【解決手段】示差走査熱量測定において70℃以上170℃以下の温度範囲内に少なくとも1つ以上の結晶融解ピークを有し、さらに200℃以上の温度領域に結晶融解ピークを有し、且つ引張弾性率が1400MPa以下であり、ポリメチルペンテン系樹脂を20質量%以上含有することを特徴とするポリオレフィン系樹脂フィルム。
示差走査熱量測定において70℃以上170℃以下の温度範囲内に少なくとも1つ以上の結晶融解ピークを有し、さらに200℃以上の温度領域に結晶融解ピークを有し、且つ引張弾性率が1400MPa以下であり、
ポリメチルペンテン系樹脂を20質量%以上含有することを特徴とするポリオレフィン系樹脂フィルム。
示唆走査熱量測定において70℃以上150℃以下の温度範囲内に少なくとも1つ以上の結晶融解ピークを有するポリオレフィン系樹脂を含む請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂フィルム。
ポリオレフィン系樹脂として、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、及びオレフィン系エラストマーからなる群から選択されるいずれか1種以上を含み、且つポリメチルペンテン系樹脂を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリオレフィン系樹脂フィルム。
以下の条件で熱機械分析を行った際に、80〜165℃の範囲内で該フィルムが1500μmの伸度を示すことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂フィルム。
<条件>
試験片サイズ:幅4mm×長さ20mm
チャック間距離:8mm
測定雰囲気:窒素雰囲気下(窒素流量100ml/分)
昇温速度:5℃/分(開始温度:23℃、終了温度:250℃)
荷重:0.3N/mm2
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工程で使用される粘着フィルム(テープ)、看板、自動車等へ意匠性を付与するために貼り付けされるステッカー、ラベル及びマーキングフィルム等の化粧用粘着フィルム(テープ)、化粧シート等には、着色性、加工性、耐傷付き性、耐候性等が優れるポリ塩化ビニル樹脂製のフィルム(以下、「PVC系フィルム」ともいう。)が基材として多用されてきた。
上記PVC系フィルムは、それ自体剛性を有しているが、粘着フィルムとして機能し得るよう、柔軟性付与の目的で可塑剤が添加される。しかしながら、用いる可塑剤によっては、粘着剤との相溶性が悪く、粘着フィルムとした場合に安定性が悪く、可塑剤のブリードアウトが著しくなるという問題がある。また、可塑剤の使用自体に規制が強まる傾向もある。
そこで、PVC系フィルムに代わる材料として、ポリオレフィン系樹脂フィルムが広く用いられてきている。
【0003】
ポリオレフィン系樹脂フィルムを基材に用いた建築内外装用の化粧フィルム、自動車内外装用のマーキングフィルム等は公知であり、たとえば特許文献1、特許文献2等において、剛性が高く、折り曲げ白化が起きにくい化粧フィルムの技術等が開示されている。
これらの文献に記載されているポリプロピレン、ポリエチレンに代表される一般的なポリオレフィン系樹脂は、融点が200℃を超えることがなく、200℃近傍の高温に耐え得る樹脂としては不向きであり、また、それらを架橋させた樹脂を用いてフィルム化を行うことは極めて困難である。
【0004】
200℃以上に融点を有するポリオレフィン系樹脂としては、ポリメチルペンテン系樹脂があり、その樹脂を用いたフィルムに関する技術もすでに公知であり、用途により用いられていることが確認されている(特許文献3)。
また、ポリメチルペンテン系樹脂とポリプロピレン、ポリエチレンといった一般的なポリオレフィン系樹脂とを混合しフィルム化を行っている技術も存在する(特許文献4)。
【0005】
しかしながら、特許文献3に記載の技術では、ポリメチルペンテン系樹脂を単独で用いていることから、ポリメチルペンテン系樹脂の融点以下の温度での加工は困難であると推察される。
また、特許文献4に記載の技術では、用いるポリメチルペンテン系樹脂の含有量が少なく、耐熱性を維持するには不十分であると考えられる。
【0006】
さらに、耐熱性を有するポリオレフィン系樹脂として、ポリアミドがグラフト結合したポリアミドブロックグラフト共重合体を用いたポリオレフィン系樹脂フィルムの技術も存在する(特許文献5)。
しかしながら、この特許文献5に記載の技術では、ポリオレフィン系樹脂とポリアミドブロックグラフト共重合体との相溶性が十分ではないためか、異物やスジ状の外観欠陥が見受けられ、前述した外観管理の求められる用途への展開には改善の余地があった。
【0007】
したがって、フィルムの良好な加工性、取扱性、耐熱性、用途に応じた優れた外観といった、これらの課題を解決したフィルムの提供には改善の余地が残っているものと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明について詳述するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。尚、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
【0014】
本発明のフィルムは、示差走査熱量測定において70℃以上170℃以下の温度範囲内に少なくとも1つ以上の結晶融解ピークを有し、さらに200℃以上の温度領域に結晶融解ピークを有し、且つ引張弾性率が1400MPa以下であり、ポリメチルペンテン系樹脂を20質量%以上含有することを特徴とするポリオレフィン系樹脂フィルムである。
【0015】
<ポリオレフィン系樹脂>
本発明のフィルムを製造するために用いられる樹脂組成物には、ポリオレフィン系樹脂が必須成分として含まれる。樹脂の入手のし易さや柔軟性、取り扱い性、経済性、適度な結晶融解ピークを有すること等の観点から、ポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。
【0016】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマー、環状オレフィン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂等が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂の中でも、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマーが入手のし易さや得られるフィルムへの柔軟性の付与の観点から好ましい。
【0017】
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレンの単独重合体、エチレンを主成分とするエチレンと共重合可能な他の単量体との共重合体(低密度ポリエチレン(LDPE)、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセン系触媒を用いて重合して得られるエチレン系共重合体(メタロセン系ポリエチレン)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレンー(メタ)アクリル酸共重合体の金属イオン架橋樹脂(アイオノマー)等が挙げられる。
中でも入手のし易さや樹脂の取り扱い性、得られるフィルムへの柔軟性の付与の観点から、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることが好ましい。
【0018】
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレンを主成分とするプロピレンと共重合可能な他の単量体との共重合体、これらの混合物等が例示できる。
前記プロピレンを主成分とするプロピレンと共重合可能な他の単量体との共重合体としては、プロピレンとエチレンまたは他のα−オレフィンとのランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)やブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)、ゴム成分を含むブロック共重合体あるいはグラフト共重合体等が挙げられる。
前記プロピレンと共重合可能な他の単量体として用いられるα−オレフィンとしては、炭素原子数が4〜12のものが好ましく、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセン等が挙げられ、その1種または2種以上の混合物が用いられる。
これらのなかでも、耐熱性の制御や入手のしやすさの観点から、ランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)を含有することが好ましく、プロピレンの単独重合体(ホモプロピレン)を含有することが更に好ましい。
【0019】
オレフィン系エラストマーとは、ポリオレフィン系樹脂とゴム成分とを含んでなる軟質樹脂であり、ポリオレフィン系樹脂にゴム成分が分散しているものでもよいし、互いが共重合されているものでもよい。
オレフィン系エラストマーの具体例としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体エラストマー、エチレン−1−ブテン共重合体エラストマー、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体エラストマー、エチレン−1−ヘキセン共重合体エラストマー、エチレン−1−オクテン共重合体エラストマー、エチレン−スチレン共重合体エラストマー、エチレン−ノルボルネン共重合体エラストマー、プロピレン−1−ブテン共重合体エラストマー、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体エラストマー、エチレン−1−ブテン−非共役ジエン共重合体エラストマー、及びエチレン−プロピレン−1−ブテン−非共役ジエン共重合体エラストマー等のオレフィンを主成分とする無定型の弾性共重合体、その誘導体及び酸変性誘導体等を挙げることができる。
【0020】
前述したポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマー等はそれらを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。得られるフィルムの柔軟性やフィルムに加工する際の製膜性の観点から、2種以上を併用することが好ましい。
【0021】
前述したポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマー等のメルトフローレイトは、その適用する成形方法や用途により適宜選択されるものの、190℃もしくは230℃の温度条件下、荷重2.16kgで測定した値が0.1〜50g/10分であることが好ましい。0.5g/10分以上であればフィルムに成形性が良好となり、50g/10分以下であればフィルムの厚み精度を良好に保つことが可能となる。より好ましくは0.5〜40g/10分、さらに好ましくは1.0〜30g/10分である。
【0022】
ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマー等の結晶融解ピークは、示差走査熱量測定により測定した値として、70℃以上170℃以下の範囲内にあることが好ましい。70℃以上170℃以下の範囲に結晶融解ピークを有することで、得られるフィルムの200℃以下の温度での加工性を良好とすることが可能となる。より好ましくは72℃以上168℃以下、さらに好ましくは75℃以上165℃以下の範囲内である。また、70℃以上150℃以下の範囲に結晶融解ピークを有する材料を用いることにより、フィルムの200℃以下の温度での加工性をさらに向上させることが可能となる。
ここで、示差走査熱量測定の条件としては、通常、昇温速度10℃/分で25℃から250℃まで昇温した後、冷却速度10℃/分で25℃まで降温し、再度、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温するものである。
【0023】
ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマー等の強度については、それらの樹脂単独で得られるフィルムの引張弾性率が100〜2000MPaの範囲内であることが好ましい。引張弾性率が100〜2000MPaの範囲内であれば、本発明のフィルムに適度な柔軟性を付与することが可能となる。より好ましくは150〜1900MPaの範囲内、さらに好ましくは200〜1800MPaの範囲内である。
【0024】
ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマー等の含有量としては、30質量%以上90質量%以下とすることが好ましい。30質量%以上とすることで得られるフィルムに加工性と柔軟性を付与することが可能となり、90質量%以下とすることで耐熱性の低下を抑制することが可能となる。より好ましくは35質量%以上85質量%以下、さらに好ましくは40質量%以上80質量%以下である。
【0025】
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムには、200℃以上の結晶融解ピークを付与する目的で、ポリメチルペンテン系樹脂を配合することが好ましい。ポリメチルペンテン系樹脂とは、メチルペンテンをモノマーとする単独重合体またはその他のモノマーとの共重合体を意味する。具体例としては、4−メチルペンテン−1とプロピレンと共重合可能な他の単量体として例示したα−オレフィンとの共重合体を挙げることができる。
【0026】
ポリメチルペンテン系樹脂が、共重合体である場合は、共重合に用いられるα−オレフィン成分の含有量が20質量%以下であることが好ましい。20質量%以下とすることで、結晶融解ピークの低下を抑制することが可能となる。より好ましくは10質量%以下である。
【0027】
ポリメチルペンテン系樹脂のメルトフローレイトは、その適用する成形方法や用途により適宜選択されるものの、260℃の温度条件下、荷重5.0kgで測定した値が0.1〜50g/10分であることが好ましい。0.5g/10分以上であればフィルムに成形性が良好となり、50g/10分以下であればフィルムの厚み精度を良好に保つことが可能となる。より好ましくは0.5〜40g/10分、さらに好ましくは1.0〜35g/10分である。
【0028】
ポリメチルペンテン系樹脂の結晶融解ピークは、示差走査熱量測定により測定した値として、210℃以上を示すことが好ましい。210℃以上の結晶融解ピークを有することで、得られるフィルムに耐熱性を付与することが十分に可能となる。より好ましくは210℃以上、さらに好ましくは220℃以上である。
ここで、示差走査熱量測定の条件としては、前述したものと同様の方法を用いることができる。
【0029】
ポリメチルペンテン系樹脂の強度については、それらの樹脂単独で得られるフィルムの引張弾性率が100〜2000MPaの範囲内であることが好ましい。引張弾性率が100〜2000MPaの範囲内であれば、本発明のフィルムに適度な柔軟性を付与することが可能となる。より好ましくは150〜1900MPaの範囲内、さらに好ましくは200〜1800MPaの範囲内である。
【0030】
ポリメチルペンテン系樹脂の含有量としては、20質量%以上70質量%以下とすることが好ましい。20質量%以上とすることで得られるフィルムに十分な耐熱性を付与することが可能となる。70質量%以下とすることで、得られるフィルムの200℃以下における加工性を良好なものとすることが可能となる。より好ましくは25質量%以上65質量%以下、さらに好ましくは30質量%以上60質量%以下である。
【0031】
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムに用いられる樹脂組成物には、上記、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマー以外の樹脂として、必要に応じて、スチレン系エラストマー、環状オレフィン系樹脂等を添加することもできる。
【0032】
スチレン系エラストマーとは、下記式(I)または(II)で表されるブロック共重合体であることが好ましい。
X−(Y−X)n …(I)
(X−Y)n …(II)
一般式(I)および(II)におけるXはスチレンに代表される芳香族ビニル重合体ブロックで、式(I)においては分子鎖両末端で重合度が同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、Yとしてはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、ブタジエン/イソプレン共重合体ブロック、水添されたブタジエン重合体ブロック、水添されたイソプレン重合体ブロック、水添されたブタジエン/イソプレン共重合体ブロック、部分水添されたブタジエン重合体ブロック、部分水添されたイソプレン重合体ブロックおよび部分水添されたブタジエン/イソプレン共重合体ブロックの中から選ばれた少なくとも1種である。また、nは1以上の整数である。
【0033】
環状オレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体、ノルボルネン系単量体とエチレン等のα−オレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体等が挙げられる。また、これらの水素添加物も用いることができる。
【0034】
<その他成分>
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムに用いられる樹脂組成物には、前述したポリオレフィン系樹脂やポリメチルペンテン系樹脂以外に耐熱性や耐候性等を付与するために各種添加剤を配合することができる。
具体例としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、中和剤、滑剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、染顔料、結晶核剤、紫外線吸収剤、充填剤、剛性を付与する無機フィラー、及び柔軟性を付与するために前述したもの以外のエラストマー等を、本発明の効果を阻害しない範囲において用いてもよい。
【0035】
紫外線吸収剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等を挙げることができる。
光安定剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤等を挙げることができる。
帯電防止剤としては、公知のものを使用可能であるが、フィルムへの長期的な帯電防止性の付与と表面へのブリードアウトにより起こる不具合の抑制のため高分子型帯電防止剤を用いることが好ましい。高分子帯電防止剤の具体例としては、公知のものを使用することができ、例えば、疎水性ブロックと親水性ブロックとのブロック共重合体を用いることができ、疎水性ブロックと親水性ブロックとが、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合及びウレア結合等によってブロック共重合体を形成しているもの等を挙げることができる。
滑剤やアンチブロッキング剤としては、前述したポリオレフィン系樹脂との相溶性に優れ、得られるフィルムの表面へのブリードアウトによる不具合や長期的な耐傷付き性や滑り性の付与を可能にすることから、シリコーン−オレフィン共重合体を用いることが好ましい。
【0036】
<ポリオレフィン系樹脂フィルム>
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムは、前述した樹脂組成物を成形して得られるフィルム単層もしくは複層フィルムを指す。
単層だけでなく、複層フィルムとすることで、最外層にのみ前述のシリコーン−オレフィン共重合体等の各種添加剤を偏在化させることが可能となり、フィルムの性能の向上や経済性の観点からも有効である。
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムは、示差走査熱量測定において70℃以上170℃以下の温度範囲内に少なくとも1つ以上の結晶融解ピークを有し、さらに200℃以上の温度領域に結晶融解ピークを有することが必要となる。70℃以上170℃以下の範囲内に結晶融解ピークを有することで、200℃以下の温度での加工性を良好とすることが可能となる。より好ましくは70℃以上160℃以下、さらに好ましくは70℃以上150℃以下の範囲内である。
ここで、示差走査熱量測定の条件としては、前述したものと同様の方法を用いることができる。
【0037】
本発明のフィルムは、JIS K 7161に従い、フィルムから採取した試験片(JIS K 6732)を用い、23℃、50%RHの雰囲気下、引張試験機にて、引張速度:50mm/分で測定した際の引張弾性率が1400MPa以下であることが必要とされる。1400MPa以下とすることで、本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムに粘着層や印刷層を積層する際の加工性や、粘着層を有する本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムを自動車外装等の3次元形状を有する物品に貼り合わせる際の取扱性を良好に保つことが可能となる。より好ましくは1350MPa以下、さらに好ましくは1300MPa以下である。得られるポリオレフィン系樹脂フィルムの引張弾性率の調整は、前述したポリオレフィン系樹脂等の種類や添加量を調整することで可能となる。
【0038】
フィルムの成形方法としては、公知の方法を用いることができるが、溶融押出成形法を用いることが好ましい。溶融押出成形法の中でも、Tダイを有する押出機より溶融状態の樹脂を押出し、冷却固化させてフィルムを得るTダイ成形法がより好ましい。
フィルムを得るためには、複数の押出機を利用した共押出Tダイ成形法とすることが好ましい。複数の押し出し機を利用した共押出Tダイ成形法を用いることで、複層のフィルムを得ることが可能であり、さらに全ての押出機から同一の樹脂を押出すことで単層のフィルムを得ることも可能となる。
共押出Tダイ成形法としては、マルチマニホールドダイを用いて、複数の樹脂層をフィルム状としたのち、Tダイ内で接触させて複層化させフィルムを得る方法と、フィードブロックと称する溶融状態の樹脂を合流させる装置を用い、複数の樹脂を合流させ密着した後、複層のフィルムを得る方法が挙げられる。
【0039】
フィルムには必要に応じて、片面または両方の面にプラズマ処理やコロナ処理、オゾン処理および火炎処理等の方法による表面処理を行ってもよい。得られるフィルムの用途に応じて、片面または両方の面に表面処理を行うかを選択することができる。
【0040】
フィルムの厚みは特に制限されるものではないが、30〜400μmであることが好ましい。上記範囲内とすることで、フィルムの取扱い性およびその後の加工性を良好に維持することができる。より好ましくは50〜350μm、さらに好ましくは70〜300μmである。
【0041】
また、複層フィルムとした場合には、外層の厚みが全体の厚みの5〜40%の範囲内とすることが好ましい。5%以上とすることで、各種添加剤を外層のみに添加した場合の添加剤の性能を十分に発現させることが可能となり、40%以下とすることで、複層フィルムを得る際の製膜性や経済性を良好に保つことが可能となり好ましい。より好ましくは5〜35%、さらに好ましくは5〜30%の範囲内である。
【0042】
フィルムの破断伸度としては、JIS K 7161に従い、フィルムから採取した試験片(JIS K 6732)を用い、23℃、50%RHの雰囲気下、引張試験機にて、引張速度:300mm/分で測定した際の引張破断伸度が、150%以上であることが好ましい。引張破断伸度が150%以上であれば、溶融押出成形時のフィルムを引き取る際のフィルムの破断による不具合や、これに続く印刷層や粘着層を積層する工程においても同様の不具合を抑制させることができるため好ましい。より好ましくは250%以上、さらに好ましくは350%以上である。
【0043】
本発明のフィルムは、以下の条件による熱機械分析を行った際に、80〜160℃の範囲内で該フィルムが1500μmの伸度を示すことを好ましい。
【0044】
<条件>
試験片サイズ:幅4mm×長さ20mm
チャック間距離:8mm
測定雰囲気:窒素雰囲気下(窒素流量100ml/分)
昇温速度:5℃/分(開始温度:23℃、終了温度:250℃)
荷重:0.3N/mm
2
【0045】
80〜160℃の範囲内で1500μmの伸度を示すことで、該フィルムを粘着テープとした際の、該テープを加熱し被着体に貼り合わせる工程の被着体への追従性を向上させることが可能となる。より好ましくは90〜160℃の範囲内、さらに好ましくは100〜160℃の範囲内である。
【0046】
また、本発明のフィルムの190℃における貯蔵弾性率が、1.0×10
5Pa以上であることが好ましい。貯蔵弾性率が1.0×10
5Pa以上を示すことで、該フィルムを粘着テープとした際の、該テープを加熱し被着体に貼り合わせる工程においてフィルムが溶融しきることなく形状を保持できることから取り扱い性や工程通過性を良好に保つことが可能となる。より好ましくは2.0×10
5Pa以上、さらに好ましくは3.0×10
5Pa以上である。
【0047】
<粘着フィルム>
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムには、少なくとも片方の面に粘着層を積層することで、粘着フィルムとすることができる(以下「本発明の粘着フィルム」ともいう)。
粘着剤層として用いられる粘着剤は特に限定されないが、例えば、天然ゴム系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等の各種粘着剤が用いられる。また粘着剤層の上にさらに接着剤層や熱硬化性樹脂層等の機能層を設けてもよい。
【0048】
本発明の粘着フィルムにおいて、粘着層を積層する前のフィルムの片面もしくは両方の面に、前述した表面処理を行ってもよい。また、本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムである基材フィルムと粘着層の間には、必要に応じて、プライマー層を設けてもよい。
粘着層やプライマー層の厚さは、必要に応じて適宜決めることができる。
【0049】
<化粧フィルム>
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムには、少なくとも片方の面に印刷層を積層し、化粧フィルムとすることができる(以下「本発明の化粧フィルム」ともいう)。
化粧フィルムを構成する、印刷層は、公知の方法で形成できる。例えば、オフセット印刷法、グラビア輪転印刷法、スクリーン印刷法等の公知の印刷法、ロールコート法、スプレーコート法等の公知のコート法、フレキソグラフ印刷法等が挙げられる。また、蒸着法を用いることもできる。
印刷の柄としては、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字、全面ベタ、メタリック等からなる絵柄が挙げられる。
印刷層の厚さは、必要に応じて適宜決めることができる。
本発明の化粧フィルムにおいて、印刷層を積層する前のフィルムの片面もしくは両方の面に、前述した表面処理を行ってもよい。また、基材フィルムと印刷層の間には、必要に応じて、プライマー層を設けてもよい。
印刷層やプライマー層の厚さは、必要に応じて適宜決めることができる。
【0050】
<化粧用粘着フィルム>
本発明の化粧フィルムには、必要に応じて、該印刷層にさらに粘着層を積層して化粧用粘着フィルムとすることができる。
該化粧用粘着フィルムを被着体に貼着させることで、被着体の美麗な外観を付与することが可能となり、自動車内外装の化粧用途、その他の成形体や積層体、建築内外装用途等に用いることが可能となる。
【0051】
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムは、良好な加工性、取扱性、耐熱性、用途に応じた優れた外観を有するものである。さらに、該フィルムに粘着層や印刷層を積層することで粘着フィルムや化粧フィルムを得ることも可能であり、それらのフィルムを自動車化粧用途にも好適に用いることができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して、具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例で使用した材料、評価した特性の測定方法等は、次の通りである。
【0053】
[使用材料]
<ポリオレフィン系樹脂>
ポリメチルペンテン(A):
三井化学社製:「RT18」(ポリメチルペンテン系樹脂、260℃、5.0kgにおけるメルトフローレイト:26g/10分、融点:232℃、単独フィルムの引張弾性率:1640MPa)
ポリメチルペンテン(B):
三井化学社製:「MX002」(ポリメチルペンテン系樹脂、260℃、5.0kgにおけるメルトフローレイト:21g/10分、融点:224℃、単独フィルムの引張弾性率:1110MPa)
ランダムポリプロピレン:
日本ポリプロ社製、「FW4B」(ランダムポリプロピレン、230℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト:8.0g/10分、融点:136℃、単独フィルムの引張弾性率:600MPa)
ホモポリプロピレン:
日本ポリプロ社製、「FY6HA」(ホモポリプロピレン、230℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト:2.4g/10分、融点:169℃、単独フィルムの引張弾性率:900MPa)
オレフィン系エラストマー:
三井化学社製、「タフマーBL3450M」(オレフィン系エラストマー、230℃、2.16kgでのメルトフローレイト:9.0g/10分、融点:80℃、単独フィルムの引張弾性率:250MPa)
ポリアミドブロックグラフト共重合体:
アルケマ社製、「アポリヤLP21H」(ポリアミドブロックグラフト共重合体、230℃、2.16kgでのメルトフローレイト:10g/10分、融点:216℃、単独フィルムの引張弾性率:180MPa)
【0054】
<樹脂組成物の調製>
上記のポリオレフィン系樹脂を用いて、表1に記載に基づき各層の配合量を合計で100質量%とし、それらをドライブレンドし混合した。目視にて均一に混合できていることを確認し、フィルム成形用樹脂組成物を作成した。
【0055】
<複層フィルムの製膜方法>
3台の東芝機械製単軸押出機(外層用:35φmm,L/D=25mm、中間層用:50φmm,L/D=32、外層用:35φmm,L/D=25mm)のそれぞれのホッパーにドライブレンドした原料を投入し、外層用、中間層用それぞれの押出機温度を210〜265℃に設定し、フィードブロック部にて、外層/中間層/外層の3層構成に合流させ、650mm幅Tダイ(温度設定265℃リップ開度0.5mm)から押出した。厚み構成は、10μm/80μm/10μmになるよう各押出機回転数を設定した。
押出された溶融樹脂は、鏡面状の冷却ロールを備えた巻き取り機(冷却ロール700mm幅×φ350mm、ロール温度約30℃)にて冷却固化後、両面にコロナ処理を実施し巻き取りを行い、厚みが約100μmの1種3層となる実質的に単一の樹脂層からなるフィルムを得た。
【0056】
[フィルムの外観]
得られたフィルムの外観を以下の判定基準を用いて目視により評価した。
◎:異物やスジ状欠陥が認められない
〇:異物やスジ状欠陥は僅かに認められる
△:異物やスジ状欠陥が認められる
×:異物やスジ状欠陥が顕著に確認され使用不可
【0057】
[引張弾性率]
得られた複層フィルムから1号ダンベル試験片を採取し、23℃、50%RHの雰囲気下、オートグラフ(島津製作所製AGS−X)を用いて、引張速度50mm/分にて引張弾性率(MPa)を測定した。
引張弾性率の測定は、フィルムの押出方向(MD)で測定を行った。
【0058】
[引張破断伸度]
得られたフィルムから1号ダンベル試験片を採取し、23℃、50%RHの雰囲気下、小型卓上試験機(島津製作所製EZ−L)を用いて、引張速度300mm/分にて引張破断伸度(%)を測定した。
引張破断伸度の測定は、フィルムの押出方向(MD)で測定を行った。
【0059】
[結晶融解ピーク]
示差走査熱量測定装置(メトラー・トレド社製 DSC823e)を用い、各実施例で得られたフィルムの約5mgを、昇温速度10℃/分で25℃から250℃まで昇温した後、冷却速度10℃/分で25℃まで降温し、再度、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温した際に測定されたチャートから結晶融解ピークを算出した。
【0060】
[1500μm伸長時の温度]
100μmのフィルムを以下の測定装置および条件を用い、1500μm伸長時の温度を測定した。
【0061】
<測定条件>
装置:熱機械分析装置TMA7100(日立ハイテクサイエンス社製)
試験片サイズ:幅4mm×長さ20mm
チャック間距離:8mm
測定雰囲気:窒素雰囲気下(窒素流量100ml/分)
昇温速度:5℃/分(開始温度:23℃、終了温度:250℃)
荷重:0.3N/mm
2
【0062】
[実施例1]
外層、中間層に用いるポリオレフィン系樹脂としてポリメチルペンテン(A)、ランダムポリプロピレンおよびホモポリプロピレンを用い、1種3層からなるフィルムを得た。また、各種ポリオレフィン系樹脂は表1に記載の通りの配合量とした。
このフィルムには異物やスジ状の欠陥は認められず、外観に優れるフィルムであった。引張弾性率は1270MPaであり、引張破断伸度は520%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
さらに、本フィルムは、70〜170℃の範囲内に132℃および160℃の2つの結晶融解ピークを示し、且つ200℃以上の範囲に232℃の結晶融解ピークを示した。また、このフィルムの1500μm伸長時の温度は151℃であった。
上記に示す通り、70〜170℃の範囲内および200℃以上に所望の結晶融解ピークと、80〜160℃の範囲内に十分なフィルムの伸長が見られることから、良好な加工性と耐熱性および外観を有するフィルムが得られた。
【0063】
[実施例2]
ランダムポリプロピレンに代えてオレフィン系エラストマーを用いた以外は、実施例1と同様に実施した。
このフィルムには異物やスジ状の欠陥は認められず、外観に優れるフィルムであった。引張弾性率は500MPaであり、引張破断伸度は520%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
さらに、本フィルムは、70〜170℃の範囲内に80℃および160℃の2つの結晶融解ピークを示し、且つ200℃以上の範囲に232℃の結晶融解ピークを示した。また、このフィルムの1500μm伸長時の温度は149℃であった。
上記に示す通り、70〜170℃の範囲内および200℃以上に所望の結晶融解ピークと、80〜160℃の範囲内に十分なフィルムの伸長が見られることから、良好な加工性と耐熱性および外観を有するフィルムが得られた。
【0064】
[実施例3]
ポリメチルペンテン(A)、ランダムポリプロピレンおよびホモポリプロピレンを表1に記載の配合に変更した以外は、実施例1と同様に行った。
このフィルムには異物やスジ状の欠陥は僅かに認められるが、外観の良好なフィルムであった。引張弾性率は1240MPaであり、引張破断伸度は370%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
さらに、本フィルムは、70〜170℃の範囲内に132℃および160℃の2つの結晶融解ピークを示し、且つ200℃以上の範囲に232℃の結晶融解ピークを示した。また、このフィルムの1500μm伸長時の温度は163℃であった。
上記に示す通り、70〜170℃の範囲内および200℃以上に所望の結晶融解ピークを有するものの、80〜160℃の範囲内からは僅かに1500μmの伸長温度が外れることから、外観は良好なものの加工性には僅かに劣るフィルムであった。
【0065】
[実施例4]
ポリメチルペンテン(A)に代えてポリメチルペンテン(B)を用いた以外は、実施例1と同様に行った。
このフィルムには異物やスジ状の欠陥は認められず、外観の良好なフィルムであった。引張弾性率は1050MPaであり、引張破断伸度は520%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
さらに、本フィルムは、70〜170℃の範囲内に132℃および160℃の2つの結晶融解ピークを示し、且つ200℃以上の範囲に224℃の結晶融解ピークを示した。また、このフィルムの1500μm伸長時の温度は145℃であった。
上記に示す通り、70〜170℃の範囲内および200℃以上に所望の結晶融解ピークと、80〜160℃の範囲内に十分なフィルムの伸長が見られることから、良好な加工性と耐熱性および外観を有するフィルムが得られた。
【0066】
[比較例1]
ポリオレフィン系樹脂として、ポリメチルペンテン(A)のみを用いた以外は、実施例1と同様の方法によりフィルムを得た。
このフィルムには異物やスジ状の欠陥は認められず、外観に優れるフィルムであった。しかしながら、引張弾性率は1640MPa、引張破断伸度は330%を示し、引張弾性率の高いフィルムであった。
さらに、本フィルムは、70〜170℃の範囲内に結晶融解ピークを有さず、200℃以上の範囲に232℃の結晶融解ピークのみを示した。また、このフィルムの1500μm伸長時の温度は176℃であった。
上記に示す通り、引張弾性率が高く、さらに70〜170℃の範囲内に結晶融解ピークを示さず、80〜160℃の範囲内にも十分なフィルムの伸長が見られないことから、外観には優れるものの加工性には顕著に劣るフィルムであった。
【0067】
[比較例2]
ポリメチルペンテン(A)とホモポリプロピレンを表1に記載の配合量とし、実施例1と同様の方法によりフィルムを得た。
このフィルムには異物やスジ状の欠陥は認められ、外観に劣るフィルムであった。また、引張弾性率は1430MPa、引張破断伸度は340%を示し、引張弾性率の高いフィルムであった。
本フィルムは、70〜170℃の範囲内に結晶融解ピークを有し、200℃以上の範囲に232℃の結晶融解ピークを示した。しかしながら、このフィルムの1500μm伸長時の温度は196℃であった。
上記に示す通り、上記に示す通り、70〜170℃の範囲内および200℃以上に所望の結晶融解ピークを有するものの、80〜160℃の範囲内に十分なフィルムの伸長が見られないことから、外観に劣り、且つ加工性にも顕著に劣るフィルムであった。
【0068】
[比較例3]
ポリオレフィン系樹脂として、ポリメチルペンテン(B)のみを用いた以外は、実施例1と同様の方法によりフィルムを得た。
このフィルムには異物やスジ状の欠陥は認められず、外観に優れるフィルムであった。引張弾性率は1110MPaであり、引張破断伸度は340%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
しかしながら、本フィルムは、70〜170℃の範囲内に結晶融解ピークを有さず、200℃以上の範囲に224℃の結晶融解ピークのみを示した。また、このフィルムの1500μm伸長時の温度は178℃であった。
上記に示す通り、常温での引張弾性率は所望の値であるものの、70〜170℃の範囲内に結晶融解ピークを示さず、80〜160℃の範囲内にも十分なフィルムの伸長が見られなかった。よって、外観には優れるものの加工性には顕著に劣るフィルムであった。
【0069】
[比較例4]
ポリオレフィン系樹脂として、ランダムポリプロピレンおよびポリアミドブロックグラフト共重合体を表1に記載の通りの配合量として用いた以外は、実施例1と同様に行った。
このフィルムは、ランダムポリプロピレンとポリアミドブロックグラフト共重合体との相溶性が十分ではなかったと推察され、異物やスジ状の欠陥が顕著に認められたことから、外観に顕著に劣るフィルムとなった。
【0070】
【表1】
【0071】
[実施例5]
実施例1で得られたフィルムの冷却ロール側の面に、アクリル系粘着剤(綜研化学(株)製SKダイン1502C)をセパレータ上にコンマコート法にて、乾燥後の粘着剤層の厚みが25μmになるように塗工し、80℃の熱風乾燥機にて5分間乾燥させた後、粘着剤層を形成し、本複層フィルムのシリコーン−オレフィン共重合体を含有しない面に粘着剤層を貼り合わせることで粘着フィルムを得た。
【0072】
[実施例6]
実施例1で得られたフィルムの冷却ロール側の面に、以下に記載のDICグラフィックス(株)製のインキを倉敷紡績(株)製、グラビア印刷試験機「GP−2」、印刷プレート「54L6階調」を用い、フィルムに塗布を行った。塗布後のフィルムを40℃で5日間エージングし、インキによる印刷層が積層された化粧フィルムを得た。
<DICグラフィックス(株)製インキ>
「VTP−NT40黄(A)」を95質量%、「AT−NT溶剤」を5質量%
を混合・撹拌しインキを調製した。
「VTP−NT40黄(A)」:塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体およびアクリル系樹脂の混合物と溶剤としてメチルイソブチルケトンからなる塗料
「AT−NT溶剤」:酢酸ブチル/酢酸エチル/メチルエチルケトンの混合物
【0073】
[実施例7]
アクリル系粘着剤(綜研化学(株)製SKダイン1502C)をセパレータ上にコンマコート法にて、乾燥後の粘着剤層の厚みが25μmになるように塗工し、80℃の熱風乾燥機にて5分間乾燥させた後、粘着剤層を形成し、実施例6で得た化粧フィルムの印刷層側の面に粘着剤層を貼り合わせることで化粧用粘着フィルムを得た。
【0074】
実施例5で得た粘着フィルムと、実施例7で得た化粧用粘着フィルムを、自動車の外装に貼り付けたところ、フィルムが優れた柔軟性を有していることから容易に自動車外装に貼り付けることが可能であった。よって、該粘着フィルムと該化粧用粘着フィルムは作業性および加工性に優れるものであることを確認した。
【0075】
[産業上の利用可能性]
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムを用いることで、フィルムの良好な加工性、取扱性、耐熱性、用途に応じた優れた外観といった、これらの課題を解決したフィルムを得ることができる。また、該フィルムに粘着層や印刷層を積層することで粘着フィルムや化粧フィルムを得ることも可能であり、それらのフィルムを半導体工程用、自動車内外装や自動車化粧用途にも好適に用いることができる。