【解決手段】 被乾燥物を撹拌及び搬送しながら乾燥させる乾燥装置10は、回転することで被乾燥物を撹拌、搬送する複数の撹拌シャフト21と、複数の撹拌シャフト21の各々について設けられ、対応する撹拌シャフト21を回転させる直交軸型かつ直結型の複数の駆動装置41とを備えた1軸1駆動方式を採用する。
【背景技術】
【0002】
従来より、汚泥等の被乾燥物を撹拌しながら搬送して乾燥させる乾燥装置が知られている。この種の乾燥装置では、ケーシングによって乾燥室が形成され、乾燥室内に、被乾燥物の撹拌及び搬送のために、長手方向に間隔を空けて複数のパドル(羽根)が設けられたシャフト(撹拌シャフト)が利用される。乾燥室内部には乾燥空気が供給され、撹拌シャフトは中空に形成されて内部に熱媒が流通される。このような撹拌シャフトを回転させることで、乾燥室の一端側に投入された被乾燥物は、回転するパドルによって他端側に向けて撹拌されながら搬送される過程で乾燥する。
【0003】
乾燥室では、2つの撹拌シャフトを互いのパドルがオーバラップするように併設することで、撹拌効果を高めている。また、撹拌シャフトを3つ以上設けることも提案されている(例えば、特許文献1)。すなわち、乾燥装置は、複数の撹拌シャフトを併設した構成を有している。
【0004】
図8は、撹拌シャフトを備えた従来の乾燥装置を撹拌シャフトの軸方向から見た図であり、
図9は、撹拌シャフトを備えた従来の乾燥装置の部分的な平面図である。
図8、
図9に示すように、2つの乾燥装置102が1つの乾燥装置ユニット101として構成されており、各乾燥装置102には、2つの撹拌シャフト103が設けられている。
【0005】
各撹拌シャフト103は、乾燥装置102のケーシングを貫通して、ケーシングの外まで延びている。
図8において、乾燥装置ユニット101の左側には左側の乾燥装置102の撹拌シャフト103を回転駆動するための駆動装置であるモータ104が設けられており、乾燥装置ユニット101の右側には右側の乾燥装置102の撹拌シャフト103を回転駆動するためのモータ104が設けられている。このように、
図8及び
図9に示す乾燥装置ユニット101は、4つの撹拌シャフト103を2つのモータ104で駆動する4軸2駆動方式である。
【0006】
モータ104と1つの撹拌シャフト(駆動側撹拌シャフト)103との間はチェーン105及びスプロケット106で連結されており、モータ104の回転が1つの撹拌シャフト103に伝達する。他方の撹拌シャフト(従動側撹拌シャフト)103は、ギアボックス107内のギアによって従動側撹拌シャフト103と連結しており、駆動側撹拌シャフト103の回転に従動して回転する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の乾燥装置では、
図8に示すように、1つのモータ104で2つの撹拌シャフト103を回転駆動するため、モータ104の動力は2つの撹拌シャフト103を駆動するのに必要な大きさとする必要がある。このとき、各撹拌シャフト103は、1つの撹拌シャフト103にモータ104のすべての動力がかかった場合にも壊れない強度にする必要がある。
【0009】
図10は、従来の乾燥装置ユニットを並べた状態を示す平面図である。従来の乾燥装置では、モータ104が各乾燥装置102の幅方向の外側に配置されるので、隣の乾燥装置102との間にモータ104を設置するためのスペースS3を確保する必要がある。そのため、限られた面積内に設置できる乾燥装置の数が制限され、あるいは、複数の乾燥装置を設置するのに大きな設置スペースを要することになる。
【0010】
さらに、撹拌シャフト103と乾燥室を形成するケーシングとの間はシール108で密閉される。このシール108を定期的にメンテナンスする必要があるが、
図9に示すように、2つの撹拌シャフト103の1つを駆動側撹拌シャフトとし、もう1つを従動側撹拌シャフトとして、1つのモータ104によって駆動側撹拌シャフト103を回転駆動する場合には、駆動側撹拌シャフト103と従動側撹拌シャフト103との間にギアボックス107が必要となって、作業員が撹拌シャフト103とケーシング101との間の部分に近寄ることが困難になり、シール108のメンテナンスが困難になる。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、撹拌シャフトに求められる強度を小さくすることである。本発明の他の目的は、乾燥装置の設置スペースを小さくすることである。本発明のさらに他の目的は、撹拌シャフトのメンテナンスをしやすくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様の乾燥
システムは、被乾燥物を撹拌及び搬送しながら乾燥させる乾燥装置であって、回転することで被乾燥物を撹拌、搬送する
少なくとも4本の撹拌シャフトと、前記
少なくとも4本の撹拌シャフトの各々
の一端に設けられ、対応する撹拌シャフトを回転させる
少なくとも4つの
上下方向に延びる直交軸型のギアモータとを備えた構成を有している。
【0013】
この構成により、1つの撹拌シャフトについて当該撹拌シャフトを回転駆動する1つの駆動装置
としてのギアモータが設けられるため(1軸1駆動方式)、1つの撹拌シャフトに複数の撹拌シャフトを回転駆動するための動力がかかることがなく、各撹拌シャフトの強度を強い動力に耐えられるように強くする必要がなくなる。また、複数の撹拌シャフトにおいて、他の撹拌シャフト(駆動側撹拌シャフト)に従動する撹拌シャフト(従動側撹拌シャフト)がないため、駆動側撹拌シャフトと従動側撹拌シャフトとを連結するギアが不要となり、乾燥
システムのメンテナンスが容易になる。
さらに、上下方向に延びる直交軸型のギアモータによって撹拌シャフトを回転させるので、乾燥システムの幅方向(横方向)の外側に駆動装置がはみ出ることがなく、乾燥システムの設置スペースを小さくできる。
【0014】
上記の乾燥
システムにおいて、前記
少なくとも4つの
ギアモータが互いに独立した回転数で前記
少なくとも4つの撹拌シャフトを回転させてよい。
【0015】
この構成により、複数の撹拌シャフトについて設けられた複数の
ギアモータについて回転数を同期させるための調整が必要なくなる。
【0016】
上記の乾燥装置において、前記
少なくとも4本の撹拌シャフトは、互いに平行に配置されてよく、前記
少なくとも4本の撹拌シャフトの各々は、パドルを備えていてよく、前記パドルの先端は、隣接する撹拌シャフトの前記パドルの間に入り込むように配置されてよい。
【0017】
この構成により、隣り合う撹拌シャフトの回転数が異なる場合には、互いの撹拌シャフトに付着する被乾燥物を剥離させる効果を期待できる。
【0018】
上記の乾燥
システムにおいて、前記
少なくとも4つのギアモータは、前記撹拌シャフトの一端に直結する直結型のギアモータであってよい。
【0019】
この構成により、駆動装置が撹拌シャフトに直結されるので、チェーンやベルト等を介して乾燥装置の幅方向(横方向)の外側に駆動装置を置く必要がなく、乾燥装置の設置スペースを小さくできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、1つの撹拌シャフトについて当該撹拌シャフトを回転駆動する1つの駆動装置が設けられるため(1軸1駆動方式)、1つの撹拌シャフトに複数の撹拌シャフトを回転駆動するための動力がかかることがなく、各撹拌シャフトの強度を強い動力に耐えられるように強くする必要がなくなる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態の乾燥装置及びそれを含む乾燥システムについて、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する場合の一例を示すものであって、本発明を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本発明の実施にあたっては、実施の形態に応じた具体的構成が適宜採用されてよい。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態の乾燥装置を含む乾燥システムの全体構成を示す概略図である。乾燥システムは、乾燥装置を備えている。乾燥システム及び乾燥装置によって乾燥される被乾燥物は特に限定されないが、本実施の形態は、被乾燥物が汚泥であり、乾燥システム及び乾燥装置が汚泥乾燥システム100及び汚泥乾燥装置10として応用される場合について説明する。
【0024】
本実施の形態の汚泥乾燥装置10で乾燥される汚泥は、脱水処理を経た後に、含水率約80%になった脱水汚泥である。脱水汚泥は、汚泥乾燥装置10で乾燥されることにより、含水率が30%程度まで低下した乾燥汚泥となる。なお、汚泥乾燥システム100は、下水混合生汚泥、下水消化汚泥、有機汚泥、無機汚泥、その他の汚泥等の各種の汚泥を乾燥でき、下水処理場や各種の汚泥処理場に適用可能である。また、汚泥乾燥装置10は、含水率を30%程度にまで低下させなければならないものではなく、各用途に応じて、処理対象となる汚泥の含水率を低下させるものであればよい。さらに、汚泥乾燥装置10にて処理される汚泥も含水率80%の汚泥に限られず、含水率がそれより高い汚泥、及び含水率がそれより低い汚泥も、汚泥乾燥装置10の処理対象となり得る。
【0025】
汚泥乾燥システム100は、汚泥乾燥装置10と、サイクロン81と、減湿塔82と、減湿塔循環ポンプ83と、循環ファン84と、ミストセパレータ85と、予熱器86とを備えている。なお、
図1には1つの汚泥乾燥装置10が示されているが、汚泥乾燥システム100は、複数の汚泥乾燥装置10を備えている。サイクロン81、減湿塔82、減湿塔循環ポンプ83、循環ファン84、ミストセパレータ85、及び予熱器86は、汚泥乾燥システム100を構成するすべての又は一部の複数の汚泥乾燥装置10に共用される。
【0026】
汚泥乾燥装置10には、ケーシング11によって乾燥室が形成されている。汚泥乾燥装置10のケーシング11には、乾燥室に汚泥を供給するための汚泥供給口111と、乾燥室から乾燥された汚泥を排出するための乾燥汚泥排出口114とが形成される。また、汚泥乾燥装置10のケーシング11には、乾燥室に循環気を供給するための循環気供給口113と、加湿された循環気を乾燥室から排出するための循環気排出口112とが形成されている。
【0027】
汚泥乾燥装置10にて処理する汚泥は、汚泥乾燥装置に汚泥を供給する被乾燥物供給機構によって汚泥供給口111から乾燥室内に供給されて、乾燥室で水分を除去された後に、汚泥排出口114から排出される。被乾燥物供給機構は、汚泥を搬送する汚泥コンベアや汚泥を汲み上げる汚泥ポンプであってよく、汚泥排出機構は乾燥した汚泥を搬送する乾燥汚泥コンベアであってよい。また、循環気は、循環気供給口113から乾燥室内に供給され、乾燥室で汚泥から蒸発した水蒸気を含んで、循環気排出口112から排出される。
【0028】
循環気排出口112から排出された循環気は、循環気管911を通ってサイクロン81に供給される。サイクロン81で不純物を取り除かれた循環気はさらに、循環気管912を通って減湿塔82に供給される。循環気は減湿塔82で減湿される。
【0029】
また、減湿塔82に溜まった水は、一部は上述のように循環水路921に排出され、一部は減湿塔排水管925を通って系外に排出される。循環水路921に排出された循環水は、循環水路921、減湿塔循環ポンプ83、及び循環水路922によって循環して減湿塔82に供給され、循環気から水分を除去する。減湿塔82には、さらに減湿塔給水管926を通して水が供給される。減湿塔82で減湿された循環気は、循環気管913を通って循環ファン84に送られる。循環ファン84は、循環気管914を通して循環気を循環方向に流す。
【0030】
循環ファン84の循環方向の先には、ミストセパレータ85が設けられている。ミストセパレータ85は、循環気中の塵埃や水滴を捕集し除去する。ミストセパレータ85によって浄化された循環気の一部は、循環気管915を通って、ケーシング11に設けられた循環気供給口113を介してケーシング11の内部の乾燥室に戻される。循環気管915には、予熱器86が設けられており、循環してきた循環気は予熱器86によって加熱された上で乾燥室に戻される。
【0031】
循環気の一部は、排気管916を通って汚泥乾燥システム100の外部に排出される。これらのサイクロン81、減湿塔82、循環ファン84、ミストセパレータ85、予熱器86、及びそれらをつなぐ循環気管911〜915からなる構成は、排気循環機構に相当する。このように、汚泥を乾燥する過程で発生する水蒸気を循環気によって効率的に乾燥室から排出して、高温低湿の空気を乾燥室に戻すことで、汚泥の乾燥を促進できる。
【0032】
汚泥乾燥装置10のケーシング11の内部(乾燥室)には、シャフト211とそのシャフト211に取り付けられた複数列のパドル212からなる撹拌シャフト21(
図3参照)が設けられている。本実施の形態では、2本の撹拌シャフト21が一組となって撹拌搬送機構20が構成される。すなわち、汚泥乾燥装置10には2組の撹拌搬送機構20が設けられる。この撹拌搬送機構20によって、汚泥は撹拌されながら供給側から排出側に搬送される。各撹拌シャフト21は中空構造になっており、その内部には、熱媒体としての蒸気が供給され、その熱によって、撹拌されながら搬送される汚泥は加熱されて、乾燥する。
【0033】
撹拌シャフト21には、蒸気が供給される蒸気供給口213及び蒸気ないし凝縮水を排出する蒸気排出口214が形成されている。撹拌シャフト21には蒸気管923を通って蒸気が供給され、蒸気排出口214から蒸気ドレイン管924を通って蒸気ないし凝縮水が系外に排出される。なお、蒸気供給口213に蒸気を供給する蒸気管923は予熱器86にも延びており、予熱器86に蒸気を供給する。予熱器86から排出される蒸気ないし凝縮水は、蒸気ドレイン管927を通って系外に排出される。
【0034】
以上の構成によって、汚泥乾燥システム100では、被乾燥物供給機構によって汚泥供給口111からケーシング11内に汚泥が供給される。ケーシング11内に供給された汚泥は、撹拌搬送機構20によって、撹拌、搬送されながら加熱され、汚泥に含まれる水分が蒸発する。汚泥は、乾燥して乾燥汚泥となって乾燥汚泥排出口114からケーシング11外に排出され、被乾燥物排出機構によって系外に排出される。汚泥から蒸発した水蒸気を含む循環気は、ケーシング11外に排出され、減湿、浄化、予熱の作用を受けて再びケーシング11内に戻される。
【0035】
図2は、本発明の実施の形態の汚泥乾燥装置の平面図である。
図2には、2つの汚泥乾燥装置10が並列に並んで示されている。以下では、
図2における下側を正面という。また、
図2及び
図3では、ケーシング11の一部を除去して内部の構造を露出させて示している。
図3は、本発明の実施の形態の汚泥乾燥装置の正面図である。
図4は、本発明の実施の形態の汚泥乾燥装置の右側面図である。
図5は、本発明の実施の形態の汚泥乾燥装置の左側面図である。
図6は、
図2のA−A断面図である。
【0036】
汚泥乾燥装置10は、ケーシング11と、その内部に備えられた2つの撹拌搬送機構20とを有する。ケーシング11は、概ね直方体形状を有している。
図2及び
図3の汚泥乾燥装置10において、汚泥は、右側から供給されて、左向きに搬送され、左側から排出される。
【0037】
ケーシング11によってその内部に乾燥室が形成される。汚泥乾燥装置10のケーシング11の上面の供給側には、汚泥供給口111が形成されている。また、ケーシング11の排出側下方には、乾燥汚泥を排出するための乾燥汚泥排出口114が形成されている。ケーシング11の撹拌シャフトに対応する部分の底面は、搬送される汚泥を受ける汚泥受けとして機能する。ケーシング11の上面の排出側には、循環気吸気口113が設けられる。また、ケーシング11の上面の供給側には、循環気排気口112が設けられる。ケーシング11は、支持脚115によって床に支持されている。
【0038】
撹拌搬送機構20は、互いに平行に延びる(軸方向が平行な)2本の撹拌シャフト21が一組となって構成され、ケーシング11の内部の下方に設けられる。各撹拌シャフト21では、円筒状のシャフト211の表面に、シャフト211の軸方向に所定の間隔をあけて複数列のパドル212が取り付けられている。シャフト211は、その延伸方向(軸方向)がケーシング11の長手方向と平行になるように設けられている。
【0039】
撹拌シャフト21は、後述する駆動装置によって回転される。シャフト211が回転することによってケーシング11内の汚泥は、パドル212によって撹拌されながら搬送される。シャフト211は、汚泥乾燥装置10のケーシング11の右側面(供給側)及び左側面(排出側)を貫通しており、ケーシング11の外で駆動装置に連結している。
【0040】
シャフト211及びパドル212は中空構造を有し、それらの内部空間は連通している。シャフト211の端の蒸気供給口から熱媒体としての水蒸気が内部空間に供給され、シャフト211の端の蒸気排出口から水蒸気ないし凝縮水が排出される。シャフト211の内部空間に供給された水蒸気は、シャフト211の内部空間からパドル212の内部空間にも流通する。
【0041】
このような水蒸気の流通によって、シャフト211及びパドル212の表面が加熱される。汚泥は、撹拌されながらシャフト211やパドル212に接触することで加熱され、乾燥室内を流通する循環気に水分を放出することで、撹拌搬送機構20によって搬送される過程で徐々に乾燥する。
【0042】
図6に示すように、各パドル212は、扇形状を有している。シャフト211の各列には、2枚のパドル212が取り付けられている。撹拌搬送機構20における2本のシャフト211の軸方向にみて、各シャフト211に取り付けられたパドル212は互いに重なり合っており、一方の撹拌シャフト21のパドル21の先端が他方の撹拌シャフト21のパドル21の列と列の間に入り込んでいる。
【0043】
図2及び
図3に示すように、各パドル212の表面の垂線は、シャフト212に垂直な軸周りに回転している。さらに、同一列の2つのパドル212を同じ方向に回転させた列と、同一列の2つのパドル212を異なる方向に回転させた列とが交互に配置される。すなわち、複数列のパドル212には、送り方向に傾いているものだけでなく、一部に戻し方向に傾いているものも含まれる。このように、パドル212を斜めに取り付けてシャフト211を回転させることで、汚泥が撹拌されながら搬送される。
【0044】
また、
図6に示すように、1つの撹拌搬送機構20を構成する2つの撹拌シャフト21の回転方向は互いに逆方向とされる。さらに、後述するように、2つの撹拌シャフト21は互いに独立して設定されたそれぞれの回転速度で回転する。2つの撹拌シャフト21の回転速度が互いに異なることで、パドル212が重なり合う箇所で、各パドル212の速度差によって、各パドル212に付着した汚泥が掻き落とされる。
【0045】
図6に示すように、ケーシング11の底面は、パドル211の形状に合わせて、断面が円弧形状になるように形成される。撹拌搬送機構20は、2つの撹拌シャフト21を有するので、底面は、これらの2つの撹拌シャフト21のパドル212の形状に合わせて、断面がω形状に形成されている。これによりパドル212が届かないところに汚泥が存在することはなく、そのような汚泥がケーシング11の底の隅に堆積してしまうことが防止される。
【0046】
汚泥供給口111からケーシング11内の乾燥室に供給された汚泥は、撹拌シャフト21の回転によって、供給側から排出側に搬送されて、乾燥汚泥排出口114から排出される。乾燥汚泥排出口114の手前には、高さ調節可能な排出用堰31を含む排出調整機構30が設けられる。この排出用堰31を乗り越えた乾燥汚泥が乾燥汚泥排出口114から排出される。
【0047】
排出用堰31は、撹拌搬送機構20の軸方向に垂直に設けられており、汚泥受けとして機能する底面の排出側の縁(乾燥汚泥排出口114の手前)において、底面から立ち上がっている。排出用堰31は、その左右上端で昇降機構32と接続され、昇降機構32によって引き上げられ、又は降ろされる。撹拌搬送機構20によって搬送されてきた汚泥は、排出用堰31を乗り越えて乾燥汚泥排出口114に落ちる。昇降機構32によって排出用堰31の高さを調節することで、乾燥汚泥の排出量を調整できる。
【0048】
シャフト211は、上述のように、ケーシング11を貫通してケーシング11の外側まで延びており、ケーシング11の外側で軸受42に軸受けされる。ケーシング11の右側面とそれを貫通するシャフト211との間にはシール43が介在しており、このシール43によって、乾燥室が密閉状態に保たれる。
【0049】
シャフト211の先端は、駆動装置41に連結されており、駆動装置41を駆動することで回転させられる。駆動装置41は減速機付インバータモータである。この減速機付きインバータモータは、シャフト211の先端部分において上下方向(縦向き)に設置された直交軸型モータである。また、駆動装置41は、シャフト211に直結する直結型のギアモータであり、駆動装置41とシャフト211との間にチェーンやベルト等の回転伝達部材を必要としない。
【0050】
また、上述のように本実施の形態の汚泥乾燥装置10は、2つの撹拌シャフト21で構成された1つの撹拌搬送機構20を有するが、1つの撹拌シャフト21について1つの駆動装置41が設けられた1軸1駆動方式が採用されている。この構成により、1つの撹拌シャフト21は、1つの駆動装置41によって駆動されるので、2つの撹拌シャフトを駆動するための駆動装置によって1つの撹拌シャフトが駆動されることがなく、各駆動装置41は、1つの撹拌シャフト21を駆動するための動力を有していればよく、各撹拌シャフト211も1つの撹拌シャフト21を駆動するための動力に耐える強度を有していればよい。
【0051】
また、本実施の形態の汚泥乾燥装置10は、
図2に示すように、駆動装置41が縦向きに設置された直交軸型モータであるので、駆動装置41が汚泥乾燥装置10の幅よりも外にはみ出すことがなく、よって、汚泥乾燥装置10の右側において、スペースS1が確保される。このスペースS1に作業員が容易に立ち入ることでき、例えばシール43の交換等のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0052】
また、本実施の形態の汚泥乾燥装置10は、駆動装置41として直結型モータを用いた1軸1駆動方式であり、駆動装置41によって複数の撹拌シャフト21を駆動する必要がないので、
図8に示すように、駆動装置41を汚泥乾燥装置10の並列方向にはみ出して設置する必要がなく、
図2に示すように、汚泥乾燥装置10の幅をはみ出さずに駆動装置41を設置できる。
【0053】
図7は、本実施の形態の汚泥乾燥装置を複数並べて配置した状態を、複数の従来の乾燥ユニットを並べて配置した状態とともに示す図である。
図7の左側は本実施の形態の汚泥乾燥装置10の配置を示しており、右側は従来の乾燥ユニット101の配置を示している。また、
図7の例では、本実施の形態の汚泥乾燥装置10及び従来の乾燥装置102のいずれも、6機配置されている。従来の乾燥装置102の配置は、
図10で示した配置と同じであり、2つの乾燥装置102が組となって1つの乾燥装置ユニット101を構成している。
【0054】
図10を参照して説明したように、従来の乾燥装置ユニット101では、モータ104が乾燥装置ユニット101の幅方向の両側にせり出しているので、その部分のスペースS3が必要となり、乾燥装置ユニット101どうしを十分に近づけることができない。これに対して、本実施の形態の乾燥装置10は、直交軸型かつ直結型の駆動装置41を用いた1軸1駆動方式であるので、駆動装置41が汚泥乾燥装置10の幅を超えてはみ出すことがなく、汚泥乾燥装置10どうしの間隔を近くできる。
【0055】
図7に示すように、本実施の形態では、従来と比較して、スペースS2の面積だけ狭いスペースに6機の汚泥乾燥装置10を配置できており、スペースS2を節約できている。換言すれば、従来6機の乾燥装置102を設置していたスペースに6機以上(8機程度)の汚泥乾燥装置10を設置可能である。
【0056】
本実施の形態の汚泥乾燥装置10では、各駆動装置41は、互いに独立した速度に設定することができ、各撹拌シャフト21の回転速度を任意に設定できる。よって、1つの撹拌搬送機構20を構成する2つの撹拌シャフト21の回転速度差を自由に設定できる。
【0057】
本実施の形態では、上述のように、1つの撹拌搬送機構20を構成する2つの撹拌シャフト21の回転速度を異ならせて設定することで、パドル212が重なり合う部分での汚泥の掻き落とし効果を実現する。このように、2つの撹拌シャフト21の回転速度を異ならせることを前提とするので、各駆動装置41において厳密に回転速度を一致させる必要がなく、設定が容易である。
【0058】
以上のように、本実施の形態では、1つの撹拌シャフト21を直交軸型かつ直結型の1つの駆動装置41で駆動する1軸1駆動方式を採用したので、設置スペースを小さくでき、メンテナンスのためのスペースを確保でき、撹拌シャフト21の強度を小さく設定でき、回転速度の厳密な調整が不要になる等の種々の効果が得られる。
【0059】
なお、上記の実施の形態では、汚泥乾燥装置10は1つの撹拌搬送機構20を有し、各撹拌搬送機構20は、2つの撹拌シャフト21で構成されたが、これに限らず、3つ以上の撹拌シャフト21で1つの撹拌搬送機構20が構成されてもよく、また、1つの汚泥乾燥装置10が複数の撹拌搬送機構20を有していてもよい。