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  • 特開2021191878-オリゴイミドの製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-191878(P2021-191878A)
(43)【公開日】2021年12月16日
(54)【発明の名称】オリゴイミドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/12 20060101AFI20211119BHJP
【FI】
   C08G73/12
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2021-152211(P2021-152211)
(22)【出願日】2021年9月17日
(62)【分割の表示】特願2020-137566(P2020-137566)の分割
【原出願日】2016年9月2日
(31)【優先権主張番号】特願2015-174761(P2015-174761)
(32)【優先日】2015年9月4日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐己
(72)【発明者】
【氏名】森北 達弥
(72)【発明者】
【氏名】竹内 耕
(72)【発明者】
【氏名】吉田 猛
(72)【発明者】
【氏名】繁田 朗
(72)【発明者】
【氏名】越後 良彰
【テーマコード(参考)】
4J043
【Fターム(参考)】
4J043PB03
4J043QB15
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA05
4J043SA05
4J043TA22
4J043UA122
4J043UA132
4J043UA222
4J043UA262
4J043UB011
4J043UB122
4J043UB152
4J043UB302
4J043XA13
4J043XA38
4J043YA07
4J043YB08
4J043YB25
4J043ZA12
4J043ZB01
4J043ZB03
(57)【要約】
【課題】末端がマレアミック酸変性されたオリゴアミック酸から、イミド化時間を短縮することができるオリゴイミドの製造方法を提供する。得られたオリゴイミドは、レベリング性に優れているので、厚みムラが小さいフィルムを得ることができる。
【解決手段】オリゴイミドを溶解する溶媒中で、芳香族テトラカルボン酸二無水物および無水マレイン酸と、脂肪族ジアミンとを反応させて、末端マレアミック酸のオリゴアミック酸を生成させた後、酸触媒として、マレイン酸を用いてイミド化することを特徴とするオリゴイミドの製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリゴイミドを溶解する溶媒中で、芳香族テトラカルボン酸二無水物および無水マレイン酸と、脂肪族ジアミンとを反応させて、末端マレアミック酸のオリゴアミック酸を生成させた後、酸触媒として、マレイン酸を用いてイミド化することを特徴とするオリゴイミドの製造方法。
【請求項2】
オリゴイミドを溶解する溶媒が、炭化水素系溶媒である請求項1記載のオリゴイミドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、末端変性されたオリゴイミドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
末端変性されたオリゴイミドの中で、末端基の一部または全部がマレイミド化されたオリゴイミドが知られている。(特許文献1〜3および非特許文献1) これらオリゴイミドは、熱硬化または光硬化することにより、イミド結合に基づく高い耐熱性と良好な機械的特性を有するフィルム等の成形体を得ることができる。また、マレイミド基のビニル基は活性であるため、例えば、ビニルエーテル類、アクリレート類、メタアクリレート類のビニル化合物と共重合でき、これらの共重合体は、様々な耐熱性樹脂や接着剤の原料として有用である。
【0003】
前記末端マレイミド化オリゴイミドの中で、オリゴイミドを構成するテトラカルボン酸として芳香族テトラカルボン酸、ジアミンとして脂肪族ジアミンを用いたオリゴイミド(以下、「MOI」と略記することがある)は、シリコン基板のパシベーション膜、ダイボンディング用接着剤、高周波用基板等用として好適に使用できることが開示されている。(特許文献4〜6) これらのMOIを製造する方法として、従来は、溶媒中で、末端ジアミンとしたオリゴイミドに、無水マレイン酸を反応させて、末端マレアミック酸オリゴイミドを生成させ、末端マレアミック酸をイミド化するに際し、脱水触媒として、硫酸、メタンスルフォン酸、p−トルエンスルフォン酸等pKaが1未満の強酸とトリエチルアミン等脂肪族3級アミンと混合物の共存下、100℃以上で長時間加熱して、イミド化の際、副生する水を、共沸により除去しつつ、マレアミック酸をイミド化し、末端をマレイミド化する方法(特許文献3、5)や、アミド系溶媒を含む溶媒中で、前記末端マレアミック酸オリゴイミドを前記強酸の共存下、100℃以上で長時間加熱して、イミド化の際、副生する水を共沸により除去しつつ、末端のマレアミック酸をイミド化する方法(特許文献6)が用いられてきた。さらに、マレアミック酸をマレイミド化する際に、脱水触媒として無水酢酸と塩基性化合物(1−ヒドロキシベンズトリアゾール、トリエチルアミン、酢酸ソーダ等)の混合物を用い、長時間をかけて低温で反応させて、MOIを製造する方法も開示されている。(特許文献4)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5096998号
【特許文献2】特開平8−12914号公報
【特許文献3】米国特許第7208566号
【特許文献4】米国特許第6034195号
【特許文献5】米国公開特許2013 /0228901号
【特許文献6】国際公開2015/048575号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】JOURNAL OF POLYMER SCIENCE: PART A:POLYMER CHEMISTRY, VOL. 26, 1165−1178 (1988)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、MOIを製造するに際し、先ず、芳香族テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンから得られるアミック酸をイミド化して末端ジアミンのオリゴイミドを得た後、これに無水マレイン酸を反応させて、末端マレアミック酸オリゴイミドを生成させ、これをマレイミド化する際に、前記したような、強酸を含む脱水触媒を用い、100℃以上の温度で、長時間加熱して、マレイミド化するような反応方法では、反応の際、生成するマレイミドが、過剰反応して、ビニル重合やマイケル付加等の副反応を起こしやすく、結果として、生成物の中に、多量の高分子量の副生成物が混在することがあった。特に、MOIのビニル基が、ビニル重合して生成するMOIの2量体や3量体(以下、「MOIオリゴマ」と略記することがある)は、MOIと分離精製することが困難であり、これらの副生成物含有量が低減されたMOIを得ることは難しかった。MOIオリゴマがMOI中に多量に混在すると、この溶液からフィルム等を成形した際に、レベリング性が低下するために、フィルムの厚みムラが起こりやすいという問題があった。また、MOIオリゴマが多量に混在したMOIでは、これを他のビニルモノマと共重合した際に、均一なランダム共重合体や交互共重合体が得られにくいという問題があった。さらに、テトラカルボン酸類として芳香族テトラカルボン酸、ジアミンとして脂肪族ジアミンから得られるマレアミック酸をマレイミド化する際に、脱水触媒として無水酢酸と塩基性化合物の混合物を用い、長時間をかけて低温でイミド化させたとしても、前記した副反応が進行し、MOIオリゴマ等の副生成物含有量が低減されたMOIを得ることは難しかった。
そこで本発明は、上記課題を解決するものであって、副生成物含有量が低減されたMOIおよびその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
MOIのH−NMRにおいて、特定のピークの量的対比を行った場合、その比率を特定の範囲としたMOIは、MOIオリゴマやその他の副生成物が低減され、前記課題が解決されることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
本発明は下記を趣旨とするものである。
オリゴイミドを溶解する溶媒中で、芳香族テトラカルボン酸二無水物および無水マレイン酸と、脂肪族ジアミンとを反応させて、末端マレアミック酸のオリゴアミック酸を生成させた後、酸触媒として、マレイン酸を用いてイミド化することを特徴とするオリゴイミドの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるMOIは、レベリング性に優れているので、厚みムラが小さいフィルムを得ることができる。また、本発明によるMOIは、MOIオリゴマが低減化されているので、ビニルエーテル類等他の共重合可能なビニル化合物と共重合して、均一性に優れたランダム共重合や交互共重合体を得ることができる。本発明の製造方法においては、末端がマレアミック酸変性されたオリゴアミック酸から一挙にMOIを生成させるようにしたので、イミド化時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1で得られたMOIのH−NMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、MOIは、オリゴイミドの末端基の一部または全部がマレイミド変性されたものである。MOIの骨格を成すオリゴイミドは、イミド結合を有するオリゴマであり、芳香族テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンとを脱水縮合することにより得られるものである。
【0012】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、芳香環を有するテトラカルボン酸二無水物であれば制限はないが、例えば、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(4,4′−オキシジフタル酸二無水物)、2,3′,4,4′−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナンスレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、PMDAが好ましく用いられる。
【0013】
脂肪族ジアミンとしては、主鎖にアルキレン基を有するジアミンであれば制限はないが、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、ダイマジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられ、ダイマジアミンが好ましく用いられる。ダイマジアミンは、コグニスジャパン社製、商品名「バーサミン551」、「バーサミン552」、クローダ社製、商品名「プリアミン1074」、「プリアミン1075」等の市販品が用いられる。これら脂肪族ジアミン類は、単独、または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0014】
本発明において、MOIを構成するオリゴイミドは、芳香族テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンとの縮合物からなり、脂肪族ジアミンに対する芳香族テトラカルボン酸のモル比が、0.5以上、0.9以下の範囲であり、0.55以上、0.85以下とすることが好ましい。このようなモル比とすることにより、良好な成形性と高い耐熱性を同時に確保できる。
【0015】
本発明において、MOIは、末端基の一部または全部がマレイミド変性されており、H−NMRにおいて、ピーク1の積分値(A)およびピーク2の積分値(B)を用いて量的対比を行った場合に、B/Aが0.82以上である。B/Aは0.85以上であることが好ましく、0.87以上であることがより好ましい。このようにすることにより、前記したMOI中のMOIオリゴマの低減化されるので、フィルム等を成形した際のレベリング性を確保でき、フィルムの厚みムラを解消することができる。また、ビニルエーテル類等他の共重合可能なビニル化合物と共重合して、均一性に優れたランダム共重合や交互共重合体を得ることができる。なお、MOI中に含有されているMOIオリゴマは、H−NMRにおいて、芳香族テトラカルボン酸とイミド結合を形成するメチレン基のプロトンに対応するピーク(以下、ピーク3と略記することがある)の積分値(C)および末端のマレイミドがビニル重合した際やその他の副反応で生成するコハク酸イミド誘導体のメチレン基のプロトン(以下、ピーク4と略記することがある)等を反映するピークの積分値(D)を用いて量的対比を行うことにより評価することができる。このD/Cは、B/Aと相関しているパラメータであり、本発明によって得られるMOIにおいては、D/Cが0.25以下であることが好ましく、0.23以下であることがより好ましい。
【0016】
H−NMR測定条件>
装置:核磁気共鳴装置(日本電子社製 型番:ECA500)
周波数:500.16MHz
基準物質:テトラメチルシラン
測定温度:25℃
溶媒:重水素化クロロホルム
【0017】
本発明において、MOIは、例えば、以下のようなプロセスで製造することができる。すなわち、先ず、溶媒中で、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物を反応させて、末端ジアミンのオリゴアミック酸(オリゴイミド前駆体)を生成させ、しかる後、無水マレイン酸を反応させて、末端がマレアミック酸変性されたオリゴアミック酸を生成させる。しかる後、酸触媒を用いて、マレアミック酸およびオリゴアミック酸のアミック酸部分を、一括してイミド化することにより、MOI溶液とすることができる。ここで、テトラカルボン酸二無水物は、ジアミン1モルに対し、0.5モル以上、0.9モル以下用いることが好ましい。 また、無水マレイン酸は、ジアミン1モルおよび用いたテトラカルボン酸二無水物Xモルに対し、2*(1−X)モル以上、4*(1−X)モル以下用いることが好ましい。イミド化の際の反応温度としては、150℃以下とすることが好ましく、130℃以下とすることがより好ましい。また、イミド化の際の反応時間としては、2時間以上、10時間以下とすることが好ましく、4時間以上、8時間以下とすることがより好ましい。反応時間が10時間を超えると、ビニル重合体の生成等副反応が起こりやすくなることがある。また、2時間未満では、イミド化が充分に進まないことがある。イミド化反応に際しては、イミド化により生成する水を反応系外に留去しつつ反応を行うことができる。前記のようにして得られたMOI溶液に、貧溶媒等を加え、再沈殿後、乾燥することにより、MOIを粉体として単離することができる。
【0018】
前記MOI製造プロセスにおいて、イミド化の際、酸触媒として、弱酸性(pKaが1以上)である脂肪族カルボン酸を用いることが好ましい。脂肪族カルボン酸の使用量は、原料であるジアミン1モルに対し、0.1モル以上、3.0モル以下とすることが好ましく、0.2モル以上、2.5モル以下とすることがより好ましい。ここで、脂肪族カルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸等が用いられ、マレイン酸が好ましく用いられる。このように、脱水触媒として、弱酸である有機カルボン酸を特定量使用することにより、MOIを、容易に製造することができる。なお、酸触媒としては、前記した遊離したカルボン酸以外に、加水分解して遊離カルボン酸を生成する無水酢酸や無水マレイン酸などを用いても良い。
【0019】
反応の際用いる溶媒としては、生成物であるMOIを溶解する溶媒であれば、制限はないが、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)等のアミド系溶媒、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、グライム、ジグライム等のエーテル系溶媒が好ましく用いられる。これらの溶媒は、単独、または2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中で、アミド系溶媒と炭化水素系溶媒とからなる混合溶媒が好ましく用いられる。
【0020】
反応の際の固形分濃度としては、5〜80質量%とすることが好ましく、10〜70質量%とすることがより好ましい。
【実施例】
【0021】
以下に、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお本発明は実施例により限定されるものではない。
【0022】
<実施例1>
水分離器付き還流冷却器、攪拌機、温度計を備えたガラス製反応容器に、窒素雰囲気下、ダイマジアミン(クローダジャパン株式会社製「プリアミン1075」、分子量:549):1.0モル、トルエンとDMAcとからなる混合溶媒(質量比:トルエン/DMAc=80/20)を投入して攪拌した。得られた溶液に、室温(20℃)で、PMDA:0.66モル、続いて無水マレイン酸:0.68モルを加え、室温で1時間撹拌し、80℃で3時間加熱した後、冷却して、末端がマレアミック酸変性されたオリゴアミック酸溶液(固形分濃度:30質量%)を得た。次に、この溶液に、マレイン酸(pKa=1.9、6.1)2.00モルを加え、得られた溶液を、攪拌しながら昇温して内容物を加熱還流させた。反応により生成する水を共沸分離しながら約115℃で6時間還流を続けたのち、冷却して、橙黄色溶液を得た。その後、得られた溶液を、水系溶媒で洗浄することにより、MOI溶液を得た。続いて、この溶液を、メタノール溶液に中に投入して、MOIを再沈殿させ、これを濾過、洗浄、乾燥することにより、MOI粉体(MOI−1)を得た。MOI−1のH−NMRを前記した条件で測定した結果を図1に示す。図1に示すように、MOI−1の主成分は、末端がマレイミド化されたオリゴイミドであることが確認された。このH−NMRチャートで認められたピーク1(δ:3.5 PPM 多重線)の積分値(A)とピーク2(δ:6.7 PPM 単線)との積分値(B)とを用いて、量的対比を行った結果、B/Aは0.83であった。また、このH−NMRにおいて、ピーク3(δ:3.7 PPM 多重線)の積分値(C)とピーク4(δ:2.5 PPM ブロード)との積分値(D)とを用いて、量的対比を行った結果、D/Cは0.21であった。
【0023】
<実施例2>
DMAcをNMPとしたこと以外は、実施例1と同様に行い、MOI粉体(MOI−2)を得た。MOI−2のH−NMRを測定し、ピーク1とピーク2の積分値を用いて、量的対比を行った結果、B/Aは0.85であった。
【0024】
<実施例3>
PMDA、無水マレイン酸、マレイン酸の使用量を、それぞれ、0.80モル、0.42モル、1.80モルとしたこと以外は、実施例1と同様に行い、MOI粉体(MOI−3)を得た。MOI−3のH−NMRを測定し、ピーク1とピーク2の積分値を用いて、量的対比を行った結果、B/Aは0.91であった。
【0025】
<比較例1>
国際公開2015/048575号の実施例1記載の方法に準拠して、MOI粉体(MOI−4)を得た。
この方法の前記した本願実施例との主な相違点は、以下の通りである。
1) イミド化のための脱水触媒として、強酸性を示すメタンスルフォン酸(pKa=−1.9)を用いる。
2) マレアミック酸部分のイミド化時間が18時間である。
MOI−5のH−NMRを測定し、ピーク1とピーク2の積分値を用いて、量的対比を行った結果、B/Aは0.81であった。また、このH−NMRにおいて、ピーク3とピーク4の積分値を用いて、量的対比を行った結果、D/Cは0.28であった。
【0026】
<比較例2>
米国公開特許第2013/0228901号の実施例1および米国特許第7208566号の実施例5記載の方法に準拠して、MOI粉体(MOI−5)を得た。
この方法の前記した本願実施例との主な相違点は以下の通りである。
1) イミド化のための脱水触媒として、強酸性を示すメタンスルフォン酸(pKa=−1.9)と弱塩基であるトリエチルアミンとの混合物を用い、メタンスルフォン酸をトリエチルアミンの2倍モル以上用いる。
2) 溶媒としてトルエンのみを用いる。
3) マレアミック酸部分のイミド化時間が12時間である。
MOI−4のH−NMRを測定し、ピーク1とピーク2の積分値を用いて、量的対比を行った結果、B/Aは0.75であった。
【0027】
<比較例3>
米国特許第6034195号の実施例1記載の方法に準拠して、MOI粉体(MOI−6)を得た。
この方法の前記した本願実施例との主な相違点は、以下の通りである。
1) イミド化のための脱水触媒として、無水酢酸と塩基性化合物(1−ヒドロキシベンズトリアゾール)の混合物を用いる。
2) イミド化温度が室温である。
3) イミド化時間が24時間である。
MOI−6のH−NMRを測定し、ピーク1とピーク2の積分値を用いて、量的対比を行った結果、B/Aは0.67であった。
【0028】
<比較例4>
実施例1で得られたMOI−1をソルベントナフサ中に再溶解し、この溶液を155℃で5時間加熱した後、メタノール中で再沈殿、乾燥することにより、MOI粉体(MOI−7)を得た。
MOI−7のH−NMRを測定し、ピーク1とピーク2の積分値を用いて、量的対比を行った結果、B/Aは0.72であった。また、このH−NMRにおいて、ピーク3とピーク4の積分値を用いて、量的対比を行った結果、D/Cは0.33であった。
【0029】
<実施例5>
MOI1〜7のそれぞれ100質量部をトルエン100質量部に溶解し、熱重合開始剤であるジクミルパーオキサイド0.7質量部を加え、精密濾過後、固形分濃度が50質量%の塗膜形成用MOIワニス1〜7を得た。これらのワニスをそれぞれ、基材である平滑な銅箔上にフィルムアプリケーターを用いて塗布し、その塗膜を、窒素ガス雰囲気下、80℃で20分間、200℃で60分間、加熱処理して、厚みが約30μmのMOIフィルム(MOIフィルム1〜7)からなる被膜を形成した。これらの被膜(銅箔を含む)を10cm平方に切り出した後、任意の9か所(約3cm間隔)のフィルム厚みを測定した。その結果、実施例1〜3のMOI粉体から得られたMOIフィルム1〜3は、その厚みの変動幅が平均値に対し±5%以下であったのに対し、比較例1〜4のMOI粉体から得られたMOIフィルム4〜7は前記変動幅が±5%を超えていた。
【0030】
前記評価結果から、MOIから得られるフィルムは、厚みムラが小さく、本発明により得られたMOIは、レベリング性が優れていることが明らかである。また、本発明によるMOIは、MOIオリゴマが低減化されているので、ビニルエーテル類等他の共重合可能なビニル化合物と共重合して、均一性に優れたランダム共重合や交互共重合体を得ることができる。さらに、本発明のMOI製造方法においては、末端がマレアミック酸変性されたオリゴアミック酸から一挙にMOIを生成させるようにしたので、イミド化時間が短縮され、副生成物の生成を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明により得られるMOIは、MOIオリゴマ等の副生成物含有量が低減化されており、レベリング性が良好であるので、シリコン基板のパシベーション膜、ダイボンディング用接着剤、高周波用基板等用として好適に使用できる。また、ビニルエーテル類、アクリレート類、メタアクリレート類のビニル化合物と均一な共重合を製造することができ、これらの共重合体は、様々な耐熱性樹脂や接着剤の原料として有用である。
図1