(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-193869(P2021-193869A)
(43)【公開日】2021年12月23日
(54)【発明の名称】自然エネルギー余剰電力の利活用システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20211126BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20211126BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20211126BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20211126BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20211126BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20211126BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J3/46
H02J3/38 130
H02J3/38 160
H02J3/38 120
H02J7/35 K
H02J7/00 S
H02J13/00 301A
H02J13/00 311R
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-99670(P2020-99670)
(22)【出願日】2020年6月8日
(71)【出願人】
【識別番号】519276589
【氏名又は名称】AURA−Green Energy株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519359055
【氏名又は名称】株式会社サイナジェティックス
(71)【出願人】
【識別番号】519368965
【氏名又は名称】株式会社多摩川ホールディングス
(71)【出願人】
【識別番号】519276590
【氏名又は名称】富士サイエンス合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川越 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】中地 美智代
(72)【発明者】
【氏名】山口 市朗
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 健二
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G064AA01
5G064AC05
5G064AC09
5G064CB08
5G064CB10
5G064DA01
5G064DA05
5G066AA04
5G066AE09
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA05
5G066JA07
5G066JB03
5G503AA06
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA10
5G503DA04
5G503FA17
5G503FA18
5G503GB06
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電力会社への売電量を超える部分の電力を活用・蓄電して、2次的な各種商品製造業や社会インフラ維持、安心安全ネットワークを構築するために用いるために、自然エネルギーの余剰電力の有効利用を目的とする蓄電協調型利活用システム(GEMCOS)を提供する。
【解決手段】発電源からの総体電力構成2において、複数の自然エネルギー発電装置から送電される発電量に変動がある発電電力1を、電力会社へ送電する売電電力と、売電電力以外の変動電力を余剰電力4として振り分けし、余剰電力を整流・平滑化して直流変換する整流・主分電盤5と、整流・主分電盤において直流変換された余剰電力を充電する蓄電池8と、を備え、蓄電池に充電された電力を利用する二次的産業機器の電力消費状況に協調して蓄電池を最適放電使用するように制御する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一または異種の分散型自然エネルギー源により発電される発電量に変動がある環境下で余剰電力を活用するシステムであって、
複数の自然エネルギー発電装置から送電される発電量に変動がある発電電力を、電力会社へ送電する売電電力と、該売電電力以外の変動電力を余剰電力として振り分けし、該余剰電力を整流・平滑化して直流変換する整流・主分電盤と、
前記整流・主分電盤において直流変換された余剰電力を充電する蓄電池と、を備え、
前記蓄電池に充電された電力を利用する二次的産業機器の電力消費状況に協調して前記蓄電池を最適放電使用するように制御することを特徴とする自然エネルギー余剰電力の蓄電協調型利活用システム(GEMCOS)。
【請求項2】
請求項1記載の蓄電協調型利活用システムにおいて、
前記主分電盤における前記発電電力を監視する電力モニタセンサーと、
前記電力モニタセンサーが監視する前記発電電力に応じて、前記整流・主分電盤における振り分け制御を指示する蓄電力分配・最適化制御部と、を備え、
前記蓄電力分配・最適化制御部は、
前記発電電力が予め設定された閾値以内の場合に、前記整流・主分電盤において前記発電電力の全てを売電電力に振り分けるように制御するとともに、
前記発電電力が予め設定された閾値を超えた場合に、前記整流・主分電盤において該閾値を超えた分を余剰電力として直流変換した後に前記蓄電池に振り分けるように制御を行うことを特徴とする蓄電協調型利活用システム。
【請求項3】
請求項2記載の蓄電協調型利活用システムにおいて、
前記蓄電力分配・最適化制御部は、
前記発電電力が一定基準値に足りない場合に、前記蓄電池に蓄えられた電力を前記主分電盤にフィードバックして前記主分電盤から売電電力に振り分けるように制御する送電補助機能を有することを特徴とする蓄電協調型利活用システム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3記載の蓄電協調型利活用システムにおいて、
前記蓄電池に充電された電力を利用する二次的産業機器の電力消費状況を常時モニタリングする消費電力センサーと、
前記消費電力センサーが監視する電力消費状況に応じて前記蓄電池を最適放電使用するように制御するコントローラー部と、を備え、
前記コントローラー部の制御条件の設定値を外部からリモートで変更できる仕組みを有することを特徴とする蓄電協調型利活用システム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4記載の蓄電協調型利活用システムにおいて、
前記蓄電池に充電された電力を交流変換し、商用電流(3相,200V,50Hz)として二次的産業機器に供給する際に交流電圧のリップル率として「バラつき値≦1%以内、DC/ACインバーターの波形歪み率を3%以内」に制御することを特徴とする蓄電協調型利活用システム。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5記載の蓄電協調型利活用システムにおいて
前記蓄電池は、
前記余剰電力を充電する際に電力値の上限と下限を設定して過電流の流入を防止するリミッター機能と、
過電流による機器損壊を防止する安全回路熱放電回路と、を備え、
前記リミッター機能と前記安全回路熱放電回路とを制御するために、その制御条件の設定値を外部からリモートで変更できる仕組みを有することを特徴とする蓄電協調型利活用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
最近、世界各国で、地球規模の気候変動や各種資源枯渇を抑制するための、国連主導の気候変動枠組条約第20回締約国会議(COP20、ペルーリマ市開催、2014年)、および持続可能な開発目標(SDGs)が注目されている。“SDGs”は、「Sustainable Development Goals website」の略称であり、正式名称は「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030年アジェンダ」(国際連合機関・広報提唱)となっている。貧困や飢餓、教育など、今の世界の中で問題となっている事柄を解決するための必要な取り組みとして、17目標を掲げている。その中にはエネルギーについて取り上げている目標もある。
【0002】
SDGsの「目標7」に掲げられているのが、「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」であり、持続可能な社会を作り上げるためにも、継続的に利用でき、かつクリーンなエネルギーの開発およびインフラ設備の構築が世界全体で必要としている。すなわち、持続可能な社会を作り上げ、継続的に安定した安全なエネルギーを利用するためには、再生エネルギー利用拡大や省エネルギーの改善努力、革新的技術と必要なインフラ投資など継続的な政策が必要とされている。特に先進国である日本では2050年までに温室効果ガスを80%削減することを掲げており、エネルギー転換による脱炭素化への取り組みを進めている。
【0003】
本発明は、SDGsのエネルギー関連技術の中で、各種自然エネルギーや環境発電としての、風力、バイオマス、太陽光、地熱等の電力エネルギーの利活用技術に関する。特に、電力会社への売電量を超える部分の電力を活用・蓄電して、2次的な各種商品製造業や社会インフラ維持、安心安全ネットワークを構築するために用いるための、自然エネルギーの余剰電力の有効利用を目的とするSDGs関連の新技術を提供する。
【0004】
そのためには、日時や季節に依存して変動することが避けられない、各種自然エネルギーからの発生電力の約30%を占める、時間変動部分からなる余剰電力波形を、一旦整流・直流化し、バッテリーに蓄電し、かつ、利用側の電力消費状況に協調して、最適放電量を調整できる、「自然エネルギー余剰電力の蓄電協調型利活用システム」を設計することが要求される。すなわち、自然エネルギーの余剰部分の電力蓄電機器と2次的産業機器に用いる電力消費を適切に制御しながら長期の利用を可能とする、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせた、自律・協調型の蓄電エネルギー利活用システム機器の開発が不可欠となる。なお、この「自然エネルギー余剰電力の蓄電協調型利活用システム」は、英語表現で、「Green Energy Managing for Collaborative Operation System」となるので、その頭文字から、略称で「GEMCOS」と命名し、特許庁へ商標登録願い中(商願2019-102192 、出願日:令和1(2019)年 7月 11日)である。
【0005】
その様な、2次的産業機器を稼働する場合の電力は、ある特定の局所的地域での、自然エネルギー源の電力会社への定常的かつ規定される売電部分以外の、蓄電装置部分を用いる自己完結的な余剰電力部分から抽出するので、利用機器や事業設計が、GEMCOS所有者の自由度が多く取れて、電気事業規制も少なくすみ、さらに、通常の電力会社から購入する電力料金よりも遥かに低価格に出来る産業利用上の利点がある。
【0006】
上記の技術的特徴を有する、「自然エネルギー余剰電力の蓄電協調型利活用システム」が実現できれば、大別して(1)低コストPCサーバー事業分野、例えば、データセンター用サーバー事業、仮想通貨マイニング事業の省エネギ―・低コスト型運用システム化、また(2)スマートアグリ関連応用分野、例えば、地域灌 灌漑用水くみ上げ、植物工場での温冷風、室内照明、農林業での電動農機具用の蓄電池配給、人工漁業・養殖事業での加温・循環水ポンプ、餌やり自動化事業の省エネギ―型運用システムが可能となる。
【0007】
さらには、3)中規模以下の限定地域での、時間軸や電力消費量変化が異なる、家庭、工場、インフラ、発電所等を連携しながら、自然エネルギーの蓄電・自律型制御をもとにした、局所的地域内での消費電力を最適に再配分化できる機能性を具備した、防災減災機能を含む、安心安全・省エネ型の、いわゆる仮想発電所(バーチャルパワープラント)を基盤的機能に置く、スマートな社会インフラ・サービス運用システムが可能となる。
【0008】
以上、本技術分野は、自然エネルギーの余剰電力の有効利用を目的とするSDGs関連の新技術に関する。
【背景技術】
【0009】
前述したSDGsエネルギー分野では、達成すべきエネルギー転換と脱炭素化の動きに伴い、エネルギー計画の方針の下、様々な電源(火力、原子力、太陽光、風力、地熱、シェールガス等)のメリット、デメリットを生かし効率よく組み合わせて供給し、需要増減に対応したり、エネルギー不足を回避する対策を目指しています。ここでは、いきなり、気候や日時で変動する傾向がある、再生可能エネルギーを主力電源化できないため、まずは現行の発電エネルギーと再生可能エネルギーのバランスを取りながらミックスし、徐々に再生エネルギーの比率を高められるように強化していく。
【0010】
そして、無駄の少ない、高効率・省エネルギー政策での「エネルギーのベストミックス」と呼ばれる、社会的エネルギー・インフラの実現を目指している。例えば、我が国(日本)では、2030年に向けて、再生可能エネルギーが電源構成比率の22〜24%、原子力発電が20〜22%、化石燃料による火力発電が56%となるように計画が立てられて、徹底した省エネを進めることで実質エネルギー効率を35%削減させる取り組みが計画されている。
【0011】
また、東日本大震災等の非常の電力需給のひっ迫問題から、従来の省エネルギー対策の強化だけでなく、ある想定地域での消費電力の時間的な需給バランスを考慮して、統合的に電力エネルギーの管理を行うことへの政策転換が始まった。また、太陽光発電や風力発電といった、地域分散型の再生可能エネルギーの導入が進んだ。さらには、温暖化防止などへ向けて、太陽光発電や家庭用燃料電池などのコージェネレーション、蓄電池、電気自動車など、家庭や小型工場などの需要家側に導入される分散型のエネルギー機器への導入も進んだ。
【0012】
以上の背景から、火力や原子力等の大規模集中型発電所に大きく依存した従来型のエネルギー供給システムが見直されるとともに、個々には小規模だが、工場や家庭などが有する分散型のエネルギー資源を、限定地域内の電力に活用する仕組作りの必要性が叫ばれて来ている。 その際は、各種のエネルギー資源を、需要ユーザ側機器に繋げ、IoT(モノのインターネット)を活用した高度なエネルギーマネジメント技術により束ねて、遠隔・統合制御することで、電力需給バランス調整に活用することが出来る。
【0013】
この仕組みは、ある想定地域では、あたかも高度なエネルギーマネジメント機能をそなえた、一つの発電所(電力エネルギー源)のように作動することから、
図1に示される「仮想発電所:バーチャルパワープラント(Virtual Power Plant ,VPP)」と呼ばれている。(それゆれえに、VPPは、負荷平準化や再生可能エネルギーの供給過剰の吸収、緊急災害時等の電力不足時の電力供給機能を有する、限定的地域で作動する、しなやかな近未来の電力事業システムとなることが期待されている。
【0014】
上述した我が国でのVPP(仮想発電所)の想定規模は、火力、水力、原子力等の大規模集中型発電所、製鉄工場等での発電所、太陽光、風力等の分散型自然エネルギーからの電力源が入る。一方、電力消費側では生産工場、ビルや各家庭等の小口ユーザを組み込んでおり、住民居住地域を含む、市町村レベルのかなり大きな想定地域が設定されている。さらに、その地域で消費する主電力エネルギー源は、やや不安定な自然エネルギー依存は低く、従来の大規模集中型発電が主流を占めている特徴がある。
【0015】
自然エネルギー由来の電力は、大きな発電規模(≧数MW)では、既存の送電線が近くにあればそれに繋げて、電力会社に固定価格で、国が法律で定める“自然エネルギー電力の買取り制度”(Feed-in Tariff, FIT)で売電することができる。
【0016】
一般に、日時や季節に依存して変動する、各種自然エネルギーは、不安定さがあり、
電力会社は、供給側電源の安定性を見込み、実質的には、発電最大容量の3分の2程度(70%)しか購入しない。
【0017】
また、多くの場合、自然エネルギー採取に適した地域は、人里離れた、山野に近い平坦地、海岸線、さらには、人が済まない地熱・温泉源地域に限定される特徴があり。そこから遠距離の送電線方式では電力抵抗ロスが大きくなり、売電には不向きな立地条件もある。この様な人里離れた、いわゆる人口低密度や僻地での、人工養殖、遠隔的なスマート管理型農業、寒冷地での昼夜運転のサーバー事業、緊急災害時のエネルギー確保や救援活動拠点等への、局所的な地域限定型の自然エネルギーの余剰電力を用いた、新規事業への構築可能性が有るわけである。
【0018】
その場合、自然エネルギーの非売電・余剰電力部分である約30%を占める、時間変動部分からなる余剰電力波形を、一旦整流・直流化し、バッテリーに蓄電し、かつ、利用側の電力消費状況に協調して、最適放電量を調整できる、「自然エネルギー余剰電力の蓄電協調型利活用システム」を、限定地域に適合した形態で設計・開発することが要求される。すなわち、自然エネルギーの余剰部分の電力蓄電機器と2次的産業機器に用いる電力消費を適切に制御しながら長期の利用を可能とする、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせた、自律・協調型の蓄電エネルギー利活用システム機器の開発が不可欠となる。
【0019】
その様な、2次的産業機器を稼働する場合の電力は、ある特定の局所的地域での、自然エネルギー源の電力会社への定常的かつ規定される売電部分以外の、蓄電装置部分を用いる、自己完結的な余剰電力部分から抽出するので、利用機器や事業設計が、GEMCOS所有者の自由度が多く取れて、電気事業規制も少なくすみ、さらに、通常の電力会社から購入する電力料金よりも遥かに低価格に出来る産業利用上の利点がある。
【0020】
上記の技術的特徴を有する、「自然エネルギー余剰電力の蓄電協調型利活用システム」が実現できれば、大別して(1)低コストPCサーバー事業分野、例えば、データセンター用サーバー事業、仮想通貨マイニング事業の省エネギ―・低コスト型運用システム化また、(2)スマートアグリ関連応用分野、例えば、地域灌 灌漑用水くみ上げ、植物工場での温冷風、室内照明、農林業での電動農機具用の蓄電池配給、人工漁業・養殖事業での加温・循環水ポンプ、餌やり自動化事業の省エネギ―型運用システムが可能となる。さらに、防災減災機能を含む、安心安全・省エネ型の、いわゆる仮想発電所(バーチャルパワープラント)を基盤的機能に置く、スマートな社会インフラ・サービス運用システムが可能となる。
【0021】
以上、本技術分野は、自然エネルギーの余剰電力の有効利用を目的とするSDGs関連の新技術に関する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0022】
(1) (財)国際開発センター「目標7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに」,2018)https://www.idcj.jp/sdgs/
(2) Gooddo(株)、gooddo, Inc.
https://gooddo.jp/magazine/sdgs_2030/clean_energy_sdgs/8028/
(3)資源エネルギー庁 HPから、仮想発電所
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/vpp_dr/about.html
(4)企業リリース発行:リード エグジビション ジャパン株式会社発電所もバーチャルで運用する時代に! 「仮想発電所(VPP)」を実現する最新テクノロジーが集結、(第14回 スマートエネルギーWeek 会期:2018年2月28日(水)〜3月2日(金) 会場:東京ビッグサイト) https://www.nikkan.co.jp/releases/view/25294
(5)新聞記事:東奥日報(2019年7月12日朝刊)「風力発電などで余った電力を蓄電 スマート農業や災害時に活用へ/アウラ社(青森市)など3社開発」およびYahoo News配信7/11(木) 23:13: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190711-00000009-webtoo-l02
(6)新聞記事:日本経済新聞社(2019年9月19日)「再生エネ余剰 蓄電し活用、スマート農業・非常電源に、アウラなど実証成功」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
一般に、季節や日時に変化して、不安定な傾向がある、各種自然エネルギー(風車、太陽光、熱電、波動・環境発電等)の電力会社への売電以外の余剰電力の比率は、全体出力の約30%を占めており、電気抵抗熱(ヒーター)等に変換したりして廃棄されているのが実情である。例えば、ある農山村等の特定地域内での、複数の分散型自然エネルギー源からの発電出力が経過時間により大小に差異がありがの実際であり、その時間軸で変動する様な場合も、各発電源からの変動電圧・電流を、整流・平滑化し、直流電流に変換してバッテリーに蓄電し、かつ、これにより、各種産業用電力機器を作動させて産業育成に利活用して、高効率の省エネルギー社会とSDGs目標達成への新技術の一つとなる。
【0024】
その場合、工場や利用側の電力消費状況に協調して、最適放電量を逐次に調整して、「自然エネルギー余剰電力の蓄電協調型利活用システム、GEMCOS」を、限定地域に適合した形態で設計・開発し、新技術として適用する。特に、この「GEMCOS」をエネルギー利用効率よく稼働させるには、連結された2次的産業機器の稼働状況や周囲環境変化等を常時モニタリングし、かつ、分散型のIoT対応センサーおよびそのワイヤレスネットワークとの構築により、かつ自然エネルギーの余剰部分の電力蓄電機器と2次的産業機器に用いる電力消費を適切に制御しながら長期の利用を可能とする、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせた、自律・協調型の蓄電エネルギー利活用システム機器の開発が不可欠となる。
【0025】
この様な、GEMCOSを介した2次的な起業分野としては、例えば、(1)低コストPCサーバー事業への応用、(2)スマートアグリ関連応用分野、(3)、突発的な大災害・非常時の防災減災・サステナブル対策用の技術提供、およびこれらを操業する限定的地域での、局所的地区での消費電力を最適に再配分化できる機能性を具備した、自然エネルギーの蓄電・自律型制御をもとにした、(4)安心安全・省エネ型のスマートな社会インフラ・サービス運用システムがある。
【0026】
GEMCOSを活用する場合、機器を稼働する場合の電力は、ある特定の局所的地域での、自然エネルギー源の電力会社への定常的かつ規定される売電部分以外の、蓄電装置部分を用いる自己完結的な余剰電力部分から抽出する。 そゆえに、利用機器や事業設計が、GEMCOS所有者の自由度が多く取れて、電気事業規制も少なくすみ、さらに、通常の電力会社から購入する電力料金よりも遥かに低価格に出来る産業利用上の利点がある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
第1発明の蓄電協調型利活用システム(GEMCOS)は、同一または異種の分散型自然エネルギー源により発電される発電量に変動がある環境下で余剰電力を活用するシステムであって、
複数の自然エネルギー発電装置から送電される発電量に変動がある発電電力を、電力会社へ送電する売電電力と、該売電電力以外の変動電力を余剰電力として振り分けし、該余剰電力を整流・平滑化して直流変換する整流・主分電盤と、
前記整流・主分電盤において直流変換された余剰電力を充電する蓄電池と、を備え、
前記蓄電池に充電された電力を利用する二次的産業機器の電力消費状況に協調して前記蓄電池を最適放電使用するように制御することを特徴とする。
【0028】
第2発明の蓄電協調型利活用システム(GEMCOS)は、第1発明において、
前記主分電盤における前記発電電力を監視する電力モニタセンサーと、
前記電力モニタセンサーが監視する前記発電電力に応じて、前記整流・主分電盤における振り分け制御を指示する蓄電力分配・最適化制御部と、を備え、
前記蓄電力分配・最適化制御部は、
前記発電電力が予め設定された閾値以内の場合に、前記整流・主分電盤において前記発電電力の全てを売電電力に振り分けるように制御するとともに、
前記発電電力が予め設定された閾値を超えた場合に、前記整流・主分電盤において該閾値を超えた分を余剰電力として直流変換した後に前記蓄電池に振り分けるように制御を行うことを特徴とする。
【0029】
第3発明の蓄電協調型利活用システム(GEMCOS)は、第2発明において、
前記蓄電力分配・最適化制御部は、
前記発電電力が一定基準値に足りない場合に、前記蓄電池に蓄えられた電力を前記主分電盤にフィードバックして前記主分電盤から売電電力に振り分けるように制御する送電補助機能を有することを特徴とする。
【0030】
第4発明の蓄電協調型利活用システム(GEMCOS)は、第1〜第3発明のいずれかにおいて、
前記蓄電池に充電された電力を利用する二次的産業機器の電力消費状況を常時モニタリングする消費電力センサーと、
前記消費電力センサーが監視する電力消費状況に応じて前記蓄電池を最適放電使用するように制御するコントローラー部と、を備え、
前記コントローラー部の制御条件の設定値を外部からリモートで変更できる仕組みを有することを特徴とする。
【0031】
第5発明の蓄電協調型利活用システム(GEMCOS)は、第1〜第4発明のいずれかにおいて、
前記蓄電池に充電された電力を交流変換し、商用電流(3相,200V,50Hz)として二次的産業機器に供給する際に交流電圧のリップル率として「バラつき値≦1%以内、DC/ACインバーターの波形歪み率を3%以内」に制御することを特徴とする。
【0032】
第6発明の蓄電協調型利活用システム(GEMCOS)は、第1〜第5発明のいずれかにおいて、
前記蓄電池は、
前記余剰電力を充電する際に電力値の上限と下限を設定して過電流の流入を防止するリミッター機能と、
過電流による機器損壊を防止する安全回路熱放電回路と、を備え、
前記リミッター機能と前記安全回路熱放電回路とを制御するために、その制御条件の設定値を外部からリモートで変更できる仕組みを有することを特徴とする。
【産業上の利用可能性】
【0033】
自然エネルギー余剰電力の蓄電協調型利活用システム(GEMCOS)には、以下のような産業応用分野が開拓できる。
1)不安定で時間的に変動することが多い、各種自然エネルギー(風力、バイオマス、太陽光、温度変化、振動発電等)の売電以外の余剰電力部分を、一旦整流し、平滑・直流化し、かつバッテリーに蓄電し、さらに、利用側の電力消費状況に協調して、適宜最適放電使用することが出来る、自然エネルギー余剰電力の蓄電協調型利活用システム
2)自然エネルギー回収装置(風車、太陽光、熱電、振動・環境発電等)およびその電力・蓄電電気エネルギー使用側機器に、分散型のIoT対応センサーおよびそのワイヤレスネットワークとの構築により、GEMCOS連結機器の稼働状況や周囲環境変化等を常時モニタリングかつ自律的に制御できる自然エネルギー余剰電力の蓄電協調型利活用システム
3)この “自然エネルギー余剰電力の蓄電協調型利活用システム”を用いた、低コストPCサーバー事業への応用分野、例えば、データセンター用サーバー事業、仮想通貨マイニング事業の省エネギ―型運用システム、スマートアグリ関連応用分野、例えば、地域灌 灌漑用水くみ上げ、植物工場での温冷風、室内照明、農林業での電動農機具用の蓄電池配給、人工漁業・養殖事業での加温・循環水ポンプ、餌やり自動化事業の省エネギ―型運用システム
4)この“自然エネルギー余剰電力の蓄電協調型利活用システム”を用いて、限定的地域での、時間軸や電力消費量変化が異なる、家庭、工場、インフラ、発電所等を連携しながら、局所的地区での消費電力を最適に再配分化できる機能性を具備した、自然エネルギーの蓄電・自律型制御をもとにした、安心亜安全・省エネ型のスマートな社会インフラ・サービス運用システム
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】中規模域の生活圏を想定した場合の「仮想発電所」の概念図「仮想発電所:バーチャルパワープラント(Virtual Power Plant,VPP)」
【
図2】低圧風力発電所(50kW未満)に設置した余剰電力利活用システム“GEMCOS”を用いた昼夜稼働サーバー事業への電気供給図(事例1)
【
図3】「GEMCOS」の余剰電力・制御・活用系構成図
【
図5】実習試験した「GEMCOS」装置の外観図(2019年7月2日、県深浦町丘陵地、中型風車(40KW、高さ20m、多摩川ホールデイングス社保有物)
【
図6】「GEMCOS」内部の制御系コントローラーの電気回路
【
図7】「GEMCOS」コントローラ内部のCPU周辺の制御系ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0035】
一般に、日時や季節に依存して変動する、各種自然エネルギー(風車、太陽光、熱電、波動・環境発電等)は、不安定さがあり、電力会社は、供給側電源の安定性を見込み、実質的には、発電最大容量の3分の2程度(70%)しか購入しておらず、電力会社への売電以外の余剰電力の比率は、全体出力の約30%を占めており、電気抵抗熱(ヒーター)等に変換したりして廃棄されているのが実情である。その「自然エネルギー余剰電力の蓄電協調型利活用システム(GEMCOS)」を低圧風力発電所(50kW未満)に設置して、昼夜稼働のサーバー事業への電気供給図の事例を
図2に示す。自然エネルギーで、かつ、その余剰電力を用いることで、サーバー事業において、停電時の寸断危険性は低下して、かつ、より低コスト化事業が展望できる。
【0036】
例えば、ある地方の農山村等の特定地域、例えば、1km四方域を想定した場合、複数の分散型自然エネルギー源からの発電出力には、発電量は差異があり、その出力は時間軸で変動するのが普通である。ゆえに、前出の「GEMCOS」を用いて、必要時に各種産業機器を動かして生産活動を行うためには、複数の自然エネルギー発電源からの余剰電療部分の変動電圧・電流を、整流・平滑化し、直流電流に変換してバッテリーに蓄電する、電気回路システムの構築が必要になる。さらに、産業機器側の電力消費量とバッテリー蓄電量とを相互に連携・協調させながら作動させるソフトウェアが不可欠となる。
【0037】
そのための、自律型の「自然エネルギー余剰電力の蓄電協調型利活用システム(GEMCOS)」の余剰電力・制御・活用系の構成を、
図3に示す。「GEMCOS」は、自然エネルギーの余剰部分の蓄電機器と2次的産業機器に用いる電力消費を適切に制御しながら長期の利用を可能とする、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせた、限定地域内での新たな自律・協調型の自然エネルギー利活用システム関する新技術である。この事例では、発電源となる風車側の発電状況、すなわち、定常安定部分電力と余剰電力の電力集積部、その変動電圧部分を整流後の蓄電部、さらには過剰発電等による蓄電オーバーフローへの補郵電停止または廃棄する場合の放電対策を想定する蓄電系の系安全回路から構成される。
図3中の番号の説明は次の通り。
(1) 自然エネルギー回収装置
(2) 全体電力
(3) 定常電圧部(=電力会社買取量)
(4) 変動電圧部(=余剰電力)
(5) 整流・主分電盤
(6) 蓄電系統(=余剰電力分≒1/3))
(7) GEMCOS本体構成
(8) 蓄電力分配・最適化回路(=フィードバック、ソフトウェア
(9) 蓄電池(バッテリー)
(10)補完電流(=売電量不足時に使用)
(11)売電(≒2/3,Fit制度:電力会社へ)
(12)パワー調整・安全装置
(13)売電メータ
(14)電柱(電線系統)
(15)電力供給(=産業用機器稼働用)
(16)2次的事業育成
(17)サーバー用電源
(18)スマート農業・養殖
(19)防災減災・インフラ診断
【0038】
図3には、一般的に時間変動がある自然エネルギー発電機器からの電力を取り込む場合の、整流平滑化回路、GEMCOS側蓄電部、さらには、その先の産業応用機器への活用を含む装置構成図を示す。図中の番号は、装置品名や機能部品番号を示す。番号1は、自然エネルギー電力源(風車、太陽光パネルなど、番号1)で、その発電源からの総体電力構成(番号2)、そこには余剰電力部分(番号4)が入っている。これは、日時や季節で変動するが、売電部分(番号3)以外の変動電圧部分を意味する約三分の一(≒30%)に相当する。そして、変動電圧の整流用電気回路(番号5)で直流変換されて、GEMCOS(番号7)の内部の蓄電池(バッテリー、番号9)にいったん貯めて、2次的な産業機器の動力用に用いる。
【0039】
この蓄電池(バッテリー、番号9)には、自然エネルギー電力源(番号1)側からの余剰(オーバーフロー)電力分離用電線 (番号6)に電圧値の下限と上限が設定されており、過電流を防いで、受け皿側となる蓄電池(バッテリー、番号9)に給電される。また、蓄電池(バッテリー、番号9)にも、過充電による機器破損を防ぐための安全回路となるフィードバック型放電制御回路(番号10)組み込まれている。これらは、GEMCOS(番号7)の充電・放電制御用ソフトウェア(番号8)で組み込まれる方式となっている。
【0040】
産業界側への本新技術、「GEMCOS」から電力供給(番号15)を介した2次的な起業分野(番号16)としては、大別して、(1)低コストPCサーバー事業(番号17)、(2)スマートアグリ事業(番号18)、(3)突発的な大災害・非常時の防災減災・サステナブル対策用の技術(番号19)がある。これらは、自然エネルギーの蓄電・自律型IoTセンサーのフィードバック制御をもとにして運用されて、安心安全・省エネ型のスマートな社会インフラ・サービスシステム事業が育成される。
【0041】
特に、この「GEMCOS」をエネルギー利用効率よく稼働させるには、連結された2次的産業機器の稼働状況や周囲環境変化等を常時モニタリングし、かつ、分散型のIoT対応センサーネットワークとの構築により、かつ自然エネルギーの余剰部分の電力蓄電機器と2次的産業機器に用いる電力消費を適切に制御しながら長期の利用を可能とする、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせた、自律・協調型の蓄電エネルギー利活用システム機器の研究開発が不可欠となる。
【0042】
そのための、ある限定地域で活用する、自律型「自然エネルギー余剰電力の蓄電協調型利活用システム(GEMCOS)」の余剰電力・制御・活用系の構成は、発電源となる自然エネルギー機器の発電状況モニタリング部と2次的な産業応用機器への自律協調型電力供給システムを設計する。すなわち、定常安定部分電力と余剰電力の電力集積部、その変動電圧部分を整流後の蓄電部、さらには過剰発電等による蓄電オーバーフローへの補郵電停止または廃棄する場合の放電対策を想定する蓄電系の安全回路から構成される。
【0043】
GEMCOS電力制御・連携系ブロック図を平面図(
図4)で示す。
【0044】
まず、風力、太陽光、バイオマスなどからの自然エネルギー発電電力(番号1および番号3、番号4)は、番号5の主分電盤(整流回路)を経て、その全体の約三分の二(=66%) 量は 、Fit制度に従い、電力会社側への売電電力(番号6)となる。GEMCOS装置部分(番号7)には、余剰電力部分(番号4)が導入される。これは、日時や季節で変化するが、定常的な売電部分以外の変動電力部分を意味して、全体発電量の約三分の一(≒33%)に相当する。番号5は主分電盤であり、その内部には変動電圧の整流・平滑化のための電気回路が設置されている。自然エネルギー発電源からの電圧センサーで振り分けられ、一定のしきい値(Threshold Value)範囲の電圧条件で出力側7(GEMCOS本体)にON−OFF出来るように、GEMCOS−CPU上でのソフトウェアを介して識別できる仕組みとなっている。低電圧化された電流は、中央の並列された蓄電池群(バッテー、番号8))を経由して、DC−AC変換され、商用電流(3相 200V 50Hz)となり、GEMCOS経由で2次産業用機器(番号13,番号14,番号15を作動できる仕組みになっている。その際の交流電圧のリップル率(バラつき値≦1%以内、DC/ACインバーターの波形歪み率は3%以内に抑制できる。
【0045】
この蓄電池(バッテリー、番号8)には、自然エネルギー電力源(番号1)側からの余剰(オーバーフロー)電力(番号4)値の下限と上限が設定されたリミッター機能がソフトウェアで組込まれており、過電流の流入を防いで、受け皿側となる蓄電池(バッテリー、番号8)に給電される。この蓄電池(バッテリー、番号8)についても、過充電による機器破損を防ぐための、GEMCOS内(番号7)に安全回路からなるバッテリーマネージメントシステム(BMS)も組み込まれ、過電流や過充電による異常加熱や破損を防止している。これらは、GEMCOSに繋がる、発電電力の消費状態モニターセンサー(番号10)を介して、GEMCOSへの充電・放電制御用ソフトウェア回路(番号9)が組込まれている。なお、GEMCOSコントロ−ラー部で外部とWiFi-LANを用いたIoTセンサーネットワーク(番号11)による繋がり、外部から監視しながら操作パネル(番号12)御条件を変更できる仕組みになっている。
【0046】
具体的なGEMCOS−コントローラ内のCPU制御法は、主記憶装置として、4GBRAM「Random Access Memory」(ランダムアクセスメモリ、16ビット))ボードを用いており、外部から入力電圧設定、CPUが何らかの処理を行ったり、電力データ採取中は画面上にそのデータを表示出来る。CPU内部では、アナログ入力値は16ビットデジタル値変換さて後に、予め入力している設定基準値との大小を判定してその差に比例した形のパルスは、パルス幅変調(:pulse width modulation、PWM)により、ON−OFF信号をフィードバックさせている。パルス波のデューティ(デジタルON−OFF高さ)比を変化させて変調することで、電圧基準値(しきい値)を変更できる方式となっている。
【0047】
具体的には、自然エネルギー発電機器からの入力側の電圧幅=DC+IN≧450V以上では、入力側電圧センサーを介してDC+300Vを定電圧での出力で使用できる。また、DC+IN≦450V以下の時は電池出力モードとなる。さらに、インバーター(電圧逆変換器)により、発電機側の発電力がDC+IN≦230V以下の時は、商業用電力出力AC200Vを停止させることができる。また、各主電力系のゲート位置では、そこでの最大電流値≦15A以下になるように発電側、バッテリーおよび商用電力系の各ゲートでフィードバック制御プログラムが掛かっている。
【0048】
以上のGEMCOSによる入出力電力制御の仕組みから、整流や蓄電後の定電圧電力を用いて、産業界側への本新技術、「GEMCOS」を介した2次的な起業分野としては、大別して、(1)低コストPCサーバー事業(番号13)、(2)スマートアグリ・養殖事業(番号14)、(3)突発的な大災害・非常時の防災減災・サステナブル対策用の技術(番号15)がある。これらは、自然エネルギーの蓄電・自律型IoTセンサーのフィードバック制御をもとにして、安心安全・省エネ型のスマートな社会インフラ・サービス運用システム事業に貢献できる。
【0049】
ある地域限定での自律型「自然エネルギー余剰電力の蓄電協調型利活用システム(GEMCOS)」は、インターネット環境に置かれ、遠隔的に制御用パネル(番号12)を操作できる仕様となっている。また、IoTセンサーネットワーク(番号11)に繋がっており、その限定地域の複数の自然エネルギー源の発電状況、気象状況、さらには、地域社会の消費電力を随時モニタリングできる。また、GEMCOS側から提供される2次的産業機器を稼働する電力は、電力会社への定常的かつ規定される売電部分以外の蓄電装置部分を用いる、事業主体の自己完結的な余剰電力部分から抽出する。それゆえに、利用機器や事業設計においては、GEMCOS所有者の自由度が多く取れて、電気事業規制も少なくすみ、さらに、通常の電力会社から購入する電力料金よりも遥かに低価格に出来る産業利用や経済学的な利点がある。
【0050】
次に、実施例を示す。実証テストは、2019年7月2日〜3日に青森県の日本海側、深浦町海岸近くの丘陵地に設置の、中型風車(50KW 600V、高さ20m、多摩川ホールデイングス社保有物)に連結されたGEMCOS装置により、当該特許申請の会社、発明者らによって、その有効性が確認された。
図5にはGEMCOS装置写真を示す。屋外の風車1台から、風量に応じたAC0V〜600Vの電圧が出力される。この場合の中型風車の定格容量は、50KW/600Vである。一方、電力会社との売電契約は30KWであり、定格容量と売電契約の差が余剰力部分となる。風車側から電線ケーブルで繋がれた整流・分電盤(写真中の右側緑色ランプ装置)から、売電以外の余剰電力部分(≒全体発電力の30%)を風車発電圧波形を整流回路・主分電盤(1)を経由させて、GEMCOSコントローラ(2)に送る。
【0051】
GEMCOS側は、主分電盤の発電(電圧)量を判別しながら、ある設定値以上の電圧時に、その余剰電力量を蓄電バッテリー(3)に振り分ける機能を有している。また、ある設定電圧以下では、振り分けは無く、また、主電流量が不足時は、GEMCOSバッテリー電力を主系統に一時的に逆配分して送電補助機能を持っている。さらに、GEMCOS側蓄電部の過充電や過度の温度上昇によるバッテリー破損を防ぐために、風車側からの電力を閉鎖する安全回路も組み込まれている。
【0052】
今回、実証試験に用いたGEMCOS付属の蓄電池(バッテリー、(3))容量は、3KWの小型モデルで、低コスト、5年間性能が維持可能なPbーMgバッテリーを用いた。2019年7月2日〜3日の実証試験では、主分電盤からの余剰電力により約1日でバッテリーに充電出来た。その後、このバッテリーからの直流をGEMCOSコントローラ内で交流100Vに再変換して、市販のパーソナルコンピュータ(PC)用サーバー(4)が作動した。さらに、GEMCOSの作動状態の内部データを、そこに設置したWiFiルーターを介して、50km離れた弘前市内のモバイル型ツール(パッド)にリモート表示可能なことを確認した。
【0053】
風車からの変動電圧(電流)は、整流回路を経て直流化された電圧(DCV(+)、DCN(−))がGEMCOS装置に投入される。そのGEMCOS主電力系の電気回路(ブロックダイアグラム))を
図6に示す。
【0054】
図6中、左端部側から直流DC入力(=300〜600V)が入り、その際に、入力電圧値=450Vを“しきい値”(Threshold Value、上下境界)の“Input Voltage Sensor”を介して、出力側への電力をON−OFFする。低電圧化された電流は、中央の並列された蓄電池群(バッテー)を経由して、DC−AC変換され、右側回路で商用電流(3相 200V 50Hz、最大3KW(VA))となり、GEMCOS経由で2次産業用機器を作動できる仕組みになっている。その際の交流電圧のリップル率(バラつき値≦1%以内、DC/ACインバーターの波形歪み率は3%以内になっている。
【0055】
さらに、
図6の上部に四角で囲まれている、GEMCOS内部でのしきい値設定やバッテリー側安全回路が入る電子制御系コントローラーのブロック図を
図7に示す。
【0056】
左端部はGEMCOSコントロ−ラー部で外部とLANで繋がり、外部から監視しながら制御条件を変更できる仕組みになっている。図面の中央部のDCV,DCNが風車発電機からの直流電圧であるが、まだ変動率が高いので、整流回路コンバーター(順変換器、 Converter Gate Driver)により直流変換されて、DCP1,DCN1となりバッテリーに導入されて蓄電される。BMSはバッテリーマネージメントシステムを意味して、過電流や過充電にともなう異常加熱破損を防ぐ仕組み になっている。具体的には、DCV(+)、DCN(−)入力側の電圧幅=DC+IN≧450V以上では、を介してDC+300Vを定電圧で出力できる。また、DC+IN≦450V以下の時は電池出力モードとなる。さらに、インバーター(電圧逆変換器)により、発電機側の発電力がDC+IN≦230V以下の時は、商業用電力出力AC200Vを停止させることができる。また、各主電力系のゲート位置では、そこでの最大電流値≦15A以下になるように発電側、バッテリーおよび商用電力系の各ゲートでフィードバック制御プログラムが掛かっている。
【符号の説明】
【0057】
[1]電力入力(自然エネルギー系)
[2]事業化システム構成図(ブロック図)
[3]自然エネルギー電力の全体構成
[4]余剰電力分(全体量の約1/3)
[5]主分電盤(整流回路)
[6]売電(Fit 送電系統)
[7]GEMCOS(自然エネルギー余剰電力の蓄電協調型利活用システム)
[8]蓄電部(バッテリー)
[9] 消費電力フィードバック制御部
[10]電力モニター用センサー
[11]IoTセンサーネットワーク
[12]GEMCOS操作パネル
[13] サーバー事業(2次的事業)
[14]スマート農業・養殖(2次的事業)
[15]防災・インフラ診断(2次的事業)