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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-191819(P2021-191819A)
(43)【公開日】2021年12月16日
(54)【発明の名称】ゴム組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20211119BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20211119BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20211119BHJP
【FI】
   C08L21/00
   C08K5/3415
   C08K5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-98738(P2020-98738)
(22)【出願日】2020年6月5日
(71)【出願人】
【識別番号】000195616
【氏名又は名称】精工化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100217102
【弁理士】
【氏名又は名称】冨永 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】八巻 大輔
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC001
4J002AC011
4J002BB151
4J002EK006
4J002EK016
4J002EK036
4J002EN067
4J002EU027
4J002FD037
4J002FD146
4J002GC00
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】得られるゴム製品の物性の低下を抑制しつつ、更に、得られるゴム製品の耐熱性を向上させることができるゴム組成物を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表される化合物と、有機過酸化物と、を含有するゴム組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分と、有機過酸化物と、下記一般式(1)で表される化合物と、を含有する、ゴム組成物。
【化1】
(一般式(1)中、Rは、水素またはメチル基である。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物の配合量が、前記ゴム成分100質量部に対して、0.1〜5質量部である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記有機過酸化物の配合量が、前記ゴム成分100質量部に対して、1〜30質量部である、請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記一般式(1)で表される化合物に対する前記有機過酸化物の比の値が、0.5〜100である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
一般式(1)中、Rが、水素である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のゴム組成物の製造方法であって、
前記ゴム成分と前記有機過酸化物とを混合してゴム材料を作製し、その後、前記ゴム材料に、前記一般式(1)で表される化合物を混合して未加硫ゴム組成物であるゴム組成物を作製する、ゴム組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及びその製造方法に関する。更に詳しくは、得られるゴム製品の耐熱性が向上されたゴム組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム組成物の耐熱性を得るために老化防止剤を配合することが一般的に行われており、様々な老化防止剤が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、ゴム組成物中に配合される架橋剤の種類によっては、老化防止剤を配合しないことも通常行われている。
【0004】
具体的には、架橋剤として硫黄を用いる硫黄加硫を行う場合には、老化防止剤が配合され、また、多くの場合、架橋剤に過酸化物を用いる過酸化物架橋を行う場合には、老化防止剤は配合されない。
【0005】
これは、非特許文献1,2に記載のように、アミン系、フェノール系などの老化防止剤は、過酸化物架橋を阻害することが知られているためである。
【0006】
即ち、非特許文献1では、過酸化物架橋に対する老化防止剤の影響について記載されており、上述の通り、一般的な老化防止剤であるアミン系、フェノール系は過酸化物架橋を阻害すると報告されている。そして、加硫度試験の結果においても、老化防止剤の種類によって影響の大小はあるが、老化防止剤の無添加品において最も高物性が得られていることが報告されている。また、非特許文献2においても、老化防止剤が架橋反応に影響を与えることを示す報告がされている。
【0007】
つまり、ゴム組成物に老化防止剤を配合することは、架橋剤として硫黄を用いる硫黄加硫においては有効であり、硫黄加硫においては、老化防止剤による架橋反応への影響が少なく、得られるゴム製品の物性の低下は殆どない。
【0008】
一方で、架橋剤に過酸化物を用いる過酸化物架橋においては、その架橋構造に由来して耐熱性を付与することが可能であり、上記の通り、老化防止剤が架橋反応に影響を与えるという不具合があることから、老化防止剤は使用しないことが通常である。
【0009】
即ち、過酸化物架橋に老化防止剤を使用することは、耐熱性を付与することが可能になるが、架橋反応時に起こるラジカル反応に対して老化防止剤が悪影響を及ぼすので、得られるゴム製品の物性が低下してしまうことが一般的に知られている。そのため、上記の通り、過酸化物架橋では老化防止剤は使用しないことが通常である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭47−47309号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】日本ゴム協会誌 2018,91,P446
【非特許文献2】日本ゴム協会誌 1971,44,P401
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の通り、過酸化物架橋において老化防止剤は通常は使用しないが、過酸化物架橋で得られるゴム製品の耐熱性を更に向上させるという目的で、敢えて老化防止剤を添加することがある。
【0013】
このように敢えて老化防止剤を添加することがあることから、過酸化物架橋において老化防止剤が悪影響を及ぼすことにより、得られるゴム製品の物性が低下することを考慮して、過酸化物架橋における架橋反応に対する影響の少ない老化防止剤の選択や開発が行われている。しかし、十分な効果を発揮するものの開発や報告は未だ無かった。
【0014】
このようなことから、有機過酸化物の存在下における過酸化物架橋反応が行われ、これにより得られるゴム製品の物性の低下が抑制されつつ、得られるゴム製品の耐熱性が向上されたゴム組成物が切望されていた。
【0015】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明のゴム組成物は、ゴム成分と有機過酸化物を含む原料中に一般式(1)で表される化合物を配合することによって、得られるゴム製品の物性の低下を抑制しつつ、更に、得られるゴム製品の耐熱性を向上させることができるものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、以下に示すゴム組成物及びその製造方法が提供される。
【0017】
[1] ゴム成分と、有機過酸化物と、下記一般式(1)で表される化合物と、を含有する、ゴム組成物。
【0018】
【化1】
(一般式(1)中、Rは、水素またはメチル基である。)
【0019】
[2] 前記一般式(1)で表される化合物の配合量が、前記ゴム成分100質量部に対して、0.1〜5質量部である、前記[1]に記載のゴム組成物。
【0020】
[3] 前記有機過酸化物の配合量が、前記ゴム成分100質量部に対して、1〜30質量部である、前記[1]または[2]に記載のゴム組成物。
【0021】
[4] 前記一般式(1)で表される化合物に対する前記有機過酸化物の比の値が、0.5〜100である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載のゴム組成物。
【0022】
[5] 一般式(1)中、Rが、水素である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載のゴム組成物。
【0023】
[6] 前記[1]〜[5]のいずれかに記載のゴム組成物の製造方法であって、
前記ゴム成分と前記有機過酸化物とを混合してゴム材料を作製し、その後、前記ゴム材料に、前記一般式(1)で表される化合物を混合して未加硫ゴム組成物であるゴム組成物を作製する、ゴム組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明のゴム組成物は、得られるゴム製品の物性の低下を抑制しつつ、更に、得られるゴム製品の耐熱性を向上させることができるという効果を奏するものである。
【0025】
本発明のゴム組成物の製造方法は、得られるゴム製品の物性の低下を抑制しつつ、更に、得られるゴム製品の耐熱性を向上させることが可能なゴム組成物を製造できるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。
【0027】
(1)ゴム組成物:
本発明のゴム組成物は、ゴム成分と、有機過酸化物と、下記一般式(1)で表される化合物と、を含有するものである。
【0028】
【化2】
(一般式(1)中、Rは、水素またはメチル基である。)
【0029】
このようなゴム組成物は、得られるゴム製品の物性の低下を抑制しつつ、更に、得られるゴム製品の耐熱性を向上させることができる。更には、本発明のゴム組成物は、粘度上昇が速いのでゴム製品の生産性が高いものである。
【0030】
(1−1)一般式(1)で表される化合物:
一般式(1)で表される化合物は、老化防止剤としての機能を発揮して、製造されるゴム製品の老化を防止するものである。即ち、製造されるゴム製品は、良好な熱老化性を有するものとなる。
【0031】
更に、一般式(1)で表される化合物は、その分子内にマレイミド基を1つ持つものであり、このマレイミド基が加硫に際してゴム成分と反応する。また、一般式(1)で表される化合物は、有機過酸化物による架橋反応時に生じるラジカル反応に対して与える影響が小さい。このようなことから、得られるゴム製品の物性の低下を抑制することが可能になると考えらえる。
【0032】
一般式(1)で表される化合物の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましく、1〜3質量部であることが更に好ましい。ゴム成分100質量部に対して0.1質量部未満であると、十分な老化防止効果が得られないおそれがある。5質量部超であると、得られるゴム製品の物性が低下する傾向があり、また、配合量に対する効果が十分でなくコスト面で劣る傾向がある。
【0033】
一般式(1)で表される化合物は、従来公知の製造方法を採用することができるが、例えば、無水マレイン酸と一方に1級アミンを有するアミノジフェニルアミンとを溶液中で脱水縮合反応させることで製造することができる。
【0034】
一般式(1)中のRは、水素またはメチル基とすることができ、水素及びメチル基のいずれを採用してもよい。
【0035】
なお、一般式(1)で表される化合物としては、一般式(1)中のRが、水素であるもののみであってもよいし、メチル基であるもののみであってもよい。更には、本発明のゴム組成物中には、一般式(1)で表される化合物として、一般式(1)中のRが、水素であるもの、及び、メチル基であるものが混在していても良い。
【0036】
(1−2)有機過酸化物:
有機過酸化物は、過酸化水素(即ち、H−O−O−H)の1個または2個の水素原子を他の置換基で置換して得られるものであり、分子中に、酸素−酸素(即ち、−O−O−)結合を有する化合物である。この有機過酸化物は、ゴム製品の製造に際して、ゴム成分とラジカル反応して、得られるゴム製品の物性を向上させるものである。
【0037】
有機過酸化物は、上記のようにゴム成分とラジカル反応するものである限り特に制限はなく、従来公知の有機過酸化物を適宜用いることができる。
【0038】
有機過酸化物としては、例えば、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、1,1,3,3,−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、1,1−tert−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジtert−ブチルパーオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジtertジブチルパーオキシヘキシン−3、1,3−ビスtert−ブチルパーオキシイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジベンゾイルパーオキシヘキサン、1,1−ビスtert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビスtert−ブチルパーオキシバレレート、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイドイソブチレート、tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカルボナート、tert−ブチルパーオキシアリルモノカルボナート、p−メチルベンゾイルパーオキサイドなどを挙げることができる。なお、これらの有機過酸化物は、1種単独で用いても2種以上を配合して用いてもよい。
【0039】
有機過酸化物の配合量は、特に添加量の制限はないが、架橋速度や製造するゴム製品の物性、製造コスト等の観点から、適正な量を適宜選択することができる。具体的には、ゴム100質量部に対して、1〜30質量部程度とすることができ、更には、2〜10質量部程度とすることができる。
【0040】
本発明の組成物においては、一般式(1)で表される化合物に対する有機過酸化物の比の値(式:有機過酸化物/一般式(1)で表される化合物)が、0.3〜100であることが好ましく、0.3〜75であることが更に好ましく、0.4〜30であることが特に好ましい。このような範囲とすることによって、作製するゴム製品についての耐熱性を更に向上させることができる。
【0041】
(1−3)ゴム成分:
ゴム成分は、ゴム製品(即ち、加硫ゴム製品)の主たる原料となるものであり、従来公知のものを特に制限はなく適宜選択して使用することができる。
【0042】
ゴム成分としては、加熱等によって架橋構造を形成する弾性を有するポリマーのことであり、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ポリサルファイドゴム、フッ素ゴムなどを挙げることができる。なお、これらのゴム成分は、1種単独で用いても2種以上を配合して用いてもよい。
【0043】
ゴム成分は、例えば、タイヤ、ゴムマット等のゴム製品の主たる原料となるものである。
【0044】
(1−4)その他の成分:
本発明のゴム組成物は、上記ゴム成分、有機過酸化物、及び一般式(1)で表される化合物以外に、本発明の作用・効果を損なわない限りにおいてその他の化合物を更に含有していても良い。
【0045】
その他の化合物としては、従来公知の添加剤を適宜採用することができる。従来公知の添加剤としては、具体的には、カーボンブラック、白色充填剤、加硫促進剤、プロセスオイル、加工助剤などを挙げることができる。
【0046】
(2)本発明のゴム組成物の製造方法:
本発明のゴム組成物は、その製造方法について特に制限はないが、例えば、以下のように製造することができる。即ち、まず、ゴム成分と有機過酸化物とを混合してゴム材料を作製し、その後、作製したゴム材料に、一般式(1)で表される化合物を混合する。このようにして、未加硫ゴム組成物であるゴム組成物を作製することができる。
【0047】
なお、ゴム成分と有機過酸化物と一般式(1)で表される化合物とを混合する手順は上記順序に限らず、ゴム成分、有機過酸化物、及び一般式(1)で表される化合物を一度に投入して混合してもよいし、予め、ゴム成分及び一般式(1)で表される化合物を混合し、その後、これに有機過酸化物を投入して混合してもよい。
【0048】
(3)本発明のゴム組成物の用途:
本発明のゴム組成物は、例えばプレス加硫して加硫ゴム(ゴム製品)とすることができる。このゴム製品としては、例えば、タイヤ、ゴムマット等を挙げることができる。
【0049】
なお、本発明のゴム組成物は、プレス加硫に限らず他の加硫形式を採用することもできる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(ゴム成分)100質量部、酸化亜鉛5質量部、ステアリン酸1質量部、HAFカーボンブラック50質量部、ナフテンオイル10質量部、を1.7Lのバンバリーミキサーで4分間混練を行った。これに有機過酸化物として商品名「パークミルD−40」(日油社製)6.8質量部を直径約24cmの2本ロールを用いて添加し、更に混練を行ってゴム材料を作製した。
【0052】
作製したゴム材料に、老化防止剤として4−(アニリノフェニル)マレイミド((一般式(1)中のRが水素))を1質量部添加し、上記2本ロールで混練りして、未加硫ゴム組成物を得た。
【0053】
そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、下記の評価(加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性)を行った。加硫ゴム組成物は、未加硫ゴム組成物を170℃、16分でプレス加硫して得られた厚さ2.0mmのものとした。
【0054】
(1)加硫度:
JIS K 6300に準拠し、ローターレスレオメーター(東洋精機製作所社製)を用いて、170℃で20分での最大トルク(MH)を測定した。評価結果を表1に示す。
【0055】
(2)スコーチ性:
JIS K 6300に準拠し、ムーニー粘度計(上島製作所社製)を用いて、140℃における、最低粘度から5M上昇する時間(t5)及び35M上昇する時間(t35)を測定した。t35−t5で求められる時間をtΔ30(分)とし、これにより粘度上昇の速さ(スコーチ性)を測定した。評価結果を表1に示す。
【0056】
(3)常態物性:
JIS K 6251に準拠し、加硫ゴム組成物を3号ダンベルで打ち抜いて試験片を作製した。この試験片についてオートグラフ(島津製作所社製)を用いて、引張強さ(TB)、引張伸び(EB)、及び、100%モジュラス(M100)を測定した。更に、この試験片について、JIS K 6253に準拠し、デュロメータータイプA(テクロック社製)を用いて硬度(HS)を測定した。評価結果を表1に示す。
【0057】
(4)熱老化性:
JIS K 6257に準拠し、テストチューブ老化試験機(東洋精機製作所社製)を用いて、150℃での1000時間後の条件における引張特性(引張強さ(TB)、引張伸び(EB)、及び、100%モジュラス(M100))及び硬度(HS)を測定し、引張特性の変化率、及び硬度の変化値を算出した。評価結果を表1に示す。なお、表1中、M100変化率の欄における「−」は、試験片が100%を超えて伸びなかったために応力が取得できていない状態を示す。
【0058】
【表1】
【0059】
(実施例2)
老化防止剤である4−(アニリノフェニル)マレイミドの配合量を0.1質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、実施例1と同様に、加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性の各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0060】
(実施例3)
老化防止剤である4−(アニリノフェニル)マレイミドの配合量を5質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、実施例1と同様に、加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性の各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0061】
(実施例4)
老化防止剤を「N−(4−p−トルイジニルフェニル)マレイミド」に変更したこと(一般式(1)中のRがメチル基)以外は、実施例1と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、実施例1と同様に、加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性の各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0062】
(実施例5)
老化防止剤である4−(アニリノフェニル)マレイミドの配合量を0.09質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、実施例1と同様に、加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性の各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0063】
(実施例6)
老化防止剤である4−(アニリノフェニル)マレイミドの配合量を6質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、実施例1と同様に、加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性の各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0064】
(比較例1)
老化防止剤を添加しないこと以外は、実施例1と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、実施例1と同様に、加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性の各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0065】
(比較例2)
一般式(1)で表される化合物に代えて4,4’−ジクミルジフェニルアミン(老化防止剤)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、実施例1と同様に、加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性の各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0066】
(参考例1)
老化防止剤に代えて多官能性モノマー(架橋剤)である「トリメチロールプロパントリメタクリレート」を添加し、その配合量を3質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、実施例1と同様に、加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性の各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0067】
この参考例1では、老化防止剤に代えて多官能性モノマー(架橋剤)を使用しており、ゴム製品の標準的な物性(常態物性)の値の参考とすることができる。また、この参考例1では、スコーチ性の評価値が小さくなっていることが分かる。これは、トリメチロールプロパントリメタクリレートによってゴム成分の架橋反応が更に促進したことによるものと考えられる。一方で、この参考例1のゴム組成物は、熱老化性の評価において、TB変化率やEB変化率の数値が大きくなっており、耐熱性に劣ることが分かる。つまり、老化防止剤ではないことから、老化防止という点では劣ることが分かる。
【0068】
(実施例7)
天然ゴム(ゴム成分)100質量部、酸化亜鉛5質量部、ステアリン酸3質量部、HAFカーボンブラック50質量部、ナフテンオイル10質量部、を1.7Lのバンバリーミキサーで4分間混練を行った。これに有機過酸化物として商品名「パーブチルP−40」(日油社製)6.8質量部を直径約24cmの2本ロールを用いて添加し、更に混練を行ってゴム材料を作製した。
【0069】
作製したゴム材料に、老化防止剤として4−(アニリノフェニル)マレイミド((一般式(1)中のRが水素))を1質量部添加し、上記2本ロールで混練りして、未加硫ゴム組成物を得た。
【0070】
そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、実施例1と同様の評価(加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性)を行った。評価結果を表2に示す。加硫ゴム組成物は、未加硫ゴム組成物を170℃、25分でプレス加硫して得られた厚さ2.0mmのものとした。
【0071】
【表2】
【0072】
(実施例8)
老化防止剤である4−(アニリノフェニル)マレイミドの配合量を0.1質量部に変更したこと以外は、実施例7と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、実施例1と同様に、加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性の各評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0073】
(実施例9)
老化防止剤である4−(アニリノフェニル)マレイミドの配合量を5質量部に変更したこと以外は、実施例7と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、実施例1と同様に、加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性の各評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0074】
(実施例10)
老化防止剤を「N−(4−p−トルイジニルフェニル)マレイミド」に変更したこと(一般式(1)中のRがメチル基)以外は、実施例7と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、実施例1と同様に、加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性の各評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0075】
(比較例3)
老化防止剤を添加しないこと以外は、実施例7と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、実施例1と同様に、加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性の各評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0076】
(比較例4)
一般式(1)で表される化合物に代えて4,4’−ジクミルジフェニルアミン(老化防止剤)を用いたこと以外は、実施例7と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、実施例1と同様に、加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性の各評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0077】
(比較例5)
一般式(1)で表される化合物に代えて「N−(4−(4−エトキシアニリノ)フェニル)マレイミド」(老化防止剤)を用いたこと(一般式(1)中のRがエトキシ基)以外は、実施例7と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、実施例1と同様に、加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性の各評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0078】
以上のように、表1、表2からも分かるように、実施例1〜10のゴム組成物は、比較例1〜5のゴム組成物に比べて、得られるゴム製品の物性の低下を抑制することができ、更に、得られるゴム製品の耐熱性を向上させることが分かる。
【0079】
具体的には、実施例1〜10のゴム組成物は、従来の老化防止剤を使用した比較例2、4、5のゴム組成物と比べて、ゴム成分の架橋への影響が小さいために、加硫度の評価において最大トルクを下げることがなく、また、常態物性の評価においても物性値の低下が抑制されていることが分かる。このことから、ゴム製品の物性の低下が抑制されていることが分かる。また、実施例1〜10のゴム組成物は、熱老化性の評価が良好であり、ゴム製品の耐熱性を向上させ、特に、実施例1〜4、7〜10のゴム組成物ではゴム製品の耐熱性を更に向上させることが分かる。比較例2、4のゴム組成物では、加硫度の評価値が小さく、十分なトルクが得られていない。比較例5は、化合物の構造が大きくなること(即ち、一般式(1)中のRが所定の条件を満たさないこと)で老化防止効果を与えるアミノ基の効果が低下する。従って、実施例1〜10に比べて、耐熱性が劣っている。
【0080】
また、実施例1〜10のゴム組成物は、老化防止剤を添加していない比較例1、3のゴム組成物よりも粘度上昇が速く(即ち、スコーチ性の評価値が小さく)、そして、従来の老化防止剤を使用した比較例2、4、5のゴム組成物よりも更に粘度上昇が速いことが分かる。このように粘度上昇が速いので、ゴム製品の生産性の観点からも優位性が高いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のゴム組成物は、タイヤなどのゴム製品を作製する材料として採用することができる。本発明のゴム組成物の製造方法は、タイヤなどのゴム製品を作製する材料であるゴム組成物の製造方法として採用することができる。