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特開2021-194902モールド成型体の製造方法、金型装置、及びモールド成型体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-194902(P2021-194902A)
(43)【公開日】2021年12月27日
(54)【発明の名称】モールド成型体の製造方法、金型装置、及びモールド成型体
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20211129BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20211129BHJP
   B29C 33/12 20060101ALI20211129BHJP
【FI】
   B29C45/14
   B29C45/26
   B29C33/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-105509(P2020-105509)
(22)【出願日】2020年6月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久津見 洋
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AD03
4F202AD08
4F202AR12
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CK52
4F202CQ01
4F202CQ03
4F202CQ07
4F206AD03
4F206AD08
4F206AR12
4F206JA07
4F206JB12
4F206JF05
4F206JF23
4F206JL02
4F206JM04
4F206JN25
4F206JQ81
(57)【要約】      (修正有)
【課題】スライド型が他の複数の型部材の型締め方向と異なる方向にスライド移動する構成を採用しながらも、当該スライド型にインサート材を当接させてモールド樹脂を成形することが可能なモールド成型体の製造方法及び金型装置、ならびに当該製造方法によって形成され得るモールド成型体を提供する。
【解決手段】複数の型部材からなるコア型4とコア型4に対して所定の方向に移動するスライド型5とによって形成されるキャビティに溶融樹脂7を注入し、スライド型5に対向する第1主面10aを有する金属プレート10が埋め込まれた樹脂部を成形するモールド成型体の製造方法において、キャビティ内に金属プレート10を支持部61によって支持した状態でキャビティ内に溶融樹脂7を注入し、溶融樹脂7の流体圧によって金属プレート10を支持部61から離間させると共に第1主面10aをスライド型5に当接させて樹脂部を成形する。
【選択図】図4C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の型部材を組み合わせてなるコア型と前記コア型に対して所定の方向に移動するスライド型とによって形成されるキャビティに溶融樹脂を注入し、前記スライド型に対向する対向面を有するインサート部材が埋め込まれたモールド樹脂を成形するモールド成型体の製造方法であって、
前記キャビティ内に前記インサート部材を支持部によって支持した状態で前記キャビティ内に前記溶融樹脂を注入し、当該溶融樹脂の流体圧によって前記インサート部材を前記支持部から離間させると共に前記対向面を前記スライド型に当接させて前記モールド樹脂を成形する、
モールド成型体の製造方法。
【請求項2】
複数の型部材を組み合わせてなるコア型と、
前記コア型に対して所定の方向に移動するスライド型と、
前記コア型及び前記スライド型によって形成されるキャビティ内にインサート部材を支持する支持部を有する支持部材とを備え、
前記スライド型は、前記支持部に支持された前記インサート部材の対向面に対向する受け面を有し、
前記キャビティ内に注入される溶融樹脂の流体圧によって前記インサート部材が前記支持部から離間して前記対向面が前記受け面に当接するように、前記複数の型部材の何れかに前記溶融樹脂の注入孔が設けられている、
金型装置。
【請求項3】
前記支持部は、前記インサート部材が載置される載置面と、前記載置面から突出して形成された係止部とを有しており、
前記キャビティに前記溶融樹脂を注入したとき、当該溶融樹脂の流体圧を受けた前記インサート部材が前記係止部に係止された状態で、前記対向面が前記受け面に当接する、
請求項2に記載の金型装置。
【請求項4】
前記載置面に載置された部分の前記インサート部材の厚みが、前記係止部と前記スライド型との間に形成される隙間の寸法よりも厚い、
請求項3に記載の金型装置。
【請求項5】
円筒状の本体と前記本体の外周面から径方向外方に突出した突片とが一体に成形されたモールド樹脂からなる樹脂部と、
前記突片にインサート成形されたインサート部材とを備え、
前記本体の軸方向一側における前記突片の表面に前記インサート部材の一部の面が露出し、かつ当該面の外縁に隙間なく前記樹脂部が形成されており、
前記突片を前記本体の軸方向他側から見た場合に前記インサート部材が前記樹脂部に覆われている、
モールド成型体。
【請求項6】
前記突片の前記表面と前記インサート部材の前記面とが、段差を生じることなく連続している、
請求項5に記載のモールド成型体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールド成型体の製造方法、金型装置、及びモールド成型体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属等のインサート材がモールド(樹脂に埋め込むこと)されたモールド成型体が、様々な製品に用いられている。例えば、特許文献1には、第1インサート材の一部と第2インサート材の一部とが表裏方向で重なりつつ当接し、かつ第1インサート材及び第2インサート材が表面に露出した状態で樹脂部に埋設され、第1インサート材及び第2インサート材のうち少なくとも何れか一方の裏面側の少なくとも一部が樹脂部で覆われた樹脂成形品が記載されている。第1インサート材は、中心部に貫通孔を有するリング状に形成されている。第2インサート材は、円形の平板状であり、第1インサート材の貫通孔内に配置され、その一部が樹脂成形品の表面に露出するように樹脂部に埋設されている。
【0003】
特許文献1に記載の樹脂成形品は、上下方向に相対移動可能に配置される第1金型及び第2金型と、第1金型に対して上下方向にスライド可能なスライド金型とを用いて樹脂部が成形される。スライド金型は、その下部に設けられた付勢手段により、上方に向かって付勢されている。第2インサート材は、スライド金型の上に載置されて位置決めされ、続いて第1インサート材がスライド金型の上に載置される。第1インサート材及び第2インサート材は、付勢手段によってスライド金型を介して第2金型に押し付けられ、正確に位置決めされつつ固定される。そして、第2金型が第1金型及びスライド金型と型締めされて形成されるキャビティ空間に溶融した樹脂が注入され、樹脂部が成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−221587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたもののように、スライド金型が第1金型(下型)及び第2金型(上型)の型締め方向と同方向にスライド移動可能に配置されている場合には、例えばインサート材をスライド金型と第2金型との間に挟むことにより、インサート材をキャビティ内で位置決め及び固定することができる。しかし、スライド金型が他の複数の型部材の型締め方向と異なる方向にスライド移動する場合には、スライド金型によって形成される樹脂成形品の表面にインサート材の一部が露出するように、当該インサート材を樹脂部に埋設することが困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、スライド金型が他の複数の型部材の型締め方向と異なる方向にスライド移動する構成を採用しながらも、当該スライド金型にインサート材を当接させてモールド樹脂を成形することが可能なモールド成型体の製造方法及び金型装置、ならびに当該製造方法によって形成され得るモールド成型体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するため、複数の型部材を組み合わせてなるコア型と前記コア型に対して所定の方向に移動するスライド型とによって形成されるキャビティに溶融樹脂を注入し、前記スライド型に対向する対向面を有するインサート部材が埋め込まれたモールド樹脂を成形するモールド成型体の製造方法であって、前記キャビティ内に前記インサート部材を支持部によって支持した状態で前記キャビティ内に前記溶融樹脂を注入し、当該溶融樹脂の流体圧によって前記インサート部材を前記支持部から離間させると共に前記対向面を前記スライド型に当接させて前記モールド樹脂を成形する、モールド成型体の製造方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、上記の目的を達成するため、複数の型部材を組み合わせてなるコア型と、前記コア型に対して所定の方向に移動するスライド型と、前記コア型及び前記スライド型によって形成されるキャビティ内にインサート部材を支持する支持部を有する支持部材とを備え、前記スライド型は、前記支持部に支持された前記インサート部材の対向面に対向する受け面を有し、前記キャビティ内に注入される溶融樹脂の流体圧によって前記インサート部材が前記支持部から離間して前記対向面が前記受け面に当接するように、前記複数の型部材の何れかに前記溶融樹脂の注入孔が設けられている、金型装置を提供する。
【0009】
また、本発明は、上記の目的を達成するため、円筒状の本体と前記本体の外周面から径方向外方に突出した突片とが一体に成形されたモールド樹脂からなる樹脂部と、前記突片にインサート成形されたインサート部材とを備え、前記本体の軸方向一側における前記突片の表面に前記インサート部材の一部の面が露出し、かつ当該面の外縁に隙間なく前記樹脂部が形成されており、前記突片を前記本体の軸方向他側から見た場合に前記インサート部材が前記樹脂部に覆われている、モールド成型体を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上記の目的を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】トルクセンサの分解斜視図である。
図1B】トルクセンサの部分断面図である。
図2A】トルクセンサの構成部品であるモールド成型体の斜視図である。
図2B】トルクセンサの構成部品であるモールド成型体の斜視図である。
図3A】トルクセンサのモールド成型体を軸方向一側から見た外観図である。
図3B】トルクセンサのモールド成型体を軸方向他側から見た外観図である。
図4A】モールド成型体の製造工程を示す説明図である。
図4B】モールド成型体の製造工程を示す説明図である。
図4C】モールド成型体の製造工程を示す説明図である。
図5】スライド型の斜視断面図である。
図6A】下型及び複数の支持部材の支持部を示す斜視図である。
図6B】金属プレートが支持部に支持された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0013】
また、本実施の形態では、本発明に係るモールド成型体の一例として、車両のステアリング装置において操舵トルクを検出するトルクセンサの構成部品を形成する場合について説明するが、本発明によって他のモールド成型体を形成することも可能である。
【0014】
図1Aは、トルクセンサの分解斜視図である。図1Bは、トルクセンサの部分断面図である。図2A及び図2Bは、トルクセンサの構成部品であるモールド成型体をそれぞれ異なる角度から見た斜視図である。図3A及び図3Bは、トルクセンサの軸方向における一側及び他側からモールド成型体を見た外観図である。
【0015】
トルクセンサ1は、車両の運転者によってステアリングホイールに付与される操舵トルクを転舵軸であるラックシャフト側に伝達するトルク伝達経路中に配置されるトーションバー11と、複数のN極121及びS極122を有するリング磁石12と、リング磁石12の外周側に配置される環状の第1及び第2のヨーク13,14と、第1及び第2のヨーク13,14のさらに外周に配置される第1及び第2の集磁リング15,16と、第1の集磁リング15と第2の集磁リング16との間に発生する磁界の強度を検出する一対の磁界センサ17とを有して構成される。トルクセンサ1が車両に搭載されたとき、トーションバー11は、その一端部111が他端部112よりも鉛直方向の上方に配置される。以下、「上」及び「下」とは、トルクセンサ1が車両に搭載されたときの鉛直方向の上・下をいうものとする。また、軸方向とは、トーションバー11の回転軸線Oに平行な方向をいうものとする。
【0016】
トーションバー11は、一端部111がステアリングホイール側の第1回転部材(不図示)に相対回転不能に固定され、他端部112がラックシャフト側の第2回転部材(不図示)に相対回転不能に固定される。また、トーションバー11は、リング磁石12の内側に挿通され、操舵トルクの大きさに応じた捩じれ量で第1回転部材と第2回転部材との間で捩じれる。リング磁石12は、第1回転部材に対して非回転に取り付けられる。
【0017】
第1のヨーク13は、リング磁石12を囲む円環板状の環状部131と、環状部131の内周側の端部から軸方向に突出する三角形状の複数の爪部132とを有している。第2のヨーク14も同様に、リング磁石12を囲む円環板状の環状部141と、環状部141の内周側の端部から軸方向に突出する三角形状の複数の爪部142とを有している。複数の爪部132,142の数は、リング磁石12の磁極(N極121及びS極122)の数と同じである。第1のヨーク13と第2のヨーク14とは、図1Bに示す環状の樹脂部材18にモールドされ、一体化されている。
【0018】
樹脂部材18は、第1及び第2のヨーク13,14を保持する環状の保持部181と、複数の外歯が放射状に形成された歯車部182とを一体に有している。歯車部182は、保持部181の上方に設けられている。図1Bでは、樹脂部材18の一部を破断し、第1及び第2のヨーク13,14の爪部132,142を示している。複数の爪部132,142は、周方向に所定の間隔を有して交互に配置されて保持部181の内周面に露出し、リング磁石12の外周面に対向している。
【0019】
樹脂部材18は、トーションバー11の他端部112と共に第2回転部材に対して相対回転不能に固定される。この構成により、トーションバー11の捩じれ量に応じてリング磁石12と第1及び第2のヨーク13,14とが相対回転し、複数の爪部132,142とリング磁石12の磁極との相対位置が変化する。
【0020】
第1の集磁リング15は、軸方向視において円弧状に形成され、第1のヨーク13の環状部131の外周に配置されている。第2の集磁リング16は、第2のヨーク14の環状部141の外周に配置され、軸方向視において円弧状に形成された囲繞部161と、囲繞部161における周方向の2箇所から径方向外方に突出した一対の舌片部162とを一体に有している。第1の集磁リング15には、第2の集磁リング16の一対の舌片部162にそれぞれ対向するように、一対の磁束誘導部材151が取り付けられている。一対の磁束誘導部材151を第1の集磁リング15に取り付ける方法は、特に限定されるものではないが、例えば溶接もしくは加締め、あるいはボルト又はリベットによって締結することにより、一対の磁束誘導部材151を第1の集磁リング15に取り付けることができる。
【0021】
第1の集磁リング15は、その内周面が第1のヨーク13の環状部131の外周面と僅かな隙間を介して対向して配置される。第2の集磁リング16は、囲繞部161の内周面が第2のヨーク14の環状部141の外周面と僅かな隙間を介して対向して配置される。本実施の形態では、トルクセンサ1を軸方向から見た場合に、第1の集磁リング15ならびに第2の集磁リング16の囲繞部161が円弧状であるが、これに限らず、第1の集磁リング15ならびに第2の集磁リング16の囲繞部161が円環状であってもよい。
【0022】
一対の磁界センサ17は、プリント基板19に実装されて支持され、一対の磁束誘導部材151と第2の集磁リング16の一対の舌片部162との間にそれぞれ配置される。図1Bでは、一対の磁界センサ17のうち、一方の磁界センサ17を図示している。トーションバー11が操舵トルクによって捩じれると、第1のヨーク13、第1の集磁リング15、一対の磁束誘導部材151、第2の集磁リング16、及び第2のヨーク14によって構成される磁路における磁束が変化し、この磁束の変化が一対の磁界センサ17によって検出される。一対の磁界センサ17の検出信号は、図略の制御装置に送られ、その検出値に基づいて操舵トルクが算出される。
【0023】
また、トルクセンサ1は、操舵トルクのトルク伝達経路におけるトーションバー11の下流側に配置される第2回転部材の回転角を検出する図略の回転角センサと組み合わせて用いられる。回転角センサは、樹脂部材18の歯車部182と噛み合わされる二つの従動歯車と、二つの従動歯車のそれぞれと一体に回転する二つの永久磁石と、これら二つの永久磁石のそれぞれの磁界を検出する二つの磁界センサとを有して構成される。二つの従動歯車の歯数は互いに異なっており、制御装置は、二つの磁界センサの検出値の組み合わせに基づいて、第2回転部材の回転角を算出する。
【0024】
図2A及び図3Aに示すように、第1の集磁リング15及び第2の集磁リング16は、インサート部材としての金属プレート10と共に、モールド樹脂からなる樹脂部20を有するモールド成型体2に保持されている。樹脂部20は、円筒状の本体21と、本体21の外周面から径方向外方に突出した突片22とが一体に成形されており、本体21が例えばラックシャフトを収容するハウジングに非回転に固定される。
【0025】
金属プレート10は、例えば磁性鋼板を打ち抜き加工して得られた平板状の金属部材であり、突片22に埋め込まれてインサート成形されている。金属プレート10は、第2の集磁リング16の一対の舌片部162の並び方向に沿って延びる長方形状の長板部101と、長板部101の両端部からそれぞれ長板部101の長手方向に対して垂直な方向に沿って本体21に向かって延びる幅広の延在部102とを一体に有している。回転角センサの二つの永久磁石は、延在部102の上方にあたる位置にそれぞれ配置される。金属プレート10は、回転角センサの永久磁石の磁界が一対の磁界センサ17の検出結果に与える影響を抑制する。
【0026】
本体21には、回転角センサの二つの従動歯車を樹脂部材18の歯車部182と噛み合わせ、かつ一対の磁束誘導部材151を第1の集磁リング15に取り付けるための二つの貫通穴210が、内外周面間を貫通して形成されている。二つの貫通穴210は、突片22の上方にあたる位置に、周方向に並んで形成されている。また、本体21には、後述するスライド型の一部を挿通させて、後述する下型とスライド型との間に第2の集磁リング16の囲繞部161を上下に挟むための挿通孔211が形成されている。挿通孔211は、二つの貫通穴210の間であって、かつ第1及び第2の集磁リング15,16の間を径方向に貫通する位置に形成されている。
【0027】
突片22における軸方向の一端面である上面22aには、金属プレート10の一部である平面からなる第1主面10aが露出している。上面22aは、上方を指向する突片22の表面であり、軸方向に対して垂直な平面として形成されている。突片22を第1主面10aに垂直な軸方向から見た場合に、樹脂部20は、第1主面10aの外縁に隙間なく形成されている。また、突片22の上面22aと金属プレート10の第1主面10aとは、段差を生じることなく連続している。すなわち、突片22の上面22aと金属プレート10の第1主面10aとが、連続した平面をなしている。
【0028】
図3Bに示すように、突片22を上面22aと反対側の下面22bから軸方向に見た場合、金属プレート10の第2主面10b(図1B参照)は、その全体が樹脂部20に覆われている。第2主面10bは、第1主面10aの裏面にあたる平面である。また、突片22の下面22bには、後述する金型装置の支持部材が抜けた痕跡である凹部220が形成されている。凹部220の底面と金属プレート10の第2主面10bとの間には、樹脂部20が薄く形成されている。
【0029】
次に、モールド成型体2の製造方法及びモールド成型体2を製造するための金型装置について説明する。図4A図4Cは、モールド成型体2の製造工程を示す説明図である。図5は、スライド型5の斜視断面図である。図6Aは、下型42及び複数の支持部材6の支持部61を示す斜視図であり、図6Bは、複数の支持部材6の支持部61に金属プレート10が支持された状態を示す斜視図である。
【0030】
金型装置3は、複数の型部材を組み合わせてなるコア型4と、コア型4に対して所定の方向に移動するスライド型5と、コア型4及びスライド型5によって形成されるキャビティ30(図4B参照)内に金属プレート10を支持する支持部61を有する複数の支持部材6とを備えている。本実施の形態では、コア型4が、第1金型411及び第2金型412を組み合わせてなる上型41と、上型41の鉛直方向下方に配置される下型42とを備えている。上型41と下型42とは、鉛直方向に相対移動可能であり、スライド型5は、コア型4に対して水平方向に相対移動可能である。
【0031】
樹脂部20は、熱により溶融した溶融樹脂をキャビティ30内に注入し、注入された溶融樹脂が固化することによって成形される。キャビティ30から樹脂部20を取り出す型開きの際には、スライド型5が型締め時とは反対方向に移動すると共に、上型41及び下型42が上下方向に開き、さらに第1金型411と第2金型412とが分離される。
【0032】
図4Aは、コア型4に対してスライド型5が図中に示す矢印A方向に移動している状態を示す断面図である。この際、第1の集磁リング15は、第1金型411に保持され、第2の集磁リング16は、下型42に保持されている。複数の支持部材6は、下型42に形成された嵌合穴420に嵌合されて下型42に固定され、金属プレート10を支持する支持部61が下型42から上方に突出している。本実施の形態では、図6Aに示すように七つの支持部材6が下型42に固定されており、それぞれの支持部材6の上端部が支持部61となっている。なお、支持部材6の数はこれに限定されるものではなく、七つの支持部材6のうち一部を省略してもよいし、追加の支持部材を設けてもよい。また、支持部材6を下型42と一体に設けてもよい。
【0033】
それぞれの支持部61は、金属プレート10が載置される載置面611と、載置面611から突出して形成された係止部612とを有している。載置面611は、鉛直方向上方を指向する水平な平坦面であり、この載置面611に第2主面10bが向かい合うようにして金属プレート10が載置される。金属プレート10の第1主面10aは、型締めされた状態において、スライド型5に隙間を介して対向する対向面である。
【0034】
図4Bは、コア型4及びスライド型5が型締めされた状態を示す断面図である。図4Bでは、キャビティ30を薄いグレーで示している。下型42には、図6Aに示すように、キャビティ30内に溶融樹脂を導く第1乃至第3の注入孔421〜423が形成されている。第1の注入孔421は、金属プレート10の長板部101の長手方向中央部における第2主面10bと部分的に向かい合う位置に開口し、第2及び第3の注入孔422,423は、長板部101における延在部102の近傍位置にあたる部位の第2主面10bと向かい合う位置に開口している。
【0035】
第1乃至第3の注入孔421〜423からキャビティ30に溶融樹脂が注入されると、金属プレート10は、溶融樹脂の流体圧によって支持部61から上方に浮き上がるように離間し、第1主面10aがスライド型5に当接する。図4Cでは、注入された溶融樹脂7を濃いグレーで示すと共に、第1の注入孔421から注入される溶融樹脂7の流動方向を三つの矢印で図示している。
【0036】
スライド型5は、図5に示すように、突片22に対応する形状の凹部51と、樹脂部20の本体21における貫通穴210を形成するための凸部52と、樹脂部20の本体21における挿通孔211を形成するための突起部53とを有している。スライド型5は、二つの貫通穴210のそれぞれに対応する二つの凸部52を有しており、図5では、このうち一方の凸部52を示している。突起部53は、下型42との間に第2の集磁リング16を挟んで保持する。スライド型5は、型締め時に凸部52が第1金型411に当接するまでスライド移動し、溶融樹脂が固化した後の型開きによって二つの貫通穴210及び挿通孔211が形成される。
【0037】
スライド型5は、凹部51に、支持部61に支持された金属プレート10の第1主面10aと対向する受け面51aを有している。金属プレート10は、溶融樹脂の流体圧によって支持部61から離間したとき、図4Cに示すように、第1主面10aが受け面51aに当接する。換言すれば、キャビティ30内に注入される溶融樹脂の流体圧によって金属プレート10が支持部61から離間して第1主面10aが受け面51aに当接するように、下型42に第1乃至第3の注入孔421〜423が形成されている。
【0038】
係止部612は、金属プレート10の第2主面10bが載置面611から離間し、第1主面10aがスライド型5の受け面51aに当接しても、金属プレート10の係止状態が維持される高さに形成されている。具体的には、図4Bに示すように、載置面611からの係止部612の高さHは例えば0.5mm、載置面611に載置された部分の金属プレート10の厚みtは例えば0.5mm、係止部612とスライド型5の受け面51aとの間に形成される隙間の寸法Dは例えば0.2mmであり、厚みtが寸法Dよりも厚いことにより、金属プレート10の係止状態が維持される。このように、本実施の形態では、溶融樹脂7の流体圧によって金属プレート10を支持部61から離間させると共に、金属プレート10の第1主面10aをスライド型5に当接させて樹脂部20を成形する。
【0039】
(実施の形態の効果)
以上説明した実施の形態によれば、スライド型5が上型41及び下型42の型締め方向と異なる方向にスライド移動する構成を採用しながらも、当該スライド型5に金属プレート10を当接させて樹脂部20を成形することが可能となる。そして、突片22の上面22aに金属プレート10の一平面である第1主面10aが露出した状態で、金属プレート10が樹脂部20に埋め込まれたモールド成型体2が得られる。
【0040】
(付記)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、この実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0041】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、一部の構成を省略し、あるいは構成を追加もしくは置換して、適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
10…金属プレート(インサート部材) 2…モールド成型体
20…樹脂部 21…本体
22…突片 220…凹部
22a…上面 22b…下面
3…金型装置 30…キャビティ
4…コア型 41…上型
411…第1金型 412…第2金型
42…下型 421〜第1乃至第3の注入孔
5…スライド型 51a…受け面
6…支持部材 61…支持部
611…載置面 612…係止部
7…溶融樹脂
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B