【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(ゴム成分)100質量部、酸化亜鉛5質量部、ステアリン酸1質量部、HAFカーボンブラック50質量部、ナフテンオイル10質量部、を1.7Lのバンバリーミキサーで4分間混練を行った。これに有機過酸化物として商品名「パークミルD−40」(日油社製)6.8質量部を直径約24cmの2本ロールを用いて添加し、更に混練を行ってゴム材料を作製した。
【0052】
作製したゴム材料に、老化防止剤として4−(アニリノフェニル)マレイミド((一般式(1)中のRが水素))を1質量部添加し、上記2本ロールで混練りして、未加硫ゴム組成物を得た。
【0053】
そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、下記の評価(加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性)を行った。加硫ゴム組成物は、未加硫ゴム組成物を170℃、16分でプレス加硫して得られた厚さ2.0mmのものとした。
【0054】
(1)加硫度:
JIS K 6300に準拠し、ローターレスレオメーター(東洋精機製作所社製)を用いて、170℃で20分での最大トルク(MH)を測定した。評価結果を表1に示す。
【0055】
(2)スコーチ性:
JIS K 6300に準拠し、ムーニー粘度計(上島製作所社製)を用いて、140℃における、最低粘度から5M上昇する時間(t5)及び35M上昇する時間(t35)を測定した。t35−t5で求められる時間をtΔ30(分)とし、これにより粘度上昇の速さ(スコーチ性)を測定した。評価結果を表1に示す。
【0056】
(3)常態物性:
JIS K 6251に準拠し、加硫ゴム組成物を3号ダンベルで打ち抜いて試験片を作製した。この試験片についてオートグラフ(島津製作所社製)を用いて、引張強さ(TB)、引張伸び(EB)、及び、100%モジュラス(M100)を測定した。更に、この試験片について、JIS K 6253に準拠し、デュロメータータイプA(テクロック社製)を用いて硬度(HS)を測定した。評価結果を表1に示す。
【0057】
(4)熱老化性:
JIS K 6257に準拠し、テストチューブ老化試験機(東洋精機製作所社製)を用いて、150℃での1000時間後の条件における引張特性(引張強さ(TB)、引張伸び(EB)、及び、100%モジュラス(M100))及び硬度(HS)を測定し、引張特性の変化率、及び硬度の変化値を算出した。評価結果を表1に示す。なお、表1中、M100変化率の欄における「−」は、試験片が100%を超えて伸びなかったために応力が取得できていない状態を示す。
【0058】
【表1】
【0059】
(実施例2)
老化防止剤である4−(アニリノフェニル)マレイミドの配合量を0.1質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、実施例1と同様に、加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性の各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0060】
(実施例3)
老化防止剤である4−(アニリノフェニル)マレイミドの配合量を5質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、実施例1と同様に、加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性の各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0061】
(実施例4)
老化防止剤を「N−(4−p−トルイジニルフェニル)マレイミド」に変更したこと(一般式(1)中のRがメチル基)以外は、実施例1と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、実施例1と同様に、加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性の各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0062】
(実施例5)
老化防止剤である4−(アニリノフェニル)マレイミドの配合量を0.09質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、実施例1と同様に、加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性の各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0063】
(実施例6)
老化防止剤である4−(アニリノフェニル)マレイミドの配合量を6質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、実施例1と同様に、加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性の各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0064】
(比較例1)
老化防止剤を添加しないこと以外は、実施例1と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、実施例1と同様に、加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性の各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0065】
(比較例2)
一般式(1)で表される化合物に代えて4,4’−ジクミルジフェニルアミン(老化防止剤)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、実施例1と同様に、加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性の各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0066】
(参考例1)
老化防止剤に代えて多官能性モノマー(架橋剤)である「トリメチロールプロパントリメタクリレート」を添加し、その配合量を3質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、実施例1と同様に、加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性の各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0067】
この参考例1では、老化防止剤に代えて多官能性モノマー(架橋剤)を使用しており、ゴム製品の標準的な物性(常態物性)の値の参考とすることができる。また、この参考例1では、スコーチ性の評価値が小さくなっていることが分かる。これは、トリメチロールプロパントリメタクリレートによってゴム成分の架橋反応が更に促進したことによるものと考えられる。一方で、この参考例1のゴム組成物は、熱老化性の評価において、TB変化率やEB変化率の数値が大きくなっており、耐熱性に劣ることが分かる。つまり、老化防止剤ではないことから、老化防止という点では劣ることが分かる。
【0068】
(実施例7)
天然ゴム(ゴム成分)100質量部、酸化亜鉛5質量部、ステアリン酸3質量部、HAFカーボンブラック50質量部、ナフテンオイル10質量部、を1.7Lのバンバリーミキサーで4分間混練を行った。これに有機過酸化物として商品名「パーブチルP−40」(日油社製)6.8質量部を直径約24cmの2本ロールを用いて添加し、更に混練を行ってゴム材料を作製した。
【0069】
作製したゴム材料に、老化防止剤として4−(アニリノフェニル)マレイミド((一般式(1)中のRが水素))を1質量部添加し、上記2本ロールで混練りして、未加硫ゴム組成物を得た。
【0070】
そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、実施例1と同様の評価(加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性)を行った。評価結果を表2に示す。加硫ゴム組成物は、未加硫ゴム組成物を170℃、25分でプレス加硫して得られた厚さ2.0mmのものとした。
【0071】
【表2】
【0072】
(実施例8)
老化防止剤である4−(アニリノフェニル)マレイミドの配合量を0.1質量部に変更したこと以外は、実施例7と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、実施例1と同様に、加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性の各評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0073】
(実施例9)
老化防止剤である4−(アニリノフェニル)マレイミドの配合量を5質量部に変更したこと以外は、実施例7と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、実施例1と同様に、加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性の各評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0074】
(実施例10)
老化防止剤を「N−(4−p−トルイジニルフェニル)マレイミド」に変更したこと(一般式(1)中のRがメチル基)以外は、実施例7と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、実施例1と同様に、加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性の各評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0075】
(比較例3)
老化防止剤を添加しないこと以外は、実施例7と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、実施例1と同様に、加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性の各評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0076】
(比較例4)
一般式(1)で表される化合物に代えて4,4’−ジクミルジフェニルアミン(老化防止剤)を用いたこと以外は、実施例7と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、実施例1と同様に、加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性の各評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0077】
(比較例5)
一般式(1)で表される化合物に代えて「N−(4−(4−エトキシアニリノ)フェニル)マレイミド」(老化防止剤)を用いたこと(一般式(1)中のRがエトキシ基)以外は、実施例7と同様にして未加硫ゴム組成物を得た。そして、得られた未加硫ゴム組成物、及び、この未加硫ゴム組成物からなる加硫ゴム組成物について、実施例1と同様に、加硫度、スコーチ性、常態物性、及び熱老化性の各評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0078】
以上のように、表1、表2からも分かるように、実施例1〜10のゴム組成物は、比較例1〜5のゴム組成物に比べて、得られるゴム製品の物性の低下を抑制することができ、更に、得られるゴム製品の耐熱性を向上させることが分かる。
【0079】
具体的には、実施例1〜10のゴム組成物は、従来の老化防止剤を使用した比較例2、4、5のゴム組成物と比べて、ゴム成分の架橋への影響が小さいために、加硫度の評価において最大トルクを下げることがなく、また、常態物性の評価においても物性値の低下が抑制されていることが分かる。このことから、ゴム製品の物性の低下が抑制されていることが分かる。また、実施例1〜10のゴム組成物は、熱老化性の評価が良好であり、ゴム製品の耐熱性を向上させ、特に、実施例1〜4、7〜10のゴム組成物ではゴム製品の耐熱性を更に向上させることが分かる。比較例2、4のゴム組成物では、加硫度の評価値が小さく、十分なトルクが得られていない。比較例5は、化合物の構造が大きくなること(即ち、一般式(1)中のRが所定の条件を満たさないこと)で老化防止効果を与えるアミノ基の効果が低下する。従って、実施例1〜10に比べて、耐熱性が劣っている。
【0080】
また、実施例1〜10のゴム組成物は、老化防止剤を添加していない比較例1、3のゴム組成物よりも粘度上昇が速く(即ち、スコーチ性の評価値が小さく)、そして、従来の老化防止剤を使用した比較例2、4、5のゴム組成物よりも更に粘度上昇が速いことが分かる。このように粘度上昇が速いので、ゴム製品の生産性の観点からも優位性が高いことが分かる。