【解決手段】搬送システム100は、下位コントローラ121を有するスタッカクレーン120と、対象物品の搬送指示をスタッカクレーン120に送信する上位コントローラ110と、スタッカクレーン120の状態を評価する評価部113と、を備え、評価部113は、下位コントローラ121から搬送指示の受信情報及び所定動作の開始情報と所定動作の開始情報及び所定動作の完了情報との少なくとも一方を取得し、情報の取得に基づいて、スタッカクレーン120の状態を評価する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術は、過去の搬送指示に基づく搬送機器の動作量の積算値を用いた予防保全の技術である。つまり、上記従来技術では、搬送機器の故障の兆候を察知して故障を未然に防ぐことは難しい。搬送機器の故障の兆候を察知するためには、搬送機器の現在の状態を正確に評価することが望まれる。
【0005】
そこで、本発明は、予知保全のために搬送機器の状態をより正確に評価することができる搬送システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る搬送システムは、下位コントローラを有する搬送機器と、対象物品の搬送指示を前記搬送機器に送信する上位コントローラと、前記搬送機器の状態を評価する評価部と、を備え、前記下位コントローラは、前記搬送指示に基づいて、前記搬送機器に、所定動作を含む搬送動作を行わせ、前記評価部は、前記下位コントローラから、搬送指示の受信情報及び前記所定動作の開始情報と前記所定動作の開始情報及び前記所定動作の完了情報との少なくとも一方を取得し、前記搬送指示の受信情報及び前記所定動作の開始情報と前記所定動作の開始情報及び前記所定動作の完了情報との少なくとも一方の取得に基づいて、前記搬送機器の状態を評価する。
【0007】
これによれば、搬送機器について、搬送指示の受信情報及び搬送動作に含まれる所定動作の開始情報を取得した時間、及び/又は、所定動作の開始情報及び完了情報の取得に基づいて、搬送機器の状態を評価することができる。したがって、過去の搬送指示に基づく搬送機器の動作量の積算値を用いるよりも、実動作を利用して搬送機器の現在の状態をより正確に評価することができ、予知保全に貢献することができる。また、搬送機器に予知保全専用のセンサなどが設置されなくても搬送機器の状態を評価することができ、より簡易に搬送機器の予知保全を実現することができる。
【0008】
また例えば、本発明の一態様に係る搬送システムにおいて、前記評価部は、前記所定動作の開始情報及び前記所定動作の完了情報を取得し、前記所定動作の開始情報を取得してから前記所定動作の完了情報を取得するまでの時間に基づいて、前記搬送機器の状態を評価してもよい。
【0009】
これによれば、所定動作の開始情報を取得してから所定動作の完了情報を取得するまでの時間に基づいて搬送機器を評価することができる。したがって、搬送機器の劣化などによる所定動作の変化を適切に評価に反映することができ、より正確な評価が可能となる。
【0010】
また例えば、本発明の一態様に係る搬送システムにおいて、前記所定動作は、第1所定動作及び前記第1所定動作に続く第2所定動作を含み、前記評価部は、前記第1所定動作の完了情報及び前記第2所定動作の開始情報を取得し、前記第1所定動作の完了情報を取得してから前記第2所定動作の開始情報を取得するまでの時間に基づいて、前記搬送機器の状態を評価してもよい。
【0011】
これによれば、第1所定動作の完了情報を取得してから第2所定動作の開始情報を取得するまでの時間に基づいて搬送機器を評価することができる。したがって、搬送機器の劣化などによる第1所定動作及び第2所定動作の間における搬送機器の変化を適切に評価に反映することができ、より正確な評価が可能となる。
【0012】
また例えば、本発明の一態様に係る搬送システムにおいて、前記評価部は、前記搬送指示の受信情報及び前記所定動作の開始情報を取得し、前記搬送指示の受信情報を取得してから前記所定動作の開始情報を取得するまでの時間に基づいて、前記搬送機器の状態を評価してもよい。
【0013】
これによれば、搬送指示の受信情報を取得してから所定動作の開始情報を取得するまでの時間に基づいて搬送機器を評価することができる。したがって、搬送機器の劣化などによる所定動作の開始に至るまでの時間の遅れ等を適切に評価に反映することができ、より正確な評価が可能となる。
【0014】
また例えば、本発明の一態様に係る搬送システムにおいて、前記評価部は、前記時間が閾値時間以上である場合に、前記時間が前記閾値時間未満である場合よりも、前記搬送機器の状態を低く評価してもよい。
【0015】
これによれば、評価対象時間が閾値時間以上である場合に、搬送機器の状態をより低く評価することができる。したがって、搬送機器の劣化などによる所定動作の開始及び/又は完了の遅延を評価に反映することができ、より正確な評価が可能となる。
【0016】
また例えば、本発明の一態様に係る搬送システムにおいて、前記評価部は、物品の種類毎に閾値時間を管理しており、前記搬送機器の状態の評価において、前記対象物品の種類に対応する閾値時間を用いてもよい。
【0017】
これによれば、搬送される物品の種類が評価対象時間に影響を与える場合に、その影響を考慮して搬送機器の状態を評価することが可能となり、より正確な評価が可能となる。
【0018】
また例えば、本発明の一態様に係る搬送システムにおいて、前記上位コントローラは、複数の搬送指示を前記搬送機器に送信し、前記評価部は、前記複数の搬送指示に基づく複数の搬送動作の各々について前記搬送機器の状態を評価し、物品の種類毎に評価結果の時系列を出力してもよい。
【0019】
これによれば、物品の種類毎に評価結果の時系列を出力することができるので、コンピュータ及び/又は作業者は、より詳細に評価結果の経時変化を認識することができ、評価結果に基づいて搬送機器の保全時期を適切に決定することが可能となる。
【0020】
また例えば、本発明の一態様に係る搬送システムにおいて、前記搬送機器は、スタッカクレーンであり、前記スタッカクレーンは、走行のための駆動力を与える駆動装置及び停止のための制動力を与える制動装置を有する走行台車と、前記走行台車から垂直に延びるマストと、前記マストに沿って昇降する昇降台と、を有し、前記第1所定動作は、前記走行台車による走行動作及び前記昇降台による昇降動作の少なくとも一方であり、前記第2所定動作は、前記昇降台に又は前記昇降台から前記対象物品を移載するための移載動作であり、前記評価部は、前記走行動作及び前記昇降動作の少なくとも一方の完了情報を取得してから前記移載動作の開始情報を取得するまでの時間に基づいて、前記マスト及び前記制動装置の少なくとも一方の状態を評価してもよい。
【0021】
これによれば、走行動作及び/又は昇降動作の完了情報を取得してから移載動作の開始情報を取得するまでの時間に基づいて、スタッカクレーンに含まれるマスト及び/又は制動装置の現在の状態をより正確に評価することができる。さらに、マスト及び/又は制動装置に予知保全専用のセンサ(例えば、ボルト緩みセンサ、摩耗センサ等)が設置されなくてもマスト及び/又は制動装置の状態を評価することができ、マスト及び/又は制動装置の予知保全をより簡易に実現することができる。
【0022】
また例えば、本発明の一態様に係る搬送システムにおいて、前記搬送機器は、走行のための駆動力を与える駆動装置を有し、前記所定動作は、前記搬送機器による走行動作であり、前記評価部は、前記走行動作の開始情報を取得してから前記走行動作の完了情報を取得するまでの時間に基づいて、前記駆動装置の状態を評価してもよい。
【0023】
これによれば、走行動作の開始情報を取得してから走行動作の完了情報を取得するまでの時間に基づいて、搬送機器に含まれる駆動装置の現在の状態をより正確に評価することができる。さらに、駆動装置に予知保全専用のセンサが設置されなくてもよく、駆動装置の状態をより簡易に評価することができる。このような評価の結果を用いることで、コンピュータ及び/又は作業者は、駆動装置の保全時期を適切に決定することが可能となる。
【0024】
また例えば、本発明の一態様に係る搬送システムにおいて、前記搬送機器は、前記搬送機器に又は前記搬送機器から物品を移載する移載装置を有し、前記所定動作は、前記移載装置による前記対象物品の移載動作であり、前記評価部は、前記移載動作の開始情報を取得してから前記移載動作の完了情報を取得するまでの時間に基づいて、前記移載装置の状態を評価してもよい。
【0025】
これによれば、移載動作の開始情報を取得してから移載動作の完了情報を取得するまでの時間に基づいて、搬送機器に含まれる移載装置の現在の状態をより正確に評価することができる。さらに、移載装置に予知保全専用のセンサが設置されなくてもよく、移載装置の状態をより簡易に評価することができる。このような評価の結果を用いることで、コンピュータ及び/又は作業者は、移載装置の保全時期を適切に決定することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、予知保全のために搬送機器の状態をより正確に評価することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0029】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。
【0030】
また、各図は、必ずしも厳密に図示したものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0031】
また、以下において、平行及び垂直などの要素間の関係性を示す用語、及び、矩形状などの要素の形状を示す用語は、厳格な意味のみを表すのではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する。
【0032】
[1.搬送システムの物理的な構成]
まず、本実施の形態における搬送システム100の物理的な構成例について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、実施の形態における搬送システム100の斜視図である。搬送システム100は、予知保全のために搬送機器の状態を評価するシステムである。本実施の形態では、搬送システム100は、上位コントローラ110とスタッカクレーン120とを備える。
【0033】
上位コントローラ110は、例えば、プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータである。プロセッサは、メモリに格納されたインストラクション又はソフトウェアプログラムが実行されたときに各種処理を行うことができる。また、上位コントローラ110は、例えば、専用の電子回路で実現されてもよい。
【0034】
スタッカクレーン120は、搬送機器の一例であり、ラック80に物品10を収納し、ラック80から物品10を取り出す。なお、本実施の形態では、スタッカクレーン120を搬送機器の一例として説明するが、搬送機器は、スタッカクレーン120に限定されない。例えば、搬送機器は、シャトル式倉庫で利用される機器であってもよい。具体的には、搬送機器は、垂直方向に物品を搬送する昇降搬送機器(例えばバーチカルコンベア)、水平方向に物品を搬送する搬送台車、又は、昇降搬送機器と搬送台車との間で物品を受け渡すコンベア(例えばローラコンベア)であってもよい。つまり、搬送機器は、物品10を搬送可能な機器であればどのような機器であってもよく、例えばコンベア、有軌道台車又は無軌道台車であってもよい。
【0035】
図1に示すように、スタッカクレーン120は、走行台車20と、一対のマスト30と、昇降台51と、下位コントローラ121と、を備える。
【0036】
走行台車20は、走行動作を行うために、駆動力を与える駆動装置21と、制動力を与える制動装置22と、を備える。なお、
図1において、駆動装置21及び制動装置22の図示は省略されている。走行台車20は、駆動装置21によって与えられる駆動力により、床面に設置された下部レール12に沿って走行する。また、走行台車20は、制動装置22によって与えられる制動力により、下部レール12上の任意の位置で停止する。
【0037】
一対のマスト30は、走行台車20からそれぞれ垂直に延びている。一対のマスト30の上端は、図示しない上部台車に支持されており、上部台車は、上方に配置された上部レール11に沿って、走行台車20と同期して移動する。なお、本実施の形態では、スタッカクレーン120は、一対のマスト30を有しているが、マストの本数は、特に限定されない。例えば、スタッカクレーン120は、1本のマストのみを有してもよいし、3本以上のマストを有してもよい。
【0038】
昇降台51は、昇降動作を行う。具体的には、昇降台51は、図示しない駆動装置の駆動力により、一対のマスト30に沿って昇降する。また、昇降台51は、図示しない制動装置の制動力により、一対のマスト30の任意の位置で停止する。
【0039】
また、昇降台51は、物品10の移載動作を行う移載装置52を有する。移載装置52の移載方法としては、特に限定されないが、例えばサイドアームによって物品10を左右からクランプすることにより物品10を移載する方法を用いることができる。
【0040】
下位コントローラ121は、例えば走行台車20に固定された箱体に収容された制御盤であり、上位コントローラ110又は作業員の指示により、走行台車20の走行動作、昇降台51の昇降動作、及び、移載装置52の移載動作等を制御する。より具体的には、下位コントローラ121は、物品10をラック80に収納する場合に、例えば以下のように各装置の動作を制御する。
【0041】
まず、下位コントローラ121は、走行台車20を、ベルトコンベア57から物品10を受け取る位置まで走行させる。続いて、下位コントローラ121は、移載装置52に、ベルトコンベア57から昇降台51へ物品10を移載させる。そして、下位コントローラ121は、走行台車20を、物品10を収納するためのラック80の位置(水平位置)まで走行させるとともに、昇降台51を、物品10を収納するためのラック80の位置(垂直位置)まで上昇させる。最後に、下位コントローラ121は、移載装置52に、昇降台51からラック80へ物品10を移載させる。以上により、物品10がラック80に収納される。
【0042】
[2.搬送システムの機能的な構成]
次に、本実施の形態における搬送システム100の機能的な構成について、
図2〜
図4を参照しながら説明する。
図2は、実施の形態における搬送システム100の機能構成を示すブロック図である。
【0043】
図2に示すように、搬送システム100は、上位コントローラ110と、スタッカクレーン120と、を備える。上位コントローラ110は、評価部113と、記憶部112と、表示部114と、通信部111と、を備える。スタッカクレーン120は、下位コントローラ121と、駆動装置21及び制動装置22を有する走行台車20と、移載装置52を有する昇降台51と、マスト30と、を備える。以下に、上位コントローラ110の各機能ブロックについて説明する。
【0044】
通信部111は、下位コントローラ121と有線又は無線でデータ通信を行うための通信アダプタである。通信部111は、例えば他のシステムからの指示に基づいて、対象物品の搬送指示をスタッカクレーン120に送信する。搬送指示とは、スタッカクレーン120を出発位置から目的位置に移動させることを指示する情報である。搬送指示は、例えば、出発位置を示す情報、及び、目的位置を示す情報等を含むことができる。
【0045】
通信部111は、さらに、下位コントローラ121から、搬送指示に基づく搬送動作に含まれる各種動作の開始情報及び完了情報を受信する。具体的には、通信部111は、スタッカクレーン120が第1所定動作を開始するときに下位コントローラ121により送信された第1所定動作の開始情報を受信する。以下において、スタッカクレーン120における第1所定動作の開始情報を第1情報と呼ぶ。さらに、通信部111は、スタッカクレーン120が第1所定動作を完了したときに下位コントローラ121により送信された第1所定動作の完了情報を受信する。以下において、スタッカクレーン120における第1所定動作の完了情報を第2情報と呼ぶ。また、スタッカクレーン120が第1所定動作に続く後続動作である第2所定動作を開始するときに下位コントローラ121により送信された第2所定動作の開始情報を受信する。以下において、スタッカクレーン120における第2所定動作の開始情報を第3情報と呼ぶ。
【0046】
所定動作とは、搬送動作に含まれる動作であって、搬送機器の状態の評価に利用される動作である。所定動作としては、経験的及び/又は実験的に予め定められた動作を用いることができる。例えば、所定動作として、走行動作、昇降動作、移載動作、又は、それらの任意の組み合わせ等を用いることができるが、これに限定されない。
【0047】
記憶部112は、例えば半導体メモリ及び/又はハードディスクドライブであり、物品の種類毎に閾値時間を管理している。具体的には、記憶部112は、複数の物品の種類と複数の閾値時間とを対応付ける閾値時間情報112aを記憶している。また、記憶部112は、物品(種類)がどこに保管されているかを示す情報を記憶している。
【0048】
物品の種類は、スタッカクレーン120に搬送される物品の、スタッカクレーン120の状態の評価に適した分類である。例えば、物品の種類は、物品の重量、形状、大きさ、又は、それらの任意の組み合わせによって定義される。なお、物品の種類では、スタッカクレーン120が空の状態で走行することに対応する物品無しが分類されてもよい。
【0049】
閾値時間は、スタッカクレーン120の状態の評価に用いられる時間である。閾値時間としては、経験的及び/又は実験的に予め定められた時間を用いることができる。
【0050】
図3は、実施の形態における閾値時間情報112aの一例を示す図である。
図3の閾値時間情報112aでは、例えば物品の種類Type1〜Type3に閾値時間TT1〜TT3がそれぞれ対応付けられている。なお、
図3の閾値時間情報112aは、物品の種類毎に閾値時間を管理するための手段の例示であり、閾値時間の管理するための手段は、これに限定されない。
【0051】
評価部113は、スタッカクレーン120の予知保全のために、スタッカクレーン120の状態を評価する。具体的には、評価部113は、下位コントローラ121における第1情報の送信から第2情報の送信までの第1時間と第2情報の送信から第3情報の送信までの第2時間との少なくとも一方に基づいて、スタッカクレーン120の状態を評価する。例えば、評価部113は、第1時間及び/又は第2時間が長いほどスタッカクレーン120の状態をより低く評価する。
【0052】
より具体的には、評価部113は、第1時間及び/又は第2時間が閾値時間以上である場合に、第1時間及び/又は第2時間が閾値時間未満である場合よりも、スタッカクレーン120の状態を低く評価する。逆に、評価部113は、第1時間及び/又は第2時間が閾値時間未満である場合に、第1時間及び/又は第2時間が閾値時間以上である場合よりも、スタッカクレーン120の状態を高く評価する。これにより、閾値時間を基準に第1時間及び/又は第2時間を評価することができ、コンピュータ及び/又は作業員は、スタッカクレーン120の保全時期を簡単に決定することができる。
【0053】
第1時間及び第2時間は、第1情報、第2情報及び第3情報の送信時刻から得ることができる。第1情報、第2情報及び第3情報の送信時刻は、例えば、第1情報、第2情報及び第3情報にそれぞれ含まれてもよい。なお、送信時刻として、送信時刻と実質的に同一とみなせる時刻が用いられてもよい。例えば、第1情報、第2情報及び第3情報の送信時刻として、上位コントローラ110における第1情報、第2情報及び第3情報の受信時刻が用いられてもよい。また例えば、第1情報、第2情報及び第3情報の送信時刻として、第1情報、第2情報及び第3情報に含まれるタイムスタンプが用いられてもよい。
【0054】
第1時間及び第2時間としては、第1時間及び第2時間そのものが用いられてもよいし、これらを補正して得られる時間が用いられてもよい。補正としては、特に限定されないが、例えば搬送される物品(対象物品)、搬送経路、搬送距離、又は、これらの任意の組み合わせに基づく補正を用いることができる。
【0055】
また、閾値時間としては、記憶部112に格納された閾値時間情報112aにおいて、対象物品の種類に対応する閾値時間を用いることができるが、これに限定されない。例えば、対象物品の種類によらず固定の閾値時間が用いられてもよい。
【0056】
なお、評価部113は、閾値時間及び第1時間の差分時間、及び/又は、閾値時間及び第2時間の差分時間から算出される評価値を用いて、スタッカクレーン120の状態を評価してもよい。評価値の算出方法は、特に限定されないが、例えば第1時間について以下の式(1)に基づいて、評価値を算出することができる。
【0057】
評価値=(閾値時間−第1時間)/閾値時間 ・・・ (1)
【0058】
式(1)に示すように、閾値時間から第1時間を減算した値を閾値時間で除算して得られる値が評価値として用いられる場合、評価部113は、評価値が大きいほど、スタッカクレーン120の状態をより高く評価することができる。
【0059】
また、例えば以下の式(2)に基づいて、評価値を算出することもできる。
【0060】
評価値=(第1時間−閾値時間)/閾値時間 ・・・ (2)
【0061】
式(2)に示すように、第1時間から閾値時間を減算した値を閾値時間で除算して得られる値が評価値として用いられる場合、評価部113は、評価値が大きいほど、スタッカクレーン120の状態をより低く評価することができる。
【0062】
表示部114は、例えば液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等であり、評価部113による評価結果を表示する。例えば、表示部114は、複数の搬送指示に基づく複数の搬送動作で評価された結果の時系列を物品の種類毎に表示する。
【0063】
図4は、実施の形態における評価結果の出力例を示す図である。
図4において、横軸は時間を示し、縦軸は評価結果を示す。破線は、第1時間及び/又は第2時間が閾値時間と一致する閾値評価を表す。
【0064】
図4では、物品の種類Type1に属する物品の搬送動作に基づくスタッカクレーン120の状態の評価結果の時系列が表示されている。評価結果は、物品の種類毎に、及び、日毎に集計されている。スタッカクレーン120の状態の評価は、徐々に低下し、9日に閾値評価を下回っている。この評価結果を参照することで、作業者は、9日にスタッカクレーン120の保全が必要なことを認識することができる。
【0065】
なお、
図4の評価結果の表示は、一例であり、これに限定されない。例えば、複数の物品の種類の評価結果が画面上に一緒に表示されてもよい。
【0066】
[3.搬送システムの動作及び処理]
次に、以上のように構成された搬送システム100の動作及び処理について
図5を参照しながら説明する。
図5は、実施の形態における搬送システム100のシーケンス図である。
【0067】
図5では、まず、上位コントローラ110は、搬送指示を下位コントローラ121に送信する(S101)。
【0068】
下位コントローラ121は、搬送指示に基づいて、スタッカクレーン120に搬送動作を行わせる。このとき、下位コントローラ121は、搬送動作に含まれる第1所定動作を開始するときに、第1情報を上位コントローラ110に送信する(S102)。
【0069】
そして、スタッカクレーン120は、第1所定動作を行う(S103)。下位コントローラ121は、第1所定動作が完了したときに、上位コントローラ110に第2情報を送信する(S104)。続いて、下位コントローラ121は、第1所定動作の後続動作である第2所定動作を開始するときに、上位コントローラ110に第3情報を送信する(S105)。その後、スタッカクレーン120は、第2所定動作を行う(S106)。
【0070】
このような第1所定動作及び第2所定動作を含む搬送動作が行われた後に、上位コントローラ110は、第1情報の送信から第2情報の送信までの第1時間と第2情報の送信から第3情報の送信までの第2時間との少なくとも一方に基づいて、スタッカクレーン120の状態を評価する(S111)。そして、上位コントローラ110は、評価結果を出力する(S112)。
【0071】
なお、
図5では、第1所定動作が、搬送動作内の最初の動作である場合を説明しているが、これに限定されない。第1所定動作は、2番目以降の動作であってもよい。また、評価に第2時間が用いられない場合は、搬送動作は、第2所定動作を含まなくてもよい。
【0072】
[4.効果など]
以上説明したように、本実施の形態における搬送システム100は、下位コントローラ121を有するスタッカクレーン120と、対象物品の搬送指示をスタッカクレーン120に送信する上位コントローラ110と、スタッカクレーン120の状態を評価する評価部113と、を備え、下位コントローラ121は、搬送指示に基づいて、スタッカクレーン120に、第1所定動作及び第1所定動作に続く第2所定動作を含む搬送動作を行わせ、第1所定動作を完了したときに第1所定動作の完了情報(第2情報)を上位コントローラ110に送信し、第2所定動作を開始するときに第2所定動作の開始情報(第3情報)を上位コントローラ110に送信し、評価部113は、第2情報の送信から第3情報の送信までの第2時間に基づいて、スタッカクレーン120の状態を評価する。
【0073】
これによれば、スタッカクレーン120の搬送動作に含まれる第1所定動作の完了及び第2所定動作の開始にともなって下位コントローラ121から上位コントローラ110へ送信される情報の送信間隔を利用して、スタッカクレーン120の状態を評価することができる。したがって、過去の搬送指示に基づく搬送機器の動作量の積算値を用いる場合よりも、スタッカクレーン120の現在の状態をより正確に評価することができ、予知保全に貢献することができる。特に、第1所定動作の完了情報の送信から第2所定動作の開始情報の送信までの第2時間を用いることで、スタッカクレーン120の劣化などによる第1所定動作及び第2所定動作の間におけるスタッカクレーン120の変化を適切に評価に反映することができ、より正確な評価が可能となる。また、スタッカクレーン120に予知保全専用のセンサなどが設置されなくてスタッカクレーン120の状態を評価することができ、より簡易にスタッカクレーン120の予知保全を実現することができる。
【0074】
また例えば、本実施の形態における搬送システム100において、評価部113は、第1所定動作の完了情報の送信から第2所定動作の開始情報の送信までの時間が閾値時間以上である場合に、時間が閾値時間未満である場合よりも、スタッカクレーン120の状態を低く評価してもよい。
【0075】
これによれば、第1所定動作の完了情報の送信から第2所定動作の開始情報の送信までの時間が閾値時間以上である場合に、スタッカクレーン120の状態をより低く評価することができる。したがって、スタッカクレーン120の劣化などによる後続動作の開始の遅延を評価に反映することができ、より正確な評価が可能となる。
【0076】
また例えば、本実施の形態における搬送システム100において、評価部113は、物品の種類毎に閾値時間を管理しており、スタッカクレーン120の状態の評価において、対象物品の種類に対応する閾値時間を用いてもよい。
【0077】
これによれば、搬送される物品の種類が第1時間及び/又は第2時間に影響を与える場合に、その影響を考慮してスタッカクレーン120の状態を評価することが可能となり、より正確な評価が可能となる。
【0078】
また例えば、本実施の形態における搬送システム100において、上位コントローラ110は、複数の搬送指示をスタッカクレーン120に送信し、評価部113は、複数の搬送指示に基づく複数の搬送動作の各々についてスタッカクレーン120の状態を評価し、物品の種類毎に評価結果の時系列を出力してもよい。
【0079】
これによれば、物品の種類毎に評価結果の時系列を出力することができるので、コンピュータ及び/又は作業者は、より詳細に評価結果の経時変化を認識することができ、評価結果に基づいてスタッカクレーン120の保全時期を適切に決定することが可能となる。
【0080】
また例えば、本実施の形態における搬送システム100において、下位コントローラ121は、さらに、第1所定動作を開始するときに第1所定動作の開始情報(第1情報)を上位コントローラに送信し、評価部113は、さらに、第1所定動作の開始情報の送信から第1所定動作の完了情報の送信までの第1時間に基づいて、スタッカクレーン120の状態を評価してもよい。
【0081】
これによれば、第1所定動作の開始情報の送信から第1所定動作の完了情報の送信までの時間を評価に用いることができ、スタッカクレーン120の劣化などによる第1所定動作の変化を適切に評価に反映することができ、より正確な評価が可能となる。
【0082】
また、本実施の形態における搬送システム100は、下位コントローラ121を有するスタッカクレーン120と、対象物品の搬送指示をスタッカクレーン120に送信する上位コントローラ110と、スタッカクレーン120の状態を評価する評価部113と、を備え、下位コントローラ121は、搬送指示に基づいて、スタッカクレーン120に、第1所定動作を含む搬送動作を行わせ、第1所定動作を開始するときに第1所定動作の開始情報(第1情報)を上位コントローラ110に送信し、第1所定動作を完了したときに第1所定動作の完了情報(第2情報)を上位コントローラ110に送信し、評価部113は、第1情報の送信から第2情報の送信までの第1時間に基づいて、スタッカクレーン120の状態を評価する。
【0083】
これによれば、スタッカクレーン120の搬送動作に含まれる第1所定動作の開始及び完了にともなって下位コントローラ121から上位コントローラ110へ送信される情報の送信間隔を利用して、スタッカクレーン120の状態を評価することができる。したがって、過去の搬送指示に基づくスタッカクレーン120の動作量の積算値を用いるよりも、スタッカクレーン120の現在の状態をより正確に評価することができ、予知保全に貢献することができる。特に、第1所定動作の開始情報の送信から第1所定動作の完了情報の送信までの時間を用いることで、スタッカクレーン120の劣化などによる第1所定動作の変化を適切に評価に反映することができ、より正確な評価が可能となる。また、スタッカクレーン120に予知保全専用のセンサなどが設置されなくてもスタッカクレーン120の状態を評価することができ、より簡易にスタッカクレーン120の予知保全を実現することができる。
【0084】
[5.実施例]
次に、以上のように構成された実施の形態1における搬送システム100の実施例1〜3について説明する。
【0085】
[5.1.実施例1]
実施例1では、第1所定動作として、走行台車20による走行動作及び/又は昇降動作が用いられる。また、第2所定動作としては、昇降台51に又は昇降台51から対象物品を移載するための移載装置52による移載動作が用いられる。
【0086】
この場合、評価部113は、走行動作及び/又は昇降動作の完了情報の送信から移載動作の開始情報の送信までの時間に基づいて、マスト30及び走行台車20の制動装置22の少なくとも一方の状態を評価する。
【0087】
走行動作及び/又は昇降動作に続く移載動作は、位置センサなどによって検出される昇降台51の位置が目標位置と一致している状態が維持された後に開始される。そのため、走行動作及び/又は昇降動作の完了後に、昇降台51が揺れていたり、昇降台51の停止位置が目標位置からずれていたりすれば、移載動作の開始が遅延する。
【0088】
マスト30及び/又はマスト30の固定部材等の劣化は、走行動作及び/又は昇降動作の完了後におけるマスト30の揺れの増加、及び、それにともなう昇降台51の揺れの増加を引き起こす可能性がある。また、制動装置22の劣化は、走行台車20の停止位置のずれの増加、及び、それにともなう昇降台51の目標位置からのずれの増加を引き起こす可能性がある。ゆえに、マスト30及び/又は制動装置22の劣化は、移載動作の開始の遅延を引き起こす可能性がある。
【0089】
したがって、搬送システム100は、走行動作及び/又は昇降動作の完了情報の送信から移載動作の開始情報の送信までの時間に基づいて、スタッカクレーン120に含まれるマスト30及び/又は走行台車20の制動装置22の現在の状態をより正確に評価することができる。さらに、マスト30及び/又は制動装置22に予知保全専用のセンサ(例えば、ボルト緩みセンサ、摩耗センサ等)が設置されなくてもマスト30及び/又は制動装置22の状態を評価することができ、搬送システム100は、マスト30及び/又は制動装置22の予知保全をより簡易に実現することができる。
【0090】
[5.2.実施例2]
次に、実施の形態1における搬送システム100の実施例2について説明する。
【0091】
本実施例では、所定動作として、走行台車20による走行動作が用いられる。評価部113は、走行動作の開始情報の送信から走行動作の完了情報の送信までの時間に基づいて、走行台車20の駆動装置21の状態を評価する。
【0092】
駆動装置21の劣化は、走行台車20の加速度及び/又は最高速度の低下を引き起こす可能性がある。ゆえに、駆動装置21の劣化は、走行動作の開始から完了までの時間の増加を引き起こす可能性がある。
【0093】
したがって、搬送システム100は、走行動作の開始情報の送信から走行動作の完了情報の送信までの時間に基づいて、スタッカクレーン120に含まれる走行台車20の駆動装置21の現在の状態をより正確に評価することができる。さらに、駆動装置21に予知保全専用のセンサが設置されなくても駆動装置21の状態を評価することができ、駆動装置21の予知保全をより簡易に実現することができる。
【0094】
なお、本実施例では、閾値時間は、搬送距離に応じて調整されてもよい。または、第1時間及び搬送距離から算出される平均速度が評価に用いられてもよい。この場合、閾値時間の代わりに閾値速度が用いられればよい。
【0095】
[5.3.実施例3]
次に、実施の形態1における搬送システム100の実施例3について説明する。
【0096】
本実施例では、所定動作として、移載装置52による移載動作が用いられる。評価部113は、移載動作の開始情報の送信から移載動作の完了情報の送信までの時間に基づいて、移載装置52の状態を評価する。
【0097】
移載装置52の劣化では、例えばモータが劣化したり、モータの駆動力を伝達するチェーンが伸びたりする。したがって、移載装置52の劣化は、移載装置52による移載速度の低下を引き起こす可能性がある。ゆえに、移載装置52の劣化は、移載動作の開始から完了までの時間の増加を引き起こす可能性がある。
【0098】
したがって、搬送システム100は、移載動作の開始情報の送信から移載動作の完了情報の送信までの時間に基づいて、スタッカクレーン120に含まれる移載装置52の現在の状態をより正確に評価することができる。さらに、移載装置52に予知保全専用のセンサが設置されなくても移載装置52の状態を評価することができ、移載装置52の予知保全をより簡易に実現することができる。
【0099】
(他の実施の形態)
以上、本発明に係る搬送システム100について、実施の形態及びその実施例に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、上記実施の形態及び実施例に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を上記実施の形態又は実施例に施したものも、あるいは、上記説明された複数の構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0100】
例えば、上記実施の形態では、評価部113は、上位コントローラ110に含まれていたが、これに限定されない。評価部113は、下位コントローラ121に含まれてもよい。この場合、評価部113は、所定動作の開始情報及び/又は完了情報が下位コントローラ121から上位コントローラ110に送信されなくても、所定動作の開始情報及び/又は完了情報を取得することができる。また、評価部113は、上位コントローラ110及び下位コントローラ121とは異なる他の装置(例えば、クラウドサーバ、タブレットコンピュータ等)に含まれてもよい。
【0101】
また、上記実施の形態では、搬送システム100は、上位コントローラ110内に表示部114を含んでいたが、これに限定されない。例えば、搬送システム100は、表示部114の代わりに、搬送機器に設置されたランプなどを備えてもよい。この場合、ランプは、例えば第1時間又は第2時間が閾値時間以上であるときに点灯され、そうでないときに消灯されてもよい。また、表示部114は、上位コントローラ110と異なる装置に含まれてもよい。例えば、表示部114は、作業者の情報端末(例えば、タブレットコンピュータ、スマートフォン等)に含まれてもよい。
【0102】
また、上記実施の形態では、物品の種類毎に閾値時間が管理されていたが、これに限定されない。例えば、同一又は類似する種類の物品のみが搬送される搬送システムでは、すべての物品に共通の閾値時間が用いられてもよい。
【0103】
また、上記実施の形態では、第1所定動作の開始情報の送信から第1所定動作の完了情報の送信までの第1時間及び第1所定動作の完了情報の送信から第2所定動作の開始情報の送信までの第2時間が評価に用いられていたが、これに限定されない。例えば、上位コントローラ110から下位コントローラ121への搬送指示の送信から所定動作の開始情報の送信までの第3時間が評価に用いられてもよい。つまり、評価部113は、搬送指示の受信情報を取得してから所定動作の開始情報を取得するまでの時間に基づいて、搬送機器の状態を評価してもよい。
【0104】
また、上記実施例1〜3は、任意に組み合わせて実施されてもよい。