【解決手段】圃場の集合体である圃場群を単位として各圃場への給水を管理する圃場水管理装置と、加圧式の配水ポンプを介して各圃場群への配水量及び配水時間を管理する灌漑用水管理装置と、を含む給配水管理システムであって、圃場水管理装置に、各圃場の稼働状態を管理するとともに各圃場の給水状態情報を収集する圃場管理部と各圃場の給水状態情報に基づいて圃場群ごとの必要給水量を算出する必要給水量演算部を備え、灌漑用水管理装置に、必要給水量に基づいて各配水ポンプの運転台数及び運転時間を管理する配水管理部が、配水対象となる圃場群に含まれる圃場の需要水深が所定の許容範囲に入ったと判断すると、配水ポンプの運転状態を切り替える。
圃場の集合体である圃場群を単位として各圃場への給水を管理する圃場水管理装置と、単一または複数の加圧式の配水ポンプを介して各圃場群への配水量及び配水時間を管理する灌漑用水管理装置と、を含む給配水管理システムであって、
前記圃場水管理装置に、各圃場の水位情報を収集する圃場管理部と、前記水位情報に基づいて各圃場の設定水位と現在水位との水位差である需要水深を算出し、各圃場群への必要給水量Qを、Q=Σ(需要水深×圃場面積)で算出する必要給水量演算部と、前記需要水深に基づいて各圃場の給水栓の開閉を遠隔制御する給水制御部と、前記圃場群ごとの所定期間の必要給水量と各圃場の需要水深を前記灌漑用水管理装置に出力する給水量報知部と、を備えるとともに、
前記灌漑用水管理装置に、前記給水量報知部から報知された所定期間の必要給水量に基づいて前記配水ポンプの運転台数及び運転時間を管理する配水管理部を備え、
前記配水管理部は、前記給水量報知部から出力された各圃場の需要水深に基づいて、配水対象となる圃場群に含まれる圃場の需要水深が所定の許容範囲に入ったと判断すると、前記配水ポンプの運転状態を切り替えるように構成されている給配水管理システム。
前記配水管理部は、前記圃場群に含まれる全ての圃場の需要水深が所定の許容範囲に入ったときに、前記圃場群に含まれる圃場の需要水深が所定の許容範囲に入ったと判断する請求項1記載の給配水管理システム。
前記配水管理部は、前記圃場群に含まれる全ての圃場の需要水深の平均値が所定の許容範囲に入ったときに、前記圃場群に含まれる圃場の需要水深が所定の許容範囲に入ったと判断する請求項1記載の給配水管理システム。
前記配水管理部は、前記圃場群に含まれる代表圃場の需要水深が所定の許容範囲に入ったときに、前記圃場群に含まれる圃場の需要水深が所定の許容範囲に入ったと判断する請求項1記載の給配水管理システム。
前記配水管理部は、前記圃場群に含まれる圃場の需要水深が所定の許容範囲に入ったと判断すると、前記圃場群に配水する配水ポンプの運転を停止する請求項1から5の何れかに記載の給配水管理システム。
前記配水管理部は、前記圃場群に含まれる圃場の需要水深が所定の許容範囲に入ったと判断すると、前記配水ポンプにより配水する圃場群を配水対象となる圃場群から他の圃場群に切り替える請求項1から5の何れかに記載の給配水管理システム。
前記配水管理部は、前記圃場群に含まれる圃場の需要水深が所定の許容範囲に入ったと判断すると、前記圃場群に配水する配水ポンプの運転を停止する請求項9記載の灌漑用水管理装置。
前記配水管理部は、前記圃場群に含まれる圃場の需要水深が所定の許容範囲に入ったと判断すると、前記配水ポンプにより配水する圃場群を配水対象となる圃場群から他の圃場群に切り替える請求項9記載の灌漑用水管理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載されたような灌漑用水管理システムでは、各揚水機場に複数の揚水用のポンプが設置され、予め設定された時間帯に凡そ必要とされる所定の配水量が維持されるように各ポンプが運転管理されていた。
【0006】
しかし、各圃場群で必要とされる正確な配水量までリアルタイムに管理できるような構成ではなかったため、例えば配水管を介して揚水を直接圃場群に配水するような圧送式のポンプを設置している揚水機場では、必要な配水量が少なく効率が低下する条件であってもポンプを常時運転せざるを得ず、結果としてポンプの寿命が短くなり、そのための電気代などの維持費も嵩んでいた。
【0007】
また、ポンプに備えた電動機を減電圧始動式で駆動するように構成しているため、配水量の変動にかかわらず常時一定の出力で駆動され、必要な配水量が低下すると配管に異常な高圧が掛かって漏水を招く虞がある。
【0008】
そのため、必要な配水量が低下するとポンプで圧送された配水管の水を、リリース弁を介して水源に戻すことで送水圧力を低下させる必要があり、その結果、無駄に電力が消費されるという問題があった。
【0009】
なお、配水量の変動に柔軟に対応できるように、ポンプに備えた電動機をインバータ方式で制御するような構成を採用すると、設備費が非常に高価になる。
【0010】
本発明の目的は、上述した問題に鑑み、圧送式のポンプを適性に運転管理して電気代などの維持費を抑制しながらも各圃場群で必要とされる十分な水量を配水できる給配水管理システム、圃場水管理装置及び灌漑用水管理装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明による給配水管理システムの第一の特徴構成は、圃場の集合体である圃場群を単位として各圃場への給水を管理する圃場水管理装置と、単一または複数の加圧式の配水ポンプを介して各圃場群への配水量及び配水時間を管理する灌漑用水管理装置と、を含む給配水管理システムであって、前記圃場水管理装置に、各圃場の水位情報を収集する圃場管理部と、前記水位情報に基づいて各圃場の設定水位と現在水位との水位差である需要水深を算出し、各圃場群への必要給水量Qを、Q=Σ(需要水深×圃場面積)で算出する必要給水量演算部と、前記需要水深に基づいて各圃場の給水栓の開閉を遠隔制御する給水制御部と、前記圃場群ごとの所定期間の必要給水量と各圃場の需要水深を前記灌漑用水管理装置に出力する給水量報知部と、を備えるとともに、前記灌漑用水管理装置に、前記給水量報知部から報知された所定期間の必要給水量に基づいて前記配水ポンプの運転台数及び運転時間を管理する配水管理部を備え、前記配水管理部は、前記給水量報知部から出力された各圃場の需要水深に基づいて、配水対象となる圃場群に含まれる圃場の需要水深が所定の許容範囲に入ったと判断すると、前記配水ポンプの運転状態を切り替えるように構成されている点にある。
【0012】
圃場水管理装置では、圃場管理部で管理される各圃場の給水状態情報に基づいて、必要給水量演算部によって圃場群ごとの必要給水量が算出される。圃場が一定灌水モードで稼働している場合には、各圃場群への必要給水量Qが、Q=Σ(需要水深×圃場面積)、つまり圃場群を構成する個別の圃場の需要水深と圃場面積の積で求まる水量を各圃場ごとに加算することで求められる。算出された圃場群ごとの必要給水量が給水量報知部を介して灌漑用水管理装置に伝達される。
【0013】
灌漑用水管理装置に備えた配水管理部は、伝達された圃場群ごとの必要給水量に基づいて配水ポンプの運転台数及び運転時間を管理し、各圃場の需要水深が所定の許容範囲に入ったと判断すると、配水ポンプの運転状態を切り替えることで無駄な電力消費を抑制する。そして、各圃場群へ配水された灌漑用水は、給水制御部が各圃場の給水栓を開閉制御することにより、各圃場に適切に給水される。
【0014】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記配水管理部は、前記圃場群に含まれる全ての圃場の需要水深が所定の許容範囲に入ったときに、前記圃場群に含まれる圃場の需要水深が所定の許容範囲に入ったと判断する点にある。
【0015】
圃場群に含まれる全ての圃場の需要水深が0になるまで、つまり圃場の水深が設定水深になるまでその圃場群に送水すると、需要水深が0に近づくに連れて次第に必要水量が低下して管内圧力が上昇する。しかし、圃場群に含まれる全ての圃場の需要水深が所定の許容範囲に入ったときに、配水ポンプの運転状態を切り替えることで、リリース弁を解放しなくても管内圧力の異常な上昇を招くことがなく、無駄な電力消費を抑制することができる。
【0016】
同第三の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記配水管理部は、前記圃場群に含まれる全ての圃場の需要水深の平均値が所定の許容範囲に入ったときに、前記圃場群に含まれる圃場の需要水深が所定の許容範囲に入ったと判断する点にある。
【0017】
圃場群に含まれる全ての圃場の需要水深の平均値が所定の許容範囲に入ったときに、圃場群に含まれる圃場の需要水深が所定の許容範囲に入ったと判断することにより、余裕をもって配水ポンプの運転状態を切り替えることができる。
【0018】
同第四の特徴構成は、上述した第二または第三の特徴構成に加えて、前記配水管理部は、前記圃場群に含まれる圃場の需要水深が所定時間にわたり減少しない圃場を判断対象から除外する点にある。
【0019】
需要水深が所定時間にわたり減少しない圃場は、何らかの影響により保水できない状態にあると判断できるため、そのような圃場の水位の上昇を待つことによる影響、つまり配水管の管内圧力の上昇や、排水ポンプに消費される無駄な電力の上昇や排水ポンプの寿命の短縮化などの影響を低減することができる。
【0020】
同第五の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記配水管理部は、前記圃場群に含まれる代表圃場の需要水深が所定の許容範囲に入ったときに、前記圃場群に含まれる圃場の需要水深が所定の許容範囲に入ったと判断する点にある。
【0021】
圃場群に含まれる全ての圃場の需要水深を監視すると処理負荷が増大するが、代表圃場の需要水深を監視対象とすることで、処理負荷を低減することができる。
【0022】
同第六の特徴構成は、上述した第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、前記配水管理部は、前記圃場群に含まれる圃場の需要水深が所定の許容範囲に入ったと判断すると、前記圃場群に配水する配水ポンプの運転を停止する点にある。
【0023】
全ての圃場の需要水深が0になるまで送水すると、次第に必要送水量が低下して管内圧力の上昇を来すことになるので、リリース弁を解放して管内圧力の異常な上昇を回避する必要があり、これにより無駄な電力消費は発生する。しかし、圃場の需要水深が所定の許容範囲に入ったことをもって配水ポンプの運転を停止することで、そのような無駄な電力消費を抑制することができる。
【0024】
同第七の特徴構成は、上述した第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、前記配水管理部は、前記圃場群に含まれる圃場の需要水深が所定の許容範囲に入ったと判断すると、前記配水ポンプにより配水する圃場群を配水対象となる圃場群から他の圃場群に切り替える点にある。
【0025】
全ての圃場の需要水深が0になるまで送水すると、次第に必要送水量が低下して管内圧力の上昇を来すことになるので、リリース弁を解放して管内圧力の異常な上昇を回避する必要があり、これにより無駄な電力消費は発生する。しかし、圃場の需要水深が所定の許容範囲に入ったことをもって配水対象となる圃場群を切り替えることで、管内圧力の異常な上昇を招くことなく他の圃場群に効率よく配水することができる。
【0026】
本発明による圃場水管理装置の第一の特徴構成は、上述した第一から第七の何れかの特徴構成を備えた給配水管理システムに組み込まれる圃場水管理装置であって、各圃場の水位情報を収集する圃場管理部と、前記水位情報に基づいて各圃場の設定水位と現在水位との水位差である需要水深を算出し、各圃場群への必要給水量Qを、Q=Σ(需要水深×圃場面積)で算出する必要給水量演算部と、前記需要水深に基づいて各圃場の給水栓の開閉を遠隔制御する給水制御部と、前記圃場群ごとの所定期間の必要給水量と各圃場の需要水深を前記灌漑用水管理装置に出力する給水量報知部と、を備え、前記給水制御部は、前記需要水深が第1所定値より大きな値となる圃場の給水栓に対して給水指令を出力し、前記需要水深が前記第1所定値より小さな第2所定値となる圃場の給水栓に対して給水停止指令を出力する点にある。
【0027】
給水制御部は、需要水深が第1所定値より大きな値となる圃場の給水栓に対して水位を回復すべく給水指令を出力して給水し、需要水深が第1所定値より小さな第2所定値となる圃場、つまり減水深の影響が殆どないような圃場の給水栓に対しては給水停止指令を出力して給水を回避することで、必要な圃場に効率的に給水することができるようになる。
【0028】
本発明による灌漑用水管理装置の第一の特徴構成は、上述した第一から第七の何れかの特徴構成を備えた給配水管理システムに組み込まれる灌漑用水管理装置であって、前記給水量報知部から報知された所定期間の必要給水量に基づいて前記配水ポンプの運転台数及び運転時間を管理する配水管理部を備え、前記配水管理部は、前記給水量報知部から出力された各圃場の需要水深に基づいて、配水対象となる圃場群に含まれる圃場の需要水深が所定の許容範囲に入ったと判断すると、前記配水ポンプの運転状態を切り替えるように構成されている点にある。
【0029】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記配水管理部は、前記圃場群に含まれる圃場の需要水深が所定の許容範囲に入ったと判断すると、前記圃場群に配水する配水ポンプの運転を停止する点にある。
【0030】
同第三の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記配水管理部は、前記圃場群に含まれる圃場の需要水深が所定の許容範囲に入ったと判断すると、前記配水ポンプにより配水する圃場群を配水対象となる圃場群から他の圃場群に切り替える点にある。
【発明の効果】
【0031】
以上説明した通り、本発明によれば、圧送式のポンプを適性に運転管理して電気代などの維持費を抑制しながらも各圃場群で必要とされる十分な水量を配水できる給配水管理システム、圃場水管理装置及び灌漑用水管理装置を提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に、本発明による給配水管理システム、圃場水管理装置及び灌漑用水管理装置を説明する。以下の説明で用いる圃場との用語は水田及び畑の双方を意味し、水源から分水工などで分水された共通の配水系統から灌漑用水が供給される複数の圃場を圃場群という。また、規模の大きな圃場群は複数のブロック圃場群の集合で構成され、ブロック圃場群単位で給水の要否が管理される。通常、共通の水源から取水された灌漑用水は分水工などにより分水された複数の配水系統によって其々異なる圃場群に給水される。以下の実施形態では稲作用の圃場について説明するが、畑用の圃場であっても同様である。
【0034】
[灌漑用水設備の構成]
図1に示すように、灌漑用水設備は、河川や湖沼などの水源池130に設置された揚水機場131で取水された灌漑用水を幹線となる配水管120及び支線となる配水管121、さらに配水管121に接続された給水管100を介して各圃場1に送水するための設備である。
【0035】
なお、本実施形態では、便宜上、灌漑用水管理装置により管理される灌漑用水の送水を配水と称し、圃場水管理装置により管理される灌漑用水の圃場への送水を給水と称している。
【0036】
揚水機場131で取水された灌漑用水は、圧送ポンプ131Pを介して排水管120に直接圧送される。ポンプ131Pは原則として交互運転される2基のポンプを単一または複数組備えて構成され、送水量が多くなる場合には2基のポンプの双方が同時運転される。
【0037】
本明細書では、灌漑用水を各圃場群に配水するという機能から圧送ポンプを配水ポンプと表記する場合もある。
【0038】
幹線となる配水管120は各圃場群10に向けてそれぞれ分岐され、分岐された各配水管121への配水量を調整するための分水工として機能する分水装置140が設けられている。つまり、揚水機場131から圧送された灌漑用水は、分水装置140によって配水量が調整された後に給水管100を介して各圃場群10へ送水される。
【0039】
給水管100に沿って配された各圃場1には、給水管100から給水可能に接続された給水栓を備えた給水装置2が設けられている。また、各圃場1には排水栓を備えた排水装置4が設けられ、排水装置4を介した各圃場1からの放水が排水路9を経由して河川に放流されるように構成されている。
【0040】
[圃場設備の構成]
図2に示すように、圃場1には、給水管100に流れる灌漑用水を、導水路3を介してして圃場1に導く給水栓を備えた給水装置2と、圃場1の水を、放水路5を介して排水路9に排水する排水栓を備えた排水装置4と、圃場1の水位を計測する水位センサ6などが設けられている。
【0041】
給水装置12及び排水装置16にはソーラーパネルSPを備えた蓄電器、給水栓または排水栓を駆動する電動モータ、電動モータを制御する制御回路、無線中継器7を介して無線通信する通信回路などが設けられ、ソーラーパネルSPによる発電電力が蓄積された蓄電器の電力によって給水栓や排水栓を駆動するモータや通信回路などが作動するように構成されている。
【0042】
圃場1の近傍にはインターネットなどの通信ネットワークに接続可能な無線中継器7が設置され、給水装置2及び排水装置4に備えた通信回路は無線中継器7を介して圃場水管理装置として機能する圃場水管理サーバ21と通信可能に構成されている。給水栓または排水栓の状態や水位センサ6で検出された各圃場1の水位などが圃場水管理サーバ21に送信されるとともに、圃場水管理サーバ21により給水栓を介した給水量及び/または排水栓を介した排水水位が遠隔制御により調整可能に構成されている。
【0043】
[給配水管理システムの構成]
図1に戻り、揚水機場131に備えた圧送ポンプ131Pには、一次抵抗始動方式を採用した減電圧始動回路を備えた制御回路及び制御回路を外部から操作するための通信回路が設けられ、通信回路を介して灌漑用水管理装置として機能する灌漑用水管理サーバ31と通信可能に構成されている。揚水機場131と各圃場群10を結ぶ配水管120,121に備えた各分水装置140には分水のための流量調整弁と、流量調整弁を制御する制御回路及び通信回路が設けられ、通信回路を介して灌漑用水管理サーバ31と通信可能に構成されている。灌漑用水管理サーバ31により揚水機場に備えた圧送ポンプ131Pや分水装置140に備えた流量調整弁が遠隔制御される。なお、減電圧始動回路は、一次抵抗始動方式以外にコンドルファ始動方式やスターデルタ始動方式などの公知の方式を採用することが可能である。
【0044】
水稲栽培を例に挙げると、圃場に十分な量の水を供給して代掻きを行ない、田植え後のしばらくは稲の保護のために深水管理を継続し、ある程度安定すると浅水管理を経て間断灌水して根の成長を促し、茎の増加を抑制すべく中干した後に間断灌水を再開し、収穫時期に落水する、といったように稲の成長に伴って圃場の水位を調整する必要がある。
【0045】
代掻きの時期など、各圃場の給水時期が重なり同時期に大量の用水を供給する必要がある場合には、水源で確保された一定量の灌漑用水を各圃場に公平に配水するべく、輪番制を採用するなど圃場群単位で給水日程を計画して管理する必要がある。
【0046】
深水管理や浅水管理などのように、各圃場1の水位を設定水位に維持する一定灌水モードでは、蒸発や蒸散さらには浸透など減水深の影響により設定水位から低下した水量を日々補充する必要もある。
【0047】
しかし、灌漑用水管理サーバ31で、各圃場群10に必要な給水量の変動が把握できないために、必要な給水量が低下した場合でも圧送ポンプ131Pを常時運転する必要があり、そのような場合には配管圧力の上昇をきたして漏水が発生する虞があるため、リリース弁を介して排水管に送出された水を水源に戻す必要があった。その結果、圧送ポンプ131Pの寿命が短くなり、また電力消費が嵩むという問題もあった。
【0048】
本発明による給配水管理システムは、この様な問題に柔軟に対処すべく、上述した灌漑用水管理サーバ31と圃場水管理サーバ21をインターネットなどの通信媒体を介して連系させることにより、営農者が管理する個々の圃場の状況に応じて適切に灌漑用水を供給することを可能とするシステムである。
【0049】
具体的に、
図3に示すように、給配水管理システム200は、圃場水管理システム20と、灌漑用水管理システム30とで構成されている。
【0050】
圃場水管理システム20は、圃場水管理サーバ21と、営農者などが所有する端末装置8と、各圃場1に備えた給水装置2、排水装置4、水位センサ6などを備えて構成されている。端末装置8には、スマートフォンやタブレットコンピュータなどの可搬性の端末装置やデスクトップコンピュータのような据置型の端末装置が含まれる。
【0051】
圃場水管理システム20に備えた圃場水管理サーバ21には、圃場管理部21A、必要水量演算部21B、給水量報知部21C、給水制御部21D、画像表示処理部21Eなどの機能ブロックが設けられている。
【0052】
圃場水管理サーバ21には、CPUボード、メモリボード、通信ボード、大容量の外部記憶装置などが設けられ、メモリボードに備えたメモリに格納されたアプリケーションプログラムがCPUボードに搭載されたCPUによって実行されることにより、上述した各機能ブロックが実現される。
【0053】
圃場管理部21Aは、各圃場1の稼働状態を管理するとともに各圃場1の給水状態情報を収集する。稼働状態とは栽培中または休耕中の何れかを識別する情報と、栽培中の場合には代掻き、深水管理、浅水管理、中干し、間断灌水、落水、かけ流しの何れかを識別する情報が含まれ、主に営農者の端末装置8から入力される情報である。
【0054】
給水状態情報とは、各圃場1の給水状態を示す情報であり、設定水位、現在水位、給水栓の開度などを含む。設定水位は営農者の端末装置8から入力され排水装置4に備えた排水栓に設定された排水水位をいい、現在水位は水位センサ6により検出された圃場1の水位をいい、給水栓の開度とは給水装置2に備えた給水栓の開度をいう。
【0055】
必要給水量演算部21Bは、各圃場1の給水状態情報に基づいて圃場群ごとの必要給水量をリアルタイムに算出する。具体的には、各圃場群10に含まれる各圃場1の稼働状態と設定水位、現在水位(需要水深を含む)、給水栓の開度などに基づいて、所定時間ごとに算出した必要給水量の総量が圃場群ごとの必要給水量となる。所定時間の具体的な数値は特に限定するものではなく、10分ごと、30分ごと、1時間ごとなど、リアルタイム性が確保できる時間間隔でよい。通常は、1日単位で各圃場群に給水制御することになり、その1日のうちで各圃場への給水が完了するまでの間で、10分ごと、30分ごと或いは1時間ごとにという間隔で設定すればよい。
【0056】
例えば、稼働状態が一定灌水モードである場合に、必要給水量演算部21Bは給水状態情報に含まれる各圃場の水位情報に基づいて、各圃場の設定水位と現在水位との水位差である需要水深を算出し、各圃場群への必要給水量Qを、Q=Σ(需要水深×圃場面積)で算出することができる。ここでは、休耕中の圃場は必要給水量Qの算出対象圃場から除かれる。また、栽培中の圃場であっても需要水深が極めて小さな圃場は必要給水量Qの算出対象圃場から除くことも可能である。需要水深が極めて小さな圃場とは蒸発量、蒸散量や浸透量である減水深が小さな圃場などである。
【0057】
各圃場1の需要水深と圃場面積との積により各圃場1で必要とされる水量が求まり、各圃場1で必要とされる水量を加算することにより各圃場群10への必要給水量Qが求まる。圃場水管理サーバ21が複数の圃場群10を管理する場合には、各圃場群10の必要給水量Qの合計量が必要な給水量となる。
【0058】
給水量報知部21Cは、必要給水量演算部21Bにより算出された圃場群ごとの必要給水量を灌漑用水管理サーバ31に出力する。後述するように灌漑用水管理サーバ31は圃場群ごとの必要給水量に基づいて圧送ポンプ131P及び圃場群配水量調整装置14を制御する。
【0059】
給水制御部21Dは、各圃場の給水栓の開閉を遠隔制御する機能ブロックで、稼働状態が一定灌水モードである場合に、需要水深が第1所定値より大きな値となる圃場の給水栓に対して一斉に給水指令を出力する。そして、好ましくは、需要水深が第1所定値より小さな第2所定値となる圃場の給水栓に対して給水停止指令を出力する。
【0060】
第1所定値とは稲の育成に支障をきたす虞がない十分な水位であって、水位が回復したと評価可能な値で、例えば需要水深で10mm、第2所定値は需要水深が第1所定値に回復した後に圃場1からの溢水を回避可能な値、例えば数mmに設定することができる。圃場1の水位が設定水位に達していても、風の影響などで水位計6により検出される水位が設定水位に達していない場合には、排水栓から水が溢水している場合もあるため、安全策として設定される水位である。
【0061】
第1所定値及び第2所定値は上述の値に限るものではなく、後述する需要水深の許容範囲に応じて適宜設定される値である。
【0062】
画像表示処理部21Eは、圃場管理部21Aに備えた機能ブロックで、各圃場群10に含まれる各圃場1の稼働状態及び水位を目視により識別可能な態様で表示するモニタ画像を生成し、外部機器8からのリクエストに応じてモニタ画像を表示するように構成されている。
【0063】
図4にはモニタ画像が例示されている。水源地130から取水した灌漑用水が2基の圧送ポンプ131Pにより配水管120,122及び給水管100を介して二つの圃場群10A,10Bに配水されている。各圃場群10A,10Bは其々12枚の圃場1で構成され、各圃場1には給水栓Vが設置されている。なお、図示されていないが、圃場1の水位を設定水位に保つ排水栓も各圃場1に備えている。
【0064】
モニタ画像では、各圃場1が其々の需要水深に応じて異なる表示色で塗り分けられ、表示色を目視確認することにより、各圃場1の需要水深を確認することができるように構成されている。
【0065】
灌漑用水管理システム30は、灌漑用水管理サーバ31と、配水池122から各圃場群10への給水量を調整する圃場群給水量調整装置140として機能する分水装置140を備えている。圃場群給水量調整装置140により各圃場群10への配水総量が調整される。
【0066】
灌漑用水管理サーバ31には、給水量報知部21Cから報知された必要給水量に基づいて各圧送ポンプ131Pの運転台数及び運転時間を管理する配水管理部31Aと、送水可能な灌漑用水の総量と必要給水量に基づいて各圃場群10への配水量を調整する配水スケジュール管理部31Bの各機能ブロックが設けられている。配水スケジュール管理部31Bは配水管理部31Aの一機能ブロックとなる。
【0067】
灌漑用水管理サーバ31には、CPUボード、メモリボード、通信ボード、大容量の外部記憶装置などが設けられ、メモリボードに備えたメモリに格納されたアプリケーションプログラムがCPUボードに搭載されたCPUによって実行されることにより、上述した各機能ブロックが実現される。
【0068】
配水スケジュール管理部31Bは、自身が管理している送水可能な灌漑用水の総量と、給水量報知部21Cから報知された必要給水量の総量に基づいて、各圃場群10への配水量を調整する。全ての圃場群10に同時に必要給水量を送水することが困難な場合に、予め設定された順序或いは予め設定された配分比で圃場群配水量調整装置140を制御することにより、各圃場群10への送水量を調整する。
【0069】
例えば、予め設定された順序に従って対応する単一または複数の圃場群に送水したり、必要給水量の多い圃場群10から少ない圃場群10の順に送水量を調整したり、或いは、必要給水量の比率に従って各圃場群10に送水したりするように圃場群配水量調整装置140を制御する。もちろん自身が管理している送水可能な灌漑用水の総量が必要給水量の総量より多い場合には、このような配水量の調整は不要となる。
【0070】
必要給水量が上昇すると必要給水量に見合うように配水管理部31Aにより圧送ポンプ131Pの運転台数及び/または運転時間が増加するように適切に制御され、必要給水量が減少すると必要給水量に見合うように圧送ポンプ131Pの運転台数及び/または運転時間が減少するように適切に制御される。その結果、圧送ポンプ131Pに要する無駄な電力消費を抑制してポンプ寿命を引き伸ばすことができるようになる。以下に配水管理部31Aにより実行される制御態様を説明する。
【0071】
第1の態様として、配水管理部31Aは、或る圃場群10に含まれる全ての圃場1の需要水深が所定の許容範囲に入ったときに、当該圃場群10に含まれる圃場1の需要水深が所定の許容範囲に入ったと判断して、配水ポンプの運転状態を切り替える。
【0072】
例えば、配水ポンプの運転台数を減少させ、或いは全ての排水ポンプの運転を停止する。また配水ポンプにより配水する圃場群10を配水対象となる圃場群10から他の圃場群10に切り替え、他の圃場群10で要求される給水量に見合った送水量となるように配水ポンプの運転台数を切り替える。
【0073】
圃場群に含まれる全ての圃場の需要水深が0になるまで、つまり圃場の水深が設定水深になるまでその圃場群に送水すると、需要水深が0に近づくに連れて次第に必要水量が低下して管内圧力が上昇する。
【0074】
しかし、圃場群に含まれる全ての圃場の需要水深が所定の許容範囲に入ったときに、配水ポンプの運転状態を切り替えることで、管内圧力の異常な上昇を回避するために必要なリリース弁の解放運転時間を短縮でき、それだけ無駄な電力消費を抑制するとともに配水ポンプの寿命を伸ばすことができる。
【0075】
第2の態様として、配水管理部31Aは、圃場群10に含まれる全ての圃場1の需要水深の平均値が所定の許容範囲に入ったときに、圃場群10に含まれる全圃場1の需要水深が所定の許容範囲に入ったと判断して、配水ポンプの運転状態を切り替える。配水ポンプの運転状態の切替えの態様は上述と同様である。
【0076】
圃場群10に含まれる全ての圃場1の需要水深の平均値が所定の許容範囲に入ったときに、圃場群10に含まれる圃場1の需要水深が所定の許容範囲に入ったと判断することにより、余裕をもって配水ポンプの運転状態を切り替えることができる。全ての圃場1の需要水深が所定の許容範囲に入ったと判断する第1の態様よりもリリース弁の解放運転時間を短縮でき、それだけ無駄な電力消費を抑制するとともに配水ポンプの寿命を伸ばすことができる。
【0077】
第1及び第2の態様の何れであっても、配水管理部31Aは、圃場群10に含まれる圃場1の需要水深が所定時間にわたり減少しない圃場を判断対象から除外することが好ましい。
【0078】
需要水深が所定時間にわたり減少しない圃場は、何らかの影響により保水できない状態にあると判断できるため、そのような圃場の水位の上昇を待つことによる影響、つまり配水管の管内圧力の上昇や、排水ポンプに消費される無駄な電力の上昇や排水ポンプの寿命の短縮化などの影響を低減することができる。例えば、水田に住み着いているザリガニなどによって畔を越える穴が掘られて圃場から漏水するような場合や、給水栓が破損して給水できない場合や、排水栓が破損して保水できないような場合である。
【0079】
第3の態様として、配水管理部31Aは、圃場群10に含まれる代表圃場の需要水深が所定の許容範囲に入ったときに、圃場群10に含まれる全圃場1の需要水深が所定の許容範囲に入ったと判断して、配水ポンプの運転状態を切り替える。配水ポンプの運転状態の切替えの態様は上述と同様である。
【0080】
圃場群10に含まれる全ての圃場1の需要水深を監視すると処理負荷が増大するが、代表圃場の需要水深を監視対象とすることで、処理負荷を低減することができる。代表圃場として、例えば圃場群の中で圃場面積が最大の圃場を選定することができる。圃場面積が最大の圃場は許容範囲に入るまでの時間が最も長くなると想定され、圃場面積が最大の圃場の水位が許容範囲に入ると他の圃場も当然に許容範囲に入っていると想定できるためである。
【0081】
代表圃場として、例えば圃場群の中で給水管の最も下流に位置する圃場を選定することができる。給水圧がもっとも低くなるため、給水に要する時間が最も長くなると想定できるからである。なお、党が圃場の面積が小さければ、ご判断を招く虞があるため、少なくとも圃場群に含まれる各圃場の平均面積を有し、給水管の最も下流に位置する圃場を代表圃場として選定することが好ましい。
【0082】
所定の許容範囲とは、圃場の水深が設定水位より低いものの、例えば1日後に行われる次回の給水までの間、作物の生育に支障が出ない程度の水位をいい、例えば需要水深が10mm程度の値に設定される。この場合、所定の許容範囲は第1設定値と同じ値に設定される。なお、所定の許容範囲は10mmに限るものではなく、設定水位との関係で決定される。例えば深水管理や浅水管理の設定水位に応じて適宜設定される値であり、深水管理の許容範囲より浅水管理の許容範囲の方が小さな値に設定される。
【0083】
上述した第1の態様と第2の態様と第3の態様による制御機能を備え、いずれの態様を採用するのかを、圃場群の特性に応じて切り替えるように構成してもよい。例えば、各圃場の面積がほぼ同一で大差がなく、また給水管に沿って給水圧力の変動がそれほど大きくない圃場群では第1の態様を採用し、圃場の面積に大きな差はないものの、圃場数が多く、給水管に沿って給水圧力の変動がそれほど大きくない圃場群では第2の態様を採用し、各圃場の面積が様々で大きな面積の圃場と小さな面積の圃場が混在するような圃場群や、給水管に沿って上流側と下流側での給水圧力に大きな差がある圃場群では第3の態様を採用するなどである。
【0084】
圃場群の特性と、設定水位、需要水深に基づいて、第1の態様と第2の態様と第3の態様の何れに切り替えるかを判断する機械学習装置を備え、機械学習装置による学習結果に基づいて態様を切り替えるように構成してもよい。圃場群の特性には、上述した圃場の数、圃場の面積ばらつき、給水管に沿った圧力勾配などが含まれる。設定水位には深水管理と浅水管理の何れに該当するのかといった情報が含まれる。
【0085】
機械学習装置に用いられるアルゴリズムとして、回帰分析などの統計的手法を採用したアルゴリズムや、ニューラルネットワークを用いたパターン識別アルゴリズムなどのAIを用いたアルゴリズムを採用することができる。
【0086】
以下、給配水管理システム200で実行される給配水制御の手順をフローチャートに基づいて詳述する。
【0087】
図5に示すように、灌漑用水管理サーバ31の配水管理部31Aは、揚水機場から取水した配水可能水量を取得するとともに(SA1)、圃場水管理サーバ21に備えた給水量報知部21Cから各圃場群の必要給水量を取得する(SA2)。配水可能水量が各圃場群の必要給水量を下回る、つまり一斉配水が困難と判断すると(SA3,N)、各圃場群への配水スケジュール、つまり各圃場群に必要給水量の灌漑用水を配水できるように配水時間帯と配水量を生成して(SA4)、各圃場群配水量調整装置14を調整制御し(SA5)、圃場水管理サーバ21に各圃場群への配水スケジュールを報知する(SA6)。
【0088】
配水可能水量が各圃場群の必要給水量を上回る、つまり一斉配水が可能と判断すると(SA3,Y)、各圃場群に必要給水量を配水するように各圃場群配水量調整装置14を調整制御し(SA7)、圃場水管理サーバ21に各圃場群への配水スケジュールを報知する(SA6)。
【0089】
次に、配水スケジュールに応じて必要な量の灌漑用水を圧送できるように、圧送ポンプの台数を算出して駆動し(SA9)、対象圃場群の需要水深が許容範囲に達したか否かを判定し、許容範囲に入っていれば当該圃場群への排水を停止すべく圧送ポンプを停止制御する(SA10)。その後、給水管からの給水圧に依存するが、当該圃場群の各圃場への給水は第2設定値になるまで継続される。
【0090】
その後、ステップSA1に戻り、同様の処理が繰り返される。なお、上述したステップSA10では、一律に圧送ポンプを停止制御するのではなく、他の圃場群への配水を継続する必要がある場合には、必要な配水量を確保できる程度に圧送ポンプに運転台数が制限されることになる。
【0091】
図6に示すように、圃場水管理サーバ21の圃場管理部21Aは各圃場群10に属する圃場1に対する管理情報を収集して、その管理情報をメモリに記憶する(SB1)。管理情報とは各圃場1の稼働状態に関する情報と各圃場1の給水状態に関する情報が含まれる。
【0092】
上述したように、稼働状態とは栽培中または休耕中の何れかを識別する情報と、栽培中の場合には代掻き、深水管理、浅水管理、中干し、間断灌水、落水、かけ流しの何れかを識別する情報が含まれ、主に営農者の端末装置8から入力される情報である。また、給水状態とは、各圃場1の給水状態を示す情報であり、設定水位、現在水位、給水栓の開度などを含む。設定水位は営農者の端末装置8から入力され排水装置4に備えた排水栓に設定された排水水位をいい、現在水位は水位センサ6により検出された圃場1の水位をいい、給水栓の開度とは給水装置2から入力され給水装置2に備えた給水栓の開度をいう。
【0093】
必要給水量演算部21Bは、圃場管理部21Aにより収集されメモリに記憶された管理情報に基づいて、上述した圃場1ごとの必要給水量を算出するとともにその圃場が属する圃場群10の必要給水量を算出し、さらに管理下にある全圃場群10に対して同様の演算処理を実行し、その結果を前記メモリに記憶する(SB2,SB3)。
【0094】
全圃場群10に対して必要給水量の算出処理が終了すると(SB3,Y)、給水量報知部21Cはその算出結果をメモリから読み出して灌漑用水管理サーバ31の配水管理部31Aに報知する(SB4)。ステップSB1からステップSB4の処理が所定間隔で繰り返され、配水管理部31Aには常に最新の必要給水量が報知される。所定時間とは特に限定される値ではないが、数十分から数時間の範囲に設定されることが好ましい。
【0095】
図7に示すように、灌漑用水管理サーバ31から配水スケジュールを取得すると(SC1)、圃場管理部21A及び給水制御部21Dは、協同して各圃場1に備えた給水装置2を制御して給水管理する。
【0096】
本発明の対象である一定潅水モードであれば、配水スケジュールに応じて給水可能な圃場群10を特定し、当該圃場群10に含まれる圃場のうち、需要水深が第1所定値より大の圃場に対して一斉に給水制御する(SC2)。
【0097】
給水の過程で各圃場1に備えた水位センサ6からの入力に応じて最新の水位情報が得られるので(SC3)、圃場管理部21Aに備えた画像表示処理部21Eにより、対応する圃場群10のモニタ画像を更新する(SC4)。
【0098】
さらに需要水深が第2所定値より小さくなるまで各圃場への給水を継続し、需要水深が第2所定値より小さくなると対応する圃場の給水を停止するように制御する(SC6)。
【0099】
全圃場群10に対して給水が終了するまで、上述のステップSC3からSC6が繰り返され、全圃場群10に対して給水が終了すると(SC7)、次の配水スケジュールの取得に対応して同様の処理を繰り返す。
【0100】
図8には、
図4に示した給水前の圃場群10のモニタ画像から上述した一定潅水モードでの給水制御の途中経過が示されている。この例では必要給水量の多い圃場群10Bの圃場から給水が実行され、圃場群10Bの大半の圃場が需要水深1cm未満となり、さらに圃場群10Aの需要水深の大きな値を示す圃場の一部が需要水深0cm未満となったことが示されている。
【0101】
営農者が、端末装置を介してこのようなモニタ画像を目視確認することにより、状況を適切かつ迅速に把握することができるようになる。
【0102】
以上説明した実施形態は本発明の一例に過ぎず、該記載により本発明の技術的範囲が限定されることを意図するものではなく、給配水管理システム、圃場水管理装置及び灌漑用水管理装置の具体的な構成は本発明による作用効果を奏する範囲において適宜変更設計可能であることはいうまでもない。