【解決手段】排ガス流路内に配置される基材と、基材上に設けられた触媒層と、を少なくとも備え、触媒層における細孔容積が0.160cc/g以上であり、触媒層が酸化バリウムを含有しない、排ガス処理部材。基材が、ハニカム構造体を構成している排ガス処理部材。白金及びパラジウムが担体に担持されており、担体が、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカ、ベーマイト及びシリカ−アルミナからなる群から選ばれる1種以上を含む排ガス処理部材。排ガスが、ディーゼルエンジンの排ガスである排ガス処理部材。
白金及びパラジウムが担体に担持されており、前記担体が、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカ、ベーマイト及びシリカ−アルミナからなる群から選ばれる1種以上を含む
請求項1から3のいずれか1項に記載の排ガス処理部材。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。また、本明細書において、「〜」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いる。例えば「1〜100」との数値範囲の表記は、その上限値「100」及び下限値「1」の双方を包含するものとする。また、他の数値範囲の表記も同様である。
【0017】
本実施形態に係る排ガス処理部材は、排ガス流路内に配置される基材と、基材上に設けられた触媒層と、を少なくとも備える。本実施形態に係る排ガス処理部材において、触媒層における細孔容積が0.160cc/g以上である。本実施形態に係る排ガス処理部材において、触媒層が酸化バリウムを含有しない。本実施形態に係る排ガス処理部材は、例えばディーゼルエンジンの下流に配置され、排ガスを処理する。
【0018】
基材は、耐熱性に優れ、触媒層を支持可能なものである限り、その種類は特に限定されない。例えば、金属、ステンレス等の合金、セラミックス、これらを組み合わせた積層構造体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。また、その形状、平面形状、厚さ等も、用途や要求性能等に応じて適宜設定すればよい。これらは、1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0019】
また、基材として、ハニカム構造体を採用することで、排ガス流中に設置する排ガス浄化用途への適用が容易となる。ハニカム構造体は、一般的には、排ガスが流れる複数のセルが長軸方向に並列して設けられたものであり、各セルの導入口から排出口に向けて排ガスが流れる。この場合、基材は、排ガスが流れるハニカム構造体の各セルの内壁をなす。このようなハニカム構造体としては、当業界で公知のものを適宜選択することができる。例えば自動車排ガス用途におけるハニカム構造体としては、コージェライト(2MgO・2Al
2O
3・5SiO
2)、シリコンカーバイド(SiC)、窒化珪素(Si
3N
4)等のセラミックモノリス担体、ステンレス製等のメタルハニカム担体、ステンレス製等のワイヤメッシュ担体、スチールウール状のニットワイヤ担体等が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。なお、ハニカム構造体の外形は、例えば、円柱状、四角柱状、六角柱状、球状、ハニカム状、シート状等の任意の形状のものが選択可能であり、特に限定されない。
【0020】
上述したハニカム構造体のサイズは、用途や要求性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、例えば数ミリから数センチの直径(長さ)のものが好適に使用される。ハニカム構造体のセルの数(セル密度)は、処理される排ガスの種類、排ガスの流量、所望の圧力損失、及び排ガスに含まれる有害物質の所望の除去効率等に基づいて適宜設定すればよい。例えばディーゼルエンジンの排ガスを処理する場合、排ガス流に対する表面積を高く維持しつつ圧力損失の増大を抑制する等の観点から、セルの数は、好ましくは100cpsi以上500cpsi以下、より好ましくは150cpsi以上400cpsi以下である。なお、セル密度とは、ハニカム構造体を気体流路に対して直角に切断した際の断面における単位面積あたりのセル数のことを意味する。セルの壁厚は、4mil以上12mil以下が好ましく、5mil以上10mil以下がより好ましく、6mil以上9mil以下がさらに好ましい。また、自動車排ガス用途のハニカム構造体としては、気体流路が連通しているフロースルー型構造体と、気体流路の一部端面が目封じされ且つ気体流路の壁面を通して気体が流通可能になっているウォールフロー型構造体とが広く知られており、いずれも適用可能である。
【0021】
基材の表面上において、触媒層は、排ガス流路に接するように配置されている。触媒層は、基材表面の少なくとも一部を覆っている。触媒層は、例えば、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、一酸化窒素(NO)を酸化する。
【0022】
触媒層は、例えばウォッシュコート層である。触媒層において、酸化触媒である白金(Pt)及びパラジウム(Pd)は、粒子状の担体に担持されている。担体は、母材粒子とも呼ばれる。担体と白金及びパラジウムとは、複合粒子である触媒粒子をなしている。担体に担持された白金及びパラジウムの大きさは、数ナノメートル〜数百ナノメートルオーダーである。担体上の白金及びパラジウムの存在は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による観察、粉末X線回折(XRD:X‐ray Diffraction)、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe Micro Analyzer)、X線光電分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy、又はESCA:Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)等の各種測定方法により把握することができる。
【0023】
複合粒子の粒径を調整することにより、触媒層における細孔容積を調整することが可能である。複合粒子の粒径(d
90)は、例えば、15.0μm以上、15.5μm以上、あるいは16.0μm以上である。
【0024】
担体は、耐熱性が高く、白金及びパラジウムを安定的に高分散可能なものであれば、公知のものから適宜選択でき、その種類は特に限定されない。例えば、シリカ、ベーマイト、アルミナ(α−Al
2O
3、δ−Al
2O
3、γ−Al
2O
3、δ−Al
2O
3、η−Al
2O
3、θ−Al
2O
3)、セリア(CeO
2)、ジルコニア(ZrO
2)、セリア−ジルコニア、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化プラセオジム等の金属酸化物乃至は金属複合酸化物;希土類元素及び/又は遷移元素がドープされたジルコニアやセリア−ジルコニア等の複合酸化物;ペロブスカイト型酸化物;シリカ−アルミナ、シリカ−アルミナ−ジルコニア、シリカ−アルミナ−ボリア等のアルミナを含む複合酸化物;アナターゼ型チタニア、ゼオライト等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、担体としては、BET比表面積が大きな多孔質粒子が好ましい。具体的には、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカ、ベーマイト及びシリカ−アルミナ等が挙げられる。アルミナの例としては、γ−アルミナ、δ−アルミナ、及びθ−アルミナが挙げられる。チタニアの例としては、アナターゼ型のチタニアが挙げられる。ジルコニアとしては、安定化ジルコニア又は部分安定化ジルコニアが好ましい。安定化ジルコニア又は部分安定化ジルコニアは、ジルコニアに、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、又は酸化イットリウム等の希土類酸化物を固溶させて得られる。安定化ジルコニア又は部分安定化ジルコニアは、構造中に酸素空孔が形成され、立方晶及び正方晶が室温でも安定化し、昇降温による破壊が抑制される。シリカには、種々の異なる相変態を有する結晶性シリカの他、無定形、ガラス状、及びコロイド状シリカ等がある。シリカは、一般に、アルミナに比べBET比表面積が高く、白金及びパラジウムが高度に分散される。シリカ−アルミナは、結晶性のものと非結晶性のものがある。シリカ−アルミナにおいて、Si/Al比は様々であり、用途に合わせて、適宜設定される。結晶性のゼオライトの例としては、ZSM型ゼオライト及びやβ型ゼオライト等が挙げられる。担体は、1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0025】
担体は、複数の材料からなっていてもよい。また、例えば、担体の耐熱性を向上させるために、担体には、ランタン等の希土類酸化物、シリカ、及びジルコニア等が添加されていてもよい。また、担体の比表面積は、耐熱性、並びに担体に担持されるPtやPdの分散性及び安定性に基づいて、適宜設定される。例えば、比表面積は、50m
2/g以上300m
2/g以下が好ましい。比表面積は、例えば、BET法により測定される。
【0026】
なお、ここで用いる担体は、製法によって特に限定されない。この種の担体は、各公知の製法で得ることができ、例えば、上記元素を含む硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩、塩化物等の形態を有する出発原料を水溶液中に溶解させた後、混合し、pH調整等により沈殿物として沈降させるか、蒸発乾固させるかして得られた固形物を焼成することで、任意の組成及び結晶性を有する担体を得ることができる。なお、担体原料を混合又は複合化する際には、これらの複数の金属塩を一度に可溶化させて上記処理を行ってもよいし、単一又は複数の金属塩に上記処理を行うことにより酸化物を形成させた後、残りの金属塩を一度に又は逐次添加してもよい。
【0027】
触媒層は、白金及びパラジウムの酸化触媒能を補助する助触媒をさらに備えていてもよい。助触媒成分の例としては、酸化セリウム(セリア)、セリア−ジルコニア、各種ゼオライト、ネオジム、及び酸化ランタン等の希土類酸化物、並びにジルコニア等が挙げられる。酸化セリウムは、セリウム(Ce)の酸化数の変化により、酸素過剰な雰囲気では酸素を貯蔵し、酸素が不足している雰囲気では酸素を放出することが可能である。そのため、酸化セリウムは、酸素不足雰囲気化で、煤及び可溶性有機成分(SOF)の酸化及び燃焼に有効である。また、酸化セリウムは、白金及びパラジウムによる、CO、HC、NO等の低温下での酸化反応を促進する。各種ゼオライトは、HCを低温で貯蔵し、高温でHCを放出して、白金やパラジウムによる、HCの低温下での酸化反応を促進する。ネオジム及び酸化ランタン等の希土類酸化物、並びにジルコニアは、白金及びパラジウムが、熱で担体上を移動して凝集することを抑制すると考えられている。
【0028】
触媒層における細孔容積は0.160cc/g以上であり、例えば0.165cc/g以上、0.170cc/g以上、あるいは0.172cc/g以上である。触媒層における細孔容積を上記の大きさとすることで、排ガス中に含まれるリン(P)等の被毒による触媒性能の劣化の影響が低減され、また、触媒性能を高く維持され、その結果、着火温度をより低くすることができる。
【0029】
基材がハニカム構造体をなしている場合、ハニカム構造体に担持されている白金及びパラジウムの量(担持量)は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、触媒性能やコスト等の観点から、ハニカム構造体のコート部体積1L当たり、金属換算で0.2g以上5.0g以下が好ましく、より好ましくは0.3g以上3.0gである。なお、ハニカム構造体のコート部体積とは、外壁を除くハニカム構造体のうちコートされる部分の体積であって、コートされる部分上であれば、ハニカム構造体内の空間部分の体積も含めた体積を指す。
【0030】
また、基材がハニカム構造体をなしている場合、触媒層の量(塗布量)は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、触媒性能、圧力損失、コスト等の観点から、ハニカム構造体のコート部体積1L当たり、10g以上300g以下が好ましく、より好ましくは15g以上250g以下である。
【0031】
本発明者の知見によれば、触媒層の塩基性物質を減少させることで、排ガス中に含まれるリン(P)等の被毒による触媒性能の劣化の影響が低減され、また、触媒性能を高く維持され、その結果、着火温度をより低くすることができる。したがって、本実施形態に係る排ガス処理部材は、触媒層が、酸化バリウムを含有しない。
【0032】
次に、本実施形態に係る排ガス処理部材の製造方法の一例について説明する。
まず、担体に白金及びパラジウムを担持するために、白金の出発塩として、水酸化白金(IV)酸のエタノールアミン溶液、テトラアンミン白金(II)酢酸塩、テトラアンミン白金(II)炭酸塩、テトラアンミン白金(II)硝酸塩、水酸化白金(IV)酸の硝酸溶液、硝酸白金、ジニトロジアミン白金硝酸、及び塩化白金(IV)酸等を用意する。また、パラジウムの出発塩として、テトラアンミンパラジウム(II)酢酸塩、テトラアンミンパラジウム(II)炭酸塩、テトラアンミンパラジウム(II)硝酸塩、ジニトロジアンミンパラジウム、硝酸パラジウム、及び塩化パラジウム等を用意する。
【0033】
ここで、白金の出発塩水溶液の酸性度とパラジウムの出発塩水溶液の酸性度とが近いと、両方の水溶液を混合した際に沈殿が生じにくく、溶液の分散性を保ちやすい。酸性度が近い組み合わせの例としては、テトラアンミン白金(II)酢酸塩−テトラアンミンパラジウム(II)酢酸塩(アルカリ性同士)、水酸化白金(IV)酸のエタノールアミン溶液−テトラアンミンパラジウム(II)酢酸塩(アルカリ性同士)、硝酸白金−硝酸パラジウム(酸性同士)、ジニトロジアミン白金硝酸−硝酸パラジウム(酸性同士)、及び塩化白金(IV)酸−塩化パラジウム(酸性同士)等が挙げられる。これらは一例であり、限定されない。
【0034】
そして、含侵法、イオン交換法、及び混練法等の任意の方法を用いて、用意した金属塩の水溶液に含まれる白金及びパラジウムを担体上に担持させて複合粒子である触媒粒子を形成する。その後、例えば50℃以上200℃以下で触媒粒子を乾燥し、さらに例えば350℃以上1200℃以下で触媒粒子を焼成する。次に、触媒粒子と水又は水に水溶性有機溶媒を加えた水溶性有機溶媒とを混合して、スラリーを得る。混合の際には、ボールミル等による粉砕混合等、公知の粉砕方法又は混合方法を適用することができる。
【0035】
製造される排ガス処理部材の触媒層の細孔容積は、スラリーを得る際に、複合粒子の粒径を所定の粒径にすることにより調整可能である。複合粒子の粒径(d
90)は、例えば、15.0μm以上、15.5μm以上、あるいは16.0μm以上である。なお、スラリーを得る際に、水酸化バリウムを添加しない。
【0036】
スラリーには、必要に応じて当業界で公知のバインダー、他の触媒、助触媒粒子、OSC材、母材粒子、添加剤等を所望の配合割合で混合することができる。添加剤としては、例えばpH調整のための酸や塩基等のpH調整剤、分散性向上のための非イオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤等の界面活性剤や分散安定化剤、粘度調整のための粘度調整剤等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0037】
次に、基材上にスラリーを付与する。スラリーの付与方法は、常法にしたがって行えばよく、その種類は特に限定されない。各種公知のコーティング法、例えば、ウォッシュコート法等を適用することができる。また、基材の部分ごとに異なる触媒層を形成するために、当該部分ごとに異なるスラリーを付与するという、いわゆるゾーンコート法を適用することもできる。
【0038】
例えば、基材としてハニカム構造体を用いる場合には、ハニカム構造体をスラリーに浸漬させて、ハニカム構造体を、触媒層を形成するためのスラリーでコーティングする。その後、ハニカム構造体をスラリーから引き上げ、余分なスラリーをエアーによりブローアウトする。さらに、必要に応じてハニカム構造体を適宜乾燥させ、焼成することで、ハニカム構造体の内壁である基材上に触媒層を形成する。これにより、本実施形態に係る排ガス処理部材を得ることができる。
【0039】
乾燥する際の温度は、特に限定されないが、例えば70℃以上200℃以下が好ましく、より好ましくは80℃以上150℃以下である。乾燥時間は、例えば0.5時間以上2時間以下である。また、焼成温度も、特に限定されないが、例えば350℃以上1200℃以下が好ましく、より好ましくは400℃以上600℃以下である。焼成時間は、例えば0.5〜48時間程度が目安とされ、好ましくは1時間以上3時間以下である。なお、焼成雰囲気は、酸化性雰囲気、還元性雰囲気、中性雰囲気のいずれの雰囲気でもよい。ここで、加熱手段としては、例えば電気炉やガス炉等の公知の加熱手段を用いることができる。
【実施例】
【0040】
以下に試験例、実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらによりなんら限定されるものではない。すなわち、以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更することができる。また、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における好ましい上限値又は好ましい下限値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0041】
(実施例1から3及び比較例1、2)
以下に示す方法により、担持する粒子の粒径が異なり、触媒層に酸化バリウムを含有しない実施例1から3及び比較例1、2に係る排ガス処理部材を製造した。
【0042】
硝酸白金水溶液と硝酸パラジウム水溶液とを、白金とパラジウムの質量比が3:1となるよう混合し、白金及びパラジウムの混合液を得た。次に、粒径(d
50)が30μm、BET比表面積が140m
2/gのアルミナ粉末に、混合液中の白金及びパラジウムを含侵させ、その後、複合粒子を500℃で1時間焼成して、触媒層を形成するための複合粒子を得た。得られた複合粒子、水、増粘剤、界面活性剤、及びpH調整剤をボールミルに投入し、複合粒子の粒径が所定の粒径になるまでミリングし、触媒層を形成するためのスラリーを得た。
【0043】
複合粒子の粒径(d
90)は、レーザ回折式粒度分布測定装置(SALD−3100、島津製作所)で測定した。実施例1から3及び比較例1、2で使用する複合粒子の粒径(d
90)を、
図1に示す。実施例1で使用する複合粒子の粒径(d
90)は、16.4μmであった。実施例2で使用する複合粒子の粒径(d
90)は、20.4μmであった。実施例3で使用する複合粒子の粒径(d
90)は、24.9μmであった。比較例1で使用する複合粒子の粒径(d
90)は、6.6μmであった。比較例2で使用する複合粒子の粒径(d
90)は、8.4μmであった。
【0044】
次に、コージュライト製のフロースルー型ハニカム構造体を用意した。このハニカム構造体のセル密度は300cpsi/8mil、直径は25.4mm、長さは76.2mm、体積は0.039Lであった。ハニカム構造体の導入口側から、ハニカム構造体の触媒層を形成するためのスラリーに浸漬させ、ハニカム構造体の各セル内部を触媒層を形成するためのスラリーでコーティングした。その後、150℃1時間でスラリーを乾燥させ、大気雰囲気下、450℃で焼成して、コート部体積当たり、白金を1.5g/L、パラジウムを0.5g/L含有する触媒層を形成した。
【0045】
以上に示した方法により、担持する粒子の粒径が異なる実施例1から3及び比較例1、2に係る排ガス処理部材を製造した。
【0046】
製造された施例1から3及び比較例1、2に係る排ガス処理部材の触媒層の細孔容積を、水銀ポロシメーター(Pascal 140及びPascal 440、Thermo Scientific)で測定した。測定時の温度は25℃であり、水銀の密度は13.534g/cm
3であった。水銀の接触角は130°であり、水銀の表面張力は484Dyne/cmであった。測定圧力は、400kPa(Pascal 140)及び350kPa(Pascal 440)であった。結果を
図1に示す。実施例1に係る排ガス処理部材の触媒層の細孔容積は、0.172cc/gであった。実施例2に係る排ガス処理部材の触媒層の細孔容積は、0.175cc/gであった。実施例3に係る排ガス処理部材の触媒層の細孔容積は、0.186cc/gであった。比較例1に係る排ガス処理部材の触媒層の細孔容積は、0.157cc/gであった。比較例2に係る排ガス処理部材の触媒層の細孔容積は、0.158cc/gであった。複合粒子の粒径(d
90)と、触媒層の細孔容積と、の関係を
図2に示す。
【0047】
(実施例4、比較例3、4、5)
実施例1から3と同様の方法で、
図3に示す粒形の粒子を担持し、細孔容積を有する実施例4に係る排ガス処理部材を製造した。また、以下に示す方法により、触媒層に酸化バリウムを含有する比較例3、4、5に係る排ガス処理部材を製造した。
【0048】
硝酸白金水溶液と硝酸パラジウム水溶液とを、白金とパラジウムの質量比が3:1となるよう混合し、白金及びパラジウムの混合液を得た。次に、粒径(d
50)が30μm、BET比表面積が140m
2/gのアルミナ粉末に、混合液中の白金及びパラジウムを含侵させ、その後、複合粒子を500℃で1時間焼成して、触媒層を形成するための複合粒子を得た。得られた複合粒子、水酸化バリウム、水、増粘剤、界面活性剤、及びpH調整剤をボールミルに投入し、複合粒子の粒径が所定の粒径になるまでミリングし、触媒層を形成するためのスラリーを得た。比較例3、4、5で使用する複合粒子の粒径(d
90)を、
図3に示す。比較例3で使用する複合粒子の粒径(d
90)は、20.4μmであった。比較例4で使用する複合粒子の粒径(d
90)は、19.9μmであった。比較例5で使用する複合粒子の粒径(d
90)は、19.0μmであった。
【0049】
次に、コージュライト製のフロースルー型ハニカム構造体を用意した。このハニカム構造体のセル密度は300cpsi/8mil、直径は25.4mm、長さは76.2mm、体積は0.039Lであった。ハニカム構造体の導入口側から、ハニカム構造体の触媒層を形成するためのスラリーに浸漬させ、ハニカム構造体の各セル内部を触媒層を形成するためのスラリーでコーティングした。その後、150℃1時間でスラリーを乾燥させ、大気雰囲気下、450℃で焼成して触媒層を形成し、比較例3、4、5に係る排ガス処理部材を得た。
図3に示すように、比較例3に係る排ガス処理部材においては、触媒層が、コート部体積当たり、白金を1.5g/L、パラジウムを0.5g/L、酸化バリウムを1.0g/L含有していた。比較例4に係る排ガス処理部材においては、触媒層が、コート部体積当たり、白金を1.5g/L、パラジウムを0.5g/L、酸化バリウムを8.0g/L含有していた。比較例5に係る排ガス処理部材においては、触媒層が、コート部体積当たり、白金を1.5g/L、パラジウムを0.5g/L、酸化バリウムを16.0g/L含有していた。実施例4及び比較例3から5に係る排ガス処理部材の細孔容積は、ほぼ同じであった。
【0050】
(熱耐久)
全ての実施例及び比較例に係る排ガス処理部材は、電気炉を用いて、大気雰囲気下で、650℃×20時間の熱耐久を実施した。
【0051】
(リン被毒)
全ての実施例及び比較例に係る排ガス処理部材にリン含有溶液を噴霧して、排ガス処理部材をリン被毒させた。リン含有溶液を噴霧する際の温度は350℃、ガス流量は88L/分、酸素濃度は10.5%であった。これにより、実施例1から3及び比較例1、2に係る排ガス処理部材の触媒層のそれぞれに、五酸化二リン(P
2O
5)換算で、5g/Lのリンを付着させた。また、実施例4及び比較例3から5に係る排ガス処理部材の触媒層のそれぞれに、五酸化二リン(P
2O
5)換算で、10g/Lのリンを付着させた。
【0052】
(HCの浄化性能の評価)
次に、リン被毒させた全ての実施例及び比較例に係る排ガス処理部材の炭化水素(HC)の浄化性能を評価した。ここでは、表1に示す組成を有するモデルガスを、流量20.0L/分、空間速度(SV)31000/時、昇温速度30℃/分で、実施例及び比較例のそれぞれに係る排ガス処理部材に流し、HCの浄化率が50%に達する温度(T50)を測定した。測定結果を、
図1及び
図3に示す。HCの浄化率が50%に達する温度が低いほど、排ガス処理部材の低温での浄化性能が高いことを示している。
【0053】
【表1】
【0054】
触媒層の細孔容積と、HCの浄化率が50%に達する温度と、の関係を
図4に示す。
図4に示すように、触媒層の細孔容積が大きいほど、HCの浄化率が50%に達する温度が低くなる傾向にあった。また、実施例4及び比較例3から5の結果に基づく、触媒層の酸化バリウムの含有量と、HCの浄化率が50%に達する温度と、の関係を
図5に示す。従来、触媒層を形成する際に、水酸化バリウムを添加すると、水酸化バリウムがパラジウムと相互作用し、シンタリングが抑制され、触媒の機能が低下しないと考えられていた。しかし、
図5に示すように、触媒層を形成する際に添加する水酸化バリウムの量が少なく、触媒層における酸化バリウムの含有量が少ないほど、HCの浄化率が50%に達する温度が低くなる傾向にあった。したがって、水酸化バリウムによるパラジウムのシンタリング抑制の効果よりも、酸化バリウムを含有することによる触媒層のリン被毒劣化の方が、HC浄化率への影響が大きいことが明らかになった。