【解決手段】鉄道車両1の空調装置2と連通された分岐ダクト21に接続され、床近傍から上方の荷棚55下部まで延設された空調ダクト3を備え、空調ダクトの室内寄り壁面31は、室内側からカバーする内装パネル54に当接又は近接するように形成された鉄道車両用空調ダクト取付構造10である。空調ダクトの下端部32は、弾性部材7を介して分岐ダクトに接続され、内装パネルは、空調ダクトを上方から押圧した状態で側構体52に固定されている。空調ダクトには、内装パネルから側構体側に延設された受金具6に対して水平方向へ移動可能に連係された連係金具41を備え、連係金具は、内装パネルが側構体に固定された状態では、空調ダクトの落下防止機能を担う。
鉄道車両の床下に配置され調和空気を形成する空調装置と連通された分岐ダクトに接続され、床近傍から上方の荷棚下部まで延設された空調ダクトを備え、前記空調ダクトの室内寄り壁面は、室内側からカバーする内装パネルに当接又は近接するように形成された鉄道車両用空調ダクト取付構造であって、
前記空調ダクトの下端部は、弾性部材を介して前記分岐ダクトに接続され、前記内装パネルは、直接的に又は間接的に前記空調ダクトを上方から押圧した状態で、側構体に固定されていること、
前記空調ダクトには、前記内装パネルから側構体側に延設された受金具に対して水平方向へ移動可能に連係された連係金具を備え、
前記連係金具は、前記内装パネルが前記側構体に固定された状態では、前記空調ダクトの落下防止機能を担うことを特徴とする鉄道車両用空調ダクト取付構造。
【背景技術】
【0002】
図13、
図14に示すように、鉄道車両100では、車室空間101の快適性を保つため、床下に調和空気を形成する空調装置102を備え、当該空調装置102にて形成した調和空気を側構体103の上方に形成された荷棚104下部から車室空間101内に吹出すために、床下の空調装置102と連通された分岐ダクト105に接続され、床近傍から上方の荷棚下部まで延設された空調ダクト106が、取付金具107を介して側構体103に取り付け可能に形成された鉄道車両用空調ダクト取付構造が、例えば、特許文献1に開示されている。また、
図14に示すように、上記空調ダクト106の室内寄り壁面106aは、室内側からカバーする内装パネル108に当接又は近接して配置されている。
【0003】
また、分岐ダクト105と空調ダクト106との接続部では、一般的に、
図15(A)に示すように、上方の空調ダクト106を下方の分岐ダクト105より大きく形成して、両者をオーバーラップさせ、また、
図15(B)に示すように、分岐ダクト105と空調ダクト106との隙間に、シール材109を充填し、さらに、
図15(C)に示すように、被せる方の空調ダクト106の外側からバンド110で締め付けることによって、上記接続部における気密を確保する構造が採用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記
図13〜
図15に示す鉄道車両用空調ダクト取付構造には、以下のような問題があった。
すなわち、
図13、
図14に示すように、空調ダクト106は、分岐ダクト105に接続されると共に、取付金具107を介して側構体103に取り付けられ、また、空調ダクト106の室内寄り壁面106aが、室内側でカバーする内装パネル108に当接又は近接して配置されているので、空調ダクト106を分岐ダクト105に接続し、取付金具107を介して側構体103に取り付けた後に、内装パネル108を側構体103に取り付けることになる。そのため、空調ダクト106と内装パネル108とを、別々に搬送して取り付けるので、搬送の手間が増えてしまう問題があった。
【0006】
一方、内装パネル108を取り付けるときには、既に空調ダクト106が側構体103に固定されているので、空調ダクト106をカバーする内装パネル108と、当該内装パネル108と隣接する他の内装パネル108bとの隙間を無くすために、内装パネル108の取付位置を調整しようとしても、既に固定した空調ダクト106が邪魔になる場合があった。そのため、空調ダクト106の取付位置を修正しながら、内装パネル108の取付位置を調整せざるを得なく、作業工数が多大となるという問題があった。
【0007】
また、
図15(B)に示すように、分岐ダクト105と空調ダクト106との隙間に、シール材109を充填し、さらに、
図15(C)に示すように、被せる方の空調ダクト106の外側からバンド110で締め付ける構造であると、シール作業、及びバンド作業が必要となり、それらの作業工数も多大となるという問題があった。さらに、分岐ダクト105と空調ダクト106の内、いずれかのダクトを交換する際には、バンド110及びシール材109を切り取らなければ、ダクトを外すことができないので、その作業工数が多大となる同時に、バンド110やシール材109を切るときに、交換しない部品を損傷させる懸念もあった。
【0008】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、空調ダクトの取付けが簡単にできると共に、空調ダクトをカバーする内装パネルの取付位置の調整が容易にできる鉄道車両用空調ダクト取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る鉄道車両用空調ダクト取付構造は、以下の構成を備えている。
(1)鉄道車両の床下に配置され調和空気を形成する空調装置と連通された分岐ダクトに接続され、床近傍から上方の荷棚下部まで延設された空調ダクトを備え、前記空調ダクトの室内寄り壁面は、室内側からカバーする内装パネルに当接又は近接するように形成された鉄道車両用空調ダクト取付構造であって、
前記空調ダクトの下端部は、弾性部材を介して前記分岐ダクトに接続され、前記内装パネルは、直接的又は間接的に前記空調ダクトを上方から押圧した状態で、側構体に固定されていること、
前記空調ダクトには、前記内装パネルから側構体側に延設された受金具に対して水平方向へ移動可能に連係された連係金具を備え、
前記連係金具は、前記内装パネルが前記側構体に固定された状態では、前記空調ダクトの落下防止機能を担うことを特徴とする。
【0010】
本発明においては、空調ダクトの下端部は、弾性部材を介して分岐ダクトに接続され、内装パネルは、直接的又は間接的に空調ダクトを上方から押圧した状態で、側構体に固定されているので、空調ダクトの下端部を分岐ダクトに接続した状態で、弾性部材が撓むことによって、シール性を担保しつつ、分岐ダクトに対する空調ダクトの取付位置を上下方向及び水平方向へ容易に変位させることができる。
【0011】
また、空調ダクトには、内装パネルから側構体側に延設された受金具に対して水平方向へ移動可能に連係された連係金具を備えているので、内装パネルと空調ダクトとを取付位置に搬送する段階では、受金具に連係金具が連係された状態で、内装パネルと空調ダクトとを一体化して、空調ダクトの脱落を防止しつつ、両者を同時に取付位置へ搬送することができる。そのため、内装パネルと空調ダクトとを取付位置へ搬送する際の手間を軽減できる。
【0012】
また、内装パネルと空調ダクトとを取付位置へ搬送後、内装パネルが側構体に固定される以前では、空調ダクトの下端部が弾性部材を介して分岐ダクトに接続され、受金具と連係金具とが水平方向へ移動可能に連係していることによって、分岐ダクトに対する空調ダクトと内装パネルの位置を上下方向及び水平方向へ互いに変位させることができる。そのため、空調ダクトに邪魔されることなく、内装パネルの取付位置を、隣接する他の内装パネルとの隙間を無くすように調整することができる。また、内装パネルが側構体に固定された状態では、連係金具と受金具との間に上下方向で隙間が生じるが、連係金具と受金具とが連係することによって、連係金具は、空調ダクトの落下防止の機能を担うことができる。
【0013】
よって、本発明によれば、空調ダクトの取付けが簡単にできると共に、空調ダクトをカバーする内装パネルの取付位置の調整が容易にできる鉄道車両用空調ダクト取付構造を提供することができる。
【0014】
(2)(1)に記載された鉄道車両用空調ダクト取付構造において、
前記連係金具には、前記空調ダクトの幅方向側壁から車両前方へ延設された前連係金具と車両後方へ延設された後連係金具とを備え、
前記受金具には、前記前連係金具の前後方向中間部を支持可能に形成された前受金具と、前記後連係金具の前後方向中間部を支持可能に形成された後受金具とを備えていることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、連係金具には、空調ダクトの幅方向側壁から車両前方へ延設された前連係金具と車両後方へ延設された後連係金具とを備え、また、受金具には、前連係金具の前後方向中間部を支持可能に形成された前受金具と、後連係金具の前後方向中間部を支持可能に形成された後受金具とを備えているので、内装パネルの裏面側で、前受金具と後受金具との間に空調ダクトを挟み込んだ状態で、前連係金具を前受金具が下方から支持し、後連係金具を後受金具が下方から支持することによって、内装パネルと空調ダクトとを簡単に一体化させることができる。そのため、内装パネルを把持して搬送するだけで、空調ダクトを落下させることなく、内装パネルと空調ダクトとを同時に取付位置へ搬送することができる。
【0016】
(3)(1)又は(2)に記載された鉄道車両用空調ダクト取付構造において、
前記受金具には、前記内装パネルの上下方向中間部で幅方向外縁部に連結され前記連係金具と連係可能に形成された連係フランジ部と、当該連係フランジ部に接続され前記側構体に固定される固定フランジ部とを備えていることを特徴とする。
【0017】
本発明においては、受金具には、内装パネルの上下方向中間部で幅方向外縁部に連結され連係金具と連係可能に形成された連係フランジ部と、当該連係フランジ部に接続され側構体に固定される固定フランジ部とを備えているので、内装パネルの上下方向中間部で空調ダクトを一体化させた状態で、内装パネルを側構体に固定できる。そのため、空調ダクトの姿勢を安定して維持しつつ、隣接する他の内装パネルとの隙間を無くすように、内装パネルの取付位置を調整して、内装パネルを側構体に対してより正確に固定することができる。したがって、空調ダクトと内装パネルの取付作業を、より一層簡単に行うことができる。
【0018】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された鉄道車両用空調ダクト取付構造において、
前記分岐ダクトの上端部には、前記空調ダクトの下端部を上方から嵌合可能に形成された凹溝を備え、
前記弾性部材は、前記凹溝内に挿入されていることを特徴とする。
【0019】
本発明においては、分岐ダクトの上端部には、空調ダクトの下端部を上方から嵌合可能に形成された凹溝を備え、弾性部材は、凹溝内に挿入されているので、空調ダクトの下端部を上方から凹溝内に挿入させることによって、空調ダクトと分岐ダクトを弾性部材によってシールしつつ、簡単に接続させることができる。また、空調ダクトの下端部は、分岐ダクトの凹溝に嵌合されているだけであるので、取り外しも簡単に行うことができる。そのため、空調ダクトと分岐ダクトとの接続作業又は交換作業を、より一層簡単に行うことができる。また、凹溝内に挿入された弾性部材が撓むことによって、分岐ダクトに対する空調ダクトの位置調整を容易に行うこともできる。
【0020】
(5)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された鉄道車両用空調ダクト取付構造において、
前記弾性部材は、前記空調ダクトの下端部に装着された基端部と、当該基端部から延設され前記分岐ダクトの上端部と弾発的に当接可能に形成された弾発部とを備えていることを特徴とする。
【0021】
本発明においては、弾性部材は、空調ダクトの下端部に装着された基端部と、当該基端部から延設され分岐ダクトの上端部と弾発的に当接可能に形成された弾発部とを備えているので、分岐ダクトの上端部と当接した弾発部が撓むことによって、空調ダクトと分岐ダクトとの接続部を弾性部材によってシールしつつ、簡単に接続させることができる。また、空調ダクトの下端部は、分岐ダクトの上端部と当接した弾発部を介して接続されいるだけであるので、取り外しも簡単に行うことができる。そのため、空調ダクトと分岐ダクトとの接続作業又は交換作業を、より一層簡単に行うことができる。また、弾発部が撓むことによって、分岐ダクトに対する空調ダクトの位置調整を容易に行うこともできる。
【0022】
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載された鉄道車両用空調ダクト取付構造において、
前記内装パネルの上端部には、ゴミ除け部材が連結され、当該ゴミ除け部材は、第2の弾性部材を介して前記空調ダクトの上端部に装着されていることを特徴とする。
【0023】
本発明においては、内装パネルの上端部には、ゴミ除け部材が連結され、当該ゴミ除け部材は、第2の弾性部材を介して空調ダクトの上端部に装着されているので、空調ダクトの上端部と内装パネルの上端部とを、第2の弾性部材とゴミ除け部材とを介して連結することができる。そのため、第2の弾性部材が撓むことによって、内装パネルの上端部における位置調整が容易となると共に、内装パネルの上端部に連結されたゴミ除け部材が空調ダクトの上端部に密着して、空調ダクトへのゴミの侵入を規制させることができる。また、内装パネルを側構体に固定した状態では、第2の弾性部材が空調ダクトを下方へ押圧するので、空調ダクトと内装パネルとの位置ズレの防止機能を高めることができる。なお、この場合、内装パネルは、間接的に空調ダクトを上方から押圧した状態となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、空調ダクトの取付けが簡単にできると共に、空調ダクトをカバーする内装パネルの取付位置の微調整が容易にできる鉄道車両用空調ダクト取付構造を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本実施形態に係る鉄道車両用空調ダクト取付構造について、図面を参照しながら詳細に説明する。具体的には、本実施形態に係る鉄道車両用空調ダクト取付構造の構成例を詳細に説明した上で、その変形例を説明する。
【0027】
<本鉄道車両用空調ダクトの構成例>
まず、本実施形態に係る鉄道車両用空調ダクトの構成例について、
図1〜
図9を用いて説明する。
図1に、本発明の実施形態に係る鉄道車両用空調ダクト取付構造の一例を表す鉄道車両の概略断面図を示す。
図2に、
図1に示す鉄道車両を室内側から見た側面図を示す。
図3に、
図2に示す内装パネルと空調ダクトとの一体化ユニットにおける正面図を示す。
図4に、
図3に示すA−A断面図を示す。
図5に、
図3に示すB部の詳細斜視図を示す。
図6に、
図3に示すC−C断面図を示す。
図6(A)に、空調ダクトと分岐ダクトを接続する以前の状態の断面図を示し、
図6(B)に、空調ダクトと分岐ダクトを接続した後の状態の断面図を示す。
図7に、
図3に示すD−D断面図を示す。
図8に、
図3に示すX−X断面図を示す。
図9に、
図3に示すZ−Z断面図を示す。
【0028】
図1〜
図9に示すように、本実施形態に係る鉄道車両用空調ダクト取付構造10は、鉄道車両1の床下に配置され調和空気CAを形成する空調装置2と連通された分岐ダクト21に接続され、床近傍から上方の荷棚55下部まで延設された空調ダクト3を備え、空調ダクト3の室内寄り壁面31は、室内側からカバーする内装パネル54a(54)に当接又は近接するように形成された鉄道車両用空調ダクト取付構造10である。
【0029】
ここで、
図1〜
図3に示すように、鉄道車両1には、レール上を走行する台車(図示しない)に支持された台枠51と、台枠51の車幅方向の両側縁に接続された側構体52と、側構体52の上端に接続された屋根構体53とを備えている。また、車室空間5には、乗客が着席する客席56が、床板511の適宜位置に配置されている。床板511は、台枠51に支持体512を介して連結されている。内装パネル54の下端部543は、床板511の車幅方向の両側縁に接続されている。荷棚55は、側構体52の上端近傍から室内側に向けて突設され、車両前後方向に連続状に形成されている。荷棚55下部は、空調ダクト3の上端部33に対して所定の隙間が形成され、調和空気CAが室内側へ流れるように湾曲状に形成されている。
【0030】
また、空調装置2は、台枠51の下方に装着されている。床板511と台枠51との隙間には、空調装置2の送気ダクト23に連結された主ダクト22が車両前後方向に延設されている。主ダクト22には、側構体52に向けて複数の分岐ダクト21が接続されている。分岐ダクト21は、上端部が上方を向くように略L字状に形成されている。分岐ダクト21の上端部211は、側構体52に形成された側窓52b同士の間に配置され、床近傍から上方の荷棚55下部まで延設された空調ダクト3の下端部32に接続されている。
【0031】
また、空調ダクト3の下端部32は、筒状に形成された弾性部材7を介して分岐ダクト21の上端部211に接続され、内装パネル54は、直接的に又は間接的に空調ダクト3を上方から押圧した状態で、側構体52に固定されている。そのため、空調ダクト3の下端部32を分岐ダクト21に接続した状態で、弾性部材7が撓むことによって、シール性を担保しつつ、分岐ダクト21に対する空調ダクト3の取付位置を上下方向及び水平方向へ容易に変位させることができる。なお、弾性部材7は、全体が一体で筒状に形成されていても、適宜分割された状態で筒状に形成されていても良い。例えば、弾性部材7が、角筒状に形成されている場合、角筒を構成する各側壁を一体に連結して形成しても、各側壁をそれぞれ分割して形成しても良い。
【0032】
さらに、
図1、
図3〜
図5に示すように、空調ダクト3には、内装パネル54a(54)から側構体側に延設された受金具6に対して水平方向へ移動可能に連係された連係金具41を備えている。そのため、内装パネル54a(54)と空調ダクト3とを取付位置に搬送する段階では、受金具6に連係金具41が連係された状態で、内装パネル54a(54)と空調ダクト3とを一体化して、空調ダクト3の脱落を防止しつつ、両者を同時に取付位置へ搬送することができる。
【0033】
また、内装パネル54a(54)と空調ダクト3とを取付位置へ搬送後、内装パネル54a(54)が側構体52に固定される以前では、空調ダクト3の下端部32が弾性部材7を介して分岐ダクト21に接続され、受金具6と連係金具41とが水平方向へ移動可能に連係していることによって、分岐ダクト21に対する空調ダクト3と内装パネル54a(54)の位置を上下方向及び水平方向へ互いに変位させることができる。そのため、空調ダクト3を弾性部材7を介して分岐ダクト21に接続した後でも、空調ダクト3に邪魔されることなく、内装パネル54a(54)の取付位置を、隣接する他の内装パネル54b(54)との隙間を無くすように調整することができる。
【0034】
また、内装パネル54a(54)が側構体52に固定された状態では、連係金具41と受金具6との間に上下方向で隙間が生じるが、連係金具41と受金具6とが連係することによって、連係金具41は、空調ダクト3の落下防止の機能を担うことができる。すなわち、連係金具41を受金具6が下方から支持することによって、弾性部材7のへたりに伴う空調ダクト3の下がりを防止することもできる。
【0035】
なお、
図2、
図4に示すように、他の内装パネル54b(54)は、側窓52bの外周を室内側からカバーするように形成され、その車両前後方向外縁が、空調ダクト3を室内側からカバーする内装パネル54a(54)の幅方向外縁541に対して、室内側から当接するように形成されている。
【0036】
また、
図3〜
図5に示すように、連係金具41には、空調ダクト3の幅方向側壁34から車両前方へ延設された前連係金具41aと車両後方へ延設された後連係金具41bとを備え、そして、受金具6には、前連係金具41aの前後方向中間部を支持可能に形成された前受金具61aと、後連係金具41bの前後方向中間部を支持可能に形成された後受金具61bとを備えていることが好ましい。
【0037】
この場合には、内装パネル54a(54)の裏面側で、前受金具61aと後受金具61bとの間に空調ダクト3を挟み込んだ状態で、前連係金具41aを前受金具61aが下方から支持し、後連係金具41bを後受金具61bが下方から支持することによって、内装パネル54a(54)と空調ダクト3とを簡単に一体化させることができる。その結果、内装パネル54a(54)を把持して搬送するだけで、空調ダクト3を落下させることなく、内装パネル54a(54)と空調ダクト3とを同時に取付位置へ搬送することができる。
【0038】
さらに、受金具6(61:前受金具61a、後受金具61b)には、内装パネル54a(54)の上下方向中間部で幅方向外縁部541に連結され連係金具41(前連係金具41a、後連係金具41b)と連係可能に形成された連係フランジ部611と、当該連係フランジ部611に接続され側構体52に固定される固定フランジ部612とを備えていることが好ましい。固定フランジ部612には、側構体52対して位置調整可能に、車両上下方向と車両前後方向に形成された略T字状の締結溝612Nが形成されていても良い。また、側構体52には、固定フランジ部612の締結溝612Nに挿入するボルト522を係合させる固定座521が形成されている。
【0039】
この場合には、内装パネル54a(54)の上下方向中間部で空調ダクト3を一体化させた状態で、内装パネル54a(54)を位置調整しながら側構体52に固定できる。そのため、空調ダクト3の姿勢を安定して維持しつつ、隣接する他の内装パネル54b(54)との隙間を無くすように、内装パネル54a(54)の取付位置を調整して、内装パネル54a(54)を側構体52に対してより正確に固定することができる。したがって、空調ダクト3と内装パネル54a(54)の取付作業を、より一層簡単に行うことができる。
【0040】
なお、連係金具41には、空調ダクト3の幅方向側壁34に固定された基板412に対して、垂直状に起立する矩形状の連係板411を備え、また、受金具61(前受金具61a、後受金具61b)の固定フランジ部612には、連係フランジ部611より上方(連係金具41の連係板411側)へ突設され、連係板411と当接可能に形成された止めフランジ部612Tを備えていることが好ましい。ここで、連係板411は、その板幅方向が車両上下方向に形成され、連係板411の板幅方向の下端部411Kが、連係フランジ部611の板幅方向の上端部611Jと当接している。
【0041】
この場合には、内装パネル54a(54)と空調ダクト3とを一体化して、両者を同時に取付位置へ搬送する際、内装パネル54a(54)の裏面側で、前受金具61aと後受金具61bとの間に挟み込んだ空調ダクト3が、内装パネル54a(54)から離間したとき、連係金具41の連係板411が止めフランジ部612Tに当接することによって、空調ダクト3が落下するのを確実に阻止することができる。なお、連係板411にゴム部材(図示しない)を被覆させることによって、連係フランジ部611との間で生じるビビリ音の防止に有効となる。
【0042】
また、
図6に示すように、分岐ダクト21の上端部211には、空調ダクト3の下端部32を上方から嵌合可能に形成された凹溝212を備え、弾性部材7は、凹溝212内に挿入されていることが好ましい。この場合、空調ダクト3の下端部32を上方から凹溝212内に挿入させることによって、空調ダクト3と分岐ダクト21を弾性部材7によってシールしつつ、簡単に接続させることができる。また、空調ダクト3の下端部32は、分岐ダクト21の凹溝212に嵌合されているだけであるので、取り外しも簡単に行うことができる。そのため、空調ダクト3と分岐ダクト21との接続作業又は交換作業を、より一層簡単に行うことができる。また、凹溝212内に挿入された弾性部材7が撓むことによって、分岐ダクト21に対する空調ダクト3の位置調整を容易に行うこともできる。
【0043】
ここで、弾性部材7は、スポンジ状のシール部材であることが好ましい。その場合、上方から凹溝212内に挿入した空調ダクト3の下端部32を、シール部材が下方及び側方から包み込むことによって、空調ダクト3と弾性部材7とのシール性を更に高めることができる。
【0044】
また、
図1、
図3、
図7〜
図9に示すように、内装パネル54a(54)の上端部542には、ゴミ除け部材8が連結され、当該ゴミ除け部材8は、第2の弾性部材821を介して空調ダクト3の上端部33に装着されていることが好ましい。この場合、空調ダクト3の上端部33と内装パネル54a(54)の上端部542とを、第2の弾性部材821とゴミ除け部材8とを介して連結することができる。そのため、第2の弾性部材821が撓むことによって、内装パネル54a(54)の上端部542における位置調整が容易となると共に、内装パネル54a(54)の上端部542に連結されたゴミ除け部材8が空調ダクト3の上端部33に密着して、空調ダクト3へのゴミの侵入を規制させることができる。
【0045】
また、内装パネル54a(54)を側構体52に固定した状態では、第2の弾性部材821が空調ダクト3を下方へ押圧するので、空調ダクト3と内装パネル54a(54)との位置ズレの防止機能を高めることができる。この場合、内装パネル54a(54)は、間接的に空調ダクト3を上方から押圧した状態となるが、例えば、内装パネル54a(54)に突起部を設けて、突起部を介して直接的に空調ダクト3を上方から押圧しても良い。
【0046】
なお、ゴミ除け部材8は、調和空気CAが通過する網状部81の外周部82で内装パネル54a(54)の裏面側に固定された金具にネジ等で固定されている。ゴミ除け部材8の外周部82には、空調ダクト3の上端部33に当接する第2の弾性部材821が固定されている。また、ゴミ除け部材8の外周部82は、第1クッション材83を介して空調ダクト3の上端部33に当接されている。また、空調ダクト3の上端部33と内装パネル54a(54)の上端部542との隙間には、第2クッション部材84が挿入されている。そのため、空調ダクト3の上端部33の開口端及び外周壁は、第2の弾性部材821と第1クッション材83と第2クッション部材84とによって気密状にシールされている。
【0047】
また、内装パネル54a(54)の上端部542における前端側と後端側には、側構体52にネジ等で固定する受金具62が形成されている。また、内装パネル54a(54)の下端部543における前端側と後端側には、側構体52にネジ等で固定する受金具63が形成されている。
【0048】
<連係金具及び受金具の変形例>
次に、本実施形態に係る鉄道車両用空調ダクト取付構造10における連係金具41及び受金具61の変形例について、
図10を用いて説明する。
図10に、
図5に示す連係金具及び受金具における変形例の断面図を示す。
図10(A)に、受金具と連係金具とを連係する以前の状態の断面図を示し、
図10(B)に、受金具と連係金具とを連係した後の状態の断面図を示す。
【0049】
前述したように、本実施形態の一例では、受金具6(61:前受金具61a、後受金具61b)には、内装パネル54a(54)の上下方向中間部で幅方向外縁部541に連結され連係金具41(前連係金具41a、後連係金具41b)と連係可能に形成された連係フランジ部611と、当該連係フランジ部611に接続され側構体52に対して位置調整可能に固定される固定フランジ部612とを備えているが、必ずしも、固定フランジ部612を備えていなくても良い。例えば、受金具6Bは、連係金具41Bと連係する連係フランジ部61Bのみから成る受金具6Bで、固定フランジ部612が無い物でも良い。その場合、連係金具41Bの連係板411Bの板幅方向は、水平状に形成されていても良く、また、受金具6Bは、上方に開放されたコの字状の連係フランジ部611Bとし、水平状の遊びを持たせた状態で連係板411Bと係合可能に形成されていても良い。
【0050】
<分岐ダクト及び弾性部材の変形例>
次に、本実施形態に係る鉄道車両用空調ダクト取付構造10における分岐ダクト21及び弾性部材7の変形例について、
図11、
図12を用いて説明する。
図11に、
図6に示す弾性部材における第1変形例の断面図を示す。
図11(A)に、空調ダクトを分岐ダクトに接続する以前の状態の断面図を示し、
図11(B)に、空調ダクトを分岐ダクトに接続した後の状態の断面図を示す。
図12に、
図6に示す弾性部材における第2変形例の断面図を示す。
図12(A)に、空調ダクトを分岐ダクトに接続する以前の状態の断面図を示し、
図12(B)に、空調ダクトを分岐ダクトに接続した後の状態の断面図を示す。
【0051】
前述したように、本実施形態の一例では、分岐ダクト21の上端部211には、空調ダクト3の下端部32を上方から嵌合可能に形成された凹溝212を備え、弾性部材7は、凹溝212内に挿入されているが、必ずしも、分岐ダクト21の上端部211に凹溝212を備えている必要はない。例えば、
図11に示すように、分岐ダクト21の上端部211は、直線状に形成され、弾性部材7Bは、空調ダクト3の下端部32の外周面に嵌装させる上端部71Bと、分岐ダクト21の上端部211の外周面に嵌装させる下端部72Bとを傾斜部73Bで連結したものでも良い。
【0052】
また、例えば、
図12に示すように、分岐ダクト21の上端部211は、直線状に形成され、弾性部材7Cは、空調ダクト3の下端部32に装着された基端部71Cと、当該基端部71Cからダクト内方へ延設され分岐ダクト21の上端部211と弾発的に当接可能に形成された弾発部72Cとを備えたものでも良い。この場合、分岐ダクト21の上端部211と当接した弾発部72Cが撓むことによって、空調ダクト3と分岐ダクト21との接続部を弾性部材7Cによってシールしつつ、簡単に接続させることができる。また、空調ダクト3の下端部32は、分岐ダクト21の上端部211と当接した弾発部72Cを介して接続されいるだけであるので、取り外しも簡単に行うことができる。ここでは、以上、2つの変形例を説明したが、本願発明の要旨を変更しない限り、上記変形例以外にも様々な変形が可能なことは言うまでもない。
【0053】
<作用効果>
以上、詳細に説明した本実施形態に係る鉄道車両用空調ダクト取付構造10によれば、空調ダクト3の下端部32は、弾性部材7、7B、7Cを介して分岐ダクト21に接続され、内装パネル54a(54)は、直接的又は間接的に空調ダクト3を上方から押圧した状態で、側構体52に固定されているので、空調ダクト3の下端部32を分岐ダクト21に接続した状態で、弾性部材7、7B、7Cが撓むことによって、シール性を担保しつつ、分岐ダクト21に対する空調ダクト3の取付位置を上下方向及び水平方向へ容易に変位させることができる。
【0054】
また、空調ダクト3には、内装パネル54a(54)から側構体側に延設された受金具6に対して水平方向へ移動可能に連係された連係金具41を備えているので、内装パネル54a(54)と空調ダクト3とを取付位置に搬送する段階では、受金具6に連係金具41が連係された状態で、内装パネル54a(54)と空調ダクト3とを一体化して、空調ダクト3の脱落を防止しつつ、両者を同時に取付位置へ搬送することができる。そのため、内装パネル54a(54)と空調ダクト3とを取付位置へ搬送する際の手間を簡略化できる。
【0055】
また、内装パネル54a(54)と空調ダクト3とを取付位置へ搬送後、内装パネル54a(54)が側構体52に固定される以前では、空調ダクト3の下端部32が弾性部材7、7B、7Cを介して分岐ダクト21に接続され、受金具6と連係金具41とが水平方向へ移動可能に連係していることによって、分岐ダクト21に対する空調ダクト3と内装パネル54a(54)の位置を上下方向及び水平方向へ互いに変位させることができる。そのため、空調ダクト3に邪魔されることなく、内装パネル54a(54)の取付位置を、隣接する他の内装パネル54b(54)との隙間を無くすように調整することができる。また、内装パネル54a(54)が側構体52に固定された状態では、連係金具41と受金具6との間に上下方向で隙間が生じるが、連係金具41と受金具6とが連係することによって、連係金具41は、空調ダクト3の落下防止の機能を担うことができる。
【0056】
よって、本実施形態によれば、空調ダクト3の取付けが簡単にできると共に、空調ダクト3をカバーする内装パネル54a(54)の取付位置の調整が容易にできる鉄道車両用空調ダクト取付構造10を提供することができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、連係金具41、41Bには、空調ダクト3の幅方向側壁34から車両前方へ延設された前連係金具41aと車両後方へ延設された後連係金具41bとを備え、また、受金具6、6Bには、前連係金具41aの前後方向中間部を支持可能に形成された前受金具61aと、後連係金具41bの前後方向中間部を支持可能に形成された後受金具61bとを備えているので、内装パネル54a(54)の裏面側で、前受金具61aと後受金具61bとの間に空調ダクト3を挟み込んだ状態で、前連係金具41aを前受金具61aが下方から支持し、後連係金具41bを後受金具61bが下方から支持することによって、内装パネル54a(54)と空調ダクト3とを簡単に一体化させることができる。そのため、内装パネル54a(54)を把持して搬送するだけで、空調ダクト3を落下させることなく、内装パネル54a(54)と空調ダクト3とを同時に取付位置へ搬送することができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、受金具6には、内装パネル54a(54)の上下方向中間部に連結され連係金具41と連係可能に形成された連係フランジ部611と、当該連係フランジ部611に接続され側構体52に対して位置調整可能に固定される固定フランジ部612とを備えているので、内装パネル54a(54)の上下方向中間部で空調ダクト3を一体化させた状態で、内装パネル54a(54)を側構体52に位置調整しながら固定できる。そのため、空調ダクト3の姿勢を安定して維持しつつ、隣接する他の内装パネル54b(54)との隙間を無くすように、内装パネル54a(54)の取付位置を調整して、内装パネル54a(54)を側構体52に対してより正確に固定することができる。したがって、空調ダクト3と内装パネル54a(54)の取付作業を、より一層簡単に行うことができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、分岐ダクト21の上端部211には、空調ダクト3の下端部32を上方から嵌合可能に形成された凹溝212を備え、弾性部材7は、凹溝212内に挿入されているので、空調ダクト3の下端部32を上方から凹溝212内に挿入させることによって、空調ダクト3と分岐ダクト21を弾性部材7によってシールしつつ、簡単に接続させることができる。また、空調ダクト3の下端部32は、分岐ダクト21の凹溝212に嵌合されているだけであるので、取り外しも簡単に行うことができる。そのため、空調ダクト3と分岐ダクト21との接続作業又は交換作業を、より一層簡単に行うことができる。また、凹溝212内に挿入された弾性部材7が撓むことによって、分岐ダクト21に対する空調ダクト3の位置調整を容易に行うこともできる。
【0060】
また、本実施形態によれば、弾性部材7Cは、空調ダクト3の下端部32に装着された基端部71Cと、当該基端部71Cからダクト内方へ延設され分岐ダクト21の上端部211と弾発的に当接可能に形成された弾発部72Cとを備えているので、分岐ダクト21の上端部211と当接した弾発部72Cが撓むことによって、空調ダクト3と分岐ダクト21との接続部を弾性部材7Cによってシールしつつ、簡単に接続させることができる。また、空調ダクト3の下端部32は、分岐ダクト21の上端部211と当接した弾発部72Cを介して接続されいるだけであるので、取り外しも簡単に行うことができる。そのため、空調ダクト3と分岐ダクト21との接続作業又は交換作業を、より一層簡単に行うことができる。また、弾発部72Cが撓むことによって、分岐ダクト21に対する空調ダクト3の位置調整を容易に行うこともできる。
【0061】
また、本実施形態によれば、内装パネル54a(54)の上端部542には、ゴミ除け部材8が連結され、当該ゴミ除け部材8は、第2の弾性部材821を介して空調ダクト3の上端部33に装着されているので、空調ダクト3の上端部33と内装パネル54a(54)の上端部542とを、第2の弾性部材821とゴミ除け部材8とを介して連結することができる。そのため、第2の弾性部材821が撓むことによって、内装パネル54a(54)の上端部542における位置調整が容易となると共に、内装パネル54a(54)の上端部542に連結されたゴミ除け部材8が空調ダクト3の上端部33に密着して、空調ダクト3へのゴミの侵入を規制させることができる。また、内装パネル54a(54)を側構体52に固定した状態では、第2の弾性部材821が空調ダクト3を下方へ押圧するので、空調ダクト3と内装パネル54a(54)との位置ズレの防止機能を高めることができる。この場合、内装パネル54a(54)は、間接的に空調ダクト3を上方から押圧した状態となる。