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特開2021-194939障害物検知システム、障害物検知方法および自己位置推定システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-194939(P2021-194939A)
(43)【公開日】2021年12月27日
(54)【発明の名称】障害物検知システム、障害物検知方法および自己位置推定システム
(51)【国際特許分類】
   B61L 23/00 20060101AFI20211129BHJP
   G01S 17/89 20200101ALI20211129BHJP
【FI】
   B61L23/00 A
   G01S17/89
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-100795(P2020-100795)
(22)【出願日】2020年6月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】今本 健二
(72)【発明者】
【氏名】小池 潤
【テーマコード(参考)】
5H161
5J084
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161MM05
5H161MM12
5H161NN10
5H161NN12
5J084AA04
5J084AA05
5J084AB20
5J084AC02
5J084AC10
5J084BA03
5J084BA49
5J084DA01
5J084EA04
(57)【要約】
【課題】軌道上およびその周辺の前方障害物を高精度に検出することができる軌道走行車両の障害物検知システムおよび障害物検知方法を提供する。
【解決手段】障害物検知システムは、障害物を検知する障害物監視エリアを設定する監視エリア設定処理部と、列車の前方を水平方向に走査するセンサーを用いて、障害物監視エリア内の障害物を監視する前方障害物監視部と、前方障害物監視部での監視結果に基づき、障害物監視エリア内の障害物を検知する障害物検知部と、を備え、前方障害物監視部は、第1の位置における前記センサーの検出領域の隙間を、列車が第1の位置から第2の位置まで移動する間におけるセンサーの検出領域で補完する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
障害物を検知する障害物監視エリアを設定する監視エリア設定処理部と、
列車の前方を水平方向に走査するセンサーを用いて、前記障害物監視エリア内の障害物を監視する前方障害物監視部と、
前記前方障害物監視部での監視結果に基づき、前記障害物監視エリア内の障害物を検知する障害物検知部と、
を備える障害物検知システムであって、
前記前方障害物監視部は、第1の位置における前記センサーの検出領域の隙間を、前記列車が前記第1の位置から第2の位置まで移動する間における前記センサーの検出領域で補完する、
障害物検知システム。
【請求項2】
請求項1に記載の障害物検知システムであって、
前記第1の位置と前記第2の位置との距離が前記列車の速度と障害物の検知に許容される時間との積よりも小さい障害物検知システム。
【請求項3】
請求項2に記載の障害物検知システムであって、
前記列車の前方を水平方向に走査するセンサーのほかに、前記列車の正面方向のみを常に検出領域とするセンサーを用いる障害物検知システム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の障害物検知システムであって、
前記障害物監視エリア内の検出結果がデータベースに登録された検知対象データと一致しない場合、障害物を検知する障害物検知システム。
【請求項5】
請求項4に記載の障害物検知システムであって、
検出率が閾値以上の既知の検出点が検出されない場合、障害物を検知する障害物検知システム。
【請求項6】
請求項4に記載の障害物検知システムであって、
検出率が閾値以上の既知の検出点の反射率が異なる場合、障害物を検知する障害物検知システム。
【請求項7】
列車の前方を水平方向に走査するセンサーを用いる障害物検知方法であって、
障害物監視エリアを算出するステップと、
前記センサーの検出領域の方向毎に、前記列車の速度に基づき、前記検出領域の隙間を補完するサンプリング回数を算出するステップと、
前記検出領域の方向毎に、障害物の検出位置を取得するステップと、
前記検出位置を、算出した前記サンプリング回数分蓄積するステップと、
前記検出領域の全方向で取得・蓄積した前記検出位置をグルーピングするステップと、
前記障害物が前記障害物監視エリア内に存在する場合、障害物検知情報を作成するステップと、
を有する障害物検知方法。
【請求項8】
列車の前方を水平方向に走査するセンサーを用いる自己位置推定システムであって、
第1の位置における前記センサーの検出領域の隙間を、前記列車が前記第1の位置から第2の位置まで移動する間における前記センサーの検出領域で補完し、
検出結果とデータベースに登録された検知対象データとの相関を、軌道上に限定した列車の位置でとり、相関が高い列車の位置を自己位置とする自己位置推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道上を走行しながら障害物を検知する障害物検知システム、障害物検知方法および軌道上を走行しながら自己位置を推定する自己位置推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
軌道上を走行する軌道輸送システムでは軌道上やその近傍の障害物や、その軌道を横切る恐れがある障害物があった場合、操舵による回避が出来ないため、障害物を検知することは列車の安全性や運用性を向上させるために重要である。従来は運転士が目視によって軌道上および経路上に障害物が無いことを確認して列車を運転していたが、近傍を含めた走行路面上の障害物全てを常に監視することは難しく、障害物の発見が遅れ、軌道輸送システムと障害物が衝突してしまう恐れがあった。
【0003】
鉄道における障害物検知技術では、営業用車両の走行開始前に走行する検査用車両において、レールの異常の有無を自動走行にて確認する際に、建築限界(列車運行の安全を確保するために、障害となりうる建築物等を設置してはならない、定められた範囲)内に障害物があった場合には車両を自動停止させる障害物検知システムが知られている。例えば、特許文献1に記載された障害物検知システムでは、車両を自走させつつ、車両に設けた近距離を撮影する近距離撮影部と、遠距離を撮影する遠距離撮影部、更に近距離内を照射するLIDARとから、障害物を検知する技術が開示されている。
【0004】
特許文献1には、車両前方の複数の距離に判断ラインを設定し、物体が判断ラインを交差した場合にその物体を支障物と判断する技術が開示されている。
【0005】
また、車両の前方障害物検知システムは自動車の自動運転向けに研究が進められている。それらの研究では、一般的にカメラ、ミリ波レーダー、LIDARなどが用いられており、これらのセンサーの検知距離は様々なメディアで開示されている。例えば、検知距離が長いセンサーであるミリ波レーダーやカメラでは、検知距離200m程度の長距離検知が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−88183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
鉄道における車両の制動距離は自動車などと比較しても長いため、より長い検知距離が求められるが、このとき、LIDARのレーザビーム間に大きな隙間が生じる場合がある。例えば、図1のように、角度分解能0.125deg、レーザビームのスポット径0.08degのLIDARを車両前方に設置し障害物検知を行う場合、図2に示したように200m先ではおよそ60cmの隙間が存在することとなる。このため、その隙間に歩行者などの検出対象物が入ると、障害物として未検出となる可能性がある(図3)。このようにLIDARの隣り合うレーザビーム間に隙間があるため、例えば、障害物として2人の歩行者が並んで列車前方の遠方地点を横切るケースでは、図4(A)のように、検出(図の○印)と未検出(図の×印)とを交互に繰り返すことになる。その結果、LIDARによる検出点群をグループ化したときに同一の障害物(歩行者)として検出され、さらに、その位置には大きな誤差が含まれる可能性がある。
【0008】
一方、歩行者が1人の場合でも、歩行者の挙動によっては、障害物のトラッキングが不安定になる恐れがある(図4(B))。
【0009】
特許文献1の技術では、このようなLIDARのレーザビーム間に隙間がある場合についてまでは検討されておらず、軌道上の障害物を完全に検出することが難しい。
【0010】
本発明はこの点を考慮してなされたもので、軌道上およびその周辺の前方障害物を高精度に検出することができる軌道走行車両の障害物検知システムおよび障害物検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の代表的な障害物検知システムの一つは、障害物を検知する障害物監視エリアを設定する監視エリア設定処理部と、列車の前方を水平方向に走査するセンサーを用いて、障害物監視エリア内の障害物を監視する前方障害物監視部と、前方障害物監視部での監視結果に基づき、障害物監視エリア内の障害物を検知する障害物検知部と、を備える障害物検知システムであって、前方障害物監視部は、第1の位置における前記センサーの検出領域の隙間を、列車が第1の位置から第2の位置まで移動する間におけるセンサーの検出領域で補完する、障害物検知システムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、軌道上およびその周辺の前方障害物を高精度に検出することができる軌道走行車両の障害物検知システムおよび障害物検知方法を提供できる。
【0013】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例の障害物検知システムおよび軌道輸送システムの障害物センサー設置の一例
図2】障害物センサーの検出領域の隙間の一例
図3】障害物センサーの検出領域に隙間があるときの障害物未検知の一例
図4】障害物センサーの検出領域に隙間があるときの障害物未検知による影響の説明図
図5】実施例の軌道輸送システムのシステム構成の一例
図6】実施例の障害物検知システムおよび軌道輸送システムにおける輸送用車両運転制御部の処理フローの一例
図7】実施例の障害物検知システムの処理フローの一例
図8】障害物センサーの検出領域の隙間を補完する処理の一例
図9】障害物センサーの検出方向の違いによる領域の隙間を補完するために必要な移動距離の変化の説明図
図10】障害物センサーの検出領域の隙間を移動時の複数位置からの観測結果で補完する上で必要な条件の説明図
図11】障害物センサーの検出領域の隙間のうち、進行方向に近い方向の隙間を移動時の複数位置からの観測結果で補完する上で必要な条件の説明図
図12】レーザビーム間の隙間の補完に必要な移動距離Lと、列車速度V、検知許容時間tとの間の関係の一例
図13】レーザビーム間の隙間の補完に必要な移動距離Lを短くする障害物検知システムのシステム構成の例
図14】レーザビーム間の隙間の補完に必要な移動距離Lを短くする障害物検知システムのシステム構成におけるLと列車速度V、検知許容時間tとの間の関係
図15】実施例の障害物検知システムにおける障害物情報のグルーピングの説明図
図16】実施例の障害物検知システムにおけるグルーピング結果の車両座標系への変換の説明図
図17】実施例の自己位置推定システムの処理フローの一例
図18】実施例の輸送用車両が走行する周囲環境の一例
図19】実施例の自己位置推定システムによる周囲環境観測データの一例
図20】実施例の自己位置推定システムにおける周囲環境観測データと周囲環境地図データとのマッチングの一例(マッチング前)
図21】実施例の自己位置推定システムにおける周囲環境観測データと周囲環境地図データとのマッチングの一例(マッチング後)
図22】自動車の自己位置推定システムにおける周囲環境観測データと周囲環境地図データとのマッチングの一例(マッチング前)
図23】自動車の自己位置推定システムにおける周囲環境観測データと周囲環境地図データとのマッチングの一例(マッチング後)
図24】式1の導出方法の説明図
図25】式1の導出方法の説明図
図26】式1の導出方法の説明図
図27】式1の導出方法の説明図
図28】式1の導出方法の説明図
図29】式1の導出方法の説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、軌道上およびその周辺の前方障害物を高精度に検出することができる障害物検知システム、障害物検知方法および自己位置を高精度に推定することができる自己位置推定システムの実施の形態について説明する。
【0016】
なお従来の障害物検知システムでは、システムを構成するカメラやミリ波レーダー、LIDARの検知可能距離が、検知対象物の色や形状、ミリ波やレーザーの反射率に依存するため、安定して障害物を検知することが難しかった。
以下説明する実施の形態における障害物検知システム、障害物検知方法では、検知対象物の色や形状、反射率に依存せずに障害物を検知することも可能である。
【0017】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例】
【0018】
本実施例では、図5に示すように輸送用車両102と自己位置推定システム101、周囲環境観測部107、障害物検知システム103とから構成され、障害物検知システムの障害物検知の信頼性を大きく向上させる軌道輸送システム100に関して説明する。
【0019】
まず、図5を用いて、軌道輸送システム100の構成と各構成要素の役割を説明する。
【0020】
輸送用車両102は軌道に沿って走行する旅客や貨物を輸送する車両である。
【0021】
周囲環境観測部107は、輸送用車両102の前方に設置され、輸送用車両102の周囲にある物体の位置や形状、色や反射率などを取得する装置であり、カメラやレーザレーダ、あるいはミリ波レーダーから構成される。
【0022】
障害物検知システム103は、自己位置推定システム101から取得した輸送用車両102の位置・速度情報153に基づき、障害物の検知を行うシステムである。
【0023】
障害物検知システム103が、輸送用車両102の走行を支障する障害物を検知した場合、障害物検知システム103から輸送用車両102に障害物の存在に関する情報が送られ、輸送用車両102は緊急停止する。輸送用車両102は、輸送用車両運転制御部105と輸送用車両制駆動部106とから構成される。
【0024】
障害物検知システム103は、検知範囲設定データベース108と監視エリア設定処理部109と前方障害物監視部112と障害物検知部113から構成される。
【0025】
輸送用車両運転制御部105は、輸送用車両102の制駆動指令を生成する手段であり、ATO装置(自動列車運転装置)が例として挙げられる。生成した輸送用車両制駆動指令142は輸送用車両制駆動部106に伝えられる。
【0026】
輸送用車両運転制御部105は、位置と速度で定義される目標走行パターンに沿って、輸送用車両102が走行するように、制駆動指令を生成する。図5には図示しないが、目標走行パターンに沿って走行するために、輸送用車両102の位置と速度を検知する機能を内部に有する。
【0027】
目標走行パターンの生成にあたっては、予め分かっている輸送用車両102の加減速度と走行区間の制限速度に基づくパターンを基本とする。そのうえで、輸送用車両102の位置と、輸送用車両102の最大減速度とから、輸送用車両102の許容最高速度を算出し、輸送用車両102の目標走行パターンに反映させる。
【0028】
輸送用車両制駆動部106は、輸送用車両運転制御部105から取得する輸送用車両制駆動指令142に基づき、輸送用車両102を制駆動させる。輸送用車両制駆動部106の具体的装置の例としては、インバータ、モータ、摩擦ブレーキが挙げられる。
【0029】
また、輸送用車両制駆動部106には障害物検知部113から障害物検知情報161が入力されている。輸送用車両102が駅停車中で、障害物検知情報161の内容が「障害物:あり」となった場合には、輸送用車両制駆動指令142にかかわらず、制動状態とし、発進できないようにする。輸送用車両102が駅間走行中で、障害物検知情報161の内容が「障害物:あり」となった場合には、輸送用車両制駆動指令142にかかわらず、最大減速度で制動し、輸送用車両102を停止させる。
【0030】
監視エリア設定処理部109は、自己位置推定システム101で推定した輸送用車両の現在位置・速度153に対応する検知範囲154を検知範囲設定データベース108から取得し、障害物を検知する障害物監視エリアを設定する。そして、検知対象データ157のうち、検出対象の位置が障害物監視エリア内にあるものを、障害物監視エリア内の検知対象データ155として前方障害物監視部112に渡す。
【0031】
検知範囲設定データベース108としては、例えば、建築限界の登録を基本とし、ホーム付近や保守作業を行うエリアなどを検知しないエリアとして登録することが考えられる。
【0032】
前方障害物監視部112は、カメラやレーザレーダなどを用いて、障害物監視エリアの障害物を検知する機能を持つ。ここで、前方障害物監視部112は、周囲環境観測部107とセンサーを共用してもよい。
【0033】
障害物検知部113は、前方障害物監視部112での監視結果159に基づき、障害物監視エリア内の障害物を検知する。
【0034】
輸送用車両102の運行を支障する障害物を検知した場合、障害物検知部113は、輸送用車両制駆動部106に「障害物:あり」の情報を伝達する。
以上が、軌道輸送システム100の構成と各構成要素の説明である。
【0035】
次に、輸送用車両運転制御部105の処理の流れを図6を用いて説明する。輸送用車両運転制御部105では、図6の示す処理が一定周期で実行されている。
【0036】
ステップ300では、輸送用車両在線位置を取得する。
【0037】
ステップ301では、輸送用車両102が駅に停車中か否かを判定する。当該判定は、輸送用車両運転制御部105が保持する輸送用車両102の位置と速度からなされる。具体的には、位置が駅近傍であり、速度がゼロであれば駅に停車中と判定する。
【0038】
ステップ301で停車中と判定された場合は、ステップ302において、輸送用車両102が現在停車中の駅を発車する予定の時刻を運行管理システム(図5に図示せず)から取得する。
【0039】
ステップ303では、現在時刻がステップ302で取得した発車予定時刻を過ぎているか否か判定する。過ぎていない場合、本処理フローを抜ける。過ぎていた場合ステップ304に進む。
【0040】
ステップ304では、輸送用車両102が発車準備を完了しているか否か判定する。発車準備の例として、車両ドア閉状態の確認が挙げられる。未完了の場合は、本処理フローを抜ける。発車準備が完了している場合は、ステップ305に進む。
【0041】
ステップ305では、輸送用車両制駆動指令142を算出し、輸送用車両制駆動部106に送信する。具体的にはここでは駅を発車するために力行指令を送信する。
【0042】
次に、ステップ301で輸送用車両102が駅停車中でない場合の処理(ステップ311)を説明する。
【0043】
ステップ311では、輸送用車両制駆動指令142を算出し、輸送用車両制駆動部106に送信する。具体的にはここでは、まず輸送用車両102の位置と、予め定められた目標走行パターンに基づいて目標速度を算出する。輸送用車両102の速度が目標速度となるように比例制御などで制駆動指令を算出する。
以上が、輸送用車両運転制御部105の制御フローの例の説明である。
【0044】
次に障害物検知システム103の動作を説明する。図7は、障害物検知システム103により実行される処理手順を示すフローチャートである。
【0045】
ステップ201〜210で輸送用車両に対する停止指示を作成する。本処理は障害物検知システム103の計測周期ごとに実行される。
【0046】
ステップ201では、自己位置推定システム101から障害物検知範囲算出に必要な輸送用車両102の現在位置・速度を取得する。
【0047】
ステップ202では、ステップ201で取得した輸送用車両の現在位置に対応する検知範囲から、障害物監視エリアを設定する。
【0048】
例えば、建築限界を障害物監視エリアの側方境界として設定し、輸送用車両の停止可能距離を障害物監視エリアの進行方向境界と設定することが考えられる。
【0049】
ステップ203では、速度Vの車両に設置されたLIDARから照射されるレーザビーム(スポット径Δθ)の方向θ毎にサンプリング回数mを算出する(図8)。距離Lにおけるレーザビーム間の隙間Δθを補完するサンプリング回数mは式1で求められる(サンプリング周期Δt)。
m=Ls(1-tan(θ-ΔθL/2-Δθg)/tan(θ-ΔθL/2))/(V・Δt) …式1
【0050】
以下、式1の導出方法について説明する。
図8(a)に示すように、列車前方に設置されたLIDARから、θ方向に照射された幅Δθのレーザビームに着目する。図8(b)のように、θ方向のビームの右端が隣のビームの左端と接するまで、列車が前進しつつLIDARで繰り返し計測することで、その隙間Δθの間の障害物を検知できるようになる。
このとき、列車の速度をV、計測回数をm、計測周期をΔtとすると、列車の移動距離Lは、L=V・m・Δtにて計算することができる。
【0051】
図24のように、移動前のセンサー位置をA’、移動後のセンサー位置をB’、距離Lにおけるθ方向のビームの右端をA、隣のビームの左端をBとする。2点間の距離AB、AC、A’B’、A’Cをそれぞれa、c、a’、c’とすると、三角形ACA’とBCB’が相似な三角形であることから、式2が成り立つ(図25)。
c:(c-a)=c':(c'-a') …式2
【0052】
ここで、図26図27より、c=Ls・tan(θ-ΔθL/2)、c'=Lsであり、図28から明らかなように、式3が成り立つ。
(c-a)=Ls・tan(θ-ΔθL/2-Δθg) …式3
また、図29から、式4が得られる。
(c'-a')=Ls-V・m・Δt …式4
【0053】
これらを式2に代入し、mについて解くと下記のようになる。
Ls・tan(θ-ΔθL/2):Ls・tan(θ-ΔθL/2-Δθg)=Ls:(Ls-V・m・Δt)
Ls・tan(θ-ΔθL/2)・(Ls-V・m・Δt)=Ls・tan(θ-ΔθL/2-Δθg)・Ls
V・m・Δt=Ls(1-tan(θ-ΔθL/2-Δθg)/tan(θ-ΔθL/2))
m=Ls(1-tan(θ-ΔθL/2-Δθg)/tan(θ-ΔθL/2))/(V・Δt)
以上により、式1が導かれた。
【0054】
ここで、車両速度に基づくサンプリング回数の算出では、LIDARデータの統合により、レーザビーム間の隙間が障害物の幅よりも小さいことと、レーザビーム間の隙間を計測する間に車両が進む移動距離Lが、要求される障害物検知の許容時間t内に進む移動距離V×tよりも短いこととが重要となる。
【0055】
図9(a)のように、LIDARによる検出方向がθからθへと進行方向から離れるにつれて、必要な移動距離は図9(b)および(c)のように、LからLへと徐々に短くなる。このことは、一定速度で走行中の列車からLIDARによる計測を行う場合、進行方向から離れるにつれて、同一隙間内の計測回数が少なくなることを意味する。
つまり、図10(1)にあるように、レーザビーム間の距離dが、対象となる障害物の幅dよりも小さくなるだけの計測回数が確保できるように、LIDARのサンプリング周期を短くする必要がある。
【0056】
一方で、LIDARのレーザビーム照射方向が枕木方向に離れた向きであった場合に比べ、その照射方向が進行方向に近くなるにつれて、レーザビーム間の隙間内にある障害物の検知には、図10(2)のように、より長い列車の移動距離L(レーザビーム間の隙間の補完が完了する距離)が必要となる。要求された許容時間t内に障害物検知結果を出力できるようにするには、列車の速度をVとすると、L<V×tでなければならない。Vやtの大きさにより、図11のように、V×t<Lである場合には、未検知範囲(幅d[m])が生じ、幅dより小さな障害物は検知できないことになる。許容時間tは、例えば、LIDARの検知距離から、列車の速度Vにおける停止距離を差し引いた残りを、列車が速度Vで走行するのに要する時間が考えられる。
【0057】
レーザビーム間の隙間の補完に必要な移動距離Lと、列車速度V、検知許容時間tとの間の関係の一例を図12に示す。点P(V,t)が曲線V=L/tの右上領域(図の斜線部)にある必要がある。
【0058】
ここで、Lは、角度刻み幅が小さく、レーザスポット光が大きいLIDARを用いることにより、小さくすることができる(図13(a)のL)。ただし、その分サンプリング周期が長くなったり、レーザスポット光が大きいために、小さな障害物を計測できなくなったりする課題がある。一方、Lは、正面方向のみを常に観測するセンサーを追加することによっても小さくすることができる(図13(b)のL)。一例として、もう1台のLIDARを、レーザスキャン面が路面と垂直になるように(レーザスポット光の長径が路面と平行になるように)列車前面に設置することで、上記の未検知範囲内への障害物発生を監視することができる。図13において、移動距離がLからLとなることで、図14のように点P(V,t)が曲線V=L/tの右上領域にくる。
【0059】
列車速度Vが大きくなるにつれて、列車では特に空走距離が長くなり、障害物検知に使用できる許容時間tは急激に短くなる。その結果、V×tは、列車速度Vが大きくなるほど小さくなる傾向があり、その分最高速度を考慮してLが小さくなるようにLIDAR障害物検知システムを構成しなければならない。
【0060】
ステップ204では、LIDARから照射されるレーザビームの方向毎に、202で算出した障害物監視エリア内の障害物検出位置(車両座標系)を取得する。
【0061】
監視エリア内の検出結果が、検知対象情報データベースに登録された検知対象データと比べて、以下の(条件1)〜(条件3)のいずれかを満たすとき、障害物が発生したと判断する。
【0062】
(条件1)データベースに登録された既知の検出点が検出されない。(条件2)既知の検出点の反射率が異なる。(条件3)既知の検出点と異なる位置に検出点が検出される。
【0063】
自動車分野などの一般的な障害物検知においては(条件3)が用いられる。一方、鉄道分野では既知の軌道上を走行するため、(条件1)、(条件2)による障害物検知が可能となり、例えば、既知物体の近傍や、複数の物体間の隙間にある障害物を検出することも可能となる。
【0064】
ここで、輸送用車両の速度が大きくなるにつれて輸送用車両の停止距離が延び、障害物監視エリアが拡大する。遠距離にある既知の検出点の反射率が小さい場合には、(条件1)によって障害物が発生したと誤って判断する恐れがある。このため、例えば、許容される走行可能速度を抑えなくてはならなくなる。
【0065】
そこで、許容される走行可能速度を抑えるようなことを避けるため、次の(対処1)、(対処2)の対処を考える。
【0066】
(対処1)検出領域にある、ある値以上の検出率をもつ既存物(レールや標識等)の位置のみを検出対象とする。(対処2)検出領域に、ある値以上の検出率をもつ物体を検出対象として設置する。例えば、ある値以上の反射率をもつ物体が、ある値以上の検出率をもつと考えられる。
【0067】
いずれの場合も、事前に検出対象の位置とその反射率を検知対象データ157として検知対象情報データベース110に記録し、現在の輸送用車両の位置における障害物監視エリアに検出対象の位置が含まれる場合のみ、その検出対象を障害物発生の判断に用いる。
【0068】
ステップ205では、図15(a)のように、検出位置(車両座標系)を外部座標系に変換したうえで、ステップ203で算出したサンプリング回数分の検出位置(外部座標系)を蓄積する。
【0069】
ステップ206では、図15(b)のように、レーザビーム全方向で取得・蓄積した検出位置(外部座標系)をグルーピングする。
【0070】
ステップ207では、図16のように、ステップ206でグルーピングした障害物の位置(外部座標系)を車両座標系に変換する。
【0071】
ステップ208では、ステップ207で取得した障害物情報をもとに、障害物監視エリア内に障害物が存在するか否かを判断する。ステップ208において障害物が存在すると判定された場合は、輸送用車両を停止させる必要があるため、ステップ209で障害物検知情報を作成する。一方、障害物が存在しないと判定された場合はステップ210に進む。
【0072】
ステップ210では、障害物監視エリアにおける障害物検知情報を輸送用車両102に送信する。
以上が、障害物検知システム103により実行される障害物検知動作のフロー例の説明である。
【0073】
次に自己位置推定システム101の動作を説明する。図17は、自己位置推定システム101により実行される処理手順を示すフローチャートである。
【0074】
ステップ401〜404で輸送用車両の自己位置を推定する。本処理は障害物検知システム103の計測周期ごとに実行される。
【0075】
ステップ401では、周囲環境観測部107で観測した周囲環境観測データ151を取得する。障害物検知システム103と同様に、センサーの検出領域の隙間を列車の移動による複数位置からの検出領域で補完してもよい。
【0076】
ステップ402では、ステップ401で取得した周囲環境観測データを既知の物体の観測データとその他の未知観測データとに選別する。
【0077】
ステップ403では、既知の物体の観測データを車両座標系から外部座標系に変換する。周囲環境観測データ151を、輸送用車両102に固定された車両座標系Σから、検知対象情報データベース110、軌道情報データベース111内に記録された検知対象物や軌道の位置が定義された外部座標系Σに変換する。
【0078】
ステップ404では、ステップ403で算出した外部座標系Σにおける周囲環境観測データと、検知対象情報データベース110に検知対象データとして記録された周囲環境地図152とをマッチングし、軌道情報データベースに記録された軌道上で車両自己位置を推定する。
【0079】
ステップ404において、例えば図18の周囲環境をマルチレイヤ型LIDARで観測すると、図19のような外部座標系Σで定義された点群データを取得できる。
【0080】
自動車のように、特定の軌道に沿って走行しない場合には、図22図23のように、任意の方向に移動させながら周囲環境観測データ168と周囲環境地図との相関をとり、その相関値が最も高い位置(図23)を自己位置として求める必要がある。一方、ここでは軌道上を走行する輸送用車両であることから、図20の軌道LI上を移動させながら周囲環境観測データ168と周囲環境地図152との相関をとり、その相関値が最も高い位置(図21)を自己位置として求めればよい。またこのとき、推定した自己位置が常に軌道上にあり、GNSSを用いた場合のマルチパスの影響のように、推定した自己位置が軌道から外れ、検知範囲外の物体を誤検知することを防ぐことができる。
以上が、自己位置推定システム101により実行される自己位置推定処理のフロー例の説明である。
【0081】
以上が、障害物検知システム103および軌道輸送システム100の説明である。
【0082】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0083】
100・・・軌道輸送システム
101・・・自己位置推定システム
102・・・輸送用車両
103・・・障害物検知システム
105・・・輸送用車両運転制御部
106・・・輸送用車両制駆動部
107・・・周囲環境観測部
108・・・検知範囲設定データベース
109・・・監視エリア設定処理部
110・・・検知対象情報データベース
111・・・軌道情報データベース
112・・・前方障害物監視部
113・・・障害物検知部
142・・・輸送用車両制駆動指令
151・・・周囲環境観測データ
152・・・周囲環境地図
153・・・輸送用車両位置・速度情報
154・・・障害物検知範囲
155・・・障害物監視エリア内の検知対象データ
156・・・軌道情報
157・・・検知対象データ
159・・・前方障害物監視結果
161・・・障害物検知情報
168・・・周囲環境観測データ
203・・・障害物センサー
図1
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