【解決手段】 歯を覆う歯カバー具を製作する際に用いられる歯カバー具用プレート材の製造方法であって、溶融された樹脂素材を、環状流路を経由させて押し出すことで筒形状に成形して筒状中間材14を得る中間材生成工程と、溶融状態の筒状中間材14を径方向に挟み込むことにより内周面同士を溶着させることで、板状に成形し且つ冷却硬化させて歯カバー具用プレート材を得る板状体生成工程と、を備えるようにした。
前記歯カバー具用プレート材において、前記板状体生成工程で挟み込まれる方向の寸法を厚みT、前記筒状中間材の軸方向に沿う寸法を縦幅H、前記厚みT及び縦幅Hの双方に直行する方向に沿う長さを横幅Wと定義し、かつ、前記筒状中間材の内周面の周長をLと定義する際に、
L/2>Wを満たすことを特徴とする、
請求項1に記載の歯カバー具用プレート材の製造方法。
前記歯カバー具用プレート材において、前記板状体生成工程で挟み込まれる方向の寸法を厚みT、前記筒状中間材の軸方向に沿う寸法を縦幅H、前記厚みT及び縦幅Hの双方に直交する方向に沿う長さを横幅Wと定義する際に、
前記板状体生成工程では、前記歯カバー具用プレート材における前記横幅W方向の両外側にはみ出し材が残存するように成形することを特徴とする、
請求項1又は2に記載の歯カバー具用プレート材の製造方法。
前記中間材生成工程では、最内周に位置する第1樹脂素材層、及び該第1樹脂素材層と異材料で且つ該第1樹脂素材層の外周に隣接する第2樹脂素材層を有する複数層構造の前記筒状中間材を成形することを特徴とする、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の歯カバー具用プレート材の製造方法。
前記板状体生成工程では、前記第1樹脂素材層の内周面同士を溶着して単層化した第1層、及び前記第1層の両外側に隣接し且つ前記第2樹脂素材層からなる一対の第2層を有する前記歯カバー具用プレート材を得ることを特徴とする、
請求項7又は8に記載の歯カバー具用プレート材の製造方法。
前記板状体生成工程では、前記第1樹脂素材層によって面方向の一部に形成される第1層、及び前記第1層の両外側に隣接し且つ前記第2樹脂素材層からなる一対の第2層を有する前記歯カバー具用プレート材を得ることを特徴とする、
請求項7又は8に記載の歯カバー具用プレート材の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
歯カバー具用プレート材は、サイズ、厚み、素材、硬さ等に関して最適な材料を選定することが望ましい。例えば、コンタクトの多いスポーツの場合、衝撃を吸収するためにも、厚みの大きい(例えば3mm以上)の歯カバー具用プレート材を採用する。
【0008】
しかし、歯カバー具用プレート材は、射出成形機や、Tダイ法を用いた大型押出成形機、金属ローラを用いたカレンダリングによって、広幅の帯状シートを製造した後、ダイス状にカットして量産される。結果、製造ロットが大きくなると同時に、設備費用が多額となり、同一材料且つ同一厚みの歯カバー具用プレート材が大量生産されるものの、価格も高価である。結果、少量で多品種の歯カバー具用プレート材が、市場に流通しにくいという問題がある。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、多品種かつ少量生産に好適な歯カバー具用プレート材の製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明は、歯を覆う歯カバー具を製作する際に用いられる歯カバー具用プレート材の製造方法であって、溶融された樹脂素材を、環状流路を経由させて押し出すことで筒形状に成形して筒状中間材を得る中間材生成工程と、溶融状態の前記筒状中間材を径方向に挟み込むことにより内周面同士を溶着させることで、板状に成形し且つ冷却硬化させて歯カバー具用プレート材を得る板状体生成工程と、を備えることを特徴とする歯カバー具用プレート材の製造方法である。
【0011】
上記歯カバー具用プレート材の製造方法に関連する本発明は、前記歯カバー具用プレート材において、前記板状体生成工程で挟み込まれる方向の寸法を厚みT、前記筒状中間材の軸方向に沿う寸法を縦幅H、前記厚みT及び縦幅Hの双方に直行する方向に沿う長さを横幅Wと定義し、かつ、前記筒状中間材の内周面の周長をLと定義する際に、L/2>Wを満たすことを特徴とする。
【0012】
上記歯カバー具用プレート材の製造方法に関連する本発明は、前記歯カバー具用プレート材において、前記板状体生成工程で挟み込まれる方向の寸法を厚みT、前記筒状中間材の軸方向に沿う寸法を縦幅H、前記厚みT及び縦幅Hの双方に直交する方向に沿う長さを横幅Wと定義する際に、前記板状体生成工程では、前記歯カバー具用プレート材における前記横幅W方向の両外側にはみ出し材が残存するように成形することを特徴とする。
【0013】
上記歯カバー具用プレート材の製造方法に関連する本発明は、前記板状体生成工程では、前記歯カバー具用プレート材用の形状を画定する凹部を有する開閉式金型によって、前記筒状中間材を挟み込むことを特徴とする。
【0014】
上記歯カバー具用プレート材の製造方法に関連する本発明は、前記板状体生成工程の前において、前記筒状中間材の内部に正圧を導入して該筒状中間材を膨らませる膨張工程を有することを特徴とする。
【0015】
上記歯カバー具用プレート材の製造方法に関連する本発明は、前記板状体生成工程の前において、前記歯カバー具用プレート材の板厚が平面方向に沿って変化するように成形することを特徴とする。
【0016】
上記歯カバー具用プレート材の製造方法に関連する本発明は、前記中間材生成工程では、最内周に位置する第1樹脂素材層、及び該第1樹脂素材層と異材料で且つ該第1樹脂素材層の外周に隣接する第2樹脂素材層を有する複数層構造の前記筒状中間材を成形することを特徴とする。
【0017】
上記歯カバー具用プレート材の製造方法に関連する本発明は、前記中間材生成工程において、前記第1樹脂素材層又は前記第2樹脂素材層が、周方向の一部に形成されることを特徴とする。
【0018】
上記歯カバー具用プレート材の製造方法に関連する本発明は、前記板状体生成工程では、前記第1樹脂素材層の内周面同士を溶着して単層化した第1層、及び前記第1層の両外側に隣接し且つ前記第2樹脂素材層からなる一対の第2層を有する前記歯カバー具用プレート材を得ることを特徴とする。
【0019】
上記歯カバー具用プレート材の製造方法に関連する本発明は、前記板状体生成工程では、前記第1樹脂素材層によって面方向の一部に形成される第1層、及び前記第1層の両外側に隣接し且つ前記第2樹脂素材層からなる一対の第2層を有する前記歯カバー具用プレート材を得ることを特徴とする。
【0020】
上記歯カバー具用プレート材の製造方法に関連する本発明は、前記中間材生成工程では、該第2樹脂素材層と異材料で且つ該第2樹脂素材層の外周に隣接する第3樹脂素材層を有する前記筒状中間材を成形し、前記板状体生成工程では、一対の前記第2層のそれぞれの外側に隣接し且つ前記第3樹脂素材層からなる一対の第3層を有する前記歯カバー具用プレート材を得ることを特徴とする。
【0021】
上記歯カバー具用プレート材の製造方法に関連する本発明は、前記中間材生成工程では、周方向又は軸方向に沿って前記第1樹脂素材層及び/又は前記第2樹脂素材層の層厚が変化するように成形することを特徴とする。
【0022】
上記目的を達成する本発明は、歯を覆う歯カバー具を製作する際に用いられる歯カバー具用プレート材の製造方法であって、溶融された樹脂素材を、環状流路を経由させて押し出すことで筒形状に成形して筒状中間材を得る第1中間材生成工程と、前記筒状中間材を周方向の複数に分割して、断面部分円弧形状となる複数の部分円筒中間材を得る第2中間材生成工程と、溶融状態の前記部分円筒中間材を径方向に挟み込むことにより板状に成形し且つ冷却硬化させて歯カバー具用プレート材を得る板状体生成工程と、を備えることを特徴とする歯カバー具用プレート材の製造方法である。
【0023】
上記目的を達成する本発明は、歯を覆う歯カバー具を製作する際に用いられる歯カバー具用プレート材であって、樹脂素材によって構成され且つ厚み方向の中央において平面方向に広がる境界を介して一方側に配置される一方側層と、前記境界の多方側に配置され且つ前記一方側樹脂素材層と同一材料となる他方側層と、を備え、前記一方側層と前記他方側層が、前記境界によって溶着されていることを特徴とする歯カバー具用プレート材である。
【0024】
上記歯カバー具用プレート材に関連する本発明は、前記歯カバー具用プレート材の厚み方向において前記一方側層の外側に隣接し且つ該一方側層と異なる樹脂素材となる第2一方側層と、前記歯カバー具用プレート材の厚み方向において前記他方側層の外側に隣接し且つ該第2一方側層と同一樹脂素材となる第2他方側層と、を備えることを特徴とする。
【0025】
上記歯カバー具用プレート材に関連する本発明は、所定の面方向に沿って前記第2一方側層と前記第2他方側層の層厚が同一であることを特徴とする。
【0026】
上記歯カバー具用プレート材に関連する本発明は、前記歯カバー具用プレート材の厚み方向において前記第2一方側樹層の外側に隣接し且つ該第2一方側層と異なる樹脂素材となる第3一方側層と、前記歯カバー具用プレート材の厚み方向において前記第2他方側層の外側に隣接し且つ該第3一方側層と同一樹脂素材となる第3他方側層と、を備えることを特徴とする。
【0027】
上記歯カバー具用プレート材に関連する本発明は、所定の面方向に沿って前記第3一方側層と前記第3他方側層の層厚が同一であることを特徴とする。
【0028】
上記目的を達成する本発明は、歯を覆う歯カバー具を製作する際に用いられる歯カバー具用プレート材であって、第1樹脂素材によって構成され且つ厚み方向の中央に積層される第1層と、前記第1層の両外側に隣接し且つ該第1樹脂素材と異なる第2樹脂素材によって構成される一対の第2層と、を備えることを特徴とする、歯カバー具用プレート材である。
【0029】
上記歯カバー具用プレート材に関連する本発明は、所定の面方向に沿って一対の前記第2層の層厚が同一であることを特徴とする。
【0030】
上記歯カバー具用プレート材に関連する本発明は、一対の前記第2層のそれぞれの外側に隣接し且つ該第2樹脂素材と異なる第3樹脂素材によって構成される一対の第3層を備えることを特徴とする。
【0031】
上記歯カバー具用プレート材に関連する本発明は、所定の面方向に沿って一対の前記第3層の層厚が同一であることを特徴とする。
【0032】
上記歯カバー具用プレート材に関連する本発明は、所定の面方向に沿って前記第1層又は前記第2層が一部に形成されることを特徴とする。
【0033】
上記歯カバー具用プレート材に関連する本発明は、所定の面方向に沿って前記第1層又は前記第2層が中央に形成されることを特徴とする。
【0034】
上記歯カバー具用プレート材に関連する本発明は、所定の面方向に沿って板厚が変化することを特徴とする。
【0035】
上記目的を達成する本発明は、歯を覆う歯カバー具を製作する際に用いられる歯カバー具用プレート材であって、板厚が大きい前歯相当領域と、前記前歯相当領域よりも板厚が小さい奥歯当領域を有することを特徴とする、歯カバー具用プレート材である。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、多品種かつ少量生産に好適な歯カバー具用プレート材の製造方法等を提供できるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0040】
図1に、本発明の実施形態に係る歯カバー具用プレート材を製造するプレート材製造装置1の全体構成を示す。プレート材製造装置1は、筒状成形機10と、板状成形装置60と、これらの間に配置される切断装置80を有する。
【0041】
筒状成形機10は、溶融された樹脂素材Sを、環状流路(環状スリット)36を経由させて押し出すことで筒形状に成形して、筒状中間材(パリソン)14を得る。詳細に、筒状成形機10は、第1押出機20Aと、第2押出機20Bと、押出ヘッド30と、筒状中間材14の肉厚を制御する肉厚制御装置50を有する。
【0042】
第1押出機20Aは、スクリュー式押出機であり、溶融前の第1樹脂ペレットP1が貯留されるホッパ16Aと、ホッパ16Aから第1樹脂ペレットP1が導入される筒状のシリンダ18Aと、シリンダ内に同軸方向に配置されるスクリュー20Aと、スクリュー20Aを回転させる駆動装置22Aを有する。ホッパ16Aからシリンダ18Aに供給される第1樹脂ペレットP1は、回転するスクリュー20Aの根本から先端側に移動するに伴って圧縮されて、溶融状態の第1樹脂素材S1に変化する。第1樹脂素材S1は、押出ヘッド30に案内される。
【0043】
第2押出機20Bは、スクリュー式押出機であり、溶融前の第2樹脂ペレットP2が貯留されるホッパ16Bと、ホッパ16Bから第2樹脂ペレットP2が導入される筒状のシリンダ18Bと、シリンダ内に同軸方向に配置されるスクリュー20Bと、スクリュー20Bを回転させる駆動装置22Bを有する。ホッパ16Bからシリンダ18Bに供給される第2樹脂ペレットP2は、回転するスクリュー20Bの根本から先端側に移動するに伴って圧縮されて、溶融状態の第2樹脂素材S2に変化する。第2樹脂素材S2は、押出ヘッド30に案内される。
【0044】
なお、樹脂素材は、様々な原材料を選択することができるが、代表的な材料として、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、グリコール変性PET(PETG)、ポリオレフィン樹脂と非結晶性樹脂の性能を融合させた環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ハード部とソフト部のブロックからなるブロック共重合体、熱可塑性シリコーン樹脂、熱可塑性アクリル樹脂(PMMA)、振動吸収ゲル等を用いることができる。
【0045】
また、第1樹脂素材S1と第2樹脂素材S2は、互いに異なる材料(異材料)が選定される。この「異なる材料」とは、上述で列挙した原材料を異ならせる場合の他に、同一原材料であっても、製造工程や添加剤によって、色や硬さ、柔軟性、衝撃吸収性、耐久性等を異ならせる場合なども含まれる。
【0046】
図2に拡大して示すように、押出ヘッド30は、第1樹脂素材S1が上下方向に筒状に流れる第1筒状流路32と、第2樹脂素材S2が上下方向に筒状に流れる第2筒状流路34と、第1筒状流路32と第2筒状流路34が合流する環状の合流部36と、合流部36の下流側(下方側)に連続して第1及び第2樹脂素材S1,S2が筒状且つ層状に流れる共通筒状流路38と、共通筒状流路38の下流端に形成される環状スリット39を有する。
【0047】
第1筒状流路32は、押出ヘッド30の押出軸に沿って配置される棒状又は筒状の中子40と、中子40の外周に配置される筒状の第1スリーブ41の内周面との隙間によって形成される。第1筒状流路32は、上流端(上方端)において第1押出機20Aの吐出口24Aと連続しており、第1樹脂素材S1が流れ込む。なお、ここでは第1スリーブ41が、製造や組み立ての便宜上、2つの部材に分割可能に構成されているが、一体的に製作されても良い。
【0048】
第2筒状流路34は、第1スリーブ41の外周面と、第1スリーブ41の外周に配置される筒状の第2スリーブ42の内周面との隙間によって形成される。結果、第2筒状流路34は、第1筒状流路32の外周側に同軸状に配置される。第2筒状流路34は、上流端(上方端)において第2押出機20Bの吐出口24Bと連続しており、第2樹脂素材S2が流れ込む。なお、本実施形態では、第1筒状流路32が内周側、第2筒状流路34が外周側に配置される場合を例示したが、第2筒状流路34が、第1筒状流路32の内側に配置される構造も採用可能である。
【0049】
合流部36は、中子40の外周面と、第1スリーブ41の下端縁と、第2スリーブ42の内周面が径方向に重なる位置に形成される。なお、ここでは特に図示しないが、第1スリーブ41の下端縁を軸方向に前後させたり、第1樹脂素材S1と第2樹脂素材S2の液圧を相対的に変化させたり、第1樹脂素材S1と第2樹脂素材S2の流量を相対的に変化させたりすることで、合流後の第1樹脂素材S1と第2樹脂素材S2の層厚を可変的に調整することができる。
【0050】
合流部36から下方に連続する共通筒状流路38は、中子40の外周面と、第2スリーブ42の内周面の隙間によって形成される。共通筒状流路38では、第1樹脂素材S1が内周側を流れると共に、第2樹脂素材S2がその外周側を流れることによる複層流状態となる。
【0051】
共通筒状流路38の下端に形成される環状スリット39は、第2スリーブ42の内周面の下端近傍と中子40の下端近傍に配置されるコア44の外周面によって形成される。この環状スリット39から、二層流状態の第1及び第2樹脂素材S1,S2が吐出されることで、
図4(A)に示されるように、最内周に位置する第1樹脂素材層15Aと、第1樹脂素材層15Aの外周に隣接する第2樹脂素材層15Bの二層構想の筒状中間材(パリソン)14が生成される。
【0052】
コア44は、中子40の内部に挿入される摺動軸45と連続しており、中子40の上端に配置される肉厚制御装置50によって、上下方向に移動制御される。なお、肉厚制御装置50は、摺動軸45を上下方向に往復移動させる駆動部と、この駆動部を制御する制御装置(計算機)によって構成される。本実施形態44では、共通筒状流路38の下端近傍が、下方に向かって拡径するテーパ形状となっている。結果、コア44が上方に移動すると環状スリット39の間隔が狭くなり、コア44が下側に移動すると環状スリット39の間隔が広くなる。すなわち、肉厚制御装置50によって、筒状中間材14の肉厚を自在に調整できる。なお、共通筒状流路38の下端近傍が、下方に向かって縮径するテーパ形状の場合は、コア44を反対方向に制御すればよい。
【0053】
コア44及び摺動軸45には、上下方向に貫通するエア流路47が形成される。このエア流路47の上端には、正圧を導入するコンプレッサ48と、エアを排気する排気弁49が接続される。コンプレッサ48は、エア流路47を介して筒状中間材14の内部に正圧の空気を導入することで、筒状中間材14を膨張させることができ、この膨張度合いによって肉厚制御ができる。また、排気弁49によって、筒状中間材14内の余分な空気を排気することもできる。更に、コンプレッサ48と排気弁49を同時に制御することで、筒状中間材14の内圧を一定に制御することもできる。排気弁49には、圧力制御弁やリリーフバルブ等を採用しても良い。
【0054】
図1に戻って、板状成形装置60は、溶融状態の筒状中間材14を径方向に挟み込むことにより、筒状の内周面同士(最内周の第1樹脂素材層同士)を溶着させることで、板状に成形する。詳細に、板状成形装置60は、一対の金型62A,62Bと、金型62A,62Bの各々を案内する直動機構64A,64Bと、直動機構64A,64Bが設置される台座65と、台座65全体を案内する移動機構66と、移動機構66を支持する基台67を有する。
【0055】
一対の金型62A,62Bは、直動機構64A,64Bによって直線駆動させることで、互いに接近・離反可能な開閉構造となる。金型62A,62Bの上方には、押出ヘッド30が配置される。金型62A,62Bが離反した姿勢(開姿勢:
図3(A)参照)では、一対の金型62A,62Bの隙間には、押出ヘッド30から押出成形される筒状中間材14が垂下される。金型62A,62Bが接近した姿勢(閉姿勢:
図3(B)参照)では、筒状中間材14が径方向に挟み込まれることで、筒状中間材14が圧し潰される。なお、
図1では、紙面の左右方向に金型62A,62Bが往復移動する。
【0056】
基台67状に配置される移動機構66は、台座65を介して一対の金型62A,62B全体を、直動機構64A,64Bの移動方向と直交する方向に移送する。結果、金型62A,62B全体が、押出ヘッド30の下側に位置決めされる状態(受入姿勢)と、押出ヘッド30の下方から離反する状態(冷却姿勢又は待機姿勢)の間を移送できる。なお、
図1では、移動機構66によって、紙面の垂直方向に金型62A,62Bが移送される。
【0057】
図3及び
図4に示すように、一対の金型62A,62Bには、それぞれ、凹部68A,68Bが形成される。この凹部68A,68Bの開口に相当する方形且つ環状の縁部69A,69Bは、凹部68A,68Bの底面から相手側の金型62A,62Bに向かって突出した位置となる。なお、本実施形態では、一対の金型62A,62Bにおいて、合計3組の凹部68A,68Bが、鉛直方向に並んで形成されることで、単一の筒状中間材14から同時に3枚の歯カバー具用プレート材(以下プレート材)100を成形する場合を例示するが、本発明はこれに限定されず、1組の凹部68A,68Bであってもよい。
【0058】
図3(B)及び
図4(B)に示すように、一対の金型62A,62Bが閉じられると、縁部69A,69B同士が当接する。結果、一対の凹部68A,68Bによって密閉される内部空間が形成される。この内部空間によって、筒状中間材14が圧し潰されて板状に成形され、
図4(C)及び(D)に示されるようなプレート材100が完成する。圧し潰す際に、筒状中間材14は溶融状態となるので、最内周の第1樹脂素材層15Aの内周面14A同士が溶着されることになる。
【0059】
成形されるプレート材100において、その厚みをT、成形前の筒状中間材14の軸方向に沿う寸法を縦幅H、厚みT及び縦幅Hに直交する方向(成形前の筒状中間材14の径方向)に沿う寸法を横幅Wと定義すると、厚みTは、凹部68A,68Bの深さSta,Stbの合計値と一致し、縦幅Hは、凹部68A,68Bの高さSh(
図3参照)と一致し、横幅Wは、凹部68A,68Bの横幅Swと一致する。
【0060】
図4(A)に示すように、筒状中間材14の内周面14Aの周長をLとすると、プレート材100の横幅W(凹部68A,68Bの幅Sw)は、L/2>Wの関係を満たす。筒状中間材14の内周面14Aの直径Rで表現すると、πR/2>Wとなる。
【0061】
図3(B)に示すように、圧し潰される筒状中間材14の一部は、凹部68A,68Bの高さSh方向の両外側にはみ出す。同様に、
図4(B)に示すように、圧し潰される筒状中間材14の一部は、凹部68A,68Bの横幅Sw方向の両外側にはみ出す。このはみ出し材180は、筒状中間材14の内周に残存する空気を、板状に成形されるプレート材100の周囲に押しやる役割も担う。従って、板状に成形された材料を金型62A,62Bから取り外した際に、プレート材100の周縁に、はみ出し材180が残存する場合がある。この場合は、事後的にはみ出し材180を切り離すことで、プレート材100が完成する。
【0062】
別の観点から説明すると、金型62A,62Bにおける凹部68A,68Bの周縁には、はみ出し材180が存在できるような逃がし空間70が確保されている。
【0063】
図4(C)及び(D)に示すように、完成したプレート材100は、第1樹脂素材層15Aの内周面同士を溶着されて単層化した第1層110と、この第1層110の両外側に隣接し且つ第2樹脂素材層15Bからなる一対の第2層120A,120Bを有することになる。プレート材100の周縁は、一対の第2層120A,120Bによって閉じられるので、第2層120A,120Bの内部に、第1層110が密閉される状態となる。
【0064】
このようなプレート材100の場合、内側に位置する第1層110の材料(第1樹脂材料S1)を、硬くて衝撃を吸収する材料を用いることが好ましい。外側に位置する第2層120A,120Bの材料(第2樹脂材料S2)は、第1樹脂材料S1よりも柔らかい材料を選定したり、歯に対する密着性を高い材料を選定したり、また、口腔内の組織や舌にやさしい材料を選定することが好ましい。
一方で、内側に位置する第1層110の材料(第1樹脂材料S1)を、柔らかい材料を用い、外側に位置する第2層120A,120Bの材料(第2樹脂材料S2)を、第1樹脂材料S1よりも硬い材料を用いても良い。このようにすると、外部からの強い衝撃や、外部からの局所的な応力を、外側の硬い層(面)で受けとめることができ、歯カバー具の損傷も抑制できる。
【0065】
なお、この第1層110は、詳細には、溶着面111を境界として一方側に位置する一方側領域110Aと、他方側に位置する他方側領域110Bが存在するが、この溶着面111は、肉眼では判別できない状態となる。
【0066】
なお、
図4では、説明の便宜上、プレート材100における厚みT方向を誇張表示している。プレート材100の実寸は、例えば、厚みTが0.5mm〜8mmの範囲内、好ましくは2mm〜8mm、より望ましくは3mm〜6mmの範囲内に設定され、縦幅H及び横幅Wが8cm〜20cmの範囲内、好ましくは10cm〜15cmの範囲内に設定される。縦幅H及び横幅Wが大きすぎると、材料が無駄になる。
【0067】
なお、本実施形態では、金型62A,62B同士の当接面を基準として、一対の凹部68A,68Bが線対称な形状となる場合を例示したが、対称でなくてもよく、さらには、一方の金型に凹部が形成され、他方の金型は平面又は相手側の凹部に嵌合する凸部であってもよい。いずれにしろ、一対の金型62A,62Bが閉じられることによって、成形用の内部空間が確保されれば良い。
【0068】
図3(B)に示されるように、切断装置80は、筒状中間材14が金型62A,62Bによって挟み込まれた後に、素早く、筒状中間材14を押出ヘッド30から切り離す。その後も、押出ヘッド30からは新たな筒状中間材14が連続的に吐出されるため、移動機構66によって、切り出された筒状中間材14を保持した金型62A,62Bを押出ヘッド30の下方から離反させる(
図3(B)平面図の点線参照)。移動機構66による移送先において、金型62A,62B内で筒状中間材14(成形されるプレート材100)を冷却固化した後、金型62A,62Bを開放してプレート材100を離型する。その後、移動機構66によって、開放姿勢の金型62A,62Bを
図3(A)に示す押出ヘッド30の下方位置に復帰させることで、次の成形の準備に入る。
【0069】
<歯カバー具用プレート材の製造方法>
【0070】
次に、プレート材製造装置1を用いたプレート材100の製造工程について説明する。
【0072】
中間材生成工程では、樹脂ペレットを溶融することで得られる樹脂素材を、環状スリット39を経由させて押し出すことで筒形状に成形して筒状中間材14を得る。本実施形態では、第1樹脂素材S1を最内周に押出て第1樹脂素材層15Aを形成し、同時に、第1樹脂素材層15Aと異材料となる第2樹脂素材S2を第1樹脂素材層15Aの外周に隣接する状態で押し出すことで第2樹脂素材層15Bを形成する。結果、筒状中間材14は二層構造となる。
【0074】
膨張行程では、環状スリット39から押し出された筒状中間材14の内部に正圧を導入して、この筒状中間材14を膨らませる。これにより、肉厚を制御することが可能となる。環状スリット39の直径よりも大きい筒状中間材14を成形する場合や、環状スリット39の間隔よりも薄い肉厚の筒状中間材14を成形したい場合に、この膨張行程は有効活用される。一方、筒状中間材14の断面形状が、環状スリット39と同一寸法で足りる場合は、この膨張行程を省略できる。
【0076】
板状体生成工程では、冷却硬化する前の溶融状態の筒状中間材14を径方向に挟み込む(圧し潰す)ことにより、内周面14A同士を溶着させることで、板状に成形し、そのまま冷却固化させることでプレート材100を得る。この際、プレート材100の横幅Wと、筒状中間材14の内周面14Aの周長をLとの関係が、L/2>Wを満たすようにすることが好ましい。
【0077】
同様に、筒状中間材14を径方向に挟み込む(圧し潰す)際に、プレート材100における横幅W方向の外側及び縦幅H方向Hの外側に、はみ出し材180が残存するように成形する。この成形を実現するために、板状体生成工程では、凹部68A,68Bを有する開閉式の金型62A,62Bによって、一部の材料が凹部68A,68Bの外側にはみ出るように筒状中間材14を挟み込む。
【0078】
結果、板状体生成工程で得られるプレート材100は、第1樹脂素材層15Aの内周面同士を溶着して単層化した第1層110と、第1層110の両外側に隣接し且つ第2樹脂素材層15Bからなる一対の第2層120とを有する。
【0079】
<歯カバー具用プレート材を用いた歯カバー具の製造方法>
【0080】
図5において、歯カバー具製造装置600を利用した歯カバー具500の製造工程を示す。
図5(A)に示すように、歯カバー具製造装置600は、プレート材100の外周を保持する保持枠610と、保持枠610を上下動させる昇降機構650と、保持枠610の上方に配置されて、プレート材100を加熱するヒータ620と、保持枠610の下方に配置される台座630を有する。なお、台座630には、歯型模型700を傾斜姿勢で載置するための治具640が設けられている。歯形模型700を傾斜させることで、歯面が略水平となる。更に、台座630には、負圧を案内するための吸引穴635が形成される。
【0081】
図5(A)に示すように、プレート材100を保持した保持枠610を、歯型模型700よりも高所に位置決めした状態で、ヒータ620によってプレート材100を加熱する。プレート材100は、加熱によって軟化されて、点線に示されるように鉛直下方に湾曲する。この状態で、昇降機構650を利用して、保持枠610を下降させて、台座630に当接させることで、プレート材100が歯型模型700に接触する。
【0082】
その後、
図5(B)に示すように、特に図示しない真空ポンプを稼働させて、吸引穴635を利用して、台座630とプレート材100の隙間のエアを外部に放出する(負圧を導入する)。結果、負圧によってプレート材100が下方に引っ張られて、プレート材100と歯型模型700が密着する。この状態で、ヒータ620をOFFにして、プレート材100を冷却固化させてから、歯型模型700から取り外し、口の形に合わせて余分な材料を切り取ることで、
図5(C)に示す歯カバー具500が完成する。
【0083】
以上の通り、本実施形態の歯カバー具用プレート材の製造方法によれば、一旦、筒状成形機10によって筒状中間材14を押出形成した後に、この筒状中間材14を、板状成形装置60によって径方向の圧し潰すことで、プレート材100を成形する。
【0084】
従来のTダイ法による押出成形等では、押し出されるプレート材の肉厚を全体的に均一化するために、高度な制御が要求される。一方で、筒状成形機10は、筒状に樹脂素材を押し出すので、肉厚の均一化や、多層化が極めて容易であり、高品質な筒状中間材14を安価に量産できる。
【0085】
しかも、プレート材100としての最終的な肉厚は、板状成形装置60を用いて、筒状中間材14を径方向の圧し潰すことで画定させるので、筒状中間材14の肉厚に多少ばらつきが生じても、最終的なプレート材100の厚みを高精度に制御できる。
【0086】
とりわけ、本実施形態では、筒状中間材14を径方向に圧し潰す際に、プレート材100の横幅W方向の両外側に、はみ出し材180が残存するように設定していう。すなわち、プレート材100の横幅Wに対して、筒状中間材14の内周面14Aの周長Lの半分(L/2)を、大きく設定しておくことで、筒状中間材14のサイズに余裕を持たせている。結果、プレート材100を成形する際に、筒状中間材14の径が細すぎことに起因して、横幅Wが不足したり、板厚Tが不足したりするような事態を確実に回避できる。
【0087】
なお、筒状成形機10は、従来のいわゆるブロー成形装置における押出成形機を流用できる。板状成形装置60も、ブロー成形装置におけるブロー成型用金型を、本実施形態の金型62A,62Bに交換することで流用できる。ブロー成形装置は、Tダイ法の押出成形機と比較して安価であることから、保有している中小規模事業者が日本国内に多数存在する。従って、遊休設備を利用して、少量多品種のプレート材100を量産することも可能となる。
【0088】
また、本実施形態では、筒状成形機10によって二層構造の筒状中間材14を成形し、これを圧し潰すことで、二種類の材料からなる三層構造のプレート材100を製造できる。従って、二種類の材料を適宜変更することで、様々な目的・用途に対応可能な多品種のプレート材100を量産できる。
【0089】
なお、ここでは二層構造の筒状中間材14を成形する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば
図6(A)に示すように、単層構造の筒状中間材14を圧し潰して、単層のプレート材102を製造してもよい。
【0090】
更に、
図6(B)に示すように、第1樹脂素材S1による第1樹脂素材層15Aと、第1樹脂素材S1と異なる材料となる第2樹脂素材層15Bと、第1及び第2樹脂素材S1,S2の双方と異なる第3樹脂素材S3による第3樹脂素材層15Cの三層構想の筒状中間材14を押出成形できる。この筒状中間材14を圧し潰すと、三種類の材料からなる五層構造のプレート材103を製造できる。この5層構造のプレート材103は、第1樹脂素材層15Aの内周面同士を溶着して単層化した第1層110、第1層110の両外側に隣接し且つ第2樹脂素材層15Bからなる一対の第2層120、一対の第2層120の外側に隣接し且つ第3樹脂素材層15Cからなる一対の第3層130を備える。
【0091】
また更に、
図6(C)に示すように、第1樹脂素材S1による第1樹脂素材層15Aと、第1樹脂素材S1と異なる材料となる第2樹脂素材層15Bと、第1樹脂素材S1と同一材料となる第3樹脂素材層15Cの三層構想の筒状中間材14を押出成形できる。この筒状中間材14を圧し潰すと、二種類の材料からなる五層構造のプレート材104を製造できる。この5層構造のプレート材104は、第1樹脂素材層15Aの内周面同士を溶着して単層化した第1層110、第1層110の両外側に隣接し且つ第2樹脂素材層15Bからなる一対の第2層120、一対の第2層120の外側に隣接し且つ第3樹脂素材層15Cからなる一対の第3層130を備える。
【0092】
図6(B)や
図6(C)の五層構造のプレート材103、104によれば、樹脂材料の多様な組み合わせによって、衝撃吸収性を一層高めることが可能になる。なお、
図6においても、説明の便宜上、肉厚方向を誇張表示している。
【0093】
更にまた、上記実施形態では、筒状中間材14において、第1樹脂素材層15Aと第2樹脂素材層15Bの層厚比率が一定の場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば
図7(A)に示すように、筒状中間材14の軸方向に沿って、第1樹脂素材層15Aと第2樹脂素材層15Bの層厚比率を変化させることができる。この筒状中間材14を利用すると、
図7(B)に示すように、縦幅H方向に沿って、第1層110と一対の第2層120の層厚比率が変化するプレート材105を得る。結果、例えば
図7(C)に示すように、前歯近傍では、一対の第2層120の合計層厚に対して第1層110の層厚を大きくし、奥歯近傍では、一対の第2層120の合計層厚に対して、第1層110の層厚を小さくできる。衝撃を受けやすい前歯近傍のプレート材105の特性と、噛み合わせの影響を受けやすい奥歯近傍のプレート材105の特性を、領域を区分して調整できる。もちろん、前歯と奥歯の関係を正反対にすることもできる。なお、
図7では、説明の便宜上、肉厚方向を誇張表示している。
【0094】
また、例えば
図8(A)及び(B)に示すように、筒状中間材14の周方向に沿って、第1樹脂素材層15Aと第2樹脂素材層15Bの層厚比率を変化させることができる。これは、押出ヘッド30の合流部36における第1筒状流路32と第2筒状流路34の形状、具体的には第1スリーブ41の下端縁の形状を、周方向に楕円状に変位させればよい。
【0095】
図8(A)のように、筒状中間材14を板状に成形したプレート材106Aでは、横幅W方向の中央部分では、一対の第2層120の合計層厚に対して、第1層110の層厚を大きく設定し、横幅W方向の外側部分では、一対の第2層120の合計層厚に対して、第1層110の層厚を小さく設定できる。
【0096】
図8(B)のように、筒状中間材14を板状に成形したプレート材106Bでは、、横幅W方向の中央部分では、一対の第2層120の合計層厚に対して、第1層110の層厚を小さく設定し、横幅W方向の外側部分では、一対の第2層120の合計層厚に対して、第1層110の層厚を大きく設定できる。
【0097】
結果、例えば
図8(C)に示すように、前歯近傍の第1層110の層厚を大きくしたり、小さくしたりすることが可能となる。なお、
図8では、説明の便宜上、肉厚方向を誇張表示している。
【0098】
歯カバー具500において、前歯近傍は強度不足に陥りやすい。従って、プレート材106Aの場合、第1層110を、第2層120と比較して硬い素材、剛性の高い素材、あるいは弾性の小さい材料等にすることが好ましい。結果、
図8(C)に示すように、プレート材106Aの幅方向の中央近傍に、帯状に伸びる高強度領域100Hが形成され、更に、高強度領域100Hの幅方向両外側に、帯状に伸びる低強度領域100Kが形成される。このプレート材106Aを用いて歯カバー具500を製造すれば、前歯近傍の内部強度を、高強度領域100Hによって、局所的に高めることができる。また、本プレート材106Aの場合、第1層110の両外側が、柔らかい第2層120で覆われるので、高強度領域100Hであっても、歯カバー具500の表面は第2層120となる。実際の歯と接触する表面を、柔らかい素材とすることで、歯カバー具500を快適に使用できる。
【0099】
また、特に図示しないが、
図7に示す縦幅H方向の層厚比率の変化と、
図8に示す横幅W方向の層厚比率の変化を組み合わせることで、三次元的に層厚比率を変化させることもできる。
【0100】
また、
図2に示す押出ヘッド30では、第1筒状流路32が、全周に亘って環状となる流路を形成する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば
図9に示す押出ヘッド30では、第1筒状流路32が、周方向の一部を占有する部分筒状の流路となる。このようにすると、第1樹脂素材S1を、周方向の一部に制限して流すことが可能となる。
【0101】
図10に、この種の押出ヘッド30を利用して得られる筒状中間材14を示す。
図10(A)では、第1樹脂素材層15Aが、周方向の一部の一か所に形成され、第2樹脂素材層15Bが、第1樹脂素材層15Aの外側を覆うように環状に形成される。第1樹脂素材層15Aが、プレート材107Aの幅方向の中央に帯状に形成されるように、筒状中間材14を圧し潰す。
【0102】
図10(B)では、第1樹脂素材層15Aが、周方向の一部となる二か所に形成され、第2樹脂素材層15Bが、第1樹脂素材層15Aの外側を覆うように環状に形成される。なお、一対の第1樹脂素材層15Aは、周方向において180度の角度位相差で配置される。一対の第1樹脂素材層15Aを互いに当接させることで、プレート材107Bの幅方向の中央に帯状に形成されるように、筒状中間材14を圧し潰す。
【0103】
これらのプレート材107A、107Bの場合、第1層110を、第2層120と比較して硬い素材、剛性の高い素材、あるいは弾性の小さい材料等にすることが好ましい。
図11に示すように、プレート材107A、107Bの幅方向の中央近傍に、帯状に伸びる高強度領域100Hが形成され、更に、高強度領域100Hの幅方向両外側に、帯状に伸びる低強度領域100Lが形成される。
【0104】
結果、歯カバー具500における前歯近傍の内部強度を、高強度領域100Hによって部分的に高めることが可能となる。一方、歯カバー具500の奥歯側の全域を、低強度領域100Lで構成できるので、使用感を高めることができる。
【0105】
また更に、上記実施形態では、プレート材100において、板厚Tが一定の場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば
図12(A)に示すように、一対の金型62A,62Bには凹部68A,68Bの形状を利用して、プレート材108の板厚T1、T2を、縦幅H方向に変化させてもよい。このようにすると、
図12(B)に示すように、歯用カバー具を製作する際に、延伸距離の大きい前歯相当領域108Aの板厚を大きくすることで、肉厚不足を抑制できる。一方、歯用カバー具を製作する際に、延伸距離の小さい奥歯相当領域108Bの板厚を、前歯相当領域108Aよりも小さくすることで、歯用カバー具装着時の噛み合わせの不快感を低減させることができる。この場合においても、
図7乃至
図11に示した層厚比率の変化を組み合わせることもできる。
【0106】
また、本実施形態では、
図1に示すプレート材製造装置1において、押出ヘッド30の下方で、移動機構66によって金型62A,62Bを往復移動させながら量産する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば
図13に示すように、複数の金型セット200を移動機構66によって環状に一方向に移送してもよい。金型セット200を循環させながら、押出ヘッド30の下方に進退させることができる。
【0107】
また、本実施形態では、板状成形装置60において、開閉式の金型62A,62Bによって、プレート材を成形する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば
図14(A)に示す板状成形装置60のように、板厚Tに相当する隙間を開けて配置される一対のピンチローラ220を利用して、筒状中間材14を挟み込むことでシート状に成形できる。このようにすると、筒状中間材14が連続的に成形されて帯状となる。ピンチローラ220よりも下流側において、この帯状の板材を所定長さに切断することで、連続的にプレート材100を得る。
図14(B)に示すように、ピンチローラ220における押圧幅Kは、筒状中間材14の内周面14Aの周長をLの半分(L/2)よりも大きく設定し、筒状中間材14全体を板厚Tに成形してもよい。また、
図14(C)に示すように、ピンチローラ220における押圧幅Kを、筒状中間材14の内周面14Aの周長Lの半分(L/2)よりも小さく設定してもよい。この場合は、ピンチローラ220の幅方向の両外側に、板厚が不安定となるはみ出し材180が形成されるので、下流側で切り離すことが好ましい。
【0108】
更に、
図14(D)に示すように、ピンチローラ220の外周面に、帯状(又は筒状)の凹部230を形成しておき、一対のピンチローラ220を互いに当接させて、この凹部230によってスリットを形成してもよい。この際、凹部230による押圧幅Kを、筒状中間材14の内周面14Aの周長Lの半分(L/2)よりも小さく設定する。筒状中間材14を径方向に変形させながらスリットを通過させることで、プレート材100における横幅W方向の断面形状を成形できる。なお、この際も、ピンチローラ220の幅方向の両外側に、板厚が不安定となるはみ出し材180が形成されるので、下流側で切り離すことが好ましい。
【0109】
ちなみに、ピンチローラ220等を利用して筒状中間材14を連続的に板状(帯状)成形する場合、膨張工程を活用し易い。その理由として、ピンチローラ220よりも上流側の筒状中間材14の内部空間が密閉空間となるからである。従って、押出ヘッド30に設けられるエア流路47を利用して、筒状中間材14内に正圧を導入すると、容易に、筒状中間材14を膨らませることが可能となる。
【0110】
また、本実施形態では、押出ヘッド30から導出される筒状中間材14が、周方向に連続している場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば
図15(A)に示すように、押出ヘッド30内では、完全な筒状中間材14であり、これを第1中間材成形工程と定義できる。環状スリット39と同一位置又はその下流に配置されるカッター250によって、筒状中間材14が周方向に分断されるが、これを第2中間材生成工程と定義できる。この第2中間材生成工程においては、180度の周方向位相差で配置される一対のカッター250によって、筒状中間材14が、一対の分断線14Xによって周方向に二分される。二分された各々の材料は、断面部分円弧形状となる部分円筒中間材14Yと定義できるが、この部分円筒中間材14Yは、本発明の筒状中間材14の概念の一部に含まれる。
【0111】
図15(B)に示すように、この分断線14Xが、はみ出し材180側に位置するように、板状成形装置60によって成形することで、一対の部分円筒中間材14Yを溶着する。結果、プレート材100を製造できる。分断線14Xによって、筒状中間材14の内部の空気を逃がしやすいので、プレート材100の内部に気泡が残存しにくくなる。また、
図15(C)に示すように、一対の部分円筒中間材14Yの各々を、板状成形装置60によって別々に成形することで、プレート材100を生成することもできる。
【0112】
なお、上記実施形態では、プレート材が方形となる場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、三角形、五角形以上の多角形、円形や楕円形など、様々な形状を採用し得る。
【0113】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。