【解決手段】半導体装置1は、表面及び裏面を有する半導体層と、半導体層の表面側に形成され、主電流側の第1単位セル34を複数含む第1素子部と、半導体層の表面側に形成され、電流検出側の第2単位セル40を含む電流センス部26と、第1素子部の上方に配置された第1素子側表面電極5と、電流センス部の上方を少なくとも一部に含むように配置されたセンス側表面電極6と、第1素子側表面電極に接合された第1素子側ワイヤと、センス側表面電極に接合され、第1素子側ワイヤよりも細いセンス側ワイヤとを含む。第2単位セルは、センス側表面電極の下方、かつ、センス側ワイヤの接合部分の直下部を避けた位置に配置されている。
前記センス側ボディウェルにおいて、前記フィールド形成部に選択的に、前記センス側ボディウェルよりも高い不純物濃度を有する第1導電型の不純物領域が形成されている、請求項17に記載の半導体装置。
前記センス側表面電極において前記パッシベーション膜で覆われた領域は、前記第1方向に沿う一対の第1辺と、前記第1方向に直交する前記第2方向に沿う一対の第2辺を有する平面視四角形状に形成された被覆領域であり、
前記センス側パッドは、前記被覆領域の前記第1辺の側方で前記第1辺に沿って前記第1辺よりも長く延びる第1部分と、前記第1部分から前記第2辺に沿って延び、前記被覆領域の前記第2辺の側方にオーバーラップする第2部分とを含む、請求項23に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置1の模式的な平面図である。
半導体装置1は、平面視四角形状の本発明の半導体層の一例としての半導体基板2を含む。半導体基板2は、平面視において四辺3A,3B,3C,3Dを有している。
半導体基板2上には、複数の表面電極膜4が互いに分離して形成されている。複数の表面電極膜4は、ソース側表面電極5、センス側表面電極6およびゲート側表面電極7を含む。ソース側表面電極5が、半導体基板2上の領域の大部分に形成され(
図1のハッチング領域および後述するソース側パッド14A,14B,14Bの領域)、そのソース側表面電極5の一部が除去された領域8,9が、センス側表面電極6およびゲート側表面電極7の形成領域である。当該除去領域8,9は、いずれも、ソース側表面電極5で囲まれて形成されている。
【0007】
半導体基板2上には、複数の表面電極膜4を一括して覆うパッシベーション膜10が形成されている。パッシベーション膜10は、複数のパッド開口11,12,13を有している。ソース側表面電極5、センス側表面電極6およびゲート側表面電極7は、それぞれ、パッド開口11,12,13からソース側パッド14A,14B、センス側パッド15およびゲート側パッド16として露出している。
【0008】
ソース側パッド14A,14Bは、互いに分離して複数配置されている。
図1では、半導体基板2上に3つのソース側パッド14A,14B,14Bが設けられている。一つのソース側パッド14Aが半導体基板2の一辺3Aに沿う方向の中央部において当該一辺3A寄りに配置され、当該ソース側パッド14Aの両側に一つずつ、残りのソース側パッド14B,14Bが配置されている。両側のソース側パッド14B,14Bは、中央のソース側パッド14Aに対して一辺3Aの対辺3C側に延びる延出部17,17を有している。当該延出部17は、互いに間隔を空けて対向しており、中央のソース側パッド14Aと隣り合う部分にゲート側パッド16を配置する領域18を区画している。なお、複数のソース側パッド14A,14Bは、外観上は互いに分離されているが、パッシベーション膜10の下方において、
図1のハッチング領域を介して一体のソース側表面電極5として互いに繋がっている。
【0009】
センス側パッド15は、四角形状の半導体基板2の一つの角部のみに配置されている。これにより、半導体基板2上の省スペース化を図ることができる。このセンス側パッド15は、半導体基板2の辺3B,3Dに沿って長手な形状に形成されており、両側のソースパッド14B,14Bの一方に取り囲まれている。センス側パッド15は、
図1に示すように、その周囲の一部がソース側パッド14Bに取り囲まれていてもよいし、その周囲の全周がソース側パッド14Bに取り囲まれていてもよい(図示せず)。
【0010】
ゲート側パッド16は、互いに向き合うソース側パッド14B,14Bの間の領域18に配置されている。ゲート側パッド16は、センス側パッド15と同様に、半導体基板2の辺3B,3Dに沿って長手な形状に形成されている。
ゲート側表面電極7は、ゲート側パッド16から延びるゲートフィンガー19をさらに含む。ゲートフィンガー19は、パッシベーション膜10で覆われている。ゲートフィンガー19は、半導体基板2の一辺3Cからその対辺3Aに向かう方向にソース側表面電極5の中央を貫くように延びる中央部20と、半導体基板2の周縁(
図1では、辺3B,3C,3D)に沿って延び、ソース側表面電極5を取り囲む周辺部21とを含む。
【0011】
ソース側パッド14A,14B、センス側パッド15およびゲート側パッド16には、それぞれ、ソース側ワイヤ22、センス側ワイヤ23およびゲート側ワイヤ24が接続されている。ワイヤ22〜24としては、たとえば、アルミニウムワイヤが使用される。アルミニウムワイヤは、通常、ボールボンディングではなく細長いウェッジボンディングで接合される。そのため、
図1のように、センス側パッド15およびゲート側パッド16を互いに同じ方向に長手な形状にしておけば、センス側パッド15およびゲート側パッド16に対して同じ方向からワイヤ23,24を延ばして接合できる。その結果、パッケージを組み立てるときに容易に配線することができる。
【0012】
また、ワイヤ22〜24の径としては、たとえば、ソース側ワイヤ22の径が300μm〜500μmであり、センス側ワイヤ23およびゲート側ワイヤ24の径が100μm〜200μmであってもよい。
なお、ソース側パッド14A,14B、センス側パッド15およびゲート側パッド16と外部とを接続する配線材としては、ボンディングワイヤである必要はなく、たとえば、ボンディングプレートやボンディングリボン等の他の配線材であってもよい。
【0013】
図2は、
図1の破線IIで囲まれた領域の拡大図である。
図2に示すように、センス側表面電極6は平面視長方形状に形成されているが、外観上は、一部(
図2では、一つの角部)がパッシベーション膜10で覆われた状態で平面視略長方形状のセンス側パッド15として露出している。センス側パッド15の長辺の長さL1および短辺の長さL2は、それぞれ、1.2mm以下および0.6mm以下であることが好ましい。これにより、センス側パッド15のサイズを0.72mm
2以下に留めることができるので、センス側単位セル40(後述)のオン抵抗の増加を抑制することができる。また、短辺の長さL2に対して長辺の長さL1を2倍程度にして細長いセンス側パッド15とすることによって、ウェッジボンディングによってボンディングワイヤ(センス側ワイヤ23)を接合し易くすることができる。
【0014】
パッシベーション膜10で覆われた領域25は、平面視長方形状に形成されており、一方の短辺および長辺が、それぞれ、センス側パッド15の短辺および長辺の延長部を構成している。なお、当該被覆領域25は、平面視長方形である必要はなく、その他の形状(たとえば、正方形、円形、三角形等)であってもよい。むろん、その位置も、センス側表面電極6の角部である必要はなく、たとえば、センス側表面電極6の辺の途中であってもよい。
【0015】
被覆領域25の直下部に、多数のセンス側単位セル40(後述)の集合体としての電流センス部26が形成されている。一方、センス側パッド15の直下部には、電流センス部26は形成されていない。つまり、この実施形態では、電流センス部26の全体が、センス側パッド15の直下部を避けた位置に形成されている。
一方、センス側表面電極6の周囲には、多数の主電流側単位セル34(後述)の集合体としてのソース部27が形成されている。ソース部27は、ソース側表面電極5の直下部に形成され、平面視においてセンス側表面電極6を取り囲むように形成されている。なお、図示はしないが、ソース部27は、
図1に示すソース側表面電極5の全体に亘ってその直下部に形成されていてもよい。
【0016】
図3は、
図2の破線IIIで囲まれた領域の拡大図である。
図4は、
図3のIV−IV切断面における断面図である。
図5は、
図1のゲート側パッド16周辺の拡大図である。
図6は、
図5のVI−VI切断面における断面図である。
図7は、
図5のVII−VII切断面における断面図である。
図8は、
図5のVIII−VIII切断面における断面図である。なお、
図4では、
図3の横方向の繰り返し部分を一部省略して示している。
【0017】
図4および
図6〜
図8に示すように、半導体基板2は、ベース基板28と、ベース基板28上のエピタキシャル層29とを含むSiCエピタキシャル基板であってもよい。この実施形態では、半導体基板2は、n
+型SiCからなるベース基板28(たとえば、濃度は1×10
17cm
−3〜1×10
19cm
−3)と、n
−型SiCからなるエピタキシャル層29(たとえば、濃度は1×10
14cm
−3〜1×10
17cm
−3)とを含む。
【0018】
n
−型エピタキシャル層29の表面部には、p
−型ウェル30(たとえば、濃度は1×10
14cm
−3〜1×10
19cm
−3)が形成されている。p
−型ウェル30は、主電流側p
−型ボディウェル31、センス側p
−型ボディウェル32およびゲート側p
−型ウェル33を含む。主電流側p
−型ボディウェル31およびセンス側p
−型ボディウェル32は、
図4に示すように、互いに分離して形成されている。ゲート側p
−型ウェル33は、
図6に示すように、主電流側p
−型ボディウェル31と互いに繋がっている。
【0019】
主電流側p
−型ボディウェル31は、本発明の第1単位セルの一例としての主電流側単位セル34を構成するセル形成部35と、比較的広い領域のフィールド形成部36とを含む。つまり、各セル形成部35が、主電流が流れる最小単位である主電流側単位セル34を定義している。
図3および
図5に示すように、セル形成部35は、行列状に多数配列されており、これによりソース部27が構成されている。
【0020】
フィールド形成部36は、多数のセル形成部35を取り囲むように形成されており、ソース部27の外周部で隣り合うセル形成部35に跨ってこれらを接続している。
主電流側p
−型ボディウェル31は、行列状のセル形成部35によって区画された格子領域の交差部に形成された接続部37をさらに含む。この接続部37は、ソース部27の内部において隣り合うセル形成部35同士を接続する。
【0021】
このように、フィールド形成部36および接続部37によって、ソース部27の外周部および内部においてセル形成部35が電気的に接続されている。これにより、多数のセル形成部35が互いに同電位に保持される。
セル形成部35の内方領域にはn
+型ソース領域38が形成されており、このn
+型ソース領域38(たとえば、濃度は1×10
17cm
−3〜1×10
21cm
−3)の内方領域にp
+型ボディコンタクト領域39(たとえば、濃度は1×10
17cm
−3〜1×10
21cm
−3)が形成されている。
【0022】
センス側p
−型ボディウェル32は、本発明の第2単位セルの一例としてのセンス側単位セル40を構成するセル形成部41と、比較的広い領域のフィールド形成部42とを含む。つまり、各セル形成部41が、主電流が流れる最小単位であるセンス側単位セル40を定義している。
図3に示すように、セル形成部41は、センス側パッド15の直下部を避けた位置に行列状に多数配列されており、これにより電流センス部26が構成されている。セル形成部41は、主電流側のセル形成部35と同じセル構造(サイズおよびピッチ)を有している。
【0023】
フィールド形成部42は、多数のセル形成部41を取り囲むように形成されており、電流センス部26の外周部で隣り合うセル形成部41に跨ってこれらを接続している。
センス側p
−型ボディウェル32は、行列状のセル形成部41によって区画された格子領域の交差部に形成された接続部43をさらに含む。この接続部43は、電流センス部26の内部において隣り合うセル形成部41同士を接続する。
【0024】
このように、フィールド形成部42および接続部43によって、電流センス部26の外周部および内部においてセル形成部41が電気的に接続されている。これにより、多数のセル形成部41が互いに同電位に保持される。
セル形成部41の内方領域にはn
+型ソース領域44(たとえば、濃度は1×10
17cm
−3〜1×10
21cm
−3)が形成されており、このn
+型ソース領域44の内方領域にp
+型ボディコンタクト領域45(たとえば、濃度は1×10
17cm
−3〜1×10
21cm
−3)が形成されている。
【0025】
また、フィールド形成部42は、セル形成部41の外周部からセンス側パッド15の直下部にまで延びるように形成されている。この実施形態では、フィールド形成部42は、センス側パッド15の直下部全体に亘って広がっている。つまり、
図2において、被覆領域25を除く平面視略長方形状のセンス側表面電極6の直下部全体に亘って形成されている。
【0026】
また、センス側パッド15の直下部においてフィールド形成部42の表面部には、p
+型領域46(たとえば、濃度は1×10
17cm
−3〜1×10
21cm
−3)が形成されている。p
+型領域46は、センス側表面電極6と直接接続されている。このp
+型領域46を形成しておくことによって、センス側パッド15の直下部の電位を安定的に同じ電位とすることができる。
【0027】
図6に示すように、ゲート側p
−型ウェル33は、ゲート側パッド16の直下部に形成されている。ゲート側p
−型ウェル33の表面部には、p
+型領域47(たとえば、濃度は1×10
17cm
−3〜1×10
21cm
−3)が形成されている。
半導体基板2上には、ゲート絶縁膜48が形成されており、このゲート絶縁膜48上にゲート電極49が形成されている。ゲート絶縁膜48は、たとえば酸化シリコン(SiO
2)からなり、ゲート電極49は、たとえばポリシリコンからなる。
【0028】
ゲート電極49は、電流センス部26およびソース部27において、行列状の単位セル34,40で区画された格子領域に沿って形成され、隣り合う単位セル34,40に跨る機能部52を含む。これにより、ゲート電極49は、ゲート絶縁膜48を介して、各単位セル34,40のチャネル領域50,51に対向している。当該チャネル領域50,51は、p
−型ボディウェル31,32のセル形成部35,41における、n
+型ソース領域38,44の外方領域である。
【0029】
ゲート電極49は、
図4に示すように、各単位セル34,40のチャネル領域50,51に対向する機能部52の他に、接続部53をさらに含む。接続部53は、表面電極膜4の下方でソース側表面電極5とセンス側表面電極6との間の除去領域8を横切って、電流センス部26およびソース部27に跨っている。この接続部53によって、電流センス部26およびソース部27の機能部52同士の電気的な接続が確保される。つまり、ゲート電極49は、電流センス部26およびソース部27の間で共通の電極となっている。
【0030】
一方、ゲート電極49は、
図7および
図8に示すように、半導体装置1のゲートフィンガー19において、ゲート側表面電極7に接続されている。すなわち、ゲート電極49は、ソース部27からゲートフィンガー19の下方に延びるように形成されており、ゲートフィンガー19の直下部にコンタクト部62を有している。これにより、ゲート側パッド16に与えられたゲート電圧は、コンタクト部62(
図7)および接続部53(
図4)を介して、電流センス部26のゲート電極49にも印加される。
【0031】
ゲート絶縁膜48は、ゲート電極49と半導体基板2との絶縁を確保するためゲート電極49の下方に配置されるが、この実施形態ではさらに、センス側パッド15およびゲート側パッド16の直下部にも形成されている。このゲート絶縁膜48は、
図4および
図7に示すように、ゲート電極49の機能部52の直下部のゲート絶縁膜48に連なる延長部で構成されている。
【0032】
半導体基板2上には、ゲート電極49を覆うように層間絶縁膜54が形成されている。層間絶縁膜54は、たとえば酸化シリコン(SiO
2)からなり、好ましくは、P(リン)またはB(ホウ素)を含有している。つまり、層間絶縁膜54は、BPSG(Boron Phosphorus Silicon Grass)やPSG(Phosphorus Silicon Grass)であってもよい。SiO
2膜は作製が容易で、また、当該SiO
2膜がP(リン)またはB(ホウ素)を含有していれば、成膜後にリフローすることもできる。リフローによって層間絶縁膜54(SiO
2膜)を容易に平坦化できるので、電流センス部26の放熱性に影響を与え得るセンス側ワイヤ23を設計通りに接合し易くすることができる。
【0033】
層間絶縁膜54は、電流センス部26およびソース部27においてゲート電極49を覆う第1部分55と、センス側パッド15の直下部に配置された第2部分56と、ゲート側パッド16の直下部に配置された第3部分57とを一体的に含む。センス側パッド15およびゲート側パッド16の各直下部の層間絶縁膜54を厚くすることによって、層間絶縁膜54に十分な耐衝撃性(たとえば、ワイヤボンディング耐性)を与えることができる。
【0034】
層間絶縁膜54上には、表面電極膜4(ソース側表面電極5、センス側表面電極6およびゲート側表面電極7)が形成されている。ソース側表面電極5は、層間絶縁膜54およびゲート絶縁膜48を貫通してn
+型ソース領域38およびp
+型ボディコンタクト領域39に接続されている。センス側表面電極6は、層間絶縁膜54およびゲート絶縁膜48を貫通してn
+型ソース領域44およびp
+型ボディコンタクト領域45に接続されている。ゲート側表面電極7(ゲートフィンガー19)は、層間絶縁膜54を貫通してゲート電極49に接続されている。
【0035】
また、表面電極膜4は、たとえば、下側(半導体基板2側)からTi、TiNおよびAlCuの順に積層した積層構造からなる電極膜であってもよい。表面電極膜4の最表面をAlCuにすることによって、Alを用いる場合に比べて、当該電極膜4に十分な耐衝撃性(たとえば、ワイヤボンディング耐性)を与えることができる。
表面電極膜4上には、パッシベーション膜10が形成されている。パッシベーション膜10は、たとえば、窒化シリコン(SiN)からなっていてもよい。パッシベーション膜10には、前述したようにパッド開口11〜13が形成されている。
【0036】
半導体基板2の裏面には、ドレイン電極58が形成されている。ドレイン電極58は、半導体基板2側からTi、Ni、AuおよびAgの順に積層した積層構造からなる電極膜であってもよい。また、ドレイン電極58は、電流センス部26およびソース部27の間で共通の電極となっている。
次に、
図9を参照して一例として半導体装置1における電流検出の方法を説明する。
図9は、半導体装置1における電流検出を説明するための回路図である。
【0037】
図9に示すように、半導体装置1は、主電流側のソース部27と電流検出側の電流センス部26とを一つのチップ内に備えている。電流センス部26のソースSには、検出抵抗59が接続されている。検出抵抗59は、たとえば、半導体装置1をモジュールに組み込む際に当該モジュールに一緒に組み込まれるものであってよいし、半導体装置1の内部に組み込んでいてもよい。前述したように、ゲートGおよびドレインDは、電流センス部26およびソース部27で共通のものとなっている。
【0038】
各ソースS−ドレインD間に電圧を印加した状態でゲートGに閾値以上の電圧が印加されることによって、ソースS−ドレインD間に電流が流れ、半導体装置1がオン状態となる。これにより、電流センス部26に検出電流I
SENSEが流れる一方、ソース部27には主電流I
MAINが流れる。
主電流I
MAINが短絡電流になっているか否かは、検出抵抗59の電圧V
SENSEが一定の閾値を超えたか否かを監視することによって判別される。検出抵抗59の抵抗R
SENSEが一定であることから、電圧V
SENSEは検出電流I
SENSEの増加に伴って増加する。したがって、電圧V
SENSEが閾値を超えるということは、過剰な検出電流I
SENSEが流れていることを意味し、延いては、電流センス部26とソース部27との間のセンス比に基づいて算出される主電流の電流値I
MAINも過剰になっていることを表している。
【0039】
上記のような検出方法においては、実際に流れた主電流I
MAINと、検出電流I
SENSEにセンス比を乗じることによって算出される主電流I
MAINとが一致していれば、当該短絡検出を精度よく行うことができ、適切なタイミングでゲート電圧を遮断することができる。
しかしながら、
図1に示すように、ソース側パッド14A,14Bは比較的大きく当該パッド14A,14Bに対するソース側ワイヤ22の占有面積が小さい一方、センス型パッド15は比較的小さいため、当該パッド15に対するセンス側ワイヤ23の占有面積が大きくなる。これにより、ワイヤ22,23を介する熱の逃げ量に差が生じるため、ソース部27と電流センス部26との間のオン抵抗に生じる誤差が大きくなる可能性がある。その結果、実際には主電流I
MAINが短絡電流となっていないのに、電流検出側に過剰な検出電流I
SENSEが流れる場合がある。この場合、短絡検出は、あくまでも電流検出側の検出抵抗59の電圧V
SENSEに基づいているので、必要がなくとも短絡と判別し、ゲート電圧が遮断されるおそれがある。
【0040】
そこで、この半導体装置1によれば、
図2に示すように、電流センス部26がセンス側パッド15の直下部を避けた位置に配置されている。これにより、センス側ワイヤ23(
図1)がセンス側パッド15に接合されている場合に、電流センス部26とセンス側ワイヤ23との間に一定の距離を保つことができるので、電流センス部26で発生した熱がセンス側ワイヤ23に優先的に伝わって逃げることを抑制することができる。そのため、ソース部27の主電流側単位セル34と電流センス部26のセンス側単位セル40との間のオン抵抗に生じる誤差を小さくすることができる。また、電流センス部26がセンス側パッド15の直下部にないので、センス側ワイヤ23をセンス側パッド15に接合する際の衝撃が電流センス部26に直接伝わることを防止でき、電流センス部26の破壊を抑制することもできる。これらの結果、電流センス部26による主電流の電流値の検出精度を向上させることができる。
【0041】
そして、このように電流センス部26をセンス側パッド15の直下部を避けた位置に配置することは、SiCからなる半導体基板2を使用することによって達成できるものである。つまり、Si半導体デバイスでは、単位面積あたりに流すことができる電流量が小さいため、大電流を流す面積の大きいソース部に対し、検出精度が高い適切なセンス比(1000〜2000程度)とするためには、ある程度大きなセンス部のセル面積が必要であることから、避けた位置に形成することは難しい。これに対し、SiC半導体デバイスでは、単位面積あたりに流すことができる電流量が大きいため、ソース部に対し、小さなセル面積のセンス部でも適切なセンス比を確保できることから、避けた位置に形成することができる。
【0042】
また、この実施形態では、
図3に示すように、電流センス部26がソース部27に囲まれているので、電流センス部26の発熱量をソース部27に近づけることができる。そのため、発熱量の違いにより発生するオン抵抗の誤差を小さくすることができる。
また、この実施形態では、
図2に示すように、電流センス部26の全体がパッシベーション膜10の被覆領域25で覆われており、半導体装置1の外側から見て電流センス部26の直上部とセンス側パッド15とが明確に区別されている。そのため、センス側ワイヤ23を誤って電流センス部26の直上部に接合することを防止することができる。電流センス部26とセンス側ワイヤ23との間に一定の距離を確実に保つことができる。
【0043】
また、この実施形態では、
図4および
図5に示すように、層間絶縁膜54は、センス側パッド15の直下部に、比較的厚い(たとえば、1μm以上)第2部分56を有している。これにより、センス側ワイヤ23をセンス側パッド15に接合する際に電流センス部26に伝わる衝撃を軽減することができる。その結果、主電流の電流値の検出精度の信頼性を確保することができる。
【0044】
次に、
図10を参照して、半導体装置1の製造方法を説明する。
たとえば、まず、エピタキシャル成長によって、n
+型ベース基板28上にn
−型エピタキシャル層29が形成されて半導体基板2が形成される(ステップS1)。
次に、半導体基板2の表面部に、p型不純物イオンが選択的に注入されることによって、p
−型ウェル30が形成される(ステップS2)。
【0045】
次に、各セル形成部35,41に、n型不純物イオンが選択的に注入されることによって、n
+型ソース領域38,44が形成される(ステップS3)。
次に、p
−型ウェル30に、p型不純物イオンが選択的に注入されることによって、p
+型ボディコンタクト領域39,45およびp
+型領域46,47が形成される(ステップS4)。
【0046】
次に、たとえば熱酸化によって、半導体基板2の表面に、ゲート絶縁膜48が形成される(ステップS5)。
次に、たとえばCVD法によって、半導体基板2上にポリシリコンが堆積され、パターニングすることによって、ゲート電極49が形成される(ステップS6)。
次に、たとえばCVD法によって、半導体基板2上に層間絶縁膜54が形成される(ステップS7)。
【0047】
次に、層間絶縁膜54およびゲート絶縁膜48を貫通するコンタクトホールが形成された後、たとえばスパッタ法によって、表面電極膜4が形成される(ステップS8,S9)。
次に、表面電極膜4を覆うパッシベーション膜10が形成され、その後、パターニングによって、パッド開口11,12,13が形成される(ステップS10,S11)。
【0048】
こうして、上記した半導体装置1が得られる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は他の形態で実施することもできる。
たとえば、半導体装置1のゲート構造は、
図4に示したプレーナゲート構造に限らず、
図11に示すようなトレンチゲート構造であってもよい。トレンチゲート構造では、半導体基板2にゲートトレンチ60が形成され、その内部にゲート電極49が埋め込まれている。この場合、ゲート電極49が半導体基板2上に凸になっていないので、層間絶縁膜54の第1部分55および第2部分56は、互いに同じ厚さであってもよい。
【0049】
また、電流センス部26は、その全体がパッシベーション膜10で覆われている
図2の構成である必要はなく、
図12に示すように、その一部のみがパッシベーション膜10で覆われていてもよい。この場合、センス側パッド15の直下部に電流センス部26が部分的に重なるが、センス側パッド15におけるセンス側ワイヤ23の接合領域61を、電流センス部26を避けた位置に仮想的に設定しておけばよい。つまり、本発明のセンス側接合領域は、必ずしもセンス側パッド15と一致していなくてもよい。
【0050】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
前述の実施形態からは、以下の課題および発明を抽出することも可能である。
たとえば、従来において、電流センス部は、一般的には、主電流が流れるソース部よりも小面積で形成されている。電流センス部とソース部との面積比は、主電流を検出する際のセンス比を定義する。そして、主電流の電流値は、電流センス部に実際に流れた電流値に当該センス比を乗じることによって算出される。
【0051】
面積以外の条件が全く同じなら、センス比を考慮するだけで主電流の電流値を精度よく検出できるかもしれない。しかしながら、実際には、電流センス部およびソース部が置かれる条件に関して異なる点が存在し、当該異なる点が検出精度に影響を与えている。
たとえば、ソース部のパッドは比較的大きく当該パッドに対するボンディングワイヤの占有面積が小さい一方、電流センス部のパッドは比較的小さいため、当該パッドに対するボンディングワイヤの占有面積が大きくなる。これにより、ボンディングワイヤを介する熱の逃げ量に差が生じるため、ソース部と電流センス部との間のオン抵抗に生じる誤差が大きくなる可能性がある。このオン抵抗の誤差は、主電流の電流値の検出精度に影響を与えるものである。
【0052】
したがって、本開示は、電流センス部からセンス側表面電極に接合される配線材への熱の逃げを抑制することによって、電流センス部による主電流の電流値の検出精度を向上させることができるSiC半導体装置を提供してもよい。
本開示から抽出される半導体装置は、SiCからなる半導体層と、前記半導体層に形成され、主電流側の第1単位セルを含むソース部と、前記半導体層に形成され、電流検出側の第2単位セルを含む電流センス部と、前記ソース部の上方に配置されたソース側表面電極と、前記電流センス部の上方を少なくとも一部に含むように配置されたセンス側表面電極とを含み、前記第2単位セルは、前記センス側表面電極の下方で、かつ配線材の接合部分の直下部を避けた位置に配置されている。
【0053】
この構成によれば、電流検出側の第2単位セルが配線材の接合部分の直下部を避けた位置に配置されている。これにより、第2単位セルと当該配線材との間に一定の距離を保つことができるので、第2単位セルで発生した熱が配線材に優先的に伝わって逃げることを抑制することができる。そのため、ソース部の第1単位セルと電流センス部の第2単位セルとの間のオン抵抗に生じる誤差を小さくすることができる。また、第2単位セルが配線材の接合部分の直下部にないので、配線材をセンス側表面電極に接合する際の衝撃が第2単位セルに直接伝わることを防止でき、第2単位セルの破壊を抑制することもできる。これらの結果、電流センス部による主電流の電流値の検出精度を向上させることができる。
【0054】
そして、このように第2単位セルを配線材の接合部分の直下部を避けた位置に配置することは、SiCからなる半導体層を使用することによって達成できるものである。つまり、Si半導体デバイスでは、単位面積あたりに流すことができる電流量が小さいため、大電流を流す面積の大きいソース部に対し、検出精度が高い適切なセンス比(1000〜2000程度)とするためには、ある程度大きなセンス部のセル面積が必要であることから、直下部を避けた位置に形成することは難しい。これに対し、SiC半導体デバイスでは、単位面積あたりに流すことができる電流量が大きいため、ソース部に対し、小さなセル面積のセンス部でも適切なセンス比を確保できることから、直下部を避けた位置に形成することができる。
【0055】
前記半導体装置は、前記電流センス部と前記センス側表面電極との間に配置された層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜よりも下方に形成されたゲート絶縁膜とを含み、前記層間絶縁膜は、前記ゲート絶縁膜よりも厚く形成されていてもよい。
この構成によれば、配線材をセンス側表面電極に接合する際に第2単位セルに伝わる衝撃を軽減することができる。その結果、主電流の電流値の検出精度の信頼性を確保することができる。
【0056】
前記半導体装置では、前記電流センス部は、前記ソース部に囲まれた領域に形成されていてもよい。
この構成によれば、電流センス部の発熱量をソース部に近づけることができるので、発熱量の違いによって発生するオン抵抗の誤差を小さくすることができる。
前記半導体装置は、前記センス側表面電極の前記第2単位セルの直上部を選択的に覆い、前記センス側表面電極の一部をセンス側パッドとして露出させる開口を有するパッシベーション膜を含んでいてもよい。
【0057】
この構成によれば、半導体装置の外側から見て第2単位セルの直上部とセンス側パッドとが明確に区別されているので、配線材を誤って第2単位セルの直上部に接合することを防止することができる。したがって、第2単位セルと当該配線材との間に一定の距離を確実に保つことができる。
前記半導体装置では、前記第1単位セルおよび前記第2単位セルは、互いに同じセル構造を有していてもよい。
【0058】
この構成によれば、主電流の電流値を算出する際のセンス比を、第1単位セルと第2単位セルとのセル比で見積もることができるので、電流検出を容易に行うことができる。
前記半導体装置では、前記電流センス部は、前記半導体層の面内方向において一カ所のみに形成されていてもよい。
この構成によれば、半導体層の表面部の省スペース化を図ることができる。
【0059】
前記半導体装置では、前記層間絶縁膜は、1μm以上の厚さを有していてもよい。
この構成によれば、層間絶縁膜に十分な耐衝撃性(たとえば、ワイヤボンディング耐性)を与えることができる。
前記半導体装置は、前記半導体層上に配置され、配線材が接合されるゲート側接合領域を有するゲート側表面電極を含み、前記層間絶縁膜は、前記ゲート側接合領域の直下部にも配置されていてもよい。
【0060】
この構成によれば、ソース部およびゲート部を覆う層間絶縁膜を同一の工程で形成することができるので、製造工程を短縮することができる。
前記半導体装置では、前記層間絶縁膜は、SiO
2膜を含んでいてもよく、前記SiO
2膜は、P(リン)またはB(ホウ素)を含有していてもよい。
SiO
2膜は作製が容易で、また、当該SiO
2膜がP(リン)またはB(ホウ素)を含有していれば、成膜後にリフローすることもできる。リフローによって層間絶縁膜(SiO
2膜)を容易に平坦化できるので、電流センス部の放熱性に影響を与え得る配線材を設計通りに接合し易くすることができる。
【0061】
前記半導体装置では、前記センス側表面電極は、下側からTi、TiNおよびAlCuの順に積層した積層構造からなる電極を含んでいてもよい。
この構成によれば、センス側表面電極の最表面をAlCuにすることによって、当該電極に十分な耐衝撃性(たとえば、ワイヤボンディング耐性)を与えることができる。
前記半導体装置は、前記半導体層上に配置されたゲート側表面電極と、前記センス側表面電極の一部をセンス側パッドとして露出させる開口および前記ゲート側表面電極の一部をゲート側パッドとして露出させる開口を有するパッシベーション膜とを含み、前記センス側パッドおよび前記ゲート側パッドは、互いに同じ方向に長手な形状に形成されていてもよい。
【0062】
この構成によれば、センス側パッドおよびゲート側パッドに対して同じ方向から配線材を延ばして接合できるので、パッケージを組み立てるときに容易に配線することができる。
本出願は、2015年12月18日に日本国特許庁に提出された特願2015−247727号に対応しており、この出願の全開示はここに引用により組み込まれるものとする。