特開2021-194604(P2021-194604A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日産自動車株式会社の特許一覧
<>
  • 特開2021194604-ナノ多孔質成形体 図000006
  • 特開2021194604-ナノ多孔質成形体 図000007
  • 特開2021194604-ナノ多孔質成形体 図000008
  • 特開2021194604-ナノ多孔質成形体 図000009
  • 特開2021194604-ナノ多孔質成形体 図000010
  • 特開2021194604-ナノ多孔質成形体 図000011
  • 特開2021194604-ナノ多孔質成形体 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-194604(P2021-194604A)
(43)【公開日】2021年12月27日
(54)【発明の名称】ナノ多孔質成形体
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/34 20060101AFI20211129BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20211129BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20211129BHJP
   F25B 17/08 20060101ALI20211129BHJP
【FI】
   B01J20/34 E
   B01J20/28 Z
   B01J20/30
   F25B17/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2020-103286(P2020-103286)
(22)【出願日】2020年6月15日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2019年6月17日、ネイチャーコミュニケーションズ誌のウェブサイト(https://www.nature.com/articles/s41467−019−10511−7)にて電気通信回線(インターネット)を通じて発表
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】金子 貴子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】市川 靖
(72)【発明者】
【氏名】内村 允宣
(72)【発明者】
【氏名】京谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】西原 洋知
(72)【発明者】
【氏名】我部 篤
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅納
【テーマコード(参考)】
3L093
4G066
【Fターム(参考)】
3L093NN03
3L093PP01
4G066AA04B
4G066AA04D
4G066BA25
4G066BA26
4G066BA36
4G066BA38
4G066CA43
4G066CA56
4G066DA07
4G066FA21
4G066FA34
4G066FA37
4G066GA40
(57)【要約】
【課題】吸着質を効率的に吸着および脱離させ、耐久性に優れる吸着剤を提供する。
【解決手段】応力を印加および解放することによって細孔径を変化させ、ゲスト分子として取り込まれる吸着質を可逆的に気液相転移させることができるナノ多孔質体と、バインダである酸化グラフェンと、を含む、ナノ多孔質成形体である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
応力を印加および解放することによって細孔径を変化させ、ゲスト分子として取り込まれる吸着質を可逆的に気液相転移させることができるナノ多孔質体と、
バインダである酸化グラフェンと、
を含む、ナノ多孔質成形体。
【請求項2】
前記ナノ多孔質成形体における前記バインダの含有量が、5.1〜19質量%である、請求項1に記載のナノ多孔質成形体。
【請求項3】
前記ナノ多孔質体のX線回折スペクトルにおいて、炭素の(10)面に由来するピークの半値幅が1.2〜3.2°である、請求項1または2に記載のナノ多孔質成形体。
【請求項4】
BET比表面積が、900〜1899m/gである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のナノ多孔質成形体。
【請求項5】
細孔容積が、1.0〜6.0mL/gである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のナノ多孔質成形体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のナノ多孔質成形体を用いた熱交換装置。
【請求項7】
応力を印加および解放することによって細孔径を変化させ、ゲスト分子として取り込まれる吸着質を可逆的に気液相転移させることができるナノ多孔質体と、バインダである酸化グラフェンと、を含む混合物を、140〜160℃で熱処理することを含む、ナノ多孔質成形体の製造方法。
【請求項8】
前記酸化グラフェンの仕込み比が、前記混合物の総質量に対して、固形分比で11〜39質量%である、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ多孔質成形体に関する。特に、吸着式熱交換装置用吸着剤として用いられうるナノ多孔質成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱を移動させることで対象(空間や物体)の加熱や冷却を行う熱交換装置が広く用いられている。例えば、下記特許文献1には、媒体を気化させる蒸発器と、気化した媒体を脱離および吸着する吸着剤を備える吸着器と、気化した媒体を凝縮する凝縮器と、を有する吸着式熱交換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−183930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されているような従来の吸着式熱交換装置は、蒸発器や凝縮器において、吸着剤に吸着した吸着質の潜熱を冷熱や温熱として利用しているため、蒸発器や凝縮器での減圧や加熱冷却に大きなエネルギーが必要となる。また、吸着質を吸着した吸着剤を再生するための加熱にもエネルギーが必要となる。その結果、成績係数COPが低下してしまい、装置が大型化してしまう傾向にある。このため、特に設置スペースの限られているカーエアコンなどの熱交換装置に適用するために、吸着質をより少ないエネルギーで吸着および脱離させることができる吸着剤が求められている。さらに、吸着質を繰り返し吸着および脱離させた場合であっても劣化が生じにくい吸着剤が求められている。
【0005】
そこで本発明は、吸着質を効率的に吸着および脱離させ、耐久性に優れる吸着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。その過程で、応力を印加および解放することによって、機械的に変形して、吸着質である媒体を可逆的に脱離および吸着可能なナノ多孔質体を見出した。さらに、ナノ多孔質体に媒体を脱離および吸着させることによって、媒体を相変化させて潜熱を発生させることが可能であることを発見した。そして、当該ナノ多孔質体と、バインダである酸化グラフェンとを含む、ナノ多孔質成形体を熱交換装置の吸着剤として用いることを試みた。その結果、脱離または吸着により発生した潜熱を冷熱または温熱に直接的に利用することが可能となることから熱サイクルに必要なエネルギーを小さくすることができることを見出した。さらに、酸化グラフェンをバインダとして用いてナノ多孔質成形体とすることで耐久性が向上しうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち本発明は、応力を印加および解放することによって細孔径を変化させ、ゲスト分子として取り込まれる吸着質を可逆的に気液相転移させることができるナノ多孔質体と、バインダである酸化グラフェンと、を含む、ナノ多孔質成形体である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ナノ多孔質成形体に応力を印加および解放して収縮膨張させることによって、吸着質である媒体を可逆的に脱離および吸着させて相変化による潜熱を発生させることができる。これにより、発生した潜熱を冷熱または温熱に直接的に利用することができる。また、潜熱を得るために蒸発器や凝縮器において減圧や加熱冷却が不要となるため、熱交換装置の吸着剤として用いたときに熱サイクルに必要なエネルギーを小さくすることができる。また、酸化グラフェンは比較的低温でバインダとして機能するため、試料作製時に劣化が生じにくい。そのため、バインダとして酸化グラフェンを用いてナノ多孔質成形体とすることでナノ多孔質体とバインダとが強く結着し、耐久性が向上しうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る熱交換装置の構成を示す概略断面図である。
図2】ナノ多孔質成形体に応力を印加して収縮させて冷媒を脱離させる様子を示す図である。
図3】熱交換装置の熱サイクルのT−S線図を示す。
図4】応力の印加/解放によるナノ多孔質成形体のエタノールの脱離/吸着を確認するためのプレスチャンバー装置を示す概略図である。
図5】(a)GMSおよびCMSのXRDスペクトル、ならびに(b)ZTCのXRDスペクトルを表す図である。
図6】比較例1で作製したナノ多孔質成形体の応力印加時と応力無印加時のエタノールの脱離/吸着等温線を表す図である。
図7】比較例1および実施例9で作製したナノ多孔質成形体の応力−ひずみ曲線を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一形態は、応力を印加および解放することによって細孔径を変化させ、ゲスト分子として取り込まれる吸着質を可逆的に気液相転移させることができるナノ多孔質体と、バインダである酸化グラフェンと、を含む、ナノ多孔質成形体である。
【0011】
一般的な吸着式熱交換装置は、減圧下で冷媒を加熱して気化させる蒸発器、気化した冷媒を脱離および吸着する吸着剤を備える吸着器、および気化した冷媒を凝縮する凝縮器を有する。一般的な吸着式熱交換装置では、蒸発器での蒸発潜熱を冷却に利用している。吸着剤への冷媒の脱離/吸着の際には、冷媒は相変化せずに気体のままであるため潜熱は生じない。脱離/吸着は、冷媒の輸送に利用されている。一般的な吸着式熱交換装置では、蒸発器での蒸発潜熱を冷却に利用しているため、蒸発器での減圧や加熱に大きなエネルギーが必要となる。また、媒体を吸着した吸着剤を再生するための加熱にもエネルギーが必要となる。
【0012】
これに対して、本実施形態では、応力を印加および解放することによって細孔径を変化させ、ゲスト分子として取り込まれる吸着質を可逆的に気液相転移させることができるナノ多孔質体を含むナノ多孔質成形体を吸着剤に用いる。これにより、ナノ多孔質成形体に機械的に応力をかけることで冷媒を脱着させることができ、冷媒を相変化させて蒸発潜熱(脱離熱)を冷熱として利用することができる。したがって、吸着剤を再生するための加熱や、蒸発器による減圧や加熱が不要であり、短時間かつかけるエネルギーを抑えて、吸着剤での吸熱、発熱が可能になる。
【0013】
吸着剤として使用するにあたり、ナノ多孔質成形体の形状を保持するために、バインダを用いてナノ多孔質体を結着させ、シート状の試料を作製する必要がある。しかしながら、一般的なテフロン(PTFE)のようなバインダを用いた場合、十分な耐久性が得られないことがわかった。
【0014】
PTFEは、熱、紫外線、薬品、油などの外部からの刺激に強い反面、分子間凝集力が弱く、摩耗しやすい傾向がある。また、ナノ多孔質体との接着性は比較的弱く、強固な結着力を得るためには、ナノ多孔質体との混合後に、例えば370℃以上の高温で熱処理する必要がある。しかしながら、熱処理するとPTFEが一部熱劣化してしまうため、ナノ多孔質成形体の耐久性が低下してしまう。したがって、PTFEのような一般的なバインダを用いた場合、耐久性に優れるナノ多孔質成形体を得ることは難しい。
【0015】
これに対して、本発明者らは、バインダとして酸化グラフェンを用いることで、ナノ多孔質成形体の耐久性が改善されることを見出した。酸化グラフェンは、140〜160℃程度の比較的低い温度での熱処理によりバインダとして機能する。そのため、試料作製時の劣化が起こりにくく、高い耐久性が得られるものと考えられる。
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0017】
<熱交換装置>
図1に、本発明の一実施形態に係る熱交換装置10を示す。熱交換装置10は、ナノ多孔質成形体20(第1ナノ多孔質成形体20Aおよび第2ナノ多孔質成形体20B)に応力を印加および解放することにより、機械的に変形させて、吸着質である冷媒(媒体)60の脱離および吸着を行う。本実施形態に係る熱交換装置10は冷媒60の脱離時に発生する蒸発潜熱から得た冷熱を利用して対象を冷却する。熱交換装置10は、例えば、自動車の室内(内気)を冷却するカーエアコン(冷房)に適用することができる。
【0018】
図1に示すように、熱交換装置10は、一対の熱交換部30A、30B(第1熱交換部30Aおよび第2熱交換部30B)、および装置全体の動作を制御する制御部40を有する。制御部40は、一対の熱交換部30A、30Bのうち一方の動作モードが脱離モードである間は他方の動作モードが吸着モードになるようにスイング運転する。これにより、脱離モードの熱交換部30A、30Bにおいて連続的に冷熱を生成することが可能となる。ここで、「脱離モード」とは、冷媒60をナノ多孔質成形体20から脱離させる動作モードである。また、「吸着モード」とは、冷媒60をナノ多孔質成形体20に吸着させる動作モードである。
【0019】
熱交換装置10は、第1チャンバー32Aと第2チャンバー32Bとの間を冷媒60が移動可能に連通する配管50と、配管50の連通状態と遮断状態とを切り替えるバルブ51と、を有する。バルブ51を開くと配管50は連通状態となり、バルブ51を閉じると配管50は遮断状態となる。
【0020】
[熱交換部30A、30B]
図1に示すように、第1熱交換部30Aは、第1ナノ多孔質成形体20Aと、第1応力付与部31Aと、第1チャンバー32Aと、第1空気調節部33Aと、を有する。同様に、第2熱交換部30Bは、第2ナノ多孔質成形体20Bと、第2応力付与部31Bと、第2チャンバー32Bと、第2空気調節部33Bと、を有する。
【0021】
第1熱交換部30Aおよび第2熱交換部30Bは、同様の構成を有する。以下の説明では、第1熱交換部30Aおよび第2熱交換部30Bを総称して「熱交換部30A、30B」と称する。同様に、第1応力付与部31Aおよび第2応力付与部31Bを総称して「応力付与部31A、31B」と称する。また、第1チャンバー32Aおよび第2チャンバー32Bを総称して「チャンバー32A、32B」と称する。また、第1空気調節部33Aおよび第2空気調節部33Bを総称して「空気調節部33A、33B」と称する。また、第1ナノ多孔質成形体20Aおよび第2ナノ多孔質成形体20Bを総称して「ナノ多孔質成形体20」と称する。
【0022】
[ナノ多孔質成形体20]
ナノ多孔質成形体20は、ナノ多孔質体およびバインダである酸化グラフェンを含む。
【0023】
ナノ多孔質成形体20に用いられるナノ多孔質体は、弾性を有し、収縮して冷媒60を脱離可能で、かつ、膨張して冷媒60を吸着可能なナノ多孔質の材料である。これにより、ナノ多孔質成形体20は、応力付与部31A、31Bから応力を印加されて収縮して冷媒60を脱離し、応力を解放すると自由膨張して冷媒60を吸着する。
【0024】
ここで、「弾性」とは、応力付与部31A、31Bによって外部から応力を印加して収縮させても、応力を解放することによって、可逆的に大きく変形してほぼ元の形状に回復する性質を意味する。ナノ多孔質成形体20の弾性限度は、冷媒60を脱離するために必要な応力印加よりも大きくなるように設計されることが好ましい。ナノ多孔質成形体20の弾性限度は、熱交換装置10の適用対象の冷却規模等に応じて適宜設計することが好ましい。
【0025】
また、「ナノ多孔質」とは、複数のナノレベルの細孔を有することを意味する。ナノレベルの細孔とは、好ましくは直径0.5〜100nmであり、より好ましくは直径0.7〜50nmであり、さらに好ましくは直径0.7〜6nmのミクロ孔またはメソ孔である。なお、IUPAC(国際純正及び応用化学連合)では、直径2nm以下の細孔をミクロ孔(micropore)、直径2〜50nmの細孔をメソ孔(mesopore)、直径50nm以上の細孔をマクロ孔(macropore)と定義している。
【0026】
一般的に、固体表面はファンデルワールス力によるポテンシャルエネルギーが高く、冷媒60の分子を凝縮させる作用がある。特に、本実施形態に係るナノ多孔質成形体20では、ナノ多孔質体に吸着された冷媒60は、ナノレベルの小さな細孔壁に囲まれているため、固体表面のファンデルワールス力(物理吸着力)によるポテンシャルエネルギーが著しく高い。このとき、気体の冷媒60は、ナノ多孔質体の細孔壁に液体の密度で吸着される。すなわち、ナノ多孔質体への吸着は気体から液体への相変化と同質の現象であり、吸着熱は凝縮潜熱にほぼ等しい。
【0027】
以下の説明では、冷媒60は、ナノ多孔質体に吸着すると気体から液体へ相変化し、脱離すると液体から気体へ相変化するものとする。また、吸着熱は、凝縮潜熱に等しいとする。
【0028】
ナノ多孔質成形体20の細孔壁に吸着された細孔内部の液体密度の冷媒60は、飽和蒸気圧よりも低い圧力の蒸気と平衡状態となっている。すなわち、ナノ多孔質成形体20の細孔壁に吸着された気体は、飽和蒸気圧よりも低い圧力で液体の状態となる。
【0029】
図2に示すように、ナノ多孔質体およびバインダ(図示せず)を含むナノ多孔質成形体20に応力を印加すると、図2の(A)応力印加前から(B)応力印加下のようにナノ多孔質成形体20中のナノ多孔質体の細孔が収縮し、細孔壁に吸着していた冷媒60は脱離する。このとき、液体の密度で吸着された冷媒60は、再び気体としてナノ多孔質成形体20の外部に放出される。熱交換装置10は、この脱離の際の蒸発潜熱を冷熱として利用することによって、対象を冷却することができる。
【0030】
一方、ナノ多孔質成形体20において、応力を解放すると、ナノ多孔質成形体20に存在するナノ多孔質体は自由膨張して細孔が元の大きさに戻り、冷媒60を再び吸着させることができる。上述したように、冷媒60は、ナノ多孔質成形体20の細孔壁に液体の密度で吸着される。すなわち、冷媒60は、ナノ多孔質成形体20へ吸着される際に、気体から液体へ相変化して、凝縮潜熱を発生する。
【0031】
ナノ多孔質体を構成する材料としては、弾性を有し、収縮して冷媒60を脱離可能で、かつ、膨張して冷媒60を吸着可能な材料であれば特に限定されない。
【0032】
ナノ多孔質体のBET比表面積は、例えば、800〜4200m/gの範囲である。BET比表面積が800〜4200m/gの大きいナノ多孔質体を使用することによって吸着質の吸着量を増加させることができる。
【0033】
そのような材料としては、単層グラフェン骨格を含み、冷媒60の脱離および吸着に必要な多孔性および弾性特性を有する炭素材料が挙げられる。ナノ多孔質体が炭素材料である場合、酸化グラフェンと同素材となるため、140〜160℃程度の熱処理により酸化グラフェンとの架橋が生じ、より結着力が向上する。特に、ナノ多孔質体が単層グラフェン骨格を有すると、酸化グラフェンと分子構造が類似することから、表面同士が近づくことにより結合力がさらに向上しうる。その結果、ナノ多孔質成形体の耐久性がさらに向上しうる。
【0034】
具体的には、例えば、ゼオライトテンプレートカーボン(ZTC;Zeorite Template Carbon)、グラフェンメソスポンジ(GMS;Graphene MesoSponge)、炭素メソスポンジ(CMS;Carbon MesoSponge)等が挙げられる。ゼオライトテンプレートカーボン(以下、「ZTC」と称する。)、グラフェンメソスポンジ(以下、「GMS」と称する。)、および炭素メソスポンジ(以下、「CMS」と称する)は、いずれも単層グラフェン骨格からなり、冷媒60の脱離および吸着に必要な多孔性および弾性特性を有している。
【0035】
ZTCは、単層のグラフェンシートにより構成される。また、均一な細孔(直径約1.2nm)が三次元的に規則配列し、相互に連結しており、極めて高いBET比表面積と細孔容積を有する(最大でBET比表面積が4100m/g、細孔容積が1.8cc/g)ことが知られている。なお、ZTCの規則構造は、X線回折装置(Rigaku,MiniFlex600,CuK)を用いて分析した。また、ZTCのBET比表面積は、液体窒素吸着(77K)(Microtrac BEL,BELSORB−max)を用いて分析した。
【0036】
ZTCの製造方法については、Nishihara, H. et al., Chemistry-European Journal 15, 5355 (2009) 等に記載されている。具体的には、まず、構造内部に空孔を有し、この空孔が網目状に連結した構造を有する多孔質材料(例えば、ゼオライト等)を鋳型として準備する。そして、この多孔質材料の表面および空孔の内部に加熱条件下で有機化合物(例えば、アセチレン、エチレン等)を導入し、加熱することによって当該有機化合物を炭化し、多孔質材料に炭素を堆積させる。ここで、有機化合物の炭化・炭素の堆積は、例えば化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法により行うことができる。そして、鋳型である多孔質材料を除去する。この方法により、鋳型の三次元構造を反映した炭素材料(すなわち、ZTC)を容易に製造することができる。上記の方法により製造されたZTCは柔軟性および弾性に優れ、細孔の直径が約1.2nmから約0.7nmになるまで可逆的に弾性変形することができる。
【0037】
GMSもまた、細孔壁の大部分が単層グラフェンから構成され、約6nm程度の微小な細孔を有するスポンジ状のメソ多孔体であり、ZTCと同様、活性炭に匹敵する極めて高いBET比表面積(約2000m/g)を有している。その一方で、活性炭やカーボンブラックとは異なり腐食の原因となるグラフェンの端部をほとんど含んでいないことから、優れた耐食性(酸化耐性)も備えている。また、柔軟かつ強靭であるというグラフェンの性質に起因して、GMSは柔軟性および弾性に優れ、細孔の直径が約5.8nmから約0.7nmになるまで可逆的に弾性変形することができる。
【0038】
GMSの製造方法については、Nishihara, H. et al., Advanced Functional Materials, Vol. 26, 2016, 6418-6427.に記載されている。具体的には、まず、ナノサイズの球状基材として、アルミナ等(例えば、γ−アルミナ)からなる金属酸化物ナノ粒子を準備する。この材料は後述するCVD法による炭素被覆に対する高い触媒活性と、優れた耐焼結耐性を有している。
【0039】
続いて、有機化合物を炭素源として用いたCVD法により、上記で準備した球状基材(金属酸化物ナノ粒子)の表面を炭素で被覆する。このCVD法を用いた炭素被覆によれば、球状基材(金属酸化物ナノ粒子)の全表面に均一な炭素層を形成することが可能である。なお、この際に用いられる有機化合物としては、メタン、アセチレン、エチレン、プロピレン、ベンゼン等が挙げられるが、なかでも特に大量の炭素結晶による被覆が達成されうるという観点からは、メタンを炭素源として用いることが好ましい。なお、CVDプロセスにおいては、ガス流の流れを良くする目的で、石英砂(珪砂)などのスペーサーを球状基材(金属酸化物ナノ粒子)と混合した状態で有機化合物を導入してもよい。また、有機化合物の導入には窒素等の不活性ガスをキャリアガスとして用いてもよく、キャリアガスと炭素源(有機化合物)との混合ガスにおける炭素源の濃度は10〜30体積%程度とすることが好ましい。
【0040】
CVDプロセスが進行すると試料の色は黒色に変化する一方で当該試料を内包する反応容器(例えば、石英管)は透明に維持されることから、炭素の堆積は球状基材(金属酸化物ナノ粒子)の表面上のみに生じていることが確認できる。ここで、CVDプロセスを経ても球状基材(金属酸化物ナノ粒子)は焼結していないため、炭素被覆された球状基材の形状は炭素被覆前からほとんど変化しない。このようにして球状基材(金属酸化物ナノ粒子)の表面に被覆された炭素層の(平均)積層数は、CVDプロセスにおいて投入した炭素源(有機化合物)の量のほか、CVDの際の処理温度および処理時間などに基づいて制御可能であり、最終的に得られるGMSにおけるグラフェン層の(平均)積層数に対応している。この(平均)積層数の値は特に制限されないが、冷媒60に対して優れた脱離/吸着特性を示すという観点から、好ましくは0.90〜3.0であり、より好ましくは0.95〜2.0であり、さらに好ましくは0.98〜1.5であり、特に好ましくは1.0〜1.1である。なお、CVDプロセスにおける処理温度および処理時間についても特に制限はないが、処理温度は好ましくは800〜1000℃であり、より好ましくは850〜950℃である。また、処理時間は好ましくは1〜10時間であり、より好ましくは2〜6時間である。
【0041】
その後、鋳型として用いられた球状基材(金属酸化物ナノ粒子)を化学エッチングによって除去し、当該球状基材の表面に被覆された炭素層のみを残す。この際、化学エッチングには強酸または強塩基の水溶液を用いればよい。強酸としては、例えば、フッ酸(HF)が挙げられる(この場合には室温でのエッチングが可能である)。また、強塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)が挙げられる(この場合には200〜300℃程度に加熱することが好ましい)。化学エッチングによって球状基材(金属酸化物ナノ粒子)が除去されると、GMSの前駆体として、球状のメソ孔を有する炭素メソスポンジ(CMS;Carbon MesoSponge)が得られる。
【0042】
最後に、このようにして得られた炭素メソスポンジ(CMS)を必要に応じて水洗した後、減圧条件下において、1500〜2000℃(好ましくは1700〜1900℃)程度の温度で、30分間〜2時間程度の熱処理を施す。これにより、炭素層のグラフェンへの結晶化が進行し、GMSが得られる。ここで、炭素メソスポンジ(CMS)の有する球状のメソ孔は上述した熱処理の際の高温に対しても非常に安定であることから、このようにして得られたGMSにおいても炭素メソスポンジ(CMS)と同様のメソ孔が保持されている。GMSはこのようなメソ孔を有していることから、スポンジのように柔軟に弾性変形が可能である。このため、収縮して冷媒60を脱離可能であると共に、膨張しては冷媒60を吸着可能であり、熱交換装置10におけるナノ多孔質成形体20に用いられるナノ多孔質体として好適に用いられうる。
【0043】
前記ナノ多孔質体は、Cu−Kα線を用いたX線回折スペクトルにおいて、2θ=44°付近に炭素の(10)面に由来するピークが観察されることが好ましく、その半値幅が1.2〜3.2°であることが好ましい。このような構造を有するナノ多孔質体は、バインダである酸化グラフェンにより近い分子構造を有する。そのため、酸化グラフェンとナノ多孔質体との間の結合力(ファンデルワールス力)が向上しうる。その結果、より結着力が向上するため、ナノ多孔質成形体の耐久性がさらに向上する。
【0044】
このようなナノ多孔質体としては、GMSまたはCMSが挙げられる。GMSおよびCMSは、酸化グラフェンと分子構造が類似し、その分子構造において、表面同士が近づく範囲がより広い。そのため酸化グラフェンとの結合力がさらに向上しうる。したがって、ナノ多孔質成形体としては、GMSまたはCMSを用いることが特に好ましい。
【0045】
本発明のナノ多孔質成形体は、バインダとして酸化グラフェンを含む。本明細書中、「酸化グラフェン」は、グラフェンを構成する炭素原子の一部がsp状態からsp状態に変化し、これらの変化した炭素原子に酸素含有官能基が結合した分子またはその集合体をいう。酸化グラフェンは、厚さが10nm以下であることが好ましい。酸素含有官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、カルボニル基、エポキシ基、およびラクトン基からなる群から選択される1以上である。
【0046】
酸化グラフェンは、市販のものを用いてもよく、合成したものを用いてもよい。酸化グラフェンの合成方法も特に制限されず、従来公知の方法が適宜用いられうる。好ましい調製方法としては、例えば、特開2013−212948号公報に記載される方法が挙げられる。
【0047】
なお、バインダとして、酸化グラフェンの他に、ナノ多孔質成形体においてナノ多孔質体同士の結着を目的として用いられる公知のバインダを組み合わせて用いてもよい。しかしながら、本発明の効果がより顕著に得られうることから、ナノ多孔質成形体に用いられるバインダのうち、好ましくは95質量%以上、より好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上が酸化グラフェンである。
【0048】
(バインダの含有量)
ナノ多孔質成形体におけるバインダの質量比は、特に制限されないが、ナノ多孔質成形体の総質量に対して、5.1〜19質量%であることが好ましい。バインダの含有量が5.1質量%以上であれば、ナノ多孔質体の保持力が高まるため、より耐久性の高いナノ多孔質成形体が得られうる。一方、バインダの含有量が19質量%以下であれば、バインダがナノ多孔質体内に入り込んで吸着質の吸着量が低下することを抑制することができる。さらにバインダの質量比が7〜15質量%であると、より耐久性が向上すると共に吸着量の低下を抑制できるため好ましい。
【0049】
(ナノ多孔質成形体の調製方法)
ナノ多孔質成形体の調製方法は特に制限されない。例えば、ナノ多孔質体と、酸化グラフェンとを混合し、混合物を熱処理する、好ましくはホットプレスすることによって調製することができる。
【0050】
熱処理の条件は特に制限されない。例えば、減圧条件下において、140〜160℃程度の温度で、200〜400MPaの圧力印加を10分間〜1時間程度施す。これにより、酸化グラフェンがバインダとして機能し、ナノ多孔質体同士、またはナノ多孔質体と酸化グラフェンとが強く結着し、耐久性に優れるナノ多孔質成形体が得られうる。加熱温度が140℃以上であれば高い結着性が得られ、160℃以下であれば試料作製時にナノ多孔質体の劣化が生じにくい。
【0051】
この際、ホットプレスを行う前に、室温で加圧を行ってもよい。この際の圧力は、ホットプレスの際の加圧条件よりも低い圧力であることが好ましく、例えば、100〜300MPaである。加圧時間も特に制限されないが、例えば10秒〜1分である。このように、段階的に加熱、加圧を行うことで、より強い結合力が実現できる。
【0052】
同様の理由で、ホットプレスの工程を、段階的に徐々に加熱、加圧していくように、異なる加熱、加圧条件の2段階以上の工程で行ってもよい。
【0053】
なお、ナノ多孔質成形体における酸化グラフェンの含有量は、あらかじめナノ多孔質成形体の作製条件と同等の加熱条件で酸化グラフェンを加熱して重量減少を測定し、その重量減少分に応じて仕込み比を調整することで、所望の含有量に制御することができる。好ましい実施形態において、酸化グラフェンの仕込み比は、固形分比で、前記混合物の総質量に対して11〜39質量%である。このようにすることで吸着質量が高く、耐久性に優れるナノ多孔質成形体が得られうる。
【0054】
(ナノ多孔質成形体のBET比表面積)
ナノ多孔質成形体のBET比表面積は特に制限されないが、例えば、900〜3200m/gであり、好ましくは900〜1899m/gである。BET比表面積が900m/g以上であれば吸着質の吸着量を増加させることができる。また、機械的強度を確保する観点から、3200m/g以下、特には1899m/g以下であることが望ましい。ナノ多孔質成形体のBET比表面積は、ナノ多孔質成形体を構成するナノ多孔質体のBET比表面積およびバインダの添加量を適宜選択することで調節することができる。BET比表面積は、液体窒素吸着(77K)(Microtrac BEL,BELSORB−max)を用いて分析することができる。
【0055】
(ナノ多孔質成形体の細孔容積)
ナノ多孔質成形体の細孔容積は特に制限されないが、1.0〜6.0mL/gであることが好ましく、1.3〜6.0mL/gであることがより好ましい。本発明のナノ多孔質成形体は、比較的相対圧の高い蒸気圧領域におけるナノ多孔質体の圧縮、膨張に伴う吸着質の気液相転移により熱量を稼ぐものである。細孔容積が1.0mL/g以上であれば、比較的相対圧の高い蒸気圧領域であっても吸着、脱離する吸着質の量が少なくなりすぎないため好ましい。また、細孔容積が6.0mL/g以下であれば、十分なBET比表面積が確保できるため吸着量が高くなるため好ましい。ナノ多孔質成形体の細孔容積は、ナノ多孔質成形体を構成するナノ多孔質体の細孔容積およびバインダの添加量を適宜選択することで調節することができる。ナノ多孔質成形体の細孔容積は、液体窒素吸着(77K)(Microtrac BEL,BELSORB−max)を用いて分析することができる。
【0056】
(ナノ多孔質成形体のヤング率)
ナノ多孔質成形体のヤング率は特に制限されないが、1.1GPa以下であることが好ましい。ナノ多孔質成形体のヤング率が1.1GPa以下であると、ナノ多孔質成形体を収縮させて吸着質を脱離させるのに必要な応力を低減させることができる。ナノ多孔質成形体のヤング率は、ナノ多孔質成形体を構成するナノ多孔質体のヤング率およびバインダの添加量を適宜選択することで調節することができる。ナノ多孔質成形体のヤング率は、後述の実施例に記載の方法で求めることができる。
【0057】
[応力付与部31A、31B]
応力付与部31A、31Bは、ナノ多孔質成形体20に応力を印加して収縮させ、印加した応力を解放してナノ多孔質成形体20を自由膨張させる。これにより、応力付与部31A、31Bは、ナノ多孔質成形体20の細孔径を外部からの応力で制御することができる。
【0058】
応力付与部31A、31Bは、ナノ多孔質成形体20に対して接近離反する方向に往復運動してナノ多孔質成形体20に応力を印加および解放することができる限りにおいてその構成は特に限定されない。応力付与部31A、31Bとしては、例えば、モーターの回転運動を利用した機械式プレス機や油圧等の流体圧を利用した液圧式プレス機などを使用することができる。
【0059】
[チャンバー32A、32B]
チャンバー32A、32Bは、内部にナノ多孔質成形体20を収容する空間を有する容器である。チャンバー32A、32Bの内部は真空または真空に近い低圧に保たれている。このため、冷媒60は比較的低い温度において液体から気体へ相変化しうる。
【0060】
[空気調節部33A、33B]
空気調節部33A、33Bは、チャンバー32A、32B内を低温の空気と熱伝導させた冷却状態と、高温の空気と熱伝導させた排熱状態とを切り替える。熱交換装置10は、対象を冷却するための装置であるため、低温の空気は、冷却する対象の雰囲気に相当する。空気調節部33A、33Bは、冷却状態にして対象を冷却するために必要な冷熱を熱交換部30A、30Bから取り出す。また、空気調節部33A、33Bは、排熱状態にして熱交換部30A、30Bから発生した熱を排熱する。
【0061】
熱交換装置10を自動車のカーエアコン(冷房)に適用する場合は、例えば、低温の空気を車室内空気(内気)とし、高温の空気を車室外空気(外気)とすることができる。例えば、外気温度は約303K、内気温度は約298Kとなる。以下の説明では、低温の空気を車室内の「内気」、高温の空気を車室外の「外気」として説明する。
【0062】
[制御部40]
制御部40は、例えば、図示しないCPU(中央演算装置)、RAM(Random Access Memory)、およびコンピュータ読み取り可能な記録媒体等から構成されている。
【0063】
制御部40は、応力付与部31A、31Bおよび空気調節部33A、33Bの動作を制御する。制御部40は、熱交換部30A、30Bにおける動作モードを、冷媒60をナノ多孔質成形体20から脱離させる脱離モードと、冷媒60をナノ多孔質成形体20に吸着させる吸着モードとに切り替える。
【0064】
[冷媒60]
冷媒60としては、水またはエタノールなどのアルコールを用いることが好ましい。一般的な蒸気圧縮式の熱交換装置では、フルオロカーボン系のHFC−134aが冷媒として広く用いられているが、水は、HFC−134aに対して、約16倍の蒸発潜熱を有するため、理論的には得られる冷熱は16倍になる。また、水またはエタノールなどのアルコールは、地球環境に悪影響を及ぼさないことから好ましい。
【0065】
<熱交換装置10の熱サイクル>
次に、図3を参照して、熱交換装置10による熱サイクルについて説明する。図3は、熱交換装置10の熱サイクルのT−S線図を示す。この際、冷媒60を次の4種類に分けて考える。第1の種類は恒久的にナノ多孔質成形体20に吸着した状態で留まる分である。第2の種類は、ナノ多孔質成形体20への応力印加や自由膨張により脱離および吸着するもののうち、内気の冷却に関与しない分である。第3の種類は、ナノ多孔質成形体20への応力印加や自由膨張により脱離および吸着するもののうち、内気の冷却に関与する分である。第4の種類は、ナノ多孔質成形体20に吸着せずに恒久的に気相として存在する分である。なお、図3で考慮しているのは、第3の種類の冷媒のみである。
【0066】
熱交換装置10の熱サイクルは、逆カルノーサイクルである。逆カルノーサイクルは、状態1→状態2→状態3→状態4の順に上記第3の種類の冷媒の状態を変化させる。図3中の状態1から状態2のプロセスは加熱、状態2から状態3のプロセスは等圧等温の吸着、状態3から状態4のプロセスは冷却、状態4から状態1のプロセスは等圧等温の脱離の各行程を示す。ここで、第3の種類の冷媒は、状態1では低温Tの飽和蒸気であり、状態2では高温Tの過熱蒸気であり、状態3では高温Tの液体であり、状態4では低温Tの液体である。ここで、温度TとTは等しくTであり、温度TとTは等しくTである。
【0067】
状態1から状態2では、第3の種類の冷媒は、低温Tの飽和蒸気から加熱されて高温Tの過熱蒸気になる。このとき、第3の種類の冷媒は、気体のまま相変化せずに温度が上昇する。同時に、第1の種類の冷媒およびナノ多孔質成形体20の温度をTからTに上昇させるために顕熱Qsh1−2[J]が吸熱される。なお、第3の種類の冷媒は気体であり、その顕熱は液体である第1の種類の冷媒の顕熱に比べて小さいため無視できる。熱交換装置10の熱サイクルでは、「顕熱」は、第1の種類の冷媒の温度変化に必要な熱量のみでなく、ナノ多孔質成形体20の温度変化に必要な熱量も含むものとする。
【0068】
状態2から状態3では、収縮していたナノ多孔質成形体20が自由膨張することによって、第3の種類の冷媒はナノ多孔質成形体20の細孔内に吸着する。吸着により、上記第3の種類の冷媒は、気体(水蒸気)から液体(水)へと相変化する。相変化に伴って凝縮潜熱Q[J]が排熱される。
【0069】
状態3から状態4では、第3の種類の冷媒は、高温Tの液体から冷却されて低温Tの液体になる。このとき、第1の種類の冷媒および第3の種類の冷媒は、液体のまま相変化せずに温度が低下する。第1の種類の冷媒および上記第3の種類の冷媒およびナノ多孔質成形体20の温度をTからTに低下させるために、顕熱Qsh[J]が排熱される。なお、状態3および状態4では、第3の種類の冷媒は、細孔内に吸着した状態である。また、状態3から状態4に至る間、気体である第2の種類の冷媒が温度低下に伴いナノ多孔質成形体20に吸着されるため、系の気相圧力は一旦低下するが、ナノ多孔質成形体20を収縮させ第2の種類の冷媒を脱離させることで系の気相圧力を元に戻し状態4に至らしめるものとする。
【0070】
状態4から状態1では、ナノ多孔質成形体20を収縮させて第3の種類の冷媒を脱離する。状態3から状態4に至る間にナノ多孔質成形体20を収縮させるために必要な外部からの仕事と、状態4から状態1に至る間にナノ多孔質成形体20を収縮させるために必要な外部からの仕事との和をWns[J]とする。また、脱離により上記第3の種類の冷媒は、液体(水)から気体(水蒸気)へと相変化する。相変化に伴って蒸発潜熱Q[J]が吸熱される。熱交換装置10は、蒸発潜熱Q[J]を冷熱として利用することにより対象を冷却することができる。
【0071】
なお、熱交換装置10の制御方法については、特開2019−138620号公報に記載される熱交換装置の制御方法と同様の方法を採用することができる。
【0072】
なお、上記では、本実施形態の熱交換装置を、脱離時の蒸発潜熱から得た冷熱を利用して対象を冷却する冷却装置に適用した場合を例に挙げて説明したが、吸着時の凝縮潜熱から得た温熱を利用して対象を加熱する加熱装置(ヒートポンプ)に適用してもよい。また、一対(2つ)の熱交換部を有するバッチ式の熱交換装置として説明したが、これに限定されず、1つの熱交換部によって構成してもよいし、3つ以上の熱交換部によって構成してもよい。
【実施例】
【0073】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0074】
(GMSの調製)
GMSは、単層グラフェン骨格を有し、大きな空孔率および弾性を有する。GMSの合成法はAdvanced Functional Materials, Vol. 26, 2016, 6418-6427.を引用した。
【0075】
アルミナナノ粒子(Taimei Chemicals,TM300)を電気炉に設置し、窒素気流中1173Kまで昇温させた。1173Kに到達したら、窒素ガスを20vol%メタン、80vol%窒素に切り替え、2hのCVDによりアルミナナノ粒子の表面に炭素を析出させた。その後、窒素のみのフローに切り替え、室温まで冷却した。得られたカーボン被覆アルミナナノ粒子をフッ酸(47wt%,Wako pure chemical industries)に浸漬し、アルミナナノ粒子を取り除いた。得られたメソポーラスカーボンは、アルゴン気流中(10Pa)2073Kで焼成し、GMSを得た。
【0076】
(CMSの調製)
上記のGMSの調製において、メソポーラスカーボンをアルゴン気流中(10Pa)2073Kで焼成する工程を行わなかったことを除いては、上記GMSの調製と同様の方法でCMSを作製した。
【0077】
(ZTCの調製)
本実施例に係るZTCは、Nishihara, H. et al., Chemistry-European Journal 15, 5355 (2009) を参考に合成を行った。ゼオライトX(Union Showa, 13X)を電気炉に設置し、窒素気流中873Kまで昇温させた。873Kに到達したら、窒素を20vol%アセチレン80vol%窒素に切り替え4時間化学気相蒸着(CVD)を行い、ゼオライトXの細孔の中にカーボンを析出させた。その後、窒素のみのフローに切り替え、温度を1123Kまで上げ、3時間保持した。試料を室温まで冷却した後、ゼオライトXは、フッ酸(47wt%,Wako pure chemical industries)で取り除き、ZTCを得た。
【0078】
(ナノ多孔質体のX線回折測定)
上記で調製したGMS、CMS、ZTCのX線回折スペクトルを測定した。X線回折測定は、シリコン無反射板にサンプルを載せ、株式会社島津製作所社製X線回折装置XRD−6100を用いて行った。線源はCu−Kα、電圧40kV、電流30mAで行った。図5(a)にGMS、CMSのX線回折スペクトル、図5(b)にZTCのX線回折スペクトルをそれぞれ示す。図5、表1に示すように、GMSおよびCMSのX線回折スペクトルでは、2θ=44°付近に炭素の(10)面に由来するピークが観察され、その半値幅はいずれも2.2°であった。一方、ZTCのX線回折スペクトルでは、炭素の(10)面に由来するピークは観察されなかった。表1中、XRDピークが観察されたものを〇、観察されなかったものを×とし、観察された場合は半値幅を併せて示した。
【0079】
[比較例1]
(ナノ多孔質成形体の調製)
上記で作製したGMSと、PTFEバインダとを、PTFEバインダの含有量が、最終的なナノ多孔質成形体の総質量に対して5質量%となるように混合し、めのう乳鉢を用いて室温で混錬して複合化した。
【0080】
複合化した材料をホットプレスによりペレット化した。ホットプレスは、株式会社和泉テック製の専用装置において実施し、加圧および加圧制御は株式会社島津製作所製のオートグラフにて行った。加圧は、160℃、28分間の加圧と、その後の300℃、60分間の加圧との2段階で行った。
【0081】
[実施例1]
ナノ多孔質成形体の調製において、上記で作製したGMSと、0.3質量%酸化グラフェン懸濁液(株式会社仁科マテリアル製、Rap GO(TQ−11)−10)とを、最終的なナノ多孔質成形体における酸化グラフェン(GO)の含有量が5質量%となるように混合し、混合物をフィルターに通した。このとき、仕込み比はGMS:酸化グラフェン=9:1(固形分比)であった。
【0082】
なお、上記0.3質量%酸化グラフェン懸濁液は、以下の方法で調製されたものである:天然黒鉛(500mg)を95%硫酸(15mL)中で撹拌し、この溶液に過マンガン酸カリウム(KMnO)(1.5g)を徐々に加え、水浴中10℃以下に温度を保った。その後、混合物を35℃で2時間撹拌した。得られた混合物を水(15mL)で薄め、温度が50℃を超えないよう冷却しながら、激しく撹拌した。懸濁液を、更に30%の過酸化水素水(1.25mL)で洗浄した。得られた懸濁液について、水での遠心分離を繰り返し、精製を行い、酸化黒鉛を得た。得られた酸化黒鉛を機械的に剥離させ、3000rpmで5分間で遠心分離した後、ディスパーションの上澄み液から単層の酸化グラフェンを分取することで、0.3質量%酸化グラフェン懸濁液を得た。
【0083】
次いで、混合物を乾燥後、ホットプレスによりペレット化した。ホットプレスは、株式会社和泉テック製の専用装置において実施し、加圧および加圧制御は株式会社島津製作所製のオートグラフにて行った。はじめに、室温にて200MPaで1分間加圧した後、減圧下、145℃で300MPaの圧力印加を30分間行った。
【0084】
[実施例2]
ナノ多孔質成形体の調製において、GMSと、0.3質量%酸化グラフェン懸濁液とを、最終的なナノ多孔質成形体における酸化グラフェンの含有量が10質量%となるように混合したことを除いては、実施例1と同様にしてナノ多孔質成形体を得た。このとき、仕込み比はGMS:酸化グラフェン=8:2(固形分比)であった。
【0085】
[実施例3]
ナノ多孔質成形体の調製において、GMSと、0.3質量%酸化グラフェン懸濁液とを、最終的なナノ多孔質成形体における酸化グラフェンの含有量が15質量%となるように混合したことを除いては、実施例1と同様にしてナノ多孔質成形体を得た。このとき、仕込み比はGMS:酸化グラフェン=7:3(固形分比)であった。
【0086】
[実施例4]
ナノ多孔質成形体の調製において、GMSと、0.3質量%酸化グラフェン懸濁液とを、最終的なナノ多孔質成形体における酸化グラフェンの含有量が20質量%となるように混合したことを除いては、実施例1と同様にしてナノ多孔質成形体を得た。このとき、仕込み比はGMS:酸化グラフェン=6:4(固形分比)であった。
【0087】
[実施例5]
ナノ多孔質成形体の調製において、CMSと、0.3質量%酸化グラフェン懸濁液とを、最終的なナノ多孔質成形体における酸化グラフェンの含有量が5質量%となるように混合したことを除いては、実施例1と同様にしてナノ多孔質成形体を得た。このとき、仕込み比はCMS:酸化グラフェン=9:1(固形分比)であった。
【0088】
[実施例6]
ナノ多孔質成形体の調製において、CMSと、0.3質量%酸化グラフェン懸濁液とを、最終的なナノ多孔質成形体における酸化グラフェンの含有量が10質量%となるように混合したことを除いては、実施例1と同様にしてナノ多孔質成形体を得た。このとき、仕込み比はCMS:酸化グラフェン=8:2(固形分比)であった。
【0089】
[実施例7]
ナノ多孔質成形体の調製において、CMSと、0.3質量%酸化グラフェン懸濁液とを、最終的なナノ多孔質成形体における酸化グラフェンの含有量が15質量%となるように混合したことを除いては、実施例1と同様にしてナノ多孔質成形体を得た。このとき、仕込み比は、CMS:酸化グラフェン=7:3(固形分比)であった。
【0090】
[実施例8]
ナノ多孔質成形体の調製において、CMSと、0.3質量%酸化グラフェン懸濁液とを、最終的なナノ多孔質成形体における酸化グラフェンの含有量が20質量%となるように混合したことを除いては、実施例1と同様にしてナノ多孔質成形体を得た。このとき、仕込み比は、CMS:酸化グラフェン=6:4(固形分比)であった。
【0091】
[実施例9]
ナノ多孔質成形体の調製において、ZTCと、0.3質量%酸化グラフェン懸濁液とを、最終的なナノ多孔質成形体における酸化グラフェンの含有量が5質量%となるように混合したことを除いては、実施例1と同様にしてナノ多孔質成形体を得た。このとき、仕込み比は、ZTC:酸化グラフェン=9:1(固形分比)であった。
【0092】
(ナノ多孔質成形体のペレットの形状維持状態)
各実施例、比較例で作製したナノ多孔質成形体のペレットについて、ペレット成形機であるホットプレスからの取り出し時および取り出し直後(取り出してから数分以内)のペレットの形状維持状態を観察し、下記の基準で評価し、結果を表1の「初期形状」に示した。◎、〇、△であれば問題なく使用できる。なお、ホットプレスから取り出してから数分〜数十分経過してもペレットの形状は変化しない。
【0093】
◎:取り出し時のペレットの破損の発生がなく、取り出し直後のペレットを30cmの高さから木製板上に落下させても破損がない、
〇:取り出し時のペレットの破損の発生がなく、取り出し直後のペレットを30cmの高さから木製板上に落下させた際にわずかに破損が発生した(残存率95%以上)、
△:取り出し時にペレットにわずかに破損が発生した(残存率95%以上)、または、取り出し直後のペレットを30cmの高さから木製板上に落下させた際に破損が発生し、残存率が95%未満であった、
×:ペレット成形不能、または、取り出し時に破損が発生し、残存率が95%未満であった。
【0094】
(ナノ多孔質成形体のBET比表面積および細孔容積(全細孔容積)の測定)
各実施例、比較例で作製したナノ多孔質成形体のペレットについて、BET比表面積および細孔容積(全細孔容積)を測定した。BET比表面積および細孔容積は、液体窒素吸着(77K)(Microtrac BEL,BELSORB−max)を用いて分析した。
【0095】
(ナノ多孔質成形体における応力印加時のエタノールの脱離および吸着測定)
各実施例、比較例で作製したナノ多孔質成形体のエタノール吸着量を、図4の装置を用いて、応力無印加時と90MPaの応力印加時(298K)におけるエタノールの脱離/吸着曲線から求めた。
【0096】
図4は、密閉したチャンバー内で試料に応力を印加または解放した際のエタノールの脱離量および吸着量を測定するためのプレスチャンバー装置である。プレスチャンバー装置のチャンバーには直線導入機が接続してあり、試料に密閉チャンバー内で応力を印加できるように構成している。
【0097】
まず、各実施例、比較例で作製したナノ多孔質成形体の試料のそれぞれについて、423Kで真空乾燥し、プレスチャンバー装置のin situ測定用のチャンバー内にセットした。チャンバーを自動ガス吸着装置(BEL Japan,BELSORB−max)に締結し、チャンバーの内圧をモニタリングできるようにした。測定に十分な量の試料を確保するため、ペレット状の試料をステンレスの金属板で挟み積層する形でチャンバー内にセットした。in situ測定に先立って、積層した試料を数回プレスし、試料の弾性変形を安定化させた。
【0098】
直線導入機のトルクと積層した試料に印加される応力との関係は、以下の実験により予め確認を行った。トルクセンサーが付属するラチェット(Kyoto Tool Co.,GEK085−W36)を直線導入機に装着し、直線導入機を回すトルクを測定できるようにした。直線導入機の先端部分が試験機(Shimadzu,AG−50kNXplus)のロードセルに接触するように固定した状態で、ラチェットを回し、ハンドルを回すトルクとロードセルに印加される応力との関係を調べた。上記関係を利用することで、積層した試料に印加される応力は、直線導入機のトルクで制御した。
【0099】
比較例1で作製したナノ多孔質成形体の応力無印加時と90MPaの応力印加時(298K)におけるエタノールの脱離/吸着曲線を図6に示す。エタノール吸着量は、図6の縦軸の値をA[mmol/g](1gのナノ多孔質成形体に吸着したエタノール分子の量)として、吸着したエタノールの液体としての体積をB[cm/g](1gのナノ多孔質成形体に吸着したエタノール分子の量を、液体の体積に換算したもの)とすると、B=A/1000×MEtOH÷ρEtOHの式から求めることができる。ここで、MEtOHはエタノールの分子量(46.068g/mol)であり、ρEtOHは、エタノールの密度(0.789g/cm)である。
【0100】
GMSは、主に単層グラフェンからなり、大きな弾性を持ち合わせている。相対圧P/P=0.92(P:エタノール蒸気圧、P:飽和エタノール蒸気圧)における吸着量は、応力印加に伴い、58%まで低減した。すなわち、相対圧P/P=0.92におけるGMSの細孔容積をエタノールの液体体積に換算すると、応力無印加時で2.28cm/gとなり、90MPaの応力印加時では1.31cm/gと求められる。応力印加に伴ってエタノール吸着量が58%まで低減したことは、GMSの変形によって細孔容積が58%まで低減したためと考えられる。
【0101】
なお、応力無印加時のエタノールの脱離/吸着等温線(298K)を測定した際、吸着が完了し、脱離点が観測された直後にナノ多孔質成形体に90MPaを印加すると、相対圧は上昇することが確認された(図示せず)。この結果から、GMSを含むナノ多孔質成形体において、応力印加時にエタノールの相変化(液体→気体)が起こっていることを確認した。
【0102】
同様に各実施例で作製したナノ多孔質成形体において、応力印加時のエタノールの脱離および吸着測定を行い、応力印加に伴ってエタノール吸着量が減少することを確認し、エタノール吸着量を求め、表1に示した。
【0103】
また、上記のin−situ測定の際に、別途、ナノ多孔質成形体の応力−ひずみ曲線を測定した。ナノ多孔質成形体のペレットを治具で挟み、室温で、株式会社島津製作所社の試験機を用いて応力−ひずみ曲線を測定した。図7に、比較例1および実施例9で作製したナノ多孔質成形体の応力−ひずみ曲線を示す。図7に示すように、バインダとして酸化グラフェンを用いた実施例9のナノ多孔質成形体では、PTFEを用いた比較例1のナノ多孔質成形体と比較して、応力−ひずみ曲線においてエタノールの吸脱着によるヒステリシスが解消され、優れた弾性(直線性)を示す。また、図7のハッチング部分の面積から、内部摩擦によるエネルギー損失を計算することができ、比較例1および実施例9のナノ多孔質成形体では、それぞれ、29%および11%であった。このことから、バインダとして酸化グラフェンを用いた実施例9のナノ多孔質成形体では、エネルギー損失が解消され、加圧、除圧に対する耐久性が向上していることが確認された。
【0104】
同様の測定を実施例1〜8で作製したナノ多孔質成形体についても行った。実施例1〜8で作製したナノ多孔質成形体はいずれも、実施例9のナノ多孔質成形体と同様に、応力−ひずみ曲線において優れた弾性(直線性)を示し、応力の印加、解放に伴うエネルギー損失が少ないことが確認された。
【0105】
(耐久性の測定)
各実施例および比較例で作製したナノ多孔質成形体のペレットについて、50〜60MPaで5回プレスを行い、5回プレス後のペレットの破損の様子を観察し、ペレットの残存率(%)を求めた。この際、プレス装置は、試料作製に用いた装置を用い、プレスは、応力印加が5分、解放が10分のサイクルで行った。
【0106】
また、上記のエタノールの脱離および吸着測定において、5回の吸脱着を行い、1回目の吸着量に対する5回目の吸着量の割合(%)を求め、初期値維持率とした。測定は、温度約30℃で、50〜60MPaでの応力印加が5分、解放が10分のサイクルで行った。
【0107】
耐久性の評価結果を表1に示す。以下の基準において、◎、〇、△であれば問題なく使用できる:
◎:ペレット破損がなく、吸着量の初期値維持率が98.5%以上であった、
〇:一部ペレット破損があり(亀裂あり、または残存率95%以上)、吸着量の初期値維持率が95%以上98.5%未満であった、
△:ペレット破損があり(残存率80%以上95%未満)、吸着量の初期値維持率が80%以上95%未満であった、
×:ペレットの残存率が計測不能であるか、またはペレットが破断分解されて再使用不能であり、吸着量の初期値維持率が80%未満であった。
【0108】
(ナノ多孔質成形体のヤング率の測定)
各実施例および比較例で作製したナノ多孔質成形体に対して、水銀等方圧試験を行って応力−体積ひずみ曲線を測定した。得られた応力−体積ひずみ曲線から体積弾性率を算出し、ヤング率を求めて表1に示した。水銀等方圧試験は、等方圧プレス下で、水銀ポロシメーター(Micromerit−ics Instrument Corporation, Autopore IV 9510)を用いた水銀圧入法により圧縮応力と細孔の体積との関係を測定する試験である。具体的には、予め真空処理した各実施例および比較例で作製したナノ多孔質成形体を密閉チャンバーにセットし、真空下でチャンバーに水銀を導入した。応力(等方圧)P[MPa]において水銀が試料全体に行き渡った時の体積VHg[m]を測定し、応力P[MPa]と細孔の体積ひずみVHg/Vとの関係を求めた。ここで、V[m]は、初期の細孔の体積である。
【0109】
試料の体積弾性率K[MPa]は、応力が50〜150MPaのときの応力−体積ひずみ曲線の直線近似から計算した。直線近似式は、次の式で表すことができる。
【0110】
【数1】
【0111】
50MPa以上で起こる現象を機械的圧縮による細孔の変形と仮定し、上記直線近似式から体積弾性率を計算した。なお、ナノ多孔質体であるGMS、GMC、ZTCを等方均質弾性体と仮定すると、体積弾性率K[MPa]とヤング率E[Pa]との関係は、次の式で表すことができる。
【0112】
【数2】
【0113】
得られた結果を下記表1に示す。表1の結果から、バインダとして酸化グラフェンを用いてナノ多孔質体を結着させた実施例1〜9のナノ多孔質成形体は、応力の印加、解放によりエタノールを効率的に吸着、脱離させることができ、耐久性に優れることがわかった。一方、バインダとしてPTFEを用いた比較例1のナノ多孔質成形体では、接着性が十分に得られず、耐久性が低いことがわかった。
【0114】
【表1】
【符号の説明】
【0115】
10 熱交換装置、
20 ナノ多孔質成形体、
20A 第1ナノ多孔質成形体、
20B 第2ナノ多孔質成形体、
30A 第1熱交換部(熱交換部)、
31A 第1応力付与部(応力付与部)、
32A 第1チャンバー(チャンバー)、
30B 第2熱交換部(熱交換部)、
31B 第2応力付与部(応力付与部)、
32B 第2チャンバー(チャンバー)、
33A 第1空気調節部、
33B 第2空気調節部、
40 制御部、
50 配管、
51 バルブ、
60 冷媒(媒体)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7