(1)硬化性の有機フィルム形成結合剤構成成分及び(2)硬化性フィルム形成組成物中に存在するケイ酸リチウムを0.1〜4.5重量%のリチウム量で含む腐食防止性構成成分を含む硬化性フィルム形成組成物が提供される。同様に上記組成物を含む多層コーティングされた金属基材を含むコーティングされた金属基材も提供される。同様に(a)金属基材、(b)該金属基材に塗布された第1の硬化性フィルム形成組成物及び(c)第1の硬化性フィルム形成組成物の少なくとも一部の最上部に塗布された第2の硬化性フィルム形成組成物を含む多層コーティングされた金属基材も提供される。第1及び第2の硬化性フィルム形成組成物は(1)硬化性の有機フィルム形成結合剤構成成分並びに(2)ケイ酸リチウム、酸化マグネシウム及び/又はアゾールを含む腐食防止性構成成分を独立に含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
詳細な説明
実施例以外、または特に明確に指定しない限り、本明細書の以下の部分における、物質量、反応の時間および温度、量比、分子量に関する値(数平均分子量(「M
n」)か重量平均分子量(「M
w」)かに関わらず)などの数値範囲、量、値および割合はすべて、用語「約」が、値、量または範囲と共に明確に現れないことがある場合でさえも、語「約」により前置きされているかのごとく読み取ることができる。したがって、特に反対の記載がない限り、以下の本明細書および添付の特許請求の範囲に説明されている数値パラメーターは、本発明により得ようとする所望の特性に応じて、変動し得る概数である。ともあれ、特許請求の範囲への均等論の適用を限定する意図としてではなく、各数値パラメーターは、報告されている有効桁数に照らし合わせて、および通常の丸め技法を適用することによって、少なくとも解釈されるべきである。
【0009】
本発明の幅広い範囲を説明する数値範囲およびパラメーターは概数であるにもかかわらず、具体的な例に説明されている数値は、できる限り正確に報告されている。しかし、いかなる数値も、それらのそれぞれの試験測定において見られる標準偏差に必然的に起因する、ある特定の誤差を本質的に含有する。さらに、様々な範囲の数値範囲が、本明細書において説明されている場合、列挙されている値を含むこれらの値の任意の組合せが使用されてもよいことが企図されている。
【0010】
複数の指示物は、本明細書で使用する場合、単数を包含し、かつその反対もまたそうである。例えば、本発明は、ケイ酸リチウム("a" lithium silicate)に関して記載されているが、こうしたケイ酸塩の混合物を含めた複数が使用され得る。
【0011】
量に対する任意の数値の言及は、別段の指定がない限り「重量基準」である。用語「等価重量」は、指定されている物質の作製に使用される様々な成分の相対量に基づいて算出された値であり、指定されている物質の固形分に基づいている。これらの相対量は、これらの成分から生成されるポリマーのような物質のグラム数での理論重量となるものであり、得られたポリマー中に存在している特定の官能基の理論数を与える。理論的なポリマー重量を、官能基の理論当量数によって除算すると、等価重量が得られる。例えば、ウレタンの等価重量は、ポリウレタン材料中のウレタン基の当量に基づく。
【0012】
本明細書で使用する場合、用語「ポリマー」は、プレポリマー、オリゴマー、およびホモポリマーとコポリマーの両方を指すことが意図される。接頭語「ポリ」は、2またはそれ超を指す。
【0013】
同様に、分子量の場合、数平均(M
n)か重量平均(M
w)かに関わらず、これらの分量は、当業者に周知の通り、および米国特許第4,739,019号の第4欄第2〜45
行目に議論されているような、ポリスチレンを標準品として使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される。
【0014】
本明細書で使用する場合、組成物の(互換的に使用される)「樹脂固形分の総重量に対して」または「有機結合剤固形分の総重量に対して」とは、組成物の形成中に添加される構成成分の量が、組成物の形成中に存在している架橋剤およびポリマーを含むが、いかなる水も溶媒も、いかなる固体添加物(ヒンダードアミン安定剤、光開始剤、体質顔料および充填剤を含む顔料、流動性改質剤、触媒ならびにUV光吸収剤など)も含まない、フィルム形成材料の樹脂固形分(不揮発性)の総重量に基づくことを意味する。
【0015】
本明細書で使用する場合、用語「熱硬化性」および「硬化性」は、互換的に使用することができ、硬化または架橋時に不可逆的に「固まる」樹脂を指し、この場合、ポリマー構成成分のポリマー鎖は、共有結合により一緒に結合する。この特性は、通常、例えば、熱または照射により多くの場合、誘発される、組成物の構成物の架橋反応に関連する。Hawley, Gessner G.、The Condensed Chemical Dictionary、第9版、856頁;Surface Coatings、2巻、Oil and Colour Chemists' Association、Australia、TAFE Educational Books(1974年)を参照されたい。硬化または架橋反応はまた、周囲条件下で行うこともできる。周囲条件とは、コーティング剤が、熱または他のエネルギーの手助けなしに、例えば、オーブン中での焼成、強制空気の使用などを行わずに、熱硬化反応を受けることを意味する。通常、周囲温度は、通常の室温である72°F(22.2℃)などの60〜90°F(15.6〜32.2℃)の範囲である。一旦、硬化または架橋が起こると、熱硬化性樹脂は、熱の適用時に溶融せず、溶媒に不溶である。
【0016】
本発明の硬化性フィルム形成組成物は、溶媒型(solventborne)または水型とすることができる。硬化性組成物は、(1)硬化性有機フィルム形成結合剤構成成分を含む。ひいては、有機フィルム形成結合剤構成成分(1)は、(a)反応性官能基を含む樹脂構成成分、および(b)樹脂構成成分(a)中の官能基と反応性である官能基を含む硬化剤構成成分を通常含むが、フィルム形成結合剤構成成分は、やはり、追加の硬化剤よりむしろそれ自体と架橋することもできる(すなわち、自己架橋)。
【0017】
本発明の硬化性フィルム形成組成物の有機フィルム形成結合剤構成成分(1)中で使用される樹脂構成成分(a)は、アクリルポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、ポリチオエーテル、ポリチオエステル、ポリチオール、ポリエン、ポリオール、ポリシラン、ポリシロキサン、フルオロポリマー、ポリカーボネートおよびエポキシ樹脂のうちの1つまたは複数から選択することができる。一般に、ポリマーである必要がない、これらの化合物は、当業者に公知の任意の方法により作製することができる。フィルム形成結合剤上の官能基は、カルボン酸基、アミン基、エポキシド基、ヒドロキシル基、チオール基、カルバメート基、アミド基、ウレア基、(メタ)アクリレート基、スチレン基、ビニル基、アリル基、アルデヒド基、アセトアセテート基、ヒドラジド基、環式カーボネート、アクリレート、マレイン酸およびメルカプタン基のうちの少なくとも1つから選択することができる。フィルム形成結合剤上の官能基は、硬化剤(b)上の官能基と反応性であるよう、または自己架橋するよう選択される。
【0018】
好適なアクリル化合物は、1つまたは複数の他の重合可能なエチレン性不飽和モノマーと任意選択で一緒の、1つまたは複数のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルのコポリマーを含む。アクリル酸またはメタクリル酸の有用なアルキルエステルは、アルキル基中に1〜30個、および多くの場合、4〜18個の炭素原子を含有する脂肪族アルキルエステルを含む。非限定的な例には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸2−エチルヘキシルが含まれる。好適な他の共重合可能なエチレン性不飽和モノマーには、スチレン
およびビニルトルエンなどのビニル芳香族化合物、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルなどのニトリル、塩化ビニルおよびフッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニルおよびハロゲン化ビニリデン、ならびに酢酸ビニルなどのビニルエステルが含まれる。
【0019】
アクリルコポリマーは、ヒドロキシル官能基を含むことができ、ヒドロキシル官能基は、このコポリマーを生成するために使用される反応剤中に1つまたは複数のヒドロキシル官能性モノマーを含むことにより、ポリマーに多くの場合に組み込まれる。有用なヒドロキシル官能性モノマーには、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、カプロラクトンとアクリル酸ヒドロキシアルキルとのヒドロキシ官能性付加物、および対応するメタクリル酸エステルなどの、ヒドロキシアルキル基中に2〜4個の炭素原子を通常有する、アクリル酸ヒドロキシアルキルおよびメタクリル酸ヒドロキシアルキル、ならびに以下に記載されているベータ−ヒドロキシエステル官能性モノマーが含まれる。アクリルポリマーはまた、N−(アルコキシメチル)アクリルアミドおよびN−(アルコキシメチル)メタクリルアミドにより調製することもできる。
【0020】
ベータ−ヒドロキシエステル官能性モノマーは、エチレン性不飽和エポキシ官能性モノマーと約13〜約20個の炭素原子を有するカルボン酸から、またはエチレン性不飽和酸官能性モノマーと、このエチレン性不飽和酸官能性モノマーと重合不可能な少なくとも5個の炭素原子を含有するエポキシ化合物から調製することができる。
【0021】
ベータ−ヒドロキシエステル官能性モノマーを調製するために使用される、有用なエチレン性不飽和エポキシ官能性モノマーには、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、エチレン性不飽和モノイソシアネートとヒドロキシ官能性モノエポキシド(グリシドールなど)との1:1(モル)付加物、およびマレイン酸などの重合可能なポリカルボン酸のグリシジルエステルが含まれる(注:これらのエポキシ官能性モノマーはまた、エポキシ官能性アクリルポリマーを調製するために使用することもできる)。カルボン酸の例には、イソステアリン酸などの飽和モノカルボン酸、および芳香族不飽和カルボン酸が含まれる。
【0022】
ベータ−ヒドロキシエステル官能性モノマーを調製するために使用される有用なエチレン性不飽和酸官能性モノマーには、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸;イタコン酸、マレイン酸およびフマル酸などのジカルボン酸;ならびにマレイン酸モノブチルおよびイタコン酸モノブチルなどのジカルボン酸のモノエステルが含まれる。エチレン性不飽和酸官能性モノマーおよびエポキシ化合物は、通常、1:1の当量比で反応する。エポキシ化合物は、不飽和酸官能性モノマーとのフリーラジカル開始重合に関与すると思われる、エチレン性不飽和を含有しない。有用なエポキシ化合物には、1,2−ペンテンオキシド、スチレンオキシド、および多くの場合8〜30個の炭素原子を含有するグリシジルエステルまたはエーテル(ブチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルおよびパラ−(三級ブチル)フェニルグリシジルエーテルなど)が含まれる。具体的なグリシジルエステルは、構造:
【化1】
(式中、Rは、約4〜約26個の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルである)のものを含む。通常、Rは、ネオペンタノエート、ネオヘプタノエートまたはネオデカノエートなどの約8〜約10個の炭素原子を有する、分岐状炭化水素基である。カルボン酸の好適な
グリシジルエステルは、VERSATIC ACID 911およびCARDURA Eを含み、これらの各々は、Shell Chemical Co.から市販されている。
【0023】
カルバメート官能基は、アクリルモノマーを、メタクリル酸のカルバメート官能性アルキルエステルなどのカルバメート官能性ビニルモノマーと共重合することにより、またはヒドロキシル官能性アクリルポリマーを、アルコールもしくはグリコールエーテルから誘導可能なものなどの低分子量カルバメート官能性物質と、カルバモイル転移反応により反応させることにより、アクリルポリマーに含まれ得る。この反応では、アルコールまたはグリコールエーテルから誘導される低分子量カルバメート官能性物質は、アクリルポリオールのヒドロキシル基と反応して、カルバメート官能性アクリルポリマー、および元のアルコールまたはグリコールエーテルを与える。アルコールまたはグリコールエーテルから誘導される低分子量カルバメート官能性物質は、触媒の存在下で、アルコールまたはグリコールエーテルをウレアと反応させることにより調製することができる。好適なアルコールには、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、2−エチルヘキサノールおよび3−メチルブタノールなどの、低分子量脂肪族、環状脂肪族および芳香族アルコールが含まれる。好適なグリコールエーテルには、エチレングリコールメチルエーテルおよびプロピレングリコールメチルエーテルが含まれる。たいていの場合、プロピレングリコールメチルエーテルおよびメタノールが使用される。当業者に公知の他のカルバメート官能性モノマーも使用することができる。
【0024】
アミド官能基は、ポリマーの調製において好適な官能性モノマーを使用することによって、または当業者の公知の技法を使用して他の官能基をアミド基に変換することによってアクリルポリマーに導入することができる。同様に、所望に応じて、利用可能な場合には好適な官能性モノマーを使用して、または必要に応じて変換反応を使用して、他の官能基を取り込むことができる。
【0025】
アクリルポリマーは、水性乳化重合技法により調製されて、水性コーティング用組成物の調製に直接、使用され得るか、または溶媒型組成物用には有機溶液重合技法により調製され得る。酸基またはアミン基などの、塩を形成することができる基を含んで、有機溶液重合により調製される場合、ポリマーは、これらの基の塩基または酸による中和時に、水性媒体に分散され得る。一般に、当分野において認識されている量のモノマーを利用して、当業者に公知のこのようなポリマーを生成する任意の方法を使用することができる。
【0026】
アクリルポリマーの他に、硬化性フィルム形成組成物のフィルム形成結合剤構成成分(1)中の樹脂構成成分(a)は、アルキド樹脂またはポリエステルとすることができる。このようなポリマーは、多価アルコールとポリカルボン酸との縮合による公知の様式で調製され得る。好適な多価アルコールには、以下に限定されないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールが含まれる。好適なポリカルボン酸には、以下に限定されないが、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸およびトリメリト酸が含まれる。上記のポリカルボン酸の他に、存在する場合、無水物、またはメチルエステルなどの酸の低級アルキルエステルなどの酸の機能的等価体が使用されてもよい。空気乾燥されるアルキド樹脂を生成することが望ましい場合、好適な乾燥油脂肪酸が使用されてもよく、例えば、アマニ油、ダイズ油、トール油、脱水化ヒマシ油またはキリ油に由来するものを含む。
【0027】
同様に、ポリアミドは、ポリ酸およびポリアミンを利用して調製することができる。好適なポリ酸には、上で列挙したものが含まれ、ポリアミンは、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,3−ジアミノペンタン、1,6−ジ
アミノヘキサン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,5−ジアミノ−2,5−ジメチルヘキサン、2,2,4−および/または2,4,4−トリメチル−1,6−ジアミノ−ヘキサン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,3−および/または1,4−シクロヘキサンジアミン、1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチル−シクロヘキサン、2,4−および/または2,6−ヘキサヒドロトルイレンジアミン、2,4’−および/または4,4’−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタンならびに3,3’−ジアルキル4,4’−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタン(3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタンおよび3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタンなど)、2,4−および/または2,6−ジアミノトルエン、ならびに2,4’−および/または4,4’−ジアミノジフェニルメタンのうちの少なくとも1つから選択され得る。
【0028】
カルバメート官能基は、ポリエステルまたはポリアミドを形成する際に使用される、ポリ酸およびポリオール/ポリアミンと反応することができる、ヒドロキシアルキルカルバメートを最初に形成することにより、ポリエステルまたはポリアミドに取り込むことができる。ヒドロキシアルキルカルバメートは、ポリマー上の酸官能基と縮合して、末端カルバメート官能基を与える。カルバメート官能基はまた、アクリルポリマーへのカルバメート基の取り込みに関連して上に記載されたプロセスと同様のカルバモイル転移プロセスにより、ポリエステル上の末端ヒドロキシル基を低分子量カルバメート官能性物質と反応させることにより、またはイソシアン酸とヒドロキシル官能性ポリエステルを反応させることにより、ポリエステルに取り込むこともできる。
【0029】
アミン、アミド、チオール、ウレア、または上で列挙した他のものなどの他の官能基は、所望に応じて、利用可能な場合には好適な官能性反応剤を使用して、または必要に応じて変換反応を使用して、ポリアミド、ポリエステルまたはアルキド樹脂に取り込んで、所望の官能基を得ることができる。このような技法は、当業者に公知である。
【0030】
ポリウレタンもまた、硬化性フィルム形成組成物のフィルム形成結合剤構成成分(1)中で、樹脂構成成分(a)として使用することもできる。使用することができるポリウレタンの中には、上記のものなどのポリエステルポリオールまたはアクリルポリオールとポリイソシアネートとを、OH/NCO当量比が1:1超となるよう反応させて、その結果、遊離ヒドロキシル基が生成物中に存在するようにすることにより一般に調製される、ポリマーポリオールがある。ポリウレタンポリオールを調製するために使用される有機ポリイソシアネートは、脂肪族もしくは芳香族ポリイソシアネート、またはこれらの2つの混合物とすることができる。ジイソシアネートが、通常、使用されるが、高級ポリイソシアネートをジイソシアネートの代わりに、またはこれと組み合わせて使用することができる。好適な芳香族ジイソシアネートの例は、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよびトルエンジイソシアネートである。好適な脂肪族ジイソシアネートの例は、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの直鎖脂肪族ジイソシアネートである。同様に、環状脂肪族ジイソシアネートを用いることもできる。例には、イソホロンジイソシアネートおよび4,4’−メチレン−ビス−(シクロヘキシルイソシアネート)が含まれる。好適な高級ポリイソシアネートの例は、1,2,4−ベンゼントリイソシアネートポリメチレンポリフェニルイソシアネート、および1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネートに基づくイソシアネート三量体である。ポリエステルの場合のように、ポリウレタンは、未反応カルボン酸基を用いて調製することができ、この未反応カルボン酸基がアミンなどの塩基により中和されると、水性媒体への分散が可能となる。
【0031】
末端および/またはペンダントカルバメート官能基は、ポリイソシアネートを、末端/ペンダントカルバメート基を含有するポリマーポリオールと反応させることによりポリウ
レタンに取り込むことができる。あるいは、カルバメート官能基は、ポリイソシアネートを、個別の反応剤として、ポリオールおよびヒドロキシアルキルカルバメートまたはイソシアン酸と反応させることによりポリウレタンに取り込むことができる。カルバメート官能基はまた、アクリルポリマーへのカルバメート基の取り込みに関連して上に記載されたプロセスと同様のカルバモイル転移プロセスにより、ヒドロキシル官能性ポリウレタンを低分子量カルバメート官能性物質と反応させることにより、ポリウレタンに取り込むこともできる。さらに、イソシアネート官能性ポリウレタンをヒドロキシアルキルカルバメートと反応させて、カルバメート官能性ポリウレタンを得ることができる。
【0032】
アミド、チオール、ウレアまたは上で列挙した他のものなどの他の官能基は、所望に応じて、利用可能な場合には好適な官能性反応剤を使用して、または必要に応じて変換反応を使用して、ポリウレタンに取り込んで、所望の官能基を得ることができる。このような技法は、当業者に公知である。
【0033】
ポリエーテルポリオールの例は、以下の構造式:
【化2】
(式中、置換基R
1は、水素、または1〜5個の炭素原子を含有する低級アルキルであり、混合した置換基を含み、nは、通常、2〜6であり、mは、8〜100、またはそれ超である)を有するものを含むポリアルキレンエーテルポリオールである。ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシテトラエチレン)グリコール、ポリ(オキシ−1,2−プロピレン)グリコールおよびポリ(オキシ−1,2−ブチレン)グリコールが含まれる。
【0034】
同様に、様々なポリオール、例えば、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールAなどのジオール、またはトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの他の高級ポリオールのオキシアルキル化から形成されるポリエーテルポリオールも有用である。示されている通り利用することができる、高級官能基のポリオールは、例えば、スクロースまたはソルビトールなどの化合物のオキシアルキル化により作製され得る。一般的に利用されるオキシアルキル化法のうちの1つは、酸性触媒または塩基性触媒の存在下での、ポリオールとアルキレンオキシド、例えばプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドとの反応である。具体的なポリエーテルには、Invistaから入手可能なTERATHANEおよびTERACOLという名称で、ならびにLyondell
Chemical Co.から入手可能なPOLYMEGという名称で販売されているものが含まれる。
【0035】
ペンダントカルバメート官能基は、カルバモイル転移反応によってポリエーテルに取り込むことができる。酸、アミン、エポキシド、アミド、チオールおよびウレアなどの他の
官能基は、所望に応じて、利用可能な場合には好適な官能性反応剤を使用して、または必要に応じて変換反応を使用して、ポリエーテルに取り込んで、所望の官能基を得ることができる。好適なアミン官能性ポリエーテルの例には、Huntsman Corporationから入手可能な、ポリエーテル官能性ジアミンであるJEFFAMINE D2000などの、JEFFAMINEという名前で販売されているものが含まれる。
【0036】
樹脂構成成分(a)としての使用に好適なエポキシ官能性ポリマーは、ポリエポキシドと、アルコール性ヒドロキシル基含有物質およびフェノール性ヒドロキシル基含有物質から選択されるポリヒドロキシル基含有物質を一緒に反応させて、ポリエポキシドを鎖延長するか、またはポリエポキシドの分子量を構築することにより鎖延長されるポリエポキシドを含むことができる。
【0037】
鎖延長されたポリエポキシドは、無溶媒でまたはメチルイソブチルケトンおよびメチルアミルケトンを含むケトン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族化合物、ならびにジエチレングリコールのジメチルエーテルなどのグリコールエーテルなどの不活性有機溶媒の存在下で、ポリエポキシドとポリヒドロキシル基含有物質を一緒に反応させることにより、通常、調製される。反応は、エポキシ基含有樹脂性反応生成物が得られるまで、約80℃〜160℃の温度で約30〜180分間、通常行われる。
【0038】
反応剤の当量比、すなわちエポキシ:ポリヒドロキシル基含有物質は、通常、約1.00:0.75〜1.00:2.00である。
【0039】
定義によるポリエポキシドは、少なくとも2つの1,2−エポキシ基を有する。一般に、ポリエポキシドのエポキシド等価重量は、100〜約2000、通常、約180〜500の範囲である。エポキシ化合物は、飽和または不飽和の、環式または非環式の、脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式とすることができる。それらは、ハロゲン、ヒドロキシルおよびエーテル基などの置換基を含有していてもよい。
【0040】
ポリエポキシドの例は、1超、通常約2の1,2−エポキシ同等物を有するもの、すなわち、1分子あたり平均2つのエポキシド基を有するポリエポキシドである。最も一般に使用されているポリエポキシドは、環式ポリオールのポリグリシジルエーテル、例えば、ビスフェノールA、レゾルシノール、ヒドロキノン、ベンゼンジメタノール、フロログルシノールおよびカテコールなどの多価フェノールのポリグリシジルエーテル;または脂環式ポリオール、特に、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)エタン、2−メチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−三級ブチルシクロヘキシル)プロパン、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンおよび1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンなどの環状脂肪族ポリオールなどの多価アルコールのポリグリシジルエーテルである。脂肪族ポリオールの例には、とりわけ、トリメチルペンタンジオールおよびネオペンチルグリコールが含まれる。
【0041】
ポリエポキシドを鎖延長する、またはその分子量を増加させるために使用される、ポリヒドロキシル基含有物質は、さらに、上で開示されているもののいずれかなどのポリマーポリオールとすることができる。本発明は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、グリセロール、ノボラックなどのジグリシジルエーテルなどのエポキシ樹脂を含んでもよい。例示的な好適なポリエポキシドは、米国特許第4,681,811号の第5欄第33〜58行目に記載されており、その引用部分が参照により本明細書に組み込まれている。
【0042】
エポキシ官能性フィルム形成ポリマーは、代替として、アクリル酸グリシジル、メタク
リル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルおよびメタリルグリシジルエーテルなどのエポキシ官能性モノマーを用いて調製されるアクリルポリマーとすることができる。グリシジルアルコールもしくはグリシジルアミンを用いて調製された、またはエピハロヒドリンと反応したポリエステル、ポリウレタン、もしくはポリアミドもまた、好適なエポキシ官能性樹脂である。エポキシド官能基は、アルカリの存在下で、樹脂上のヒドロキシル基をエピハロヒドリンまたはジハロヒドリン(エピクロロヒドリンまたはジクロロヒドリンなど)と反応させることにより樹脂に取り込むことができる。
【0043】
好適なフルオロポリマーの非限定的な例には、旭硝子株式会社からLUMIFLONという名称で入手可能なフルオロエチレン−アルキルビニルエーテル交互コポリマー(米国特許第4,345,057号に記載されているものなど)、FLUORADという名称の3M(St.Paul、Minnesota)から市販のフルオロ脂肪族ポリマーエステル、およびパーフルオロ化ヒドロキシル官能性(メタ)アクリレート樹脂が含まれる。
【0044】
本発明の硬化性フィルム形成組成物のフィルム形成結合剤構成成分(1)において使用するための好適な硬化剤(b)には、アミノプラスト、ブロック化イソシアネートを含むポリイソシアネート、ポリエポキシド、ベータ−ヒドロキシアルキルアミド、ポリ酸、有機金属酸官能性物質、ポリアミン、ポリアミド、ポリスルフィド、ポリチオール、ポリエン(ポリアクリレート、ポリオール、ポリシランなど)、および上述のいずれかの混合物が含まれ、これらの物質のいずれかについて当分野において公知のものが含まれる。用語「硬化剤」、「架橋化剤」および「架橋剤」は、本明細書において互換的に使用される。
【0045】
有用なアミノプラストは、ホルムアルデヒドとアミンまたはアミドとの縮合反応から得ることができる。アミンまたはアミドの非限定的な例には、メラミン、ウレアおよびベンゾグアナミンが含まれる。
【0046】
アルコールおよびホルムアルデヒドとメラミン、ウレアまたはベンゾグアナミンとの反応から得られる縮合生成物が最も一般的であるが、他のアミンまたはアミドとの縮合物を使用することができる。ホルムアルデヒドは、最も一般に使用されるアルデヒドであるが、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒドおよびベンズアルデヒドなどの他のアルデヒドも使用することができる。
【0047】
アミノプラストは、イミノおよびメチロール基を含有することができる。ある特定の場合、メチロール基のうちの少なくとも一部が、アルコールによりエーテル化されて、硬化応答を改変することができる。メタノール、エタノール、n−ブチルアルコール、イソブタノールおよびヘキサノールのような任意の一価アルコールをこの目的のために用いることができる。好適なアミノプラスト樹脂の非限定的な例は、CYMEL(登録商標)という商標でAllnexから、およびRESIMENE(登録商標)という商標でINEOSから市販されている。
【0048】
使用に好適な他の架橋化剤は、ポリイソシアネート架橋化剤を含む。本明細書で使用する場合、用語「ポリイソシアネート」は、ブロック化(またはキャップした)ポリイソシアネート、およびブロック化されていないポリイソシアネートを含むことが意図されている。ポリイソシアネートは、脂肪族、芳香族またはそれらの混合物とすることができる。ジイソシアネートのイソシアヌレートなどの高級ポリイソシアネートが多くの場合、使用されるが、ジイソシアネートも使用することができる。イソシアネートプレポリマー、例えば、ポリイソシアネートとポリオールとの反応生成物も使用することができる。ポリイソシアネート架橋化剤の混合物を使用することができる。
【0049】
ポリイソシアネートは、様々なイソシアネート含有物質から調製することができる。好
適なポリイソシアネートの例には、以下のジイソシアネート:トルエンジイソシアネート、4,4’−メチレン−ビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、2,2,4−と2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの異性体混合物、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートおよび4,4’−ジフェニルメチレンジイソシアネートから調製される三量体が含まれる。さらに、ポリエステルポリオールなどの様々なポリオールのブロック化ポリイソシアネートプレポリマーも使用することができる。
【0050】
イソシアネート基は、所望に応じて、キャップされていてもキャップされていなくてもよい。ポリイソシアネートがブロック化またはキャップされているべきである場合、当業者に公知の、任意の好適な脂肪族、環状脂肪族または芳香族のアルキルモノアルコールまたはフェノール化合物を、ポリイソシアネート用のキャップ剤として使用することができる。好適なブロック剤の例には、メタノール、エタノールおよびn−ブタノールを含めた低級脂肪族アルコール;シクロヘキサノールなどの環状脂肪族アルコール;フェニルカルビノールおよびメチルフェニルカルビノールなどの芳香族アルキルアルコール;ならびにフェノールそれ自体および置換基がコーティング操作に影響を及ぼさない置換フェノールなどのフェノール性化合物(クレゾールおよびニトロフェノールなど)など、高温で脱ブロック化される物質が含まれる。グリコールエーテルも、キャップ剤として使用することができる。好適なグリコールエーテルには、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテルおよびプロピレングリコールメチルエーテルが含まれる。他の好適なキャップ剤には、メチルエチルケトキシム、アセトンオキシムおよびシクロヘキサノンオキシムなどのオキシム、イプシロン−カプロラクタムなどのラクタム、ジメチルピラゾールなどのピラゾール、ならびにジブチルアミンなどのアミンが含まれる。
【0051】
ポリエポキシドはカルボン酸基および/またはアミン基を有するポリマーに好適な硬化剤である。好適なポリエポキシドの例には、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートおよびビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−メチル)アジペートなどの低分子量ポリエポキシドが含まれる。上記の多価フェノールおよびアルコールのポリグリシジルエーテルを含めたより高い分子量のポリエポキシドも、架橋化剤として好適である。
【0052】
ベータ−ヒドロキシアルキルアミドは、カルボン酸基を有するポリマーに好適な硬化剤である。ベータ−ヒドロキシアルキルアミドは、以下の通り、構造として図示することができる:
【化3】
[式中、R
1は、H、またはC
1〜C
5アルキルであり、R
2は、H、C
1〜C
5アルキル、または
【化4】
(式中、R
1は、上に記載されている通りである)であり、Aは、結合、または2〜20
個の炭素原子を含有する置換炭化水素ラジカルを含めた、飽和、不飽和もしくは芳香族炭化水素から誘導される多価有機ラジカルであり、mは1または2に等しく、nは0または2に等しく、m+nは、少なくとも2であり、通常、2から最大4(4を含む)までの範囲内である]。たいていの場合、Aは、C
2〜C
12二価アルキレンラジカルである。
【0053】
ポリ酸、特に、ポリカルボン酸は、エポキシ官能基を有するポリマーに好適な硬化剤である。好適なポリカルボン酸の例には、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、アゼライン酸およびドデカン二酸が含まれる。他の好適なポリ酸架橋化剤には、少なくとも1つのカルボン酸基を含有するエチレン性不飽和モノマー、およびカルボン酸基を含まない少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーから調製される、酸基含有アクリルポリマーが含まれる。このような酸官能性アクリルポリマーは、30〜150の範囲の酸価を有することができる。酸官能基含有ポリエステルも、同様に使用することができる。脂肪族ポリオールと脂肪族および/または芳香族ポリカルボン酸または無水物との縮合に基づいた、低分子量ポリエステルおよび半酸エステル(half-acid ester)を使用することができる。好適な脂肪族ポリオールの例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ジ−トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ペンタエリスリトールなどが含まれる。ポリカルボン酸および無水物は、とりわけ、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、クロレンド酸無水物などを含むことができる。酸および/または無水物の混合物も、使用されてもよい。上記のポリ酸架橋化剤は、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第4,681,811号の第6欄第45行目〜第9欄第54行目にさらに詳細に記載されている。
【0054】
好適なポリアミン架橋化剤の非限定的な例には、窒素原子に結合しているラジカルが、飽和、または不飽和、脂肪族、脂環式、芳香族、芳香族置換脂肪族、脂肪族置換芳香族、および複素環式であり得る、一級もしくは二級のジアミンまたはポリアミンが含まれる。好適な脂肪族および脂環式ジアミンの非限定的な例には、1,2−エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,8−オクタンジアミン、イソホロンジアミン、プロパン−2,2−シクロヘキシルアミンなどが含まれる。好適な芳香族ジアミンの非限定的な例には、フェニレンジアミンおよびトルエンジアミン、例えばo−フェニレンジアミンおよびp−トリレンジアミンが含まれる。4,4’−ビフェニルジアミン、メチレンジアニリンおよびモノクロロメチレンジアニリンなどの多核芳香族ジアミンも好適である。
【0055】
好適な脂肪族ジアミンの例には、非限定的に、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,3−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,5−ジアミノ−2,5−ジメチルヘキサン、2,2,4−および/もしくは2,4,4−トリメチル−1,6−ジアミノ−ヘキサン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,3−および/もしくは1,4−シクロヘキサンジアミン、1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチル−シクロヘキサン、2,4−および/もしくは2,6−ヘキサヒドロトルイレンジアミン、2,4’−および/もしくは4,4’−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタンならびに3,3’−ジアルキル4,4’−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタン(3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタンおよび3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタンなど)、2,4−および/もしくは2,6−ジアミノトルエンならびに2,4’−および/もしくは4,4’−ジアミノジフェニルメタン、またはそれらの混合物が含まれる。環状脂肪族ジアミンは、JEFFLINK(商標)754などの、JEFFLINK(商標)という呼称で、Huntsman Corporation(Houston、TX)から市販されている。Bayer Ma
terialScienceから入手可能な、DESMOPHEN NH1520など、および/またはDorf Ketalから入手可能な二級脂肪族ジアミンである、CLEARLINK1000などの追加の脂肪族環式ポリアミンも使用することができる。イソホロンジアミンとアクリロニトリルとの反応生成物である、POLYCLEAR136(BASF/Hansen Group LLCから入手可能)も好適である。他の例示的な好適なポリアミンは、それらの引用部分が、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第4,046,729号の第6欄第61行目〜第7欄第26行目、および米国特許第3,799,854号の第3欄第13〜50行目に記載されている。Air Products and Chemicals,Inc.から入手可能な、ANCAMINEポリアミンなどの追加のポリアミンも使用することができる。
【0056】
好適なポリアミドは、当分野において公知のもののいずれかを含む。例えば、Air Products and Chemicals,Inc.から入手可能であるANCAMIDEポリアミドである。
【0057】
好適なポリエンは、式:
A−(X)
m
(式中、Aは有機部分であり、Xは、オレフィン性不飽和部分であり、mは、少なくとも2、通常、2〜6である)によって表されるものを含むことができる。Xの例は、以下の構造:
【化5】
(式中、各Rは、Hおよびメチルから選択されるラジカルである)の基である。
【0058】
ポリエンは、照射への曝露により重合可能なオレフィン性二重結合を分子中に有する化合物またはポリマーであり得る。このような物質の例は、(メタ)アクリル官能性(メタ)アクリルコポリマー、エポキシ樹脂(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、アミノ(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートおよびメラミン(メタ)アクリレートである。これらの化合物の数平均モル質量(Mn)は、多くの場合、約200〜10,000である。分子は、多くの場合、照射への曝露により重合可能な、平均で2〜20のオレフィン性二重結合を含有する。脂肪族および/または環状脂肪族(メタ)アクリレートは、各場合において、使用されることが多い。(シクロ)脂肪族ポリウレタン(メタ)アクリレートおよび(シクロ)脂肪族ポリエステル(メタ)アクリレートは、特に好適である。結合剤は、単独で、または混合物中で使用されてもよい。
【0059】
ポリウレタン(メタ)アクリレートの具体的な例は、イソシアヌレートおよびそのビウレット誘導体を含めた、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはイソホロンジイソシアネートなどのポリイソシアネートと、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび/またはヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの反応生成物である。ポリイソシアネートは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと1:1の当量比で反応するか、または1超のNCO/OH当量比で反応して、NCO含有反応生成物を形成することができ、この反応生成物は次に、ジオールまたはトリオール、例えば1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールおよび/またはトリメチロールプロパンなどのポリオールと鎖延長され得る。ポリエステル
(メタ)アクリレートの例は、(メタ)アクリル酸または無水物と、プロポキシル化ジオールおよびトリオールなどのアルキル化ポリオールを含めた、ジオール、トリオールおよびテトロールなどのポリオールとの反応生成物である。ポリオールの例には、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールおよびプロポキシル化1,6−ヘキサンジオールが含まれる。ポリエステル(メタ)アクリレートの具体的な例は、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートである。
【0060】
(メタ)アクリレートの他に、(メタ)アリル化合物またはポリマーを、単独で、または(メタ)アクリレートと組み合わせて使用することができる。(メタ)アリル物質の例は、1,4−ブタンジオールのジアリルエーテル、およびトリメチロールプロパンのトリアリルエーテルなどの、ポリアリルエーテルである。他の(メタ)アリル物質の例は、(メタ)アリル基を含有しているポリウレタンである。例えば、イソシアヌレートおよびそのビウレット誘導体を含めた、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートならびに/またはイソホロンジイソシアネートなどのポリイソシアネートと、1,4−ブタンジオールのモノアリルエーテルならびにトリメチロールプロパンのジアリルエーテルなどのヒドロキシル官能性アリルエーテルとの反応生成物。ポリイソシアネートは、ヒドロキシル官能性アリルエーテルと1:1の当量比で反応するか、または1超のNCO/OH当量比で反応して、NCO含有反応生成物を形成することができ、この反応生成物は次に、ジオールまたはトリオール、例えば1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールおよび/またはトリメチロールプロパンなどのポリオールで鎖延長され得る。
【0061】
本明細書で使用する場合、用語「ポリチオール官能性物質」は、2つまたはそれ超のチオール官能基(SH)を含有する多官能性物質を指す。硬化性フィルム形成組成物の形成に使用するための、好適なポリチオール官能性物質は、多数あり、幅広く変動し得る。このようなポリチオール官能性物質は、当分野において公知であるものを含むことができる。好適なポリチオール官能性物質の非限定的な例は、化合物およびポリマーを含む少なくとも2つのチオール基を有するポリチオールを含むことができる。ポリチオールは、エーテル結合(−O−)、ポリスルフィド結合(−S
x−)(式中、xは2〜4など、少なくとも2である)を含むスルフィド結合(−S−)、およびこのような結合の組合せを有することができる。
【0062】
本発明において使用するためのポリチオールは、式:
R
1−(SH)
n
(式中、R
1は、多価有機部分であり、nは少なくとも2、通常、2〜6の整数である)の物質を含む。
【0063】
好適なポリチオールの非限定的な例には、式HS−R
2−COOHであるチオール含有酸と、構造R
3−(OH)
nのポリヒドロキシ化合物とのエステルが含まれ、式中、R
2は有機部分であり、R
3は有機部分であり、nは、少なくとも2、通常、2〜6である。これらの構成成分を、好適な条件下で反応させて、一般構造:
【化6】
(式中、R
2、R
3およびnは、上で定義されている通りである)を有するポリチオールを得ることができる。
【0064】
チオール含有酸の例は、グリコール、トリオール、テトロール、ペンタオール、ヘキサオールおよびそれらの混合物などのポリヒドロキシ化合物が挙げられる、チオグリコール酸(HS−CH
2COOH)、α−メルカプトプロピオン酸(HS−CH(CH
3)−COOH)およびβ−メルカプトプロピオン酸(HS−CH
2CH
2COOH)である。好適なポリチオールの他の非限定的な例には、エチレングリコールビス(チオグリコレート)、エチレングリコールビス(β−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(β−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)およびペンタエリスリトールテトラキス(β−メルカプトプロピオネート)ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0065】
硬化剤として有用な、好適なポリ酸およびポリオールは、ポリエステルを作製するために、本明細書に記載されているものなどの、当分野において公知のもののいずれかを含む。
【0066】
架橋化剤の適切な混合物も、本発明に使用することもできる。硬化性フィルム形成組成物中の架橋化剤の量は、硬化性フィルム形成組成物中の樹脂固形分の総重量に対して、一般に、5〜75重量%の範囲である。例えば、架橋化剤の最少量は、少なくとも5重量%、多くの場合、少なくとも10重量%、およびさらに多くの場合、少なくとも15重量%とすることができる。架橋化剤の最大量は、75重量%、より多くの場合、60重量%または50重量%とすることができる。架橋化剤の範囲は、例えば、5〜50重量%、5〜60重量%、10〜50重量%、10〜60重量%、10〜75重量%、15〜50重量%、15〜60重量%および15〜75重量%を含むことができる。
【0067】
樹脂構成成分(a)は、エポキシド官能基を含むことができ、硬化剤構成成分(b)は、アミン官能基を含むことができる。
【0068】
本発明の組成物は、(2)オルトケイ酸リチウム(Li
4SiO
4)および/またはメタケイ酸リチウム(Li
2SiO
3)を含めた、ケイ酸リチウムを含む、腐食防止性構成成分をさらに含む。腐食防止性構成成分(2)は、酸化マグネシウム(MgO)およびアゾールのうちの少なくとも1つをさらに含むことができる。
【0069】
任意の数平均粒子サイズのいかなるMgOも、本発明により使用することができる。数平均粒子サイズは、以下に記載されているように、透過型電子顕微鏡(「TEM」)画像の顕微鏡写真を視覚的に精査することにより決定され得る。例えば、MgOは、平均粒子サイズに基づいたサイズで、0.5〜50ミクロンまたは1〜15ミクロンなどのミクロンサイズとすることができる。あるいは、MgOは、数平均粒子サイズに基づいたサイズで、10〜499ナノメートルまたは10〜100ナノメートルなどのナノサイズとすることができる。これらの粒子サイズは、硬化性フィルム形成組成物に取り込む時点の、MgOの粒子サイズを指すことが理解されよう。様々なコーティング剤の調製方法により、平均粒子サイズを増大させ得るMgO粒子の凝集、または平均粒子サイズを低下させることができるせん断作用もしくは他の作用が生じ得る。MgOは、いくつかの供給源から市販されている。
【0070】
超微細なMgO粒子が、腐食防止性構成成分(2)に使用され得る。本明細書で使用する場合、用語「超微細」は、30〜500平方メートル/グラム、または一部の場合、80〜250平方メートル/グラムなどの、少なくとも10平方メートル/グラムのB.E.T.比表面積を有する粒子を指す。本明細書で使用する場合、用語「B.E.T.比表面積」は、定期刊行物「The Journal of the American Chemical Society」、60
巻、309頁(1938年)に記載されているBrunauer−Emmett−Teller法に基づき、ASTMD3663−78規格に従った窒素吸着により決定された比表面積を指す。
【0071】
本発明の硬化性フィルム形成組成物は、100ナノメートル以下、または例えば5〜50ナノメートルなどの200ナノメートル以下の算出された球相当径を有するMgO粒子を含むことができる。当業者により理解される通り、算出された球相当径は、B.E.T.比表面積から、以下の式:直径(ナノメートル)=6000/[BET(m.sup.2/g)*.rho.(グラム/cm.sup.3)]に従って、決定することができる。
【0072】
透過型電子顕微鏡(「TEM」)画像の顕微鏡写真を視覚的に精査し、画像において粒子の直径を測定し、そしてTEM画像の倍率に基づく測定粒子の平均一次粒子サイズを算出することにより決定すると、多くの場合、MgO粒子は、50ナノメートル以下または25ナノメートル以下などの、100ナノメートル以下の数平均一次粒子サイズを有する。当業者であれば、このようなTEM画像をどのように準備し、倍率に基づいて一次粒子サイズを決定するかを理解しているであろう。粒子の一次粒子サイズは、この粒子を完全に取り囲む最小径球を指す。本明細書で使用する場合、用語「一次粒子サイズ」は、2つまたはそれ超の個々の粒子の凝集物とは対照的に、個々の粒子のサイズを指す。
【0073】
MgO粒子の形状(または形態)は、様々となり得る。例えば、ほぼ球形の形態、および立方体、板状、多面体または針状の(細長いまたは繊維状)粒子を使用することができる。粒子はポリマーゲル中に完全に覆われていても、ポリマーゲル中に全く覆われていなくても、またはポリマーゲルで部分的に覆われていてもよい。ポリマーゲルで部分的に覆われているとは、粒子の少なくとも一部分が、その上に堆積したポリマーゲルを有しており、このポリマーゲルは、例えば、粒子に共有結合的に結合していても、または粒子と単に会合しているだけでもよいことを意味する。
【0074】
硬化性フィルム形成組成物において使用されるMgOの量は、使用者の必要性に応じて変動し得る。例えば、硬化性フィルム形成組成物は、1〜50重量%のMgO粒子を含むことができ、最小値は、例えば、1重量%、または5重量%、または10重量%であり、最大値は、50重量%または40重量%である。例示的な範囲には、硬化性フィルム形成組成物中の顔料を含めたすべての固形分の総重量に対して重量%で、5〜50重量%、5〜40重量%、10〜50重量%および10〜40重量%が含まれる。
【0075】
MgOが、硬化性フィルム形成組成物中に存在している場合、腐食防止性構成成分(2)は、アミノ酸をさらに含むことができる。アミノ酸は、各アミノ酸への特有の側鎖を含めた、酸とアミンの官能基の両方を有する化合物として当業者により理解されよう。アミノ酸は、モノマー、または二量体を含むオリゴマーであってもよい。オリゴマーアミノ酸が使用される場合、オリゴマーの、GPCにより決定される分子量は、多くの場合、1000未満である。
【0076】
特に、好適なアミノ酸は、ヒスチジン、アルギニン、リシン、システイン、シスチン、トリプトファン、メチオニン、フェニルアラニンおよびチロシンである。混合物も使用することができる。アミノ酸は、互いに鏡像画像であるL−またはD−鏡像異性体のどちらかであってもよいか、またはそれらの混合物である。L−立体配置は、通常、タンパク質および天然に見いだされ、したがって、幅広く市販されている。したがって、用語「アミノ酸」は、本明細書で使用する場合、D−立体配置およびL−立体配置の両方を指す。L−立体配置だけ、またはD−立体配置だけが含まれてもよいことが予想される。アミノ酸は、例えば、Sigma Aldrich、Thermo Fisher Scient
ific、Hawkins PharmaceuticalまたはAjinomatoから購入することができる。多くの場合、アミノ酸であるグリシン、アルギニン、プロリン、システインおよび/またはメチオニンは、特に除外される。
【0077】
アミノ酸は、コーティング剤の耐腐食性を改善する任意の量で存在することができる。例えば、アミノ酸は、少なくとも0.1重量%または少なくとも2重量%、および最大でも20重量%または最大でも4重量%などの、0.1〜20重量%の量で存在することができる。例示的な範囲には、硬化性フィルム形成組成物中の樹脂固形分の総重量に対して、0.1〜4重量%、2〜4重量%、または2〜20重量%が含まれる。
【0078】
MgOに加えて、またはMgOの代替として、アゾールも腐食防止性構成成分(2)中に存在していてもよい。アゾールは、複素環式環中に、2つの二重結合、1〜3個の炭素原子、および任意選択で硫黄原子または酸素原子を含有する、5員のN−複素環式化合物である。一般に使用されているアゾールは、ベンゾトリアゾールである。他のアゾールの例は、5−メチルベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、2−アミノ−5−エチル−1,3,4−チアジアゾール、2−アミノ−5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール、5−フェニルテトラゾール、7h−イミダゾ(4,5−d)ピリミジンおよび2−アミノチアゾールである。ナトリウムおよび/または亜鉛の塩などの、上述のもののいずれかの塩も好適である。さらなるアゾールには、2−ヒドロキシベンゾチアゾール、ベンゾチアゾール、1−フェニル−4−メチルイミダゾールおよび1−(p−トリル)−4−メチルイミダゾール(1-(p-tolyl)-4-methlyimidazole)が含まれる。好適なア
ゾール含有製品は、HYBRICOR204として、WPC Technologiesから市販されている。アゾールの混合物も使用することができる。通常、アゾールは、硬化性フィルム形成組成物中に、硬化性フィルム形成組成物中の樹脂固形分の総重量に対して、0.1〜0.25重量%などの、0.1%という低い量で存在する。
【0079】
ケイ酸リチウムは、硬化性フィルム形成組成物中に、硬化性フィルム形成組成物中の樹脂固形分の総重量に対して、0.1〜4、0.1〜3.5、0.25〜4.5、0.25〜4、0.25〜3.5、0.5〜4.5、0.5〜4または0.5〜3.5などの0.1〜4.5重量%のリチウムの量で存在する。
【0080】
特定の例では、以下の組合せが企図される:ケイ酸リチウム(オルトケイ酸塩および/またはメタケイ酸塩)が、チアゾールと組み合わせて使用されてもよい。ケイ酸リチウム(オルトケイ酸塩および/またはメタケイ酸塩)が、ジアゾールと組み合わせて使用されてもよい。ケイ酸リチウム(オルトケイ酸塩および/またはメタケイ酸塩)が、イミダゾールと組み合わせて使用されてもよい。ケイ酸リチウム(オルトケイ酸塩および/またはメタケイ酸塩)が、オキサゾールと組み合わせて使用されてもよい。ケイ酸リチウム(オルトケイ酸塩および/またはメタケイ酸塩)が、テトラゾールと組み合わせて使用されてもよい。ケイ酸リチウム(オルトケイ酸塩および/またはメタケイ酸塩)が、トリアゾールと組み合わせて使用されてもよい。上記の例の各々において、酸化マグネシウムが、さらに含まれ得る。あるいは、ケイ酸リチウム(オルトケイ酸塩および/またはメタケイ酸塩)が、酸化マグネシウムと組み合わせて使用されてもよい。
【0081】
多くの場合、硬化性フィルム形成組成物は、リチウム−アルミニウム合金粒子、クレイ、リチウム塩および酸化リチウム(Li
2O)を本質的に含まない。定義によって、リチウム塩の陰イオンと陽イオンの両方が、水中で可溶であるべきである。したがって、本発明において使用される、メタケイ酸リチウムおよびオルトケイ酸リチウムなどのポリケイ
酸リチウム、ならびにリチウム交換(シリカ)粒子は、リチウム塩とはみなされない。
【0082】
Li
2Oは、水に非常に敏感であり、激しく反応して水酸化リチウムを生成し、これにより、本発明の硬化性フィルム形成組成物において使用するには危険となることに留意されたい。「本質的に含まない」とは、これらの材料は、組成物にとって必須ではなく、したがって、硬化性フィルム形成組成物は、これらの材料をいかなる認識可能なまたは不可欠な量でも含まないことを意味する。上記の材料が存在する場合、硬化性フィルム形成組成物中の固形分の総重量に対して、通常、0.1重量%未満の偶発的な量でしか存在しない。
【0083】
(1)硬化性の有機フィルム形成結合剤構成成分(すなわち、(a)樹脂構成成分および(b)硬化剤構成成分)および(2)腐食防止性構成成分を含む、本発明の硬化性フィルム形成組成物を提供し得、使用前に一成分型(one-package)組成物として保管するこ
とができる。一成分型組成物は、コーティング剤の構成成分すべてが、製造後、保管の間などに、同一容器に維持されている組成物を指すものと理解される。典型的な一成分型コーティング剤は、基材に塗布されて、加熱、強制空気、照射による硬化によるなどの任意の従来の手段により硬化され得る。周囲硬化コーティング剤などの一部のコーティング剤の場合、一成分型として、それらを保管するのは実用的ではなく、むしろ、それらは、使用前に構成成分が硬化するのを防止するために、多成分型コーティング剤として保管されなければならない。用語「多成分型コーティング剤」は、様々な構成成分が、塗布の直前まで、個別に維持されているコーティング剤を意味する。本コーティング剤は、二成分型コーティング剤などの多成分型コーティング剤とすることもできる。
【0084】
したがって、構成成分(a)および(b)は、一成分型(1K)、または二成分型(2K)系などの多成分型として提供されてもよい。有機フィルム形成結合剤(1)の構成成分は多くの場合、個別のパッケージで提供され、反応直前に、一緒に混合される。反応混合物が、多成分型系である場合、腐食防止性構成成分(2)は、個別の構成成分(a)および(b)のどちらか一方もしくは両方に、ならびに/または追加の個別の構成成分のパッケージとして存在することができる。
【0085】
本発明の硬化性フィルム形成組成物は、このような組成物中に一般的に使用される任意選択の成分を追加的に含んでもよい。例えば、組成物は、UV分解耐性のためのヒンダードアミン光安定剤をさらに含んでもよい。このようなヒンダードアミン光安定剤には、米国特許第5,260,135号に開示されているものが挙げられる。ヒンダードアミン光安定剤が使用される場合、フィルム形成組成物中の樹脂固形分の総重量に対して、0.1〜2重量%の量で組成物中に存在する。他の任意選択的添加物、例えば着色剤、可塑剤、耐摩耗性粒子、フィルム強化粒子、流動制御剤、チキソトロープ剤、レオロジー調整剤、充填剤、触媒、酸化防止剤、殺生物剤、消泡剤、界面活性剤、湿潤剤、分散助剤、接着促進剤、UV光吸収剤および安定剤、安定化剤、有機共溶媒、反応性希釈剤、粉砕用ビヒクル、および他の慣用的な助剤、またはそれらの組合せなどを含むことができる。用語「着色剤」は、本明細書で使用する場合、米国特許公開第2012/0149820号の段落29〜38に定義されている通りであり、その引用部分が参照により本明細書に組み込まれている。
【0086】
「耐摩耗性粒子」とは、コーティング剤に使用される場合、これらの粒子を欠く同じコーティング剤と比較して、コーティング剤にあるレベルの耐摩耗性を付与するものである。好適な耐摩耗性粒子には、有機および/または無機粒子が含まれる。好適な有機粒子の例には、以下に限定されないが、ダイアモンドダスト粒子などのダイアモンド粒子、およびカーバイド物質から形成される粒子が含まれる。カーバイド粒子の例には、以下に限定されないが、炭化チタン、炭化ケイ素および炭化ホウ素が含まれる。好適な無機粒子の例
には、以下に限定されないが、シリカ;アルミナ;アルミナシリケート;シリカアルミナ;アルカリアルミノシリケート;ホウケイ酸ガラス;窒化ホウ素および窒化ケイ素を含む窒化物;二酸化チタンおよび酸化亜鉛を含む酸化物;石英;霞石閃長岩;酸化ジルコニウムの形態などのジルコン;バデレイ石(buddeluyite);ならびにユージアル石が含まれ
る。いかなるサイズの粒子も使用することができ、様々な粒子および/または様々なサイズの粒子の混合物も同様に使用することができる。
【0087】
本明細書で使用する場合、用語「接着促進剤」および「接着促進性構成成分」は、組成物中に含まれる場合、コーティング用組成物の金属基材への接着を増強する任意の物質を指す。このような接着促進性構成成分は、多くの場合、遊離酸を含む。本明細書で使用する場合、用語「遊離酸」は、組成物中に存在し得るポリマーを形成するために使用することができるいかなる酸とも異なり、組成物の個々の構成成分として含まれる有機酸および/または無機酸を包含することを意味する。遊離酸は、タンニン酸、没食子酸、リン酸、亜リン酸、クエン酸、マロン酸、それらの誘導体、またはそれらの混合物を含むことができる。好適な誘導体には、このような酸のエステル、アミドおよび/または金属錯体が含まれる。多くの場合、遊離酸は、100%のオルトリン酸、過リン酸などのリン酸、または70〜90%のリン酸溶液などのそれらの水溶液を含む。
【0088】
このような遊離酸に加えて、またはその代わりの、他の好適な接着促進性構成成分は、金属リン酸塩、有機リン酸塩および有機ホスホン酸塩である。好適な有機リン酸塩および有機ホスホン酸塩には、それらの引用部分が、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,440,580号の第3欄第24行目〜第6欄第22行目、米国特許第5,294,265号の第1欄第53行目〜第2欄第55行目、および米国特許第5,306,526号の第2欄第15行目〜第3欄第8行目に開示されているものが含まれる。好適な金属リン酸塩には、例えば米国特許第4,941,930号、同第5,238,506号および同第5,653,790号に記載されている物質を含めた、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸マンガン、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸コバルト、亜鉛−鉄リン酸塩(zinc-iron phosphate)、亜鉛−マンガンリン酸塩、亜鉛−カルシウムリン酸塩が含まれる。上述の通り、ある特定の状況では、リン酸塩は除外される。
【0089】
接着促進性構成成分は、リン酸化エポキシ樹脂を含んでもよい。このような樹脂は、1つまたは複数のエポキシ官能性物質および1つまたは複数のリン含有物質の反応生成物を含むことができる。本発明に使用するのに好適な、このような物質の非制限的な例は、米国特許第6,159,549号の第3欄第19〜62行目に開示されており、その引用部分が参照により本明細書に組み込まれている。
【0090】
本発明の硬化性フィルム形成組成物はまた、アルコキシシラン接着促進化剤、例えば、γ−アクリルオキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリルオキシアルコキシシラン、およびγ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランなどのメタアクリラトアルコキシシラン、およびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシ官能性シランを含んでもよい。例示的な好適なアルコキシシランは、米国特許第6,774,168号の第2欄第23〜65行目に記載されており、その引用部分が参照により本明細書に組み込まれている。
【0091】
接着促進性構成成分は、コーティング用組成物中に、少なくとも0.05重量%または少なくとも0.25重量%、および最大でも20重量%または最大でも15重量%などの、0.05〜20重量%の範囲の量で通常、存在し、0.05〜15重量%、0.25〜15重量%または0.25〜20重量%などの範囲であり、重量百分率は、組成物中の樹脂固形分の総重量に基づいている。
【0092】
本発明のコーティング用組成物は、先に記載されている腐食耐性粒子のいずれかの他に、従来の非クロム腐食耐性粒子も含むことができる。好適な従来の非クロム腐食耐性粒子には、以下に限定されないが、リン酸鉄、リン酸亜鉛、カルシウムイオン交換シリカ、コロイド状シリカ、合成アモルファスシリカ、およびモリブデン酸カルシウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸バリウム、モリブデン酸ストロンチウムなどのモリブデン酸塩、ならびにそれらの混合物が含まれる。好適なカルシウムイオン交換シリカは、SHIELDEX.AC3および/またはSHIELDEX C303としてW.R.Grace&Co.から市販されている。好適なアモルファスシリカは、SYLOIDとしてW.R.Grace&Co.から入手可能である。好適なヒドロキシルリン酸亜鉛は、NALZIN2としてElementis Specialties,Inc.から市販されている。これらの従来の非クロム腐食耐性顔料は、通常、約1ミクロンまたはそれより大きな粒子サイズを有する粒子を含む。これらの粒子は、本発明のコーティング用組成物中に、少なくとも5重量%または少なくとも10重量%、および最大でも40重量%または最大でも25重量%などの、5〜40重量%の範囲の量で存在することができ、10〜25重量%などの範囲であり、重量百分率は、組成物の固形分重量の合計に基づいている。
【0093】
本コーティング剤はまた、1つまたは複数の有機防止剤を含んでもよい。そのような防止剤の例には、以下に限定されないが、硫黄および/または窒素を含有する複素環式化合物が含まれ、この例には、チオフェン、ヒドラジンおよび誘導体、ピロールおよび誘導体が含まれる。有機防止剤は、使用される場合、コーティング用組成物中に、0.5〜10重量%などの0.1〜20重量%の範囲の量で存在することができ、重量百分率は、組成物の固形分重量の合計に基づいている。
【0094】
本発明は、上記の硬化性フィルム形成組成物により少なくとも一部がコーティングされている金属基材をさらに提供する。
【0095】
本発明において使用される金属基材は、鉄金属、非鉄金属およびそれらの組合せを含む。好適な鉄金属には、鉄、鋼およびそれらの合金が含まれる。有用な鋼材料の非限定的な例には、冷間圧延鋼、酸洗い鋼(pickled steel)、亜鉛金属、亜鉛化合物および亜鉛合金のいずれかにより表面処理されている鋼(電気亜鉛めっき鋼、溶融亜鉛めっき鋼、GALVANNEAL鋼および亜鉛合金によりめっきされている鋼を含む)、ならびに/または亜鉛−鉄合金が含まれる。同様に、GALFAN、GALVALUME、アルミニウムめっき鋼基材およびアルミニウム合金めっき鋼基材などの、アルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛−アルミニウム合金も使用することができる。溶接可能な亜鉛に富む、またはリン化鉄に富む有機コーティング剤によりコーティングされている鋼基材(冷間圧延鋼または上で列挙されている鋼基材のいずれかなど)も、本発明において使用するのに好適である。このような溶接可能なコーティング用組成物は、米国特許第4,157,924号および同第4,186,036号に開示されている。以下に議論されている通り、金属リン酸塩溶液、少なくとも1つの第IIIB族または第IVB族金属を含有する水溶液、有機リン酸塩溶液、有機ホスホン酸塩溶液、およびそれらの組合せなどの、当分野において公知の適切な溶液により予備処理される場合、冷間圧延鋼も好適である。アルミニウム合金の例には、2000、6000または7000シリーズのアルミニウムなどの、自動車または航空宇宙産業において使用される合金が含まれる。2024、7075、6061が、具体的な例である。合金はクラッドなしでもよく、または合金は、1つもしくは複数の表面上にクラッド層を含有してもよく、クラッド層は、クラッド層の下にあるベース/バルク合金とは異なるアルミニウム合金からなる。
【0096】
基材は、アルミニウム基材を用いて組み立てられた溶融亜鉛めっき鋼などの、一緒に組み立てられた2つまたはそれ超の金属基材の組合せであってもよいという点で、基材は、1種超の金属または金属合金を代替として含んでもよい。基材は、乗り物の部分を構成し
てもよい。「乗り物」は、本明細書ではその最も広い意味で使用されており、以下に限定されないが、飛行機、ヘリコプター、ドローン、乗用車、トラック、バス、バン、ゴルフカート、オートバイ、自転車、貨車、タンクなどの、有人および無人のあらゆるタイプの乗り物が含まれる。本発明によりコーティングされる乗り物の一部は、コーティング剤が使用される理由に応じて、様々となり得ることが理解されよう。多くの場合、基材は、航空機部品である。
【0097】
硬化性フィルム形成組成物は、基材と硬化性フィルム形成組成物との間に中間コーティングが存在しない場合、金属基材に直接、塗布することができる。これは、下記の通り、基材が裸であってもよいこと、または下記の通り、1つもしくは複数の予備処理用組成物により処理されてもよいが、基材は、通常、電着可能な組成物またはプライマー組成物などのいずれのコーティング用組成物によっても、本発明の硬化性フィルム形成組成物の塗布前に、コーティングされていないことを意味する。
【0098】
上記の通り、使用すべき基材は、裸の金属基材であってもよい。「裸の」とは、従来のリン酸塩処理浴、重金属リンスなどのいずれの予備処理用組成物によっても処理されていない、バージン金属基材であることを意味する。さらに、本発明において使用される裸の金属基材は、その表面の残りの部分が他に処理されている、および/またはその上にコーティングされている基材の切り口であってもよい。あるいは、基材は、硬化性フィルム形成組成物の塗布前に、当分野において公知の1つまたは複数の処理ステップを受けてもよい。
【0099】
基材は、従来の清浄手順および物質を使用して、任意選択で清浄されてもよい。これらは、市販されており、かつ金属の予備処理プロセスにおいて従来的に使用されるような、マイルドなまたは強力なアルカリ清浄剤を含む。アルカリ清浄剤の例には、Chemkleen163およびChemkleen177が含まれ、これらのどちらも、PPG Industries、Pretreatment and Specialty Productsから入手可能である。一般に、このような清浄剤の後および/または先行して水によるすすぎが行われる。金属表面はまた、アルカリ清浄剤による清浄の後、またはその代わりに、酸性水溶液によりすすがれてもよい。リンス溶液の例には、市販されており、かつ金属の予備処理プロセスにおいて従来的に使用される希硝酸溶液などの、マイルドなまたは強力な酸性清浄剤が含まれる。
【0100】
本発明によれば、清浄したアルミニウム基材表面の少なくとも一部は、機械的または化学的に脱酸素されてもよい。本明細書で使用する場合、用語「脱酸素する」は、予備処理用組成物(以下に記載されている)の均一な堆積を促進するため、および基材表面への予備処理用組成物のコーティング剤の接着を促進するための、基材の表面上に見られる酸化物層の除去を意味する。好適な脱酸素剤は、当業者に熟知されていよう。典型的な機械的脱酸素剤は、研磨用パッドまたは清浄用パッドを使用することによるなどの、基材表面の均一な粗面化をすることができる。典型的な化学的脱酸素剤には、例えば、リン酸、硝酸、フルオロホウ酸、硫酸、クロム酸、フッ化水素酸および二フッ化アンモニウム、もしくはAmchem7/17脱酸素剤(Henkel Technologies(Madison Heights、MI)から入手可能)、OAKITE DEOXIDIZER
LNC(Chemetallから市販)、TURCO DEOXIDIZER6(Henkelから市販)、またはそれらの組合せなどの酸をベースとする脱酸素剤が含まれる。多くの場合、化学的脱酸素剤は、担体、多くの場合、水性媒体を含み、その結果、脱酸素剤は、担体中で溶液または分散液の形態であってもよく、この場合、溶液または分散液は、浸しもしくは浸漬、噴霧、断続的噴霧、浸しとその後の噴霧、噴霧とその後の浸し、ブラッシングまたはロールコーティングなどの様々な公知技法のいずれかによって基材と接触させることができる。
【0101】
金属基材は、金属リン酸塩溶液、少なくとも1つの第IIIB族または第IVB族の金属を含有する水溶液、有機リン酸塩溶液、有機ホスホン酸塩溶液、およびそれらの組合せなどの、当分野において公知の任意の好適な溶液により、任意選択で、予備処理することができる。予備処理用溶液は、クロムおよびニッケルなどの環境面で有害な重金属を本質的に含み得ない。好適なリン酸塩の化成コーティング(conversion coating)用組成物
は、重金属を含まない、当分野において公知のもののいずれかとすることができる。例には、リン酸亜鉛(最も多く使用される)、リン酸鉄、リン酸マンガン、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸コバルト、亜鉛−鉄リン酸塩、亜鉛−マンガンリン酸塩、亜鉛−カルシウムリン酸塩、および他のタイプの層が含まれ、これらは、1つまたは複数の多価陽イオンを含有することができる。リン酸塩処理組成物は、当業者に公知であり、米国特許第4,941,930号、同第5,238,506号および同第5,653,790号に記載されている。
【0102】
本明細書に言及されている、第IIIB族または第IVB族の遷移金属および希土類金属は、例えば、Handbook of Chemistry and Physics、第63版(1983年)に示されているようなCASの元素周期表においてこのような族に含まれる元素である。
【0103】
典型的な第IIIB族および第IVB族遷移金属化合物および希土類金属化合物は、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、イットリウムおよびセリウム、ならびにそれらの混合物の化合物である。典型的なジルコニウム化合物は、ヘキサフルオロジルコン酸、そのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、炭酸ジルコニウムアンモニウム、硝酸ジルコニル、ヒドロフルオロジルコン酸、酢酸ジルコニウム、シュウ酸ジルコニウム、グリコール酸ジルコニウムアンモニウム、乳酸ジルコニウムアンモニウム、クエン酸ジルコニウムアンモニウムなどのカルボン酸ジルコニウムおよびヒドロキシカルボン酸ジルコニウム、ならびにそれらの混合物から選択することができる。ヘキサフルオロジルコン酸が、たいていの場合、使用される。チタン化合物の一例は、フルオロチタン酸およびその塩である。ハフニウム化合物の一例は、硝酸ハフニウムである。イットリウム化合物の一例は、硝酸イットリウムである。セリウム化合物の一例は、硝酸セリウムである。
【0104】
予備処理ステップに使用すべき典型的な組成物には、米国特許第5,294,265号および同第5,306,526号に開示されているものなどの、非導電性有機リン酸塩および有機ホスホン酸塩予備処理用組成物が含まれる。このような有機リン酸塩または有機ホスホン酸塩による予備処理液は、NUPAL(登録商標)という名称で、PPG Industries,Inc.から市販されている。
【0105】
航空宇宙産業では、陽極酸化表面処理、およびクロムをベースとする化成処理コーティング剤/予備処理液が、アルミニウム合金基材上に使用されることが多い。陽極酸化表面処理の例は、クロム酸による陽極酸化、リン酸による陽極酸化、ホウ酸−硫酸による陽極酸化、酒石酸による陽極酸化、硫酸による陽極酸化である。クロムをベースとする化成処理コーティング剤は、HenkelからのBonderite(登録商標)M−CR1200などの六価クロムのタイプ、およびHenkelからのBonderite(登録商標)M−CR T5900などの三価クロムのタイプを含む。
【0106】
本発明の硬化性フィルム形成組成物は、従来の技法を使用して、基材に塗布することができる。本発明の硬化性フィルム形成組成物の下への、スプレー塗布したまたは電着したプライマーまたはプライマーサーフェイサーの使用は、通常、本発明の組成物によってもたらされる優れた耐腐食性のために、不要である。
【0107】
本発明のコーティング用組成物は、保護層として単独で使用されてもよく、またはユニコート層またはモノコート層として働くことができる。あるいは、本発明の組成物は、プライマー、ベースコートおよび/またはトップコートとして組み合わされてもよい。したがって、本発明は、多層コーティングされている金属基材を提供する。このような多層コーティングされている基材は、
(a)金属基材、
(b)前記金属基材に塗布された硬化性フィルム形成組成物であって、
(1)硬化性の有機フィルム形成結合剤構成成分、および
(2)硬化性フィルム形成組成物中に存在するケイ酸リチウムを、硬化性フィルム形成組成物中の樹脂固形分の総重量に対して、0.1〜4.5重量%のリチウムの量で含む腐食防止性構成成分
を含む、硬化性フィルム形成組成物、ならびに
(c)硬化性フィルム形成組成物の少なくとも一部の最上部に塗布された追加のコーティング層を含む。特定の例では、上記の硬化性フィルム形成組成物は、基材に塗布されるプライマーコーティング剤であり、硬化性フィルム形成組成物の最上部に塗布された追加のコーティング層は、トップコート組成物である。別の例では、硬化性フィルム形成組成物は、プライマーコーティング剤であり、追加のコーティング層は、プライマーサーフェイサーコーティング剤である。ある特定の例では、追加のコーティング層は、上記のフルオロポリマーおよび/またはポリウレタンポリマーを含む。
【0108】
本発明の硬化性フィルム形成組成物は、腐食耐性プライマーとして使用されることが多い。示されている通り、本発明は、「エッチプライマー」などの、金属基材プライマーコーティング用組成物を対象とすることができる。本明細書で使用する場合、用語「プライマーコーティング用組成物」は、この組成物からアンダーコーティング剤が基材上に堆積され得る、コーティング用組成物を指す。一部の産業において、またはある特定の基材上では、プライマーは、保護用または装飾用のコーティング剤系を塗布するために表面を準備するために塗布される。他の産業または基材では、別のコーティング層が、プライマーの最上部に塗布されない。例えば、外部への露出が限定されるかまたはそれがない基材表面は、最上部に他の層を有していない、プライマーを有する場合がある。本明細書で使用する場合、用語「エッチプライマー」は、上でより詳細に記載されている、遊離酸などの、接着促進性構成成分を含む、プライマーコーティング用組成物を指す。
【0109】
好適なトップコート(ベースコート、クリアコート、顔料入りモノコートおよびカラー−プラス−クリア複合組成物)は、当分野において公知のもののいずれかを含み、各々が、水型であっても、溶媒型であっても、粉末状であってもよい。トップコートは、通常、フィルム形成樹脂、架橋物質および顔料(着色ベースコートまたはモノコート中)を含む。好適なベースコート用組成物の非限定的な例には、米国特許第4,403,003号、同第4,147,679号および同第5,071,904号に開示されているような、水型ベースコートが含まれる。好適なクリアコート用組成物は、米国特許第4,650,718号、同第5,814,410号、同第5,891,981号、およびWO98/14379に開示されているものを含む。
【0110】
硬化性フィルム形成組成物の最上部に塗布された追加のコーティング層は、ケイ酸リチウム、酸化マグネシウム、および/またはアゾールを含む腐食防止性構成成分を含んでもよい。すなわち、硬化性フィルム形成組成物の最上部に塗布された追加のコーティング層は、ケイ酸リチウム、酸化マグネシウムおよびアゾールのうちの少なくとも1つを含む腐食防止性構成成分を含んでもよい。これらのシナリオでは、追加のコーティング層は、硬化性フィルム形成組成物と同一であっても異なっていてもよい。追加のコーティング層は、依然として、本発明の硬化性フィルム形成組成物の範囲に収まりながら、硬化性フィルム形成組成物とは異なっていてもよい。例えば、追加のコーティング層の硬化性フィルム
形成結合剤構成成分は、第1のものとは異なっていることがあるが、依然として、本発明による組成物であることができる。
【0111】
本発明は、
(a)金属基材、
(b)前記金属基材に塗布された第1の硬化性フィルム形成組成物であって、
(1)硬化性の有機フィルム形成結合剤構成成分、および
(2)腐食防止性構成成分
を含む、第1の硬化性フィルム形成組成物、ならびに
(c)第1の硬化性フィルム形成組成物の少なくとも一部の最上部に塗布された第2の硬化性フィルム形成組成物であって、
(1)第1の硬化性フィルム形成組成物中の硬化性の有機フィルム形成結合剤構成成分と同一または異なる硬化性の有機フィルム形成結合剤構成成分、ならびに
(2)第1の硬化性フィルム形成組成物中の腐食防止性構成成分と同一または異なる腐食防止性構成成分を含む、第2の硬化性フィルム形成組成物
を含み、第1および第2の硬化性フィルム形成組成物の各々における腐食防止性構成成分(2)が、(i)ケイ酸リチウムおよび/もしくはリチウム塩を含むリチウム化合物、(ii)酸化マグネシウム、ならびに/または(iii)アゾールを独立して含む、
多層コーティングされている金属基材をさらに提供する。好適なリチウム塩は、炭酸リチウム、シュウ酸リチウム、リン酸リチウム、硫酸リチウム、テトラホウ酸リチウム、酢酸リチウム、ジルコニウム酸リチウムおよびモリブデン酸リチウムを含む。リチウム化合物の組合せも好適である。
【0112】
特定の例では、以下の組合せが企図される。リチウム化合物が、一方の層(第1または第2の層)に存在し、チアゾールが他方の層に存在し得る。リチウム化合物が、一方の層(第1または第2の層)に存在し得、ジアゾールが他方の層に存在し得る。リチウム化合物が、一方の層(第1または第2の層)に存在し得、イミダゾールが他方の層に存在し得る。リチウム化合物が、一方の層(第1または第2の層)に存在し得、オキサゾールが他方の層に存在し得る。リチウム化合物が、一方の層(第1または第2の層)に存在し得、テトラゾールが他方の層に存在し得る。リチウム化合物が、一方の層(第1または第2の層)に存在し得、トリアゾールが他方の層に存在し得る。上記の例の各々において、酸化マグネシウムを、リチウム化合物および/またはアゾールと組み合わせて使用することができる。
【0113】
追加の特定の例では、酸化マグネシウムが、一方の層(第1または第2の層)に存在し得、チアゾールが他方の層に存在し得る。酸化マグネシウムが、一方の層(第1または第2の層)に存在し得、ジアゾールが他方の層に存在し得る。酸化マグネシウムが、一方の層(第1または第2の層)に存在し得、イミダゾールが他方の層に存在し得る。酸化マグネシウムが、一方の層(第1または第2の層)に存在し得、オキサゾールが他方の層に存在し得る。酸化マグネシウムが、一方の層(第1または第2の層)に存在し得、テトラゾールが他方の層に存在し得る。酸化マグネシウムが、一方の層(第1または第2の層)に存在し得、トリアゾールが他方の層に存在し得る。
【0114】
ある特定のシナリオでは、リチウム化合物、酸化マグネシウムおよびアゾールの各々がすべて、多層コーティングされている金属基材中に存在している、すなわち、3つの腐食防止剤がすべて、コーティング積層体中に存在することが望ましいことがある。それらの腐食防止剤は、任意の組合せで、各フィルム形成組成物に存在していてもよいが、但し、少なくとも1つが、各コーティング層に存在していることを条件とする。例えば、リチウム化合物および酸化マグネシウムが、一方の層(第1または第2の層)に存在し得、チアゾールが他方の層に存在し得る。リチウム化合物および酸化マグネシウムが、一方の層(
第1または第2の層)に存在し得、ジアゾールが他方の層に存在し得る。リチウム化合物および酸化マグネシウムが、一方の層(第1または第2の層)に存在し得、イミダゾールが他方の層に存在し得る。リチウム化合物および酸化マグネシウムが、一方の層(第1または第2の層)に存在し得、オキサゾールが他方の層に存在し得る。リチウム化合物および酸化マグネシウムが、一方の層(第1または第2の層)に存在し得、テトラゾールが他方の層に存在し得る。リチウム化合物および酸化マグネシウムが、一方の層(第1または第2の層)に存在し得、トリアゾールが他方の層に存在し得る。リチウム化合物が、一方の層(第1または第2の層)に存在し得、チアゾールおよび酸化マグネシウムが他方の層に存在し得る。リチウム化合物が、一方の層(第1または第2の層)に存在し得、ジアゾールおよび酸化マグネシウムが他方の層に存在し得る。リチウム化合物が、一方の層(第1または第2の層)に存在し得、イミダゾールおよび酸化マグネシウムが他方の層に存在し得る。リチウム化合物が、一方の層(第1または第2の層)に存在し得、オキサゾールおよび酸化マグネシウムが他方の層に存在し得る。リチウム化合物が、一方の層(第1または第2の層)に存在し得、テトラゾールおよび酸化マグネシウムが他方の層に存在し得る。リチウム化合物が、一方の層(第1または第2の層)に存在し得、トリアゾールおよび酸化マグネシウムが他方の層に存在し得る。
【0115】
本発明のこの多層コーティングされている金属基材では、金属基材は、上で開示されているもののいずれかとすることができる。同様に、第1および第2の硬化性フィルム形成組成物の各々は、上で開示される硬化性の有機フィルム形成結合剤のいずれかを独立して含むことができる。さらに、例えば、この多層コーティングされている金属基材では、硬化性フィルム形成組成物は、基材に塗布されるプライマーコーティング剤とすることができ、第1の硬化性フィルム形成組成物の最上部に塗布された第2のコーティング層は、トップコート組成物とすることができる。別の例では、第1の硬化性フィルム形成組成物は、プライマーコーティング剤とすることができ、第2のコーティング層は、プライマーサーフェイサーなどの第2のプライマーとすることができる。
【0116】
本発明のコーティング用組成物は、浸しまたは浸漬、噴霧、断続的噴霧、浸しとその後の噴霧、噴霧とその後の浸し、ブラッシングまたはロールコーティングなどの公知の塗布技法によって、基材に塗布することができる。手動方法または自動方法のどちらかの、通常のスプレー技法、ならびに空気式噴霧用および静電式噴霧用装置を使用することができる。
【0117】
基材への組成物の塗布後、フィルムは、加熱によるまたは空気乾燥期間により、フィルムから、溶媒、すなわち有機溶媒および/または水を追い出すことにより基材の表面に形成される。好適な乾燥条件は、特定の組成物および/または用途に依存するが、一部の場合、約70〜250°F(27〜121℃)の温度で約1〜5分間の乾燥時間が十分である。本組成物の1つ超のコーティング層が、所望の場合、塗布され得る。通常、コートの間に、先に塗布されたコートがフラッシュされる。すなわち、所望の時間、周囲条件に曝露する。コーティングの厚さは、通常、0.2〜2.0ミル(5.0〜50ミクロン)などの0.1〜3ミル(2.5〜75ミクロン)である。コーティング用組成物は、次に、加熱されてもよい。硬化操作では、溶媒が追い出され、組成物の架橋性構成成分が架橋される。加熱および硬化操作は、時として、70〜250°F(27〜121℃)の範囲の温度で行われるが、必要な場合、より低いまたはより高い温度が使用されてもよい。先に明記されている通り、本発明のコーティング剤はまた、熱を加えることも乾燥ステップもなしに硬化され得る。さらに、第1のコーティング用組成物が塗布され得、次に、そこに「ウエット−オン−ウエット」で第2のコーティング用組成物が塗布され得る。あるいは、第1のコーティング用組成物は、1つまたは複数の追加のコーティング層の塗布前に、硬化させることができる。
【0118】
本発明のコーティングされている金属基材は、塩スプレー耐腐食性試験によって決定される、優れた耐腐食性を実証することができる。
【0119】
上記の特徴および例の各々、ならびにそれらの組合せは、本発明により包含されていると言うことができる。したがって、本発明は、以下の非限定的な態様に向けられる:第1の態様では、(1)硬化性の有機フィルム形成結合剤構成成分、および(2)硬化性フィルム形成組成物中に存在するケイ酸リチウムを、硬化性フィルム形成組成物中の樹脂固形分の総重量に対して、0.1〜4.5重量%のリチウムの量で含む腐食防止性構成成分を含む、硬化性フィルム形成組成物が本発明により提供される。
【0120】
第2の態様では、上記の第1の態様による組成物において、有機フィルム形成結合剤構成成分(1)は、(a)エポキシド官能基を含む樹脂構成成分、および(b)アミン官能基を含む硬化剤構成成分を含む。
【0121】
第3の態様では、上記の第1または第2の態様のどちらかによる組成物のいずれかにおいて、ケイ酸リチウムは、オルトケイ酸リチウムおよび/またはメタケイ酸リチウムを含む。
【0122】
第4の態様では、上記の任意の態様による組成物のいずれかにおいて、腐食防止性構成成分(2)は、酸化マグネシウムおよび/またはアゾールをさらに含む。
【0123】
第5の態様では、上の第1から第4の態様のいずれかによる硬化性フィルム形成組成物のいずれかによって、少なくとも一部がコーティングされている金属基材が提供される。
【0124】
第6の態様では、硬化性フィルム形成組成物が、金属基材に直接、塗布され、基材と硬化性フィルム形成組成物との間に中間コーティングが存在しない、上記の第5の態様によるコーティングされている金属基材が提供される。
【0125】
第7の態様では、金属基材がアルミニウムを含む、上の第5または第6の態様のどちらかによるコーティングされている金属基材が提供される。
【0126】
第8の態様では、金属基材が航空機部品である、上の第5から第7の態様のいずれかによるコーティングされている金属基材が提供される。
【0127】
第9の態様では、硬化性フィルム形成組成物の少なくとも一部の最上部に塗布された追加のコーティング層をさらに含む、上の第5から第8の態様のいずれかによる、コーティングされている金属基材が提供される。ある特定の態様では、追加のコーティング層は、フルオロポリマーおよび/またはポリウレタンポリマーを含むことができる。
【0128】
第10の態様では、硬化性フィルム形成組成物が、プライマーコーティング剤であり、追加のコーティング層がトップコート組成物である、上の第9の態様によるコーティングされている金属基材が提供される。
【0129】
第11の態様では、硬化性フィルム形成組成物が、着色ベースコート層であり、追加のコーティング層が透明なクリアコート用組成物である、上の第9の態様によるコーティングされている金属基材が提供される。
【0130】
第12の態様では、追加のコーティング層が、ケイ酸リチウム、酸化マグネシウムおよび/またはアゾールを含む腐食防止性構成成分を含む、上の第9から第11の態様のいずれかによるコーティングされている金属基材が提供される。
【0131】
本発明の第13の態様では、(a)金属基材、(b)前記金属基材に塗布された第1の硬化性フィルム形成組成物であって、(1)硬化性の有機フィルム形成結合剤構成成分、および(2)腐食防止性構成成分を含む、第1の硬化性フィルム形成組成物、ならびに(c)第1の硬化性フィルム形成組成物の少なくとも一部の最上部に塗布された第2の硬化性フィルム形成組成物であって、(1)第1の硬化性フィルム形成組成物中の硬化性の有機フィルム形成結合剤構成成分と同一または異なる硬化性の有機フィルム形成結合剤構成成分、および(2)第1の硬化性フィルム形成組成物中の腐食防止性構成成分と同一または異なる腐食防止性構成成分を含む、第2の硬化性フィルム形成組成物を含み、第1および第2の硬化性フィルム形成組成物の各々における腐食防止性構成成分(2)が、(i)ケイ酸リチウムおよび/もしくはリチウム塩を含むリチウム化合物、(ii)酸化マグネシウム、ならびに/または(iii)アゾールを独立して含む、多層コーティングされている金属基材が提供される。
【0132】
第14の態様では、ケイ酸リチウム、酸化マグネシウムおよびアゾールの各々が存在する、上の第13の態様による多層コーティングされている金属基材が提供される。
【0133】
第15の態様では、第1の硬化性フィルム形成組成物(b)中の腐食防止性構成成分(2)が酸化マグネシウムを含み、第2の硬化性フィルム形成組成物(c)中の腐食防止性構成成分(2)が、リチウム化合物(i)および/またはアゾール(iii)を含む、上の第13の態様による多層コーティングされている金属基材が提供される。
【0134】
第16の態様では、(d)第2の硬化性フィルム形成組成物の少なくとも一部の最上部に塗布された、追加のフィルム形成組成物をさらに含む、上の第13から第15の態様のいずれかによる多層コーティングされている金属基材が提供される。
【0135】
本発明は、以下の実施例を参照することによりさらに説明される。特に示さない限り、部はすべて重量基準である。
【実施例】
【0136】
【表1-1】
【表1-2】
すべての実施例に関して、各材料に示されている量は、特に明記されていない限り、重量グラム単位である。実施例1は、比較例である。(注:比較例はすべて、「Comp.」と標識する。)実施例2〜4は、本発明による硬化性フィルム形成組成物の調製を示す。
【表2】
【0137】
コーティング剤の実施例1〜4を、以下の通り調製した。
【0138】
各実施例の構成成分Aの場合、すべての材料を好適な容器に秤量し、空気モーターおよび混合用ブレードを使用して、十分に混合した。各実施例の構成成分Bの場合、Silquest A−187を除くすべての材料を秤量し、ガラス製広口瓶に入れた。次に、構成成分の材料の総重量の約2倍に等しいレベルで、分散用媒体を各広口瓶に添加した。広口瓶を蓋で密封し、次に、3時間の分散時間でLau分散ユニットに置いた。最終分散液はすべて、7超のヘグマンゲージ読取値を有した。顔料分散プロセスが完了した後、構成成分Bの混合物にSilquest A−187を添加した。次に、各最終構成成分Bの混合物を十分に混合した。コーティング剤の塗布前に、表2に示されている各全構成成分Aと全構成成分Bを対応する比で一緒にブレンドし、十分に混合して、塗布前に30〜60分間の間の誘発時間を与えた。
【0139】
空気式霧状スプレーガンを使用して、実施例1〜4のコーティング剤を0.6〜1.2ミルの間の乾燥フィルム厚さまで、裸の2024T3アルミニウム合金基材パネルの上にスプレー塗布した。コーティング剤の塗布前に、アルミニウム合金基材パネルを以下の通り準備した。アルミニウム合金パネルを、メチルエチルケトンワイプを使用して清浄し、次に、以下の表に概説されている通り処理した。
【表2A】
【0140】
アルカリエッチ/硝酸、硫酸洗いプロセスに使用した溶液は、以下に列挙されている。手順は、以下に概説されている。
【表2B】
【0141】
Turco 4215 NC−LTを1000mlのビーカー中に秤量し、1000mlの溶液となるようDI水を添加した。混合物を完全に溶解するまで撹拌した。
【表2C】
【0142】
投入物#2を、4000mlを収容することができるガラス製槽中に秤量した。投入物#1を、別の容器中に秤量した。投入物#2に、かき混ぜながら投入物#1をゆっくりと添加した。発熱反応が起こった。溶液を15分間、冷却した。残りの投入物を、添加と添加の間に十分に混合しながら、順番に添加した。
【表2D】
【0143】
投入物#1を1000mlのビーカーに入れた。投入物#2および投入物#3を、2個の別の容器中に秤量した。投入物#2、次いで投入物#3をかき混ぜながらこの1000mlのビーカーにゆっくりと添加した。発熱反応が起こった。投入物#4を別の容器中に秤量し、かき混ぜながらこの1000mlのビーカーにゆっくりと添加した。一旦、溶解すると、DI水を添加して、1000mlの溶液にした。
【0144】
コーティング剤の実施例1〜4によりコーティングした試験パネルを、最低7日間、周囲条件下でエージングし、その後、パネルに、いずれの表面コーティングも貫通し、下層の金属が露出する程、十分な深さまでパネル表面にスクライブした、10cm×10cmの「X」の刻みを入れた。次いで、スクライブ済みコーティング試験パネルを、ASTM
B117に従って、5%塩化ナトリウム中性塩スプレーキャビネット中に置いた(例外:pHおよび塩の濃度は、毎日ではなく毎週確認した)。
【0145】
表3に示されている評点は、実施例1〜4について840時間の曝露時点のものであった。パネルを、以下の尺度に従って、点数を付けた。
スクライブ腐食: 評点数が低いほど良好である
評点は0〜100であり、数字は、目視可能な腐食を示すスクライブ面積%を表す。
スクライブの光沢/性質: 評点数が低いほど良好である
評点は0〜100であり、数字は、暗部/変色スクライブである、スクライブ%を表す。ブリスター: 評点数が低いほど良好である
スクライブに隣接するブリスターと、スクライブから離れた(すなわち面)ブリスターとの合計数。ブリスターを30まで計数する
最大スクライブブリスターサイズ: 小さな評点数ほど良好である
スクライブに隣接する最大ブリスターのサイズは、以下の通り記録される:
0 スクライブブリスターが存在しない
<1.25mm 最大スクライブブリスターが、直径1.25mm未満である
>1.25mm 最大スクライブブリスターが、直径1.25mm〜2.5mmの間である
>2.5mm 最大スクライブブリスターが、直径2.5mmより大きい
【表3】
【0146】
表3の腐食データは、それぞれ、1.2%、2.3%および3.5%のリチウムのレベルにあるオルトケイ酸リチウム腐食防止剤を含有するコーティング剤の実施例2、3および4が、腐食防止剤を含有しないコーティング剤の比較例1と比べて、金属基材に測定可能な腐食保護の増強を提供したことを明確に示している。腐食保護の増強の証拠は、スクライブにおけるより少ない量の腐食の存在、スクライブのより増加した光沢性質およびスクライブの縁に沿ったコーティングのブリスター形成の低下で観察される。
【表4】
【0147】
コーティング剤の比較例5および6を、以下の通り調製した。
【0148】
各実施例の構成成分Aの場合、すべての材料を秤量し、ガラス製広口瓶に入れた。次に、構成成分の材料の総重量のおよそ2分の1に等しいレベルで、分散用媒体を各広口瓶に添加した。広口瓶を蓋で密封し、次に、3時間の分散時間でLau分散ユニットに置いた。最終分散液はすべて、6超のヘグマンゲージ読取値を有した。各実施例の構成成分Bの場合、Silquest A−187を除くすべての材料を秤量し、ガラス製広口瓶に入れた。次に、構成成分の材料の総重量の約2倍に等しいレベルで、分散用媒体を各広口瓶に添加した。広口瓶を蓋で密封し、次に、3時間の分散時間でLau分散ユニットに置いた。最終分散液はすべて、7超のヘグマンゲージ読取値を有した。顔料分散プロセスが完了した後、構成成分Bの混合物にSilquest A−187を添加した。次に、各最終構成成分Bの混合物を十分に混合した。コーティング剤の塗布前に、表4に示されている各全構成成分Aと全構成成分Bを対応する比で一緒にブレンドし、十分に混合して、塗布前に30〜60分間の間の誘発時間を与えた。
【0149】
空気式霧状スプレーガンを使用して、実施例5および6のコーティング剤を0.6〜1.5ミルの間の乾燥フィルム厚さまで、裸の2024T3アルミニウム合金基材パネルの上にスプレー塗布した。コーティング剤の塗布前に、アルミニウム合金基材パネルを以下の通り準備した。メチルエチルケトンワイプを使用して、2024T3アルミニウム合金
パネルを清浄し、次いで、EAC−8コンディショナーを使用するScotchbrite(登録商標)7448超微細パッドを使用する湿式研磨により、ウォーターブレークのない表面(water-break free surface)を生じさせた。研磨後、EAC−8をパネルの表面に振りかけて、1分間、留めた。パネルを水により十分にすすぎ、ガーゼを用いて拭き取って酸化物を確実に除去し、コーティング剤の塗布前に1〜3時間、乾燥させた。
【0150】
コーティング剤の実施例5および6によりコーティングした試験パネルを、最低7日間、周囲条件下でエージングし、その後、パネルに、いずれの表面コーティングも貫通し、下層の金属が露出する程、十分な深さまでパネル表面にスクライブした、10cm×10cmの「X」の刻みを入れた。次いで、スクライブ済みコーティング試験パネルを、ASTM B117に従って、5%塩化ナトリウム中性塩スプレーキャビネット中に置いた(例外:pHおよび塩の濃度は、毎日ではなく毎週確認した)。
【0151】
表5に示されている評点は、実施例5および6について1920時間の曝露時点のものであった。パネルを、以下の尺度に従って、点数を付けた。
スクライブ腐食: 評点数が低いほど良好である
評点は0〜100であり、数字は、目視可能な腐食を示すスクライブ面積%を表す。
スクライブの光沢/性質: 評点数が低いほど良好である
評点は0〜100であり、数字は、暗部/変色スクライブである、スクライブ%を表す。ブリスター: 評点数が低いほど良好である
スクライブに隣接するブリスターと、スクライブから離れた(すなわち面)ブリスターとの合計数。ブリスターを30まで計数する
最大スクライブブリスターサイズ: 小さな評点数ほど良好である
スクライブに隣接する最大ブリスターのサイズは、以下の通り記録される:
0 スクライブブリスターが存在しない
<1/16” 最大スクライブブリスターは、直径1/16インチ未満である
>1/16” 最大スクライブブリスターは、直径1/16インチ〜1/8インチの間である
>1/8” 最大スクライブブリスターは、直径1/8インチより大きい
【表5】
na
*: コーティングされているパネルの面に、ブリスターが形成しており、基材からコーティングが剥離している
【0152】
表5における腐食データは、より高い負荷量(8.1%のリチウム)における公知のク
ロム不含無機腐食防止剤と比べた場合、ポリケイ酸リチウムは、腐食保護の優れた改善を提供したが、コーティングフィルムは、水に敏感となり、これにより、深刻なブリスター形成および金属基材からのコーティングの剥離をもたらしたことを明確に示している。したがって、ポリケイ酸リチウムは、コーティングフィルムに対する有害な水感受性を引き起こす恐れのあるレベルより低く維持しなければならない。
【表6】
【0153】
コーティング剤の実施例7〜9を、以下の通り調製した。
【0154】
各実施例の構成成分Aの場合、すべての材料を好適な容器に秤量し、空気モーターおよび混合用ブレードを使用して、十分に混合した。各実施例の構成成分Bの場合、Silquest A−187を除くすべての材料を秤量し、ガラス製広口瓶に入れた。次に、構成成分の材料の総重量の約2倍に等しいレベルで、分散用媒体を各広口瓶に添加した。広口瓶を蓋で密封し、次に、1.5時間の分散時間でLau分散ユニットに置いた。最終分散液はすべて、7超のヘグマンゲージ読取値を有した。顔料分散プロセスが完了した後、構成成分Bの混合物にSilquest A−187を添加した。次に、各最終構成成分Bの混合物を十分に混合した。コーティング剤の塗布前に、表6に示されている各全構成成分Aと全構成成分Bを対応する比で一緒にブレンドし、十分に混合して、塗布前に30〜60分間の間の誘発時間を与えた。
【0155】
空気式霧状スプレーガンを使用して、実施例7〜9のコーティング剤を0.6〜1.2ミルの間の乾燥フィルム厚さまで、裸の2024T3アルミニウム合金基材パネルの上にスプレー塗布した。コーティング剤の塗布前に、アルミニウム合金基材パネルを、実施例1〜4について記載されているものと同じ様式で準備した。
【0156】
コーティング剤の実施例7〜9によりコーティングした試験パネルを最低7日間、周囲条件下でエージングし、その後、パネルに、いずれの表面コーティングも貫通し、下層の金属が露出する程、十分な深さまでパネル表面にスクライブした、10cm×10cmの「X」の刻みを入れた。次いで、スクライブ済みコーティング試験パネルを、ASTM B117に従って、5%塩化ナトリウム中性塩スプレーキャビネット中に置いた(例外:pHおよび塩の濃度は、毎日ではなく毎週確認した)。
【0157】
表7に示されている評点は、実施例7〜9について1128時間の曝露時点のものであった。パネルを、実施例1〜4に使用したものと同じ尺度に従って、点数を付けた。
【表7】
【0158】
表7の腐食データは、MgO単独と比べて、MgOに加えてポリケイ酸リチウム腐食防止剤を含有するコーティング剤は、金属基材の腐食保護の増強を提供することを明確に示している。腐食保護の増強の証拠は、スクライブにおけるより少ない量の腐食の存在、スクライブのより増加した光沢性質およびスクライブの縁に沿ったコーティングのブリスター形成の低下で観察される。
【表8】
【0159】
コーティング剤の実施例10〜11を、以下の通り調製した。
【0160】
各実施例の構成成分Aの場合、すべての材料を秤量し、ガラス製広口瓶に入れた。次に、構成成分の材料の総重量のおよそ半分に等しいレベルで、分散用媒体を各広口瓶に添加した。各実施例の構成成分Bの場合、Silquest A−187を除くすべての材料を秤量し、ガラス製広口瓶に入れた。次に、構成成分の材料の総重量の約2倍に等しいレベルで、分散用媒体を各広口瓶に添加した。各構成成分の広口瓶を蓋で密封し、次に、3.0時間の分散時間でLau分散ユニットに置いた。最終分散液はすべて、7超のヘグマンゲージ読取値を有した。顔料分散プロセスが完了した後、構成成分Bの混合物にSilquest A−187を添加した。次に、各最終構成成分Bの混合物を十分に混合した
。コーティング剤の塗布前に、表8に示されている各全構成成分A、各全構成成分Bおよび各シンナー構成成分を対応する比で一緒にブレンドし、十分に混合して、塗布前に30〜60分間の間の誘発時間を与えた。
【0161】
空気式霧状スプレーガンを使用して、実施例10〜11のコーティング剤を、1.5〜2.0ミルの間の乾燥フィルム厚さまで、2024T3アルミニウム合金基材パネルの上にスプレー塗布した。コーティング剤の塗布前に、アルミニウム合金基材パネルを、実施例1〜4について記載されているものと同じ様式で準備した。
【0162】
コーティング剤の実施例10〜11によりコーティングした試験パネルを最低7日間、周囲条件下でエージングし、その後、パネルに、いずれの表面コーティングも貫通し、下層の金属が露出する程、十分な深さまでパネル表面にスクライブした、10cm×10cmの「X」の刻みを入れた。次いで、スクライブ済みコーティング試験パネルを、ASTM B117に従って、5%塩化ナトリウム中性塩スプレーキャビネット中に置いた(例外:pHおよび塩の濃度は、毎日ではなく毎週確認した)。
【0163】
表9に示されている評点は、1104時間の曝露時点のものであった。パネルを、実施例1〜4に使用したものと同じ尺度に従って、点数を付けた。
【表9】
【0164】
表9の腐食データは、腐食防止剤を含有しない同一のユニコート用製剤と比べて、酸化マグネシウム腐食防止剤に加えてポリケイ酸リチウム腐食防止剤を含有するユニコートコーティング剤は、金属基材の腐食保護の大幅な増強を提供することを明確に示している。腐食保護の増強の証拠は、スクライブにおけるより少ない量の腐食の存在、スクライブのより増加した光沢性質およびスクライブの縁に沿ったコーティングのブリスター形成の低下で観察される。
【表10-1】
【表10-2】
【0165】
コーティング剤の実施例12〜17を、以下の通り調製した。
【0166】
第1のコーティング剤:すべての実施例の場合、構成成分Aのすべての材料を好適な容器に秤量し、空気モーターおよび混合用ブレードを使用して、十分に混合した。各実施例の構成成分Bの場合、Silquest A−187を除くすべての材料を秤量し、ガラス製広口瓶に入れた。次に、構成成分の材料の総重量の約2倍に等しいレベルで、分散用媒体を各広口瓶に添加した。広口瓶を蓋で密封し、次に、3.0時間の分散時間でLau分散ユニットに置いた。実施例13および15の構成成分Bに関して、3.0時間の分散時間後、構成成分の材料の総重量にほぼ等しいレベルで、追加量の媒体を各広口瓶に添加した。広口瓶を蓋で密封し、次に、さらに1時間の分散時間、Lau分散ユニットに置いた。分散液はすべて、7超のヘグマンゲージ読取値を有した。顔料分散プロセスが完了した後、すべての実施例について、構成成分Bの混合物にSilquest A−187を加えた。次に、各最終構成成分Bの混合物を十分に混合した。コーティング剤の塗布前に、表6に示されている各全構成成分Aと全構成成分Bを対応する比で一緒にブレンドし、十分に混合して、塗布前に30〜60分間の間の誘発時間を与えた。空気式霧状スプレーガンを使用して、実施例12〜17の第1のコーティング剤を0.7〜1.3ミルの間の乾燥フィルム厚さまで、2024T3アルミニウム合金基材パネルの上にスプレー塗布した。コーティング剤の塗布前に、アルミニウム合金基材パネルを、実施例1〜4について記載されているものと同じ様式で準備した。各実施例の第1のコーティング剤の塗布後に、コーティングされているパネルを周囲条件下で12〜24時間、保管した後、各実施例の第2のコーティング剤を塗布した。
【0167】
第2のコーティング剤:実施例12、13、14、15、16および17の、各実施例について表10に示されている構成成分Aおよび構成成分Bの対応する量を、好適なサイズの容器に添加し、空気モーターおよび混合用ブレードを使用して十分に混合した。次に、各実施例の表10に示されている構成成分Cの対応する量を、各実施例の対応するブレンドした構成成分AおよびBに添加した。実施例12〜17の第2のコーティング剤を一旦、十分に混合すると、これらを、各第2のコーティング剤の実施例が対応する第1のコーティング剤の実施例の上に塗布されるように、実施例12〜17の第1のコーティング剤により予めコーティングされているパネルにスプレー塗布した(表10に示した通り)。第2のコーティング剤の乾燥フィルムの厚さは、約2.0ミル〜3.0ミルの範囲であった。各第2のコーティング剤の塗布は、各最終の第2のコーティング剤を最初に混合した後、10分〜60分間の間に行った。
【0168】
コーティング剤の実施例12〜17により完全にコーティングした試験パネルを最低7日間、周囲条件下でエージングし、その後、パネルに、いずれの表面コーティングも貫通し、下層の金属が露出する程、十分な深さまでパネル表面にスクライブした、10cm×10cmの「X」の刻みを入れた。次いで、スクライブ済みコーティング試験パネルを、ASTM B117に従って、5%塩化ナトリウム中性塩スプレーキャビネット中に置いた(例外:pHおよび塩の濃度は、毎日ではなく毎週確認した)。
【0169】
表11に示されている評点は、1176時間の曝露時点のものであった。パネルを、実
施例1〜4に使用したものと同じ評点尺度に従って、点数を付けた。
【表11】
【0170】
表11の腐食データは、第2のコーティング剤が腐食防止剤を含有しない多層コーティング剤系(実施例12〜17)では、2024アルミニウム合金に対する耐腐食性が、第1のコーティング剤が腐食防止剤を含有しない場合(12および14)と比べて、第1のコーティング剤がオルトケイ酸リチウムを単独で含有する場合(13および15)または酸化マグネシウムと組み合わせて含有する場合(16および17)に大幅に良好であることを明確に示している。腐食保護の増強の証拠は、スクライブにおけるより少ない量の腐食の存在およびスクライブの縁に沿ったコーティングのブリスター形成の低下で観察される。
【表12】
【0171】
コーティング剤の実施例18〜23を、以下の通り調製した。
【0172】
第1のコーティング剤:実施例18、19、20および21の場合、構成成分Aのすべての材料を好適な容器に秤量し、空気モーターおよび混合用ブレードを使用して、十分に混合した。実施例22および23の場合、構成成分Aのすべての材料を秤量して、ガラス製広口瓶に入れた。次に、構成成分の材料の総重量のおよそ半分に等しいレベルで、分散用媒体を各広口瓶に添加した。広口瓶を蓋で密封し、次に、3.0時間の分散時間でLau分散ユニットに置いた。実施例18、19、20、21および23の場合、Silquest A−187を除く構成成分Bのすべての材料を秤量し、ガラス製広口瓶に入れた
。次に、構成成分の材料の総重量の約2倍に等しいレベルで、分散用媒体を各広口瓶に添加した。次に、広口瓶を蓋で密封し、3.0時間の分散時間でLau分散ユニットに置いた。実施例18および19の構成成分Bの場合、3.0時間の分散時間後、構成成分の材料の総重量にほぼ等しいレベルで、追加量の媒体を各広口瓶に添加した。広口瓶を蓋で密封し、次に、さらに1時間の分散時間、Lau分散ユニットに置いた。分散液はすべて、7超のヘグマンゲージ読取値を有した。顔料分散プロセスが完了した後、構成成分Bの混合物にSilquest A−187を添加した。次に、各最終構成成分Bの混合物を十分に混合した。実施例22の場合、Silquest A−187、OK−412シリカおよびアセトンを除く構成成分Bのすべての材料を秤量し、ガラス製広口瓶に入れた。次に、構成成分の材料の総重量の約2倍に等しいレベルで、分散媒体をこの広口瓶に添加した。広口瓶を蓋で密封し、次に、約3時間の分散時間でLau分散ユニットに置いた。約3時間の分散プロセス後、OK−412およびアセトンを広口瓶に添加し、Lau分散ユニットに約5分間、戻し入れた。次に、顔料分散プロセスが完了した後、構成成分Bの混合物にSilquest A−187を添加した。次に、最終構成成分Bの混合物を十分に混合した。
【0173】
コーティング剤の塗布前に、表12に示されている各全構成成分A、全構成成分Bおよび全構成成分Cを対応する比で一緒にブレンドし、十分に混合して、塗布前に30〜60分間の間の誘発時間を与えた。空気式霧状スプレーガンを使用して、実施例18〜23の第1のコーティング剤を0.7〜1.3ミルの間の乾燥フィルム厚さまで、2024T3アルミニウム合金基材パネルの上にスプレー塗布した。コーティング剤の塗布前に、アルミニウム合金基材パネルを、実施例1〜4について記載されているものと同じ様式で準備した。各実施例の第1のコーティング剤の塗布後に、コーティングされているパネルを周囲条件下で12〜24時間、保管した後、各実施例の第2のコーティング剤を塗布した。
【0174】
第2のコーティング剤:実施例18〜23の場合、各実施例について、表12に示されている構成成分Cの材料の対応する量を、好適なサイズの容器に添加し、空気モーターおよび混合用ブレードを使用して十分に混合した。実施例18、19、20、21および23の、各実施例について、表12に示されている構成成分Aおよび構成成分Bの対応する量を、好適なサイズの容器に添加し、空気モーターおよび混合用ブレードを使用して十分に混合した。次に、各実施例(18、19、20、21および23)の表12に示されている構成成分Cの対応する量を、各実施例の対応するブレンドした構成成分AおよびBに添加し、各最終のブレンドした第2のコーティング剤の実施例を生成した。実施例22の場合、構成成分Aのすべての材料を秤量して、ガラス製広口瓶に入れた。次に、構成成分の材料の総重量の約2倍に等しいレベルで、分散媒体を各広口瓶に添加した。広口瓶を蓋で密封し、次に、3.0時間の分散時間でLau分散ユニットに置いた。実施例22の構成成分Bの場合、すべての材料を好適な容器に秤量し、空気モーターおよび混合用ブレードを使用して、十分に混合した。次に、実施例22について表12に示されている構成成分A、BおよびCの総量を、好適なサイズの容器に加え、次に、空気モーター撹拌器および混合用ブレードを用いて十分に混合し、最終のブレンドした第2のコーティング剤の実施例を生成した。
【0175】
実施例18〜23の第2のコーティング剤を一旦、十分に混合すると、これらを、各第2のコーティング剤の実施例が、対応する第1のコーティング剤の実施例の上に塗布されるように、実施例18〜23の第1のコーティング剤により予めコーティングされているパネルにスプレー塗布した(すなわち、第2のコーティング剤の実施例20を、第1のコーティング剤の実施例20の上に塗布した)。第2のコーティング剤の乾燥フィルムの厚さは、約1.5ミル〜2.5ミルの範囲であった。各第2のコーティング剤の塗布は、各最終の第2のコーティング剤を最初に混合した後、10分〜60分間の間に行った。
【0176】
コーティング剤の実施例18〜23により完全にコーティングした試験パネルを最低7日間、周囲条件下でエージングし、その後、パネルに、いずれの表面コーティングも貫通し、下層の金属が露出する程、十分な深さまでパネル表面にスクライブした、10cm×10cmの「X」の刻みを入れた。次いで、スクライブ済みコーティング試験パネルを、ASTM B117に従って、5%塩化ナトリウム中性塩スプレーキャビネット中に置いた(例外:pHおよび塩の濃度は、毎日ではなく毎週確認した)。
【0177】
表13に示されている評点は、実施例18、19、20、21および23の場合、1176時間の曝露時点のものであり、実施例22の場合、1104時間の曝露時点のものであった。パネルを、実施例1〜4に使用したものと同じ評点尺度に従って、点数を付けた。
【表13】
【0178】
表13の腐食データは、第1のコーティング剤と第2のコーティング剤の両方が、リチウム化合物、酸化マグネシウムおよびアゾールから選択される少なくとも1つの腐食防止剤を含んでいる場合に、6つの実施例すべての多層コーティング剤が良好な耐腐食性を提供したことを明確に示している。スクライブの縁に沿ってブリスター形成が最小限であること、および一部の場合、スクライブ中に最小限の腐食生成しかないことにより、良好な耐腐食性が証明されている。
【表14】
【0179】
コーティング剤の実施例24〜28を、以下の通り調製した。
【0180】
第1のコーティング剤:実施例24〜28の場合、構成成分Aのすべての材料を好適な容器に秤量し、空気モーターおよび混合用ブレードを使用して、十分に混合した。Silquest A−187を除く構成成分Bのすべての材料を秤量し、ガラス製広口瓶に入れた。次に、構成成分の材料の総重量の約2倍に等しいレベルで、分散用媒体を各広口瓶に添加した。広口瓶を蓋で密封し、次に、3.0時間の分散時間でLau分散ユニットに置いた。分散液はすべて、7超のヘグマンゲージ読取値を有した。顔料分散プロセスが完了した後、構成成分Bの混合物にSilquest A−187を添加した。次に、各最終構成成分Bの混合物を十分に混合した。
【0181】
コーティング剤の塗布前に、表14に示されている各全構成成分A、全構成成分Bおよび全構成成分Cを対応する比で一緒にブレンドし、十分に混合して、塗布前に30〜60分間の間の誘発時間を与えた。空気式霧状スプレーガンを使用して、実施例24〜28の第1のコーティング剤を0.5〜1.3ミルの間の乾燥フィルム厚さまで、2024T3アルミニウム合金基材パネルの上にスプレー塗布した。コーティング剤の塗布前に、アルミニウム合金基材パネルを、実施例1〜4について記載されているものと同じ様式で準備した。各実施例の第1のコーティング剤の塗布後に、コーティングされているパネルを周
囲条件下で12〜24時間、保管した後、各実施例の第2のコーティング剤を塗布した。
【0182】
第2のコーティング剤:実施例24〜28の場合、各実施例について、表14に示されている構成成分Cの材料の対応する量を、好適なサイズの容器に添加し、空気モーターおよび混合用ブレードを使用して十分に混合した。次に、各第2のコーティング剤の塗布前に、各第2のコーティングの実施例の各構成成分A、構成成分Bおよび構成成分Cについて、表14に示されている対応する総量を、好適なサイズの容器に入れ、次に、空気モーター撹拌器および混合用ブレードを用いて十分に混合して、各最終のブレンドした第2のコーティング剤の実施例を生成した。
【0183】
実施例24〜28の第2のコーティング剤を一旦、十分に混合すると、これらを、各第2のコーティング剤の実施例が、対応する第1のコーティング剤の実施例の上に塗布されるように、実施例24〜28の第1のコーティング剤により予めコーティングされているパネルにスプレー塗布した(すなわち、第2のコーティング剤の実施例24を、第1のコーティング剤の実施例24の上に塗布した)。第2のコーティング剤の乾燥フィルムの厚さは、約1.5ミル〜2.5ミルの範囲であった。各第2のコーティング剤の塗布は、各第2のコーティング剤を最初に混合した後、10分〜60分間の間に行った。
【0184】
コーティング剤の実施例24〜28により完全にコーティングした試験パネルを最低7日間、周囲条件下でエージングし、その後、パネルに、いずれの表面コーティングも貫通し、下層の金属が露出する程、十分な深さまでパネル表面にスクライブした、10cm×10cmの「X」の刻みを入れた。次いで、スクライブ済みコーティング試験パネルを、ASTM B117に従って、5%塩化ナトリウム中性塩スプレーキャビネット中に置いた(例外:pHおよび塩の濃度は、毎日ではなく毎週確認した)。
【0185】
表15に示されている評点は、1152時間の曝露時点のものであった。パネルを、実施例1〜4に使用したものと同じ評点尺度に従って、点数を付けた。
【表15】
【0186】
表15の腐食データは、第1のコーティング剤と第2のコーティング剤の両方が、リチウム化合物、酸化マグネシウムおよびアゾールから選択される、少なくとも1つの腐食防止剤を含んでいる場合に、5つの実施例すべての多層コーティング剤が、良好な耐腐食性を提供したことを明確に示している。スクライブの縁に沿ってブリスター形成がないこと、およびスクライブ中に最小限の腐食生成しかないことにより、良好な耐腐食性が証明されている。
【表16】
【表17】
【0187】
特許請求されている本発明の防止剤をコーティング剤に添加すると、コーティング剤が、単層として使用されるか、または第2のコーティング剤が第1の層の上に塗布されるかに関わらず、防止剤を含まない同一のコーティング剤と比べた場合、耐腐食性の向上が提供される。しかし、本発明の腐食防止剤を含有する防止剤入り第1の層の上に、防止剤不含のトップコートを塗布すると、腐食防止がある程度抑制される。多層コーティング剤系の第1のコーティング剤と第2のコーティング剤の両方に、腐食防止剤を取り込ませると、単一の防止剤入り層の耐腐食耐性に類似した耐腐食性が可能になる。
【0188】
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
硬化性フィルム形成組成物であって、
(1)硬化性の有機フィルム形成結合剤構成成分、および
(2)前記硬化性フィルム形成組成物中に存在するケイ酸リチウムを、前記硬化性フィルム形成組成物中の樹脂固形分の総重量に対して、0.1〜4.5重量%のリチウムの量で含む腐食防止性構成成分
を含む、組成物。
(項2)
前記有機フィルム形成結合剤構成成分(1)が、(a)エポキシド官能基を含む樹脂構成成分、および(b)アミン官能基を含む硬化剤構成成分を含む、上記項1に記載の組成物。
(項3)
前記ケイ酸リチウムが、オルトケイ酸リチウムおよび/またはメタケイ酸リチウムを含む、上記項1に記載の組成物。
(項4)
前記腐食防止性構成成分(2)が、酸化マグネシウムおよび/またはアゾールをさらに含む、上記項1に記載の組成物。
(項5)
硬化性フィルム形成組成物により少なくとも一部がコーティングされている金属基材であって、前記硬化性フィルム形成組成物が、
(1)硬化性の有機フィルム形成結合剤構成成分、および
(2)前記硬化性フィルム形成組成物中に存在するケイ酸リチウムを、前記硬化性フィルム形成組成物中の樹脂固形分の総重量に対して、0.1〜4.5重量%のリチウムの量で含む腐食防止性構成成分
を含む、コーティングされている金属基材。
(項6)
前記硬化性フィルム形成組成物が、前記金属基材に直接、塗布され、前記基材と前記硬化性フィルム形成組成物との間に中間コーティングが存在しない、上記項5に記載のコーティングされている金属基材。
(項7)
前記金属基材がアルミニウムを含む、上記項5に記載のコーティングされている金属基材。
(項8)
前記金属基材が航空機部品である、上記項5に記載のコーティングされている金属基材。
(項9)
前記硬化性フィルム形成組成物の少なくとも一部の最上部に塗布された追加のコーティング層をさらに含む、上記項5に記載のコーティングされている金属基材。
(項10)
前記追加のコーティング層が、フルオロポリマーおよび/またはポリウレタンポリマーを含む、上記項9に記載のコーティングされている金属基材。
(項11)
前記硬化性フィルム形成組成物がプライマーコーティング剤であり、前記追加のコーティング層がトップコート組成物である、上記項9に記載のコーティングされている金属基材。
(項12)
前記硬化性フィルム形成組成物が着色ベースコート層であり、前記追加のコーティング層が透明なクリアコート組成物である、上記項9に記載のコーティングされている金属基材。
(項13)
前記追加のコーティング層が、ケイ酸リチウム、酸化マグネシウムおよび/またはアゾールを含む腐食防止性構成成分を含む、上記項9に記載のコーティングされている金属基材。
(項14)
(a)金属基材、
(b)前記金属基材に塗布された硬化性フィルム形成組成物であって、
(1)硬化性の有機フィルム形成結合剤構成成分、および
(2)前記硬化性フィルム形成組成物中に存在するケイ酸リチウムを、前記硬化性フィルム形成組成物中の樹脂固形分の総重量に対して、0.1〜4.5重量%のリチウムの量で含む腐食防止性構成成分
を含む、硬化性フィルム形成組成物、ならびに
(c)前記硬化性フィルム形成組成物の少なくとも一部の最上部に塗布された追加のコーティング層
を含む、多層コーティングされている金属基材。
(項15)
前記金属基材(a)がアルミニウムを含む、上記項14に記載の多層コーティングされている金属基材。
(項16)
前記金属基材(a)が航空機部品である、上記項15に記載の多層コーティングされている金属基材。
(項17)
前記硬化性フィルム形成組成物(b)が、前記金属基材に直接、塗布され、前記基材と前記硬化性フィルム形成組成物との間に中間コーティングが存在しない、上記項14に記載の多層コーティングされている金属基材。
(項18)
前記有機フィルム形成構成成分(1)が、(i)エポキシド官能基を含む樹脂構成成分、および(ii)アミン官能基を含む硬化剤構成成分を含む、上記項14に記載の多層コーティングされている金属基材。
(項19)
前記ケイ酸リチウムが、オルトケイ酸リチウムおよび/またはメタケイ酸リチウムを含む、上記項14に記載の多層コーティングされている金属基材。
(項20)
前記腐食防止性構成成分(2)が、酸化マグネシウムおよび/またはアゾールをさらに含む、上記項14に記載の多層コーティングされている金属基材。
(項21)
前記追加のコーティング層(c)が、ケイ酸リチウム、酸化マグネシウムおよび/またはアゾールを含む腐食防止性構成成分を含む、上記項14に記載の多層コーティングされている金属基材。
(項22)
前記追加のコーティング層(c)が、フルオロポリマーおよび/またはポリウレタンポリマーを含む、上記項14に記載の多層コーティングされている金属基材。
(項23)
(a)金属基材、
(b)前記金属基材に塗布された第1の硬化性フィルム形成組成物であって、
(1)硬化性の有機フィルム形成結合剤構成成分、および
(2)腐食防止性構成成分
を含む、第1の硬化性フィルム形成組成物、ならびに
(c)前記第1の硬化性フィルム形成組成物の少なくとも一部の最上部に塗布された第2の硬化性フィルム形成組成物であって、
(1)前記第1の硬化性フィルム形成組成物中の前記硬化性の有機フィルム形成結合剤構成成分と同一または異なる硬化性の有機フィルム形成結合剤構成成分、および
(2)前記第1の硬化性フィルム形成組成物中の前記腐食防止性構成成分と同一または異なる腐食防止性構成成分
を含む、第2の硬化性フィルム形成組成物
を含み、前記第1および第2の硬化性フィルム形成組成物の各々における前記腐食防止性構成成分(2)が、(i)ケイ酸リチウムおよび/もしくはリチウム塩を含むリチウム化合物、(ii)酸化マグネシウム、ならびに/または(iii)アゾールを独立して含む、
多層コーティングされている金属基材。
(項24)
前記リチウム化合物、酸化マグネシウムおよびアゾールの各々が、存在する、上記項23に記載の多層コーティングされている金属基材。
(項25)
前記第1の硬化性フィルム形成組成物(b)中の前記腐食防止性構成成分(2)が、酸化マグネシウムを含み、前記第2の硬化性フィルム形成組成物(c)中の前記腐食防止性構成成分(2)が、リチウム化合物(i)および/またはアゾール(iii)を含む、上記項23に記載の多層コーティングされている金属基材。
(項26)
(d)前記第2の硬化性フィルム形成組成物(c)の少なくとも一部の最上部に塗布された、追加のフィルム形成組成物をさらに含む、上記項23に記載の多層コーティングされている金属基材。