(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-191899(P2021-191899A)
(43)【公開日】2021年12月16日
(54)【発明の名称】基材上に高温保護層を接合するための付着促進層、並びにそれの製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 4/073 20160101AFI20211119BHJP
【FI】
C23C4/073
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2021-141398(P2021-141398)
(22)【出願日】2021年8月31日
(62)【分割の表示】特願2018-536143(P2018-536143)の分割
【原出願日】2017年2月3日
(31)【優先権主張番号】102016002630.8
(32)【優先日】2016年3月7日
(33)【優先権主張国】DE
(71)【出願人】
【識別番号】390035448
【氏名又は名称】フォルシュングスツェントルム・ユーリッヒ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ファーセン・ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】ベルクホルツ・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】マック・ダニエル・エーミール
(72)【発明者】
【氏名】クァダッカース・ヴィレム・イェー
【テーマコード(参考)】
4K031
【Fターム(参考)】
4K031AA08
4K031AB04
4K031AB08
4K031CB22
4K031CB27
4K031CB42
4K031DA01
4K031DA04
4K031DA08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高温保護層、例えば遮熱層または耐環境性(熱)保護層を基材上に接合するための新規の付着促進層、並びにそれの製造方法を提供する。
【解決手段】基材上に接合することが意図された付着促進材料でできた第一の層を含み、並びに安定した酸化物分散物を含みかつ高温保護層の接合が意図された、前記第一層の上に配置された第二層を含む、前記付着促進層に関する。前記第二の層のための付着促進材料としては、第一の層と同じ材料を好ましく使用でき、但し、安定した酸化物分散物が0.01〜50重量%の割合で追加的に組み入れられている。
【選択図】
図3a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に高温保護層を接合するための付着促進層であって、
−基材上に施与することを意図した第一の付着促進材料からできた第一の層、
−高温保護層を接合することを意図した、酸化物分散物が追加的に組み入れられた第二の付着促進材料を含む、上記第一層の上に配置された第二の層、
を特徴とする付着促進層。
【請求項2】
前記第二層が、0.01〜50重量%の割合で、特に0.1〜5重量%の割合で酸化物分散物を含む、請求項1に記載の付着促進層。
【請求項3】
前記第一及び/または第二付着促進材料が、MCrAlY(M=Co、Ni及び/またはFe)を含む、請求項1または2に記載の付着促進層。
【請求項4】
前記第一及び/または第二付着促進材料が、SiまたはSi合金を含む、請求項1または2に記載の付着促進層。
【請求項5】
前記第一及び第二付着促進材料が同一である、請求項1〜3のいずれか一つに記載の付着促進層。
【請求項6】
前記第二層が、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウムまたは希土類金属酸化物の分散物を含む、請求項1〜5のいずれか一つに記載の付着促進層。
【請求項7】
前記第一層が前記第二層よりも厚く、特に前記第一層が、前記第二層の少なくとも二倍厚い、請求項1〜6のいずれか一つに記載の付着促進層。
【請求項8】
全層厚が50μmと300μmとの間、好ましくは100μmと200μmとの間であり、ここで第二層が少なくとも50μmの層厚を有する、請求項1〜7のいずれか一つに記載の付着促進層。
【請求項9】
基材、その上に配置された請求項1〜8のいずれか一つに記載の付着促進層、及びその上に配置された高温保護層を含む、高温保護層系。
【請求項10】
基材として、ニッケルもしくはコバルトベースのスーパーアロイまたはC/C、C/SiC、SiC/C−SiCもしくはSiC/SiC含有セラミック製複合材料を含む基材を有する、請求項9に記載の高温保護層系。
【請求項11】
基材に高温保護層を接合するための付着促進層を製造する方法であって、次のステップ
−前記基材上に、第一の付着促進材料を含む第一の層を施与するステップ、
−前記第一層の上に、酸化物分散物が追加的に組み入れられた第二の付着促進材料を含む第二の層を施与するステップ、
を含む前記方法。
【請求項12】
前記ODS合金のための材料として、安定した酸化物分散物が追加的に組み入れられた第一の付着促進材料が使用される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第二層のために、0.01〜50重量%の割合で、特に0.1〜5重量%の割合で安定した酸化物分散物を含む付着促進材料が使用される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
第一及び/または第二付着促進材料として、SiかまたはSi合金かまたはMCrAlY(M=Co、NiまたはFe)のいずれかが使用される、請求項11〜13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
追加的な安定した酸化物分散物として、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウムまたは希土類金属酸化物の分散物が使用される、請求項11〜14のいずれか一つに記載の方法。
【請求項16】
前記層のうちの少なくとも一つが、高速フレーム溶射法、真空プラズマ溶射法、コールドガススプレー法または大気プラズマ溶射法により施与される、請求項11〜15のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温保護層、例えば遮熱層または耐環境性(熱)保護層を基材上に接合するための新規の付着促進層、並びにそれの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遮熱層(thermal barrier coating,TBC)とは、温度が負荷される部材上の保護層のことであり、この保護層は、高温度の使用下に前記部材の材料温度を減少させるべきものである。遮熱層は、必要に応じて、数デシミリメータからミリメータまでの範囲の層厚を有する。
【0003】
遮熱層は、非常に高い温度下でも部材の材料の強度を保護するのを助ける。それで、例えば、タービンブレード材料を1400℃を超える排ガス温度で使用できるようになる、というのも、遮熱層によって、材料の温度を、その素材がなおも十分に高い強度を有する1100℃未満に低下させることができるからである。
【0004】
遮熱層は、一般的に、到達した極端な熱ガス温度に対する非常に効果的な保護であり、他の高温保護層は、攻撃性環境中で温度が負荷された部材を保護し、更に酸化、腐食に対してもまたは更には浸食に対しても保護する。
【0005】
このような高温保護層の施与は製造の際に高い要求を課す、というのも、このコーティングは、通常、一方では多孔性でそれと同時に脆性であるセラミック構造を持つためである。
【0006】
対応する部材への高温保護層の接合は、多くの場合に、いわゆる付着促進層の使用によって改善される。それによって、良好な機械的特性と化学的及び熱的安定性とを兼ね備える多層系が生じる。
【0007】
付着促進層は、一般的に、保護すべき部材への機能層本体(遮熱、腐食保護、浸食保護など)の優れた接合を可能にする特別な表面構造を有する。上記機能層は大概は多孔性であるために、付着促進層は、高温操業の時の攻撃性雰囲気に対する基材(部材)のための保護機能も有する。この際、典型的には、安定した保護作用性の酸化物層、例えばAl
2O
3、Cr
2O
3またはSiO
2が境界面上に形成し、これらは、通常、更なる酸化攻撃を遅くするものであり、熱成長酸化物(TGO)と称される。
【0008】
しかし、通常は臨界数の熱サイクルの後に形成するいわゆる臨界的酸化物層厚に達した後に、熱応力、浸食及び/または腐食によって、多くの場合に、(特に付着促進層の保護作用性酸化物層と高温保護層との間の境界面上にまたはその直ぐ上に)亀裂形成が発生する。これは、他の影響の他に、引き続いて高温保護層の機能不全を招くのが通常である。このコーティング損失効果は、破砕(Spallation)とも称される。この際、熱成長する酸化物は、剥離する前に、典型的には1〜10μm、または希なケースではそれ以上の層厚に達する。
【0009】
保護機能の長期的な保証のためには、酸化物層を形成することを可能とする元素の十分に大きなリザーバ(Reservoir)が粘着促進層中に存在する必要があり、これは、特に、このような付着促進層には最小層厚が必要であることを意味する。既知の付着促進層は、典型的には50μmと200μmとの間の層厚を有する。
【0010】
遮熱層の寿命を長くするための方策が過去に既に提案された。
【0011】
例えば、EUとUSAとの共同のハイパーコートプロジェクトから、ガスタービンエンジンに使用するための遮熱層系が知られており、そこでは、遮熱層の材料と付着促進層の熱成長酸化物(TGO)との間に、イットリウム安定化二酸化ジルコニウム(YSZ)からなる50μm厚の絶縁層が追加的に使用されており、これは、プラズマ溶射及び電子線蒸着(electron beam physical vapour deposition,EBPVD)などの方法によって施与することができる。
【0012】
他の方策は、二層型の付着促進層の使用を企図している。Quadakkersら(非特許文献1)は、例えば、高速フレーム溶射(高速オキシ燃料、HVOF)を介して基材上に第一の層を形成し、そして大気プラズマ溶射(空気または大気プラズマ溶射、APS)を介して同じ材料からなる第二のより薄い層(フラッシュコート)を上記第一の層上に施与することを提案している。上側のフラッシュコート層は、第一の付着促進層よりも大きな粗さを有し、そして第一の層と比べて、2〜3倍長い寿命をもたらす。この際、上側の付着促進層と下側の付着促進層との層厚の比率は、通常、1:5と1:3との間である。
【0013】
EP1076727B1(特許文献1)からは、二層型の付着促進層が知られており、この場合、最大55μmのサイズの第一の材料からなる第一の層を、高速フレーム溶射(高速オキシ−燃料、HVOF)を介してスーパーアロイ基材上に施与し、そしてこの上に、35μmと110μmとの間のサイズの第二の材料からなる第二の層を、大気プラズマ溶射(空気または大気プラズマ溶射、APS)を介して施与する。それぞれ施与の後に、層の緻密化のための熱処理を行う。第一及び第二の材料は同じ材料、特にMCrAlまたはMCrAlY(M=鉄、ニッケル及び/またはコバルト)またはこれらの混合物を含むことができる。
【0014】
更に、二層型付着促進層は、US8497028B1(特許文献2)からも知られている。これは、基材上に配置された第一の耐酸化層と、その上に配置された第二の耐破砕層を含む。上記耐酸化層はMCrAlY、例えば20〜24重量%のコバルト、14〜18重量%のクロム、11〜13.5重量%のアルミニウム、0.1〜0.4重量%のハフニウム、0.4〜0.8のイットリウム、0.4〜0.7重量%のケイ素及び残部のニッケルを含むMCrAlYを含むことができる。上記の耐破砕層は、特に、熱成長酸化物層の形成に適しており、そして例えば、10〜13重量%のコバルト、5.5〜7.0重量%のクロム、3.0〜6.0重量%のタンタル、3.0〜5.0重量%のタングステン、1.1〜1.7重量%のモリブデン、9.0〜11重量%のアルミニウム、0.2〜0.6重量%のハフニウム、0.3〜0.7重量%のイットリウム、0.1〜0.3重量%のケイ素、0.1〜0.2重量%のジルコニウム及び残部のニッケルからなる組成を有する。代替的に、耐破砕層は、例えば、11〜14重量%のコバルト、11〜14重量%のクロム、7.5〜9.5重量%のアルミニウム、0.1〜0.5重量%のハフニウム、0.2〜0.6重量%のイットリウム、0.1〜0.3重量%のケイ素、0.1〜0.2重量%のジルコニウム及び残部のニッケルからなる組成を有することもできる。
【0015】
酸化物分散強化型スーパーアロイ(oxide dispersion−strengthened,ODS)を含む付着促進層の使用も同様に既に議論されている。このような材料は、例えば、ガスタービンの温度負荷が最大のブレードに使用される。多くの場合に使用されるODS材料は特にニッケル合金である。しかし、特定の用途のためには、鉄−アルミニウム合金または貴金属合金がODS材料として使用される。
【0016】
多くの場合に高温負荷部材の耐クリープ性の向上のために使用される、酸化物によって粒子強化された粉末冶金により製造された合金をODS合金と言う。ODS合金は、金属製基礎材料から本質的になり、一般的に、金属製高温合金、例えば鉄−アルミニウム合金、鉄−クロム合金、鉄−クロム−アルミニウム合金、ニッケル−クロム合金またはニッケル−アルミネートから本質的になる。その中には、酸化イットリウム(Y
2O
3)または酸化アルミニウム(Al
2O
3)などの安定性の高い酸化物が原子状に微細に分布した状態で組み入れられている。この際、酸化物粒子は、通常は5nmと50nmとの間の大きさを持つ。ODS合金の製造は、一般的に、ボールミル中で対応する粉末を機械的に合金化することにより行われる。
【0017】
Seilerら(非特許文献2)は、それぞれ付着促進層、機能層本体としての遮熱層(TBC)、並びに前記付着促進層と前記機能層との間の熱成長酸化物層(TGO)を含む典型的な遮熱層系を試験している。この際、このコーティング系の寿命は、機能層の焼結特性、熱成長酸化物層の成長速度、境界面の粗さ及び関与する層の熱膨張係数にだけでなく、付着促進層のクリープ特性にも依存することが分かる。OSD合金によってもたらされるようなゆっくりとしたクリープ特性(高い耐クリープ性)を有する付着促進層が、一方では寿命を短くし、しかし他方で、遮熱層内の応力も減少させ得ることが結果として確認された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】EP1076727B1
【特許文献2】US8497028B1
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】W.J. Quadakkers,D.Naumeko,P.Mor,W.Nowak, and L. Singheiser,“Effect of bondcoat roughness on lifetime of APS−TBC−systems in dry and wet gases”,“Thermal Barrier Coatings IV”,U.Schulz,German Aerospace Center;M.Maloney,Pratt & Whitney;R.Darolia,GE Aviation(retired)Eds,ECI Symposium Series,(2015)
【非特許文献2】P. Seiler,M.Baeker,and J.Roesler,“Variation of Creep Properties and interfacial Roughness in Thermal Barrier Coating Systems”,Advanced Ceramic Coatings and Materials for Extreme Environments(35th International Conference and Exposition on Advanced Ceramics and Composites/ ICACC’11),Daytona Beach,32:129-136,2011,DOI:10.1002/9781118095232.ch11
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の課題は、部材への格別良好な接合と、それに加えて、これまで既知のものよりも長い寿命を保証する、温度が負荷される部材のための新規の低コストな保護層系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の上記課題は、主請求項の特徴を備えた高温保護層の接合のための新規の付着促進層によって、第一の副請求項に従う高温保護層系によって、並びに更に別の副請求項に従う特徴を備えるこのような付着促進層の製造方法によって解消される。
【0022】
該新規付着促進層、該高温保護層系、及び該製造方法の有利な形態は、各々それを引用する請求項に記載されている。
【0023】
本発明の枠内において、高温保護層または機能層のための付着促進層のテーマについての従来の技術水準の欠点が、新規の二層型付着促進層によって克服し得ることが見出された。この際、基本的な思想は、第一の比較的厚手の付着促進層からなる新規の付着促進層が、酸化物層の形成のための及び基材上への配置のためのリザーバとして企図され、かつ前記第一の層上に配置されており及び前記第一の層とは異なる組成を有する、第二の、有利には比較的薄手の付着促進層が形成される点にある。
【0024】
付着促進層の熱成長酸化層(TGO)の品質並びに機能層とTGO層との間の境界層の挙動が、機能層と接触している、付着促進層の一番上のレイヤーによって主に決定されることが判明した。
【0025】
本発明はここから出発している。
【0026】
基材との接合が予定される、本発明による付着促進層の下側の第一の層は、典型的な付着促進材料、例えば金属Mとしてコバルト、ニッケル及び/または鉄を有する従来既知のMCrAlY材料を含む。第一の層に適した材料は、例えばNiCoCrAlY材料であり、例えばCo27Cr9Al0.5Y、Ni30Cr11Al0.5Y、Co32Ni21Cr8Al0.5Y、Ni23Co18Cr12.5Al0.5Yまたは更にはNi20Co18Cr12.5Al0.6Yである。
【0027】
これに対し、高温保護層の接合が予定されている、本発明による付着促進層の上側の第二の層は、特に耐酸化性で、その上、耐クリープ性の材料、すなわち遅いクリープ速度を持つ材料を含む。このためには、特に、酸化物分散強化型(ODS)合金、例えば金属Mとしてコバルト、ニッケル及び/または鉄を有するMCrAl材料またはMCrAlY材料からなるODS合金が適している。この際、安定した微細な酸化物分散物としては、特に酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムもしくは酸化ハフニウム、または更には希土類金属酸化物が考慮される。該酸化物分散物は、例えば高エネルギー磨砕機を用いて、機械的合金化によってマトリックス合金中に予め組み入れることができる。
【0028】
第二の付着促進層のために使用されるODS材料は、通常は、熱成長酸化物層(TGO)の成長速度にプラスの影響を持ち、すなわち成長速度が例えば大きく低下し、これは、通常は、亀裂が形成するまでの付着促進層のより長い寿命をもたらす。
【0029】
このためには、該第二の層は、少なくとも0.01重量%から最大で50重量%の重量割合、好ましくは0.1〜5重量%の重量割合で酸化物分散物を含むのがよい。
【0030】
このような本発明による付着促進層が、部材/付着促進層/高温保護層の系に使用される場合には、これは、通常は、剥がれるまでの施与された該高温保護層のより長い寿命をももたらし、それ故、保護すべき部材の長められた寿命をもたらす。
【0031】
加えて、本発明による付着促進層は、付着促進層自体中でも高温保護層中においても、応力状態にもしばしば有利に影響を与える。それ故、本発明による二層型付着促進層を使用することによって、部材/付着促進層/高温保護層の系を明らかに改善することができる。
【0032】
更に、本発明による二層型付着促進層は、セラミック製繊維複合材料のための保護層でも使用することができる。この際、セラミック製の非酸化物系基材(繊維複合材料)としては、特にC/C、C/SiC、SiC/C−SiCまたはSiC/SiCを使用でき、この際、通常は、これらの複合体セラミックは、「繊維タイプ/マトリックスタイプ」の形に略される。それで例えば、炭素強化炭素については「C/C」、炭素強化炭化ケイ素については「C/SiC」と表す。セラミック製繊維複合材料では、多くの場合に、Siが付着促進材料として使用される。この際、本発明による付着促進層は、基材上に配置される第一の溶射された付着促進層を含み、該付着促進層は、例えばSiまたはSi合金、例えばMoSi
2、すなわち典型的にはSiO
2形成材を含む。
【0033】
該第一層に使用される、セラミック製繊維複合材料のための付着促進材料も同様に、酸化物分散物によってその特性を改良でき、そしてODS材料(Si合金)からなる第二の薄い溶射されたレイヤーとして、前記第一層の上に配置される。このためには、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムもしくは酸化ハフニウム、または更には希土類金属酸化物も、安定した微細な酸化物分散物として使用できる
セラミック製繊維複合材料のための保護層本体としては、特に、耐腐食性の材料、例えばYb
2Si
2O
7などの希土類金属ケイ酸塩からできた溶射した保護層上面レイヤーが考慮される。
【0034】
第二の上側の付着促進層のための使用されるODS材料は、一般的に、下側の第一の層のために使用される付着促進材料よりも高価である。
【0035】
それ故、本発明の有利な態様の一つでは、本発明による付着促進層において、リザーバ層としての第一の比較的厚手の層と、第二の比較的薄手の層との組み合わせを設けて、それよって有利に非常に費用効果を高めることが提案される。
【0036】
好ましくは、ODS材料を含む上側の第二の層は、下側の第一の層と比べて厚さはその半分だけである。本発明の特定の実施形態の一つでは、ODS材料を含む上側の第二の層は、下側の第一の層の層厚のわずか30%、好ましくはそれどころか、下側の第一の層の層厚のわずか20%以下である。
【0037】
本発明による二層型付着促進層は、全体として、50μmと300μmとの間、好ましくは100μmと200μmとの間の層厚を有する。この際、ODS材料を含む第二の層は、少なくとも、10μmの層厚を有するのがよい。
【0038】
第一の付着促進層を例えば部材上に施与するための施与方法としては、特に、溶射法が適しており、例えば高速フレーム溶射法、酸素フレーム溶射法または空気フレーム溶射法(HVOF、英語ではHigh−Velocity−Oxygen−Fuel、またはHVAF、 High−Velocity−Air−Fuel)、真空プラズマ溶射法(英語ではVacuum Plasma Spray)、コールドスプレー法または大気プラズマ溶射法(英語ではatmospheric Plasma Spraying)が適している。
【0039】
前記第一の付着促進層上に第二の上側の付着促進層を施与するための施与方法としても同様に、全ての慣用の方法、例えば高速フレーム溶射法(HVOF、英語ではHigh−Velocity−Oxygen−Fuel、またはHVAF、High−Velocity−Air−Fuel)、真空プラズマ溶射法(英語ではVacuum Plasma Spray)、コールドスプレー法または大気プラズマ溶射法(英語ではatmospheric Plasma Spraying)が適している。
【0040】
一般的に、第二の上側の付着促進層を施与する場合は、第一の層の場合と同じ方法を使用できる。しかし、より高い耐クリープ性の故に、より高い運動エネルギーを伴う方法、例えばコールドガス、HVOFまたはHOAF溶射法が有利であり得る。
【0041】
纏めると、本発明は、改善された付着促進層を提供するものであって、ここで、第一の付着促進層が第一の材料から製造され、この付着促進材料は、特に酸化物分散物の導入によって強化及び改良され、そしてこの改良された材料は、薄い第二の層として、先に堆積された第一の付着促進層上に追加的に施与されるものである。
【0042】
それ故、前記の第一及び第二の付着促進層は、原則的に、同じ基礎材料を含むことができ、但しこの際、第二層のための材料中では、追加的に安定した酸化物、例えば酸化イットリウムまたは酸化ジルコニウムが、酸化物分散物として原子状に非常に微細に分配した状態で組み込まれており、及びそれ故、前記材料はODS層として存在している。これは格別有利である、というのも相互拡散を遅延させるからである。しかし、様々な組み合わせ、NiAlを含む第一層と、ODS−NiCoCrAlY材料を含む第二層との組み合わせ、または純粋なSiを含む第一層と、ODS−MoSi
2材料を含む第二層との組み合わせも可能である。
【0043】
本発明による付着促進層を介して金属製またはセラミック製部材上に有利に接合させることができる高温保護層としては、特に遮熱層(TBC)及び耐環境性(熱)保護層(ETBC,英語ではenvironmental and thermal barrier coating)などが挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下では、本発明の二つの典型的な実施形態及び一つの実施例を、図面及び表によっても更に詳しく説明するが、本発明の幅の広い保護範囲はそれによって制限されることはない。
【0045】
1.実施形態
次の構成分を含む遮熱層系:
−基材(部材)としてのスーパーアロイ、
−その上に配置された、本発明による二層型付着促進層、
−並びに、上記付着防止層上に任意選択的に配置された機能層本体。
【0046】
基材としては、ニッケルベースの合金を使用する。この場合、本発明による付着促進層は、前記基材料に配置されかつ真空プラズマ溶射法(英語ではVacuum Plasma Spray)を介して施与された、付着促進層としての第一の溶射されたNi23Co18Cr12Al0.5Y層と、その上に配置された第二の比較的薄い同様に溶射された、1重量%のAl
2O
3分散物を含むODS−MCrAlY層とを含む。上記酸化物分散物は、第一層のために使用した上記MCrAlY材料中に予め機械的合金化することによって組み入れた。このODS−MCrAlY層は、同様に、VPS法を介して施与される。任意選択的に同様に多層系に設計できる機能層としては、例えば遮熱層(WDS)、腐食保護層または耐環境性(熱)保護層(ETBC)などが考慮される。
【0047】
2.実施形態
次の構成分を含むセラミックス製複合材料:
−特に非酸化物系の基材、
−その上に配置された、本発明による二層型付着促進層、
−並びに、任意選択的に前記付着促進層上に配置された機能層本体。
【0048】
この際、セラミック製非酸化物系基材としては、特にC/C、C/SiC、SiC/C−SiC、SiC/SiCまたはAl
2O
3/Al
2O
3を使用でき、この際、通常は、これらの複合体セラミックは、「繊維タイプ/マトリックスタイプ」の形に略される。
【0049】
この場合、その上に配置された上記付着促進層は、前記基材上に配置された、純粋なSiを含む第一の溶射された付着促進層と、その上に配置された第二の、ODS材料(この場合、1重量%のY
2O
3を含むSi)からなる溶射された薄いレイヤーとを含む。
【0050】
上記セラミック製繊維複合材料のための保護層としては、特に、耐腐食性の材料(Yb
2Si
2O
7などの希土類金属ケイ酸塩)からできた溶射した保護層上面レイヤーなどが考慮される。
【0051】
この場合、前記第一の付着促進層の層厚は、約50μmであり、そして第二のODS強化型層の層厚は約20μmである。その上に配置されたYb
2Si
2O
7含有高温保護層は、約200μmの層厚を有する。
【実施例】
【0052】
3.実施例
以下に、酸化物分散強化型第二付着促進層を備えるTBC系の製造のための製造手順を説明する。
【0053】
前記第一付着促進層(1.HVS)のための出発粉末としては、アムドライ(Amdry)9954((Co32Ni21Cr8Al0.5Y)、−63+11μm、スイス連邦ヴォーレン在のスルザーメトコ社)を使用した。
【0054】
第二の付着促進層(2.HVS)のためには、酸化物分散強化型(ODS)粉末を使用した。これは、高エネルギーボールミルのシモロイヤー(Simoloyer)CMO1(ドイツ連邦共和国ウェンデン在のZoz GmbH社)を用いて、アムドライ995C(Co32Ni21Cr8Al0.5Y、−90+45μm、スイス連邦ヴォーレン在のスルザーメトコ社)を、2重量%のα−Al
2O
3(マルトキシド(Martoxid)MR70、ドイツ連邦共和国ベルクハイム在のマルチンスベルク社)と混合し、粉砕し、最後に機械的に合金化することによって製造した。
【0055】
粉砕プロセスの制御のために、粉砕助剤としての0.5重量%のステアリン酸(リグアシッド(Ligacid)10−12、C
18H
36O
2、ドイツ連邦共和国バート・ミュンスターアイフェル在のピーター・グレーベンGmbH & Co. KG)を加えた。球体:粉末比としては10:1を選択し、そして粉砕工程は、1400rpmで、全容積が0.5Lの冷却した粉砕室内においてアルゴン雰囲気下に行った。
【0056】
この工程は、酸化物分散物が金属製マトリック中で均一な状態に分布しそして粒子が不規則な形状を有するようになるまで、6時間行った。
図1には、酸化物分散物が埋設された、(a)10μmの尺度及び(b)50μmの尺度での上記ODS粉末の横断面の光学顕微鏡写真を示す。
図1(a)において、灰色の組織中の黒点は微細に分布した酸化物分散物を示し、他方、
図1(b)は、ODS粉末の不規則な形状を映している。
【0057】
次いで、ODS粉末を<56μmのサイズ範囲に篩い分けした。第一付着促進層及び第二付着促進層の施与は、それぞれ、インコネル(Inconel)IN 738基材上への真空プラズマ溶射(VPS)により行った。
【0058】
遮熱層(WDS)としては、8YSZを大気プラズマ溶射(APS)により施与した。
【0059】
前記の真空プラズマ溶射及び溶射法のパラメータを以下の表に記載する:
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
上記の施与の後に、試料を以下のパラメータに従い熱処理した。
【0062】
【表3】
【0063】
上記熱処理の後に、試料を勾配試験において、機能しなくなるまで周期的に1400℃の温度に曝し(第一の付着促進層の温度は約1100℃)、この際、300秒間毎に120秒間室温に冷却した。
【0064】
図2(a)のグラフに示すように、本発明による第二のODS付着促進層を備えたこの実施例による試料は、1445サイクルで、ODS付着促進層を備えていない遮熱層系と比べて比較的長くかつ純粋なODS付着促進層を備えた遮熱層系と同等の寿命を有する。この際、ODS付着促進層を備えない試料は、MCrAlYでできた典型的な付着促進層を備え、VPSだけでなく、HVOFでも施与した。純粋なODS付着促進層を備えた試料の場合でも、これらは、VPSだけでなく、HVOFでも施与した。
【0065】
この実施例に従う遮熱層系の微細構造は、
図2(b)に示されるように、第一及び第二付着促進層の他に、更に、この酸化試験の後でも、熱成長酸化物層(TGO)の形成のためのリザーバとして役立つβ相が第一の付着促進層中になおも存在していたことを示す。
【0066】
図3には、従来の技術水準と比較した本発明による付着促進層の原理的な構造を示す。[明細書で引用した文献]
[1] W.J. Quadakkers,D.Naumeko,P.Mor,W.Nowak, and L. Singheiser,“Effect of bondcoat roughness on lifetime of APS−TBC−systems in dry and wet gases”,“Thermal Barrier Coatings IV”,U.Schulz,German Aerospace Center;M.Maloney,Pratt & Whitney;R.Darolia,GE Aviation(retired)Eds,ECI Symposium Series,(2015)
[2] P. Seiler,M.Baeker,and J.Roesler,“Variation of Creep Properties and interfacial Roughness in Thermal Barrier Coating Systems”,Advanced Ceramic Coatings and Materials for Extreme Environments(35th International Conference and Exposition on Advanced Ceramics and Composites/ ICACC’11),Daytona Beach,32:129-136,2011,DOI:10.1002/9781118095232.ch11
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】酸化物分散物が埋設された、(a)10μm及び(b)50μmの尺度の尺度での上記ODS粉末の横断面の光学顕微鏡写真。
【
図3a】従来の技術水準と比較した本発明による付着促進層の原理的な構造
【
図3b】従来の技術水準と比較した本発明による付着促進層の原理的な構造
【手続補正書】
【提出日】2021年9月22日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0066】
図3には、従来の技術水準と比較した本発明による付着促進層の原理的な構造を示す。[明細書で引用した文献]
[1] W.J. Quadakkers,D.Naumeko,P.Mor,W.Nowak, and L. Singheiser,“Effect of bondcoat roughness on lifetime of APS−TBC−systems in dry and wet gases”,“Thermal Barrier Coatings IV”,U.Schulz,German Aerospace Center;M.Maloney,Pratt & Whitney;R.Darolia,GE Aviation(retired)Eds,ECI Symposium Series,(2015)
[2] P. Seiler,M.Baeker,and J.Roesler,“Variation of Creep Properties and interfacial Roughness in Thermal Barrier Coating Systems”,Advanced Ceramic Coatings and Materials for Extreme Environments(35th International Conference and Exposition on Advanced Ceramics and Composites/ ICACC’11),Daytona Beach,32:129−136,2011,DOI:10.1002/9781118095232.ch11
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1.
基材上に高温保護層を接合するための付着促進層であって、
−基材上に施与することを意図した第一の付着促進材料からできた第一の層、
−高温保護層を接合することを意図した、酸化物分散物が追加的に組み入れられた第二の付着促進材料を含む、上記第一層の上に配置された第二の層、
を特徴とする付着促進層。
2.
前記第二層が、0.01〜50重量%の割合で、特に0.1〜5重量%の割合で酸化物分散物を含む、上記1.に記載の付着促進層。
3.
前記第一及び/または第二付着促進材料が、MCrAlY(M=Co、Ni及び/またはFe)を含む、上記1.または2.に記載の付着促進層。
4.
前記第一及び/または第二付着促進材料が、SiまたはSi合金を含む、上記1.または2.に記載の付着促進層。
5.
前記第一及び第二付着促進材料が同一である、上記1.〜3.のいずれか一つに記載の付着促進層。
6.
前記第二層が、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウムまたは希土類金属酸化物の分散物を含む、上記1.〜5.のいずれか一つに記載の付着促進層。
7.
前記第一層が前記第二層よりも厚く、特に前記第一層が、前記第二層の少なくとも二倍厚い、上記1.〜6.のいずれか一つに記載の付着促進層。
8.
全層厚が50μmと300μmとの間、好ましくは100μmと200μmとの間であり、ここで第二層が少なくとも50μmの層厚を有する、上記1.〜7.のいずれか一つに記載の付着促進層。
9.
基材、その上に配置された上記1.〜8.のいずれか一つに記載の付着促進層、及びその上に配置された高温保護層を含む、高温保護層系。
10.
基材として、ニッケルもしくはコバルトベースのスーパーアロイまたはC/C、C/SiC、SiC/C−SiCもしくはSiC/SiC含有セラミック製複合材料を含む基材を有する、上記9.に記載の高温保護層系。
11.
基材に高温保護層を接合するための付着促進層を製造する方法であって、次のステップ
−前記基材上に、第一の付着促進材料を含む第一の層を施与するステップ、
−前記第一層の上に、酸化物分散物が追加的に組み入れられた第二の付着促進材料を含む第二の層を施与するステップ、
を含む前記方法。
12.
前記ODS合金のための材料として、安定した酸化物分散物が追加的に組み入れられた第一の付着促進材料が使用される、上記11.に記載の方法。
13.
第二層のために、0.01〜50重量%の割合で、特に0.1〜5重量%の割合で安定した酸化物分散物を含む付着促進材料が使用される、上記11.または12.に記載の方法。
14.
第一及び/または第二付着促進材料として、SiかまたはSi合金かまたはMCrAlY(M=Co、NiまたはFe)のいずれかが使用される、上記11.〜13.のいずれか一つに記載の方法。
15.
追加的な安定した酸化物分散物として、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウムまたは希土類金属酸化物の分散物が使用される、請求項11.〜14.のいずれか一つに記載の方法。
16.
前記層のうちの少なくとも一つが、高速フレーム溶射法、真空プラズマ溶射法、コールドガススプレー法または大気プラズマ溶射法により施与される、請求項11.〜15.のいずれか一つに記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に高温保護層を接合するための付着促進層であって、
−基材上に施与することを意図した第一の付着促進材料からできた第一の層、
−高温保護層を接合することを意図した、酸化物分散物が追加的に組み入れられた第二の付着促進材料を含む、上記第一層の上に配置された第二の層、
を特徴とし、但し、前記第一の層が前記第二の層よりも厚く、及び前記第二層が、0.01〜5重量%の割合で酸化物分散物を含む、付着促進層。
【請求項2】
酸化物分散物が、5nmと50nmとの間の粒度を有する酸化物粒子から構成される、請求項1に記載の付着促進層。
【請求項3】
前記第一及び/または第二付着促進材料が、MCrAlY(M=Co、Ni及び/またはFe)を含む、請求項1または2に記載の付着促進層。
【請求項4】
前記第一及び/または第二付着促進材料が、SiまたはSi合金を含む、請求項1または2に記載の付着促進層。
【請求項5】
前記第一及び第二付着促進材料が同一である、請求項1〜3のいずれか一つに記載の付着促進層。
【請求項6】
前記第二層が、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウムまたは希土類金属酸化物の分散物を含む、請求項1〜5のいずれか一つに記載の付着促進層。
【請求項7】
前記第一層が、前記第二層の少なくとも二倍厚い、請求項1〜6のいずれか一つに記載の付着促進層。
【請求項8】
全層厚が50μmと300μmとの間であり、ここで第二層が少なくとも50μmの層厚を有する、請求項1〜7のいずれか一つに記載の付着促進層。
【請求項9】
全層厚が100μmと200μmとの間である、請求項8に記載の付着促進層。
【請求項10】
基材、その上に配置された請求項1〜9のいずれか一つに記載の付着促進層、及びその上に配置された高温保護層を含む、高温保護層系。
【請求項11】
基材として、ニッケルもしくはコバルトベースのスーパーアロイまたはC/C、C/SiC、SiC/C−SiCもしくはSiC/SiC含有セラミック製複合材料を含む基材を有する、請求項10に記載の高温保護層系。
【請求項12】
基材に高温保護層を接合するための付着促進層を製造する方法であって、次のステップ
−前記基材上に、第一の付着促進材料を含む第一の層を施与するステップ、
−前記第一層の上に、安定した酸化物分散物が追加的に組み入れられた第二の付着促進材料を含む第二の層を施与するステップ、
を含み、但し、前記第一の層が前記第二の層よりも厚く、及び第二層のために、0.01〜5重量%の割合で安定した酸化物分散物を含む付着促進材料が使用される、前記方法。
【請求項13】
前記第二層のための材料として、前記第一の付着促進材料と同じ基礎材料を含むが、安定した酸化物分散物が追加的に組み入れられている材料が使用される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第一及び/または第二付着促進材料として、SiかまたはSi合金かまたはMCrAlY(M=Co、NiまたはFe)のいずれかが使用される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
追加的な安定した酸化物分散物として、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウムまたは希土類金属酸化物の分散物が使用される、請求項12〜14のいずれか一つに記載の方法。
【請求項16】
前記層のうちの少なくとも一つが、高速フレーム溶射法、真空プラズマ溶射法、コールドガススプレー法または大気プラズマ溶射法により施与される、請求項12〜15のいずれか一つに記載の方法。
【請求項17】
酸化物分散物が、5nmと50nmとの間の粒度を有する酸化物粒子から構成される、請求項12〜16のいずれか一つに記載の方法。
【外国語明細書】