【実施例】
【0021】
以下に、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお本発明は実施例により限定されるものではない。
【0022】
<実施例1>
水分離器付き還流冷却器、攪拌機、温度計を備えたガラス製反応容器に、窒素雰囲気下、ダイマジアミン(クローダジャパン株式会社製「プリアミン1075」、分子量:549):1.0モル、トルエンとDMAcとからなる混合溶媒(質量比:トルエン/DMAc=80/20)を投入して攪拌した。得られた溶液に、室温(20℃)で、PMDA:0.66モル、続いて無水マレイン酸:0.68モルを加え、室温で1時間撹拌し、80℃で3時間加熱した後、冷却して、末端がマレアミック酸変性されたオリゴアミック酸溶液(固形分濃度:30質量%)を得た。次に、この溶液に、マレイン酸(pKa=1.9、6.1)2.00モルを加え、得られた溶液を、攪拌しながら昇温して内容物を加熱還流させた。反応により生成する水を共沸分離しながら約115℃で6時間還流を続けたのち、冷却して、橙黄色溶液を得た。その後、得られた溶液を、水系溶媒で洗浄することにより、MOI溶液を得た。続いて、この溶液を、メタノール溶液に中に投入して、MOIを再沈殿させ、これを濾過、洗浄、乾燥することにより、MOI粉体(MOI−1)を得た。MOI−1の
1H−NMRを前記した条件で測定した結果を
図1に示す。
図1に示すように、MOI−1の主成分は、末端がマレイミド化されたオリゴイミドであることが確認された。この
1H−NMRチャートで認められたピーク1(δ:3.5 PPM 多重線)の積分値(A)とピーク2(δ:6.7 PPM 単線)との積分値(B)とを用いて、量的対比を行った結果、B/Aは0.83であった。また、この
1H−NMRにおいて、ピーク3(δ:3.7 PPM 多重線)の積分値(C)とピーク4(δ:2.5 PPM ブロード)との積分値(D)とを用いて、量的対比を行った結果、D/Cは0.21であった。
【0023】
<実施例2>
DMAcをNMPとしたこと以外は、実施例1と同様に行い、MOI粉体(MOI−2)を得た。MOI−2の
1H−NMRを測定し、ピーク1とピーク2の積分値を用いて、量的対比を行った結果、B/Aは0.85であった。
【0024】
<実施例3>
PMDA、無水マレイン酸、マレイン酸の使用量を、それぞれ、0.80モル、0.42モル、1.80モルとしたこと以外は、実施例1と同様に行い、MOI粉体(MOI−3)を得た。MOI−3の
1H−NMRを測定し、ピーク1とピーク2の積分値を用いて、量的対比を行った結果、B/Aは0.91であった。
【0025】
<比較例1>
国際公開2015/048575号の実施例1記載の方法に準拠して、MOI粉体(MOI−4)を得た。
この方法の前記した本願実施例との主な相違点は、以下の通りである。
1) イミド化のための脱水触媒として、強酸性を示すメタンスルフォン酸(pKa=−1.9)を用いる。
2) マレアミック酸部分のイミド化時間が18時間である。
MOI−5の
1H−NMRを測定し、ピーク1とピーク2の積分値を用いて、量的対比を行った結果、B/Aは0.81であった。また、この
1H−NMRにおいて、ピーク3とピーク4の積分値を用いて、量的対比を行った結果、D/Cは0.28であった。
【0026】
<比較例2>
米国公開特許第2013/0228901号の実施例1および米国特許第7208566号の実施例5記載の方法に準拠して、MOI粉体(MOI−5)を得た。
この方法の前記した本願実施例との主な相違点は以下の通りである。
1) イミド化のための脱水触媒として、強酸性を示すメタンスルフォン酸(pKa=−1.9)と弱塩基であるトリエチルアミンとの混合物を用い、メタンスルフォン酸をトリエチルアミンの2倍モル以上用いる。
2) 溶媒としてトルエンのみを用いる。
3) マレアミック酸部分のイミド化時間が12時間である。
MOI−4の
1H−NMRを測定し、ピーク1とピーク2の積分値を用いて、量的対比を行った結果、B/Aは0.75であった。
【0027】
<比較例3>
米国特許第6034195号の実施例1記載の方法に準拠して、MOI粉体(MOI−6)を得た。
この方法の前記した本願実施例との主な相違点は、以下の通りである。
1) イミド化のための脱水触媒として、無水酢酸と塩基性化合物(1−ヒドロキシベンズトリアゾール)の混合物を用いる。
2) イミド化温度が室温である。
3) イミド化時間が24時間である。
MOI−6の
1H−NMRを測定し、ピーク1とピーク2の積分値を用いて、量的対比を行った結果、B/Aは0.67であった。
【0028】
<比較例4>
実施例1で得られたMOI−1をソルベントナフサ中に再溶解し、この溶液を155℃で5時間加熱した後、メタノール中で再沈殿、乾燥することにより、MOI粉体(MOI−7)を得た。
MOI−7の
1H−NMRを測定し、ピーク1とピーク2の積分値を用いて、量的対比を行った結果、B/Aは0.72であった。また、この
1H−NMRにおいて、ピーク3とピーク4の積分値を用いて、量的対比を行った結果、D/Cは0.33であった。
【0029】
<実施例5>
MOI1〜7のそれぞれ100質量部をトルエン100質量部に溶解し、熱重合開始剤であるジクミルパーオキサイド0.7質量部を加え、精密濾過後、固形分濃度が50質量%の塗膜形成用MOIワニス1〜7を得た。これらのワニスをそれぞれ、基材である平滑な銅箔上にフィルムアプリケーターを用いて塗布し、その塗膜を、窒素ガス雰囲気下、80℃で20分間、200℃で60分間、加熱処理して、厚みが約30μmのMOIフィルム(MOIフィルム1〜7)からなる被膜を形成した。これらの被膜(銅箔を含む)を10cm平方に切り出した後、任意の9か所(約3cm間隔)のフィルム厚みを測定した。その結果、実施例1〜3のMOI粉体から得られたMOIフィルム1〜3は、その厚みの変動幅が平均値に対し±5%以下であったのに対し、比較例1〜4のMOI粉体から得られたMOIフィルム4〜7は前記変動幅が±5%を超えていた。
【0030】
前記評価結果から、MOIから得られるフィルムは、厚みムラが小さく、本発明により得られたMOIは、レベリング性が優れていることが明らかである。また、本発明によるMOIは、MOIオリゴマが低減化されているので、ビニルエーテル類等他の共重合可能なビニル化合物と共重合して、均一性に優れたランダム共重合や交互共重合体を得ることができる。さらに、本発明のMOI製造方法においては、末端がマレアミック酸変性されたオリゴアミック酸から一挙にMOIを生成させるようにしたので、イミド化時間が短縮され、副生成物の生成を抑制することができる。