【課題】絶縁粒子付導電粒子を使用した異方性導電フィルムであって、異方性導電接続した接続構造体の導通抵抗を低減させ、かつショートの発生を確実に抑制することのできる異方性導電フィルムを提供する。
【解決手段】異方性導電フィルム10Aでは、導電粒子1の表面に絶縁粒子2が付着している絶縁粒子付導電粒子3が絶縁性樹脂層5に分散している。異方性導電フィルムにおける絶縁粒子付導電粒子3では、導電粒子1とフィルム厚方向で接する絶縁粒子2の個数が、導電粒子1とフィルム面方向で接する絶縁粒子2の個数よりも少ない。
導電粒子の表面に絶縁粒子が付着している絶縁粒子付導電粒子が絶縁性樹脂層に分散している異方性導電フィルムであって、絶縁粒子付導電粒子において、導電粒子とフィルム厚方向で接する絶縁粒子数が、導電粒子とフィルム面方向で接する絶縁粒子数よりも少ない異方性導電フィルム。
異方導電性フィルムの表裏の一方のフィルム面の平面視において導電粒子と重なっている絶縁粒子の個数が、他方のフィルム面の平面視において導電粒子と重なっている絶縁粒子の個数よりも少ない請求項1記載の異方性導電フィルム。
低粘度絶縁性樹脂層側フィルム面の平面視における導電粒子上の絶縁粒子数が、絶縁性樹脂層側フィルム面の平面視における導電粒子上の絶縁粒子数よりも少ない請求項5記載の異方性導電フィルム。
絶縁性樹脂層の表裏の面のうち、絶縁粒子付導電粒子が近接している面から絶縁粒子付導電粒子の最深部までの距離Lbと絶縁粒子付導電粒子の粒子径Dとの比率(Lb/D)が30〜105%である請求項1〜6のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
絶縁粒子付導電粒子近傍の絶縁性樹脂層の表面が、隣接する絶縁粒子付導電粒子間の中央部における絶縁性樹脂層の接平面に対して傾斜もしくは起伏を有する請求項1〜7のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
前記傾斜では、絶縁粒子付導電粒子の近傍の絶縁性樹脂層の表面が、前記接平面に対して欠けており、前記起伏では、絶縁粒子付導電粒子の直上の絶縁性樹脂層の樹脂量が、前記絶縁粒子付導電粒子の直上の絶縁性樹脂層の表面が該接平面にあるとしたときに比して少ない請求項8記載の異方性導電フィルム。
対向する電子部品の端子同士が、絶縁粒子付導電粒子と絶縁性樹脂層により異方性導電接続されている接続構造体であって、対向する端子に挟持されていない絶縁粒子付導電粒子に、端子同士の対向方向を向いた絶縁粒子欠落領域を有する絶縁粒子付導電粒子が含まれている接続構造体。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の異方性導電フィルムの一例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は、同一又は同等の構成要素を表している。
【0013】
<異方性導電フィルムの全体構成>
図1Aは、本発明の一実施例の異方性導電フィルム10Aの粒子配置を説明する平面図であり、
図1BはそのX−X断面図である。
【0014】
この異方性導電フィルム10Aでは、導電粒子1の表面に絶縁粒子2が接している又は付着している絶縁粒子付導電粒子3が絶縁性樹脂層5の片面に埋め込まれた構造を有している。フィルムの平面視にて絶縁粒子付導電粒子3は互いに接触することなく分散しており、フィルム厚方向にも絶縁粒子付導電粒子3は互いに重なることなく分散している。また、絶縁粒子付導電粒子3のフィルム厚方向(
図1Bの紙面の縦方向)の位置が揃っており、絶縁粒子付導電粒子3はフィルム面方向(
図1Bの紙面の横方向)に単層をなしている。
【0015】
本発明の異方性導電フィルム10Aでは、絶縁粒子付導電粒子3における絶縁粒子2の配置が特徴的となっており、以下に詳述するように、導電粒子1にフィルム厚方向で接している絶縁粒子2の個数が、導電粒子1にフィルム面方向で接している絶縁粒子2の個数よりも少なくなっている。
【0016】
<絶縁粒子付導電粒子>
本発明の異方性導電フィルム10Aにおいて、絶縁粒子付導電粒子3における絶縁粒子2は、導電粒子1のフィルム厚方向にあるものの個数が、導電粒子のフィルム面方向にあるものの個数よりも少なくなっているが、本発明の異方性導電フィルム10Aの製造原料として使用する絶縁粒子付導電粒子3としては、導電粒子1の全表面に絶縁粒子2が略均等に付着したものを使用することができる。
【0017】
このような絶縁粒子付導電粒子としては、特開2009−280790号公報、特開2014−132567号公報等に記載されているものを使用することができる。
【0018】
導電粒子1の粒子径は、配線高さにばらつきがある場合の導通抵抗の上昇を抑制し、且つショートの発生を抑制する点から、好ましくは1μm以上30μm以下、より好ましくは2.5μm以上13μm以下、更に好ましくは3μm以上10μm以下である。
【0019】
絶縁粒子2の粒子径は導電粒子1の粒子径よりも小さい。絶縁粒子2の具体的な粒子径は、導電粒子1の粒子径、異方性導電フィルムの用途等に応じて定めることができるが、通常は、0.005μm以上5μm以下が好ましく、0.01μm以上2.5μm以下がより好ましく、更に好ましくは1μm以下、特に0.5μm以下である。これにより異方性導電接続時に必要な圧力や温度を過度にあげることが不要となる。一例として、絶縁粒子の粒子径は導電粒子の粒子径に対して、小さすぎると絶縁性を付与することが困難になることから下限は0.4%以上とすることが好ましく、0.6%以上とすることがより好ましく、0.8%以上が更により好ましい。また上限は大きすぎると導電粒子への付着や必要な個数が不足する虞があることから、18%以下とすることが好ましく、12%以下がより好ましく、6%以下が更により好ましい。
【0020】
導電粒子1、絶縁粒子2及び絶縁粒子付導電粒子3の粒子径の測定は、これらの粒子をガラス上に散布し、光学顕微鏡、金属顕微鏡、透過型電子顕微鏡(TEM)、又は走査型電子顕微鏡(SEM)などで観察することにより求めることができる。これらのフィルム中の粒子径も走査型電子顕微鏡等による観察から求めることができる。粒子径の計測では、測定するサンプル数を300以上とすることが望ましい。透過型電子顕微鏡では比較的小さい絶縁粒子単体の粒子径を正確に測定することができ、走査型電子顕微鏡は、特に絶縁粒子付導電粒子3の粒子径を求めるのに適している。
【0021】
単体の導電粒子の平均粒子径は、一般的な粒度分布測定装置により測定することもできる。画像型でもレーザー型であってもよい。画像型の測定装置としては、一例として湿式フロー式粒子径・形状分析装置FPIA−3000(マルバーン社)を挙げることができる。絶縁粒子付導電粒子径Dを測定するサンプル数(導電粒子個数)は1000個以上が好ましい。異方性導電フィルムにおける絶縁粒子付導電粒子径Dは、SEMなどの電子顕微鏡観察から求めることができる。この場合、絶縁粒子付導電粒子径Dを測定するサンプル数(導電粒子個数)を300個以上とすることが望ましい。
【0022】
異方性導電フィルム10Aの製造原料として使用する絶縁粒子付導電粒子3において、導電粒子1の全表面のうち絶縁粒子2で被覆されている割合(被覆率)が20〜97%が好ましく、40〜95%がより好ましい。被覆率が少なすぎるとショートが生じ易くなり、大きすぎるとバンプによる導電粒子の捕捉が阻害される懸念が生じる。
【0023】
なお被覆率は、絶縁粒子付導電粒子の表面全体に占める絶縁粒子の被覆面積(投影面積)の割合である。この具体的な求め方としては、走査型電子顕微鏡を用いて100個の絶縁粒子付導電粒子3を観察し、各観察画像における被覆率を平均することにより得られる。被覆率の簡便な求め方としては、各観察画像において絶縁粒子付導電粒子1個あたりの絶縁粒子の個数を計測し、その数値と、絶縁粒子付導電粒子1個の投影面積と絶縁粒子1個の投影面積から被覆率を算出してもよい。ここで、導電粒子の円形の観察像に、絶縁粒子の観察像が部分的に重なっている場合、その部分的に重なっている絶縁粒子は0.5個として計算してもよい。
【0024】
一方、異方性導電フィルム10Aを現に構成する絶縁粒子付導電粒子3においては、導電粒子1にフィルム厚方向で接する絶縁粒子2の個数が、導電粒子1にフィルム面方向で接する絶縁粒子2の個数よりも少ない。ここで、導電粒子1にフィルム厚方向で接する絶縁粒子2の個数とは、
図2に示す、異方性導電フィルム10Aにおける絶縁粒子付導電粒子3のフィルム厚方向の断面において、絶縁粒子付導電粒子3を、導電粒子1の中心を通る、フィルム厚方向に対してプラス45°傾いた直線及びマイナス45°傾いた直線で4つの領域A1、A2、A3、A4に分割した場合に、導電粒子1の上下にある領域(フィルム面に沿った領域)A1、A2に存在する絶縁粒子2の個数をいう。また、導電粒子1にフィルム面方向で接する絶縁粒子2の個数とは、上述の4つの領域A1、A2、A3、A4のうち導電粒子1の左右にある領域(フィルム厚方向に沿った領域)A3、A4に存在する絶縁粒子2の個数をいう。したがって、領域A1、A2、A3、A4に存在する絶縁粒子2の個数をN
A1、N
A2、N
A3、N
A4とすると、本発明においては、(N
A3+N
A4)>(N
A1+N
A2)となる。なお、フィルム厚方向の断面は、同じフィルムで複数の異なる方向がある(異なる方向の断面視を確認する)ことが好ましく、90°になっている2つの断面が含まれていることがより好ましい。
【0025】
なお、領域A1、A2、A3、A4に存在する絶縁粒子2の個数を求めるにあたり、導電粒子1の上下の領域A1、A2と左右の領域A3、A4の双方に跨がる絶縁粒子2は、いずれの領域に大きく属するかで帰属を決定する。
【0026】
また、本発明において、全ての絶縁粒子付導電粒子3が上述の不等式を満たす必要はない。個々の絶縁粒子付導電粒子3において領域A1、A2、A3、A4に存在する絶縁粒子2の個数にはバラツキがあってよく、上述の不等式が成立しない絶縁粒子付導電粒子3が存在していてもよいが、異方性導電フィルムに含まれる全ての絶縁粒子付導電粒子3について平均すると上述の不等式が成立し、N
A3、N
A4がN
A1、N
A2より多くなる。
【0027】
なお、異方性導電フィルムに含まれる全ての絶縁粒子付導電粒子3について上述の不等式が成立することを確認することは現実的ではない。そこで、以下に示すように領域A1、A2、A3、A4に存在する絶縁粒子2の個数を計測して上述の不等式が成立する場合には、全ての絶縁粒子付導電粒子の平均において上述の不等式の関係が成立すると見なしてもよい。
【0028】
即ち、個々の絶縁粒子付導電粒子3について、領域A1、A2、A3、A4に存在する絶縁粒子2の個数を、異方性導電フィルム10Aの断面を走査型電子顕微鏡を用いて観察することにより計測するにあたり、1辺が100μm以上の矩形の計測領域を互いに離間させて複数箇所(好ましくは5箇所以上、より好ましくは10箇所以上)設定して合計面積を1mm
2以上とし、各計測領域から抜き取った100個の絶縁粒子付導電粒子3を観察し、それぞれの絶縁粒子付導電粒子3について領域A1及びA2に存在する絶縁粒子2の個数と、領域A3及びA4に存在する絶縁粒子2の個数を求め、100個の絶縁粒子付導電粒子の平均として、導電粒子1にフィルム厚方向で接する絶縁粒子2の個数(N
A1+N
A2)と、導電粒子1にフィルム面方向で接する絶縁粒子2の個数(N
A3+N
A4)を求め、上述の不等式の成立の有無を調べる。計測領域は導電粒子の大きさによって、適宜調整すればよい。
【0029】
また、導電粒子1にフィルム厚方向で接する絶縁粒子2の個数(N
A1+N
A2)が、導電粒子1にフィルム面方向で接する絶縁粒子2の個数(N
A3+N
A4)よりも少ないことを簡便に確認する方法としては、面積1mm
2以上の計測領域において、異方性導電フィルムの表裏のいずれか一方のフィルム面の平面視において導電粒子1と重なっている絶縁粒子2の個数が、表裏の他方のフィルム面の平面視において導電粒子1と重なっている絶縁粒子2の個数よりも少ないことを確認してもよい。後述するように本発明の異方性導電フィルムの製造工程において絶縁性樹脂層に絶縁粒子付導電粒子を押し込んだ場合にはN
A3,N
A4≧N
A2>N
A1
となるため、N
A2>N
A1を確認することにより、導電粒子1にフィルム厚方向で接する絶縁粒子2の個数(N
A1+N
A2)が、導電粒子1にフィルム面方向で接する絶縁粒子2の個数(NA3+NA4)よりも少ないことを確認することができる。
【0030】
なお、このような領域A1、A2、A3、A4による絶縁粒子2の個数差は、後述するように、異方性導電フィルム10Aの製造方法において絶縁粒子付導電粒子3を所定の配列に配置するために転写型を使用した場合に生じる。即ち、絶縁粒子付導電粒子3を転写型から絶縁性樹脂層に転写した場合に、導電粒子1にフィルム厚方向で接する絶縁粒子2(領域A1の絶縁粒子2)が、転写型との摩擦により又は加圧部材との摩擦により、導電粒子1から脱離して該転写型に残り易く、また、導電粒子1にフィルム厚方向で接する絶縁粒子2は、導電粒子1にフィルム面方向で接する位置に移動する場合があるが、導電粒子1にフィルム面方向で接する絶縁粒子2は、絶縁粒子付導電粒子3を転写型から絶縁性樹脂層に転写させても導電粒子1からの脱離や、移動が生じにくいことにより生じる。
【0031】
<絶縁粒子付導電粒子の分散状態>
本発明における絶縁粒子付導電粒子の分散状態には、絶縁粒子付導電粒子3がランダムに分散している状態も規則的な配置に分散している状態も含まれる。この分散状態において、絶縁粒子付導電粒子が互いに非接触で配置されていることが好ましく、その個数割合は好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、更に好ましくは99.5%以上である。この個数割合に関し、分散状態における規則的な配置において、意図的に接触させている絶縁粒子付導電粒子は、1個としてカウントする。後述するフィルム平面視における絶縁粒子付導電粒子の占有面積率の求め方と同様に、N=200以上で求めることができる。どちらの場合においても、フィルム厚方向の位置が揃っていることが捕捉安定性の点から好ましい。ここで、フィルム厚方向の導電粒子1の位置が揃っているとは、フィルム厚方向の単一の深さに揃っていることに限定されず、絶縁性樹脂層5の表裏の界面又はその近傍のそれぞれに導電粒子が存在している態様を含む。
【0032】
本発明において、前述したように、絶縁粒子付導電粒子3はフィルムの平面視にて規則的に配列していることが好ましく、例えば、
図1Aに示したように正方格子配列とすることができる。この他、絶縁粒子付導電粒子の規則的な配列態様としては、長方格子、斜方格子、6方格子等の格子配列をあげることができる。規則的な配列は格子配列に限定されるものではなく、例えば、絶縁粒子付導電粒子が所定間隔で直線状に並んだ粒子列を所定の間隔で並列させてもよい。絶縁粒子付導電粒子3を互いに非接触で配置し、格子状等の規則的な配列にすることにより、異方性導電接続時に各絶縁粒子付導電粒子3に圧力を均等に加え、導通抵抗のばらつきを低減させることができる。規則的な配列は、例えばフィルムの長手方向に所定の粒子配置が繰り替えされていることにより確認できる。
【0033】
絶縁粒子付導電粒子の配列の格子軸又は配列軸は、異方性導電フィルムの長手方向に対して平行でもよく、異方性導電フィルムの長手方向と交叉してもよく、接続する端子幅、端子ピッチなどに応じて定めることができる。例えば、ファインピッチ用の異方性導電性フィルムとする場合、
図1Aに示したように絶縁粒子付導電粒子3の格子軸Aを異方性導電フィルム10Aの長手方向に対して斜行させ、異方性導電フィルム10Aで接続する端子20の長手方向(フィルムの短手方向)と格子軸Aとのなす角度θを6°〜84°、好ましくは11°〜74°にすることが好ましい。
【0034】
絶縁粒子付導電粒子3の粒子間距離は、異方性導電フィルムで接続する端子の大きさや端子ピッチに応じて適宜定める。例えば、異方性導電フィルムをファインピッチのCOG(Chip On Glass)に対応させる場合、ショートの発生を防止する点から最近接した絶縁粒子付導電粒子3の導電粒子1間距離を絶縁粒子付導電粒子径の0.5倍より大きくすることが好ましく、0.7倍より大きくすることがより好ましい。一方、絶縁粒子付導電粒子3の捕捉性の点から、最近接した絶縁粒子付導電粒子3の導電粒子1間距離を絶縁粒子付導電粒子径の4倍以下とすることが好ましく、3倍以下とすることがより好ましい。
【0035】
また、絶縁粒子付導電粒子の面積占有率が35%以下、好ましくは0.3〜30%となるように定める。ここで、面積占有率は、
[平面視における絶縁粒子付導電粒子の個数密度]×[絶縁粒子付導電粒子の1個の平面視面積の平均]×100
により算出される。
【0036】
式中、絶縁粒子付導電粒子の個数密度の測定領域は、異方性導電フィルム10Aにおいて1辺が100μm以上の矩形領域を任意に複数箇所(好ましくは5箇所以上、より好ましくは10箇所以上)設定し、測定領域の合計面積を2mm2以上とすることが好ましい。個々の領域の大きさや数は、個数密度の状態によって適宜調整すればよい。ファインピッチ用途の比較的個数密度が大きい場合の一例として、異方性導電フィルム10Aから任意に選択した面積100μm×100μmの領域の200箇所(2mm
2)について、金属顕微鏡などによる観測画像を用いて個数密度を測定し、それを平均することにより上述の式の「平面視における絶縁粒子付導電粒子の個数密度」を得ることができる。面積100μm×100μmの領域は、バンプ間スペース50μ以下の接続対象物において1個以上のバンプが存在する領域になる。
【0037】
個数密度は、好ましくは150〜70000個/mm
2であり、特にファインピッチ用途の場合には好ましくは6000〜42000個/mm
2、より好ましくは10000〜40000個/mm
2、更に好ましくは15000〜35000個/mm
2である。なお、150個/mm
2未満を除外するものではない。
【0038】
絶縁粒子付導電粒子の個数密度は、上述のように金属顕微鏡を用いて求める他、絶縁粒子付導電粒子の顕微鏡画像に対して画像解析ソフト(例えば、WinROOF、三谷商事株式会社等)用いて計測してもよい。
【0039】
また、絶縁粒子付導電粒子1個当りのフィルム平面視面積の平均は、フィルム面の金属顕微鏡などによる観測画像から計測により求められる。上述のように画像解析ソフトを用いてもよい。N=300以上であることが好ましい。
【0040】
絶縁粒子付導電粒子のフィルム平面視における面積占有率は、異方性導電フィルムを電子部品に熱圧着するために押圧治具に必要とされる推力の指標となる。従来、異方性導電フィルムをファインピッチに対応させるために、ショートを発生させない限りで導電粒子の粒子間距離を狭め、個数密度が高められてきたが、そのように個数密度を高めると、異方性導電フィルムを電子部品に熱圧着するために押圧治具に必要とされる推力が過度に大きくなり、従前の押圧治具では押圧が不十分になるという問題が起こる。これに対し、面積占有率を上述の範囲とすることにより、異方性導電フィルムを電子部品に熱圧着するために押圧治具に必要とされる推力を低く抑えることができる。
【0041】
<絶縁性樹脂層>
(絶縁性樹脂層の最低溶融粘度)
本発明の異方性導電フィルムにおいて、絶縁性樹脂層5の最低溶融粘度は、特に制限はなく、異方性導電フィルムの使用対象や、異方性導電フィルムの製造方法等に応じて適宜定めることができる。例えば、後述の凹み5b(
図3A)、5c(
図3B)を形成できる限り、異方性導電フィルムの製造方法によっては1000Pa・s程度とすることもできる。一方、異方性導電フィルムの製造方法として、絶縁粒子付導電粒子を絶縁性樹脂層の表面に所定の配置で保持させ、その絶縁粒子付導電粒子を絶縁性樹脂層に押し込む方法を行うとき、絶縁性樹脂層がフィルム成形を可能とする点から絶縁性樹脂の最低溶融粘度を1100Pa・s以上とすることが好ましい。
【0042】
また、後述の異方性導電フィルムの製造方法で説明するように、
図3Aに示すように絶縁性樹脂層5に押し込んだ絶縁粒子付導電粒子3の露出部分の周りに凹み5bを形成したり、
図3Bに示すように絶縁性樹脂層5に押し込んだ絶縁粒子付導電粒子3の直上に凹み5cを形成したりする点から、好ましくは1500Pa・s以上、より好ましくは2000Pa・s以上、さらに好ましくは3000〜15000Pa・s、さらにより好ましくは3000〜10000Pa・sである。この最低溶融粘度は、一例として回転式レオメータ(TA Instrument社製)を用い、測定圧力5gで一定に保持し、直径8mmの測定プレートを使用し求めることができ、より具体的には、温度範囲30〜200℃において、昇温速度10℃/分、測定周波数10Hz、前記測定プレートに対する荷重変動5gとすることにより求めることができる。
【0043】
絶縁性樹脂層5の最低溶融粘度を1500Pa・s以上の高粘度とすることにより、異方性導電フィルムの物品への圧着にフィラーの不用な移動を抑制でき、特に、異方性導電接続時に端子間で挟持されるべき導電粒子が樹脂流動により流されてしまうことを防止できる。
【0044】
また、絶縁性樹脂層5に絶縁粒子付導電粒子3を押し込む場合において、絶縁粒子付導電粒子3を押し込むときの絶縁性樹脂層5は、絶縁粒子付導電粒子3が絶縁性樹脂層5から露出するように絶縁粒子付導電粒子3を絶縁性樹脂層5に押し込んだときに、絶縁性樹脂層5が塑性変形して絶縁粒子付導電粒子3の周囲の絶縁性樹脂層5に凹み5b(
図3A)が形成されるような高粘度な粘性体とするか、あるいは、絶縁粒子付導電粒子3が絶縁性樹脂層5から露出することなく絶縁性樹脂層5に埋まるように絶縁粒子付導電粒子3を押し込んだときに、絶縁粒子付導電粒子3の直上の絶縁性樹脂層5の表面に凹み5c(
図3B)が形成されるような高粘度な粘性体とする。そのため、絶縁性樹脂層5の60℃における粘度は、下限は好ましくは3000Pa・s以上、より好ましくは4000Pa・s以上、さらに好ましくは4500Pa・s以上であり、上限は、好ましくは20000Pa・s以下、より好ましくは15000Pa・s以下、さらに好ましくは10000Pa・s以下である。この測定は最低溶融粘度と同様の測定方法で行い、温度が60℃の値を抽出して求めることができる。
【0045】
絶縁性樹脂層5に絶縁粒子付導電粒子3を押し込むときの該絶縁性樹脂層5の具体的な粘度は、形成する凹み5b、5cの形状や深さなどに応じて、下限は好ましくは3000Pa・s以上、より好ましくは4000Pa・s以上、さらに好ましくは4500Pa・s以上であり、上限は、好ましくは20000Pa・s以下、より好ましくは15000Pa・s以下、さらに好ましくは10000Pa・s以下である。また、このような粘度を好ましくは40〜80℃、より好ましくは50〜60℃で得られるようにする。
【0046】
上述したように、絶縁性樹脂層5から露出している絶縁粒子付導電粒子3の周囲に凹み5b(
図3A)が形成されていることにより、異方性導電フィルムの物品への圧着時に生じる絶縁粒子付導電粒子3の扁平化に対して絶縁性樹脂から受ける抵抗が、凹み5bが無い場合に比して低減する。このため、異方性導電接続時に端子で導電粒子が挟持され易くなることで導通性能が向上し、また捕捉性が向上する。
【0047】
また、絶縁性樹脂層5から露出することなく埋まっている絶縁粒子付導電粒子3の直上の絶縁性樹脂層5の表面に凹み5c(
図3B)が形成されていることにより、凹み5cが無い場合に比して異方性導電フィルムの物品への圧着時の圧力が絶縁粒子付導電粒子3に集中し易くなる。このため、異方性導電接続時に端子で導電粒子が挟持され易くなることで捕捉性が向上し、また導通性能が向上する。
【0048】
なお、後述する異方性導電フィルムの製造方法において、絶縁性樹脂層5に絶縁粒子付導電粒子3を押し込むときの埋込率を100%以下とし、絶縁粒子付導電粒子3が絶縁性樹脂層5から露出するようにする場合に、絶縁性樹脂層5の60℃の粘度が上述の範囲でると、絶縁粒子付導電粒子3が押し込まれた後の絶縁性樹脂層5には絶縁粒子付導電粒子3の周囲に凹み5b(
図3A)が形成されることがある。この際、絶縁粒子のみが露出する場合もある。また、埋込率を100%超とし、絶縁粒子付導電粒子3が絶縁性樹脂層5から露出せず、絶縁性樹脂層5に埋まるようにした場合には、絶縁粒子付導電粒子3の直上の絶縁性樹脂層5の表面に凹み5c(
図3B)が形成されることがある。なお、埋込率の意味については、後段の絶縁粒子付導電粒子の埋込状態の説明において詳述する。
【0049】
このような凹み5b、5cは、絶縁粒子付導電粒子3を絶縁性樹脂層5に押し込むときの絶縁性樹脂層5の粘度、押込速度、温度などに応じて形成される。凹み5b、5cの有無が本発明の効果に格別影響するものではないが、凹みの深さが大きい凹み5b、5c(例えば、凹みの最深部の深さが絶縁粒子付導電粒子径Dの10%以上)が局所的に集中した領域が存在する場合に、そのような領域を基板に向けて貼り合わせると、基板の材質や表面状態などによっては、その領域で異方性導電接続後に浮き等が生じ、実用上の問題はなくとも外観が劣る場合がある。これに対しては、そのような領域のある異方性導電フィルムの表面を、異方性導電接続に支障を来たさない程度に加熱押圧したり、樹脂を散布するなどして凹み5b、5cを浅くするか、又は平坦にすることが好ましい。この場合、散布する樹脂は、絶縁性樹脂層5を形成する樹脂よりも低粘度であることが好ましい。散布する樹脂の濃度は、散布後に絶縁性樹脂層5の凹みが確認できる程度に希釈されていてもよい。
【0050】
<凹みに代わる“傾斜”もしくは“起伏”>
図3A、3Bに示すような異方性導電フィルムの「凹み」5b、5cは、「傾斜」もしくは「起伏」という観点から説明することもできる。以下に、図面を参照しながら説明する。
【0051】
異方性導電フィルム10Aは、導電粒子分散層、即ち、絶縁性樹脂層5の片面に絶縁粒子付導電粒子3が露出した状態で規則的に分散している層を有する(
図3A、
図3B)。フィルムの平面視にて絶縁粒子付導電粒子3は互いに接触しておらず、フィルム厚方向にも絶縁粒子付導電粒子3が互いに重なることなく規則的に分散し、絶縁粒子付導電粒子3のフィルム厚方向の位置が揃った単層の導電粒子層を構成している。
【0052】
個々の絶縁粒子付導電粒子3の近傍の絶縁性樹脂層5の表面5aには、隣接する絶縁粒子付導電粒子間の中央部における絶縁性樹脂層5の接平面5pに対して傾斜5bが形成されている。なお後述するように、本発明の異方性導電フィルムでは、絶縁性樹脂層5に埋め込まれた絶縁粒子付導電粒子3の直上の絶縁性樹脂層5の表面に起伏5cが形成されていてもよい(
図3B)。
【0053】
本発明において、「傾斜」とは、絶縁粒子付導電粒子3の近傍で絶縁性樹脂層の表面の平坦性が損なわれ、前記接平面5pに対して絶縁性樹脂層の一部が欠けて樹脂量が低減している状態を意味する。換言すれば、傾斜では、絶縁粒子付導電粒子の近傍の絶縁性樹脂層の表面が接平面に対して欠けていることになる。一方、「起伏」とは、絶縁粒子付導電粒子の直上の絶縁性樹脂層の表面にうねりがあり、うねりのように高低差がある部分が存在することで樹脂が低減している状態を意味する。換言すれば、絶縁粒子付導電粒子直上の絶縁性樹脂層の樹脂量が、絶縁粒子付導電粒子直上の絶縁性樹脂層の表面が接平面にあるとしたときに比して少なくなる。そのため、うねりにおいて絶縁粒子のみが露出する場合もある。これらは、絶縁粒子付導電粒子の直上に相当する部位と導電粒子間の平坦な表面部分(
図3A、3B)とを対比して認識することができる。なお、起伏の開始点が傾斜として存在する場合もある。
【0054】
上述したように、絶縁性樹脂層5から露出している絶縁粒子付導電粒子3の周囲に傾斜5b(
図3A)が形成されていることにより、異方性導電接続時に絶縁粒子付導電粒子3が端子間で挟持される際に生じる絶縁粒子付導電粒子3の偏平化に対して絶縁性樹脂から受ける抵抗が、傾斜5bが無い場合に比して低減するため、端子における絶縁粒子付導電粒子の挟持がされ易くなることで導通性能が向上し、また捕捉性が向上する。この傾斜は、絶縁粒子付導電粒子の外形に沿っていることが好ましい。接続における効果がより発現しやすくなる以外に、絶縁粒子付導電粒子を認識し易くなることで、異方性導電フィルムの製造における検査などが行い易くなるからである。また、この傾斜および起伏は絶縁性樹脂層にヒートプレスするなどにより、その一部が消失してしまう場合があるが、本発明はこれを包含する。この場合、絶縁粒子付導電粒子は絶縁性樹脂層の表面に1点で露出する場合がある。なお、異方性導電フィルムは、接続する電子部品が多様であり、これらに合わせてチューニングする以上、種々の要件を満たせるように設計の自由度が高いことが望まれるので、傾斜もしくは起伏を低減させても部分的に消失させても用いることができる。
【0055】
また、絶縁性樹脂層5から露出することなく埋まっている絶縁粒子付導電粒子3の直上の絶縁性樹脂層5の表面に起伏5c(
図3B)が形成されていることにより、傾斜の場合と同様に、異方性接続時に端子からの押圧力が絶縁粒子付導電粒子にかかりやすくなる。また、起伏があることにより樹脂が平坦に堆積している場合よりも絶縁粒子付導電粒子の直上の樹脂量が低減しているため、接続時の絶縁粒子付導電粒子直上の樹脂の排除が生じやすくなり、端子と絶縁粒子付導電粒子とが接触し易くなることから、端子における絶縁粒子付導電粒子の捕捉性が向上し、導通信頼性が向上する。
【0056】
(絶縁性樹脂層の厚さ方向における絶縁粒子付導電粒子の位置)
「傾斜」もしくは「起伏」という観点を考慮した場合の絶縁性樹脂層5の厚さ方向における絶縁粒子付導電粒子3の位置は、前述と同様に、絶縁粒子付導電粒子3が絶縁性樹脂層5から露出していてもよく、露出することなく、絶縁性樹脂層5内に埋め込まれていても良いが、隣接する絶縁粒子付導電粒子間の中央部における接平面5pからの絶縁粒子付導電粒子の最深部の距離(以下、埋込量という)Lbと、絶縁粒子付導電粒子径Dとの比(Lb/D)(以下、埋込率という)が30%以上105%以下であることが好ましく、60%以上105%以下とすることが発明の効果を得るためにはより好ましい。
【0057】
埋込率(Lb/D)を30%以上60%未満とすると、絶縁粒子付導電粒子を保持する比較的高粘度の樹脂から絶縁粒子付導電粒子が露出している比率が高くなることから、より低温低圧実装が容易になる。60%以上とすることにより、導電粒子1を絶縁性樹脂層2によって所定の粒子分散状態あるいは所定の配列に維持し易くなる。また、製造(フィルムへの押し込み)時の絶縁粒子付導電粒子と樹脂との接触面積が大きくなることから、発明の効果が得られ易くなることが期待できる。また、105%以下とすることにより、異方性導電接続時に端子間の導電粒子を無用に流動させるように作用する絶縁性樹脂層の樹脂量を低減させることができる。
【0058】
なお、埋込率(Lb/D)の数値は、異方性導電フィルムに含まれる全絶縁粒子付導電粒子数の80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは96%以上が、当該埋込率(Lb/D)の数値になっていることをいう。したがって、埋込率が30%以上105%以下とは、異方性導電フィルムに含まれる全絶縁粒子付導電粒子数の80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは96%以上の埋込率が30%以上105%以下であることをいう。このように全絶縁粒子付導電粒子の埋込率(Lb/D)が揃っていることにより、押圧の加重が絶縁粒子付導電粒子に均一にかかるので、端子における絶縁粒子付導電粒子の捕捉状態が良好になり、導通の安定性が向上する。
【0059】
埋込率(Lb/D)は、異方性導電フィルムから面積30mm
2以上の領域を任意に10箇所以上抜き取り、そのフィルム断面の一部をSEM画像で観察し、合計50個以上の絶縁粒子付導電粒子を計測することにより求めることができる。より精度を上げるため、200個以上の絶縁粒子付導電粒子を計測して求めてもよい。
【0060】
また、埋込率(Lb/D)の計測は、面視野画像において焦点調整することにより、ある程度の個数について一括して求めることができる。もしくは埋込率(Lb/D)の計測にレーザー式判別変位センサ(キーエンス製など)を用いてもよい。
【0061】
上述した絶縁粒子付導電粒子の露出部分の周りの絶縁性樹脂層5の傾斜5b(
図3A)や、絶縁粒子付導電粒子の直上の絶縁性樹脂層の起伏5c(
図3B)の効果を得易くする点から絶縁粒子付導電粒子3の露出部分の周りの傾斜5bの最大深さLeと絶縁粒子付導電粒子3の粒子径Dとの比(Le/D)は、好ましくは50%未満、より好ましくは30%未満、さらに好ましくは20〜25%であり、絶縁粒子付導電粒子3の露出部分の周りの傾斜5bの最大径Ldと絶縁粒子付導電粒子3の粒子径Dとの比(Ld/D)は、好まくは100%以上、より好ましくは100〜150%であり、絶縁粒子付導電粒子3の直上の樹脂における起伏5cの最大深さLfと絶縁粒子付導電粒子3の粒子径Dとの比(Lf/D)は、0より大きく、好ましくは10%未満、より好ましくは5%以下である。
【0062】
なお、絶縁粒子付導電粒子3の露出部分の径Lcは、絶縁粒子付導電粒子3の粒子径D以下とすることができ、好ましくは粒子径Dの10〜90%である。なお、絶縁粒子付導電粒子3の頂部の1点で露出するようにしてもよく、絶縁粒子付導電粒子3が絶縁性樹脂層5内に完全に埋まり、径Lcがゼロとなるようにしてもよい。
【0063】
このような本発明において、絶縁性樹脂層5の表面の傾斜5b、起伏5cの存在は、異方性導電フィルムの断面を走査型電子顕微鏡で観察することにより確認することができ、面視野観察においても確認できる。光学顕微鏡、金属顕微鏡でも傾斜5b、起伏5cの観察は可能である。また、傾斜5b、起伏5cの大きさは画像観察時の焦点調整などで確認することもできる。上述のようにヒートプレスにより傾斜もしくは起伏を減少させた後であっても、同様である。痕跡が残る場合があるからである。
【0064】
(絶縁性樹脂層の組成)
絶縁性樹脂層5は、硬化性樹脂組成物から形成することが好ましく、例えば、熱重合性化合物と熱重合開始剤とを含有する熱重合性組成物から形成することができる。熱重合性組成物には必要に応じて光重合開始剤を含有させてもよい。
【0065】
熱重合開始剤と光重合開始剤を併用する場合に、熱重合性化合物として光重合性化合物としても機能するものを使用してもよく、熱重合性化合物とは別に光重合性化合物を含有させてもよい。好ましくは、熱重合性化合物とは別に光重合性化合物を含有させる。例えば、熱重合開始剤としてカチオン系硬化開始剤、熱重合性化合物としてエポキシ樹脂を使用し、光重合開始剤として光ラジカル開始剤、光重合性化合物としてアクリレート化合物を使用する。
【0066】
光重合開始剤として、波長の異なる光に反応する複数種類を含有させてもよい。これにより、異方性導電フィルムの製造時における、絶縁性樹脂層を構成する樹脂の光硬化と、異方性導電接続時に電子部品同士を接着するための樹脂の光硬化とで使用する波長を使い分けることができる。
【0067】
異方性導電フィルムの製造時の光硬化では、絶縁性樹脂層に含まれる光重合性化合物の全部又は一部を光硬化させることができる。この光硬化により、絶縁性樹脂層5における絶縁粒子付導電粒子3の配置が保持乃至固定化され、ショートの抑制と捕捉の向上が見込まれる。また、この光硬化により、異方性導電フィルムの製造工程における絶縁性樹脂層の粘度を適宜調整してもよい。
【0068】
絶縁性樹脂層における光重合性化合物の配合量は30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、2質量%未満がより好ましい。光重合性化合物が多すぎると接続時の押し込みにかかる推力が増加するためである。
【0069】
熱重合性組成物の例としては、(メタ)アクリレート化合物と熱ラジカル重合開始剤とを含む熱ラジカル重合性アクリレート系組成物、エポキシ化合物と熱カチオン重合開始剤とを含む熱カチオン重合性エポキシ系組成物等が挙げられる。熱カチオン重合開始剤を含む熱カチオン重合性エポキシ系組成物に代えて、熱アニオン重合開始剤を含む熱アニオン重合性エポキシ系組成物を使用してもよい。また、特に支障を来たさなければ、複数種の重合性組成物を併用してもよい。併用例としては、カチオン重合性化合物とラジカル重合性化合物の併用などが挙げられる。
【0070】
ここで、(メタ)アクリレート化合物としては、従来公知の熱重合型(メタ)アクリレートモノマーを使用することができる。例えば、単官能(メタ)アクリレート系モノマー、二官能以上の多官能(メタ)アクリレート系モノマーを使用することができる。
【0071】
熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ系化合物等を挙げることができる。特に、気泡の原因となる窒素を発生しない有機過酸化物を好ましく使用することができる。
【0072】
熱ラジカル重合開始剤の使用量は、少なすぎると硬化不良となり、多すぎると製品ライフの低下となるので、(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し、好ましくは2〜60質量部、より好ましくは5〜40質量部である。
【0073】
エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、それらの変性エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などを挙げることができ、これらの2種以上を併用することができる。また、エポキシ化合物に加えてオキセタン化合物を併用してもよい。
【0074】
熱カチオン重合開始剤としては、エポキシ化合物の熱カチオン重合開始剤として公知のものを採用することができ、例えば、熱により酸を発生するヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、フェロセン類等を用いることができ、特に、温度に対して良好な潜在性を示す芳香族スルホニウム塩を好ましく使用することができる。
【0075】
熱カチオン重合開始剤の使用量は、少なすぎても硬化不良となる傾向があり、多すぎても製品ライフが低下する傾向があるので、エポキシ化合物100質量部に対し、好ましくは2〜60質量部、より好ましくは5〜40質量部である。
【0076】
熱重合性組成物は、膜形成樹脂やシランカップリング剤を含有することが好ましい。膜形成樹脂としては、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂等を挙げることができ、これらの2種以上を併用することができる。これらの中でも、製膜性、加工性、接続信頼性の観点から、フェノキシ樹脂を好ましく使用することができる。重量平均分子量は10000以上であることが好ましい。また、シランカップリング剤としては、エポキシ系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤等を挙げることができる。これらのシランカップリング剤は、主としてアルコキシシラン誘導体である。
【0077】
熱重合性組成物には、溶融粘度調整のために、上述の絶縁粒子付導電粒子3とは別に絶縁性フィラーを含有させてもよい。これはシリカ粉やアルミナ粉などが挙げられる。絶縁性フィラー粒径20〜1000nmの微小なフィラーが好ましく、また、配合量はエポキシ化合物等の熱重合性化合物(光重合性組成物)100質量部に対して5〜50質量部とすることが好ましい。
【0078】
本発明の異方性導電フィルムには、上述の絶縁性のフィラーとは別に充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料)、有機溶剤、イオンキャッチャー剤などを含有させてもよい
【0079】
(絶縁性樹脂層の層厚)
本発明の異方性導電フィルムでは、絶縁性樹脂層5の層厚Laと絶縁粒子付導電粒子3の粒子径Dとの比(La/D)が後述の理由から下限を0.3以上とすることができ、上限を10以下することができる。従って、その比は0.3〜10が好ましく、0.6〜8がより好ましく、0.6〜6が更に好ましい。ここで、絶縁粒子付導電粒子3の粒子径Dは、その平均粒子径を意味する。絶縁性樹脂層5の層厚Laが大き過ぎると異方性導電接続時に絶縁粒子付導電粒子3が樹脂流動により位置ズレしやすくなり、端子における絶縁粒子付導電粒子3の捕捉性が低下する。この傾向はこの比(La/D)が10を超えると顕著であるため、8以下がより好ましく、6以下が更に好ましい。反対に絶縁性樹脂層5の層厚Laが小さすぎてこの比(La/D)が0.3未満となると、絶縁粒子付導電粒子3を絶縁性樹脂層5によって所定の粒子分散状態あるいは所定の配列に維持することが困難となるので比(La/D)は0.3以上が好ましく、絶縁性樹脂層5によって所定の粒子分散状態あるいは所定の配列を確実に維持する点から0.6以上がより好ましい。また、接続する端子が高密度COGの場合、絶縁性樹脂層5の層厚Laと絶縁粒子付導電粒子3の粒子径Dとの比(La/D)は、好ましくは0.8〜2である。
【0080】
<絶縁性樹脂層における絶縁粒子付導電粒子の埋込状態>
絶縁性樹脂層5における絶縁粒子付導電粒子3の埋込状態は、埋込率を30%以上105%以下とすることが好ましい。埋込率30%以上、好ましくは60%以上とすることにより、絶縁粒子付導電粒子3を絶縁性樹脂層5によって所定の粒子分散状態あるいは所定の配列に維持させることができる。また、埋込率105%以下とすることにより、異方性導電接続時に絶縁粒子付導電粒子を無用に流動させるように作用する絶縁性樹脂層の樹脂量を低減させることができる。
【0081】
ここで、埋込率とは、絶縁粒子付導電粒子3が埋め込まれている絶縁性樹脂層5の表面5a(絶縁性樹脂層5において、絶縁粒子付導電粒子3が偏在している方の表面)と、絶縁性樹脂層5に埋め込まれている絶縁粒子付導電粒子3の前記表面5aに対する最深部との距離を埋込量Lbとした場合に、絶縁粒子付導電粒子3の粒子径Dに対する埋込量Lbの比率(Lb/D)である(
図1B)。
【0082】
なお、本発明において、埋込率(Lb/D)の数値は、異方性導電フィルムに含まれる全導電粒子数の80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは96%以上が、当該埋込率(Lb/D)の数値になっていることをいう。したがって、埋込率が30%以上105%以下とは、異方性導電フィルムに含まれる全絶縁粒子付導電粒子数の80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは96%以上の埋込率が30%以上105%以下であることをいう。このように全絶縁粒子付導電粒子の埋込率(Lb/D)が揃っていることにより、押圧の加重が導電粒子に均一にかかるので、端子における導電粒子の捕捉状態が良好になり、導通の安定性が向上する。
【0083】
埋込率(Lb/D)は、異方性導電フィルムから面積30mm2以上の領域を任意に10箇所以上抜き取り、そのフィルム断面の一部をSEM画像で観察し、合計50個以上の導電粒子を計測することにより求めることができる。より精度を上げるため、200個以上の導電粒子を計測して求めてもよい。
【0084】
また、埋込率(Lb/D)の計測は、面視野画像において焦点調整することにより、ある程度の個数について一括して求めることもできる。もしくは埋込率(Lb/D)の計測にレーザー式判別変位センサ((株)キーエンス製など)を用いてもよい。
【0085】
<異方性導電フィルムの製造方法>
図1A、
図1Bに示した異方性導電フィルム10Aの製造方法の一例においては、転写型30の凹部31に絶縁粒子付導電粒子3を充填する(
図4A)。この凹部31は、異方性導電フィルムにおける絶縁粒子付導電粒子3と同様の配列に形成されている。
【0086】
このような転写型30としては、例えば、シリコン、各種セラミックス、ガラス、ステンレススチールなどの金属等の無機材料や、各種樹脂等の有機材料などに対し、フォトリソグラフ法等の公知の開口形成方法によって凹部31を形成したものを使用することができる。また、転写型は、板状、ロール状等の形状をとることができる。
【0087】
一方、剥離フィルム7上に絶縁性樹脂層5をフィルム状に形成しておき、転写型30に充填した絶縁粒子付導電粒子3上に絶縁性樹脂層5を被せる(
図4C)。あるいは、絶縁粒子付導電粒子3上に絶縁性樹脂層5を被せる前に、転写型30に充填した絶縁粒子付導電粒子3に平板32を接触させるなどにより、絶縁粒子2を導電粒子1から脱離させ(
図4B)、その後、絶縁性樹脂層5を被せてもよい(
図4C)。次に、転写型30から絶縁性樹脂層5を剥離し、絶縁粒子付導電粒子3が転写した絶縁性樹脂層5を得る(
図4D)。この絶縁粒子付導電粒子3の転写工程では、転写型30と絶縁粒子2が擦れるために、転写型30の凹部31の底面と接していた絶縁粒子2(領域A1の絶縁粒子2となるもの)が絶縁粒子付導電粒子3から脱離しやすい。また、転写型30内の絶縁粒子付導電粒子3に絶縁性樹脂層5を被せたときに、絶縁性樹脂層5と最初に接触する絶縁粒子2には大きな力がかかるため、この領域の絶縁粒子2(領域A2の絶縁粒子2となるもの)も脱離することがある。このため、フィルム上に絶縁粒子2が存在(点在)していることがある。
【0088】
一方、フィルム面方向の絶縁粒子2は、絶縁性樹脂層5を転写型30から剥離した後も絶縁性樹脂層5から脱離することなく、絶縁性樹脂層5に維持されている。
【0089】
したがって、絶縁性樹脂層5に転写した後の絶縁粒子付導電粒子3では、転写前に比して、絶縁粒子付導電粒子3を構成する絶縁粒子2のうち導電粒子1とフィルム厚方向で接する絶縁粒子2の個数が、導電粒子1とフィルム面方向で接する絶縁粒子2の個数に比して低減する。
【0090】
次に、必要に応じて、絶縁性樹脂層5に転写した絶縁粒子付導電粒子3を平板又はローラー33で押し込む(
図4E)。この押し込み時に、絶縁粒子付導電粒子3を形成していた絶縁粒子2であって、平板又はローラー33側にあった絶縁粒子2(領域A1となる絶縁粒子2)は平板又はローラー33との接触により導電粒子1から比較的脱離する。
【0091】
絶縁性樹脂層5に転写した絶縁粒子付導電粒子3を平板又はローラー33で押し込むときの押込量Lbは、埋込率(Lb/D)が好ましくは30%以上105%以下、より好ましくは60%以上105%以下となるように調整することが好ましく、また押し込みに押圧治具に必要とされる推力等に応じて定めることが好ましい。
【0092】
こうして、絶縁粒子付導電粒子3における絶縁粒子2の個数のうち、異方性導電フィルムのフィルム厚方向で導電粒子1と接する絶縁粒子2の個数が低減した異方性導電フィルム10Aを得ることができる(
図4F)。
【0093】
また、上述した異方性導電フィルム10Aの製造方法において、当初の絶縁粒子付導電
粒子3から脱離する絶縁粒子2の個数は、絶縁性樹脂層5の温度及び粘度、並びに埋込率
(Lb/D)等により調整することができる。
【0094】
<異方性導電フィルムの変形態様>
本発明の異方性導電フィルムは、
図5に示す異方性導電フィルム10Bのように、絶縁
粒子付導電粒子3が埋め込まれている絶縁性樹脂層5に、該絶縁性樹脂層5よりも最低溶
融粘度が低い低粘度絶縁性樹脂層6を積層してもよい。低粘度絶縁性樹脂層6の積層によ
り、異方性導電フィルムを用いて電子部品を異方性導電接続するときに、電子部品の電極
やバンプによって形成される空間を充填し、接着性を向上させることができる。
【0095】
絶縁性樹脂層5と低粘度絶縁性樹脂層6との最低溶融粘度比は、好ましくは2以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは8以上、実用上15以下である。低粘度絶縁性樹脂層6のより具体的な最低溶融粘度は3000Pa・s以下、より好ましくは2000Pa・s以下であり、特に1000〜2000Pa・sであることが好ましい。このように低粘度絶縁性樹脂層6を低粘度とすることにより、電子部品の電極やバンプによって形成される空間が低粘度絶縁性樹脂で充填されやすくなるので、絶縁性樹脂層5の移動量が相対的に少なくなり、端子間の絶縁粒子付導電粒子3が樹脂流動により流されにくくなる。よって、異方性導電接続時に絶縁粒子付導電粒子3の捕捉性を損なうことなく、電子部品同士の接着性を向上させることができる。
【0096】
また、絶縁性樹脂層5と低粘度絶縁性樹脂層6を合わせた異方性導電フィルム10B全体の最低溶融粘度は、好ましくは、200〜4000Pa・sである。
【0097】
なお、低粘度絶縁性樹脂層6は、絶縁性樹脂層5と同様の樹脂組成物において、粘度を調整することにより形成することができる。
【0098】
また、異方性導電フィルム10Bにおいて、低粘度絶縁性樹脂層6の層厚は、好ましくは4〜20μmである。もしくは、絶縁粒子付導電粒子径に対して、好ましくは1〜8倍である。
【0099】
本発明においては、転写型30から絶縁性樹脂層5を剥離した後、絶縁粒子付導電粒子3を押し込む前のものを異方性導電フィルム10C(
図6)としてもよく、これに低粘度絶縁性樹脂層6を積層したものを異方性導電フィルム10Dとしてもよい(
図7)。この場合、絶縁粒子付導電粒子が、絶縁性樹脂層と低粘度絶縁性樹脂層の間に存在させてもよい。また、低粘度絶縁性樹脂層側フィルム面の平面視における導電粒子上の絶縁粒子数が、絶縁性樹脂層側フィルム面の平面視における導電粒子上の絶縁粒子数よりも少なくすることが好ましい。さらに、必要に応じて、低粘度絶縁性樹脂層6の反対側の絶縁性樹脂層5上にさらに低粘度絶縁性樹脂層を積層してもよい。
【0100】
また、絶縁粒子付導電粒子3を、フィルム厚方向の異なる位置に複数層設けてもよい。これらの変形態様は、適宜組み合わせることができる。
【0101】
<異方性導電フィルムで接続する電子部品>
本発明の異方性導電フィルムは、ICチップ、ICモジュール、FPCなどの第1電子部品と、FPC、ガラス基板、プラスチック基板、リジッド基板、セラミック基板などの第2電子部品とを異方性導電接続する際に好ましく使用することができる。ICチップやウェーハーをスタックして多層化させてもよい。なお、本発明の異方性導電フィルムで接続する電子部品は、上述の電子部品に限定されるものではない。近年、多様化している種々の電子部品に使用することができる。
【0102】
<異方性導電フィルムを用いた接続方法及び接続構造体>
本発明は、本発明の異方性導電フィルムを用いて電子部品同士を異方性導電接続する接続構造体の製造方法を提供し、この製造方法により得られた接続構造体、即ち、対向する電子部品の端子同士が、絶縁粒子付導電粒子と絶縁性樹脂層により異方性導電接続されている接続構造体であって、対向する端子に挟持されていない絶縁粒子付導電粒子に、端子同士の対向方向を向いた絶縁粒子欠落領域を有する絶縁粒子付導電粒子が含まれている接続構造体を提供する。
【0103】
この接続構造体には、対向する端子に挟持されている絶縁粒子付導電粒子にも、端子同士の対向方向を向いた絶縁粒子欠落領域を有する絶縁粒子付導電粒子が含まれている。この接続構造体において、端子同士の対向方向は、接続構造体の製造に使用した本発明の異方性導電フィルムのフィルム厚方向に対応し、端子の接続面方向は、異方性導電フィルムのフィルム面方向に対応する。また、絶縁粒子欠落領域とは、絶縁粒子付導電粒子の表面の一部分が、その外側の環状部分に比して絶縁粒子の面密度が低くなっている領域をいう。したがって、この接続構造体において、対向する端子に挟持されている絶縁粒子付導電粒子は、前述した異方性導電フィルムにおいて絶縁粒子数が低減している領域A1又はA2に対応しており、端子同士の対向方向で導電粒子と接する絶縁粒子数が、端子の接続面方向(端子同士の対向方向と直交する方向)で導電粒子と接する絶縁粒子数よりも少ない絶縁粒子付導電粒子と言える。このような絶縁粒子付導電粒子は、上述の対向する端子に挟持されていない絶縁粒子付導電粒子の絶縁粒子欠落領域の向きが、端子に挟持される直前まで絶縁性樹脂によって保持され、端子に挟持された後もその向きが保持されたものと推察される。対向する端子に挟持されている絶縁粒子付導電粒子は、絶縁粒子欠落領域が対向する端子の少なくとも一方と接触しているため、導通安定性の上では好ましく、絶縁粒子欠落領域が対向する端子の双方と接触していることがより好ましい。
【0104】
また、この接続構造体において絶縁粒子欠落領域が端子同士の対向方向を向いた絶縁粒子付導電粒子は、上述のように、異方性導電フィルムにおいて絶縁粒子数が低減している領域A1又はA2を有する絶縁粒子付導電粒子に対応するから、異方性導電フィルムにおける前述の(N
A3+N
A4)>(N
A1+N
A2)の関係を満たしている。
【0105】
接続構造体における絶縁粒子欠落領域の絶縁粒子付導電粒子を概念的に説明すると、絶縁粒子付導電粒子を球とした場合に、中心角45°に対応する球の表面の一部領域が、その外側の中心角45°〜135°に対応する環状領域よりも絶縁粒子の面密度が低くなっている場合の当該中心角45°に対応する球の表面の一部領域といえる。
【0106】
この接続構造体において、対向する端子に挟持されていない絶縁粒子付導電粒子は、対向する電子部品の接続面のうち、電子部品における端子列の非形成領域で挟まれている、対向する電子部品間の絶縁粒子付導電粒子を含む。この場合の絶縁粒子付導電粒子は、例えば、対向する電子部品を第1電子部品と第2電子部品とした場合に、第1電子部品における端子列の非形成領域と第2電子部品における端子列の非形成領域により電子部品の対向方向で挟まれている絶縁粒子付導電粒子のことである。
【0107】
また、この接続構造体において、対向する端子に挟持されていない絶縁粒子付導電粒子は、電子部品に端子列が所定の端子間スペースで形成されている場合の、対向する電子部品の端子間スペース同士の間にある絶縁粒子付導電粒子を含む。
【0108】
言い換えると、対向する端子に挟持されていない絶縁粒子付導電粒子とは、接続構造体において、接続に寄与していない大多数の絶縁粒子付導電粒子を意味する。
【0109】
一般に、接続構造体において、対向する端子に挟持されていない絶縁粒子付導電粒子には、異方性導電接続時の加熱加圧により、加熱加圧前の状態に対して移動しているものが含まれ、向きが変わっているものもある。向きの変わる程度は、当該絶縁粒子付導電粒子の端子に対する位置、絶縁粒子層の粘度、加熱加圧条件等によって異なるが、接続構造体の絶縁粒子付導電粒子には、加熱加圧前の向きを維持しているものも含まれる。したがって、接続構造体の製造に使用した異方性導電フィルムが本発明の異方性導電フィルムであると、対向する端子に挟持されていない絶縁粒子付導電粒子の少なくとも一部には、絶縁粒子欠落領域が、対向する端子の対向方向を向いたものが含まれることとなり、本発明の接続構造体であることがわかる。特に、接続構造体において導電粒子欠落領域が、対向する端子の対向方向を向いた絶縁粒子付導電粒子が、ある領域に塊まって存在していると、その接続構造体は本発明の接続構造体であることが容易にわかる。
【0110】
異方性導電フィルムは電子部品の一方の外形にほぼ同じ大きさに裁断されて使用されることもあるが、一般には電子部品の一方の外形よりも大きく裁断されて使用される。つまり、接続に寄与しない(ツールから十分に離れている)領域を含む場合がある。そのため、対向した電子部品間の外側の異方性導電フィルムに端子同士の対向方向を向いた絶縁粒子欠落領域が存在する場合もあり、ここからも本発明の接続構造体の特徴を確認することができる。
【0111】
また、接続構造体の製造に用いた異方性導電フィルムにおいて絶縁粒子付導電粒子が規則配列している場合、接続構造体において、対向する端子に挟持されていない絶縁粒子付導電粒子にも配列の規則性の維持が見出されることもある。この場合には、この配列の規則性が見出された絶縁粒子付導電粒子において、絶縁粒子欠落領域が端子同士の対向方向を向いていることを容易に確認することができる。また、その製造に使用した異方性導電フィルムについて、容易に(N
A3+N
A4)>(N
A1+N
A2)を確認することができる。
【0112】
なお、本発明の接続構造体の製造過程の構造体であって、本発明の異方性導電フィルムが一方の電子部品に貼着されているが、他方の電子部品はまだ接続されていない状態の構造体(接続工程における中間品であり、換言すれば異方性導電フィルム貼着電子部品)でも、その異方性導電フィルム中の絶縁粒子付導電粒子は、上述の接続構造体における絶縁粒子付導電粒子と同様の特徴を有する。
【0113】
異方性導電フィルムを用いた電子部品の接続方法としては、異方性導電フィルムの樹脂層が絶縁性樹脂層5の単層からなる場合、各種基板などの第2電子部品に対し、異方性導電フィルムの絶縁粒子付導電粒子3が表面に埋め込まれている側から仮圧着し、仮圧着した異方性導電フィルムの絶縁粒子付導電粒子3が表面に埋め込まれていない側にICチップ等の第1電子部品を合わせ、熱圧着することにより製造することができる。異方性導電フィルムの絶縁性樹脂層に熱重合開始剤と熱重合性化合物だけでなく、光重合開始剤と光重合性化合物(熱重合性化合物と同一でもよい)が含まれている場合、光と熱を併用した圧着方法でもよい。このようにすれば、絶縁粒子付導電粒子の不用な移動を最小限に抑えることができる。また、絶縁粒子付導電粒子3が埋め込まれていない側を第2電子部品に仮貼りして使用してもよい。尚、第2電子部品ではなく、第1電子部品に異方性導電フィルムを仮貼りして使用することもできる。
【0114】
また、異方性導電フィルムの樹脂層が、絶縁性樹脂層5と低粘度絶縁性樹脂層6の積層体から形成されている場合、絶縁性樹脂層5を各種基板などの第2電子部品に仮貼りして仮圧着し、仮圧着した異方性導電フィルムの低粘度絶縁性樹脂層6にICチップ等の第1電子部品をアライメントして載置し、熱圧着する。異方性導電フィルムの低粘度絶縁性樹脂層6側を第1電子部品に仮貼りして使用してもよい。
【実施例】
【0115】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
実施例1〜10
(1)異方性導電フィルムの製造
表1に示した配合で、絶縁性樹脂層及び低粘度絶縁性樹脂層を形成する樹脂組成物をそれぞれ調製した。
【0116】
絶縁性樹脂層を形成する樹脂組成物をバーコータ−でフィルム厚さ50μmのPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上に表2に示す厚さの絶縁性樹脂層を形成した。同様にして、低粘度絶縁性樹脂層を、それぞれ表2に示す厚さでPETフィルム上に形成した。
【0117】
一方、絶縁粒子付導電粒子が平面視で
図1Aに示す正方格子配列で、粒子間距離が絶縁粒子付導電粒子の粒子径と等しくなり、個数密度28000個/mm
2となるように金型を作製した。即ち、金型の凸部パターン(個数密度28000個/mm
2)が正方格子配列で、格子軸における凸部のピッチが平均粒子径の2倍であり、格子軸と異方性導電フィルムの短手方向とのなす角度θが15°となる金型を作製し、公知の透明性樹脂のペレットを溶融させた状態で該金型に流し込み、冷やして固めることで、凹部が
図1Aに示す配列パターンの樹脂型を形成した。
【0118】
また、金型の凸部パターン(個数密度28000個/mm
2)をランダムにしたものを作成し、その金型を用いて凹部がランダムパターンとなる樹脂型を形成した。このとき、隣接する絶縁粒子付導電粒子の導電粒子間の距離が導電粒子の平均径の0.5倍以上になるように設定した。
【0119】
絶縁粒子付導電粒子として、金属被覆樹脂粒子(積水化学工業(株)、AUL703、平均粒子径3μm)の表面に、特開2014−132567号公報の記載に準じて絶縁性微粒子(平均粒子径0.3μm)を付着させたものを用意し、この絶縁粒子付導電粒子を樹脂型の凹部に充填し、その上に上述の絶縁性樹脂層を被せた。
【0120】
実施例1〜6では、この絶縁性樹脂層を60℃、0.5MPaで押圧し、樹脂型から絶縁性樹脂層を剥離することで絶縁粒子付導電粒子を絶縁性樹脂層に転着させた。この時の絶縁粒子付導電粒子の絶縁性樹脂層への埋込率(Lb/D)は、SEMによる断面観察で30%であった。また、絶縁粒子付導電粒子が転着した絶縁性樹脂層の表面の該絶縁粒子付導電粒子の周囲に凹みはなかった(
図2参照)。実施例7〜10では、実施例1〜6と同様に絶縁粒子付導電粒子を絶縁性樹脂層に転着させたが、転着後の絶縁粒子付導電粒子の周囲の絶縁性樹脂層に凹みができるように、絶縁粒子付導電粒子を絶縁性樹脂層に押圧するときの温度を60℃よりも低くした。
【0121】
次に、実施例3〜10では、絶縁性樹脂層上の絶縁粒子付導電粒子を押圧することで絶縁粒子付導電粒子を絶縁性樹脂層に押込率(Lb/D)100%で押し込んだ。この押し込み時の温度及び圧力は、絶縁粒子付導電粒子を樹脂型から絶縁性樹脂層へ転着させるときの前述の温度及び圧力と同様とした。その結果、実施例3〜6では押し込み後の絶縁粒子付導電粒子の周囲の絶縁性樹脂層に凹みはなく、実施例7〜10では押し込み後の絶縁粒子付導電粒子の周囲の絶縁性樹脂層に凹みが形成されていた(
図3A参照)。
【0122】
実施例1、2(埋込率30%)、及び実施例3、4(埋込率100%)では、絶縁性樹脂層の、絶縁粒子付導電粒子の転着面に低粘度絶縁性樹脂層を積層し、これを異方性導電フィルムとした(
図5参照)。
【0123】
一方、実施例5〜10(埋込率100%)では低粘度絶縁性樹脂層を積層しなかった。このうち、実施例7〜10では絶縁粒子付導電粒子を絶縁性樹脂層に押し込んだ状態で、絶縁粒子付導電粒子の周囲の絶縁性樹脂層に凹みが形成されていたが、実施例9、10は凹みのある絶縁性樹脂層を、異方性導電接続に支障をきたさない条件で加熱押圧することにより凹みをなくした。
【0124】
比較例1〜4
比較例1〜4では、金属被覆樹脂粒子(積水化学工業(株)、AUL703、平均粒子径3μm)の全面に絶縁コートを施した絶縁コート導電粒子(コート膜厚0.1〜0.5μm)を上述の実施例の絶縁粒子付導電粒子に代えて使用し、絶縁コート導電粒子が表2に示した配列又は配置となるように上述の樹脂型に充填し、絶縁性樹脂層に絶縁コート導電粒子を転着し(押込率30%)、さらに、比較例3、4では絶縁性樹脂層に転着した絶縁コート導電粒子を押込率100%となるように絶縁性樹脂層に押し込んだ。そして、絶縁コート導電粒子の転着面又は押し込み面に低粘度絶縁性樹脂層を積層した。
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
(2)粒子の配置状態
(2−1)独立粒子個数割合
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、各実施例及び比較例の異方性導電フィルムの表裏のフィルム面(低粘度絶縁性樹脂層を積層したものについては、低粘度絶縁性樹脂層側表面とその反対面)のそれぞれについて100個の絶縁粒子付導電粒子又は絶縁コート導電粒子を観察し、互いに接触していない絶縁粒子付導電粒子又は絶縁コート導電粒子の個数を計測し、その個数の全数に対する割合(即ち、独立粒子個数割合)を求めた。その結果、各実施例及び比較例において、独立粒子個数割合は99%を上回っていた。
【0128】
(2−2)絶縁粒子被覆率
実施例の異方性導電フィルムの製造に使用した絶縁粒子付導電粒子(絶縁性樹脂層に埋め込む前の絶縁粒子付導電粒子)における絶縁粒子被覆率を求めた。絶縁粒子被覆率は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、絶縁粒子付導電粒子100個を観察し、各絶縁粒子付導電粒子について導電粒子1個当たりの絶縁粒子の個数を計測し、計測された個数と、絶縁粒子付導電粒子1個の平面視における面積と、絶縁粒子1個の平面視における面積から算出した。その結果、異方性導電フィルムの製造に使用した絶縁粒子付導電粒子における絶縁粒子被覆率は67%であった。
【0129】
(2−3)異方性導電フィルム作製後の絶縁粒子の被覆状態
実施例の異方性導電フィルムに分散している絶縁粒子付導電粒子における絶縁粒子の被覆状態を走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察により求めた。この断面観察で、絶縁粒子付導電粒子100個を計測し、
図2に示した領域A1、A2、A3、A4における絶縁粒子の個数、N
A1、N
A2、N
A3、N
A4の大小関係を調べた。その結果、各実施例において領域A3と領域A4における絶縁粒子の個数に格別の差異はなかった。また、実施例3〜10では実施例1に比して、領域A1にある絶縁粒子の個数が、領域A2にある絶縁粒子の個数に比して著しく低減していた。
【0130】
(3)評価
各実施例及び比較例の異方性導電フィルムを、接続および評価に十分な面積で裁断した後、裁断した異方性導電フィルムを使用し、以下に説明するように、(a)初期導通抵抗、(b)導通信頼性、(c)ショート発生率、(d)導電粒子捕捉性、を測定ないし評価した。結果を表2に示す。
【0131】
(a)初期導通抵抗
各実施例及び比較例の異方性導電フィルムを、導通特性の評価用ICとガラス基板との間に挟み、加熱加圧(180℃、60MPa、5秒)して各評価用接続物を得、得られた評価用接続物の導通抵抗を測定し、測定された初期導通抵抗を次の基準で評価した。
A:0.3Ω以下
B:0.3Ω超、0.4Ω以下
C:0.4Ω超
B評価であれば実用上問題はない。A評価であれば、より好ましい。
【0132】
ここで、評価用ICとガラス基板は、それらの端子パターンが対応しており、サイズは次の通りである。また、評価用ICとガラス基板を接続する際には、異方性導電フィルムの長手方向とバンプの短手方向を合わせた。
【0133】
導通特性の評価用IC
外形 1.8×20.0mm
厚み 0.5mm
バンプ仕様 サイズ30×85μm、バンプ間距離50μm、バンプ高さ15μm
【0134】
ガラス基板
ガラス材質 コーニング社製1737F
外径 30×50mm
厚み 0.5mm
電極 ITO配線
【0135】
(b)導通信頼性
(a)で作製した評価用接続物を、温度85℃、湿度85%RHの恒温槽に500時間おいた後の導通抵抗を、初期導通抵抗と同様に測定し、測定された導通抵抗を次の基準で評価した。
【0136】
S:3.0Ω以下
A:3.0Ω超、4.0Ω以下
B:4.0Ω超、6.0Ω以下
C:6.0Ω超
B評価であれば実用上問題はない。A評価以上であれば、より好ましい。
【0137】
(c)ショート発生率
各実施例及び比較例の異方性導電フィルムを、絶縁性試験評価用IC(7.5μmスペースの櫛歯TEG(test element group))と、端子パターンが対応するガラス基板との間に挟み、初期導通抵抗と同様に加熱加圧して評価用接続物を得、得られた評価用接続物におけるショート発生率をデジタルマルチメータ(デジタルマルチメーター7561、横河電機(株))で測定した。この絶縁性試験評価用ICの仕様を以下に示す。
【0138】
絶縁性試験評価用IC
外形 1.5×13mm
厚み 0.5mm
バンプ仕様 金メッキ、サイズ25×140μm、バンプ間距離7.5μm、バンプ高さ15μm
【0139】
測定されたショート発生率を次の基準で評価した。
A:50ppm未満
B:50ppm以上200ppm以下
C:200ppm超
B評価であれば実用上問題はない。
【0140】
(d)導電粒子捕捉性
導電粒子捕捉性の評価用ICを使用し、この評価用ICと、端子パターンが対応するITOコーティング基板とを、アライメントを6μmずらして加熱加圧(180℃、60MPa、5秒)し、評価用ICのバンプと基板の端子とが重なる6μm×66.6μmの領域の100個について導電粒子の捕捉数を計測し、最低捕捉数を求め、次の基準で評価した。
【0141】
導電粒子捕捉性の評価用IC
外形 1.6×29.8mm
厚み 0.3mm
バンプ仕様 サイズ12×66.6μm、バンプピッチ22μm(L/S=12μm/10μm)、バンプ高さ12μm
【0142】
導電粒子捕捉性評価基準
OK:3個以上
NG:3個未満
【0143】
表2から、実施例1〜10の異方性導電フィルムでは、絶縁粒子付導電粒子における絶縁粒子の個数密度が領域A3、A4よりも領域A2、A1が低く、特に、異方性導電フィルムの製造時に絶縁粒子付導電粒子を絶縁性樹脂層に押し込んだ実施例3〜10では、絶縁粒子の個数密度が領域A2よりも領域A1で顕著に低かった。その結果、導電粒子にフィルム厚方向で接する領域A2、A1の絶縁粒子2の個数密度が、導電粒子1にフィルム面方向で接する領域A3、A4の絶縁粒子2の個数よりもさらに少なくなり、実施例3、4は、実施例1、2に比して導通信頼性が優れていることがわかる。これに対し、樹脂コート導電粒子を用いた比較例1〜4では導通信頼性が劣っていた。
【0144】
また、表2の結果では、実施例1と2の対比、実施例3と4の対比、実施例5と6の対比、実施例7と8の対比、実施例9と10の対比、比較例1と2の対比、比較例3と4の対比により、絶縁粒子付導電粒子を正方格子に配列させた場合とランダムに配置した場合や、絶縁コート導電粒子を正方格子に配列させた場合とランダムに配置した場合とで導通抵抗、ショート発生率、導電粒子捕捉性について差異が見られないが、捕捉性の評価において、絶縁粒子付導電粒子又は絶縁コート導電粒子を正方格子に配列させた方がランダムに配置した場合より圧痕を確認しやすかった。
【0145】
なお、絶縁粒子付導電粒子の周囲の絶縁性樹脂層に凹みが無い実施例5、6も、絶縁粒子付導電粒子の周囲の絶縁性樹脂層に凹みがある実施例7、8も、その凹みを加熱押圧して解消した実施例9、10も、初期導通抵抗、導通信頼性、ショート発生率及び導電粒子捕捉性の評価は良好であった。このことから、本実施例では、凹みの有無によらず、絶縁粒子付導電粒子が樹脂流動によって無用に移動しなかったことがわかる。
絶縁性樹脂層の表裏の面のうち、絶縁粒子付導電粒子が近接している面から絶縁粒子付導電粒子の最深部までの距離Lbと絶縁粒子付導電粒子の粒子径Dとの比率(Lb/D)が30〜105%となるように、平板又はローラーで押し込む請求項5記載の製造方法。
前記傾斜では、絶縁粒子付導電粒子の近傍の絶縁性樹脂層の表面が、前記接平面に対して欠けており、前記起伏では、絶縁粒子付導電粒子の直上の絶縁性樹脂層の樹脂量が、前記絶縁粒子付導電粒子の直上の絶縁性樹脂層の表面が該接平面にあるとしたときに比して少ない請求項10記載の製造方法。