍光標識されていないSUVのみが、光学顕微鏡下で同じサイズ
の小胞と類似の形態を示す。(得られたMini squeezerによるタンパク質S
UVは良好な均一性を有する)。
【0123】
切断型E1−2(306〜605)を含む巨大小胞を調製する手順:一方、蛍光標識さ
れた巨大小胞も調製することができた。茶色の瓶の中で1mlのDOPC(1mg/ml
)又は1mlのDPHPC(1mg/ml)と1%のTexas Red(Thermo
fisher Co.Ltd,Americaから購入)を混合した;次にこの手順では
、クロロホルムを窒素で乾燥するか、又はロータリーエバポレータでクロロホルムを揮発
させた;次に、上記工程から得られたDOPC又はDPHPCを真空乾燥機に一晩入れた
;E1タンパク質を挿入したハイブリッド巨大単層小胞(GUV)を得るために、E1を
含む200〜300μmのスクロース溶液(濃度約0.5mg/ml)を添加して脂質分
子層を水和した。
【0124】
Texas Redで標識されたこれらの小胞は蛍光顕微鏡で観察することができる。
小胞が埋め込まれた蛍光標識タンパク質複合体を調製するために、前の手順から得られた
FITC標識E1−2をここで使用することができる。蛍光顕微鏡でGUVを観察した結
果は、ロータリーエバポレータによって得られるより大きな直径を有する小胞のサイズが
スクイーザによって調製されるSUVのものほど均一ではないことを示す。いくつかの直
径50μmを超える小胞タンパク質複合体が人工膜トレイルを伴う後者のナノポア挿入に
おいて見出され、これらの小胞は二重層脂質膜を容易に破裂させる(人工脂質膜は、ポリ
アセタール樹脂からなる直径50μmの穴の表面に形成される、Warner Co.L
td,Americaから購入)。
【0125】
同じ方法を用いて切断型E1−2の突然変異体について膜融合実験を行い、結果は、W
T−E1(306〜605)と一致して、このタンパク質も人工脂質二重層及びPMOX
A−PDMS−PMOXAトリブロックコポリマーに安定的に挿入できることを示す。実
験の手順はWT−E1(306〜605)と同様であり、突然変異体E1が挿入されたG
UVが得られたとき、膜上に埋め込まれたタンパク質がCryo−EMによって観察され
図22及び図23に示すように、ポーリンは膜上に安定して存在することができる。
【0126】
二重標識した小胞埋め込みタンパク質複合体(Texas red標識小胞として赤色
、及びFITC標識E1−2タンパク質として緑色)を蛍光顕微鏡下で観察し、いくつか
の標識E1−2タンパク質が小胞膜上で不規則な位置を示し、予想されるように「膜貫通
領域」の一部がリン脂質二重層に挿入されて細孔を形成することが認められる。この結果
はまた、導電性緩衝液中で、E1−2が電圧によって駆動される人工脂質膜上に自発的に
凝集し、予想される方向に膜内に挿入されて導電性細孔を形成できることを証明する。
【0127】
実施例3;E1タンパク質及びその突然変異体の電気生理学的実験
電気生理学的測定:この実施例で使用される機器は、増幅器とデジタル−アナログ変換
器(DAC)とを組み込んだHEKA EPC−10 USBであり、これは、一対の銀
/塩化銀電極(Ag/AgCl)である、圧力(電圧クランプ)電極と参照電極と呼ばれ
る2つの電極を有する。この機器を使用して、リン脂質二重層の両側を横切る膜貫通電流
を測定した。ここでの試料周波数設定は2kHzであり、ローパスフィルタの周波数は1
kHzである;ソフトウェアPatch−masterを使用してデータを収集し、Cl
ampfitを利用して収集したデータを分析した。
【0128】
二重層脂質膜(BLM)の製造:水平標準BLMファブリケータ及び垂直標準BLMチ
ャンバ(BCH−13A、Warner.Co.Ltd,Americaから購入;直径
50μmの穴を含むカップは特注品である)を使用してBLMを製造した。80〜240
μmの開口部を有する薄いテフロン(登録商標)フィルム(Eastern Sci.L
LCからのTP−02)及び50μmの開口部を有するポリホルムアルデヒド樹脂カップ
を、それぞれBLMファブリケータ及びBLMチャンバをシス区画(作業容積250μL
)とトランス区画(作業容積2.5mL)に分離するための仕切りとして使用した。確実
に開口部の縁全体を完全にコーティングするために、開口部に0.5μL、1mg/ml
のDOPC溶液又はDPHPC溶液(溶媒はn−ヘキサンである)を2回予め塗布した後
、2つの区画に導電性緩衝液(5mM Hepes/pH7.5、様々な濃度のKCl溶
液、又はPBS溶液を含む)で満たす;次に、50μmの開口部の近くに25mg/ml
のDOPC溶液又はDPHPC溶液(溶媒はn−ヘキサンである)を添加すると、電流が
10.2nAから0pAに低下することが分かる。
【0129】
E1のコンダクタンス分布:
先に調製した小胞−タンパク質複合体は、水平ptfe膜のマイクロポア(上述したよ
うな)又は垂直ポリホルムアルデヒド樹脂マイクロポア上にE1−2タンパク質ナノポア
構造が埋め込まれたBLMを形成する。
【0130】
先に調製した小胞/E1複合体のストック溶液を、使用前にBLM実験用に10〜20
倍に希釈した。E1を挿入するために、約2μLの希釈リポソーム溶液をシスチャンバに
充填した;他の簡単な方法を以下に述べる:ピペット上部のリポソームを含む気泡を使用
してシスチャンバの開口部を静かに掃引し、細孔が自然に形成される。E1タンパク質の
コンダクタンスは2つの方法で測定される:第1の方法は、一定の膜貫通電圧(例えば−
70mV)下で、複数の細孔が埋め込まれ、落下したときの電流の急激な変化を測定し、
次いで細孔のコンダクタンス分布を計算するためにデータをカウントする。第2の方法は
、膜の両側に走査電圧(例えば−120mV〜120mV)を印加し、電流及び電圧曲線
の速度を計算することによって細孔コンダクタンスを計算することである。
【0131】
本発明では、多数のデータをカウントし、その結果は、5mMのHEPES及び1Mの
KCl中の単一細孔のコンダクタンスが約1.34±0.07nSであることを実証する
図5に示すように);+70mVのトランス電圧が与えられたとき(図4に示すように
)、単一細孔電流レベル及び2細孔電流レベルはそれぞれ約105pA及び200pAで
ある。異なる傾斜電圧の下でI−V曲線のプロットが得られ、単一細孔コンダクタンスは
約1.5nSと測定される(図6に示すように)。5mM HEPES及び0.5M K
Clのコンダクタンス緩衝液の条件下で、E1の測定された単一コンダクタンスは約0.
78nsであり、50mVの膜貫通電圧で、人工脂質膜上に形成された単一E1細孔の電
流は約40pAであり、二重細孔の電流は約85pAである。I−V曲線下で、測定され
た単一細孔コンダクタンスは約1.57/2nSである。コンダクタンス緩衝液としての
PBS中で、タンパク質のコンダクタンスは0.2±0.02nSであり(図7に示すよ
うに)、単一細孔の電流は約−70mVの電圧下で約23pAである。
【0132】
突然変異体E1について同じ試験を行い、その結果は、0.5M KCl、10Mm
HEPES(pH7.5)の下で、+100mVのバイアス電圧を与えた場合、単一細孔
埋め込みが約75pAの電流上昇工程を引き起こすことを示し、図24に示すように、多
数の単一細孔埋め込み及び落下シグナルをカウントした後、−200〜200mVの走査
電圧の下で、単一細孔コンダクタンス分布はWT−E1(306〜605)細孔のものと
類似しており、両方とも約1.3±0.07nSであることが分かる。更に、走査電圧で
は、電圧に対する電流の散乱線形適合結果は良好であり、分散は低い。
【0133】
実施例4;E1タンパク質及びその突然変異体の細孔の安定性に関する試験
E1−2の細孔の安定性に関する試験:本発明では、リン脂質膜上のE1−2及びE1
の突然変異体の細孔の安定性及び高電圧ゲート現象をそれぞれ正及び負の電圧下で試験し
た。結果は以下を示した:正の300mV及び負の300mVの下でE1細孔に関してゲ
ート現象は見られず、E1細孔は、高電圧を与えられたときリン脂質膜上に安定に存在す
ることができた。同時に、コンダクタンス緩衝液(E1タンパク質を保存するために使用
される)中のグリセロールが多すぎると、膜に埋め込まれたタンパク質複合体が異常に不
安定になり、タンパク質が極めて容易に膜から脱落する又は膜が直接破裂することが認め
られる。
【0134】
高電圧でのE1タンパク質突然変異体(K421L、H323W)の安定性実験では、
−300〜300mVの走査電圧を採用した。より高い電圧(±300)で、細孔は膜上
で安定なままであり、コンダクタンス分布は有意に変化しないことが認められ、突然変異
体E1(K421L、H323W)もWT−E1(306〜605)のように安定なコン
ダクタンス特性を有する。
【0135】
実施例5;E1タンパク質及びその突然変異体の一本鎖DNA/RNA転位試験
この実施例で使用されるssDNAは48ntであり、Takara company
から購入され、その詳細な配列は以下のように表される;電解質はHEPES/1M K
Clである;一般に、この条件下で核酸輸送を達成するための2つの方法がある。
【0136】
方法1:E1タンパク質をBLMに挿入するときに、電圧を0mVに変更し、シスに輸
送されるべき核酸を添加する;方法2:輸送されるべき核酸をコンダクタンス緩衝液に予
め混合し、シス及びトランスを同じ量で混合する。DNAの転位は主に印加された膜貫通
電圧に依存する。特別な指示がない限り、この実験では方法1をssDNAの転位に採用
し、転位系におけるssDNAの濃度は100nM/Lである。
【0137】
48ntのssDNAの場合、単一細孔が膜に埋め込まれており、転位によって引き起
こされる電流遮断は約65ピコアンペアである(膜貫通電圧は約50mVである)(図8
に示すように)。このセグメントにおける核酸の転位によって引き起こされる電流遮断割
合は約82%である(Ib/I、Ibは核酸転位によって引き起こされる電流遮断であり
、単位はpAである;Iはリン脂質二重層への単一細孔タンパク質の挿入によって引き起
こされる電流変化であり、単位はpAである);ssDNA転位の滞留時間は2ミリ秒で
ある(図29〜30に示すように)。PBS中では、ssDNA転位実験は、+100m
Vの膜貫通電圧下で、24ntのssDNAが約80%の遮断及び1〜2ミリ秒の滞留時
間を誘導するという同様の結果を示す(図9〜10に示すように)。
【0138】
一方、ssRNA転位実験は、上述したssDNA転位実験と同様に実施した。RNA
分解を防ぐためにDEPC溶液及びオートクレーブ滅菌を使用することに留意されたい。
結果は、ssDNA転位と同様に、ssRNAは約80%の遮断を誘導し、−50mVの
下でPBS緩衝液系中の遮断電流は約8pAであり、滞留時間は1〜2ミリ秒であること
を示す。
【0139】
比較として、核酸を含まず細孔のみを含む系における電流トレースは静的である。この
細孔の1つの利点は、対照群の静電流がめったに非特異的遮断を妨げないことである。実
験において、核酸をコンダクタンス緩衝液に予め混合した場合、タンパク質細孔がリン脂
質膜に最初に挿入された後即座に転位の量が検出され、遮断現象はますます少なくなる。
この結果は、試料タンク内に撹拌装置がない場合には、DNA転位の発生が遅れることを
示す。
【0140】
E1タンパク質突然変異体は、同じコンダクタンス条件及び一本鎖核酸を用いてssD
NA/ssRNAによって転位される。1M KCl及び10mM Hepes(pH7
.5)のコンダクタンス条件下で、120mVのバイアス電圧を印加すると、ssDNA
転位の遮断率は78%に近く、転位時間は0.5ミリ秒に近いことが認められ(図26
び25に示すように)、これはWT−E1(306〜605)のデータに近似する。
【0141】
実施例6;E1内部のdsDNAの遮断実験
BamHI酵素から得られた二本鎖DNA(dsDNA)をシスチャンバに添加し、転
位緩衝液は、ssDNAを含む10mM HEPES/1M KClである。移動シグナ
ルは、それぞれ50mV、70mV、120mV及び150mVの電圧で検出され、ds
DNA転位は観察されない。
【0142】
実施例7;E1核酸転位の検証実験
Q−PCRを用いて核酸増幅の標準曲線を作成した:dsDNAを、2つのssDNA
(80nt)をアニーリングすることから調製し、2%アガロースゲルで同定し、ゲルか
ら抽出した。ゲルから抽出されたdsDNAの濃度をQubit(登録商標)3.0(T
hermo fisher scientific Co.Ltd,America)に
よって測定した(この方法は正確度と精度において紫外分光光度計よりも優れている);
得られた既知濃度のdsDNAを10倍濃度勾配の10倍に希釈し、次いで標準的な相関
を得るためにQ−PCR(Premix SYBR−Takara Co.Ltd,Ja
pan)を用いてdsDNA濃度のct値の標準曲線を作成した(図11〜12に示すよ
うに、Ct値は各濃度勾配下で良好な再現性を有し、R=0.99+である)。従って
、この標準的な相関は、その後のssDNA転位実験の計算の基礎として使用することが
できる。
【0143】
上記のように、E1タンパク質をシスチャンバ内の膜に埋め込んだ後、50nMの80
ヌクレオチドDNAを添加する(第一の方法)か、又は25nMの48ヌクレオチドDN
Aを両側のチャンバのコンダクタンス緩衝液に予め混合して(第二の方法)、Q−PCR
による細孔を通るssDNAの定量分析を行った。陰性対照として、50nMの80ヌク
レオチドDNAを、E1タンパク質を含まないシスチャンバに添加するか、又は等量の2
5nMの80ヌクレオチドDNAを両側のチャンバに添加した。膜の両側に−70mVの
電圧を印加し、それぞれ10分、20分、40分、60分、及び90分後にQ−PCR定
量分析のために2つのチャンバのコンダクタンス緩衝液を収集した。
【0144】
転位実験に関与する全ての核酸を以下に記載する:(Takara,Co.Ltd,J
apanから購入)
【0145】
48ヌクレオチドのDNA配列を配列番号16に示す:
3’−TTT TTT TTT AAA AAA TTT TTT GGG GGG
TTT TTT CCC CCC TTT TTT TTT−5’。
【0146】
44ヌクレオチドのDNA及び44ヌクレオチドのDNA 1の配列をそれぞれ配列番
号17及び配列番号18に示す:
5’−AGC TCC ACC CCT CCT GGT AAC CAG TTT
TTT TTT TTT TTT TTT TT−3’(配列番号17)。
5’−TTT TTT TTT TTT TTT TT CTG GTT ACC A
GG AGG GGT GGA GCT−3’(配列番号18)。
【0147】
24ヌクレオチドのDNA配列を配列番号19に示す:
5’−CTG GTT ACC AGG AGG GGT GGA GCT−3’。
【0148】
標識核酸鎖及び標識核酸鎖1を配列番号20及び配列番号21として記載する:
5’−CCTACGCCACCAGCTCCGTAGG−3’(5’−Cy5、3’−
BHQ2)(配列番号20)。
5’−CCTACGGAGCTGGTGGCGTAGGTTTTTTTTTTTTTT
TTTTTT−3’(配列番号21)。
【0149】
dスペーサを有するdsDNA及びdsDNA1(dスペーサはリン酸骨格のみを有し
、塩基を有さないヌクレオチドであり、そのため、その空間構造は通常のヌクレオチドよ
りも小さい)の配列を配列番号22(3つのdスペーサが11番目と12番目のビットの
間に挿入されている)(詳細な配列は5’−TTTTTTTTTTTXXXTTTTTT
TTTTT−3’であり、Xはdスペーサを表す)及び配列番号23に示す:
5’−TTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT−3’(配列番号22)。
5’−AAAAAAAAAAAAAAAAAAAA−3’(配列番号23)。
【0150】
Q−PCRによる定量的転位分析に使用される核酸の配列を配列番号24及び配列番号
25に示す:
5’−CAG GCA GAG GAC AGA TAT TTG TAC TTG
CAT AGT CGG GTG CAA ACC TTT CGC TTT GAG
CAG CCA TGC ACA GAT GAA TCG GGT TTT TTT
TTT TTT TTTT(配列番号24)。
5’−CCC GAT TCA TCT GTG CAT GGC TGC TCA
AAG CGA AAG GTT TGC ACC CGA CTA TGC AAG
TAC AAA TAT CTG TCC TCT GCC TG(配列番号25)。
【0151】
Q−PCRによる定量的転位に使用される2つのプライマー(プライマー1及びプライ
マー2)をそれぞれ配列番号26及び配列番号27に示す:
5’−CAG GCA GAG GAC AGA TAT TT(配列番号26)。
5’−CCC GAT TCA TCT GTG CAT GG(配列番号27)。
【0152】
dsDNAのアニーリング手順をPCR装置で実施し、アニーリング温度は95℃であ
り、アニーリング時間は2分に設定する;次に冷却の工程は、1時間20分続く勾配(毎
分ほぼ1℃)に設定した。最後に、核酸産物をアガロースゲルによって測定した(図13
に示すように)。
【0153】
本発明では、BamHIで消化した環状プラスミドHag−C1からdsDNAを取得
し、それをQIAGEN DNA精製キットで精製し、産物である3800bpのdsD
NAの精製をQIAGEN DNA精製キット(QIAGEN,Co.Ltd,Germ
any)によって実施した。
【0154】
実施例8;インビトロでのE1の巻き戻し実験
本発明は、インビトロでタンパク質六量体のdsDNAのらせん活性を検証するために
E1(306〜577)を使用する。
【0155】
ヘリカーゼ実験における緩衝液は、20mM HEPES(pH7.5)、0.7mg
/ml BSA、5%グリセロール、5mM MgCl、3mM DTTである;反応
は2mMのATPを添加することによって開始される;この試験における基質dsDNA
は、DNAの末端を5’−フッ素及び3’−クエンチャーで22bp標識されており、こ
れは自然にヘアピンを形成することができる。
【0156】
インビトロでは、DNA複製を補助するためにウイルス自体に含まれる他のタンパク質
成分がないため、dsDNAの平滑末端はこのヘリカーゼによって直接巻き戻されること
ができない。
【0157】
一本鎖の腕を有する合成dsDNAをインビトロでの巻き戻し実験及び後述する膜上で
の巻き戻し実験に使用する。E1タンパク質の巻き戻しは、単腕核酸鎖が細孔に入ること
から始まる。巻き戻しの工程で、励起波長は643nmであり、発光波長は667nmで
あり、巻き戻し工程を視覚的に観察するために多機能蛍光マイクロプレートリーダ(Bi
o−Tek,Co.Ltd,America)を用いて反応系内で基質(5nM核酸基質
)の蛍光を連続的にモニターする。dsDNAが巻き戻されると、ssDNA末端の一方
が自然にヘアピン構造を形成し、蛍光タグはクエンチャータグによって消光され得る。
【0158】
結果は、図14に示すように、E1−2がインビトロでヘリカーゼ活性を有しており、
ATPの存在下で二本鎖核酸が巻き戻され得ることを実証する。
【0159】
実施例9;人工脂質膜上のE1及びその突然変異体の巻き戻し実験
インビトロでE1のヘリカーゼ活性を検証した後、人工脂質膜上での巻き戻し実験を計
画する:E1がBLMに挿入された後、二本鎖DNAの直径がE1タンパク質細孔の直径
よりも大きいため(上記のように)、dsDNAは、ATP及びMg2+の不在下では、
室温(21℃)でE1タンパク質を通して転位することができなかった。
【0160】
しかしながら、ATPの濃度、Mg2+濃度、及び系の温度を含む適切な系環境を制御
することによって、E1を通したdsDNA転位が分子レベルで観察される(図15に示
すように)。比較として、本発明者らは、二本鎖DNAを転移させるために、ヘリカーゼ
活性を有さない別のMspA(その細孔の直径はE1の直径と類似しており、二本鎖DN
Aの直径よりも小さい)を選択し、非巻き戻し系(ATPなし、Mg2+)並びにE1−
2と同じ温度、ATP濃度、及びMg2+濃度の条件下で、二本鎖DNAはMspAポー
リンを通して輸送されることができない。
【0161】
E1ヘリカーゼ活性測定実験では低い塩濃度が必要とされるので、人工脂質膜上で巻き
戻しを行うためにPBSを選択する;この緩衝液中で、E1−2のコンダクタンスは約0
.2±0.02nSである。
【0162】
この実験のスキームを以下で説明する:BLMがPBSコンダクタンス緩衝液中で形成
された後、E1−2をBLMに安定に挿入した(上述したように);次いで、dsDNA
(最終濃度12.5nM)をシスチャンバに添加し、コンダクタンス緩衝液を加熱プレー
トで37℃に加熱した;次いでATP(最終濃度5mM)及びMg2+(最終濃度5mM
)をコンダクタンス緩衝液に添加した。
【0163】
結果は、ATP加水分解により、BLMに埋め込まれたE1−2によってdsDNAが
ssDNAとして巻き戻され、シス側からトランス側に転位することを示す。−40mV
の下で、dsDNA巻き戻し現象の量を観察し、電圧を+40mVに反転させると細孔は
閉塞を保つ。しかしながら、電圧が+40mVから−50mVに変化させると、巻き戻し
が再び起こり、遮断状態から再開する(図16に示すように)。
【0164】
異なる長さを有するdsDNAの膜上での巻き戻し:
更に、本発明は、人工脂質膜上での異なる長さを有するdsDNAの巻き戻し現象を検
討する。
【0165】
組換えプラスミドPET−28b+MspAをXhoI及びEcoO109Iで5つの
異なる長さの断片に消化した;両方の酵素が粘着末端を有する線状二本鎖を消化すること
ができるので、dsDNAは伸長した単腕を有し(上記の理由で長さは5bpである)、
そのため5つの異なる長さのdsDNAを使用して膜上での巻き戻しの際の異なる鎖の長
さの影響を検討し、実験工程は上記と同じである。
【0166】
結果は、他の同じ条件下で、鎖の長さが増加すると共に、E1−2の巻き戻し時間も比
例して増加することを示す。図17に示すように、−100mVの下で、Ipore=−
400pA(N=20)であり、dsDNAの長さが2000bp未満の場合、巻き戻し
の速度は比較的一定であるが、dsDNAの長さが長くなるにつれて、E1−2の巻き戻
し活性が減少し、長さが5000bpに近くなると、巻き戻し時間は9秒に達することが
認められる。
【0167】
異なる温度での膜上のdsDNAの巻き戻し:
他方で、本発明は、温度が異なることを除いて同じ条件下で膜上のdsDNAの巻き戻
し現象を観察することを試みた。上記の24bpの核酸鎖の実験を、それぞれ室温(21
℃)、35℃未満、35℃〜37℃、及び37℃超の勾配温度で実施した。
【0168】
結果は、巻き戻しの頻度は温度の上昇に比例して増加するが、温度が37℃より高い場
合、巻き戻しは減少し始め、これはウイルスヘリカーゼとしてのE1−2の特徴と一致す
ることを示す(図18及び19に示すように)。
【0169】
異なる膜貫通電圧での膜上のdsDNAの巻き戻し:
本発明はまた、異なる膜貫通電圧でE1−2が同じdsDNA基質を巻き戻すのに必要
な時間を決定し、実験工程は上記と同じである。
【0170】
実験結果は、シスチャンバに核酸基質を混合すると、絶対電圧値が負電圧で徐々に低下
する場合、それに応じて巻き戻し時間が延長し、非線形関数が電圧勾配及び巻き戻し時間
に適合することを示す。得られた曲線は軸方向を向いており、これは、電圧の駆動力に加
えて、E1−2も能動的に巻き戻しを行っており、2つの力の方向は同じであることを示
し、実証する。図20に示すように、同じdsDNA基質について、−100mVの電圧
での巻き戻しには約3秒を要し、一方−20mVの電圧では、巻き戻し時間はほぼ30秒
に増加する。適合曲線の方向によれば、電圧駆動巻き戻しの方向は、E1−2の巻き戻し
の方向と同じである。E1はキノコ構造であり、一本鎖はDNA複製中にN末端の開口部
からタンパク質細孔に入るので、この状態のタンパク質のN末端開口部はシスチャンバの
負極に向かっていることが分かる。
【0171】
膜上の特別な核酸基質の巻き戻し:
本発明はまた、dsDNAの一本鎖中に3つのdスペーサ(塩基なし)を有する別の特
別な核酸基質を設計し、これは単腕を有し、A及びTからなる。この特別な核酸基質を用
いて巻き戻し実験を実施した。
【0172】
通常の巻き戻しシグナルでは、20〜30pAのサイズの小さなステップが特定の場所
に現れることが見出された。小さなステップシグナルの特定の位置は核酸中のdスペーサ
のものと一致する。
【0173】
膜上でのE1巻き戻し(Mg2+及びATPの機能に依存する)の検証:
膜上のE1−2の巻き戻しを検証するために、Mg2+とキレート化した過剰のEDT
Aを適用してヘリカーゼを不活性化した。実験工程は上記と同じである。巻き戻しの工程
で、過剰のEDTAキレート剤を反応系に添加した。
【0174】
結果は、EDTAの増加と共に、巻き戻し活性が徐々に阻害され、最大阻害効率は80
%超に達することを示す。過剰のMg2+を反応系に添加した場合、巻き戻しが再び現れ
、最大効率の1/2以上に回復することが明らかに観察される。
【0175】
同時に、ATPの別の類似体であるATPαSを使用して、巻き戻し系におけるATP
を競合的に置き換えた場合、ATPαSはATPのように加水分解してエネルギーを供給
することができず、膜上の巻き戻し活性は有意に阻害される。この阻害はMg2+をキレ
ート化するEDTAほど可逆的ではないので、過剰のATPαSを添加した場合、膜上の
巻き戻し活性は徐々に消失する。
【0176】
同じ実験方法及び条件で人工脂質膜上のE1突然変異体の巻き戻しを検討すると、E1
タンパク質の突然変異体の転位は2mM ATPによって開始されることが分かる。図2
7、28に示すように、WT−E1(306〜605)と同様の巻き戻しシグナルが、−
100mVのバイアス電圧で観察される。
【0177】
上記の結果は、初めて、ウシパピローマウイルスの環状六量体ヘリカーゼが、脂質二重
層膜及びポリマー膜に埋め込まれたタンパク質ナノポアへと成功裏に操作されたことを示
す。ナノポアは、高電圧でゲートすることなく脂質二重層上に安定に留まることができる
。それは、温度特異性、及びATP類似体による競合的阻害などの人工脂質膜上のヘリカ
ーゼの特徴を依然として保持する。このナノポアは、膜上の一本鎖RNA及び一本鎖DN
Aを受動的に転位させることができる。単腕を有するdsDNAは、ATP加水分解によ
って供給されるエネルギーを使用して膜上で巻き戻されることができ、巻き戻し時間は基
質の長さに正比例する。
【0178】
上記の実験は、本発明が2つのタンパク質E1−1(306〜577)及びE1−2(
306〜605)を革新的に発見し、前者は導電性細孔を含む新しい単純な膜として使用
でき、核酸を脂質二重層に安定に挿入し、転位させることができ、後者は更にナノポア及
びヘリカーゼの二重の作用を有することを示す。本発明は、ナノポアとヘリカーゼの特性
を組み合わせたセンシングシステムを構築し、これは、カップリングナノポアであるヘリ
カーゼを必要とする既存のセンシング方法に取って代わるものであり、優れた応用展望を
有する。
【0179】
更に、本発明はまた、E1−2タンパク質の突然変異体を創造的に検討し、E1−2の
突然変異体を得る。変異単量体によって構築されるナノポアは、野生型タンパク質よりも
核酸及び他の負に帯電した小分子を捕捉する可能性が高いことが見出されている。更に、
変異タンパク質は電流範囲の増加を示し、そのため細孔の内部空洞は野生型より狭くなる
ので、細孔内の電流検出がより広範囲で高感度である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]
【手続補正書】
【提出日】2021年9月15日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)単離されたウシパピローマウイルス二本鎖DNAヘリカーゼの306〜605位のアミノ酸からなり、その配列が配列番号1に示されている;若しくは
(2)配列番号1に示すアミノ酸配列の変異体であって、前記変異体は、以下の変異の少なくとも1つを含む:前記タンパク質が配列番号1であり、前記タンパク質変異体が、配列番号1に示されているアミノ酸配列の421位をKからLに、又は323位をHからWに変異させることによって得られる変異体である;ことを特徴とする、タンパク質の;又は
前記(1)及び(2)のいずれかに記載の2以上のタンパク質のサブユニットを含む多量体タンパク質の、導電性チャネルを含むナノポア又は膜の調製のための使用。
【請求項2】
前記タンパク質変異体のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号6及び配列番号7に示されている、請求項に記載の使用
【請求項3】
前記多量体タンパク質が、請求項1の(1)及び(2)のいずれかに記載の2以上のタンパク質のサブユニットを含む、請求項1に記載の使用
【請求項4】
前記多量体タンパク質を構成するサブユニットの数が4〜8である、請求項に記載の使用
【請求項5】
前記多量体タンパク質を構成するサブユニットの数が6である、請求項に記載の使用
【請求項6】
(1)膜層;及び
(2)前記多量体タンパク質が前記膜層に埋め込まれてチャネルを形成する、請求項3〜5のいずれか1項に記載の単離された多量体タンパク質
を含む、導電性チャネルを含む膜。
【請求項7】
前記膜層が、脂質層又は両親媒性ポリマーで形成される単層又は二重層の膜を含む、請求項に記載の導電性チャネル含有膜。
【請求項8】
前記脂質層が両親媒性脂質を含む、請求項6又は7に記載の導電性チャネル含有膜。
【請求項9】
前記脂質層が平面脂質膜層又はリポソームから選択され、及び前記膜の単層がPMOXA−PDMS−PMOXAから形成され、PMOXAがジメチルジアゾリンを表し、PDMSがポリジメチルシロキサンを表す、請求項6〜8のいずれか1項に記載の導電性チャネル含有膜。
【請求項10】
電位が印加されたときに前記チャネルを通してDNA又はRNAを転位させることができる、請求項6〜9のいずれか1項に記載の導電性チャネル含有膜。
【請求項11】
以下の工程:
(a)乾燥両親媒性脂質を調製する工程;及び
(b)前記乾燥両親媒性脂質を、水性溶媒、浸透剤、及び請求項1又は2に記載のいくつかの単離されたタンパク質を含む溶液に再懸濁する工程であって、サブユニットとしての前記タンパク質が六量体タンパク質に自己組織化することができ、これを、特定の条件下で、導電性チャネルを含む膜を形成するのに十分な時間、脂質二重層膜に挿入することができる工程;
を含む、導電性チャネルを含む膜を作製する方法。
【請求項12】
前記両親媒性脂質がリン脂質である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記リン脂質が、以下に列挙される1以上のリン脂質:ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、1,2−ジアスカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、および1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンから選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
標的試料を特徴付けるための単分子センサ又はキットを調製するための、請求項6〜10のいずれか1項に記載の導電性チャネル含有膜の使用。
【請求項15】
前記標的試料が、無機小分子、有機小分子、ポリペプチド、アミノ酸、金属イオン、ポリヌクレオチド、一本鎖核酸、又は二本鎖核酸の少なくとも1つである、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
医薬担体の調製における、請求項6〜11のいずれか1項に記載の導電性チャネル含有膜の使用。
【請求項17】
請求項1若しくは2に記載のタンパク質、又は請求項3〜5のいずれか1項に記載の多量体タンパク質、又は請求項6〜10のいずれか1項に記載の導電性チャネル含有膜を含む、単分子センサ又はキット。
【手続補正書】
【提出日】2021年9月27日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0105
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0105】
切断型E1−2(306〜605)のアミノ酸配列(配列番号1):
LQTEKFDFGTMVQWAYDHKYAEESKIAYEYALAAGSDSNARAFLATNSQAKHVKDCAMVRHYLRAETQALSMPAYIKARCKLATGEGSWKSILTFFNYQNIELITFINALKLWLKGIPKKNCLAFIGPPNTGKSMLCNSLIHFLGGSVLSFANHKSHFWLASLADTRAALVDDATHACWRYFDTYLRNALDGYPVSIDRKHKAAVQIKAPPLLVTSNIDVQAEDRYLYLHSRVQTFRFEQPCTDESGEQPFNITDADWKSFFVRLWGRLDLIDEEEDSEEDGDSMRTFTCSARNTNAVD
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]
【外国語明細書】
2021191283000001.pdf