【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業、チーム型研究(CREST)、「トポロジカル材料科学に基づく革新的機能を有する材料・デバイスの創出」、「人工グラフェンに基づくトポロジカル状態創成と新規特性開発」、「トポロジカルフォトニクスの光通信デバイス応用」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【解決手段】非磁性の導波路型アイソレータ1は、内部がエネルギーギャップを持つ絶縁体であり、そのエッジ13がギャップレスの金属状態であるトポロジカルフォトニック構造体12と、トポロジカルフォトニック構造体12の表面に配置された、カイラル性を有するメタマテリアルである、金属あるいは誘電体からなるカイラルアンテナ20と、を有する。
内部がエネルギーギャップを持つ絶縁体であり、そのエッジがギャップレスの金属状態であるトポロジカルフォトニック構造体(Topological photonic structure)と、
前記トポロジカルフォトニック構造体に配置された、カイラル性を有するメタマテリアル(Chiral metamaterial)と、を有する
ことを特徴とする非磁性の導波路型アイソレータ。
前記メタマテリアルは、伝送方向によって回転方向が逆転する方向依存性を有する特定の偏光または光渦の、いずれか一方の回転方向の前記偏光または前記光渦を有する光と相互作用(interaction)して放射させる
ことを特徴とする請求項1に記載の非磁性の導波路型アイソレータ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る非磁性の導波路型アイソレータの構造を示す斜視図である。
図2は、
図1のA−A’断面図(Cross section of topological edge state waveguide)である。
図3は、
図1の非磁性の導波路型アイソレータの上面図(Si-based topological edge state waveguide we used in simulation)である。
【0015】
トポロジカル絶縁体(Topological insulator)やワイル半金属(Weyl Semimetal)などにおける電子系のトポロジーをフォトンの系にトレースする試みは、トポロジカルフォトニクスと呼ばれ、近年急速に進展している。トポロジカル絶縁体は、バルクはエネルギーギャップを持つ絶縁体でありながら、エッジ(2次元系では端、3次元系では表面)にギャップレスの金属状態が生じている物質をいう。
【0016】
特に、C
6v対称性(60°回転させると重なる対称性)を有する誘電体が蜂の巣格子状に配列された構造におけるZ
2トポロジー(電子波動関数のもつトポロジカルな構造の分野における一つのクラス)の発現は、光渦の伝送が可能なトポロジカルエッジ状態の実現を可能にする。
【0017】
図1乃至
図3に示すように、非磁性の導波路型アイソレータ1は、内部がエネルギーギャップを持つ絶縁体であり、そのエッジがギャップレスの金属状態であるトポロジカルフォトニック構造体(Topological photonic structure)12と、トポロジカルフォトニック構造体12の表面に配置された、カイラル性を有するメタマテリアル(Chiral metamaterial)20と、を有する。
本実施形態では、非磁性の導波路型アイソレータ1は、バルクがエネルギーギャップを持つ絶縁体であるフォトニック構造体(Trivial photonic structure)11と、トポロジカルフォトニック構造体12と、フォトニック構造体11とトポロジカルフォトニック構造体12の境界において光渦伝播が可能なトポロジカルエッジ状態を発現するトポロジカルエッジ(Topological edge)13と、トポロジカルエッジ13近傍に配置されたメタマテリアル20と、を有する。
【0018】
<メタマテリアル20>
メタマテリアル20は、伝送方向によって回転方向が逆転する方向依存性を有する特定の偏光または光渦の、いずれか一方の回転方向の偏光または光渦を有する光と相互作用(interaction)して放射させる。
メタマテリアル20は、円偏光に対して、カイラル性を有するナノスケール金属構造である。
メタマテリアル20は、円偏光に対して、カイラル性を有する誘電体であってもよい。
メタマテリアル20は、1.55μm波長帯を含む所定波長帯で相互作用(interaction)する共振条件を満たす構造のアンテナである。
メタマテリアル20は、トポロジカルフォトニック構造体12の表面から上面視して、卍形状または逆卍形状のカイラルアンテナである。
メタマテリアル20は、トポロジカルフォトニック構造体12に、1または複数配置される。
【0019】
<トポロジカルフォトニック構造体12>
トポロジカルフォトニック構造体12によって作られた2つの領域の界面に生じる光状態(トポロジカルエッジ状態)は、特定の偏光・光渦を有する光のみを許容し、これら特定の偏光・光渦は伝播方向依存性を有する。
【0020】
フォトニック構造体11は、C
6v対称性を有する第1誘電体111が蜂の巣格子状(例えば、周期a=800nm)に配列された構造である。
トポロジカルフォトニック構造体12は、C
6v対称性を有する第2誘電体112が蜂の巣格子状(例えば、周期a=800nm)に配列された構造である。
【0021】
第1誘電体111は、SOI(Silicon-On-Insulator)ウェハ上に、C
6v対称性を有するナノホール111aを蜂の巣格子状(周期a=800nm)のセル(unit cell)121に配列したナノ(nm,1nm=10
−9m)構造を用いる。
第2誘電体112は、SOIウェハ(例えばSi膜厚220nm)131上に、C
6v対称性を有するナノホール112aを蜂の巣格子状(周期a=800nm)のセル122に配列したナノ構造を用いる。第1誘電体111のナノホール111aと第2誘電体112のナノホール112aは、蜂の巣格子のセル121,122中心からナノホール111a,112aの中心までの距離rおよびナノホール1辺の長さlのパラメータがそれぞれ異なる(後記)。
【0022】
図2に示すように、トポロジカルエッジ伝送路は、Si基板(Si substrate)131上に、膜厚1.0μmのSiO
2絶縁膜132と、膜厚220nmのSi膜133と、膜厚20nmのAuからなるメタマテリアル20と、を積層する。Si膜133上のエアギャプは、1.0μm以上である。
【0023】
Si膜133には、Si基板131に向かって、C
6v対称性を有するナノホール111aとナノホール112aとが開孔され、残存Si膜133と当該Si膜133に開孔したナノホール111aからなるフォトニック構造は、フォトニック構造体11を形成する。また、残存Si膜133と当該Si膜133に開孔したナノホール112aからなるフォトニック構造は、トポロジカルフォトニック構造体12を形成する。
フォトニック構造体11とトポロジカルフォトニック構造体12の境界のトポロジカルエッジ13には、トポロジカルエッジモード(Topological edge mode)が発現している。
【0024】
図4は、C
6v対称性を有するナノホールの構造を示すブリルアンゾーンの図(Schematic image of a unit cell)である。フォトニック構造体11の第1誘電体111のナノホール111aを例に採る。トポロジカルフォトニック構造体12の第2誘電体112のナノホール112aについても同様の構造である。
図4の右図に示すように、蜂の巣格子のセル121の中心をブリルアンゾーンの中心(原点)Γ点とする。また、ブリルアンゾーンの高対称点として、M点(長方形面の中心)、K点(2つの長方形面をつなぐ辺の中心)、A点(六角形面の中心)、H点(端点)、L点(六角形面と長方形面をつなぐ辺の中心)がある。
【0025】
図4の左図に示すように、Si膜133(
図3参照)は、蜂の巣格子状のセル121とセル121に配列されたC
6v対称性を有するナノホール111aとが形成される。残存Si膜133と当該Si膜133に開孔したナノホール111aからなるフォトニック構造は、フォトニック構造体11の第1誘電体111を形成する。
図4の左図は、フォトニック構造体11のセル121を上面手前の斜め上から見た図であり、開孔したナノホール111aの下のSiO
2絶縁膜132が露出している。
図4の左図のナノホール111aは、蜂の巣格子のセル121の中心(Γ点)からナノホール111aの中心までの距離r、ナノホール111aの1辺の長さlをパラメータとする。隣り合うナノホール111aのセル121の中心角は、π/3である。
フォトニック構造体11のナノホール111aの場合、例えばr=240nm,l=240nmである。
また、トポロジカルフォトニック構造体12のナノホール112aの場合、例えばr=290nm,l=250nmである。
さらに、
図4の左図に示すように、隣り合う蜂の巣格子のセル121同士の中心(Γ点)間距離a1、a2は、同じ(ここでは、a1=a2=800nm≡a)である。
【0026】
図5は、本発明の実施形態に係る非磁性の導波路型アイソレータにおけるトポロジカルエッジ伝送路で用いるフォトニック構造体11とトポロジカルフォトニック構造体12のバンド図(Typical photonic bands for (left) trivial and (right) topological photonic crystals)である。
図5の横軸にWave vector(2■/■)をとり、縦軸にNormalized frequency(ωa/2■c ■/λ)をとる。横軸のWave vector(2■/■)のΓ点は、蜂の巣格子状のセル121(
図2参照)のブリルアンゾーンの中心、K点は2つの長方形面をつなぐ辺の中心、M点は長方形面の中心である(
図4の右図参照)。
図6は、本発明の実施形態に係る非磁性の導波路型アイソレータにおけるトポロジカルエッジ伝送路で用いるフォトニック構造体11とトポロジカルフォトニック構造体12のバンドダイヤグラムの概要図(Band diagram for optical vortex propagation with charge number of ±1)である。
【0027】
図7は、FDTD法(Finite-difference time-domain method:時間領域差分法)により計算されたトポロジカルエッジ伝送路(フォトニック構造体11とトポロジカルフォトニック構造体12の境界)近傍の磁界分布(Hz)を示す図(Calculated magnetic field Hy)である。横軸にx軸(x axis)(μm)、縦軸にy軸(y axis)(μm)をとる。
図7の濃淡は、磁界分布(Hz)の強度(濃いほど強度が大きい)を表わしている。
図7に示すように、電磁場は、フォトニック構造体11とトポロジカルフォトニック構造体12の境界のトポロジカルエッジ13に局在している。
【0028】
ここで、トポロジカルエッジ伝送路は、フォトニック構造体11とトポロジカルフォトニック構造体12の境界でトポロジカルエッジ状態を発現するトポロジカルエッジ13を有するものであればよく、フォトニック構造は、限定されない。例えば、誘電体が、C
6v対称性を有する蜂の巣格子状に配置されていることには限定されず、自明なフォトニック構造体は、配列されたセル内で対称性を有する第1誘電体を備え、トポロジカルフォトニック構造体は、配列されたセル内で対称性を有する第2誘電体を備えるものであればよい。
【0029】
また、誘電体を形成する方法は、上述したナノホールに限らず、例えば誘電体ピラーを設ける構成でもよい。さらに、ナノホールのパラメータは勿論のこと、ナノホールの個数も限定されない。ただし、セルが蜂の巣格子状に配置される場合、ナノホールの配置もC
6v対称性を有する構造が自然である。同様に、セルの形状も蜂の巣格子状に限定されない。
【0030】
<戻り光の低減>
図8は、トポロジカルエッジ13を有する光集積回路上での戻り光の低減を説明する図である。
トポロジカルフォトニック構造体12を用いるトポロジカルエッジ伝送路40は、TE(Transverse Electric)/TM(Transverse Magnetic)モードの光を伝送するInput用Si系導波路(Si waveguide)41と、TE/TMモードの光を伝送するMonitor用Si系導波路(Si waveguide)42と、TE/TMモード伝送から光渦伝送へ変換するトポロジカルエッジ13と、を有する。
【0031】
Input用Si系導波路41およびMonitor用Si系導波路42は、例えばc-Si(crystal silicon)からなるc-Si導波路、またはa-Si(amorphous silicon):Hからなるa-Si:H導波路である。Input用Si系導波路41およびMonitor用Si系導波路42の材質は、シリコン(Si)には限定されず、どのような材質でもよい。例えば、導波路の材質が化合物半導体(例えば、InP)であってもよい。
Input用Si系導波路41およびMonitor用Si系導波路42は、先端に向かって幅が狭くなるテーパ(taper)41a,42aを有する。Input用Si系導波路41およびMonitor用Si系導波路42のテーパ41a,42aの先頭から延びる光軸は、テーパが形成されたフォトニック構造体11とトポロジカルフォトニック構造体12の境界のトポロジカルエッジ13に向かっている。
【0032】
図8の白抜矢印に示すように、Input用Si系導波路41に入れたTE/TMモードの入力光(Incident light)51が、フォトニック構造体11とトポロジカルフォトニック構造体12の境界のトポロジカルエッジ状態のトポロジカルエッジ13に入力され、トポロジカル伝送路上を光渦(図示省略)で伝送する。すなわち、Input用Si系導波路41に入れたTE/TMモードの入力光(Incident light)51が、トポロジカルエッジ状態で光渦に高効率で変換されている。また、トポロジカル伝送路上を伝送した光渦は、Monitor用Si系導波路42に導かれ、TE/TMモードの光51に高効率で変換される。
【0033】
Monitor用Si系導波路42から出た光は、例えばDFBレーザにおいて光を出射する出射端より反射戻り光として入射する場合がある。
図8の網掛矢印に示すように、Monitor用Si系導波路42からの戻り光(Return light from Si waveguide)52は、光集積回路上で所望ではない光伝播である。
【0034】
図8に示すように、フォトニック構造11とトポロジカルフォトニック構造体12によって作られた2つの領域の界面に生じる光状態(トポロジカルエッジ状態)は、特定の偏光・光渦を有する光のみを許容し、これらは方向依存性を有する。具体的には、伝送方向によって、偏光・光渦の回転方向が逆転する。
【0035】
以上、
図8のフォトニック構造11とトポロジカルフォトニック構造体12を有する光集積回路において、下記(1)(2)が要請される。
(1)トポロジカルエッジ13では、単一方向に特定の偏光または光渦を伝播させる。
(2)光集積回路上での戻り光を低減させる。
【0036】
図9および
図10は、
図8のトポロジカルフォトニック構造体12を有する光集積回路において、単一方向光伝播を説明する図である。
図9は、
図8のトポロジカルフォトニック構造体12のトポロジカルエッジ13の表面の上方に、反時計回りのカイラル性を有するカイラルアンテナ(LCP)(
図11左図参照)を配置した例を示し、
図10は、同じく、時計回りのカイラル性を有するカイラルアンテナ(RCP)(
図11右図参照)を配置した例を示す。
【0037】
各偏光に対して、吸収・放射が大きいカイラルアンテナLCP,RCPを光集積回路上に配置する。
図9の矢印に示すように、トポロジカルエッジ13部分にカイラルアンテナLCPを配置することで、LCPに依存した単一方向光伝播(
図9左方向光伝播)を実現できる。
また、
図10の矢印に示すように、トポロジカルエッジ13部分にカイラルアンテナRCPを配置することで、RCPに依存した単一方向光伝播(
図10右方向光伝播)を実現できる。
【0038】
このように、各偏光に対して、吸収・放射が大きいカイラルアンテナをデバイス上に配置することで、それに対応した方向の光伝播が抑えられる。
【0039】
図11は、カイラルアンテナを説明する図である。
図11左図は、反時計回りのカイラル性を有するカイラルアンテナ(LCP)20を示す図であり、
図11右図は、時計回りのカイラル性を有するカイラルアンテナ(RCP)20Rを示す図である。
【0040】
カイラルアンテナ20,20Rは、円偏光に対して、カイラル性を有し、いずれか一方の回転方向の偏光または光渦を有する光と相互作用(interaction)して光を放射(損失)させるものであればよく、構造(外観形状も含む)や材質はどのようなものでもよい。例えば、カイラルアンテナ20,20Rは、円偏光に対して、カイラル性を有するナノスケール金属構造である。また、カイラル性を有する誘電体(図示省略)であってもよい。
【0041】
カイラルアンテナ20,20Rは、1.55μm波長帯を含む所定波長帯で相互作用(interaction)する共振条件を満たす構造のアンテナである。カイラルアンテナ20,20Rは、方向依存性を有する特定の偏光または光渦の、いずれか一方の回転方向の偏光または光渦を有する光と相互作用(interaction)して放射させる。具体的には、カイラルアンテナ20,20Rに電磁波が入ると、カイラルアンテナの中で電子が共振振動する状態となり一部は熱等で損失となり(吸収)、また誘導電流によってカイラルアンテナの中の電子を介して電磁場においてカイラルアンテナの上側に光を放射する(放射)。
【0042】
カイラルアンテナ(LCP)20とカイラルアンテナ(RCP)20Rとは、
図11左図の破線に対して鏡像対称である。
カイラルアンテナ(LCP)20は、トポロジカルフォトニック領域の表面から上面視して、例えば卍形状であり、カイラルアンテナ(LCP)20Rは、逆卍形状である。
【0043】
カイラルアンテナ20,20Rは、材質がAu、中心点を基点に四等分した場合の一辺の長さVerticalを200nm、メタマテリアルの幅Sideを90nm、メタマテリアルの厚さHeightを20nmとする。
なお、カイラルアンテナ20,20Rを構成するメタマテリアルの材質や、各部の寸法は、一例であり、限定されない。また、カイラルアンテナの形状も限定されず、後記
図20に示す形状のカイラルアンテナ20Aなどであってもよい。
【0044】
<非磁性の導波路型アイソレータの構造例>
図12は、
図8のトポロジカルフォトニック構造体12上に、カイラルアンテナ(LCP)20を配置した非磁性の導波路型アイソレータ1を示す図である。
図12に示すように、非磁性の導波路型アイソレータ1は、
図8に示すトポロジカルフォトニック構造体12上に、
図11左図に示すカイラルアンテナ(LCP)20を配置する。
【0045】
トポロジカルフォトニック構造体12上に、偏光に対して、吸収・放射が大きいカイラルアンテナ(LCP)20を配置することで、それに対応した方向の光伝播が抑えることができる。すなわち、カイラルアンテナ(LCP)20は、円偏光に対して、カイラル性を有し、いずれか一方の回転方向の偏光または光渦を有する光との相互作用(interaction)によりMonitor用Si系導波路42からの戻り光52を放射(損失)させるので、光集積回路は一方向性のアイソレータとして動作する。
【0046】
[シミュレーション]
本実施形態に係る非磁性の導波路型アイソレータ1の実現にあたっては,「シリコン光回路上に空孔を作製する技術」と「ナノスケールの金属構造を配置する技術」の2つの技術が必要となるが、いずれも標準的なシリコンフォトニクスのプロセスを用いて実現することができる。シミュレーションモデル(条件)を
図12乃至
図15に示し、シミュレーション結果を
図16および
図17に示す。
【0047】
図13は、
図8のトポロジカルエッジ13による光集積回路の光入出力側にモニタ(Monitor)61,62を載置したシミュレーションモデルであり、
図13左図は、
図13左図の矢印に示すように、左側からの入力光(Incident light)51をモニタ61,62で検出する例(leftからrightへの光の伝播)、
図13右図は、
図13右図の矢印に示すように、右側からの入力光51をモニタ62,61で検出する例(rightからleftへの光の伝播)である。
図13のシミュレーションモデルのシミュレーション結果は、
図16および
図17の「WG」に示される。
【0048】
図14は、
図12のトポロジカルフォトニック構造体12上にカイラルアンテナ20(
図11左図参照)を2つ配置するとともに、光集積回路の光入出力側にモニタ61,62を載置したシミュレーションモデルである。
図14左図は、
図14左図の矢印に示すように、左側からの入力光51をモニタ61,62で検出する例(leftからrightへの光の伝播)、
図14右図は、
図14右図の矢印に示すように、右側からの入力光51をモニタ62,61で検出する例(rightからleftへの光の伝播)である。
図14のシミュレーションモデルのシミュレーション結果は、
図16および
図17の「卍×2」に示される。
【0049】
図15は、
図12のトポロジカルフォトニック構造体12上にカイラルアンテナ20R(
図11右図参照)を2つ配置するとともに、光集積回路の光入出力側にモニタ61,62を載置したシミュレーションモデルである。
図15左図は、
図15左図の矢印に示すように、左側からの入力光51をモニタ61,62で検出する例(leftからrightへの伝播)、
図15右図は、
図15右図の矢印に示すように、右側からの入力光51をモニタ62,61で検出する例(rightからleftへの伝播)である。
図15のシミュレーションモデルのシミュレーション結果は、
図16および
図17の「逆卍×2」に示される。
【0050】
カイラルアンテナの回転方向と伝播方向の関係について説明する。
カイラルアンテナは、円偏光に対して、いずれか一方の回転方向の偏光または光渦を有する光と相互作用(interaction)して吸収し、この偏光または光渦を有する光を放射(損失)させる。カイラルアンテナが、各偏光に対して、吸収・放射する吸収・放射量が伝播ロスLoss[dB]であり、次式(1)で示される。Lossが大きいほど、アンテナにおける吸収・放射量が大きい。なお、順方向であっても伝播ロスLossがある(
図16および
図17のカイラルアンテナなし(WG)参照)。
【0052】
図16は、カイラルアンテナなし(WG)、カイラルアンテナ20を1つ(卍×1)、カイラルアンテナ20Rを1つ(逆卍×1)、カイラルアンテナ20を2つ(卍×2)、およびカイラルアンテナ20Rを2つ(逆卍×2)のそれぞれにおいて、
図13乃至
図15のleftからrightへの光の伝播のLossと、rightからleftへの光の伝播のLossとを比較して示すグラフである。
【0053】
図17は、
図16のシミュレーションモデルのシミュレーション結果を表にして示す図である。
図16および
図17に示すように、トポロジカルフォトニック構造体12上にカイラルアンテナを配置しないカイラルアンテナなし(WG)の場合は、Lossについて有意な差異はない。
【0054】
図16および
図17に示すように、カイラルアンテナ20を1つ配置したシミュレーションモデル(卍×1)は、leftからrightへの光の伝播はloss小、rightからleftへの光の伝播はloss大である。また、カイラルアンテナ20を2つ配置したシミュレーションモデル(卍×2)は、カイラルアンテナ20,20Rを1つ配置した場合よりも光の伝播のlossの差(leftとrightの吸収量の差)は、格段に大きい。
【0055】
同様に、カイラルアンテナ20を1つ配置したシミュレーションモデル(逆卍×1)は、leftからrightへの光の伝播はloss大、rightからleftへの光の伝播はloss小である。カイラルアンテナ20Rを2つ配置したシミュレーションモデル(逆卍×2)は、カイラルアンテナ20Rを1つ配置した場合よりも光の伝播のlossの差(leftとrightの吸収量の差)は、格段に大きい。
【0056】
このように、トポロジカルフォトニック構造体12上にカイラルアンテナ20を配置したシミュレーションモデル(卍×1,卍×2)では、leftからrightへの光の伝播はloss小、rightからleftへの光の伝播はloss大となる。また、カイラルアンテナ20を2つ配置した場合は、カイラルアンテナ20を1つ配置した場合よりも光の伝播のlossの差は、大きいことが確かめられた。例えば、カイラルアンテナ20を2つ配置した場合は、左右の吸収量の差は5[dB]得られている。
同様に、トポロジカルフォトニック構造体12上にカイラルアンテナ20Rを配置したシミュレーションモデル(卍×1,卍×2)では、leftからrightへの光の伝播はloss大、rightからleftへの光の伝播はloss小となる。また、カイラルアンテナ20Rを2つ配置した場合は、カイラルアンテナ20Rを1つ配置した場合よりも光の伝播のlossの差は、大きいことが確かめられた。
【0057】
[実測]
図18は、
図14に示すトポロジカルフォトニック構造体12上にカイラルアンテナ20を2つ配置した場合の磁界分布(Hz)を示す図(Calculated magnetic field Hy)である。縦軸にz軸(z axis)(μm)、横軸にy軸(y axis)(μm)をとる。
図18の濃淡は、磁界分布(Hz)の強度(濃いほど強度が大きい)を表わしている。
【0058】
図18左図に示すように、leftからrightへの光の伝播では、1つ目のleft側のカイラルアンテナ20の影響を受けずに2つ目のright側のカイラルアンテナ20にlossなく伝播し、leftからrightへの光の伝播はloss小であることが確認できた。また、
図18右図に示すように、rightからleftへの光の伝播では、1つ目のright側のカイラルアンテナ20で相互作用(interaction)し、放射(損失)された光がleft側のカイラルアンテナ20に伝播されている、すなわちrightからleftへの光の伝播はloss大であることが確認できた。
【0059】
図19は、
図15に示すトポロジカルフォトニック構造体12上にカイラルアンテナ20Rを2つ配置した場合の磁界分布(Hy)を示す図(Calculated magnetic field Hz)である。縦軸にy軸(yaxis)(μm)、横軸にx軸(x axis)(μm)をとる。
図18の濃淡は、磁界分布(Hz)の強度(濃いほど強度が大きい)を表わしている。
【0060】
図19左図に示すように、leftからrightへの伝播は、1つ目のleft側のカイラルアンテナ20Rで相互作用(interaction)し、放射(損失)された光がright側のカイラルアンテナ20に伝播されている、すなわちleftからrightへの光の伝播はloss大であることが確認できた。これに対し、
図19右図に示すように、rightからleftへの伝播では、1つ目のright側のカイラルアンテナ20Rの影響を受けずに2つ目のleft 側のカイラルアンテナ20Rにlossなく光が伝播し、rightからleftへの光の伝播はloss小であることが確認できた。
【0061】
[変形例]
図20は、本発明の実施形態に係る変形例の非磁性の導波路型アイソレータの上面図である。
図3と同一構成部分には同一符号を付している。
変形例の非磁性の導波路型アイソレータ1は、トポロジカルフォトニック構造体12上にカイラルアンテナ20Aを有する。
【0062】
カイラルアンテナ20Aは、カイラル性を有するナノスケール金属構造である。カイラルアンテナ20Aは、上面視して、4つ羽の風車形状であり、トポロジカルエッジ13に沿って、羽の向きが光渦伝播方向と水平・垂直になるように配置される。
【0063】
以上説明したように、本実施形態に係る非磁性の導波路型アイソレータ1(
図3参照)は、内部がエネルギーギャップを持つ絶縁体であり、そのエッジがギャップレスの金属状態であるトポロジカルフォトニック構造体12と、トポロジカルフォトニック構造体12の表面に配置された、カイラル性を有するカイラルアンテナ20,20R(メタマテリアル)と、を有する。
【0064】
この構成により、各偏光に対して、吸収・放射が大きいカイラルアンテナ20,20Rをデバイス上に配置することで、いずれかの偏光・光渦を有する光を放射(損失)させる。すなわち、
図3に示すように、非磁性の導波路型アイソレータ1では、入力光(Incident light)51が、トポロジカルエッジ状態で光渦伝播する。また、非磁性の導波路型アイソレータ1への戻り光(Counter propagation)52は、カイラルアンテナ20で相互作用(interaction)し、Radiation of counter propagating light53となって放射(損失)する。これにより、戻り光52は、放射(損失)した戻り光54となる。これにより、対応した方向の光伝播を抑えることができ、光集積デバイスは一方向性のアイソレータとして動作する。トポロジカルシリコン光回路(Topological photonic integrated circuits:T-PICs)上に集積可能な非磁性の導波路型アイソレータを実現することができる。
【0065】
本実施形態に係る非磁性の導波路型アイソレータ1は、シリコン光回路上に形成された他素子とのモノリシック集積が容易であり、ガーネット結晶のような別材料系(磁性材料系)をシリコンプラットフォームへ導入する必要もない。既存技術に対する課題解決策として有望である。
【0066】
本実施形態では、非磁性の導波路型アイソレータ1は、バルクがエネルギーギャップを持つ絶縁体であるフォトニック構造体11と、トポロジカルフォトニック構造体12と、フォトニック構造体11とトポロジカルフォトニック構造体12の境界において光渦伝播が可能なトポロジカルエッジ状態を発現するトポロジカルエッジ13と、トポロジカルエッジ13近傍に配置された20,20Rと、を有する。
【0067】
この構成により、特殊な光伝播が可能なトポロジカルエッジ状態で光渦の伝送が可能な非磁性の導波路型アイソレータを実現することができる。
【0068】
非磁性の導波路型アイソレータ10は、トポロジカル特性の光回路への応用が可能である。光渦の伝送を用いた非磁性の導波路型アイソレータは、半導体基板(シリコン,InPなど)上に形成することができ、半導体レーザや大容量伝送のキーコンポーネントであるマルチコアファイバとの整合性にも優れていることから光通信との親和性の向上も期待できる。
【0069】
本発明は上記の実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
例えば、カイラル性を有するメタマテリアルは、トポロジカルフォトニック構造体に配置されるものであれば、どのような配置でもよい。ここで、トポロジカルフォトニック構造体の配置には、トポロジカルエッジ近傍(トポロジカルエッジ近傍は、フォトニック構造体も含む)に配置される場合も含まれる。
【0070】
また、メタマテリアルの構造、配列、寸法、個数、材質は、実施形態・変形例には限定されない。メタマテリアルは、3個以上でもよいが、順方向の伝播ロスが増えることに留意する。また、メタマテリアルは、ナノスケール金属構造であることで、カイラルアンテナを作成しやすい利点がある。ただし、メタマテリアルメタルを用いた場合、interactionが大きく順方向の伝播ロスが大きくなる。メタマテリアルは、誘電体を用いて作製してもよく、誘電体を使うとinteractionを小さくできる可能性があるが、アイソレータとして使用するためには数個配置する。
【0071】
また、上記実施の形態では、非磁性の導波路型アイソレータという名称を用いたが、これは説明の便宜上であり、光アイソレータ等であってもよい。