特開2021-191704(P2021-191704A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 村田機械株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2021191704-糸巻取機及び紡績システム 図000003
  • 特開2021191704-糸巻取機及び紡績システム 図000004
  • 特開2021191704-糸巻取機及び紡績システム 図000005
  • 特開2021191704-糸巻取機及び紡績システム 図000006
  • 特開2021191704-糸巻取機及び紡績システム 図000007
  • 特開2021191704-糸巻取機及び紡績システム 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-191704(P2021-191704A)
(43)【公開日】2021年12月16日
(54)【発明の名称】糸巻取機及び紡績システム
(51)【国際特許分類】
   B65H 63/00 20060101AFI20211119BHJP
   D01H 13/22 20060101ALI20211119BHJP
【FI】
   B65H63/00 Z
   B65H63/00 B
   D01H13/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-98396(P2020-98396)
(22)【出願日】2020年6月5日
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】村山 賢一
(72)【発明者】
【氏名】福原 修一
【テーマコード(参考)】
3F115
4L056
【Fターム(参考)】
3F115BA03
3F115CA44
3F115CA53
3F115CB18
3F115CC08
3F115CD05
3F115CF01
3F115CF41
4L056BA05
4L056EB26
4L056EB30
4L056EC05
4L056EC19
4L056EC25
4L056EC63
4L056ED07
4L056ED09
4L056ED11
(57)【要約】
【課題】生産効率の低下を抑制することができる糸巻取機及び紡績システムを提供する。
【解決手段】自動ワインダ1は、リング精紡機2からボビン移送装置3を介して移送された給糸ボビンBの糸Yを巻き取り、パッケージPを形成する。自動ワインダ1は、リング精紡機2において、給糸ボビンBの糸Yに部分的不良が生じた場合に、当該部分的不良の発生に関してリング精紡機2が作成する第1糸不良情報を取得し、給糸ボビンBの第1糸不良情報を取得した場合、当該給糸ボビンBから巻き取っている糸Yの糸情報と第1糸不良情報とに基づいて、第1糸不良情報の部分的不良に対応する位置まで糸Yが当該給糸ボビンBから解舒されたと判断したときに、当該給糸ボビンBからの糸Yの巻取りを停止する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
精紡機からボビン移送装置を介して移送された給糸ボビンの前記糸を巻き取り、パッケージを形成する糸巻取機であって、
前記糸巻取機は、前記精紡機において前記給糸ボビンの前記糸に部分的不良が生じた場合に当該部分的不良の発生に関して前記精紡機が作成する第1糸不良情報を取得し、
前記給糸ボビンの前記第1糸不良情報を取得した場合、当該給糸ボビンから巻き取っている前記糸の糸情報と前記第1糸不良情報とに基づいて、前記第1糸不良情報の前記部分的不良に対応する位置まで前記糸が当該給糸ボビンから解舒されたと判断したときに、当該給糸ボビンからの前記糸の巻取りを停止する、糸巻取機。
【請求項2】
前記糸巻取機は、前記給糸ボビンの前記第1糸不良情報の前記部分的不良に対応する位置まで前記糸が当該給糸ボビンから解舒されたと判断したときに、当該給糸ボビンを不良ボビンとして排出する、請求項1に記載の糸巻取機。
【請求項3】
前記第1糸不良情報は、前記給糸ボビンのボトム部における糸切れに関する情報である、請求項1又は2に記載の糸巻取機。
【請求項4】
前記糸情報は、前記糸巻取機で巻き取られた前記糸の総長に関する情報、及び、前記糸巻取機で生じた糸切れの頻度に関する情報の少なくとも何れかを含む、請求項1〜3の何れか一項に記載の糸巻取機。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の糸巻取機と、精紡機と、を備えた紡績システムであって、
前記給糸ボビンは、記憶部を有するトレーにセットされた状態で前記ボビン移送装置により移送され、
前記精紡機又はボビン移送装置は、前記第1糸不良情報を前記記憶部に書き込む情報書込部を有し、
前記糸巻取機は、前記情報書込部で書き込まれた前記第1糸不良情報を読み出す情報読出部と、を備える、紡績システム。
【請求項6】
前記精紡機は、
前記給糸ボビンの前記糸に撚りムラが生じた場合に、当該撚りムラに関する第2糸不良情報を取得し、
前記給糸ボビンの前記糸の糸切れが第1頻度以上生じた場合に、第1頻度以上の糸切れに関する第3糸不良情報を取得し、
前記糸巻取機は、
前記給糸ボビンの前記第2糸不良情報又は前記第3糸不良情報を取得した場合、当該給糸ボビンからの前記糸の巻取りを行わない、請求項5に記載の紡績システム。
【請求項7】
前記糸巻取機は、前記給糸ボビンの前記第2糸不良情報又は前記第3糸不良情報を取得した場合、当該給糸ボビンからの前記糸の巻取りを行わずに、当該給糸ボビンを不良ボビンとして排出する、請求項6に記載の紡績システム。
【請求項8】
前記精紡機は、
前記給糸ボビンの前記糸に撚りムラが生じた場合に、当該撚りムラに関する第2糸不良情報を取得し、
前記給糸ボビンの前記糸の糸切れが第1頻度以上生じた場合に、第1頻度以上の糸切れに関する第3糸不良情報を取得し、
前記糸巻取機は、
前記給糸ボビンの前記第2糸不良情報又は前記第3糸不良情報を取得した場合、当該給糸ボビンから巻き取っている前記糸の糸情報に基づいて、当該給糸ボビンの品質が予め定められた品質基準値を満たすか否かを判定し、
前記品質基準値を満たさないと判定した場合、当該給糸ボビンからの前記糸の巻取りを停止する、請求項5に記載の紡績システム。
【請求項9】
前記精紡機は、前記給糸ボビンの前記糸の糸切れが第1頻度未満且つ第2頻度以上生じた場合に、前記第1頻度未満且つ前記第2頻度以上の糸切れに関する第4糸不良情報を取得し、
前記糸巻取機は、
前記給糸ボビンの前記第4糸不良情報を取得した場合、当該給糸ボビンから巻き取っている前記糸の糸情報に基づいて、当該給糸ボビンの品質が予め定められた品質基準値を満たすか否かを判定し、
前記品質基準値を満たさないと判定した場合、当該給糸ボビンからの前記糸の巻取りを停止する、請求項8に記載の紡績システム。
【請求項10】
前記糸巻取機は、前記品質基準値を満たさないと判定した場合、当該給糸ボビンを不良ボビンとして排出する、請求項9に記載の紡績システム。
【請求項11】
前記ボビン移送装置は、前記糸巻取機で排出した前記不良ボビンを経路外に排出可能な排出装置を有する、請求項7又は10に記載の紡績システム。
【請求項12】
前記糸巻取機は、通信又は操作部を介したオペレータの操作入力により前記第1糸不良情報を取得する、請求項5〜11の何れか一項に記載の紡績システム。
【請求項13】
制御部を備え、
前記制御部は、
前記糸巻取機及び前記ボビン移送装置に存在する前記給糸ボビンの糸量を把握する第1処理と、
前記精紡機での最終玉揚げで巻き上がった前記給糸ボビンの糸量を、前記給糸ボビン単位で算出する第2処理と、
前記糸巻取機の所定の巻取ユニットに対し満巻に必要な糸量を供給する第3処理と、を実行し、
前記第2処理では、不良糸を有する前記給糸ボビンについて、正常な糸長さと不良糸の糸長さの両方を管理し、
前記第3処理では、不良糸を有する前記給糸ボビンについて、不良糸を差し引いた糸量で計算すると共に、不良糸は巻かずに排出する、請求項5〜12の何れか一項に記載の紡績システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸巻取機及び紡績システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、糸が巻き取られた給糸ボビンを形成する精紡機と、精紡機からボビン移送装置を介して移送された給糸ボビンの糸を巻き取り、パッケージを形成する糸巻取機と、を備えた紡績システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような紡績システムでは、給糸ボビンの品質に関する品質情報を取得し、品質情報に基づいて給糸ボビンの品質が品質基準値を満たすか否かを判定し、品質基準値を満たさないと判定した場合、その給糸ボビンの糸が糸巻取機で巻き取られることを阻止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/212293号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、糸巻取機で巻き取られる給糸ボビンのボトム部(精紡機での糸の巻付け始めの部分)において、糸品質が安定しない糸が巻かれているケースがある。このような給糸ボビンの部分的不良に起因し、糸巻取機では、糸欠陥の除去及び糸継ぎ動作が多発するといった問題がある。この点、上述した従来の紡績システムでは、不良と判断された給糸ボビンの糸巻取機による巻取りが阻止されるため、当該問題は回避できるものの、給糸ボビンにおける糸品質が正常な部分(部分的不良以外の部分)が無駄に廃棄されることとなる。
【0005】
そこで、本発明は、生産効率の低下を抑制することができる糸巻取機及び紡績システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る糸巻取機は、精紡機からボビン移送装置を介して移送された給糸ボビンの糸を巻き取り、パッケージを形成する糸巻取機であって、糸巻取機は、精紡機において給糸ボビンの糸に部分的不良が生じた場合に当該部分的不良の発生に関して精紡機が作成する第1糸不良情報を取得し、給糸ボビンの第1糸不良情報を取得した場合、当該給糸ボビンから巻き取っている糸の糸情報と第1糸不良情報とに基づいて、第1糸不良情報の部分的不良に対応する位置まで糸が当該給糸ボビンから解舒されたと判断したときに、当該給糸ボビンからの糸の巻取りを停止する。
【0007】
この糸巻取機では、第1糸不良情報に係る給糸ボビンの部分的不良に対応する位置までの糸(すなわち、糸品質が正常な部分の糸)を、無駄にせずに巻き取ることができる。よって、生産効率の低下を抑制することが可能となる。
【0008】
本発明に係る糸巻取機は、給糸ボビンの第1糸不良情報の部分的不良に対応する位置まで糸が当該給糸ボビンから解舒されたと判断したときに、当該給糸ボビンを不良ボビンとして排出してもよい。この場合、糸巻取機において、給糸ボビンの部分的不良の糸が巻き取られるのを確実に阻止することができる。また、予測可能な不良部分の削除と糸継の連続発生とを阻止することにより、その糸巻取機における生産効率も向上する。
【0009】
本発明に係る糸巻取機では、第1糸不良情報は、給糸ボビンのボトム部における糸切れに関する情報であってもよい。この場合、糸巻取機において、給糸ボビンのボトム部までの糸を無駄にせずに巻き取ることができる。一般的に給糸ボビンのボトム部の糸は品質が悪いことが多い。よって、ボトム部における糸切れに関する情報を考慮すれば、精紡機の生産不具合により発生する部分的不良の糸が糸巻取機により巻き取られることによる効率低下を阻止することができる。
【0010】
本発明に係る糸巻取機では、糸情報は、糸巻取機で巻き取られた糸の総長に関する情報、及び、糸巻取機で生じた糸切れの頻度に関する情報の少なくとも何れかを含んでいてもよい。この場合、部分的不良に対応する位置まで糸が給糸ボビンから解舒されたことを、具体的に判断することができる。
【0011】
本発明に係る紡績システムは、上記糸巻取機と、精紡機と、を備えた紡績システムであって、給糸ボビンは、記憶部を有するトレーにセットされた状態でボビン移送装置により移送され、精紡機又はボビン移送装置は、第1糸不良情報を記憶部に書き込む情報書込部を有し、糸巻取機は、情報書込部で書き込まれた第1糸不良情報を読み出す情報読出部と、を備えていてもよい。この場合、糸巻取機は、記憶部を有するトレーと情報書込部と情報読出部とを利用して、給糸ボビンの第1糸不良情報を取得することができる。
【0012】
本発明に係る紡績システムでは、精紡機は、給糸ボビンの糸に撚りムラが生じた場合に、当該撚りムラに関する第2糸不良情報を取得し、給糸ボビンの糸の糸切れが第1頻度以上生じた場合に、第1頻度以上の糸切れに関する第3糸不良情報を取得し、糸巻取機は、給糸ボビンの第2糸不良情報又は第3糸不良情報を取得した場合、当該給糸ボビンからの糸の巻取りを行わない。この場合、糸巻取機において、第2糸不良情報又は第3糸不良情報に係る給糸ボビンの糸が巻き取られるのを阻止することができる。
【0013】
本発明に係る紡績システムでは、糸巻取機は、給糸ボビンの第2糸不良情報又は第3糸不良情報を取得した場合、当該給糸ボビンからの糸の巻取りを行わずに、当該給糸ボビンを不良ボビンとして排出してもよい。この場合、糸巻取機において、第2糸不良情報又は第3糸不良情報に係る給糸ボビンの糸が巻き取られるのを確実に阻止することができる。
【0014】
本発明に係る紡績システムでは、精紡機は、給糸ボビンの糸に撚りムラが生じた場合に、当該撚りムラに関する第2糸不良情報を取得し、給糸ボビンの糸の糸切れが第1頻度以上生じた場合に、第1頻度以上の糸切れに関する第3糸不良情報を取得し、糸巻取機は、給糸ボビンの第2糸不良情報又は第3糸不良情報を取得した場合、当該給糸ボビンから巻き取っている糸の糸情報に基づいて、当該給糸ボビンの品質が予め定められた品質基準値を満たすか否かを判定し、品質基準値を満たさないと判定した場合、当該給糸ボビンからの糸の巻取りを停止してもよい。精紡機で測定された不良情報は、糸巻取機に設けられているクリアラ等の糸品質監視装置ほど精密な確認ができない。よって、精紡機で測定された不良情報を糸巻取機に設けられているクリアラ等の糸品質監視装置で確認することにより、精紡機で測定された不良情報がどの程度の品質であるのか検証することができる。一度検証を行った後は、その検証結果を基に精紡機で測定された不良情報を評価できるので、精紡機で測定された不良情報の信頼度が向上する。
【0015】
本発明に係る紡績システムでは、精紡機は、給糸ボビンの糸の糸切れが第1頻度未満且つ第2頻度以上生じた場合に、第1頻度未満且つ第2頻度以上の糸切れに関する第4糸不良情報を取得し、糸巻取機は、給糸ボビンの第4糸不良情報を取得した場合、当該給糸ボビンから巻き取っている糸の糸情報に基づいて、当該給糸ボビンの品質が予め定められた品質基準値を満たすか否かを判定し、品質基準値を満たさないと判定した場合、当該給糸ボビンからの糸の巻取りを停止してもよい。この場合、第4糸不良情報に係る給糸ボビンについて、糸巻取機での糸の巻取りを常に阻止するのではなく、糸巻取機で品質基準値を満たすと判定した場合には、通常どおり糸巻取機で糸を巻き取ることができる。
【0016】
本発明に係る紡績システムでは、糸巻取機は、品質基準値を満たさないと判定した場合、当該給糸ボビンを不良ボビンとして排出してもよい。この場合、糸巻取機において、品質基準値を満たさない給糸ボビンの糸が巻き取られるのを確実に阻止することができる。
【0017】
本発明に係る紡績システムでは、ボビン移送装置は、糸巻取機で排出した不良ボビンを経路外に排出可能な排出装置を有していてもよい。この場合、ボビン移送装置において不良ボビンを排除することができる。
【0018】
本発明に係る紡績システムでは、糸巻取機は、通信又は操作部を介したオペレータの操作入力により第1糸不良情報を取得してもよい。この場合、糸巻取機は、通信及び操作入力を利用して給糸ボビンの第1糸不良情報を取得することができる。
【0019】
本発明に係る紡績システムは、制御部を備え、制御部は、糸巻取機及びボビン移送装置に存在する給糸ボビンの糸量を把握する第1処理と、精紡機での最終玉揚げで巻き上がった給糸ボビンの糸量を、給糸ボビン単位で算出する第2処理と、糸巻取機の所定の巻取ユニットに対し満巻に必要な糸量を供給する第3処理と、を実行し、第2処理では、不良糸を有する給糸ボビンについて、正常な糸長さと不良糸の糸長さの両方を管理し、第3処理では、不良糸を有する給糸ボビンについて、不良糸を差し引いた糸量で計算すると共に、不良糸は巻かずに排出してもよい。これにより、所定の巻取ユニットに対し満巻に必要な糸量を供給することができ、中途半端な巻玉でそのロットが終わってしまうことを防止できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、生産効率の低下を抑制することができる紡績システムを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、一実施形態に係る紡績システムを示す側面図である。
図2図2(a)は、トレーを示す斜視図である。図2(b)は、空のボビンを示す斜視図である。図2(c)は、給糸ボビンを示す斜視図である。
図3図1の紡績システムの精紡ユニットを示す側面図である。
図4図1の紡績システムの要部を示すブロック図である。
図5図1の紡績システムを示す平面図である。
図6図1の紡績システムの自動ワインダを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
図1に示されるように、紡績システム100は、自動ワインダ(糸巻取機)1と、リング精紡機(精紡機)2と、を備える。リング精紡機2は、粗糸から糸Yを生成し、その糸Yを空のボビン管E(糸Yの巻かれていないボビン巻取管)に巻き取って給糸ボビンBを形成する。自動ワインダ1は、リング精紡機2からボビン移送装置3を介して移送(搬送)された給糸ボビンBの糸Yを巻き取り、パッケージPを形成する。ボビン移送装置3は、リング精紡機2から自動ワインダ1に給糸ボビンBを移送し、自動ワインダ1からリング精紡機2に空のボビン管Eを移送する。
【0024】
給糸ボビンB及び空のボビン管Eは、それぞれ、トレーTにセット(載置)された状態で移送される。図2(a)に示されるように、トレーTは、円板状のベース部T1と、ベース部T1から上側に突出するピンT2と、ベース部T1に設けられたRF(Radio Frequency)タグ(記憶部)T3と、を有している。なお、RFタグT3は、ベース部T1に内蔵されていてもよく、ベース部T1の外面に取り付けられていてもよい。また、RFタグT3は、図示されるように矩形状であることに限定されず、例えば、ドーナツ状(リング状)であってもよい。RFタグT3には、当該RFタグT3が設けられているトレーTを識別するための識別情報が記憶されている。
【0025】
図2(b)及び図2(c)に示されるように、給糸ボビンB及びその巻取管であるボビン管Eは、それぞれ、ボビン管Eのボトム部EaにピンT2が差し込まれることで、ボビン管Eのトップ部Ebが上側に向いた状態でトレーTにセットされる。RFタグT3は、トレーTにセットされた給糸ボビンBにおける糸Yの不良に関する糸不良情報を記憶する。紡績システム100では、トレーTにセットされた給糸ボビンBの状況がRFID(Radio Frequency Identification:電波による個体識別)技術によって管理される。なお、トレーTの構成は上述の形態に限定されない。例えば、ベース部T1は円板状でなくてもよいし、また、給糸ボビンB及び空のボビン管Eをセットする手段はピンT2の差し込みでなくてもよい。RFタグT3の設置場所も、後述のRFライタ(情報書込部)31及びRFリーダ(情報読出部)18,41で読み書き可能な場所であればよい。
【0026】
[リング精紡機2の構成]
リング精紡機2は、自動ワインダ1の前工程の精紡工程を実施する。リング精紡機2は、図1に示されるように、リング精紡機2の動作を制御する紡績機台制御装置21と、給糸ボビンBを形成する複数の精紡ユニット20と、を備える。紡績機台制御装置21は、例えば、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]、EEPROM[Electrically Erasable Programmable Read Only Memory]、通信装置、記憶装置等を有する電子制御ユニットによって構成されている。紡績機台制御装置21は、ディスプレイ等の表示部21aと、入力キー等の操作部21bと、を有する。表示部21aは、各精紡ユニット20の運転状況等を表示する。操作部21bでは、オペレータ等によって各種の操作入力が行われる。なお、表示部21aと操作部21bとは、タッチパネルで構成されていてもよい。
【0027】
図3に示されるように、精紡ユニット20は、ドラフト装置22と、加撚装置23と、を有する。ドラフト装置22は、バックローラ対22aと、ミドルローラ対22bと、フロントローラ対22cと、を有している。バックローラ対22a、ミドルローラ対22b及びフロントローラ対22cは、それぞれ、ボトムローラ及びトップローラによって構成されている。ミドルローラ対22bを構成する各ローラには、エプロンベルトが架けられている。ドラフト装置22では、バックローラ対22a、ミドルローラ対22b及びフロントローラ対22cが所定の速度比で回転させられることで、粗糸ボビンから解舒された粗糸Y1がドラフトされる。
【0028】
加撚装置23は、スピンドル軸24と、リングレール25と、リング26と、トラベラ27と、を有している。スピンドル軸24は、ボビン管Eのトップ部Ebが上側に向いた状態でボビン管Eのボトム部Eaを保持し、ボビン管Eを回転させる。リングレール25は、ボビン管Eの軸線方向に移動可能である。リング26は、リングレール25に固定されている。トラベラ27は、リング26に支持されており、リング26に沿って移動可能である。
【0029】
加撚装置23では、ドラフト装置22においてドラフトされた粗糸Y1がリング26とトラベラ27との隙間に挿通され、その粗糸Y1の端部がボビン管Eに固定される。その状態で、スピンドル軸24がボビン管Eを回転させると、トラベラ27が粗糸Y1に引っ張られるようにしてリング26に沿って移動する。このとき、リングレール25が、ボビン管Eの軸線方向に沿った所定の範囲で往復動しつつ、ボトム部Ea側からトップ部Eb側に徐々に移動する。加撚装置23では、トラベラ27の回転がボビン管Eの回転に遅れることで粗糸Y1に撚りが加えられて糸Yが生成され、その糸Yがボビン管Eに巻き取られて給糸ボビンBが形成される。
【0030】
以上のように構成された精紡ユニット20を複数有するリング精紡機2は、いわゆる一斉ドッフィングタイプとして構成されている。すなわち、リング精紡機2は、ボビン移送装置3によって自動ワインダ1から移送された空のボビン管Eを複数ストックしておき、各精紡ユニット20に空のボビン管Eを一斉にセットして、糸Yの巻き取りを一斉に開始させる。各精紡ユニット20において糸Yの巻き取りが完了して給糸ボビンBが形成されると、リング精紡機2は、全ての給糸ボビンBを一斉に玉揚げ(ドッフィング)する。そして、リング精紡機2は、その間にストックされていた空のボビン管EをトレーTから抜き取って各精紡ユニット20に再び一斉にセットし、代わりに、玉揚げした給糸ボビンBをトレーTに一斉にセットする。玉揚げされた給糸ボビンBは、ボビン移送装置3を介して自動ワインダ1へ移送される。
【0031】
図4に示されるように、リング精紡機2が備える複数の精紡ユニット20のそれぞれには、不良情報取得部28が設置されている。不良情報取得部28は、精紡ユニット20で形成される給糸ボビンBの糸不良情報を取得する。なお、不良情報取得部28は、2つ以上の精紡ユニット20に1つ設置されていてもよいし、あるいは、1つの精紡ユニット20毎に複数設置されていてもよい。不良情報取得部28としては、公知のセンサないし装置を用いることができる。例えば不良情報取得部28としては、精紡ユニット20で生成する糸Yの状態(糸切れの有無、太さ異常等)を検知するセンサ、精紡ユニット20の各部の状態(設置不良、機器又は部品の消耗等)を検知するセンサ、及び、精紡ユニット20の運転状態(給糸ボビンBの形成速度等)を検知するセンサ等が挙げられる。
【0032】
不良情報取得部28は、給糸ボビンBの糸Yに部分的不良が生じた場合に、糸不良情報として、当該部分的不良に関する第1糸不良情報を取得する。第1糸不良情報は、当該部分的不良の発生に関してリング精紡機2が作成する情報である。第1糸不良情報における糸Yの部分的不良は、給糸ボビンBのボトム部(リング精紡機2での糸Yの巻付け始めの部分)において一定頻度以上生じた糸切れである。つまり、第1糸不良情報は、給糸ボビンBのボトム部における糸切れに関する情報である。なお、糸切れが生じる頻度とは、糸Yの巻取りに係る単位時間又は単位長さ当たりの糸切れの発生回数である。一定頻度は、予め設定された値である。一定頻度は、オペレータが操作部21bを介して入力及び変更可能であってもよい。第1糸不良情報は限定されず、1つの給糸ボビンBの一部分の不良に関する情報であればよい。
【0033】
不良情報取得部28は、給糸ボビンBの糸Yに撚りムラが生じた場合に、糸不良情報として、当該撚りムラに関する第2糸不良情報を取得する。第2糸不良情報は、当該撚りムラの発生に関してリング精紡機2が作成する情報である。撚りムラが生じたか否かは、公知の手法により判断することができる。不良情報取得部28は、給糸ボビンBの糸Yの糸切れが第1頻度以上生じた場合に、糸不良情報として、第1頻度以上の糸切れに関する第3糸不良情報を取得する。第3糸不良情報は、当該第1頻度以上の糸切れの発生に関してリング精紡機2が作成する情報である。不良情報取得部28は、給糸ボビンBの糸Yの糸切れが第1頻度未満且つ第2頻度以上生じた場合に、糸不良情報として、第1頻度未満且つ第2頻度以上の糸切れに関する第4糸不良情報を取得する。第4糸不良情報は、当該第1頻度未満且つ第2頻度以上の糸切れの発生に関してリング精紡機2が作成する情報である。第3糸不良情報及び第4糸不良情報は、1つの給糸ボビンB全体での糸切れに関する。第1頻度及び第2頻度は、予め設置された値である。第1頻度及び第2頻度は、オペレータが操作部21bを介して入力及び変更可能であってもよい。例えば、第1頻度として糸長さXmの間にY個以上の糸切れが生じた場合に第3糸不良情報を取得し、糸長さXmの間にY個未満且つZ(Y>Z)個以上の糸切れが生じた場合に第4糸不良情報を取得するように設定できる。
【0034】
リング精紡機2には、品質管理制御部29が設置されている。品質管理制御部29は、不良情報取得部28で取得された糸不良情報を管理する。品質管理制御部29は、管理する糸不良情報をボビン移送装置3のRFライタ31に出力する。
【0035】
図5に示されるように、リング精紡機2は、トレーTを移送するための経路L2と、コンベアC2と、を備えている。経路L2は、各精紡ユニット20によって形成した給糸ボビンBがセットされたトレーTをボビン移送装置3へ移送するための経路L21と、ボビン移送装置3から空のボビン管EがセットされたトレーTを受け取るための経路L22と、を含んでいる。コンベアC2は、経路L2に沿って給糸ボビンB又は空のボビン管EがセットされたトレーTを移送する。
【0036】
[自動ワインダ1の構成]
自動ワインダ1は、図4及び図6に示されるように、給糸ボビンBからパッケージPを形成する複数の巻取ユニット10と、パッケージPをドッフィングする玉揚装置19と、各巻取ユニット10及び玉揚装置19を制御する巻取機台制御装置11と、クリアラ管理装置51と、を備える。
【0037】
図5に示されるように、自動ワインダ1は、トレーTを移送するための経路L1と、コンベアC1と、を備えている。経路L1は、ボビン移送装置3から移送された給糸ボビンBがセットされたトレーTを各巻取ユニット10に移送するための経路L11と、巻取ユニット10において糸Yが巻き取られた後の空のボビン管EがセットされたトレーTをボビン移送装置3へ移送するための経路L12と、を含んでいる。コンベアC1は、経路L1に沿って給糸ボビンB又は空のボビン管EがセットされたトレーTを移送する。
【0038】
図6に示されるように、巻取ユニット10は、給糸装置12と、テンション付与装置13と、糸継装置14と、ヤーンクリアラ15(以下、単にクリアラという)と、パッケージPに回転力を付与し、糸Yを左右に綾振りする綾振ドラムが設けられた巻取装置16と、を糸道の上流側から下流側に向かって順に備えている。更に、巻取ユニット10は、図4に示されるように、ユニット制御部17、及びRFリーダ(情報読出部)18を備えている。RFリーダ18としては、書き込み機能を併せ持ったRFリーダライタを採用することもできる。
【0039】
給糸装置12は、経路L11を介して移送された給糸ボビンBを支持すると共に給糸ボビンBの糸Yの解舒を補助する。給糸装置12は、糸Yが全て解舒された後の空のボビン管Eを経路L12に排出する。テンション付与装置13は、給糸装置12から巻取装置16に向かって走行する糸Yに所定のテンションを付与する。糸継装置14は、糸欠陥が検出されて糸Yがカットされた等、何らかの理由で分断された糸Yの端同士を繋ぐ装置である。
【0040】
クリアラ15は、給糸装置12と巻取装置16との間において、給糸装置12から巻取装置16に向かって走行する糸Yの状態を監視し、糸欠陥を検出する。各巻取ユニット10のクリアラ15が検出した結果はクリアラ管理装置51に送付され、そこで管理される。クリアラ15は、設定されたクリアリング条件に基づいて、検出された糸欠陥を除去すべきか否かを判定する。糸欠陥を除去すべきと判定された場合には、当該糸欠陥を除去すべくカッタによって糸Yがカット(切断)される。カッタは、クリアラ15に付設されている。但し、カッタは、クリアラ15とは別に設けられていてもよい。また、クリアラ管理装置51は、クリアラ15により検出された結果から、発生した欠陥に関する情報、糸切れ数(前記欠陥を除去するために糸Yをカットした回数)、糸太さ変動ムラもしくは毛羽の長さなどに関する糸品質情報を記録して管理する。
【0041】
巻取装置16は、給糸装置12によって支持された給糸ボビンBから糸Yを解舒し、解舒した糸Yを巻き取ってパッケージPを形成する。RFリーダ18は、巻取ユニット10に移送された給糸ボビンBがセットされたトレーTのRFタグT3から、移送された給糸ボビンBの糸不良情報を非接触で読み出す。
【0042】
ユニット制御部17は、CPU、ROM、RAM、EEPROM、通信装置、記憶装置等を有する電子制御ユニットによって構成されている。ユニット制御部17は、巻取機台制御装置11からの指示等に基づいて、巻取ユニット10の各部の動作を制御する。ユニット制御部17は、クリアラ15によって検出した検出結果に基づき、給糸ボビンBから巻き取っている糸の糸情報を認識する。糸情報としては、給糸ボビンBの糸Yの巻取開始からの経過時間、糸切れの頻度に関する情報、特定の欠陥情報、糸品質情報の少なくとも何れかを含む。巻き取られた糸Yの長さに関する情報は、巻取装置16もしくは、別途設けられる専用の糸長センサ(不図示)で測定し、ユニット制御部17に送られる。ユニット制御部17に送られた糸Yの長さに関する情報は、ユニット制御部17によってクリアラ15に送られる。
【0043】
ユニット制御部17は、給糸ボビンBの糸不良情報をRFリーダ18から取得した場合、糸不良情報と糸情報とに基づいて、巻取ユニット10の動作を制御する。具体的には、ユニット制御部17は、第1糸不良情報を取得した場合、給糸ボビンBから巻き取っている糸Yの糸情報と第1糸不良情報とに基づいて、第1糸不良情報の部分的不良に対応する位置まで糸Yが当該給糸ボビンBから解舒されたと判断したときに、当該給糸ボビンBからの糸Yの巻取りを停止させ、当該給糸ボビンBを不良ボビンB1として経路L12に強制排出させる。ユニット制御部17は、当該不良ボビンB1を識別するための情報として、当該不良ボビンB1がセットされたトレーTの識別情報を後述の排出制御部42へ送信する。
【0044】
例えば、第1糸不良情報における糸Yの部分的不良が給糸ボビンBのボトム部の糸不良である場合、ユニット制御部17は、糸情報に基づきボトム部又はその周辺まで糸Yが給糸ボビンBから解舒されたか否かを判定する。一例として、ユニット制御部17は、給糸ボビンBから巻き取られた糸Yの総長が、予め定められた規定長(例えば1200m)に達した場合に、ボトム部又はその周辺まで糸Yが給糸ボビンBから解舒されたと判定する。或いは、ユニット制御部17は、給糸ボビンBの巻取り開始からの経過時間が、予め定められた規定時間に達した場合に、ボトム部又はその周辺まで糸Yが給糸ボビンBから解舒されたと判定する。更に或いは、ユニット制御部17は、給糸ボビンBの巻取り時における糸切れ(糸欠陥の検出)の頻度が、予め定められた規定頻度を越えた場合に、ボトム部又はその周辺まで糸Yが給糸ボビンBから解舒されたと判定する。そして、ユニット制御部17は、ボトム部又はその周辺まで糸Yが給糸ボビンBから解舒されたと判定したときに、糸Yの巻取りを停止させ、ボトム部に残糸を有する不良ボビンB1を経路L12に強制排出させる。
【0045】
ユニット制御部17は、第2糸不良情報又は第3糸不良情報を取得した場合、給糸ボビンBからの糸Yの巻取りを行わずにそのまま、当該給糸ボビンBを不良ボビンB1として経路L12に排出させる。ユニット制御部17は、当該不良ボビンB1を識別するための情報として、当該不良ボビンB1がセットされたトレーTの識別情報を後述の排出制御部42へ送信する。
【0046】
ユニット制御部17は、第4糸不良情報を取得した場合、給糸ボビンBから巻き取っている糸Yの糸情報に基づいて、当該給糸ボビンBの品質が予め定められた品質基準値を満たすか否かを判定する。ユニット制御部17は、品質基準値を満たさないと判定した場合、当該給糸ボビンBからの糸Yの巻取りを停止させ、当該給糸ボビンBを不良ボビンB1として経路L12に排出させる。品質基準値は、オペレータによって操作部11bを介して変更されてもよい。給糸ボビンBの品質が品質基準値を満たすか否かの判定は、公知の判定手法を用いて行うことができる。ユニット制御部17は、当該不良ボビンB1を識別するための情報として、当該不良ボビンB1がセットされたトレーTの識別情報を後述の排出制御部42へ送信する。
【0047】
なお、ユニット制御部17は、糸不良情報を取得していない場合、巻取ユニット10の各部の動作を制御して、給糸装置12にセットされた給糸ボビンBの糸Yを巻取装置16に供給させる。
【0048】
玉揚装置19は、各巻取ユニット10で形成されたパッケージPをドッフィングする。玉揚装置19は、複数の巻取ユニット10に対して1台が設けられている。玉揚装置19は、ドッフィングしたパッケージPを、所定の位置(例えば機台後方に設けられたコンベア)に送る。
【0049】
巻取機台制御装置11は、例えば、CPU、ROM、RAM、EEPROM、通信装置、記憶装置等を有する電子制御ユニットによって構成されている。巻取機台制御装置11は、図4及び図6に示されるように、表示部11aと、操作部11bと、を備える。表示部11aは、少なくとも、巻取ユニット10における巻取条件及び稼働データを表示する。操作部11bでは、オペレータ等によって各種の操作入力が行われる。表示部11a及び操作部11bは、タッチパネルで構成されていてもよい。巻取機台制御装置11は、クリアラ管理装置51及びボビン移送装置制御部39と接続されている。
【0050】
[ボビン移送装置3の構成]
図5に示されるように、ボビン移送装置3は、前述のように、リング精紡機2から自動ワインダ1に給糸ボビンBを移送し、自動ワインダ1からリング精紡機2に空のボビン管Eを移送する。ボビン移送装置3は、トレーTを移送するための経路L3と、コンベアC3と、を備える。経路L3は、リング精紡機2から移送された給糸ボビンBがセットされたトレーTを自動ワインダ1に移送するための経路L31と、自動ワインダ1において糸Yが巻き取られた後の空のボビン管EがセットされたトレーTをリング精紡機2へ移送するための経路L32と、を含む。経路L3は、経路L31と経路L32とを連結するバイパス経路L33及びL34を含んでいる。バイパス経路L33は、バイパス経路L34よりも自動ワインダ1側に設けられている。このように、リング精紡機2に設けられた経路L2、ボビン移送装置3に設けられた経路L3、及び自動ワインダ1に設けられた経路L1によって、自動ワインダ1とリング精紡機2との間で給糸ボビンB及び空のボビン管Eを移送する経路が構成される。
【0051】
ボビン移送装置3は、ボビン移送装置制御部39と、RFライタ(情報書込部)31と、残糸量確認センサ32と、糸端準備装置33と、糸有無確認センサ34と、残糸除去装置35と、不良ボビン排出装置(排出装置)4と、を備える。RFライタ31は、リング精紡機2で形成された給糸ボビンBを自動ワインダ1へ移送する経路L31の近傍に設けられている。ボビン移送装置制御部39は、リング精紡機2から自動ワインダ1に給糸ボビンBが移送される際に、RFライタ31により、給糸ボビンBがセットされたトレーTのRFタグT3に、その給糸ボビンBにおける糸不良情報(第1〜第4糸不良情報の何れか)を非接触で書き込む。ボビン移送装置制御部39は、自動ワインダ1の巻取機台制御装置11と接続されている。
【0052】
なお、RFライタ31は、ボビン移送装置3に設けられることに限定されない。リング精紡機2の給糸ボビンBの移送方向の出口にRFライタ31が設けられていてもよい。また、精紡ユニット20ごとにRFライタ31が設けられていてもよい。また、リング精紡機2と自動ワインダ1とで異なるトレーが使われる場合、ボビン移送装置3は移載部をさらに備え、移載部においてリング精紡機2用のトレーから自動ワインダ1用のトレーに給糸ボビンBを移載してもよい。このとき、RFライタ31は、移載部又は移載部から給糸ボビンBの移送方向下流側に少し離れた位置に設けられ、自動ワインダ1用のトレーに付けられたRFタグに、給糸ボビンBに関する情報を書き込むとよい。
【0053】
残糸量確認センサ32は、経路L31に沿って移送されるボビン(給糸ボビンB及び空のボビン管E)の残糸量を検出する。経路L31に沿って移送されるボビンが糸Yがある(残っている)給糸ボビンBである場合、糸端準備装置33は、自動ワインダ1において糸端が捕捉できるように、給糸ボビンBに対して糸端の処理を行う。経路L31に沿って移送されるボビンが糸Yが残っていない空のボビン管Eである場合、糸端準備装置33は、糸端の処理を行わない。コンベアC3は、糸端準備装置33において糸端の処理が行われた給糸ボビンBを、経路L31に沿って自動ワインダ1へ移送する。コンベアC3は、経路L31に沿って移送されるボビンが残糸量確認センサ32によって糸Yが残っていない空のボビン管Eであると検出された場合、空のボビン管Eをバイパス経路L33を介して経路L31から経路L32に移送する。
【0054】
糸有無確認センサ34は、経路L32に沿って移送されるボビン(給糸ボビンB又は空のボビン管E)に糸Yが残っているか否かを検出する。経路L32に沿って移送されるボビンが糸Yが残っている給糸ボビンBである場合、コンベアC3は、糸Yが残っている給糸ボビンBを経路L32からバイパス経路L34を介して残糸除去装置35に移送する。残糸除去装置35は、バイパス経路L34に沿って移送された糸Yが残っている給糸ボビンBから、糸Yを除去して空のボビン管Eにする。残糸除去装置35によって糸Yが除去された空のボビン管Eは、コンベアC3によって、バイパス経路L34から経路L31に移送される。
【0055】
図4及び図5に示されるように、不良ボビン排出装置4は、不良ボビンB1を経路L3外に排出可能な装置である。不良ボビン排出装置4は、RFリーダ41、排出制御部42、不良ボビン排出経路L4、及びコンベアC4を備える。不良ボビン排出経路L4は、自動ワインダ1からリング精紡機2へトレーTを移送するための経路L32の途中の部分から分岐して設けられている。コンベアC4は、排出制御部42の制御に基づいて、経路L32から不良ボビン排出経路L4へ不良ボビンB1がセットされたトレーTを取り込む。不良ボビン排出経路L4の代わりに、不良ボビンB1をつまみ上げて排出する自動抜き取り装置を採用することもできる。
【0056】
RFリーダ41は、経路L32の近傍、且つ経路L32と不良ボビン排出経路L4との連結部よりも自動ワインダ1側の位置に設けられている。RFリーダ41は、経路L32に沿って移送されるトレーTのRFタグT3に記憶された識別番号を非接触で読み出す。排出制御部42は、ユニット制御部17から、不良ボビンB1がセットされたトレーTの識別情報を取得する。排出制御部42は、RFリーダ41によって読み出した識別番号とユニット制御部17から取得した識別番号とに基づいて、不良ボビンB1が経路L32から不良ボビン排出経路L4へ排出されるように、コンベアC4を制御する。
【0057】
以上のように構成された自動ワインダ1では、リング精紡機2からボビン移送装置3を介して移送された給糸ボビンBの糸Yが巻き取られ、パッケージPが形成される。ここで、自動ワインダ1は、リング精紡機2において給糸ボビンBの糸に部分的不良が生じた場合に当該部分的不良の発生に関してリング精紡機2が作成する第1糸不良情報を取得する。自動ワインダ1では、給糸ボビンBの第1糸不良情報を取得した場合、当該給糸ボビンBから巻き取っている糸Yの糸情報と第1糸不良情報とに基づいて、第1糸不良情報の部分的不良に対応する位置まで糸が当該給糸ボビンBから解舒されたと判断されると、当該給糸ボビンBからの糸Yの巻取りが停止される。したがって、紡績システム100によれば、自動ワインダ1において、第1糸不良情報に係る給糸ボビンBの部分的不良に対応する位置までの糸Y(すなわち、糸品質が正常な部分の糸Y)を、無駄にせずに巻き取ることができる。よって、生産効率の低下を抑制することが可能となる。
【0058】
自動ワインダ1は、給糸ボビンBの第1糸不良情報の部分的不良に対応する位置まで糸Yが当該給糸ボビンBから解舒されたと判断したときに、当該給糸ボビンBを不良ボビンB1として排出する。この場合、自動ワインダ1において、給糸ボビンBの部分的不良の糸Yが巻き取られるのを確実に阻止することができる。また、予測可能な不良部分の削除と糸継の連続発生とを阻止することにより、その自動ワインダ1における生産効率も向上する。
【0059】
自動ワインダ1では、第1糸不良情報は、給糸ボビンBのボトム部における糸切れに関する情報である。この場合、自動ワインダ1において、給糸ボビンBのボトム部までの糸Yを無駄にせずに巻き取ることができる。一般的に給糸ボビンBのボトム部の糸Yは品質が悪いことが多い。よって、ボトム部における糸切れに関する情報を考慮すれば、リング精紡機2の生産不具合により発生する部分的不良の糸Yが自動ワインダ1により巻き取られることによる効率低下を阻止することができる。
【0060】
自動ワインダ1では、糸情報は、自動ワインダ1で巻き取られた糸Yの総長に関する情報、及び、自動ワインダ1で生じた糸切れの頻度に関する情報の少なくとも何れかを含む。この場合、部分的不良に対応する位置まで糸Yが当該給糸ボビンBから解舒されたことを、具体的に判断することができる。上述したように、自動ワインダ1で巻き取られた糸Yの総長に関する情報は、巻取装置16に設けられる綾振ドラムの回転回数からの算出し、もしくは別途設けられる専用の糸長センサ(不図示)で測定し、ユニット制御部17に送られる。ユニット制御部17に送られた糸Yの長さに関する情報は、ユニット制御部17によってクリアラ15に送られる。
【0061】
紡績システム100は、自動ワインダ1及びリング精紡機2を備える。給糸ボビンBは、RFタグT3を有するトレーTにセットされた状態でボビン移送装置3により移送される。ボビン移送装置3は、糸不良情報をRFタグT3に書き込むRFライタ31を有する。自動ワインダ1は、RFライタ31で書き込まれた糸不良情報を読み出すRFリーダ18を備える。この場合、自動ワインダ1は、RFタグT3を有するトレーTとRFライタ31とRFリーダ18とを利用して、給糸ボビンBの糸不良情報を取得することができる。
【0062】
紡績システム100では、リング精紡機2は、給糸ボビンBの糸Yに撚りムラが生じた場合に、当該撚りムラに関する第2糸不良情報を取得し、給糸ボビンBの糸Yの糸切れが第1頻度以上生じた場合に、第1頻度以上の糸切れに関する第3糸不良情報を取得する。自動ワインダ1は、給糸ボビンBの第2糸不良情報又は第3糸不良情報を取得した場合、当該給糸ボビンBからの糸Yの巻取りを行わない。これにより、自動ワインダ1において、第2糸不良情報又は第3糸不良情報に係る給糸ボビンBの糸Yが巻き取られるのを阻止することができる。
【0063】
紡績システム100では、自動ワインダ1は、給糸ボビンBの第2糸不良情報又は第3糸不良情報を取得した場合、当該給糸ボビンBからの糸Yの巻取りを行わずに、当該給糸ボビンBを不良ボビンB1として排出する。これにより、自動ワインダ1において、第2糸不良情報又は第3糸不良情報に係る給糸ボビンBの糸Yが巻き取られるのを確実に阻止することができる。
【0064】
ところで、不良情報取得部28で得られる糸不良情報は、そのままでは真にその給糸ボビンBの糸品質が悪いかどうかの判定が困難な場合がある。これは、不良情報取得部28で得られる糸不良情報は、例えば、精紡管糸の糸切れ頻度やスピンドル回転数等から得られる推定不良錘の情報であるためである。そのため、給糸ボビンBの糸品質を精度よく判定することが望まれる。
【0065】
この点、紡績システム100では、リング精紡機2は、給糸ボビンBの糸Yの糸切れが第1頻度未満且つ第2頻度以上生じた場合に、第1頻度未満且つ第2頻度以上の糸切れに関する第4糸不良情報(糸不良情報)を取得する。自動ワインダ1は、給糸ボビンBの第4糸不良情報を取得した場合、当該給糸ボビンBから巻き取っている糸Yの糸情報に基づいて、当該給糸ボビンBの品質が品質基準値を満たすか否かを判定(照合)する。これにより、第4糸不良情報に係る給糸ボビンBについて、糸品質を精度よく判定する(判定した糸品質を確実なものとする)ことができる。そして、自動ワインダ1は、品質基準値を満たさないと判定した場合、当該給糸ボビンBからの糸Yの巻取りを停止する。これにより、第4糸不良情報に係る給糸ボビンBについて、真に糸品質が悪い場合に糸Yが巻き取られるのを阻止できる。また、自動ワインダ1における糸Yの巻取りを常に阻止するのではなく、自動ワインダ1で品質基準値を満たすと判定した場合には、通常どおり自動ワインダ1で糸Yを巻き取ってパッケージPを形成することができ、当該生産効率の低下を一層抑制することが可能となる。
【0066】
紡績システム100では、自動ワインダ1は、給糸ボビンBの第4糸不良情報を取得した場合、当該給糸ボビンBから巻き取っている糸Yの糸情報に基づいて当該給糸ボビンBの品質が品質基準値を満たすか否かを判定し、品質基準値を満たさないと判定した場合、当該給糸ボビンBを不良ボビンとして排出する。この場合、自動ワインダ1において、品質基準値を満たさない給糸ボビンBの糸Yが巻き取られるのを確実に阻止することができる。
【0067】
本実施形態においては、自動ワインダ1は、給糸ボビンBの第4糸不良情報を取得した場合について記載したが、これに限定されない。紡績システム100では、給糸ボビンBの第2糸不良情報又は第3糸不良情報を取得した場合に、当該給糸ボビンBから巻き取っている糸Yの糸情報に基づいて当該給糸ボビンBの品質が品質基準値を満たすか否かを判定し、品質基準値を満たさないと判定した場合、当該給糸ボビンBを不良ボビンとして排出するようにしてもよい。リング精紡機2で測定された不良情報は、自動ワインダ1に設けられているクリアラ15ほど精密な確認ができない。よって、リング精紡機2で測定された不良情報をクリアラ15で確認することにより、リング精紡機2で測定された不良情報がどの程度の品質であるのか検証することができる。一度検証を行った後は、その検証結果を基にリング精紡機2で測定された不良情報を評価できるので、リング精紡機2で測定された不良情報の信頼度が向上する。
【0068】
紡績システム100では、ボビン移送装置3は、自動ワインダ1で排出した不良ボビンB1を経路L3外に排出可能な不良ボビン排出装置4を有する。この場合、ボビン移送装置3において不良ボビンB1を排除することができる。
【0069】
なお、紡績システム100では、自動ワインダ1は、通信により糸不良情報を取得してもよいし、操作部11bを介したオペレータの操作入力により糸不良情報を取得してもよい。この場合、自動ワインダ1は、通信及び操作入力を利用して給糸ボビンBの糸不良情報を取得することができる。
【0070】
以上、実施形態について説明したが、本発明の一態様は、上記実施形態に限られず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0071】
上記実施形態は、自動ワインダ1の数より多い数のリング精紡機2を備え、1つの自動ワインダ1に対して複数のリング精紡機2から給糸ボビンBが移送されるように構成されていてもよい。上記実施形態では、不良ボビン排出装置4により不良ボビンB1を経路L3外に排出したが、残糸除去装置35により不良ボビンB1から糸Yを除去して空のボビン管Eにしてもよい。
【0072】
上記実施形態では、自動ワインダ1は、糸不良情報をリング精紡機2から通信により取得してもよい。上記実施形態において、ボビン移送装置3には残糸量確認センサ32、糸端準備装置33、糸有無確認センサ34、残糸除去装置35、及びバイパス経路L33、L34が設けられているが、これらは適宜に省略することができる。上記実施形態において、RFリーダ18,41は、RFタグT3から非接触で情報を読み出すことに限定されず、接触式によって情報を読み出してもよい。
【0073】
本発明の一態様は、次の工程1〜3を実施してもよい。
工程1:自動ワインダ(糸巻取機)1、ボビン移送装置3に存在する給糸ボビンBの糸量(まだ巻かれていない糸総量)を把握しておく。
工程2:最終ドッフィング(リング精紡機2での最終玉揚げ)で巻き上がった給糸ボビンBの糸量を算出する。このとき、糸量は給糸ボビンB単位で把握しておく(不良部分を有する給糸ボビンBは、正常な糸長さと不良部分の糸長さとの両方が管理されている)。
工程3:所定の巻取ユニット10に対し満巻に必要な糸量を供給する。供給する際には、不良糸が含まれている給糸ボビンBは不良部分を差し引いた糸量で計算する(不良糸は巻かずに排出する)。
【0074】
すなわち、本発明の一態様は、制御部を備え、制御部は、糸巻取機及びボビン移送装置に存在する給糸ボビンの糸量を把握する第1処理と、精紡機での最終玉揚げで巻き上がった給糸ボビンの糸量を、給糸ボビン単位で算出する第2処理と、糸巻取機の所定の巻取ユニットに対し満巻に必要な糸量を供給する第3処理と、を実行し、第2処理では、不良糸を有する給糸ボビンについて、正常な糸長さと不良糸の糸長さの両方を管理し、第3処理では、不良糸を有する給糸ボビンについて、不良糸を差し引いた糸量で計算すると共に、不良糸は巻かずに排出してもよい。なお、当該制御部は、巻取機台制御装置11、紡績機台制御装置21及びボビン移送装置制御部39の少なくとも一部により構成することができる。これにより、所定の巻取ユニット10に対し満巻に必要な糸量を供給することができ、中途半端な巻玉でそのロットが終わってしまうことを防止できる。例えば、均等に給糸ボビンBを分配した場合、パッケージPとして1/2パッケージが5個出来上がった時点で給糸ボビンBが無くなってしまうが、上述した本発明の一態様によれば、パッケージPとして、満巻パッケージ2個及び1/2パッケージが1個で終了することができる。
【0075】
本発明の一態様は、給糸ボビンB単位の糸量(長さ)を情報として管理してもよい。当該管理は、自動ワインダ(糸巻取機)1で管理してもよいし、品質管理制御部29で管理してもよい。当該管理では、具体的には、次のような処理を行う。すなわち、所定の巻取ユニット10でパッケージPの巻取りを行った後、クリアラ管理装置51によりクリアラ15の測定結果から1ボビン当たりの不良糸率を算出する。例えば、ボビン糸長2489mに対して欠点除去糸長2.5mであり、この場合には、不良糸長率0.1%を算出する。また例えば、ボビン糸長2489mに対して欠点除去糸長10mであり、この場合には、不良糸長率0.4%を算出する。そして、リング精紡機2の品質管理制御部29、自動ワインダ1もしくは精紡ユニット20毎で且つドッフィング毎に、この不良糸長率をデータとして蓄積する。従来の欠点個数ではなく、長さを指標とするアラーム指標を有することができる。不良糸部分を巻き取らずに排出することを把握(正常糸長さの把握と不良糸長さの把握)する際に、上述のような指標で管理すると、閾値の設定などが容易になる。まだこの閾値は、オペレータが自由に設定することが可能であり、品質管理も容易になる。
【0076】
上記実施形態及び変形例における各構成には、上述した材料及び形状に限定されず、様々な材料及び形状を適用することができる。上記実施形態又は変形例における各構成は、他の実施形態又は変形例における各構成に任意に適用することができる。上記実施形態又は変形例における各構成の一部は、本発明の一態様の要旨を逸脱しない範囲で適宜に省略可能である。
【符号の説明】
【0077】
1…自動ワインダ(糸巻取機)、2…リング精紡機(精紡機)、3…ボビン移送装置、4…不良ボビン排出装置(排出装置)、11b…操作部、18…RFリーダ(情報読出部)、31…RFライタ(情報書込部)、100…紡績システム、B…給糸ボビン、P…パッケージ、T…トレー、T3…RFタグ(記憶部)、Y…糸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6