【解決手段】犠牲プラグ(100)システムであって、表面(85)および表面にある少なくとも1つの冷却孔(108)を有する構成要素と、構成要素と一体的に形成され、かつ少なくとも1つの冷却孔内に一体的に形成された犠牲プラグとを備え、犠牲プラグは、上部(110)、カバー部(120)、および下部であって、下部は少なくとも1つの冷却孔に一体的に形成され、係合され、接続されている下部を含む、犠牲プラグシステムを示す。犠牲プラグシステムはまた、犠牲プラグの下部と一体的に形成され、かつ各それぞれの少なくとも1つの冷却孔の内壁(109)と一体である少なくとも1つの接続部材を含み、各少なくとも1つの接続部材は、上部に力が加えられたときに、それぞれの内壁から切断可能である。よって犠牲プラグを少なくとも1つのそれぞれの冷却孔から除去することができる。
前記カバー部(120)が、前記表面(85)および前記それぞれの少なくとも1つの冷却孔(108)から上方に所定の距離(A)を置いて配置されている、請求項1に記載の犠牲プラグ(100)システム。
前記カバー部(120)がカバー部(120)輪郭を含み、前記構成要素が構成要素輪郭を有し、前記カバー部(120)輪郭は前記構成要素輪郭を反映している、請求項2に記載の犠牲プラグ(100)システム。
前記犠牲プラグ(100)システムが、一体的に形成された構成要素、前記犠牲プラグ(100)および前記少なくとも1つの接続部材(131、132、144)に施されるコーティングをさらに含み、前記所定の距離(A)により、前記カバー部(120)の下へのコーティングの進入が可能となり、前記コーティングが各それぞれの少なくとも1つの冷却孔(108)に入ることが防止され、前記所定の距離(A)により、前記少なくとも1つの冷却孔(108)のうちの隣接する冷却孔(108)の間における前記コーティングのブリッジングが防止される、請求項2に記載の犠牲プラグ(100)システム。
前記一体的に形成された構成要素、前記犠牲プラグ(100)、および前記少なくとも1つの接続部材(131、132、144)が、一体的に付加製造されている、請求項1に記載の犠牲プラグ(100)システム。
前記構成要素がタービンブレード(10)を含み、前記表面(85)が複数の前記少なくとも1つの冷却孔(108)を有する後縁(82)を含み、複数の前記少なくとも1つの接続部材(131、132、144)が、前記タービンブレード(10)の前記後縁(82)においてそれぞれの冷却孔(108)に形成されている、請求項1に記載の犠牲プラグ(100)システム。
前記上部(110)が、各それぞれの少なくとも1つの接続部材(131、132、144)を前記それぞれの少なくとも1つの冷却孔(108)の前記壁(109)から切断するために前記犠牲プラグ(100)の回転を可能する構成を含む、請求項1に記載の犠牲プラグ(100)システム。
前記上部(110)が、ローレット面、輪郭面、曲面、角柱面、こぶのある面、フック面、係合を容易にして除去するための原動力を提供する表面のうちの少なくとも1つを含み、前記上部(110)が、中実部、中空部、および格子部のうちの少なくとも1つを含む、請求項7に記載の犠牲プラグ(100)システム。
前記上部(110)が前記上部(110)と一体の歯車構造体(111)を含み、前記歯車構造体(111)は歯(112,146)を含み、前記歯(112,146)は少なくとも1つの動力装置と係合して、前記歯車構造体(111)を回転させ、それによって前記犠牲プラグ(100)を回転させて、前記犠牲プラグ(100)の前記少なくとも1つの接続部材(131、132、144)を切断する、請求項7に記載の犠牲プラグ(100)システム。
前記少なくとも1つの動力装置が、相補的な歯車(202)、直線状の歯(201)を有したギヤードラック(200)、および結束ベルト(300)のうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載の犠牲プラグ(100)システム。
前記上部(110)が開口部(115)を有する端面(117)を含み、前記開口部(115)は機械的装置と係合して前記歯車構造体(111)を回転させ、それによって前記犠牲プラグ(100)を回転させて、前記犠牲プラグ(100)の前記少なくとも1つの接続部材(131、132、144)を切断する、請求項7に記載の犠牲プラグ(100)システム。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示の図面は、原寸に比例していないことに留意されたい。図面は、本開示の典型的な態様だけを図示することを意図しており、したがって、本開示の範囲を限定するものと考えるべきではない。図面では、類似する符号は、図面間で類似する要素を表す。
【0007】
最初の問題として、現在の技術を明確に説明するために、特に任意の形成後処理中に、冷却孔の構成を保護する、冷却孔を有する構成要素のための犠牲プラグシステムを参照して説明する場合に、特定の専門用語を選択することが必要になるであろう。可能な限り、一般的な工業専門用語が、その受け入れられた意味と同じ意味で使用および利用される。別途記載のない限り、このような専門用語は、本出願の文脈および添付の特許請求の範囲と一致する広義の解釈を与えられるべきである。当業者であれば、多くの場合、特定の構成要素がいくつかの異なるまたは重複する用語を使用して参照されることがあることを理解するであろう。単一の部品であるとして本明細書に記載され得るものは、複数の構成要素からなるものとして別の文脈を含み、かつ別の文脈で参照されてもよい。あるいは、複数の構成要素を含むものとして本明細書に記載され得るものが、単一の部品として他の場所で参照されてもよい。
【0008】
また、本明細書ではいくつかの記述上の用語を繰り返し使用する場合があり、本項の始めでこれらの用語を定義することが有用であるはずである。これらの用語およびその定義は、別途記載のない限り、以下の通りである。本明細書で使用する場合、「下流」および「上流」とは、タービンエンジンを通る作動流体、または例えば、燃焼器を通る空気の流れ、もしくはタービンの構成要素システムの1つを通る冷却剤などの流体の流れに対する方向を示す用語である。「下流」という用語は、流体の流れの方向に対応し、「上流」という用語は、流れの反対の方向を指す。「前方」および「後方」という用語は、別途指定のない限り、方向を指し、「前方」はエンジンの前部または圧縮機端部を指し、「後方」はエンジンの後部またはタービン端部を指す。
【0009】
多くの場合、中心軸線に関して異なる半径方向位置に配置された部品を記述することが要求される。「半径方向」という用語は、軸線に垂直な移動または位置を指す。例えば、第1の構成要素が第2の構成要素よりも軸線に近接して位置する場合には、本明細書では、第1の構成要素は第2の構成要素の「半径方向内向き」または「機内」にあると述べる。一方、第1の構成要素が第2の構成要素よりも軸線から遠くに位置する場合には、本明細書では、第1の構成要素は第2の構成要素の「半径方向外向き」または「機外」にあると述べることができる。「軸方向」という用語は、軸線に平行な移動または位置を指す。最後に、「円周方向」という用語は、軸線周りの移動または位置を指す。このような用語は、タービンの中心軸線に関連して適用することができることが理解されよう。
【0010】
加えて、以下に記載されるように、本明細書ではいくつかの記述的用語を規則通りに使用することができる。「第1の」、「第2の」、および「第3の」という用語は、ある構成要素を別の構成要素から区別するために交換可能に使用することができ、個々の構成要素の場所または重要性を示すことを意図するものではない。
【0011】
本明細書で使用される専門用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、本開示を限定することを意図するものではない。本明細書で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「この(the)」は、特に明示しない限り、複数形も含むことを意図している。「備える(comprise)」および/または「備えている(comprising)」という用語は、本明細書で使用する場合、記載した特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素が存在することを明示するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を除外しないことがさらに理解されよう。「任意選択の」または「任意選択で」は、後で述べられる事象または状況が、起こる場合も起こらない場合もあることを意味し、この記述は、その事象が起こる事例と、起こらない事例とを含むことを意味する。
【0012】
ある要素または層が別の要素または層に対して「上に」、「係合される」、「接続される」、または「結合される」と言及される場合には、他の要素または層に対して直接、上に、係合され、接続され、または結合されてもよいし、あるいは介在する要素または層が存在してもよい。逆に、ある要素が別の要素または層に対して「直接上に」、「直接係合される」、「直接接続される」、または「直接結合される」と言及される場合には、介在する要素または層は存在しなくてもよい。要素間の関係について説明するために使用される他の語も、同様に解釈されるべきである(例えば、「〜の間に」に対して「直接〜の間に」、「〜に隣接して」に対して「直接〜に隣接して」など)。本明細書で使用する場合、「および/または」という用語は、関連する列挙された項目のうちの1つまたは複数のありとあらゆる組み合わせを含む。
【0013】
上述したように、本開示は犠牲プラグシステムに関する。特に、本開示は、後続の形成後処理を回避するために冷却孔の構成を保護する、例えば、構成要素内の冷却孔をブリッジ(架橋)するか、または閉塞するコーティングからの保護する冷却孔を有する構成要素のための犠牲プラグシステムに関する。
【0014】
本開示の実施形態の理解を容易にするために、発電、航空、および他の分野における変化および改善のペースは、これらの分野で使用される構成要素を製造するための広範な研究を伴ってきたことが知られている。金属、プラスチック、またはセラミック構成要素の従来の製造は、一般に、材料のスラブからある領域をフライス削りまたは切除してから、切除された材料を加工および修正して部品を得ることを含み、これはコンピュータモデルを使用して、例えばドラフティングソフトウェアで、シミュレートされている場合がある。金属から形成することができる製造構成要素としては、例えば航空機エンジンまたは発電システムなどのターボ機械内に設置するための、翼形部構成要素が挙げられる。
【0015】
付加製造(additive manufacturing:AM)は、材料の除去ではなく、材料の連続的な層形成により構成要素を製造する多種多様なプロセスを含む。そのため、付加製造では、いかなる種類の工具、金型または固定具も使用することなく、かつ材料をほとんどまたは全く無駄にすることなく、複雑な幾何学的形状を形成することができる。大半が切除されて廃棄される材料の中実ビレットから構成要素を機械加工する代わりに、付加製造に使用される材料は、構成要素を成形するために必要とされる材料のみである。
【0016】
付加製造技術は、典型的には、形成される構成要素の三次元コンピュータ支援設計(CAD)ファイルを取得することと、構成要素を、例えば、18〜102マイクロメートル厚の層に電子的にスライスすることと、ベクトル、画像または座標を含む各層の二次元画像を有するファイルを作成することとを含む。次いで、構成要素を異なるタイプの付加製造システムによって構築することができるように、ファイルを解釈する準備ソフトウェアシステムにこのファイルをロードすることができる。三次元(3D)印刷、ラピッドプロトタイピング(rapid prototyping:RP)、および直接デジタル製造(direct digital manufacturing:DDM)という付加製造の形式では、材料層を選択的に分注し、焼結し、形成し、堆積させるなどして構成要素を形成する。
【0017】
直接金属レーザ溶融(direct metal laser melting:DMLM)(選択的レーザ溶融(selective laser melting:SLM)とも呼ばれる)などの金属粉末付加製造技術では、金属粉末層を共に順次溶融して構成要素を形成する。より具体的には、金属粉末床上のアプリケータを使用して微細な金属粉末層を均一に分与した後、これらを連続的に溶融させる。各アプリケータは、金属製、プラスチック製、セラミック製、炭素繊維製、またはゴム製のリップ、ブラシ、ブレード、またはローラの形態にあり、金属粉末をビルドプラットフォーム上に均一に広げるアプリケータ要素を含む。金属粉末床は、垂直軸線に沿って移動させることができる。プロセスは、精密に制御された雰囲気を有する処理チャンバ内で行われる。各層が形成されると、金属粉末を選択的に溶融することによって、構成要素の幾何学的形状の各二次元スライスを融着させることができる。溶融は、100ワットのイッテルビウムレーザなどの高出力溶融ビームによって行うことができ、金属粉末を完全に溶接(溶融)して固体金属を形成する。溶融ビームは走査ミラーを使用してX−Y方向に移動し、また金属粉末を完全に溶接(溶融)して固体金属を形成するのに十分な強度を有する。後続の二次元層ごとに金属粉末床を下げてもよく、構成要素が完全に形成されるまでプロセスを繰り返す。
【0018】
さらに、限定はしないが、ガスタービンエンジンの翼形部、タービンブレード、およびベーン(ノズル)などのタービン構成要素は、冷却空気が翼形部を通って流れ、次いで注意深く構成された冷却孔を通って排出される複雑な冷却方式を必要とすることが多い。例えば、本開示の単なる例示にすぎないが、構成要素の冷却孔には、翼形部の後縁における冷却孔が含まれ得る。タービンブレードの性能は、翼形部表面の均一な冷却を提供する能力に関連する。したがって、開口のサイズおよび形状が、所与の孔から退出する流量、翼形部にわたる孔の分布、および冷却回路内の全体的な流れ分布を決定し得るため、冷却孔のサイズおよび形状の制御は、タービン翼形部の設計において重要である。逆流マージンなどの他の要因も、開口サイズの変動の影響を受ける。したがって、コーティングなどの構成要素の後処理の後を含めて、冷却孔の意図した構成を保護することにより、冷却孔がその期待される機能を果たすことが可能となる。
【0019】
レーザ加工および放電加工(electrical−discharge machining:EDM)などの従来の穿孔技術に加えて、開口サイズを繰り返し制御するために、複雑で高度な鋳造技術を用いて、寸法の正しい冷却孔開口を有する翼形部を得ることができる。鋳造されると、サイズに合わせて鋳造された(cast−to−size)冷却孔開口が、冷却孔開口の一部または全部の寸法を変化させるであろう作業によって処理されないように、後続の翼形部製造作業を実施しなければならない。
【0020】
しかしながら、いくつかのタービンのますます複雑になる空気通路の基準により、タービン構成要素を形成するために、(上記のような)付加製造プロセスが使用されている。付加製造プロセスは、いくつかの従来の形成方法よりも簡単で、効率的、かつ低コストの方法で、入り組んで蛇行した複雑な冷却通路および冷却孔開口の形成が可能になる。
【0021】
タービン構成要素のますます過酷になる動作環境では、どのように形成されるかにかかわらず、保護コーティングが、典型的には、製造時に、場合によっては修理中にも、タービン構成要素に施される。現代の高効率燃焼タービンは、約1,000℃を超える入口温度を有し、より効率的なエンジンに対する要求が続くにつれて、さらに高い入口温度が予想される。「高温ガス経路」の燃焼器およびタービンセクションを形成する多くの構成要素、例えば、燃焼器ライナ、燃焼セクションとタービンセクションとの間の移行ダクト、ならびにタービン固定ベーンおよび回転ブレードおよび周囲リングセグメントなどは、反応性の高い高温燃焼ガスに直接さらされる。熱的応力に加えて、これらおよび他の構成要素はまた、構成要素をさらに摩耗させる機械的な応力および負荷にもさらされる。
【0022】
燃焼タービンエンジンの高温ガス経路セクションに使用される燃焼タービン構成要素の大部分を製造するために従来使用されている多くの鉄基、コバルト基、およびニッケル基超合金材料は、この反応性の高い高温燃焼環境での長期運転に耐えるために、構成要素を保護コーティングで被覆することによって高温ガス流から断熱される。保護コーティングには、遮熱コーティング(thermal barrier coating:TBC)、ボンドコート、耐環境性コーティング(environmental barrier coating:EBC)、それらの組み合わせ、および現在知られている、または後に開発される他のコーティングが含まれるが、これらに限定されるものではない。保護コーティングは、タービン構成要素の意図される使用およびその使用に関連する環境に応じて、例えば、ボンドコートおよびそれに続く付加的なコーティングによって保護コーティングを必要とする表面を被覆することを含む多段階プロセスによって生成することができる。
【0023】
TBCは高度に進歩した材料系である。これらのコーティングは、耐荷重性合金とコーティング表面との間にかなりの温度差を維持することができる断熱材料を利用することによって、長期にわたる大きな熱負荷から構成要素を断熱するための保護コーティングとして働く。そうすることで、これらのコーティングは、構造構成要素の熱曝露を制限しながら、より高い動作温度を可能にし、酸化および熱疲労を低減することによって構成要素の寿命を延ばすことができる。
【0024】
TBCは、様々な方法によってタービン構成要素に施される。TBC(または他のコーティング)を施すために、噴霧(spraying)がしばしば用いられる。例示的な噴霧塗布プロセスには、空気中および真空中の双方におけるプラズマ溶射、コールドスプレイング、静電噴霧、電子ビーム物理蒸着(electron beam physical vapor deposition)、化学蒸着、溶射、高速酸素燃料コーティング(high−velocity oxy−fuel coating)、物理蒸着、それらの組み合わせ、ならびに現在知られている、または後に開発される他の噴霧技術が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
本開示の実施形態によるブレード10などの部品をスプレーコーティングする一態様は、ブレード10の冷却孔108の周りにおけるスプレーの制御またはその欠如を包含する。制御とは、スプレーが冷却孔108の周りのブリッジング(架橋)およびその後の再加工の必要性を回避することを意味する。もちろん、コーティングまたは他の処理後/形成後の構成要素の処理は、翼形部が、翼形部を通り、翼形部表面で冷却孔を通って退出する冷却空気の気流要件を含む、動作要件を満たすことを妨げてはならない。
【0026】
回避すべき1つの処理後/形成後コーティングの結果は「ブリッジング」であり、これは、後続の形成後コーティングプロセスが、冷却孔間の間隔を覆って変化させる場合および/または冷却孔を閉鎖する場合である。ブリッジングは、冷却孔間および場合によっては冷却孔内において形成後コーティングプロセス材料が多すぎることによって引き起こされる可能性があり、したがって冷却孔の開口サイズを小さくする。形成後コーティングプロセス材料が多すぎる場合、冷却孔の1つまたは複数が、実際には完全に覆われるか、またはブリッジされる可能性がある。もちろん、冷却孔の期待される機能を維持するためには、ブリッジングは制御され、可能な限り最小限に保たれるべきである。
【0027】
以下で詳細に論じるように、ブリッジングは、スプレー液が、構成要素上、本明細書ではブレード10上に堆積する際のスプレー液(例えば、実施形態を限定することを意図するものではないが、TBC)の「シャドーイング」効果によるものである。シャドーイング効果は、光源の前に物体を配置し、その物体によって投影される影を観察することによって最もよく視覚化され得る。物体の周りを通過する光線は、堆積されているスプレー液を表し、物体によって投影される影は、堆積したスプレー液における空隙を表す。しかしながら、コーティングが、シャドーイングと呼ばれる自然なプロセスで、それ自体の上に積み重なって孔の上に「ブリッジする」可能性があるため、小さすぎたり、または互いに近すぎたりする孔(冷却孔108など)は、ブリッジを形成する可能性がある。これらの孔において、コーティングは孔を塞ぐ可能性がある。また、コーティング材料が、構成要素または基材に厳密に結合または接着されない場合もある。したがって、(コーティングが目標の領域および孔の上に蓄積している場合に)「ブリッジ」の孔108を掃除したり、または(コーティングが構成要素または基材に厳密に結合または接着されていない)各所で再被覆したりするための再作業が必要となり、これにより処理時間が長くなり、さらなるリソースが必要となり、機会損失コストなどをもたらす可能性がある。
【0028】
上記を考慮して、本開示は、冷却孔へのコーティングの堆積を防止するためのシステム、方法、および構造を記載する。ブリッジングによって冷却孔に入り込むコーティング材料に起因する冷却孔のサイズおよび形状の変化を低減するか、またはほとんど排除することに加えて、冷却孔内のコーティングを防止する本開示のさらなる利点は、コーティング作業によって消費されるコーティング材料の量が低減されることで実現され得る。
【0029】
図1に示すように、タービンブレード10は、翼形部80を含む。翼形部80は、前縁81および後縁82と、正圧側壁83と、負圧側壁84とを含む。正圧側壁83は、前縁81および後縁82において負圧側壁84に接続されている。翼形部80は、正圧側壁83、負圧側壁84、前縁81、および後縁82によってフィレット41で接続された先端部40および根元部30をさらに含む。根元部30は、プラットフォーム32およびダブテール31を含む。
【0030】
タービンブレード10は、正圧側壁83と負圧側壁84との間に少なくとも1つの冷却キャビティ88を含む(図示を容易かつ明瞭にするために
図1および
図5では1つのキャビティ88のみが示されている)。各冷却キャビティ88は、1つまたは複数の冷却孔108,109と流体連通している。複数の冷却孔108は、前縁81および後縁82に沿って前縁81および後縁82を通って延びる前縁冷却孔および後縁冷却孔108を含むが、これらに限定されるものではない。後縁冷却孔108は実質的に円形であるが、湾曲した後縁82上におけるそれらの位置に注目すると、それらの後縁冷却孔108に対してわずかに楕円形のまたは細長い構成が可能である。本明細書で論じる場合、本開示の態様である、円形冷却孔または他の構成の冷却孔のいずれかを参照することができる。単数の「冷却孔(cooling hole)」または複数の「冷却孔(cooling holes)」の使用は、明確に論じられない限り、本開示の実施形態を限定することを意図するものではない。説明の残りの部分は、冷却孔108を参照する。
【0031】
他の冷却孔109は、実質的に円形であり、少なくとも1つの冷却キャビティ88の内部冷却通路からブレード10の所望の冷却を可能にする本体位置において翼形部80を通って延在する。他の冷却孔109は、翼形部80の先端部40に、ならびに翼形部80の本体の一部に沿って、配置することができる。
【0032】
本開示の態様によれば、犠牲プラグ100またはカバー(以下、「犠牲プラグ」)を含む犠牲プラグシステムは、1つまたは複数の冷却孔108内において、付加製造された(すなわち、印刷された)ブレード10を有する構成要素と一体的に印刷され得る。構成要素および犠牲プラグ100を一体的に、かつ構成要素の孔108内において、ブレード10と一体的なワンピース構造として同時に付加製造することによって、冷却孔108内における犠牲プラグ100の整合および適切な配置が達成される。したがって、犠牲プラグ100の配置は、付加製造後のコーティング処理中に構成要素における冷却孔間のブリッジングを低減または排除する。
【0033】
犠牲プラグ100の構造について最初に論じ、次に、例示的なタービン構成要素および孔108とのその一体的な付加製造形成について説明する。犠牲プラグ100は、本開示によって具体化され、
図2および
図3に示されるように、上部110と、カバー部120と、冷却孔係合部130とを備える。犠牲プラグ100は、単一の要素として形成され、本明細書に記載されるように、タービン構成要素の付加製造中に形成され、冷却孔108と共に冷却孔108内に形成される。この同時形成は、犠牲プラグ100および冷却孔108が適切に対応して対をなし、以下に論じるように、一体的に接続した形態で整合され配置されることを本質的に保証する。
【0034】
上部110は、犠牲プラグ100が形成されたタービン構成要素から上方に延在する。上部110は、使用者または使用者のツーリングが上部110を把持できるようにする細長い構成を有する。以下に説明するように、上部110を把持し、犠牲プラグ100を操作することによって、犠牲プラグ100を冷却孔108から除去することができる。したがって、上部110は、ローレット面(knurled surface);指、工具、または機械に適合する輪郭面(contoured surface);曲面;角柱面;こぶのある面(knobbed surface);フック面(hooked surface);機械との係合を容易にし、除去するための原動力を与える表面(以下で説明するように
図15〜
図17を参照されたい)、または現在知られているか、または今後開発される把持を容易にする任意の他の構造のうちの少なくとも1つを含んで、把持を容易にするが、これらに限定されるものではない。
【0035】
さらに、上部110は、円形、楕円形、多角形、または犠牲プラグ100の把持および除去を可能にし、容易にする任意の他の形状とすることができる。犠牲プラグ100の上部110は、本明細書で説明するように、中実部、中空部、格子に形成された構造(formed in a lattice structure)、または除去するための十分な剛性を与える任意の他の構成のうちの少なくとも1つとして形成することができる。
【0036】
カバー部120は、犠牲プラグ100が形成されている冷却孔108を取り囲む構成要素の表面を覆う。カバー部120の覆う態様は、カバー部120の付加製造によって生じる。付加製造プロセスは、冷却孔108においてタービンブレード10の表面85から距離Aの上方にカバー部120を形成する(
図4)。距離Aは、限られた量のコーティングがカバー部120の下に入ることを可能にするのに十分な大きさである。カバー部120は、コーティングがその周りおよびその下を表面85まで流れることを可能にする距離だけ表面85から上方に設定される。
【0037】
しかしながら、カバー部120の構成は、カバー部120の下に入ることができるコーティングの量を制限する。距離Aは設定された所定の距離であり、制御された付加製造は、必要とされる可能性のある可能な印刷後コーティングプロセスを考慮して、カバー部120に対して表面85から上方に距離Aを与える。したがって、印刷後のコーティングプロセスを理解することによって、距離Aを設定することができ、許容可能な量のコーティングがカバー部120の下に入って、表面85を被覆するが、孔108をブリッジしないようにすることが可能である。カバー部120の下のコーティング量を制限する距離Aを意図的かつ有利に設定することによって、犠牲プラグ100は、冷却孔108の周りの過剰なコーティング材料を防止し、冷却孔108間のブリッジングを防止する。
【0038】
図示されているように、
図2および
図3に注目すると、カバー部120は、概して双曲放物面の構成であるが、x軸における周囲の高さの上昇はない。近似的な双曲放物面の構成として、各カバー部120は、x軸およびy軸を有する。x軸は、湾曲した構成要素表面85において後縁82の頂点に従う。x軸に沿ったカバー部120のカバー部輪郭は、概して湾曲した構成要素表面85の構成要素輪郭を反映している。さらに、y軸では、カバー部120が正圧側壁83および負圧側壁84の双方に延びるにつれて、カバー部120は後縁82において湾曲した構成要素表面85の曲率に従う。
【0039】
図2〜
図5にも示すように、カバー部120は、上部110と同軸対称ではなく、または冷却孔108と同軸ではない。むしろ、
図3に見られるように、x軸およびy軸は、(
図3の仮想線において)冷却孔108の中心Cを定義する。カバー部120は、中心Cから偏心して配置され、中間点C’で上部110の中心軸TPと整合する。中間点C’は、x軸上にあるが、冷却孔108の中心Cから距離を置いて配置されている。
【0040】
図2および
図4に示すように、カバー部120を上部110と配置することにより、カバー部120のより大きな側面領域121において、冷却孔108の拡張した重なりが提供される。より短い側面領域122は、依然として冷却孔108に重なり、冷却孔108を覆う。隣接する冷却孔108内に犠牲プラグ100を形成することにより、(両側に隣接する犠牲プラグを有さない列内の最初と最後の犠牲プラグ100を除いて)それぞれのより大きな側面領域121がそれぞれのより短い側面領域122に隣接するように、カバー部120が配置される。
【0041】
冷却孔係合部130は、タービン構成要素の付加製造中に一体的に形成され、冷却孔108の内周面(peripheral inner surface)109に一体的に接続されている。したがって、犠牲プラグ100は、(後述する)切断およびその除去の前には、一体としてタービン構成要素と一体的に形成され、接続されている。冷却孔係合部130が冷却孔108の周囲内壁(peripheral inner wall)109において冷却孔108に接続された態様により、付加製造中に犠牲プラグ100が冷却孔108内に安定して設置されることが可能となる。
【0042】
冷却孔係合部130には、これに限られるわけではないがコーティングなどの印刷後プロセス/作業の後に犠牲プラグ100を切断可能に除去するためのタービン構成要素が形成される。したがって、冷却孔係合部130は、冷却孔係合部130と冷却孔108の内周面109との間に少なくとも1つの切断可能な接続部、好ましくは2つ以上の切断可能な接続部を有する。この接続部は、タービン構成要素および犠牲プラグ100を一体として一体的に付加製造する間に形成される。接続部は、本明細書で論じるように、冷却孔係合部130と冷却孔108の内周面109との間に、切断可能な、脆弱な、破断可能な、または分離可能な接続部(以下、「分離可能な接続部」とする)を画定する。この分離可能な接続部は、犠牲プラグ100を適所に維持するために十分堅固であるが、上部110に十分な力が加えられたときに冷却孔係合部130と冷却孔108の内周面109との間の分離を可能にするために十分に脆弱であるか、または脆い。
【0043】
例えば、実施形態を限定するものではないが、冷却孔係合部130と冷却孔108の内周面109との間の分離可能な接続部は、タービン構成要素および犠牲プラグ100の付加製造中に形成される。分離可能な接続部131は、付加製造処理に従って、孔108内における犠牲プラグ100の範囲の最下部において形成されるであろう。分離可能な接続部131は、少なくとも1つの分離可能な接続部材131(
図5)として形成され得る。
【0044】
図5において、各分離可能な接続部材131は、冷却孔係合部130および冷却孔108の内周面109の双方に取り付けられた、少なくとも1つの付加製造された接続部材131を含む。したがって、接続部材131の切断可能な性質を考慮すると、犠牲プラグ100を冷却孔108から除去するために上部110にZ方向(
図5)に力が加えられると、各接続部材131は切断する。これにより、各接続部材131は、冷却孔係合部130を冷却孔108の内周面109から分離させることができる。Z方向に加えられる力に加えて、回転力(
図5の矢印Dを参照)を加えて、接続部材131を冷却孔108の内周面109から切断することもできる。冷却孔108の壁109から切断されると、犠牲プラグ100を冷却孔108からZ方向に除去することができる。
【0045】
接続部材131は、犠牲プラグ100を冷却孔108の壁109から分離するのに十分な力が加えられるまで、犠牲プラグ100を冷却孔108内に維持する。接続部材131の数、ならびに位置、向き、分布、および構造に関するそれらの位置は、本開示の態様に従って変化し得る。さらに、接続部材131は、接続部材131のうちの1つまたは複数を含むことができる。接続部材131は、本明細書では、個別に、または他の接続部材131と組み合わせて論じられる。さらに、少なくとも1つの接続部材131が冷却孔係合部130の最下点135で付加製造中に開始される限り、少なくとも1つの接続部材131は、冷却孔108の内周面109における冷却孔係合部130の任意の部分に配置することができる。
【0046】
図6〜
図14を参照すると、線6−6(
図5)での、内周面109において冷却孔係合部130を有する接続部材131の例示的な様々な構成が示されている。
図6は、冷却孔係合部130を内周面109に接続する2つのフィンガー接続部材131の形態にある接続部材131を示している。
図7は、冷却孔係合部130を冷却孔108の内周面109に接続する3つのフィンガー接続部材131として接続部材131を示している。
図7において、タービン構成要素および犠牲プラグ100の付加製造中に、4つ以上の接続部材131を形成することができる(仮想輪郭線を参照)。本開示の態様によれば、付加製造中に形成される接続部材131は、接続部材131が冷却孔係合部130を冷却孔108の内周面109に接続する限り、一定の間隔を置いて配置され得るか、または不規則で、不均一な間隔を置いて配置され得る。
【0047】
図8において、接続部材131は、冷却孔係合部130を冷却孔108の内周面109に接続する三角形の接続部材131を含む。
図8では、三角形の接続部材131の基部は、冷却孔係合部130上、または冷却孔108の内周面109上のいずれかで、タービン構成要素および犠牲プラグ100から付加製造され得る。あるいは、逆三角形の接続部材132の基部(
図8においてのみ)が、冷却孔108の内周面109に形成されて、冷却孔係合部130に接続することができる。
【0048】
図9は、タービン構成要素および犠牲プラグ100の付加製造中に形成された三角形の接続部材131を、冷却孔108の内周面109に接続する冷却孔係合部130上の完全な360°周囲アレイとして示している。
図10は、冷却孔108の内周面109に接続する冷却孔係合部130上に配置された接続部材131の別の構成を示す。
図10では、接続部材131は、「ねじ山」構成で付加製造中に形成される。接続部材131のねじ山133のうちの1つまたは複数は、冷却孔108の内周面109と係合する冷却孔係合部130上に形成され得る。いくつかのねじ山134は、排除されてもよいし、または階段状の構成で冷却孔108の内周面109から間隔を置いて形成されてもよい。この階段状の構成は、材料を節約すると共に、犠牲プラグ100を除去するために上部110に力が加えられたときに切断を容易にし得る。
【0049】
図11は、冷却孔108の内周面109と長尺の係合を有する冷却孔係合部130上における長尺接続部材131を示す。接続部材131は、接続部材131が冷却孔108の内周面109と係合するように、冷却孔係合部130と共に、任意の様々な長さで形成されてもよい。さらに、任意の数の接続部材131が、冷却孔108の内周面109と係合してもよい。加えて、本明細書で論じるような接続部材131の任意の組み合わせが互いに使用されてもよい。また、二次元図の制約を考慮すると、
図11の接続部材131および本開示の範囲内の他の接続部材131の構成は、「直線状」である必要はなく、冷却孔係合部130の周りでらせん形をなすなど、図面の平面内外において任意の形状および構成を有することができる。
【0050】
さらに、本開示の態様によれば、
図11は、切断可能な部材のウェブ134によって相互接続された支柱135を含む接続部材131を示す。
図11の構成では、犠牲プラグ100を冷却孔108から除去するために力が加えられたときに、支柱135およびウェブ134が切断すると、接続部材131は切断可能である。また、
図11のように、支柱フィンガーを有さない接続部材131のさらなる構成は、タービン構成要素および犠牲プラグ100の付加製造中に形成される切断可能な部材のウェブ136を含む。
図11のこの態様では、犠牲プラグ100を冷却孔108から除去するために力が加えられたときに、ウェブ136が切断されると、接続部材131は切断可能である。
【0051】
図12は、本開示によって具体化されるような接続部材131のさらなる態様を示す。
図12において、付加製造中に形成された接続部材131は、付加印刷/付加製造された制御された機械的特性の区域137が形成された少なくとも1つの接続部材131を含む。区域137は、接続部材131の残りの区域138と比較して、低下した密度、弾性、および展性と、増大した剛性および脆性とを有した、付加製造中に制御された材料特性を含む。区域137は、
図12の接続部材131が切断する可能性が高い領域であり、残りの区域138は、冷却孔係合部130上に元のまま保持される。犠牲プラグ100が冷却孔108から除去される際、接続部材131は、接続部材131上の残りの区域138と共に冷却孔108内を上方に移動する。冷却孔108内の任意の材料(供給源にかかわらない)が、接続部材131の残りの区域138に捕らえられることが可能であり、手動ポンプピストンと同じように、接続部材131と共に移動する。さらに、残りの区域138が冷却孔108の壁109に近い場合には、接続部材131は、冷却孔108の壁109から材料をさらに除去するためのスクレーパとして機能することができる。
【0052】
冷却孔係合部130の別の構成は、
図13に示すように、接続部材131および捕捉部材141を含む。捕捉部材141は、タービン構成要素および犠牲プラグ100の付加製造中に形成され、谷部または凹部140を含む。
図12に関して上述したのと同じように、接続部139は区域137の材料と同様の材料を含み、そのため、接続部139はその周囲において切断し、接続部材131の残りの部分は元のまま残存する。凹部140は、冷却孔108内の材料の収集器および保持器として機能する。犠牲プラグ100が冷却孔108から除去される際に、冷却孔108内の材料(供給源にかかわらない)が凹部140内に捕らえられることが可能であり、手動ポンプピストンと同じように凹部140と共に移動する。さらに、周囲139が冷却孔108の壁109に近接したままである場合には、周囲139は、冷却孔108の壁109から材料をさらに除去するためのスクレーパとして機能することができる。
【0053】
図14は、接続部材のさらなる態様を示している。この態様では、接続部材144は、タービン構成要素、および冷却孔係合部130を有する犠牲プラグ100の付加製造中に形成される。接続部材144は、ハブ145および歯146を含む歯車状の歯を有する略円形の構成で付加製造される。歯146の少なくとも1つ、好ましくは、2つ以上が、冷却孔108の壁109と共に付加製造される。ハブ145は、犠牲プラグ100が引き抜かれると歯車形の接続部材144がハブ145を中心に回転するように、冷却孔係合部130上において回転可能な要素として付加製造され得る。回転中、歯車形の接続部材144上に残存する歯146は、壁109と係合することができる。収集部材138と同じように、歯車形の接続部材144は、冷却孔108の壁109から材料をさらに除去するためのスクレーパとして機能することができる。
【0054】
あるいは、歯車形の接続部材144がハブ145を中心に回転しない場合には、歯車形の接続部材144の歯146は、壁109と係合することができる。犠牲プラグ100が冷却孔108から除去される際、歯車形の接続部材144は冷却孔108内を上方に移動する。冷却孔108内の任意の材料(供給源にかかわらない)が、歯146に捕らえられ、かつ/または歯146によって移動され得る。
【0055】
本開示によって具体化され、上述したように、犠牲プラグ100の除去は、冷却孔108の内周面109との接続部材131の係合において接続部材131と冷却孔108の内周面109との間に付加製造された接続部を切断するのに適した力をZ方向に上向きに加えることによって行うことができる。さらに、上述したように、接続部材131を冷却孔108の内周面109から切断するために、矢印Dの方向の回転力が加えられてもよい。本開示のさらなる態様では、犠牲プラグ100の上部110に、矢印Dの方向の回転力を加えるのを容易にする構造を設けることができる。回転力を加えるのを容易にする構造により、個人によるより強固な把持が可能となる。上記の構造は、構造に回転力を機械的に加えるための機構との係合を提供してもよい。
【0056】
図15において、犠牲プラグ100の上部110は、上部110と共に付加製造された歯車構造体111を含む。歯車構造体111は、動力装置(motive device)と係合して歯車構造体111に回転運動を付与することができる歯112を含み、これにより犠牲プラグ100全体の回転が可能になる。これにより、接続部材131を冷却孔108の内周面109から切断することができる。本開示の一態様では、相補的な歯車202(
図16)が、歯車構造体111の歯112と係合して、歯車構造体111、および犠牲プラグ100全体を回転させることができる(D方向)。したがって、接続部材131を冷却孔108の内周面109から切断することができる。
【0057】
あるいは、
図16に示すように、歯車111は、直線状の歯201を含むギヤードラック(geared rack)200と噛み合うことができる。したがって、ギヤードラック200が並進すると(矢印R)、歯112および201の係合が、上部110の回転を介して、犠牲プラグ100の回転をもたらす。上部110の回転(D方向)を介した犠牲プラグ100の回転により、接続部材131は冷却孔108の内周面109から切断される。その後、犠牲プラグ100を冷却孔108から外にZ方向に移動させることができる(
図5)。
【0058】
図17は、冷却孔108の内周面109から接続部材131を切断するためのさらなる構成を示している。ストラップまたは結束ベルト300(以下、「ベルト」300)は、犠牲プラグ100の上部110上の1つまたは複数の歯車111上に嵌合される。1つまたは複数の歯車111上におけるベルト300の嵌合は、ベルト300が時計回りまたは反時計回りの方向(
図17の矢印R)に移動すると歯車111が回転するように、摩擦係合である。ベルト300は、歯112と摩擦係合して回転し、歯車111を回転させることにより、上部110の回転を介して犠牲プラグ100を回転(D方向)させる。犠牲プラグ100が回転することで、接続部材131は、冷却孔108の内周面109から切断される。その後、犠牲プラグ100をZ方向に冷却孔108から外に移動させることができる(
図5)。
【0059】
本開示の別の態様は、端面117に開口部またはスロット115(特に
図2および
図15)を有する犠牲プラグ100の上部110を形成することを提供する。開口部またはスロット(以下、「スロット」)115は、機械的装置によって係合されて、上部110に、したがって犠牲プラグ100に、回転を付与するように構成されている。スロット115の回転を介した犠牲プラグ100の回転により、接続部材131は冷却孔108の内周面109から切断される。スロット115は、フラット・ヘッド・スロット(flat−head slot)、フィリップス(Philips)スロットもしくは十字形スロット、ロバーツソン(Robertson)スロットもしくは他の多角形スロット、ラチェットスロット、または現在知られているか、もしくは今後開発される任意の他のスロット構成とすることができる。スロット115は、ねじ回し、ドリル、ラチェット、ドライバ、ソケット、アレンレンチ、または現在知られているか、もしくは今後開発される任意の他の回転用工具などの相補的な工具と係合可能であり得る。
【0060】
本開示のさらなる態様は、犠牲プラグ100の上部110を多角形形状に形成することを含む。上部110の多角形形状は、ラチェット、ソケット、レンチ、プライヤ、または回転を付与するための任意の他の適切な装置などの、しかしこれらに限定されない、相補的な工具と係合することができる。
図2および
図15に示すように、(図示を容易にするために図では)最も右側の上部110は、多角形形状116の端面117(例示のみを目的として六角形で図示)を有して付加製造されている。したがって、多角形形状116の端面117の回転を介した犠牲プラグ100の回転により、接続部材131は冷却孔108の内周面109から切断される。
【0061】
本明細書および特許請求の範囲を通してここで使用される、近似を表す文言は、関連する基本的機能に変化をもたらすことなく、差し支えない程度に変動し得る任意の量的表現を修飾するために適用することができる。したがって、「およそ」、「約」、および「実質的に」などの用語によって修飾された値は、明記された厳密な値に限定されるものではない。少なくともいくつかの例では、近似を表す文言は、値を測定するための機器の精度に対応することができる。ここで、ならびに本明細書および特許請求の範囲を通して、範囲の限定は組み合わせおよび/または置き換えが可能であり、文脈および文言が特に指示しない限り、このような範囲は識別され、それに包含されるすべての部分範囲を含む。範囲の特定の値に適用される「約」は、両端の値に適用され、値を測定する機器の精度に特に依存しない限り、記載された値の+/−10%を示すことができる。
【0062】
以下の特許請求の範囲におけるミーンズ・プラス・ファンクションまたはステップ・プラス・ファンクションの要素すべての、対応する構造、材料、動作、および均等物は、具体的に特許請求される他の特許請求された要素と組み合わせてその機能を実施するための、一切の構造、材料、または動作を包含することを意図している。本開示の記述は、例示および説明の目的で提示されており、網羅的であることも、または本開示を開示した形態に限定することも意図していない。当業者には、本開示の範囲および趣旨から逸脱することなく、多くの修正および変形が明らかであろう。本開示の原理および実際の用途を最良に説明し、想定される特定の使用に適するように様々な修正を伴う様々な実施形態について本開示を他の当業者が理解することができるようにするために、本実施形態を選択し、かつ説明した。