【解決手段】空気紡績機は、ドラフト装置21と、空気紡績装置23と、糸貯留装置25と、糸関与装置27と、吸引装置29と、巻取装置31と、を備える。空気紡績装置23は、ドラフト装置21でドラフトされたスライバ35、即ち繊維束37に旋回空気流によって撚りを加えて紡績糸33を生成する。糸貯留装置25は、紡績糸33を一時的に貯留する。糸関与装置27は、紡績糸33に関与する。吸引装置29は、紡績糸33を吸引可能に構成される。巻取装置31は、紡績糸33を巻き取ってパッケージ93を形成する。高い位置から低い位置へ、ドラフト装置21、空気紡績装置23、糸貯留装置25、糸関与装置27、吸引装置29、及び巻取装置31の順に配置される。糸関与装置27は、ワキシング装置65及び糸走行センサ67である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の構成では、紡績ノズルの下流側に、糸を挟んで送り出す2つのローラが配置されている。以下、この2つのローラをデリベリローラと呼ぶことがある。前述のスラックチューブの吸引口は、デリベリローラの下流で、かつ、デリベリローラに比較的近い位置に配置されている。従って、例えば紡績ノズルの部分で糸の分断が発生した場合、糸端がデリベリローラを抜けた後すぐにスラックチューブの吸引口を通過してしまう。
【0007】
このように、特許文献1のレイアウトでは、パッケージ側の糸にスラックチューブの吸引気流を作用させて吸入する機会が実質的に乏しく、糸をスラックチューブに確実に捕捉することが難しかった。
【0008】
本発明の目的は、糸の分断が発生した際に巻取装置側の糸を確実に捕捉することができる紡績機を提供することにある。
【0009】
本発明の観点によれば、以下の構成の空気紡績機が提供される。即ち、この空気紡績機は、ドラフト装置と、紡績装置と、糸貯留装置と、糸関与装置と、吸引装置と、巻取装置と、を備える。前記ドラフト装置は、繊維束を生成する。前記紡績装置は、前記ドラフト装置よりも低い位置に配置され、前記ドラフト装置で生成された前記繊維束に旋回空気流によって撚りを加えて糸を生成する。前記糸貯留装置は、前記紡績装置よりも低い位置に配置され、前記紡績装置で生成された前記糸を一時的に貯留する。前記糸関与装置は、前記糸貯留装置よりも低い位置に配置され、前記糸に関与する。前記吸引装置は、前記糸関与装置よりも低い位置に配置され、前記糸を吸引可能に構成される。前記巻取装置は、前記吸引装置よりも低い位置に配置され、前記糸を巻き取ってパッケージを形成する。前記糸関与装置は、糸処理装置及び/又は糸検出装置である。
【0010】
これにより、紡績装置と巻取装置との間で糸の分断が発生した際に、巻取装置側の糸を吸引装置によって確実に捕捉することができる。また、糸貯留装置と吸引装置の間の空間に糸関与装置が配置されるので、この空間が空気紡績機においてデッドスペースとならない。
【0011】
前記の空気紡績機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記糸貯留装置は、前記糸が外周面に巻き付けられることにより前記糸を貯留する糸貯留ローラを有する。前記吸引装置は、前記糸貯留装置に対し、上下方向に所定間隔を有する糸捕捉間隔を隔てて配置される。前記糸捕捉間隔は、前記紡績装置と前記巻取装置との間で前記糸の分断が発生した後に前記糸貯留ローラから解舒される前記糸が通過し、捕捉する前記糸の長さを確保するための間隔である。前記糸関与装置は、前記糸捕捉間隔に相当する、前記糸貯留装置と前記吸引装置との間の空間に設けられる。
【0012】
これにより、糸貯留装置と吸引装置との間の距離を十分に確保することができる。従って、吸引装置が捕捉のための吸引流を糸に作用させる長さを実質的に長くすることができる。この結果、吸引装置において、糸を捕捉し易くすることができる。しかも、そのために確保した距離に相当する空間に糸関与装置を配置することで、スペースを効率的に使用することができる。
【0013】
前記の空気紡績機においては、前記糸貯留装置と前記吸引装置との間隔は、前記糸の走行方向において50mm以上150mm以下であることが好ましい。
【0014】
これにより、構成のコンパクト性を維持しつつも、吸引装置による糸の捕捉を確実にし、かつ、糸関与装置を配置するスペースを確保することができる。
【0015】
前記の空気紡績機においては、前記糸関与装置は、前記糸に付与するワックスを保持可能なワキシング装置を、前記糸処理装置として備えることが好ましい。
【0016】
これにより、ワキシング装置に関して、スペース効率の高いレイアウトを実現することができる。ワキシング装置は、ある一定の長さを有する装置であるため、糸貯留装置に対して吸引装置を離して配置することができ、吸引装置により糸を捕捉し易くなる。
【0017】
前記の空気紡績機においては、前記糸関与装置は、前記糸の有無を検出するセンサを、前記糸検出装置として備えることが好ましい。
【0018】
これにより、センサに関して、スペース効率の高いレイアウトを実現することができる。糸の有無を検出するセンサは、ある一定の長さを有する装置であるため、糸貯留装置に対して吸引装置を離して配置することができ、吸引装置により糸を捕捉し易くなる。
【0019】
前記の空気紡績機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記吸引装置は、前記糸関与装置と前記巻取装置との間において前記糸が走行する糸道に向かって開口する吸引口を備える。前記吸引口は、前記糸道に沿って細長く形成される。
【0020】
これにより、巻取装置側の糸を吸引口によって捕捉し易くなる。
【0021】
前記の空気紡績機は、前記吸引装置の吸引状態を変更可能な変更部を有することが好ましい。
【0022】
これにより、例えば、糸の分断が発生していない通常巻取時には吸引装置が糸に作用しないようにすることができる。従って、空気紡績機において省エネルギーを実現することができる。
【0023】
前記の空気紡績機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この空気紡績機は、糸継装置と、糸捕捉案内装置と、を備える。前記糸継装置は、前記紡績装置と前記巻取装置との間で前記糸の分断が発生した場合に、前記紡績装置と前記巻取装置との間で、前記紡績装置側の糸と前記巻取装置側の糸との糸継ぎを行う。前記糸捕捉案内装置は、前記紡績装置側の糸を捕捉して前記糸継装置に案内する。前記糸継ぎが行われる場合に、上下方向において前記吸引装置と前記巻取装置との間に前記糸継装置が配置される。
【0024】
これにより、糸継ぎが行われる際に、巻取装置側の糸が、糸関与装置等による物理的な影響を受けることがない。従って、糸継ぎを円滑に行うことができる。
【0025】
前記の空気紡績機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この空気紡績機は、複数の紡績ユニットを備える。それぞれの紡績ユニットが、前記紡績装置、前記糸貯留装置、前記糸関与装置、前記吸引装置、及び、前記巻取装置を備える。それぞれの前記紡績ユニットは、糸継装置と、糸捕捉案内装置と、を更に備える。前記糸継装置は、上下方向において前記吸引装置と前記巻取装置との間に配置され、前記紡績装置と前記巻取装置との間で前記紡績装置側の糸と前記巻取装置側の糸との糸継ぎを行う。前記糸捕捉案内装置は、前記紡績装置側の糸を捕捉して前記糸継装置に案内する。
【0026】
これにより、ある紡績ユニットにおいて紡績装置と巻取装置との間で糸の分断が発生した場合に、当該紡績ユニットで糸継作業を完結して、紡績を再開することができる。
【0027】
前記の空気紡績機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この空気紡績機は、前記ドラフト装置を複数備える。それぞれの前記ドラフト装置は複数の駆動ローラを備える。前記ドラフト装置を構成する全ての前記駆動ローラが、他の前記ドラフト装置の駆動ローラとは独立に駆動される。
【0028】
これにより、ドラフト装置の各駆動ローラの駆動を、他のドラフト装置とは独立して柔軟に制御することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の一実施形態に係る空気紡績機1について、図面を参照して説明する。
【0031】
図1に示すように、空気紡績機1は、ブロアボックス3と、原動機ボックス5と、複数の紡績ユニット7と、糸継台車9と、を備える。複数の紡績ユニット7は、所定の方向に並べて配置されている。
【0032】
ブロアボックス3内には、負圧源として機能するブロア11等が配置されている。
【0033】
原動機ボックス5には、駆動源(図略)と、中央制御装置13と、表示部15と、操作部17と、が配置されている。原動機ボックス5に設けられる駆動源には、複数の紡績ユニット7で共通で利用される電動モータが含まれる。
【0034】
中央制御装置13は、空気紡績機1の各部を集中的に管理及び制御する。中央制御装置13は、各紡績ユニット7が
図2のように備えるユニット制御部19に、図略の信号線を介して接続されている。本実施形態では、それぞれの紡績ユニット7がユニット制御部19を備えているが、所定数(例えば、2つ又は4つ)の紡績ユニット7が1つのユニット制御部19を共用しても良い。
【0035】
表示部15は、紡績ユニット7に対する設定内容及び/又は各紡績ユニット7の状態に関する情報等を表示することができる。操作部17は、オペレータが空気紡績機1の設定及び/表示部15に表示する情報の選択を行うために操作される。表示部15と操作部17は、タッチパネルディスプレイにより構成されていても良い。
【0036】
図2にも示すように、各紡績ユニット7は、主として、上流から下流へ向かって順に配置された、ドラフト装置21と、空気紡績装置(紡績装置)23と、糸貯留装置25と、糸関与装置27と、吸引装置29と、巻取装置31と、を備える。ここで、「上流」及び「下流」とは、特に言及しない限り、紡績糸(糸)33の巻取時における、スライバ(繊維束)35、繊維束37、及び紡績糸33の走行方向での上流及び下流を意味する。
【0037】
ドラフト装置21は、紡績ユニット7(空気紡績機1)の上部に設けられている。ドラフト装置21は、複数のドラフトローラを備えている。複数のドラフトローラにおいては、2つのドラフトローラがドラフトローラ対を構成している。本実施形態では、ドラフト装置21は、複数のドラフトローラ対を備える。
【0038】
具体的には、ドラフト装置21は、4つのドラフトローラ対を備える。4つのドラフトローラ対は、上流から下流へ向かって順に配置された、バックローラ対41、サードローラ対43、ミドルローラ対45、及びフロントローラ対47である。ミドルローラ対45の各ドラフトローラには、エプロンベルト49が設けられている。
【0039】
4つのドラフトローラ対のそれぞれは、互いに対向する駆動ローラ及び従動ローラを有する。駆動ローラ及び従動ローラは、ドラフトローラに相当する。4つのドラフトローラ対に関して、それぞれの駆動ローラに、図略のモータ等の駆動源が個別に設けられている。それぞれの駆動ローラは、駆動源によって当該駆動ローラの軸線を中心に回転駆動される。各ドラフトローラ対の従動ローラは、図略の軸受等を介して、当該従動ローラの軸線を中心に回転可能に設けられている。
【0040】
各ドラフトローラ対の駆動ローラは、他のドラフトローラ対の駆動ローラに対して独立して回転駆動される。また、4つの駆動ローラは何れも、他のドラフト装置21における駆動ローラに対して独立して回転駆動される。このように、ドラフト装置21は単錘駆動型のドラフト装置として構成されている。ただし、フロントローラ対47の駆動ローラ又はミドルローラ対45の駆動ローラの少なくとも何れかは、複数の紡績ユニット7に対して共通で設けられた駆動源により一斉に駆動されるように構成されていても良い。また、各紡績ユニット7において、バックローラ対41の駆動ローラ及びサードローラ対43の駆動ローラを単一のモータで駆動するようにしても良い。
【0041】
ドラフト装置21は、図略のスライバケースから供給されるスライバ35を、各ドラフトローラ対のドラフトローラ同士の間(駆動ローラと従動ローラとの間)で挟み込んで搬送することによって、所定の繊維量(又は太さ)となるまで引き伸ばして(ドラフトして)、繊維束37を生成する。ドラフト装置21で生成された繊維束37は、空気紡績装置23に供給される。
【0042】
空気紡績装置23は、ドラフト装置21で生成された繊維束37(ドラフトされたスライバ35)に旋回空気流を作用させることにより、撚りを加えて紡績糸33を生成する。空気紡績装置23は、空気紡績機1(紡績ユニット7)の高さ方向において、ドラフト装置21の概ね下方でその下流側に配置されている。
【0043】
糸貯留装置25は、空気紡績装置23で生成された紡績糸33を一時的に貯留する。糸貯留装置25は、空気紡績装置23の概ね下方でその下流側に配置されている。糸貯留装置25は、糸貯留ローラ53と、電動モータ55と、糸掛け部材57と、ガイド59と、を備える。
【0044】
糸貯留ローラ53は、電動モータ55により回転駆動される。糸貯留ローラ53は、その外周面に紡績糸33を巻き付けて一時的に貯留する。糸貯留ローラ53は、外周面に紡績糸33を巻き付けた状態で所定の回転速度で回転することによって、空気紡績装置23から紡績糸33を所定の速度で引き出すことができる。
【0045】
糸掛け部材57は、紡績糸33を引っ掛けることができる。糸掛け部材57は、紡績糸33を引っ掛けた状態で糸貯留ローラ53と一体的に回転することで、当該糸貯留ローラ53の外周面に紡績糸33を案内する。
【0046】
ガイド59は、糸貯留ローラ53のやや下方でその下流側に配置されている。このガイド59は、回転する糸掛け部材57によって振り回される紡績糸33の軌道を規制し、紡績糸33が走行する糸道のうち当該ガイド59の下流側(下側)の糸道を安定させて紡績糸33を案内するように構成されている。
【0047】
糸貯留装置25は、糸貯留ローラ53の外周面に紡績糸33を一時的に貯留することができるので、紡績糸33の一種のバッファとして機能する。これにより、空気紡績装置23における紡績速度と、巻取速度(後述のパッケージ93に巻き取られる紡績糸33の走行速度)と、が何らかの理由により一致しないことによる不具合(例えば、紡績糸33の弛み等)を解消することができる。
【0048】
空気紡績装置23と糸貯留装置25との間には、糸監視装置63が設けられている。空気紡績装置23で生成された紡績糸33は、糸貯留装置25で貯留される前に糸監視装置63を通過する。
【0049】
糸監視装置63は、走行する紡績糸33の品質を光センサによって監視し、紡績糸33に含まれる糸欠陥を検出する。糸欠陥としては、例えば、紡績糸33の太さの異常、及び/又は、紡績糸33に含まれる異物等がある。糸監視装置63は、紡績糸33の糸欠陥を検出した場合、ユニット制御部19へ糸欠陥検出信号を送信する。糸監視装置63は、光センサの代わりに、例えば静電容量式のセンサを用いて紡績糸33の品質を監視しても良い。これらの例に代えて、又はこれらの例に加えて、糸監視装置63は、紡績糸33の品質として、紡績糸33のテンションを測定するように構成されていても良い。
【0050】
ユニット制御部19は、糸監視装置63から糸欠陥検出信号を受信すると、空気紡績装置23及び/又はドラフト装置21の駆動を停止させることによって紡績糸33を切断する。即ち、空気紡績装置23は、糸監視装置63が糸欠陥を検出したときに紡績糸33を切断する切断部として機能する。なお、紡績糸33を切断するためのカッタを紡績ユニット7が備えていても良い。
【0051】
糸関与装置27は、糸貯留装置25を通過した紡績糸33に関与する。糸関与装置27は、糸貯留装置25の下方でその下流側に配置されている。本実施形態では、糸関与装置27は、ワキシング装置65と、糸走行センサ(糸検出装置)67と、を備える。
【0052】
ワキシング装置65は、紡績糸33に付与するワックスを保持することができる。ワキシング装置65は、糸貯留装置25と巻取装置31との間において走行中の紡績糸33にワックス付けを行う。ワキシング装置65の近傍に、糸走行センサ67が設けられている。
【0053】
糸走行センサ67は、糸道の所定位置において、紡績糸33が走行中か否か、言い換えれば、紡績糸33の有無を検出する。本実施形態において、糸走行センサ67は、ワキシング装置65のやや下方でその下流側に配置されている。糸走行センサ67は、ユニット制御部19に電気的に接続される。
【0054】
吸引装置29は、糸関与装置27を通過した紡績糸33を吸引することができる。吸引装置29は、糸関与装置27の下方でその下流側に配置されている。吸引装置29は、空気紡績装置23と巻取装置31との間で紡績糸33の分断が発生した場合に、
図3に鎖線で示す巻取装置31側の紡績糸69に対して作用する。紡績糸33が分断される典型的な原因は、糸監視装置63によって糸欠陥が検出されたことによる紡績糸33の切断(空気紡績の中断)である。吸引装置29が紡績糸69に作用するタイミングは、紡績糸33の分断の後、巻取装置31で回転するパッケージ93に当該紡績糸69が巻き取られる前である。
【0055】
具体的には、吸引装置29は、糸貯留装置25(ガイド59)の下方で、巻取装置31側の紡績糸69を吸引して捕捉する。
【0056】
吸引装置29は、吸引パイプ71を備える。吸引パイプ71の先端(長手方向一端)に吸引口73が形成されている。糸関与装置27から巻取装置31に向かって紡績糸33が走行する経路である糸道に向かって、吸引口73は開口している。吸引パイプ71は、配管等を介して、負圧源として機能するブロアに接続されている。これにより、吸引口73(吸引パイプ71内)に吸引空気流を発生させることができる。
【0057】
図3に示すように、吸引口73は、糸関与装置27と巻取装置31との間における糸道に沿って細長く形成されている。本実施形態では、吸引口73は、この糸道が延びる方向である上下方向が長手方向となる矩形状に形成されている。このように、吸引装置29は、吸引口73を通じて巻取装置31側の紡績糸69を吸引し易いように構成されている。
【0058】
吸引装置29は、糸貯留装置25に対し、上下方向の糸捕捉間隔S1を隔てて配置されている。糸捕捉間隔S1は、上下方向における糸貯留装置25と吸引装置29との間隔である。厳密に言えば、糸捕捉間隔S1は、糸貯留装置25のガイド59の下端と、吸引装置29の吸引口73の上端と、の上下方向での間隔として定義される。糸捕捉間隔S1は、吸引装置29が捕捉する巻取装置31側の紡績糸69の長さを確保するために上下方向に所定間隔を有する。
【0059】
上述の糸関与装置27は、糸捕捉間隔S1に相当する、糸貯留装置25と吸引装置29との間の空間75に設けられている。
【0060】
この糸捕捉間隔S1は、紡績糸33の分断が発生した後に、紡績糸69の端部が糸貯留装置25による拘束から実質的に解放されてフリーになった後、その端部が吸引装置29の開口に対面するまでの距離を意味する。この距離が長くなる程、吸引口73が紡績糸69に対して空気吸引流を作用させる機会が実質的に増えるので、紡績糸69の捕捉が容易になる。
【0061】
本実施形態において、糸捕捉間隔S1は上下方向において50mm以上150mm以下の間隔を有する。糸捕捉間隔S1をこの程度の大きさとすることで、空気紡績機1のコンパクト性を維持しつつ、糸貯留装置25と吸引装置29との間に、糸関与装置27を設置するスペースを確保することができる。従って、紡績糸69の捕捉を確実に行えるようにするだけでなく、スペースの効率的な利用を実現することができる。
【0062】
また、本実施形態では、吸引装置29が、糸関与装置27のワキシング装置65の下方に配置されている。従って、ワックスの滓等を吸引装置29によって吸引除去することができる。
【0063】
吸引装置29には、当該吸引装置29の吸引状態を変更するためのシャッタ(変更部)77が設けられている。シャッタ77は、例えば、吸引口73と、空気が流れる方向で当該吸引口73よりも下流側の部分と、の間に配置される。シャッタ77は、例えば、板状部材を有する開閉機構により構成することができる。シャッタ77は、ユニット制御部19又は中央制御装置13での制御により開閉することができる。
【0064】
例えば、紡績糸33の分断が発生していない場合は、吸引口73へ紡績糸69を吸引して捕捉する必要がない。このような状況ではシャッタ77を閉じるように制御することで、空気紡績機1における省エネルギーを実現することができる。
【0065】
巻取装置31は、糸関与装置27を通過した紡績糸33を巻き取ってパッケージ93を形成する。巻取装置31は、空気紡績装置23の下流側であって、空気紡績装置23の下方に配置されている。巻取装置31は、糸関与装置27及び吸引装置29に対しても、下流側かつ下方に配置されている。
【0066】
本実施形態では、巻取装置31は、単錘駆動型の巻取装置である。即ち、それぞれの紡績ユニット7の巻取装置31は、他の紡績ユニット7の巻取装置31とは独立して、巻取りの開始/停止等が制御される。巻取装置31は、クレードルアーム81と、巻取ドラム83と、トラバースガイド85と、を備える。
【0067】
クレードルアーム81は、支軸87まわりに揺動可能に支持されており、紡績糸33を巻き取るためのボビン91(ひいてはパッケージ93)を回転可能に支持することができる。巻取ドラム83は、ボビン91又はパッケージ93の外周面に接触した状態で回転することで、パッケージ93を巻取方向に回転駆動する。巻取装置31は、トラバースガイド85を図略の駆動手段によって往復動させながら、巻取ドラム83を図略の電動モータによって駆動する。これにより、巻取装置31は、紡績糸33を綾振りしつつ、紡績糸33をパッケージ93に巻き取る。
【0068】
図1に示すように、空気紡績機1は、レール101を備える。レール101は、複数の紡績ユニット7が並ぶ方向に沿って配置される。糸継台車9は、レール101の上を走行可能に構成されている。これにより、糸継台車9は、複数の紡績ユニット7に対して移動することができる。
【0069】
糸継台車9は、糸切れ又は糸切断が発生した紡績ユニット7まで走行して、当該紡績ユニット7に対する糸継作業を行う。糸継台車9の糸継作業は、当該紡績ユニット7が備える吸引装置29等と連携しながら行われる。
【0070】
糸継台車9は、走行車輪103と、糸継装置105と、サクションパイプ(糸捕捉案内装置)107と、を備える。糸継台車9は更に、
図4等に示す台車制御部111を備える。
【0071】
サクションパイプ107は、空気紡績装置23で生成された紡績糸33を捕捉可能である。具体的には、サクションパイプ107は、その先端に吸引空気流を発生させることによって、空気紡績装置23から送り出される紡績糸33を吸い込んで捕捉することができる。サクションパイプ107は、紡績糸33を捕捉した状態で回動することによって、当該紡績糸33を糸継装置105に導入できる位置まで案内する。
【0072】
糸継装置105は、紡績糸33の分断の発生後に、サクションパイプ107によって案内される空気紡績装置23側の紡績糸と、吸引装置29により捕捉された巻取装置31側の紡績糸69と、の糸継ぎを行う。本実施形態において、糸継装置105は、旋回空気流により糸端同士を撚り合わせるスプライサ装置である。糸継装置105は、前記のスプライサ装置に限定せず、例えば機械式のノッタ等を採用することもできる。
【0073】
台車制御部111は、図示しないCPU、ROM、RAM等を有する公知のコンピュータとして構成されている。台車制御部111は、糸継台車9が備える各部の動作を制御することによって、糸継台車9が行う糸継作業を制御する。
【0074】
続いて、
図2の状態で糸監視装置63が糸欠陥を検出した場合を例として、糸継装置105により糸継ぎが行われる場合の各部の動作について説明する。
【0075】
まず、ユニット制御部19が、糸監視装置63から入力される糸欠陥検出信号に基づいて、空気紡績装置23及び/又はドラフト装置21を停止させる。このとき、ユニット制御部19は、巻取装置31も停止させる。
【0076】
空気紡績装置23及び/又はドラフト装置21の停止により、紡績糸33が切断される。これにより、紡績糸33の分断が発生する。巻取装置31が完全に停止した後、ユニット制御部19は、巻取装置31を再び駆動させる。この結果、糸貯留装置25に残存する紡績糸を含む巻取装置31側の紡績糸69が、巻取装置31によりパッケージ93に巻き取られる。このときの巻取速度は、吸引装置29による紡績糸69の捕捉を容易とするために、通常の巻取速度よりも低くなっている。
【0077】
巻取装置31の駆動により、糸貯留装置25において紡績糸69が引き出されて、
図4に示すように貯留量が減少していく。糸貯留装置25には、紡績糸69の貯留量を検知するための図略のセンサが設けられている。ユニット制御部19は、このセンサの検出信号を監視する。紡績糸69が糸貯留装置25から外れる少し前のタイミング(例えば、紡績糸69の貯留量が所定値以下となったことを前記センサが検知したタイミング)になると、ユニット制御部19は、閉じられているシャッタ77を開いて、吸引装置29による吸引を開始させる。その後、紡績糸69の端部が糸貯留ローラ53から外れてガイド59を抜けるのと殆ど同じタイミングで、ユニット制御部19は巻取装置31を再び停止させる。この結果、紡績糸69を吸引口73に吸い込んで捕捉することができる。
【0078】
糸監視装置63が糸欠陥を検出した後の適宜のタイミングで、ユニット制御部19は糸継要求信号を台車制御部111に送信する。糸継要求信号を受信した台車制御部111は、対象の紡績ユニット7まで糸継台車9を走行させた後、停止させる。
【0079】
前述の吸引装置29による紡績糸69の捕捉は、紡績糸33の分断後の所定のタイミングで行われている。吸引パイプ71の吸引口73は、当該吸引装置29を備える紡績ユニット7の作業位置に糸継台車9が停止した状態における糸継装置105に対して適宜の位置関係となるように配置されている。従って、吸引装置29によって保持されているパッケージ93側の紡績糸69は、糸継台車9が到着すると、糸継台車9が備える糸継装置105に案内された状態になる。
【0080】
糸継台車9を停止させた後、台車制御部111は糸継台車9を制御して、サクションパイプ107を
図5の鎖線で示すように空気紡績装置23側の紡績糸を捕捉できる位置へ移動させる。これと殆ど同時に、ユニット制御部19は、空気紡績装置23及び/又はドラフト装置21の駆動を再開する。台車制御部111は、サクションパイプ107によって捕捉された空気紡績装置23側の紡績糸を、
図5の実線で示すように、下方の糸継装置105まで案内させる。
【0081】
この状態で、ユニット制御部19は糸継装置105を動作させ、吸引装置29により吸引された巻取装置31側の紡績糸69と、空気紡績装置23側の紡績糸と、の糸継ぎを行わせる。この糸継ぎにおいて、余分な紡績糸は切断され、吸引装置29又はサクションパイプ107に吸い込まれて廃棄される。糸継ぎ中にも空気紡績装置23からは連続的に紡績糸が供給されるが、この紡績糸は糸貯留装置25によって貯留される。
【0082】
糸継ぎの完了とほぼ同時に、巻取装置31によるパッケージ93の巻取りが再開される。シャッタ77は、糸継作業の完了後の適宜のタイミングで閉じられる。このようにして、紡績ユニット7は
図2の通常状態に戻る。
【0083】
なお、空気紡績装置23及び/又はドラフト装置21を停止させる際、ユニット制御部19は、巻取装置31を完全に停止させずに、パッケージ93の巻取速度が減速されるように巻取装置31を制御し、紡績糸69の糸端が吸引口73に吸引されるようにしても良い。
【0084】
上述のように、紡績糸33の糸道には糸関与装置27が配置されているが、吸引装置29と巻取装置31との間には、糸継装置105だけが実質的に配置されている。言い換えれば、
図5のように糸継ぎが行われるとき、吸引装置29の下方かつ糸継装置105の上方には、糸関与装置27等の余計な装置が存在しない。従って、糸継ぎされる紡績糸の移動が、例えばワキシング装置65による紡績糸の拘束によって困難になる等の影響が生じないので、糸継装置105による糸継ぎを円滑に行うことができる。
【0085】
以上に説明したように、本実施形態の空気紡績機1は、ドラフト装置21と、空気紡績装置23と、糸貯留装置25と、糸関与装置27と、吸引装置29と、巻取装置31と、を備える。ドラフト装置21は、スライバ35をドラフトする。空気紡績装置23は、ドラフト装置21でドラフトされたスライバ35、即ち繊維束37に旋回空気流によって撚りを加えて紡績糸33を生成する。糸貯留装置25は、空気紡績装置23よりも低い位置に配置され、空気紡績装置23で生成された紡績糸33を一時的に貯留する。糸関与装置27は、糸貯留装置25よりも低い位置に配置され、紡績糸33に関与する。吸引装置29は、糸関与装置27よりも低い位置に配置され、紡績糸33を吸引可能に構成される。巻取装置31は、吸引装置29よりも低い位置に配置され、紡績糸33を巻き取ってパッケージ93を形成する。糸関与装置27は、ワキシング装置65及び糸走行センサ67である。
【0086】
これにより、空気紡績装置23と巻取装置31との間で紡績糸33の分断が発生した際に、巻取装置31側の紡績糸69を吸引装置29によって確実に捕捉することができる。また、糸貯留装置25と吸引装置29の間の空間75に糸関与装置27が配置されるので、この空間75が空気紡績機1においてデッドスペースとならない。
【0087】
本実施形態の空気紡績機1において、糸貯留装置25は、紡績糸33が外周面に巻き付けられることにより紡績糸33を貯留する糸貯留ローラ53を有する。吸引装置29は、糸貯留装置25に対し、上下方向に所定間隔を有する糸捕捉間隔S1を隔てて配置される。糸捕捉間隔S1は、空気紡績装置23と巻取装置31との間で紡績糸33の分断が発生した後に、糸貯留ローラ53から解舒される紡績糸69が通過し、捕捉する紡績糸69の長さを確保するための間隔である。糸関与装置27は、糸捕捉間隔S1に相当する、糸貯留装置25と吸引装置29との間の空間75に設けられる。
【0088】
これにより、糸貯留装置25と吸引装置29との間の距離を十分に確保することができる。従って、吸引装置29が捕捉のための吸引流を紡績糸69に作用させる長さを実質的に長くすることができる。この結果、吸引装置29において、紡績糸69を捕捉し易くすることができる。しかも、そのために確保した距離に相当する空間に糸関与装置27を配置することで、スペースを効率的に使用することができる。
【0089】
本実施形態の空気紡績機1において、糸貯留装置25と吸引装置29との間隔は、紡績糸33の走行方向(上下方向)において50mm以上150mm以下である。
【0090】
これにより、構成のコンパクト性を維持しつつも、吸引装置29による紡績糸69の捕捉を確実にし、かつ、糸関与装置27を配置するスペースを確保することができる。
【0091】
本実施形態の空気紡績機1において、糸関与装置27は、紡績糸33に付与するワックスを保持可能なワキシング装置65を、糸処理装置として備える。
【0092】
これにより、ワキシング装置65に関して、スペース効率の高いレイアウトを実現することができる。ワキシング装置65は、ある一定の長さを有する装置であるため、糸貯留装置25に対して吸引装置29を離して配置することができ、吸引装置29により紡績糸69を捕捉し易くなる。
【0093】
本実施形態の空気紡績機1において、糸関与装置27は、紡績糸33の有無を検出する検出する糸走行センサ67を、糸検出装置として備える。
【0094】
これにより、糸走行センサ67に関して、スペース効率の高いレイアウトを実現することができる。糸走行センサ67は、ある一定の長さを有する装置であるため、糸貯留装置25に対して吸引装置29を離して配置することができ、吸引装置29により糸を捕捉し易くなる。
【0095】
本実施形態の空気紡績機1において、吸引装置29は、糸関与装置27と巻取装置31との間において紡績糸33が走行する糸道に向かって開口する吸引口73を備える。吸引口73は、前記糸道に沿って細長く形成される。
【0096】
これにより、巻取装置31側の紡績糸69を吸引口73によって捕捉し易くなる。
【0097】
本実施形態の空気紡績機1において、吸引装置29の吸引状態を変更可能なシャッタ77を有する。
【0098】
これにより、例えば、紡績糸33の分断が発生していない通常巻取時には吸引装置29が紡績糸33に作用しないようにすることができる。従って、空気紡績機1において省エネルギーを実現することができる。
【0099】
本実施形態の空気紡績機1において、空気紡績機1は、糸継装置105と、サクションパイプ107と、を備える。糸継装置105は、空気紡績装置23と巻取装置31との間で紡績糸33の分断が発生した場合に、空気紡績装置23側の紡績糸と巻取装置31側の紡績糸69との糸継ぎを行う。サクションパイプ107は、空気紡績装置23側の紡績糸を捕捉して糸継装置105に案内する。前記糸継ぎが行われる場合に、上下方向において吸引装置29と巻取装置31との間に糸継装置105が配置される。
【0100】
これにより、糸継ぎが行われる際に、巻取装置31側の紡績糸69が、糸関与装置27等による物理的な影響(例えば、ワキシング装置65による紡績糸69への接触)を受けることがない。従って、糸継ぎを円滑に行うことができる。
【0101】
本実施形態の空気紡績機1は、ドラフト装置21を複数備える。それぞれのドラフト装置21は、複数の駆動ローラを備える。ドラフト装置21を構成する全ての駆動ローラが、他のドラフト装置21の駆動ローラとは独立に駆動される。
【0102】
これにより、ドラフト装置21の各部(各ドラフトローラ対の駆動ローラ)の駆動を、他のドラフト装置21とは独立して柔軟に制御することができる。
【0103】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0104】
上記の実施形態では、糸関与装置27は、ワキシング装置65及び糸走行センサ67を備える。これに代えて、例えば、糸関与装置27がワキシング装置65だけを備えても良いし、糸関与装置27が糸走行センサ67だけを備えても良い。
【0105】
糸関与装置27が、ワキシング装置65以外の糸処理装置を備えても良い。このような糸処理装置としては、例えば、紡績糸33のテンションを調整するテンション調整装置を挙げることができる。
【0106】
糸関与装置27は、接触式、非接触式を問わず、様々な構成の糸検出装置を備えることができる。
【0107】
上記の実施形態では、糸継ぎのために用いられる糸継装置105及びサクションパイプ107は、複数の紡績ユニット7が共有する1つの糸継台車9に備えられる。言い換えれば、糸継装置105及びサクションパイプ107は、糸継台車9とともに複数の紡績ユニット7に対して移動して、糸継作業のための動作を行う。ただし、糸継装置105及びサクションパイプ107は、各紡績ユニット7に個別に備えられても良い。この構成では、糸継ぎ時だけでなく常に、吸引装置29、糸継装置105、及び巻取装置31が上から順に配置され、上下方向で並ぶように配置される。それぞれの紡績ユニット7に糸継装置105及びサクションパイプ107が配置される構成では、ある紡績ユニット7において紡績糸33の分断が発生した場合に、当該紡績ユニットで糸継作業を完結して、紡績を再開することができる。この構成では、糸継台車9を省略することができる。
【0108】
シャッタ77の構成及び位置は、吸引空気流の発生/停止を切換可能であれば任意である。例えば、シャッタ77を吸引口73に設けても良い。
【0109】
上記の実施形態では、糸貯留装置25によって紡績糸33を空気紡績装置23から引き出している。糸貯留装置25の代わりに、デリベリローラ対によって、紡績糸33を空気紡績装置23から引き出すように紡績ユニット7を構成しても良い。この場合、デリベリローラ対の下流に糸貯留装置25が設けられていても良い。
【0110】
上述の教示を考慮すれば、本発明が多くの変更形態及び変形形態をとり得ることは明らかである。従って、本発明が、添付の特許請求の範囲内において、本明細書に記載された以外の方法で実施され得ることを理解されたい。