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特開2021-193175接合体の製造方法、接合体、及び導電粒子含有ホットメルト接着シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-193175(P2021-193175A)
(43)【公開日】2021年12月23日
(54)【発明の名称】接合体の製造方法、接合体、及び導電粒子含有ホットメルト接着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/30 20180101AFI20211126BHJP
   C09J 177/00 20060101ALI20211126BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20211126BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20211126BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20211126BHJP
   H01B 5/16 20060101ALI20211126BHJP
【FI】
   C09J7/30
   C09J177/00
   C09J11/04
   C09J167/00
   C09J11/06
   H01B5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2021-93292(P2021-93292)
(22)【出願日】2021年6月2日
(31)【優先権主張番号】特願2020-98844(P2020-98844)
(32)【優先日】2020年6月5日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(74)【代理人】
【識別番号】100185845
【弁理士】
【氏名又は名称】穂谷野 聡
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 博之
(72)【発明者】
【氏名】阿部 智幸
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5G307
【Fターム(参考)】
4J004AA15
4J004AA16
4J004AB03
4J004BA02
4J004FA05
4J040EG001
4J040HA076
4J040HB22
4J040KA03
4J040KA32
4J040LA08
4J040MA02
4J040MA10
4J040MB05
4J040MB09
4J040NA19
4J040PA08
4J040PA30
5G307HA02
5G307HB03
5G307HC01
(57)【要約】
【課題】優れた接着強度及び接続信頼性を得ることができる接合体の製造方法、接合体、導電粒子含有ホットメルト接着シートを提供する。
【解決手段】第1の電子部品10と第2の電子部品20とを、カルボキシル基を有する結晶性ポリアミド樹脂を含むバインダー中にはんだ粒子を含有する導電粒子含有ホットメルト接着剤シートを介して熱圧着し、第1の電子部品10の導通部11と第2の電子部品20の導通部21とを接続させる接合体の製造方法であって、はんだ粒子の融点が、熱圧着の温度の−30〜0℃であり、導電粒子含有ホットメルト接着シートの溶融粘度を昇温速度5℃/分の条件にて測定したとき、熱圧着の温度の−20℃における溶融粘度に対する前記熱圧着の温度の−40℃における溶融粘度の比が10以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電子部品と第2の電子部品とを、カルボキシル基を有する結晶性ポリアミド樹脂を含むバインダー中にはんだ粒子を含有する導電粒子含有ホットメルト接着剤シートを介して熱圧着し、前記第1の電子部品の導通部と前記第2の電子部品の導通部とを接続させる接合体の製造方法であって、
前記はんだ粒子の融点が、前記熱圧着の温度の−30〜0℃であり、
前記導電粒子含有ホットメルト接着シートの溶融粘度を昇温速度5℃/分の条件にて測定したとき、前記熱圧着の温度の−20℃における溶融粘度に対する前記熱圧着の温度の−40℃における溶融粘度の比が10以上である接合体の製造方法。
【請求項2】
前記導電粒子含有ホットメルト接着シートの溶融粘度を昇温速度5℃/分の条件にて測定したとき、120℃における溶融粘度に対する100℃における溶融粘度の比が10以上である請求項1記載の接合体の製造方法。
【請求項3】
前記バインダーが、結晶性ポリエステル樹脂をさらに含む請求項1又は2記載の接合体の製造方法。
【請求項4】
前記バインダーに占める前記結晶性ポリアミド樹脂の割合が、50〜100wt%である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
【請求項5】
前記導電粒子含有ホットメルト接着シートが、フラックス化合物をさらに含有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
【請求項6】
前記フラックス化合物が、カルボン酸であり、
前記カルボン酸の含有量が、前記バインダー100質量部に対して1〜10質量部である請求項5記載の接合体の製造方法。
【請求項7】
前記はんだ粒子が、Sn−Bi−Cu合金、Sn−Bi−Ag合金、Sn−Bi合金、Sn−Pb−Bi合金、及びSn−In合金からなる群より選択される1種以上である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
【請求項8】
前記はんだ粒子の含有量が、前記バインダー100重量部に対して40〜320重量部である請求項1乃至7のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
【請求項9】
前記はんだ粒子の平均粒子径が、前記導電粒子含有ホットメルト接着シートの厚みの70%以上である請求項1乃至8のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
【請求項10】
前記第1の電子部品及び前記第2の電子部品の少なくとも一方の導通部が、水溶性プリフラックス処理されてなる請求項1乃至9のいずれか1項に記載の接合体の製造方法
【請求項11】
前記熱圧着の温度が、120〜180℃である請求項1乃至10のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
【請求項12】
第1の電子部品と、第2の電子部品と、第1の電子部品の導通部と第2の電子部品の導通部とを接続する接着層とを備え、
前記接着層は、カルボキシル基を有する結晶性ポリアミド樹脂を含むバインダー中に融点が130〜160℃であるはんだ粒子を含有し、溶融粘度を昇温速度5℃/分の条件にて測定したとき、120℃における溶融粘度に対する100℃における溶融粘度の比が10以上である接合体。
【請求項13】
前記第1の電子部品及び前記第2の電子部品の少なくとも一方の導通部が、水溶性プリフラックス処理されてなる請求項12記載の接合体。
【請求項14】
カルボキシル基を有する結晶性ポリアミド樹脂を含むバインダー中に融点が130〜160℃であるはんだ粒子を含有し、溶融粘度を昇温速度5℃/分の条件にて測定したとき、120℃における溶融粘度に対する100℃における溶融粘度の比が10以上である導電粒子含有ホットメルト接着シート。
【請求項15】
溶融粘度を昇温速度5℃/分の条件にて測定したとき、120℃における溶融粘度に対する100℃における溶融粘度の比が10以上である請求項14記載の導電粒子含有ホットメルト接着シート。
【請求項16】
前記バインダーが、結晶性ポリエステル樹脂をさらに含む請求項14又は15記載の導電粒子含有ホットメルト接着シート。
【請求項17】
前記バインダーに占める前記結晶性ポリアミド樹脂の割合が、50〜100wt%である請求項14乃至16のいずれか1項に記載の導電粒子含有ホットメルト接着シート。
【請求項18】
フラックス化合物をさらに含有する請求項14乃至17のいずれか1項に記載の導電粒子含有ホットメルト接着シート。
【請求項19】
前記フラックス化合物が、カルボン酸であり、
前記カルボン酸の含有量が、前記バインダー100質量部に対して1〜10質量部である請求項18記載の導電粒子含有ホットメルト接着シート。
【請求項20】
前記はんだ粒子が、Sn−Bi−Cu合金、Sn−Bi−Ag合金、Sn−Bi合金、Sn−Pb−Bi合金、及びSn−In合金からなる群より選択される1種以上である請求項14乃至19のいずれか1項に記載の導電粒子含有ホットメルト接着シート。
【請求項21】
前記はんだ粒子の含有量が、前記バインダー100重量部に対して40〜320重量部である請求項14乃至20のいずれか1項に記載の導電粒子含有ホットメルト接着シート。
【請求項22】
前記はんだ粒子の平均粒子径が、当該導電粒子含有ホットメルト接着シートの厚みの70%以上である請求項14乃至21のいずれか1項に記載の導電粒子含有ホットメルト接着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、導電粒子含有ホットメルト接着シートを用いた接合体の製造方法及び接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品同士を接続する手段として、異方性導電フィルム(ACF)、異方性導電ペースト(ACP)などの接続材料が用いられている。ACFは、例えば、熱硬化性樹脂を含んだ絶縁性バインダーに導電性粒子が分散されてなるフィルム状の接続材料である。ACPは、例えば、熱硬化性樹脂を含んだ絶縁性バインダーに導電性粒子が分散されてなるペースト状の接続材料である。異方導電接続したい電子部品同士の電極部分を、ACFやACPを介して熱圧着することにより、熱硬化性樹脂を含んだバインダーを熱硬化させて接続を行う。これらのACFやACPは、導電粒子を含有した接着フィルムや接着剤の一例である。
【0003】
近年、電子部品同士の接続には、低温、低圧力、および短時間での接続が要求されている。低温での接続は、電子部品の熱的ダメージを低減する観点、接続の際の加熱温度のバラツキを防ぐ観点、実装設備への負荷の低減の観点などから要求されている。低圧力での接続は、基板の特性(基板の薄さや構成、材質)から生じるダメージの観点などから要求されている。短時間での接続は、生産性の観点などから要求されている。
【0004】
しかし、従来のACFでは、熱硬化性樹脂を用いるため、低温及び短時間での接続に対応しようとすると、保管中に硬化が生じるために、保管期間を短くする必要があり、実用上適さないことがあった。また、生産性の観点から、常温での1〜2年間程度の保存安定性が要求されることがあるが、熱硬化性樹脂を用いたACFでは、対応が難しいことがあった。
【0005】
そこで、十分な接続抵抗を維持しつつ、低温、低圧力、及び短時間での接続を可能とするACFとして、結晶性樹脂と非晶性樹脂からなる熱可塑性ACFが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。このようなACFやACPは、それぞれ対向する複数の端子を備える第1の電子部品と第2の電子部品との異方導電接続に用いられ、また、第1の電子部品又は第2の電子部品の少なくともいずれか一方が全面電極を備える場合の異方導電接続にも用いられる。なお、いずれの端子も全面電極である電気的接続に用いられるのも、当然である。
【0006】
しかしながら、これらのACFであっても、電子部品の電極表面がOSP処理(水溶性プリフラックス処理)となった場合には、優れた接着強度及び接続信頼性が得られないことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5964187号
【特許文献2】特開2017−117468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本技術は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、優れた接着強度及び接続信頼性を得ることができる接合体の製造方法、接合体、導電粒子含有ホットメルト接着シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本技術に係る接合体の製造方法は、第1の電子部品と第2の電子部品とを、カルボキシル基を有する結晶性ポリアミド樹脂を含むバインダー中にはんだ粒子を含有する導電粒子含有ホットメルト接着剤シートを介して熱圧着し、前記第1の電子部品の導通部と前記第2の電子部品の導通部とを接続させる接合体の製造方法であって、前記はんだ粒子の融点が、前記熱圧着の温度の−30〜0℃であり、前記導電粒子含有ホットメルト接着シートの溶融粘度を昇温速度5℃/分の条件にて測定したとき、前記熱圧着の温度の−20℃における溶融粘度に対する前記熱圧着の温度の−40℃における溶融粘度の比が10以上である。
【0010】
本技術に係る接合体は、第1の電子部品と、第2の電子部品と、第1の電子部品の導通部と第2の電子部品の導通部とを接続する接着層とを備え、前記接着層は、カルボキシル基を有する結晶性ポリアミド樹脂を含むバインダー中に融点が130〜160℃であるはんだ粒子を含有し、溶融粘度を昇温速度5℃/分の条件にて測定したとき、120℃における溶融粘度に対する100℃における溶融粘度の比が10以上である。
【0011】
本技術に係る導電粒子含有ホットメルト接着シートは、カルボキシル基を有する結晶性ポリアミド樹脂を含むバインダー中に融点が130〜160℃であるはんだ粒子を含有し、溶融粘度を昇温速度5℃/分の条件にて測定したとき、120℃における溶融粘度に対する100℃における溶融粘度の比が10以上である。
【発明の効果】
【0012】
本技術によれば、カルボキシル基を有する結晶性ポリアミドにより、はんだ濡れ性を向上させ、優れた接着強度及び接続信頼性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施の形態に係る接合体の一例を模式的に示す断面図である。
図2図2は、スマートカードの一例を示す概略斜視図である。
図3図3は、カード部材のICチップ領域の一例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本技術の実施の形態について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する。
1.接合体
2.接合体の製造方法
3.導電粒子含有ホットメルト接着シート
4.実施例
【0015】
<1.接合体>
本実施の形態に係る接合体は、第1の電子部品と、第2の電子部品と、第1の電子部品の導通部と第2の電子部品の導通部とを接続する接着層とを備え、接着層は、カルボキシル基を有する結晶性ポリアミド樹脂を含むバインダー中に融点が130〜160℃であるはんだ粒子を含有し、溶融粘度を昇温速度5℃/分の条件にて測定したとき、120℃における溶融粘度に対する100℃における溶融粘度の比が10以上である。これにより、はんだ濡れ性を向上させ、優れた接着強度及び接続信頼性を得ることができる。
【0016】
100℃における接着層の粘度は、好ましくは8000〜800000Pa・s、より好ましくは15000〜500000Pa・s、さらに好ましくは20000〜300000Pa・sである。また、120℃における接着層の粘度は、好ましくは100〜20000Pa・s、より好ましくは500〜15000Pa・s、さらに好ましくは1000〜8000Pa・sである。ここで、接着層の溶融粘度は、例えば、回転式レオメーター(HAAKE社製)を用い、ギャップ0.2mm、温度範囲60〜200℃、昇温速度5℃/分、測定周波数1Hz、測定プレート直径8mmの条件で測定することができる。なお、溶融粘度の温度は、基材の特性や接続の量産性などの諸条件に応じて設定することができるため、接続対象物及びその接続の諸条件によって変更してもよい。
【0017】
図1は、本実施の形態に係る接合体の一例を模式的に示す断面図である。図1に示すように、接合体は、第1の導通部11を有する第1の電子部品10と、第2の導通部21を有する第2の電子部品20と、第1の電子部品10の導通部11と第2の電子部品21の導通部21とを接続する導電粒子含有ホットメルト接着シートよりなる接着層30とを備える。ここで、第1の導通部11及び第2の導通部21は、特に限定されるものではなく、電極、ワイヤー、端子列などであってもよく、種々の形態から選択できる。
【0018】
第1の電子部品10としては、第2の電子部品を搭載可能なスマートカード(Smart card)カード部材や、基板(所謂、プリント配線板:PWB)として広義に定義できる、例えば、リジット基板、ガラス基板、フレキシブル基板(FPC:Flexible Printed Circuits)、セラミック基板、プラスチック基板などが挙げられる。
【0019】
また、第2の電子部品20としては、スマートカードのICチップ、LED(Light Emitting Diode)、ドライバーIC(Integrated Circuit)等のチップ(素子)、フレキシブル基板(FPC:Flexible Printed Circuits)、樹脂成形された部品など、配線(導通材)が設けられたものが挙げられる。
【0020】
接着層30は、後述するように、バインダー中にはんだ粒子を含有する導電粒子含有ホットメルト接着シートが膜状となったものである。接着層30は、第1の電子部品10の第1の導通部11と第2の電子部品20の第2の導通部21とをはんだ接合32させるとともに、第1の電子部品10と第2の電子部品との間をバインダーにより接着する。第1の導通部11と第2の導通部21とが、共に対向し、それぞれに個々に独立した電極の集合から構成される場合、異方導電接続となり、本技術に係る導電粒子含有ホットメルト接着シートを用いることができる。また、本技術に係る導電粒子含有ホットメルト接着シートは、第1の導通部11と第2の導通部21とが、それぞれ全面電極で構成される場合の(等方)導電接続に用いることもできる。さらに、本技術に係る導電粒子含有ホットメルト接着シートは、一方の導通部が個々に独立した電極の集合からなり、他方の導通部が全面電極のものについても用いることができる。これは、公知の異方性導電フィルムについても同様のことが言える。なお、技術上、導通に関しては「異方性」がより困難であることは、言うまでもない。
【0021】
本実施の形態に係る接合体は、カルボキシル基を有する結晶性ポリアミドを含み、溶融粘度が所定の関係を有するバインダー中に所定の融点を有するはんだ粒子を含有する接着層を備えるため、はんだ濡れ性を向上させ、電子部品の電極表面がOSP処理(水溶性プリフラックス処理)された場合であっても、優れた接着強度及び接続信頼性を得ることができる。これは、結晶性ポリアミドに存在するカルボキシル基によるフラックス効果であると考えられる。また、本実施の形態に係る接合体は、第1の電子部品の導通部と第2の電子部品の導通部とが、はんだ粒子の溶融により金属結合しているため、湿熱試験におけるバインダーの吸湿による膨潤伸びを抑えることができ、優れた接続信頼性を得ることができる。
【0022】
次に、接合体の具体例として、第1の電子部品10としてカード部材を用い、第2の電子部品としてICチップを用いた、スマートカードについて説明する。スマートカード(Smart card)は、情報(データ)の記録や演算をするために集積回路(IC:Integrated circuit)を組み込んだカードであり、「ICカード(Integrated circuit card)」、「チップカード(Chip card)」とも呼ばれる。また、スマートカードは、1つのICチップで、接触型、非接触型の2つのインターフェースを持つデュアルインターフェイスカードであってもよく、接触型ICチップと非接触型ICチップとが搭載されたハイブリッドカードであってもよい。このスマートカードに用いられるICチップは、一般的なディスプレイ用途等のICチップとは異なり、端子列が複数存在ないのが一般的である。以下に説明するICチップは、スマートカードに用いられるICチップとして説明する。
【0023】
図2は、スマートカードの一例を示す概略斜視図であり、図3は、カード部材のICチップ領域の一例を示す上面図である。スマートカードは、カード部材40と、ICチップ50とを備える。カード部材40は、第1の基材と、アンテナを備える第2基材と、第3の基材とがこの順番に積層された積層体である。ICチップ50は、表面に複数の接触端子51を有し、裏面に例えば全面に電極を有する。
【0024】
第1の基材、第2の基材、及び第3の基材は、例えば、樹脂からなる複数の層が積層されて構成される。各層を構成する樹脂としては、例えば、リサイクル品を含むPVC(ポリ塩化ビニル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PET−G、PC(ポリカーボネート)、環境に配慮された生分解性プラスチック(一例としてPLA(ポリ乳酸))、Ocean plasticと呼ばれる海に流入する前に回収されたプラスチック廃棄物で作られた基材などが挙げられる。基材を、複数の層から構成することにより、1つの層から構成する場合に比べて、剛性が必要以上に高くなるのを防ぐことができる。
【0025】
第1の基材は、ICチップ50の形状に対応する開口41を有し、開口41は、第2の基材を露出させ、ICチップ領域を形成する。第2の基材は、第1の基材と第3の基材との間に配され、例えば樹脂からなる層の内部に、外周部を複数周回するアンテナパターン42を有する。また、第2の基材は、開口41に面するICチップ領域において、例えば埋設されたアンテナパターンの一部が露出するようにICチップ50の裏面に対応して削られ、凹部を形成する。すなわち、第2の基材の凹部は、開口41の形状に対応しており、ICチップ領域には、アンテナパターン42の第1の露出部42a及び第2の露出部14bが形成されている。アンテナパターン42の金属ワイヤーとしては、例えば銅線などが挙げられる。
【0026】
また、第2の基材は、ICチップ領域に非貫通孔である溝や複数の孔を有することが好ましい。これにより、接着層の樹脂が溝や孔に流入し、接着層との密着力を向上させることができる。また、溝や孔の開口部の最短長さは、はんだ粒子の平均粒子径よりも小さいことが好ましい。具体的な溝や孔の開口部の最短長さの下限は、はんだ粒子の平均粒子径の20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることが特に好ましい。また、具体的な孔の開口部の最短長さの上限は、はんだ粒子の平均粒子径の80%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましく、60%以下であることが特に好ましい。これにより、溝や孔にはんだ粒子が嵌まりやすくなり、はんだ粒子の捕捉性が向上し、ICチップとの優れた電気的接続を得ることができる。
【0027】
接着層は、開口41のICチップ領域とICチップ50との間に介在し、ICチップ50とアンテナパターン42の第1の露出部42a及び第2の露出部42bとを電気的に接続する。なお、ICチップ50とアンテナパターン42との接続は、異方性でない場合がある。
【0028】
具体例として示すスマートカードは、カルボキシル基を有する結晶性ポリアミドを含み、溶融粘度が所定の関係を有するバインダー中に所定の融点を有するはんだ粒子を含有する接着層を備えるため、はんだ濡れ性を向上させ、優れた接着強度及び接続信頼性を得ることができる。これは、結晶性ポリアミドに存在するカルボキシル基によるフラックス効果であると考えられる。また、具体例として示すスマートカードは、ICチップの導通部とアンテナパターンの導通部とが、はんだ粒子の溶融により金属結合しているため、湿熱試験におけるバインダーの吸湿による膨潤伸びを抑えることができ、優れた接続信頼性を得ることができる。なお、本技術は、スマートカード以外の一般的な異方性接続体、例えばリジット基板とFPCからなるFOBに適用できるが、詳細については省略する。また、本技術の適用範囲は、接合体の製造方法についても、略同様である。
【0029】
<2.接合体の製造方法>
本実施の形態に係る接合体の製造方法は、第1の電子部品と第2の電子部品とを、カルボキシル基を有する結晶性ポリアミド樹脂を含むバインダー中にはんだ粒子を含有する導電粒子含有ホットメルト接着剤シートを介して熱圧着し、第1の電子部品の導通部と第2の電子部品の導通部とを接続させる接合体の製造方法であって、はんだ粒子の融点が、熱圧着の温度の−30〜0℃であり、導電粒子含有ホットメルト接着シートの溶融粘度を昇温速度5℃/分の条件にて測定したとき、熱圧着の温度の−20℃における溶融粘度に対する熱圧着の温度の−40℃における溶融粘度の比が10以上である。これにより、はんだ濡れ性を向上させ、優れた接着強度及び接続信頼性を得ることができる。この粘度を示す温度の条件は、接合体の製造方法によって変更することができる。
【0030】
以下、図1を参照して、第2の電子部品に導電粒子含有ホットメルト接着シートを貼り付ける貼付工程(A)、第1の電子部品に第2の電子部品を載置する載置工程(B)、及び、第1の電子部品と第2の電子部品とを熱圧着する圧着工程(C)について説明する。
【0031】
[貼付工程(A)]
貼付工程(A)では、第2の電子部品20の接続面に、導電粒子含有ホットメルト接着シートを貼り付ける。貼付工程(A)は、導電粒子含有ホットメルト接着シートを第2の電子部品の接続面にラミネートするラミネート工程であってもよく、第2の電子部品20の接続面に導電粒子含有ホットメルト接着シートを低温で貼着する仮貼り工程であってもよい。
【0032】
貼付工程(A)がラミネート工程である場合、加圧式ラミネータを用いても、真空加圧式ラミネータを用いてもよい。貼付工程(A)がラミネート工程であることにより、仮貼り工程に比べ、比較的広い面積を一括で搭載できる。また、貼付工程(A)が仮貼り工程である場合、従前の装置からツールの設置や変更といった最低限の変更だけですむため、経済的なメリットを得ることができる。
【0033】
貼付工程(A)において、導電粒子含有ホットメルト接着シートに到達する温度は、バインダーが流動する温度以上、はんだが溶融する温度未満であることが好ましい。ここで、バインダーが流動する温度は、導電粒子含有ホットメルト接着シートの溶融粘度が100〜1000000Pa・sとなる温度であってもよく、好ましくは1000〜100000Pa・sとなる温度である。これにより、はんだ粒子の形状を維持した状態で導電粒子含有ホットメルト接着シートを第2の電子部品20の接続面に貼付することができる。
なお、導電粒子含有ホットメルト接着シートの溶融粘度は、例えば、回転式レオメーター(HAAKE社製)を用い、ギャップ0.2mm、温度範囲60〜200℃、昇温速度5℃/分、測定周波数1Hz、測定プレート直径8mmの条件で測定することができる。
【0034】
[載置工程(B)]
載置工程(B)では、例えば吸着機構を備えるツールを用いて第2の電子部品20をピックアップし、第1の電子部品10と第2の電子部品20とを位置合わせし、導電粒子含有ホットメルト接着シートを介して第2の電子部品20を載置する。
【0035】
[圧着工程(C)]
圧着工程(C)では、圧着装置を用いて、第1の電子部品10と第2の電子部品20とを熱圧着する。圧着工程(C)では、導電粒子含有ホットメルト接着シートのバインダーを十分に排除させ、第1の電子部品10の導通部11と第2の電子部品20の導通部21とを、はんだ粒子31の溶融によりはんだ接合32させる。
【0036】
圧着工程(C)における熱圧着温度は、導電粒子含有ホットメルト接着シートに到達する温度がはんだ粒子の融点以上となるように設定することが好ましく、導電粒子含有ホットメルト接着シートに到達する温度の上限は、はんだ粒子の融点の0〜+30℃であることが好ましく、はんだ粒子の融点の0〜+20℃であることがより好ましく、はんだ粒子の融点の0〜+10℃であることがより好ましい。具体的な導電粒子含有ホットメルト接着シートに到達する温度は、好ましくは120〜180℃、より好ましくは120〜170℃、さらに好ましくは130〜160℃である。これにより、第1の電子部品10や第2の電子部品20の熱衝撃を抑制し、接合体の変形を防ぐことができる。また、圧着工程(C)では、導電粒子含有ホットメルト接着シートのバインダーを十分に排除させ、はんだ粒子の溶融により金属結合させるために、熱圧着を複数回行ってもよい。
【0037】
本実施の形態に係る接合体の製造方法は、カルボキシル基を有する結晶性ポリアミドを含み、溶融粘度が所定の関係を有するバインダー中に所定の融点を有するはんだ粒子を含有する導電粒子含有ホットメルト接着シートを用いているため、電子部品の電極表面がOSP処理(水溶性プリフラックス処理)された場合であっても、はんだ濡れ性を向上させ、優れた接着強度及び接続信頼性を得ることができる。これは、結晶性ポリアミドに存在するカルボキシル基によるフラックス効果であると考えられる。また、本実施の形態に係る接合体の製造方法は、第1の電子部品の導通部と第2の電子部品の導通部とを、はんだ粒子の溶融により金属結合させるため、湿熱試験におけるバインダーの吸湿による膨潤伸びを抑えることができ、優れた接続信頼性を得ることができる。
【0038】
<3.導電粒子含有ホットメルト接着シート>
本施の形態に係る導電粒子含有ホットメルト接着シートは、カルボキシル基を有する結晶性ポリアミド樹脂を含むバインダー中に融点が130〜160℃であるはんだ粒子を含有し、溶融粘度を昇温速度5℃/分の条件にて測定したとき、120℃における溶融粘度に対する100℃における溶融粘度の比が10以上である。これにより、はんだ濡れ性を向上させ、優れた接着強度及び接続信頼性を得ることができる。この粘度を示す温度の条件は、接合体の製造方法によって変更することができる。
【0039】
導電粒子含有ホットメルト接着シートの厚みの下限は、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上である。また、導電粒子含有ホットメルト接着シートの厚みの上限は、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下である。これにより、カード部材にICチップを熱圧着させるスマートカードの製造に好適に用いることができる。
【0040】
[バインダー]
バインダーは、カルボキシル基を有する結晶性ポリアミドを少なくとも含む。なお、結晶性樹脂は、例えば、示差走査熱量測定において、昇温過程で吸熱ピークを観察することにより確認することができる。
【0041】
結晶性ポリアミドの末端カルボキシル基濃度は、0.5mgKOH/g以上であることが好ましく、1.0mgKOH/g以上であることがより好ましく、2.0mgKOH/g以上であることがさらに好ましい。また、結晶性ポリアミドの末端カルボキシル基濃度は、50mgKOH/g以下であっても、30mgKOH/g以下であっても、10mgKOH/g以下であってもよい。結晶性ポリアミドの末端カルボキシル基濃度は、例えばJISK 0070−1992やISO2114に準じて評価を行うことができる。カルボキシル基を有する結晶性ポリアミドの市販品の具体例としては、例えば、アルケマ株式会社製の「HX2519」、「M1276」などが挙げられる。
【0042】
カルボキシル基を有する結晶性ポリアミドは、モノマーとして、ラウリルラクタム(PA12:ポリアミド12又はナイロン21)又は11−アミノウンデカン酸(PA11:ポリアミド11)をベースとした共重合体であることが好ましい。このような共重合体は、ダイマー酸をベースとしたポリアミドに比して、結晶性が高く、溶融粘度が高く、剛性が高いため、優れた接続信頼性を得ることができる。
【0043】
カルボキシル基を有する結晶性ポリアミドの融点の下限は、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは90℃以上である。また、カルボキシル基を有する結晶性ポリアミドの融点の上限は、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは130℃以下である。カルボキシル基を有する結晶性ポリアミドの融点が高過ぎると、バインダーの粘度が十分に下がらないため、樹脂の排除が不十分となり、導電特性が悪化する傾向にある。また、カルボキシル基を有する結晶性ポリアミドの融点が低過ぎると、プレスアウト時の硬度が不十分となる傾向にある。融点は、例えば、示差走査熱量分析(DSC)により測定することができる。
【0044】
カルボキシル基を有する結晶性ポリアミドの重量平均分子量の下限は、好ましくは5000以上、より好ましくは、8000以上、さらに好ましくは10000以上、最も好ましくは10000超である。また、カルボキシル基を有する結晶性ポリアミドの重量平均分子量の上限は、好ましくは100000以下、より好ましくは50000以下、さらに好ましくは30000以下である。カルボキシル基を有する結晶性ポリアミドの重量平均分子量が小さ過ぎると、バインダーの硬化が不十分となり、接続信頼性試験で抵抗が上昇するなどの不都合が生じる場合がある。重量平均分子量Mwは、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される、標準ポリスチレン分子量換算の値とすることができる。
【0045】
また、カルボキシル基を有する結晶性ポリアミドは、温度160℃、荷重2.16kgの条件で測定されたメルトボリュームフローレイト(MVR)が、好ましくは2〜50cm/10min、より好ましくは3〜30cm/10min、さらに好ましくは5〜10cm/10minである。メルトボリュームフローレイトが大き過ぎると、プレスアウト時の硬度が不十分となり、接続信頼性が低下する傾向にある。メルトボリュームフローレイトは、JIS K7210:1999にて熱可塑性プラスチックのメルトフローレートの求め方の規定に準じて測定することができる。
【0046】
バインダーがカルボキシル基を有する結晶性ポリアミドを少なくとも含むことにより、はんだ濡れ性を向上させ、優れた接続信頼性を得ることができる。これは、結晶性ポリアミドに存在するカルボキシル基によるフラックス効果であると考えられる。
【0047】
また、バインダーは、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、結晶性樹脂、非晶性樹脂など、目的に応じて適宜選択することができる。結晶性樹脂としては、結晶領域を有する樹脂であれば、特に制限はなく、例えば、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などが挙げられ、ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレン樹脂などが挙げられる。また、非晶性樹脂としては、結晶性樹脂の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。これらの中でも、低温かつ短時間での接着の観点から、その他の成分として結晶性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。
【0048】
また、バインダーに占めるカルボキシル基を有する結晶性ポリアミドの割合は、10〜100wt%であることが好ましく、30〜100wt%であることがより好ましく、50〜100wt%であることがさらに好ましい。これにより、160℃以下の低温圧着であっても、フラックス効果を発揮することができ、はんだ濡れ性を向上させ、優れた接続信頼性を得ることができる。なお、カード用途など低温短時間での圧着の場合、バインダーに占めるカルボキシル基を有する結晶性ポリアミドの割合が10wt%以下の場合、十分なフラックス効果を得るのが困難となる。
【0049】
また、バインダーは、フラックス化合物をさらに含んでいてもよい。フラックス化合物としては、例えば、レブリン酸、マレイン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸等のカルボン酸が挙げられる。フラックス化合物の含有量は、バインダー100質量部に対して1〜15質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましく、1〜5質量部であることがさらに好ましい。これにより、良好なはんだ接続を得ることができる。
【0050】
また、バインダーは、温度160℃、荷重2.16kgの条件で測定されたメルトボリュームフローレイト(MVR)が、カルボキシル基を有する結晶性ポリアミドと同様であることが好ましい。すなわち、メルトボリュームフローレイト(MVR)は、好ましくは2〜50cm/10min、より好ましくは3〜30cm/10min、さらに好ましくは5〜10cm/10minである。メルトボリュームフローレイトが大き過ぎると、プレスアウト時の硬度が不十分となり、接続信頼性が低下する傾向にある。
【0051】
[はんだ粒子]
はんだ粒子は、非共晶合金が用いられれば特に制限はなく、Sn、Bi、Ag、In、Cu、Sb、Pb、Znからなる群より選択される2種以上を含む合金であることが好ましい。はんだ粒子としては、例えば、JISZ 3282−2017(対応国際規格:ISO9453:2014)に規定されている、Sn−Pb系、Pb−Sn−Sb系、Sn−Sb系、Sn−Pb−Bi系、Bi−Sn系、Sn−Bi−Cu系、Sn−Cu系、Sn−Pb−Cu系、Sn−In系、Sn−Ag系、Sn−Pb−Ag系、Pb−Ag系などの中から、電極材料や接続条件などに応じて適宜選択することができる。非共晶合金のはんだ粒子は、共晶合金のはんだ粒子に比べ、熱圧着時の半溶融状態の時間が長いため、樹脂を十分に排除することができ、優れた接続信頼性を得ることができる。なお、本明細書において、「非共晶合金」とは、共晶点を有さない合金のことを呼ぶ。
【0052】
はんだ粒子の固相線温度(融点)の下限は、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは135℃以上である。はんだ粒子の液相線温度の上限は、210℃以下でもよく、好ましくは200℃以下、より好ましくは195℃以下、さらに好ましくは190℃以下である。ここで、液相線は、固相と平衡にある液相の温度(融点)と液相の組成との関係を示す曲線である。また、はんだ粒子の固相線温度の上限は、155℃以下でもよく、好ましくは150℃以下、より好ましくは145℃以下、さらに好ましくは140℃以下である。また、はんだ粒子は、表面を活性化させる目的でフラックス化合物が直接表面に結合されていても構わない。表面を活性化させることで金属ワイヤーや電極との金属結合を促進することができる。
【0053】
また、はんだ粒子は、固相線温度(融点)が155℃以下、好ましくは150℃以下であって、Sn−Bi−Cu合金、Sn−Bi−Ag合金、Sn−Bi合金、Sn−Pb−Bi合金、及びSn−In合金からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。はんだ粒子の具体例としては、Sn30Bi0.5Cu、Sn30Bi、Sn40Bi、Sn50Bi、Sn58Bi、Sn40Bi0.1Cu、Sn43Pb14Bi、Sn20Inなどが挙げられる。これにより、優れた接続信頼性を得ることができる。
【0054】
はんだ粒子の配合量の質量比範囲の下限は、バインダー100重量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは40質量部以上、さらに好ましくは80質量部以上であり、はんだ粒子の配合量の質量比範囲の上限は、バインダー100重量部に対して、好ましくは500質量部以下、より好ましくは400質量部以下、さらに好ましくは300質量部以下である。導電粒子の配合量は、体積換算とすることもできる。
【0055】
はんだ粒子の配合量が少なすぎると優れた導通性が得られなくなり、配合量が多すぎると十分な接着力が得られず、優れた導通信頼性が得られ難くなる。なお、はんだ粒子がバインダー中に存在する場合には、体積比を用いてもよく、導電粒子含有ホットメルト接着シートを製造する場合(はんだ粒子がバインダーに存在する前)には、質量比を用いてもよい。質量比は、配合物の比重や配合比などから体積比に変換することができる。
【0056】
また、はんだ粒子は、導電粒子含有ホットメルト接着シートの樹脂中に混練りされて分散されていてもよく、離間した状態に配置されていてもよい。この配置は、一定の規則で配置されていてもよい。規則的配置の態様としては、正方格子、六方格子、斜方格子、長方格子等の格子配列を挙げることができる。また、はんだ粒子は、複数個が凝集した凝集体として配置されていてもよい。この場合、導電粒子含有ホットメルト接着シートの平面視における凝集体の配置は、前述のはんだ粒子の配置と同様に、規則的配置でもランダム配置でもよい。
【0057】
はんだ粒子の平均粒子径は、導電粒子含有ホットメルト接着シートの厚みの70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。これにより、熱圧着時に容易にはんだ粒子を第1の電子部品の導通部と第2の電子部品の導通部との間ではんだ粒子を溶融させ、金属結合させることができる。
【0058】
はんだ粒子の平均粒子径の下限は、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上である。また、はんだ粒子の平均粒子径の上限は、好ましくは50μm以下、より好ましくは45μm以下、さらに好ましくは40μm以下である。また、はんだ粒子の最大径は、平均粒子径の200%以下、好ましくは平均粒子径の150%以下、より好ましくは平均粒子径の120%以下とすることができる。はんだ粒子の最大径が、上記範囲であることにより、はんだ粒子を第1の電子部品の導通部と第2の電子部品の導通部との間に挟持させ(位置させ)、はんだ粒子の溶融により導通部間を金属結合させることができる。
【0059】
また、はんだ粒子は、複数個が凝集した凝集体であってもよい。複数のはんだ粒子が凝集した凝集体である場合、凝集体の大きさを前述のはんだ粒子の平均粒子径と同等にしてもよい。なお、凝集体の大きさは、電子顕微鏡や光学顕微鏡で観察して求めることができる。
【0060】
ここで、平均粒子径は、金属顕微鏡、光学顕微鏡、SEM(Scanning Electron Microscope)等の電子顕微鏡などを用いた観察画像において、例えばN=20以上、好ましくはN=50以上、さらに好ましくはN=200以上で測定した粒子の長軸径の平均値であり、粒子が球形の場合は、粒子の直径の平均値である。また、観察画像を公知の画像解析ソフト(「WinROOF」:三谷商事(株)、「A像くん(登録商標)」:旭化成エンジニアリング株式会社など)を用いて計測された測定値、画像型粒度分布測定装置(例として、FPIA−3000(マルバーン社))を用いて測定した測定値(N=1000以上)であってもよい。観察画像や画像型粒度分布測定装置から求めた平均粒子径は、粒子の最大長の平均値とすることができる。なお、導電粒子含有ホットメルト接着シートを作製する際には、簡易的にレーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における頻度の累積が50%になる粒径(D50)、算術平均径(体積基準であることが好ましい)などのメーカー値を用いることができる。
【0061】
[他の添加剤]
導電粒子含有ホットメルト接着シートには、上述したバインダー及びはんだ粒子に加えて、本技術の効果を損なわない範囲で様々な添加剤を配合することができる。例えば、ガスバリア性及弾性率を向上させるため、ナノサイズ(1次粒子径が1nm以上1000nm未満)のシリカを分散させてもよい。また、圧着後のはんだ粒子の高さを一定に制御するため、スペーサー粒子として規定サイズの樹脂粒子、ゴム粒子、シリコーンゴム粒子、シリカ等を分散させても良い。また、例えば、本技術の効果を損なわない範囲で熱硬化性樹脂や硬化剤を添加してもよい。
【0062】
本実施の形態に係る導電粒子含有ホットメルト接着シートは、カルボキシル基を有する結晶性ポリアミドを含み、溶融粘度が所定の関係を有するバインダー中に所定の融点を有するはんだ粒子を含有するため、電子部品の電極表面がOSP処理(水溶性プリフラックス処理)された場合であっても、はんだ濡れ性を向上させ、優れた接着強度及び接続信頼性を得ることができる。これは、結晶性ポリアミドに存在するカルボキシル基によるフラックス効果であると考えられる。また、本実施の形態に係る接合体の製造方法は、第1の電子部品の導通部と第2の電子部品の導通部とを、はんだ粒子の溶融により金属結合させるため、湿熱試験におけるバインダーの吸湿による膨潤伸びを抑えることができ、優れた接続信頼性を得ることができる。
【0063】
[導電粒子含有ホットメルト接着シートの製造方法]
導電粒子含有ホットメルト接着シートの製造方法は、バインダーの各樹脂成分を溶剤に溶解しワニスを調製するワニス調製工程と、はんだ粒子を加えて導電粒子含有樹脂組成物を得る導電粒子含有樹脂組成物調製工程と、導電粒子含有樹脂組成物を剥離性基材上に所定厚みとなるように塗布し、乾燥させる乾燥工程とを有する。なお、導電粒子含有ホットメルト接着シート内の導電粒子を離間させて配置する場合や規則的に配置する場合は、導電粒子を加えずにシートを設け、別途公知の方法で導電粒子を配置させればよい。
【0064】
各樹脂成分に使用する溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチルエチルケトン:トルエン:シクロヘキサノンの50:40:10(質量比)の混合溶剤、トルエン:酢酸エチルの50:50(質量比)の混合溶剤などを用いることができる。
【0065】
また、剥離性基材としては、例えば、水に対する接触角が80°以上であるものが挙げられ、剥離性基材の具体例としては、例えば、シリコーン系フィルム、フッ素系フィルム、シリコーン系フィルムや、フッ素系などの離型剤で離型処理されたPET、PEN、グラシン紙などが挙げられる。また。剥離性基材の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20μm〜120μmであることが好ましい。
【0066】
また、導電粒子含有ホットメルト接着シートは、テープ状に成型され、巻芯に巻装されたフィルム巻装体として供給されてもよい。巻芯の直径は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜1000mmであることが好ましい。フィルム長についても特に制限はないが、5m以上であれば製造装置による試作検討ができ、1000m以下であれば作業性や取り扱い性の負担が重くなりすぎない。
【実施例】
【0067】
<4.実施例>
本実施例では、はんだ粒子を含有する導電粒子含有ホットメルト接着シートを作製し、これを用いて接合体を作成した。そして、接合体の接続信頼性の評価、絶縁抵抗の評価、初期の接着強度の評価、及び水中浸漬試験後の導通抵抗の評価を行った。なお、本実施例は、これらに限定されるものではない。
【0068】
[はんだ粒子の作製]
金属材料を所定の配合比で加熱中の容器に入れて溶融後に冷却し、はんだ合金を得た。そのはんだ合金から、アトマイズ法にて粉末を作製し、粒子径が20〜38μmの範囲となるように分級して、以下の組成のはんだ粉末を得た。
・Sn-40Bi-0.1Cu (固相融点 139℃)
・Sn-58Bi (固相融点 138℃)
・Sn-57Bi-0.4Ag (固相融点 136℃)
・Sn-50In (固相融点 120℃)
・Sn-3Ag-0.5Cu (固相融点 217℃)
【0069】
[導電粒子含有ホットメルト接着シートの作製]
下記樹脂を準備した。
・M1276(アルケマ社製、結晶性ポリアミド、末端カルボキシル基濃度6.56mgKOH/g、融点109℃、MVR8cm/10min、重量平均分子量12000)→固形分/エタノール/トルエン=30/35/35にて溶液化
・PES111EE(東亜合成社製、結晶性ポリエステル)→固形分/シクロヘキサノン=25/75にて溶液化
【0070】
表1及び表2に示すように、上記樹脂を固形分で所定の配合量(質量部)になるように混合及び撹拌し、混合ワニスを得た。続いて、得られた混合ワニスに、はんだ粒子を、混合ワニスの固形分100質量部に対し所定の質量部加え、導電粒子含有樹脂組成物を得た。得られた導電粒子含有樹脂組成物を、50μm厚みのPETフィルム上に、乾燥後の平均厚みが40μmとなる様に塗布し、70℃にて5分間、続けて120℃にて5分間乾燥させ、導電粒子含有ホットメルト接着シートを作製した。
【0071】
[接合体の作製]
第1の電子部品として、プリント配線板〔0.4mmピッチ(ライン/スペース=0.2/0.2mm)、ガラスエポキシ基材厚み1.0mm、銅パターン厚み35μm、表面OSP処理〕を用いた。
【0072】
第2の電子部品として、フレキシブルプリント基板〔0.4mmピッチ(ライン/スペース=0.2/0.2mm)、ポリイミド基材厚み50μm、銅パターン厚み12μm、ニッケル/金メッキ処理〕を用いた。
【0073】
第1の電子部品の導通部上に、導電粒子含有ホットメルト接着シートを幅2.0mmにカットして、120℃、1MPa、1秒間の条件で仮圧着を行った。続いて、導電粒子含有ホットメルト接着シート上に、第2の電子部品を配置した。続いて、緩衝材(シリコーンラバー、厚み0.2mm)を介して、加熱ツール(幅2.0mm)により140℃、3MPa、5秒間の条件で、第2の電子部品を加熱及び押圧し、接合体を得た。
【0074】
[溶融粘度の測定]
レオメーターMARS3(HAAKE社製)に8mm径センサーとプレートを装着し、導電粒子含有ホットメルト接着シートをセットした。そして、ギャップ0.2mm、昇温速度5℃/min、周波数1Hz、測定温度範囲60〜200℃の条件にて溶融粘度を測定し、100℃粘度(V1)と120℃粘度(V2)を読み取り、その比(V1/V2)を算出した。なお、実施例及び比較例の100℃における粘度(V1)は、20000〜300000Pa・sであり、実施例及び比較例の120℃における粘度(V2)は、1000〜8000Pa・sであった。
【0075】
[接続信頼性の評価]
接合体の高温高湿試験(60℃95%RH環境下で500時間放置)後、及びヒートサイクル試験(−40℃30分間、100℃30分間で500サイクル放置)後について、デジタルマルチメーターを用いて、4端子法にて電流1mAを流した時の抵抗値を測定した。30チャンネルについて抵抗値を測定し、最大の抵抗値を以下の評価基準で評価した。
AA:抵抗値が0.1Ω未満
A:抵抗値が0.1Ω以上、0.2Ω未満
B:抵抗値が0.2Ω以上、0.5Ω未満
C:抵抗値が0.5Ω以上
【0076】
[絶縁抵抗値の評価]
接合体の初期の絶縁抵抗値を以下の方法で測定し、評価を行った。デジタルマルチメーターを用いて、隣接導通部間に電圧20Vを印加した時の絶縁抵抗値を測定した。15チャンネルについて抵抗値を測定し、最大の抵抗値を以下の評価基準で評価した。
A:抵抗値が10Ω以上
B:抵抗値が10Ω以上、10Ω未満
C:抵抗値が10Ω未満
【0077】
[接着強度の評価]
フレキシブルプリント基板をプリント配線板から90°方向で剥離する90°剥離試験(JIS K6854−1)を行った。剥離試験において、1cm幅にカットした試験片にて接着強度を測定し、接着強度を以下の評価基準で評価した。
A:接着強度が12N/cm以上
B:接着強度が7N/cm以上、12N/cm未満
C:接着強度が7N/cm未満
【0078】
[水中浸漬試験後の導通抵抗の評価]
接合体の初期抵抗値を測定後、その接合体を常温の水中に浸漬させ、24時間後に取り出し、導通抵抗値を測定した。以下の評価基準で評価した。
A:浸漬後抵抗値/初期抵抗値の比が2未満
C:浸漬後抵抗値/初期抵抗値の比が2以上
【0079】
表1に、実施例1〜5の導電粒子含有ホットメルト接着シートの配合、接合体の接続信頼性の評価、絶縁抵抗の評価、接着強度の評価、及び水中浸漬試験後の導通抵抗の評価を示す。また、表2に、実施例6〜8、比較例1〜3の導電粒子含有ホットメルト接着シートの配合、接合体の接続信頼性の評価、絶縁抵抗の評価、接着強度の評価、及び水中浸漬試験後の導通抵抗の評価を示す。実用上、全パラメータがB以上であることが好ましい。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
比較例1は、はんだ粒子の融点が120℃と低すぎるため、良好な接続が得られず、高温高湿試験後と水中浸漬試験後の導通抵抗値の評価がCであった。比較例2は、はんだ粒子の融点が217℃と高すぎるため、良好な接続が得られず、高温高湿試験後と水中浸漬試験後の導通抵抗値の評価がCであった。比較例3は、は結晶性ポリアミド樹脂を含んでいないため、良好な接続が得られず、高温高湿試験後と水中浸漬試験後の導通抵抗値の評価がCであった。
【0083】
一方。実施例1〜7においては、何れの項目も良好な結果となった。また、グルタル酸を添加した実施例8においても、何れの項目も良好な結果となった。特に高温高湿試験後の導通抵抗値の導通抵抗値の評価において、グルタル酸未添加の場合より改善が見られた。これは、グルタル酸のフラックス効果により、OSP処理基板の電極とはんだ粒子間において金属結合が形成されるためと考えられる。
【符号の説明】
【0084】
10 第1の電子部品、11 第1の導通部、20 第2の電子部品、21 第2の導通部、30 接着層、31 はんだ粒子、32 はんだ接合、40 カード部材、41 開口、42 アンテナパターン、42a 第1の露出部、42b 第2の露出部、50 ICチップ、51 接触端子
図1
図2
図3