【解決手段】ガスバリア層を積層して揮発性成分を充填するための包装材料として用いられるシーラントフィルムであって、ランダム共重合ポリプロピレン樹脂を含有し、引張弾性率が400MPa以上であることを特徴とするシーラントフィルム、およびそれを用いた積層体。
ガスバリア層を積層して揮発性成分を充填するための包装材料として用いられるシーラントフィルムであって、ランダム共重合ポリプロピレン樹脂を含有し、引張弾性率が400MPa以上であることを特徴とするシーラントフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のシーラントフィルムを構成する樹脂は、ランダム共重合ポリプロピレンである必要がある。ランダム共重合ポリプロピレンは、ブロック共重合ポリプロピレンのように海成分と島成分との海島構造を形成しにくいため、揮発性成分が島成分を膨潤し、海成分と島成分の界面を凝集破壊して白化や水泡現象を引き起こすことを抑制できる。
ランダム共重合ポリプロピレンとは、プロピレンとプロピレン以外のコモノマーとのランダム共重合体であり、プロピレン質量比が50質量%を超えるものである。プロピレン質量比は、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
本発明におけるランダム共重合ポリプロピレンは、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体が好ましい。α−オレフィンとしては、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1などが例示でき、これらに限定されるものではないが、入手のしやすさの観点からプロピレン−エチレンランダム共重合体が最も好ましい。また、これらのα−オレフィンは単独、または二種以上が組み合わされて使用されてもよい。
【0014】
本発明のシーラントフィルムは、必要に応じてその他の熱可塑性樹脂を添加物として含有してもよい。熱可塑性樹脂は、低温ヒートシール性向上や、低温衝撃強度向上の観点から、エチレン−α−オレフィン共重合体や、スチレン−ジオレフィン共重合体が好ましい。
エチレン−α−オレフィン共重合体とは、エチレンとα−オレフィンの共重合体であり、エチレン質量比が50質量%を超えるものである。α−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1などが例示でき、これらに限定されるものではない。エチレン−α−オレフィン共重合体の具体例として、エチレン−プロピレンランダム共重合体やエチレン−ブテンランダム共重合体が挙げられる。
スチレン−ジオレフィン共重合体としては、スチレン−ブタジエン共重合体やスチレン−イソプレン共重合体が好ましく、これらはブロック共重合体あるいはランダム共重合体およびそれらの混合物のいずれも使用することができる。
また、これらの熱可塑性樹脂は単独で、または二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
本発明のシーラントフィルムは、引張弾性率が400MPa以上である必要があり、420MPa以上であることが好ましく、470MPa以上であることがより好ましく、540MPa以上であることがさらに好ましく、600MPa以上であることが最も好ましい。引張弾性率が400MPa未満の場合、シーラントフィルムが揮発性成分の膨張する力に負けてしまうため、白化や水泡現象の発生を抑制できない場合がある。
【0016】
本発明のシーラントフィルムは、前記引張弾性率を満たすために、ランダム共重合ポリプロピレン樹脂の含有比率が、50質量%を超える必要があり、55質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが最も好ましい。
【0017】
なお、揮発性成分とは、20℃における蒸気圧が1.0kPa以上である物質を意味する。ただし、水は該当せず、具体的には、アルコール類や酢酸などが挙げられる。
【0018】
本発明のシーラントフィルムは、未延伸フィルムであっても低倍率の延伸フィルムであってもよいが、実用的には未延伸フィルムであることが好ましい。本発明のフィルムは、上記樹脂を押出機で加熱、溶融してTダイより押出し、冷却ロールなどで冷却固化するテンター法や、円形ダイより押出して水冷あるいは空冷により冷却固化させるチューブラー法などを用いて製膜することができる。
【0019】
ランダム共重合ポリプロピレン樹脂からなり、引張弾性率が400MPa以上のフィルムは市販品であってもよく、例えば、フタムラ社製の無延伸ポリプロピレンフィルム「FRTK−S」、東レ社製の無延伸ポリプロピレンフィルム「3951」、三井化学東セロ社製の無延伸ポリプロピレンフィルム「RXC−3」などが挙げられる。
【0020】
本発明のシーラントフィルムの厚みは、特に限定されないが、力学特性の観点から、厚みの下限が30μmであることが好ましく、40μmであることがさらに好ましい。一方、ヒートシール性の観点から、厚みの上限が200μmであることが好ましく、180μmであることがさらに好ましい。
【0021】
本発明のシーラントフィルムは、ガスバリア層(ガスバリア性フィルム)を積層して揮発性成分を充填するための包装材料として用いられるものであり、他の層を積層して使用することもできる。
<積層体>
【0022】
本発明のシーラントフィルムとガスバリア層を積層した積層体は、揮発性成分を充填するための包装材料として好適に用いることができ、特にレトルト食品包装材料として好適に用いることができる。
前記積層体は、少なくとも二層以上で構成されており、本発明のシーラントフィルムとガスバリア層が隣接して積層していることが好ましい。
【0023】
積層体を構成するガスバリア層は、ガスバリア性を有するものであればよく、例えば、アルミニウム箔や銅箔などの金属箔や、珪素、アルミニウム、亜鉛、クロム、錫等の元素の酸化物、窒化物、硫化物等を蒸着した無機透明蒸着フィルムや、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ビニルアルコールとエチレンの共重合体、ポリカルボン酸系ポリマーなどの有機系コート層を積層した有機バリアフィルムが挙げられる。
中でも、内容物の可視化や電子レンジ可能、金属検知による異物除去の容易さという観点で、透明な無機蒸着フィルムや有機バリアフィルムが好ましい。
また、印刷、ラミネート、製袋などの各種加工や熱水処理工程や、充填後の輸送工程などの工程後において、優れたガスバリア性を示す観点で、有機バリアフィルムであることがより好ましい。無機蒸着フィルムは上記工程後において、クラックといわれる微細な亀裂が蒸着層に入り、クラック部分から揮発性成分が透過しガスバリア性が低下する場合がある。
【0024】
無機蒸着フィルムや有機バリアフィルムのように、バリア面と基材面を有するバリアフィルムを本発明のシーラントフィルムと積層する場合、バリア面が最外層であるとバリア表面に傷が付きバリア機能を失う場合があるため、基材面を最外層とし、バリア面とシーラントフィルムとが隣接するように積層することが好ましい。
【0025】
有機バリアフィルムを構成する有機系コート層は、前記したようにポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ビニルアルコールとエチレンの共重合体、ポリカルボン酸系ポリマーなどが挙げられる。中でも、後記するが、ポリカルボン酸系ポリマーは金属化合物と反応した場合、さらに優れたガスバリア性を示し、特に、高湿度下で優れたガスバリア性を示すため最も好ましい。
【0026】
ポリカルボン酸系ポリマーは、分子中にカルボキシル基を2個以上有する化合物や重合体であり、これらのカルボキシル基は、無水物の構造を形成していてもよい。
ポリカルボン酸系ポリマーの具体例としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸−メタクリル酸共重合体、アクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリマレイン酸、エチレン−マレイン酸共重合体などのオレフィン−マレイン酸共重合体、アルギン酸のように側鎖にカルボキシル基を有する多糖類、カルボキシル基含有のポリアミド、ポリエステルなどを例示することができる。上記ポリカルボン酸系ポリマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
ポリカルボン酸系ポリマーは金属化合物と反応することで、さらに優れたガスバリア性を示し、特に高湿度下で優れたガスバリア性を示す。
金属化合物を構成する金属としては、特に限定されないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の1価の金属や、マグネシウム、カルシウム、ジルコニウム、亜鉛、銅、コバルト、鉄、ニッケル、アルミニウム等の2価以上の金属が挙げられる。
これら金属を含有する金属化合物としては、金属単体を含む、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩等の無機塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩等の有機塩、ポリ(メタ)アクリル酸塩等のポリ酸塩等が挙げられる。これらのうち2価以上の金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩が好ましく、成型物との接着性やハンドリング性の観点から、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムなどのマグネシウム化合物や、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムなどのカルシウム化合物や、酸化亜鉛及び水酸化亜鉛などの亜鉛化合物がより好ましく、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムなどのマグネシウム化合物が最も好ましい。上記金属化合物は一種または二種以上併用してもよい。金属化合物の形状としては粒子状のものが好ましい。
【0028】
金属化合物は、有機系コート層上に塗布するオーバーコート層中に含有されていても、ガスバリア層の基材フィルム中に含有されていても良い。基材フィルム中に金属化合物を含有させる方法は特に限定されず、その製造工程の任意の時点で、配合することができる。例えば、基材フィルムを構成する熱可塑性樹脂を重合するときに金属化合物を添加する方法や、熱可塑性樹脂と金属化合物とを押出機にて混練する方法や、金属化合物を高濃度に練り込んで配合したマスターバッチを製造し、これを熱可塑性樹脂に添加して希釈する方法(マスターバッチ法)などが挙げられる。
【0029】
有機バリアフィルムにおける、有機系コート層の厚みは0.05〜3μmであることが好ましく、0.05〜2μmであることがより好ましく、0.08〜1μmであることが特に好ましい。
【0030】
前記ガスバリア層は、突刺強度、ピンホール強度、衝撃強度などの機械的物性の観点から、基材フィルムにポリアミド系フィルムを用いることが好ましい。特に、レトルト食品用包装材料においては、レトルト殺菌処理という過酷な処理を施すため、破袋やピンホールなどが発生しやすく優れた機械的物性が要求される。
【0031】
ポリアミド系フィルムを構成するポリアミド樹脂としては、ナイロン6、7、10、11、12、4.10、5.6、6.6、6.9、6.10、6.11、6.12、10.10、6T、9T、10T、6I、MXD6(メタキシレンジパンアミド6)、6/6.6、6/12、6/6T、6/6I、6/MXD6等を挙げることができる。中でも、耐熱性と機械的物性のバランスに優れるナイロン6が好ましい。
ポリアミド系フィルムは、前記ポリアミド樹脂単独からなるものでもよく、2種以上を混合したものでもよく、単層フィルムでも複層フィルムでもよい。
【0032】
ポリアミド系フィルムは、突刺強度、ピンホール強度、衝撃強度などの機械的物性を向上させる観点で、少なくとも一軸方向に延伸されたフィルムが好ましく、二軸延伸されたフィルムがより好ましい。
【0033】
ポリアミド系フィルムの平均厚みは、機械的物性の観点から10μm以上であることが好ましい。また、印刷やラミネートなどの加工操業性の観点から、30μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがさらに好ましく、15μm以下であることが最も好ましい。
【0034】
有機バリアフィルムの市販品として、例えば、ユニチカ社製のエンブレムHG、エンブレムNV、凸版印刷社製のベセーラAR、クラレ社製のクラリスタNなどが挙げられる。
【0035】
積層体を製造する方法としては、本発明のシーラントフィルムとガスバリア層とをラミネート接着剤を介してラミネートする方法や、シーラントフィルムとガスバリア層との間にインキ層を設けてラミネート接着剤により順次ラミネートする方法等が挙げられ、特に限定されるものではない。
【0036】
ラミネート接着剤は、公知のものが使用できる。例えば、イソシアネート系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、ポリオレフィン系、アルキルチタネート系等のコート剤が挙げられる。これらの中で、密着性、耐熱性、耐水性などの効果を勘案すると、イソシアネート系、ポリウレタン系、及びポリエステル系のコート剤が好ましい。さらには、イソシアネート化合物、ポリウレタン及びウレタンプレポリマーの1種または2種以上の混合物及び反応生成物が好ましく、ポリエステル、ポリオール及びポリエーテルの1種または2種以上とイソシアネートとの混合物および反応生成物またはこれらの溶液または分散液であることがより好ましい。
ラミネート接着剤の厚みは、0.1μmより厚くすることが好ましく、生産性の観点から10μm以下程度であることが好ましい。
【0037】
インキ層は、インキにより形成される文字、絵柄等の層である。インキとしては、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系、塩化ビニル系等のインキバインダー樹脂に、各種顔料、体質顔料、及び可塑剤、乾燥剤、安定剤等の添加物などが添加されてなる任意のインキを用いることができる。
インキ層の形成方法としては、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアコート等の周知の塗布方式を用いることができる。
【0038】
本発明において、積層体は、内容物保存性の観点から、レトルト殺菌処理(120℃、1.8気圧で30分間)後の、20℃×65%RHにおける酸素透過度が、50ml/(m
2・day・MPa)以下であることが好ましく、40ml/(m
2・day・MPa)以下であることがさらに好ましく、30ml/(m
2・day・MPa)以下であることが最も好ましい。酸素透過度が50ml/(m
2・day・MPa)より大きい場合は、長期保存によって、充填された内容物が酸素などフィルムを透過したガスによって変質する恐れがある。
【0039】
本発明において、積層体は、内容物の可視化の観点で、ヘーズが30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることが最も好ましい。
【0040】
本発明の積層体は、美麗性の観点から、2%アルコール耐性試験前後の積層体全体のヘーズ変化Δが、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがさらに好ましく、8%以下であることが最も好ましい。ヘーズ変化Δが20%を超えると、アルコール成分を内容物に含む場合、積層体の白化が顕著に確認され外観不良が生じ問題となる。
なお、本発明におけるアルコール耐性試験とは、製袋した積層体中に所定の濃度のアルコール水溶液を充填し、熱水処理(120℃、1.8気圧で30分間)した後、23℃×50%RHにて3日間調湿する試験である。
【0041】
本発明の積層体は、ボイル、レトルト殺菌処理後の酸素ガスバリア性や外観美麗性を必要とする様々な分野に適用することができる。例えば、各種の包装材料として好ましく使用でき、特にアルコールを代表とする揮発性物質を含む食品包装用分野に好適である。
【実施例】
【0042】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明について具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、本願の実施例及び比較例では、揮発性物質としてアルコール(エタノール;20℃における蒸気圧が5.6kPa)を使用している。
【0043】
1.測定方法
下記の実施例、比較例において用いた測定方法を以下に示す。
【0044】
(1)引張弾性率
JIS K−7127に記載の方法に準じて、島津製作所社製オートグラフ(引張試験機)AG−1S型を用いて、湿度23℃、相対湿度50%雰囲気下にて、シーラントフィルムの引張弾性率を測定した。フィルムのMD方向およびTD方向についてそれぞれ5点測定し、合計10点の測定値の平均値を引張弾性率とした。
【0045】
(2)低温衝撃強度
得られた積層体の低温衝撃強度は、東洋精機製作所製のフィルムインパクトテスタを用いて、温度5℃の雰囲気下で、直径7cmφのリング状フィルムの打ち抜きに要した衝撃強度を測定した。各試料それぞれ5点測定し、その平均値を低温衝撃強度とした。全ての測定は、ガスバリア層側から、重量30kg、直径12.7mmφ(0.5インチφ)のインパクトヘッドを当てることにより実施した。
【0046】
(3)酸素透過度
得られた積層体の熱水処理(120℃、1.8気圧で30分間)前後の試料を用い、JIS K−7126−2に記載の方法に準じて、モコン社製酸素バリア測定機(OXY−TRAN 2/20MH)で温度20℃、相対湿度90%の雰囲気下における酸素透過度をそれぞれ測定した。
【0047】
(4)ヘーズ変化
得られた積層体を10cm×5cmの大きさに切り出し、JIS K−7136に記載の方法に準じて、日本電色工業社製ヘーズメーターNDH4000で、温度23℃、相対湿度50%雰囲気下にて、アルコール耐性試験前のヘーズを測定した。
次に、得られた積層体を製袋し、所定濃度のアルコール水溶液を充填しヒートシールにより密閉後、熱水処理(120℃、1.8気圧で30分間)を施し、開封してアルコール水溶液を取り除いて拭き取った後、積層体を切り出して23℃×50%RHにて1日間調湿したものをアルコール耐性試験後の試料としてヘーズを測定した。ヘーズ変化は下式のようにアルコール耐性試験前後の積層体のヘーズの差分である。
アルコール耐性試験後のヘーズ[%]−アルコール耐性試験前のヘーズ[%]=ヘーズ変化Δ[%]
なお、アルコール耐性試験におけるアルコール濃度は、0質量%、1.0質量%、1.5質量%、2.0質量%の4水準で実施した。
【0048】
(5)外観評価
(4)ヘーズ変化と同様に、0質量%、1.0質量%、1.5質量%、2.0質量%の4水準のアルコール耐性試験を実施し、試験後の外観評価を行った。積層体の外観は目視で判定し、
図1で示した水泡が発生していない場合を「〇」、水泡が発生した場合を「×」とした。
【0049】
2.原料
下記の実施例、比較例におけるシーラントフィルムを作製する際に使用した原料は、以下のとおりである。
<ランダム共重合ポリプロピレン(樹脂A)>
プロピレン含有量が93.8質量%、融点が135℃であるプロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂。
<ブロック共重合ポリプロピレン(樹脂B)>
プロピレン含有量が97.5質量%、融点が166℃であるプロピレン−エチレンブロック共重合体樹脂。
<添加物A>
エチレン−ブテンランダム共重合体樹脂である三井化学社製「タフマーA4085」。
<添加物B>
スチレン−ブタジエン共重合体樹脂であるJSR社製「DYNARON」。
【0050】
実施例1〜7
樹脂Aを94質量%、添加物Aを6質量%となるように、混合機でドライブレンドし、これを押出機へ供給し、230℃で溶融して巾70mmのTダイより押出してシート状に形成し、35℃の冷却ロールに巻き付けて冷却固化させ、厚み50μmである無延伸ランダム共重合体ポリプロピレンフィルムを得た。
【0051】
実施例8
実施例1と同様の原料、原料比、手法を用いて厚み70μmの無延伸ランダム共重合体ポリプロピレンフィルムを得た。
【0052】
実施例9
原料を、樹脂Aを85質量%、添加物Aを10質量%、添加物Bを5質量%に変更した以外は、実施例1と同様の手法を用いて厚み50μmである無延伸ランダム共重合体ポリプロピレンフィルムを得た。
【0053】
実施例10
原料を、樹脂Aを60質量%、添加物Aを30質量%、添加物Bを10質量%に変更した以外は、実施例1と同様の手法を用いて厚み50μmである無延伸ランダム共重合体ポリプロピレンフィルムを得た。
【0054】
実施例11
原料を、樹脂Aを55質量%、添加物Aを40質量%、添加物Bを5質量%に変更した以外は、実施例1と同様の手法を用いて厚み50μmである無延伸ランダム共重合体ポリプロピレンフィルムを得た。
【0055】
比較例1
原料を、樹脂Aを50質量%、添加物Aを50質量%に変更した以外は、実施例1と同様の手法を用いて厚み50μmである無延伸ランダム共重合体ポリプロピレンフィルムを得た。
【0056】
比較例2
樹脂Bを90質量%と、添加物Aを10質量%とを、混合機によりドライブレンドし、これを押出機へ供給し、230℃で溶融して巾70mmのTダイより押出してシート状に形成し、35℃の冷却ロールに巻き付けて冷却固化させ、厚み50μmである無延伸ブロック共重合体ポリプロピレンフィルムを得た。
【0057】
比較例3
比較例1と同様の原料、原料比、手法を用いて厚み70μmの無延伸ブロック共重合体ポリプロピレンフィルムを得た。
【0058】
比較例4
原料を、樹脂Bを50質量%、添加物Aを30質量%、添加物Bを20質量%に変更した以外は、比較例1と同様の手法を用いて厚み50μmである無延伸ブロック共重合体ポリプロピレンフィルムを得た。
【0059】
比較例5
三井化学東セロ社製のRXC−22(厚み50μmの無延伸ブロック共重合体ポリプロピレンフィルム)を用いた。
【0060】
実施例1〜11、比較例1〜5のシーラントフィルムの組成、物性については表1に示した。
【0061】
【表1】
【0062】
(積層体)
実施例1〜11、比較例1〜5において、表2に記載のガスバリア層のバリア面に、ポリウレタン系接着剤(DICグラフィックス社製ディックドライLX500/KR−90S)を乾燥後塗布量が5g/m
2となるように塗布し、80℃の熱風乾燥器で10秒間乾燥させて、接着層面にシーラントフィルムのコロナ処理面をニップロールにて貼り合わせて(ニップ条件:80℃)、40℃の雰囲気で72時間エージングし、シーラントフィルム/接着層/ガスバリア層(バリア面/基材面)の順に積層した積層体を得た。
【0063】
ガスバリア層の詳細を以下に示す。
【0064】
<ガスバリア層A>
ナイロン6樹脂(ユニチカ社製 A1030BRF、相対粘度3.0)55質量部と酸化マグネシウム(タテホ化学工業社製 PUREMAG FNM−G 平均粒径0.4μm)45質量部とを混練してマスターチップを予め作製した。ナイロン6樹脂(ユニチカ社製 A1030BRF、相対粘度3.0)と上記マスターチップとを酸化マグネシウムの含有量が1質量%となるように混合した。この混合物を押出機に投入し、270℃のシリンダー内で溶融した。溶融物をTダイオリフィスよりシート状に押出し、10℃に冷却した回転ドラムに密着させて急冷することで、厚さ150μmの未延伸フィルム基材を得た。得られた未延伸フィルムを50℃の温水槽に送り、2分間の浸水処理を施した。
次に、PVA水溶液(クラレ社製 ポバール105、ケン化度98〜99%、平均重合度約500、固形分15質量%)とEMA水溶液(重量平均分子量60,000のエチレン・アクリル酸メチル共重合と水酸化ナトリウムを水に加え、加熱溶解し、EMAのカルボキシル基の10モル%が水酸化ナトリウムにより中和された、固形分15質量%)とを質量比(固形分)50/50となるように混合して固形分10質量%の有機系コート層形成用塗工液を得た。この塗工液を、浸水処理を施した未延伸フィルムの片面に塗布した後、乾燥した。
有機系コート層が形成された未延伸フィルムの端部を、テンター式同時二軸延伸機のクリップに保持させ、180℃で、MD、TDにそれぞれ3.3倍に延伸した。その後、TDの弛緩率を5%として、210℃で4秒間の熱処理を施し、室温まで徐冷して、厚みが15μmのフィルム基材に、厚みが0.3μmの有機系コート層を積層したガスバリア層Aを得た。
<ガスバリア層B>
ナイロン6樹脂(ユニチカ社製 A1030BRF、相対粘度3.0)を押出機に投入し、270℃のシリンダー内で溶融した。溶融物をTダイオリフィスよりシート状に押出し、10℃に冷却した回転ドラムに密着させて急冷することで、厚さ150μmの未延伸フィルム基材を得た。得られた未延伸フィルムを50℃の温水槽に送り、2分間の浸水処理を施した。
未延伸フィルムの端部を、テンター式同時二軸延伸機のクリップに保持させ、180℃で、MD、TDにそれぞれ3.3倍に延伸した。その後、TDの弛緩率を5%として、210℃で4秒間の熱処理を施し、室温まで徐冷して、厚みが15μmのフィルム基材を得た。
次に、PVA水溶液(クラレ社製、ポバール105、ケン化度98〜99%、平均重合度約500、固形分15質量%)とEMA水溶液(重量平均分子量60,000のエチレン・アクリル酸メチル共重合と水酸化ナトリウムを水に加え、加熱融解し、EMAのカルボキシル基の10モル%が水酸化ナトリウムにより中和された、固形分15質量%)とを質量比(固形分)30/70になるように混合して固形分10質量%の有機系コート層形成用塗工液を得た。この塗工液を、得られたフィルム基材上に塗布した後、電気オーブンで80℃2分乾燥した後、電気オーブンで180℃2分乾燥及び熱処理を行い、厚さ0.5μmの有機系コート層を積層した積層フィルムを得た。
酸化マグネシウム分散体溶液(平均粒子径3.5μm、結晶子径0.01μm、BET比表面積145m
2/gの酸化マグネシウム粉体の懸濁トルエン溶液に、酸化マグネシウム100質量部に対して25質量部の分散剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル)を加え、攪拌後、ビーズミルを用い分散された、固形分20質量%)に、バイロンGK130ポリエステル溶液(東洋紡社製、バイロンGK130をトルエン/酢酸エチル/MEK混合触媒に溶解した、固形分15質量%)と、ポリイソシアネート化合物(東洋インキ製造社製、BX4773)を、酸化マグネシウム/ポリエステル/ポリイソシアネートの重量比が20/83.3/16.7になるように調整し、さらに触媒としてジオクチル錫ラウレート(三共有機合成社製、STANN SNT−1F)1%酢酸エチル溶液、およびトルエンを混合し、固形分10%のオーバーコート層形成用塗料を得た。この塗工液を、得られた積層フィルムの有機系コート層上に塗布した後、電気オーブンで80℃30秒乾燥及び熱処理を行い、有機系コート層上に厚さ0.7μmのオーバーコート層を積層したガスバリア層Bを得た。
<ガスバリア層C>
酸化マグネシウム分散体溶液を炭酸カルシウム分散体水溶液(竹原化学工業社製、カルミンML)に変更したこと以外は、ガスバリア層Bと同様にしてガスバリア層Cを得た。
<ガスバリア層D>
酸化マグネシウム分散体溶液を酸化亜鉛分散体水溶液(住友大阪セメント社製、ZW143)に変更したこと以外は、ガスバリア層Bと同様にしてガスバリア層Dを得た。
<ガスバリア層E>
厚み15μmの二軸延伸ポリアミドフィルム上に、金属蒸着層を有するガスバリア性フィルム。凸版印刷社製、GL−ARYを使用した。
<ガスバリア層F>
厚み15μmの二軸延伸ポリアミドフィルム上に、PVDCコート層を有するガスバリア性フィルム。
<ガスバリア層G>
厚み15μmの二軸延伸ポリアミドフィルム。
【0065】
実施例1〜11、比較例1〜5において、シーラントフィルムに積層するガスバリア層の種類、積層体の特性について、表2に示した。
【0066】
【表2】
【0067】
表2の総合評価は、揮発性物質を含む内容物のレトルト用包装材料として使用する際の適性を示しており、積層体の酸素透過度、アルコール耐性試験におけるヘーズ変化、外観評価の結果から、下記判定基準に基づいて評価した。実用的には、「A」と「B」の基準が求められ、「A」の基準が好ましい。
A・・・ヘーズ変化Δが8%以下、且つ、2.0%アルコール耐性試験における外観評価が〇判定、且つ、酸素透過度が30ml/(m
2・day・MPa)以下
B・・・ヘーズ変化Δが20%以下、且つ、2.0%アルコール耐性試験における外観評価が〇判定であり、「A」を満たさない
C・・・ヘーズ変化Δが20%を超える、または、2.0%アルコール耐性試験における外観評価が×判定
【0068】
実施例1〜11のシーラントフィルムは、いずれもランダム共重合ポリプロピレン樹脂を含有し、引張弾性率が本発明で規定する範囲であるため、ガスバリア層と積層した積層体に揮発性成分を含む内容物を充填し、熱水処理を施した後でも、揮発性成分による膨張を抑制することができ、白化及び水泡現象などの外観不良を抑制できた。
【0069】
実施例1、2および8〜11の積層体は、ポリカルボン酸系ポリマーと金属化合物であるマグネシウム化合物とが反応したガスバリア層であり、熱水処理後における酸素透過度が30ml/(m
2・day・MPa)以下とガスバリア性に特に優れており、揮発性成分を含む内容物のレトルト用包装材料としての使用に適した積層体であった。
【0070】
比較例1のシーラントフィルムは、引張弾性率が本発明で規定する範囲を満たさなかったため、得られた積層体に揮発性成分を含む内容物を充填し、熱水処理を施すと、白化及び水泡現象などの外観不良が発生した。
【0071】
比較例2〜5のシーラントフィルムは、ランダム共重合ポリプロピレン樹脂を含有せず、ブロック共重合体ポリプロピレン樹脂を含有するシーラントフィルムであったため、得られた積層体に揮発性成分を含む内容物を充填し、熱水処理を施すと、白化及び水泡現象などの外観不良が発生した。