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特開2021-194614汚泥用脱水助剤、汚泥脱水方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-194614(P2021-194614A)
(43)【公開日】2021年12月27日
(54)【発明の名称】汚泥用脱水助剤、汚泥脱水方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/147 20190101AFI20211129BHJP
   C02F 11/125 20190101ALI20211129BHJP
【FI】
   C02F11/147ZAB
   C02F11/125
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-104438(P2020-104438)
(22)【出願日】2020年6月17日
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】五枚橋 遼介
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA00
4D059BE26
4D059BE53
4D059BE55
4D059BE57
4D059BE58
4D059BE59
4D059DA16
4D059DA23
4D059DA24
4D059DB21
4D059DB22
4D059DB23
4D059DB24
4D059DB31
(57)【要約】
【課題】脱水ケーキの低い含水率を達成しながら、環境負荷が小さく、より廉価に供給できる汚泥用脱水助剤、及び当該汚泥用脱水助剤を用いる脱水方法並びに装置を提供する。
【解決手段】0.1cm以上15cm以下の長さ及び5wt%以上20wt%以下の含水率を有する毛髪からなる汚泥用脱水助剤を難脱水性汚泥に添加した後、脱水処理を行う。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1cm以上15cm以下の長さ及び5wt%以上20wt%以下の含水率を有する毛髪からなる汚泥用脱水助剤。
【請求項2】
脱水処理される前の汚泥に対して、汚泥のTSに対して10wt%以下となるように、0.1cm以上15cm以下の長さ及び5wt%以上20wt%以下の含水率を有する毛髪からなる汚泥用脱水助剤を投入することを含む、汚泥脱水方法。
【請求項3】
有機性繊維状物の含有量が少ない難脱水性汚泥に対して、汚泥用脱水助剤を汚泥に投入することを含む、請求項2に記載の汚泥脱水方法。
【請求項4】
散髪後の毛髪を0.1cm以上15cm以下の長さに裁断する工程と、散髪後の毛髪の含水率を5wt%以上20wt%以下に調整する工程と、を含む、請求項1に記載の汚泥用脱水助剤を製造する方法。
【請求項5】
散髪後の毛髪を15cm以下の長さに裁断するように裁断刃が設けられている裁断機と、裁断機から落下する裁断後の毛髪のうち0.1cm以上15cm以下の長さの毛髪を通過させる篩と、篩を通過した毛髪を受容して、0.1cm以上15cm以下の長さ及び5wt%以上20wt%以下の含水率を有する毛髪からなる汚泥用脱水助剤を所定量、汚泥に投入する供給機と、を具備する汚泥用脱水助剤供給装置。
【請求項6】
汚泥貯留槽と、機械脱水機と、汚泥貯留槽から機械脱水機へと汚泥を搬送する汚泥搬送ラインと、請求項5に記載の汚泥用脱水助剤供給装置と、を具備し、当該汚泥用脱水助剤供給装置は、当該汚泥貯留槽、当該機械脱水機又は当該汚泥搬送ラインのいずれか1以上に汚泥用脱水助剤を供給するように設けられている、汚泥脱水装置。
【請求項7】
上記機械脱水機は、スクリュープレス型脱水機である、請求項6に記載の汚泥脱水装置。
【請求項8】
上記機械脱水機は汚泥を脱水する前に濃縮する濃縮機構を具備し、上記汚泥用脱水助剤供給装置は当該濃縮機構の後段に汚泥用脱水助剤を供給するように設けられている、請求項6又は7に記載の汚泥脱水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥用脱水助剤、当該汚泥用脱水助剤を用いる汚泥脱水方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から下水処理施設、し尿処理施設、その他排水処理施設から発生する汚泥(以下「汚泥」という)に、有機高分子凝集剤を添加して機械脱水する処理が行われている。しかし、近年の生活様式の変化等により汚泥が難脱水性となったため、機械脱水処理を行っても汚泥の含水率を低下させることが難しくなっている。特に、オキシデーションディッチ処理された汚泥の脱水性は、混合生汚泥、活性汚泥の余剰汚泥、消化汚泥等に比較して脱水性が非常に悪い。これは、オキシデーションディッチ法におけるエアレーション時間が非常に長いため、汚泥中の繊維分がかなり分解され、凝集の核となる汚泥中の繊維分が少なくなるためであると考えられている。更には、ベルトプレス脱水機やフィルタープレス脱水機のような加圧式脱水機を使用する場合には、ろ布からの脱水ケーキの剥離性が悪く、ろ布が目詰まりするため、ろ過不良を起し、安定した脱水ができなくなるばかりでなく、ろ布の洗浄に時間が掛かるといった問題も生じている。
【0003】
し尿処理施設においては、生物処理の前段に設けられているスクリーンにより汚泥から殆どの夾雑物が除去されるため、発生する汚泥には繊維分が少なくなり、汚泥の含水率を低下させることが難しい。このため、有機性排水に含まれている食物の残渣や髪の毛、トイレットペーパー等の繊維分をし渣分としてスクリーンでろ過した後、脱水処理系において余剰汚泥と混合することによって単独では難脱水性である余剰汚泥の脱水性を改善する方法が提案されている(特許文献1)。しかし、この方法では、繊維分は有機性排水の性状に因るところが大きく、繊維分の形状及び含有量を制御できないため、脱水ケーキの含水率を安定して適切に制御することが難しい。
【0004】
また、廃棄物の再利用の観点から、汚泥のコンポスト化が推進されている。コンポスト化処理の場合、対象汚泥の含水率を40〜60%にする必要がある。また、コンポスト化においては、脱水処理で使用する薬剤等は生分解性(微生物で分解できる)であることが必要である。
【0005】
汚泥の含水率を低下させる手段として、汚泥に繊維状物を混合した後に高分子凝集剤を添加して脱水する方法が提案されている。例えば、有機性汚泥に、合成繊維と凝集剤を添加した後、脱水処理する方法(特許文献2)などが提案されている。当該方法では、従来の古紙裁断物を添加する方法と比較して、少ない添加量でも含水率が低い脱水ケーキが得られる。
【0006】
汚泥に合成繊維を混合する方法では、ある程度のケーキ含水率の低減が可能である。しかし、合成繊維の汚泥に対する濡れ性が不十分な場合には、槽内全体を十分に攪拌できる装置を具備していない汚泥貯留槽などへ合成繊維を投入する場合に、汚泥中での開繊が困難であり、合成繊維を汚泥中に均一に混合することができない。また、合成繊維を汚泥中に均一に混合できたとしても、脱水機内で圧搾される時に汚泥から合成繊維が分離してしまい、脱水に寄与できないために安定した脱水処理ができない。また、繊維状物の中には、微生物で分解され難いものもあり、コンポスト化には不向きな場合もある。
【0007】
そこで、本出願人は、繊維の外周面に、毛細管作用により水分を移送する水分移送路として作用する筋が繊維の長手方向に延在する凹部を5〜20個有し、特定の含水率を有する繊維状物質を含む脱水助剤を提案した(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001-219186号公報
【特許文献2】特開2002-219500号公報
【特許文献3】特開2012-071296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在、脱水ケーキ中の含水率を低下させる課題を達成するために脱水助剤及び凝集剤を用いることが一般的であるが、化学合成品である合成繊維及び凝集剤は最終的な脱水ケーキの焼却処分時に環境負荷が小さくなく、また薬剤添加による処理はコストは高くなる。そこで、最終的な処分時の環境負荷を低減し、より一層のコスト低減を達成しながら脱水ケーキの含水率を低下させる方法が求められている。
【0010】
本発明は、脱水ケーキの低い含水率を達成しながら、環境負荷が小さく、より廉価に供給できる汚泥用脱水助剤、及び当該汚泥用脱水助剤を用いる脱水方法並びに装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、ゴミとして焼却処理されている散髪後の毛髪を汚泥用脱水助剤として再利用することにより、環境負荷が小さく、廉価な汚泥用脱水助剤を提供できると考え、本発明を完成するに至った。
[1]0.1cm以上15cm以下の長さ及び5wt%以上20wt%以下の含水率を有する毛髪からなる汚泥用脱水助剤。
[2]脱水処理される前の汚泥に対して、汚泥のTSに対して10wt%以下となるように、0.1cm以上15cm以下の長さ及び5wt%以上20wt%以下の含水率を有する毛髪からなる汚泥用脱水助剤を投入することを含む、汚泥脱水方法。
[3]有機性繊維状物の含有量が少ない難脱水性汚泥に対して、汚泥用脱水助剤を汚泥に投入することを含む、上記[2]に記載の汚泥脱水方法。
[4]散髪後の毛髪を0.1cm以上15cm以下の長さに裁断する工程と、散髪後の毛髪の含水率を5wt%以上20wt%以下に調整する工程と、を含む、上記[1]に記載の汚泥用脱水助剤を製造する方法。
[5]散髪後の毛髪を15cm以下の長さに裁断するように裁断刃が設けられている裁断機と、裁断機から落下する裁断後の毛髪のうち0.1cm以上15cm以下の長さの毛髪を通過させる篩と、篩を通過した毛髪を受容して、0.1cm以上15cm以下の長さ及び5wt%以上20wt%以下の含水率を有する毛髪からなる汚泥用脱水助剤を所定量、汚泥に投入する供給機と、を具備する汚泥用脱水助剤供給装置。
[6]汚泥貯留槽と、機械脱水機と、汚泥貯留槽から機械脱水機へと汚泥を搬送する汚泥搬送ラインと、上記[5]に記載の汚泥用脱水助剤供給装置と、を具備し、当該汚泥用脱水助剤供給装置は、当該汚泥貯留槽、当該機械脱水機又は当該汚泥搬送ラインのいずれか1以上に汚泥用脱水助剤を供給するように設けられている、汚泥脱水装置。
[7]上記機械脱水機は、スクリュープレス型脱水機である、上記[6]に記載の汚泥脱水装置。
[8]上記機械脱水機は汚泥を脱水する前に濃縮する濃縮機構を具備し、上記汚泥用脱水助剤供給装置は当該濃縮機構の後段に汚泥用脱水助剤を供給するように設けられている、上記[6]又は[7]に記載の汚泥脱水装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の汚泥用脱水助剤は、合成繊維と異なり、タンパク質である散髪後の毛髪を利用するため、燃料として脱水ケーキを再利用する際にも容易に燃焼し、有害ガスもほとんど発生しないので、環境負荷が極めて小さい。また、通常そのまま焼却処理される散髪後の毛髪を再利用するため、通常通り毛髪を焼却処分する場合と総焼却量が変わらず、焼却処理場の負荷も増加しない。
【0013】
本発明の汚泥用脱水助剤は、汚泥に絡みつき汚泥を凝集させる作用も発揮するため、高分子凝集剤の使用量を削減することができる。あるいは、本発明の汚泥用脱水助剤を用いることで、高分子凝集剤の使用量が同等である場合には、脱水汚泥をより低含水率まで脱水することができる。本発明の汚泥用脱水助剤は廃棄処分される毛髪を再利用するため、従来の合成繊維を用いる脱水助剤に比べて原材料費が大幅に安く、加えて高価な高分子凝集剤の使用量を削減できるため、処理費用を顕著に削減することができる。
【0014】
本発明により脱水処理されて形成される脱水ケーキは、毛髪に由来する適度な油分により、機械脱水機から搬出される際にベルトコンベアなどの脱水ケーキ搬出ラインに付着しにくく、また、脱水ケーキ中に多くの空隙を形成するため、乾燥などの脱水ケーキの後処理を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の汚泥脱水装置の概要を示す説明図。
【実施形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の汚泥用脱水助剤は、0.1cm以上15cm以下の長さであり、5wt%以上20wt%以下の含水率を有する毛髪からなる。
【0017】
毛髪の表面には、水で膨潤しやすく、水分の通り道となる多層構造の毛小皮(キューティクル)が積層しているため、脱水ケーキ中の水分を吸着し、脱水ケーキ中の遊離水分を減少させることができると考えられる。毛髪としては、ヒトの散髪後の毛髪に限らず、犬や猫などのペットのトリミング後の毛髪を用いることができる。
【0018】
毛髪は、汚泥に絡まり、汚泥を凝集させるため、凝集剤としての作用も発揮する。汚泥に絡みついて凝集作用を発揮するには長い方が好ましいが、長すぎる毛髪は、脱水装置に絡みつくと脱水装置の故障の原因となる。特にスクリュープレス型脱水装置の場合にはスクリューに絡みつきやすく、絡みつくと外すことが困難である。汚泥に絡みつきやすく、脱水機に絡まない毛髪の長さとして、0.1cm以上15cm以下、好ましくは0.5cm以上10cm以下、特に好ましくは0.5cm以上5cm以下とする。散髪後の毛髪の長さは種々雑多であるため、上記範囲内の長さに裁断してから汚泥に投入する。
【0019】
毛髪の太さは特に限定されず、0.04mm以上0.15mm以下程度の太さの毛髪を用いることができる。
また、汚泥と混合しやすくするため、汚泥用脱水助剤は適度な水分を保持していることが好ましく、5wt%以上20wt%以下、特に10wt%以上15wt%以下の含水率であることが好ましい。散髪後の毛髪の含水率が著しく低い場合には、毛髪に水を噴霧又は毛髪を水中に浸漬するなどして含水率を上記範囲内に調整する。
【0020】
また、毛髪は適度な油分を含むため、本発明の汚泥用脱水助剤を用いることにより、低含水率まで脱水した脱水ケーキが機械脱水機及び機械脱水機からの搬出ラインに付着しにくくなる。
【0021】
さらに、本発明の汚泥用脱水助剤は、脱水ケーキ中に空隙を多く形成するため、乾燥などの脱水ケーキの後処理が容易となる。
本発明の汚泥用脱水助剤は、散髪後の毛髪を0.1cm以上15cm以下の長さに裁断する工程と、散髪後の毛髪の含水率を5wt%以上20wt%以下に調整する工程と、を含む方法により製造することができる。
【0022】
本発明の汚泥脱水方法において、汚泥用脱水助剤の投入量は、汚泥のTSに対して10wt%以下、好ましくは5wt%以下、特に好ましくは3wt%以下である。汚泥に対する汚泥用脱水助剤の投入量が10wt%を超過しても脱水性の更なる向上効果が期待できない。
【0023】
本発明の汚泥用脱水助剤は、下水汚泥、上水汚泥、し尿汚泥、農業廃水汚泥、食品廃棄物や化成品製造工場などから排出される産業汚泥などの有機性汚泥の処理に制限なく用いることができ、有機性繊維状物の含有量が少なく、凝集しにくい難脱水性汚泥に対して特に有効である。このような難脱水性汚泥としては、下水消化汚泥、オキシデーションディッチ法から発生する余剰汚泥、し尿処理施設から発生する汚泥などが挙げられる。
【0024】
本発明の汚泥用脱水助剤は、汚泥の脱水前に汚泥と混合されればよく、汚泥または汚水の処理工程の上流側でも投入することができ、最も効果の高い投入位置を汚泥性状や混合状態に応じて任意に選定することができるが、汚泥貯留槽、機械脱水機又は汚泥搬送ラインのいずれか1以上に投入されることが好ましい。汚泥との接触混合時間が長く、汚泥に十分に絡ませることができるという観点から、汚泥用脱水助剤は汚泥貯留槽に投入されることが好ましい。また、機械脱水機が濃縮機構を有するスクリュープレス型脱水機である場合には、濃縮機構により濃縮された脱水前の汚泥に汚泥用脱水助剤が投入されることがより好ましい。
【0025】
図1に、本発明の汚泥脱水装置の概要を示す。汚泥脱水装置1は、汚泥貯留槽11と、機械脱水機12と、汚泥貯留槽11から機械脱水機12に汚泥を搬送するポンプを有する汚泥搬送ライン13a及び13bと、汚泥用脱水助剤供給装置14と、を具備する。汚泥用脱水助剤供給装置14は、汚泥貯留槽11、汚泥搬送ライン13a及び13b、機械脱水機12のいずれか1以上に汚泥用脱水助剤を供給することができる。
【0026】
汚泥用脱水助剤供給装置14は、所定量の汚泥用脱水助剤を汚泥貯留槽11、汚泥搬送ライン13a及び13b、機械脱水機12のいずれか1以上に供給できる定量供給機構を有する。汚泥用脱水助剤供給装置14は、散髪後の毛髪を15cm以下の長さに裁断するように裁断刃が設けられている裁断機15と、裁断機15から落下する裁断後の毛髪のうち0.1cm以上15cm以下の長さの毛髪を通過させる篩16と、を有する。定量供給機構は篩を通過した所定長範囲の毛髪(汚泥用脱水助剤)を受容して、所定量の汚泥用脱水助剤を汚泥に投入する。
【0027】
機械脱水機12は、通常の加圧脱水機、真空脱水機、ベルトプレス脱水機、遠心脱水機、スクリュープレス型脱水機とすることができる。脱水性能の点から、スクリュープレス型脱水機、特に軸摺動型スクリュープレス型脱水機であることが好ましい。特に、汚泥を脱水する前に濃縮する濃縮機構を具備するスクリュープレス型脱水機であることが好ましく、濃縮機構の後段に汚泥用脱水助剤を供給するように、汚泥用脱水助剤供給装置14が配置されることが好ましい。
【0028】
汚泥用脱水助剤を汚泥貯留槽11の汚泥に添加する場合には、前記添加量の範囲となるように一括投入することができる。また、汚泥搬送ライン13a又は13b中の汚泥に添加する場合には、常時又は間欠的に汚泥の流入、引抜きがあるために、汚泥の流入量、引抜き量に応じて汚泥用脱水助剤を適宜追加してもよい。また、機械脱水機12前で添加する場合には、機械脱水機12に供給される汚泥流量に対して前記添加量の範囲となるように汚泥用脱水助剤を添加することができる。
【0029】
本発明の汚泥脱水方法は、汚泥用脱水助剤に加えて、一般的な脱水方法で用いる凝集剤を添加することができる。汚泥用脱水助剤の添加は、凝集剤の添加前後どちらでも構わない。しかし、汚泥中へ汚泥用脱水助剤を均一に混合させる点から、凝集剤の添加前に添加することがより好ましい。凝集剤を添加した後に、汚泥用脱水助剤を汚泥に添加する場合には、凝集槽内の汚泥、凝集槽の下流に設けられている造粒濃縮槽内の汚泥、凝集槽からの汚泥を凝集ろ過した後の汚泥の何れの汚泥に添加してもよい。ろ過濃縮部を有するスクリュープレス型脱水機の場合には、ろ過濃縮後、凝集汚泥が脱水機本体に供給される箇所に、同時に汚泥用脱水助剤を添加してもよく、汚泥と汚泥用脱水助剤との均一混合が可能である。
【0030】
また、汚泥用脱水助剤を高分子凝集剤と同時に添加しても良い。具体的には、高分子凝集剤の溶解作業中あるいは溶解後に、高分子凝集剤溶解槽に汚泥用脱水助剤を所定量投入して混合することができる。高分子凝集剤溶解槽中に高分子凝集剤と共に均一に分散された脱水助剤は、凝集槽で汚泥が凝集フロックを形成する間に、凝集フロック内に取り込まれる。
【0031】
高分子凝集剤としてはカチオン系高分子凝集剤あるいは両性高分子凝集剤、アニオン系高分子凝集剤、ノニオン系高分子凝集剤を用いることができる。カチオン系高分子凝集剤とは、カチオン性モノマー単位を必須成分として有するものであり、カチオン性モノマーの共重合体、カチオン性モノマーとノニオン性モノマーとの共重合体がある。カチオン性モノマーとしては、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートもしくはこれらの中和塩、4級塩などが挙げられる。また、分子内にアミジン単位を含有するカチオン系高分子凝集剤も使用することができる。ノニオン性モノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、メタアクリロニトリル、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0032】
両性高分子凝集剤は、カチオン性モノマー単位、アニオン性モノマー単位及びノニオン性モノマー単位の共重合体である。アニオン性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、及びこれらのアルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属塩又はアンモニウム塩が挙げられる。
【0033】
アニオン系高分子凝集剤としては、ポリアクリルアミド部分加水分解物、アニオン性モノマーの共重合体、アニオン性モノマーとアクリルアミド等のノニオン性モノマーとの共重合体が挙げられる。アニオン性モノマーとしては上記のものが挙げられ、これらアニオン性モノマーは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ノニオン性モノマーとしては上記のものが挙げられ、これらノニオン性モノマーは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。共重合体として好ましいものは、アクリルアミド・アクリル酸塩共重合体、アクリルアミド・2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体である。
【0034】
ノニオン系高分子凝集剤とは、上記のノニオン性モノマーの重合体又は共重合体であるが、好ましくはポリアクリルアミドである。
高分子凝集剤の形状は、粉末状又はエマルジョン状のいずれも使用することができる。
【0035】
また、高分子凝集剤の添加方法として、汚泥にカチオン系高分子凝集剤を添加した後、アニオン系高分子凝集剤を添加する二剤法も適用できる。
さらに、無機凝集剤や有機高分子凝結剤を添加した後に高分子凝集剤を添加する方法も適用可能である。無機凝集剤としては、汚泥処理技術に一般に使用される硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、ポリ硫酸第2鉄(ポリ鉄)、塩化第2鉄あるいはこれらの混合物が使用可能である。有機高分子凝結剤としては、縮合系ポリアミン、ジシアンジアミド・ホルマリン縮合物、ポリエチレンイミン、ポリビニルイミダリン、ポリビニルピリジン、ジアリルアミン塩・二酸化硫黄共重合体、ポリジメチルジアリルアンモニウム塩、ポリジメチルジアリルアンモニウム塩・二酸化硫黄共重合体、ポリジメチルジアリルアンモニウム塩・アクリルアミド共重合体、ポリジメチルジアリルアンモニウム塩・ジアリルアミン塩酸塩誘導体共重合体、アリルアミン塩重合体などを用いることができる。縮合系ポリアミンの具体例としては、アルキレンジクロライドとアルキレンポリアミンとの縮合物、アニリンとホルマリンの縮合物、アルキレンジアミンとエピクロルヒドリンとの縮合物、アンモニアとエピクロルヒドリンとの縮合物などが挙げられる。エピクロルヒドリンと縮合するアルキレンジアミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、ジブチルアミンなどが挙げられる。
【0036】
本発明の汚泥脱水方法において、汚泥処理技術に一般に使用される消泡剤や消臭剤を本発明の汚泥用脱水助剤に予め含浸させておいても良い。また、他の天然繊維の粉砕物等を本発明の汚泥用脱水助剤に混合しても良い。
【符号の説明】
【0037】
1:汚泥脱水装置
11:汚泥貯留槽
12:機械脱水機
13a、13b:汚泥搬送ライン
14:汚泥用脱水助剤供給装置
15:裁断機
16:篩
図1