【解決手段】作業車両1は、車体2と、前記車体に搭載された運転席3と、前記運転席よりも上方に延びるように起立した運転者保護用の保護フレーム9と、水を貯留するタンク40と、水を霧状に噴射する噴射ノズル50と、前記タンク内の水を前記噴射ノズルに供給する供給装置60と、を備え、前記保護フレームの内部空間が前記タンクの貯水空間を構成している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、作業車両1の一実施形態を示す側面図である。本実施形態の場合、作業車両1はトラクタである。但し、本発明に係る作業車両1はトラクタには限定されず、他の作業車両であってもよい。他の作業車両としては、例えば、バックホーやホイルローダ等の建設機械、田植え機やコンバイン等の農業機械、乗用の芝刈り機や管理機等を例示することができるが、これらに限定はされない。本発明は、運転席の周囲がキャビンで囲まれていない形態の作業車両、言い換えれば、運転席が外気に開放されている(外気と遮断されていない)形態の作業車両に対して幅広く適用することができる。
【0016】
以下、作業車両1がトラクタである場合を例に挙げて説明する。
図1に示すように、作業車両(トラクタ)1は、車体2と、車体2に搭載された運転席3と、車体2を走行可能に支持する走行装置4とを備えている。
車体2は、車体フレーム5、クラッチハウジング6、ミッションケース7を有している。車体フレーム5は、車体2の前後方向に延びている。車体フレーム5には、原動機8が搭載されている。原動機8は、本実施形態の場合はエンジンであるが、モータであってもよい。原動機8の上方及び側方は、ボンネット10により覆われている。クラッチハウジング6は、原動機8の後部に連設されており、クラッチを収容している。ミッションケース7は、クラッチハウジング6の後部に連結されており、変速装置や後輪差動装置等を収容している。ミッションケース7の後方にはPTO軸23が突出している。
【0017】
走行装置4は、車体2の前部に設けられた前輪4Fと、車体2の後部に設けられた後輪4Rとを有している。前輪4Fは、車体フレーム5に支持されている。後輪4Rは、後輪差動装置の出力軸に支持されている。後輪4Rの上方はフェンダ11によって覆われている。運転席3の前方には、ステアリングホイール24が設けられている。ステアリングホイール24は、運転席3の前方に配置されたステアリングコラム29の上部に支持されている。
【0018】
車体2には、作業装置を装着可能な装着部12が設けられている。
図1,
図2に示すように、装着部12は、後装着部12Aを含むことができる。後装着部12Aは、車体2の後部に設けられている。後装着部12Aは、車体2の後方で作業を行う作業装置W1(
図20参照)を、作業車両1の後部に装着するための部分である。作業装置W1は、例えばPTO軸23から伝達される駆動力によって駆動する。作業装置W1は、例えば、耕耘機、散布機、播種機等であるが、これらに限定はされない。後装着部12Aは、油圧シリンダ等のアクチュエータにより駆動して作業装置W1を上昇又は下降させることができる。後装着部12Aは、例えば3点リンク機構であるが、これに限定はされない。
【0019】
装着部12は、後装着部12Aに加えて又は代えて前装着部12B(
図21参照)を含んでいてもよい。前装着部12Bは、車体2の前方で作業を行う作業装置W2を作業車両1の前部に装着するための部分である。作業装置W2は、例えば油圧シリンダの動作によって駆動する。
図21では、作業装置W2としてフロントローダが示されている。前装着部12Bは、車体フレーム5に接続された取付フレーム14である。取付フレーム14は、車体フレーム5の左部と右部にそれぞれ接続されている。但し、作業装置W2は、フロントローダに限定されず、他の種類の作業装置であってもよい。また、前装着部12Bの構成は、作業装置W2の種類に応じて変更可能である。
【0020】
図1,
図2に示すように、作業車両1は、運転者保護用の保護フレーム9を備えている。保護フレーム9は、作業車両1の横転時等に運転席3に着座した運転者OPを保護するためのフレームであって、ROPS(Roll-Over Protective Structures)とも呼ばれる。保護フレーム9は、運転席3よりも上方に延びるように起立している。保護フレーム9は、車体2に取り付けられている。保護フレーム9は、車体2に対して着脱不能であってもよいが、車体2に対して着脱可能であることが好ましい。また、保護フレーム9は、作業車両1に予め取り付けられていてもよいが、既存の作業車両1に対して後付け可能なものであることが好ましい。
【0021】
以下の説明において、保護フレーム9に関する方向(前、後、左、右、上、下)は、保護フレーム9を車体2に取り付けた状態における方向である。つまり、
図1の矢印F方向を前方、矢印B方向を後方、矢印U方向を上方、矢印D方向を下方、
図2の矢印L方向を左方、矢印R方向を右方という。また、
図2の矢印W方向を車体幅方向という。
図3,
図4,
図5は、保護フレーム9の一実施形態(第一実施形態)を示している。
【0022】
保護フレーム9は、起立部15を有している。起立部15は、運転席3の後方において上方に向けて起立(直立)する(
図1参照)。起立部15は、左起立部15Lと右起立部15Rとを含む。左起立部15Lと右起立部15Rとは、車体幅方向Wに間隔をあけて起立する(
図2参照)。左起立部15Lは、運転席3の左後方において起立する。右起立部15Rは、運転席3の右後方において起立する。
【0023】
保護フレーム9は、左起立部15Lと右起立部15Rとを連結する連結部16を有している。連結部16は、上連結部17と下連結部18とを含む。上連結部17は、左起立部15Lの上端と右起立部15Rの上端とを連結している。下連結部18は、左起立部15Lの下端と右起立部15Rの下端とを連結している。これにより、左起立部15L、右起立部15R、上連結部17、下連結部18は、環状に繋がって一体化されている。以下、左起立部15L、右起立部15R、上連結部17、下連結部18が一体化された構造体を「上部構造体19」という。
【0024】
保護フレーム9は、上部構造体19の下部に接続された下部構造体20を有している。下部構造体20は、脚部21と取付部22を有している。
脚部21は、左脚部21Lと右脚部21Rとを含む。左脚部21Lと右脚部21Rとは、車体幅方向に間隔をあけて配置されている。左脚部21Lは、左起立部15Lの下部に接続されており、当該下部から前下方に延びている。右脚部21Rは、右起立部15Rの下部に接続されており、当該下部から前下方に延びている。脚部21は、車体2の後方に配置される(
図1参照)。また、脚部21は、左側の後輪4Rと右側の後輪4Rの間に配置される(
図2参照)。
【0025】
取付部22は、保護フレーム9を車体2に取り付けるための部分である。取付部22は、左取付部22Lと右取付部22Rとを含む。左取付部22Lは、車体2の左側に取り付けられる。右取付部22Rは、車体2の右側に取り付けられる。取付部22は、ボルト等の取付具によって車体2に取り付けられる。取付部22は、車体2の後部に取り付けられる。取付部22は、車体2の後部(例えば、ミッションケース7の後部等)に対して直接的に、又はラダーヒッチ等の取付部材を介して間接的に取り付けられる。
【0026】
取付部22の構成は、車体2に対して保護フレーム9を取り付け可能な構成であればよく、特に限定されない。例えば、取付部22は、ミッションケース7以外の部分、例えば、フェンダ11や運転席3等に取り付け可能な構成を有するものであってもよい。脚部21の構成(形状等)は、取付部22の構成(取り付け位置等)に合わせて適宜変更することができる。
【0027】
保護フレーム9は、中空のパイプ(筒体)から構成されている。左起立部15L、右起立部15R、上連結部17、下連結部18の内部空間は連通している。この内部空間は、後述する空調風が流れる空間として機能する。つまり、空調風は、保護フレーム9の上部構造体19の内部空間を通って流れることができる。
一方、左脚部21Lの内部空間と左起立部15Lの内部空間との境界、及び、右脚部21Rの内部空間と右起立部15Rの内部空間との境界には、空調風の通過を阻止する壁28(
図6参照)がある。そのため、上部構造体19の内部空間を通って流れる空調風は、下部構造体20の内部空間には流れない。
【0028】
保護フレーム9は、空調風を運転席3側に供給可能な構造(以下、「空調風供給構造」という)と、霧状の水(ミスト)を運転席3側に供給可能な構造(以下、「ミスト供給構造」という)の両方又はいずれか一方を有している。「空調風」は、周囲温度よりも高温又は低温である適温に調整された空気の流れにより生じる風であって、冷房用の冷風と暖房用の温風の両方又はいずれか一方を含む。つまり、空調風供給構造は、冷房用の冷風と暖房用の温風の両方又はいずれか一方を供給することができる。
【0029】
以下の説明において、空調風供給構造のみを有する形態を「エアコン形態」、ミスト供給構造のみを有する形態を「ミスト形態」、空調風供給構造とミスト供給構造の両方を有する形態を「エアコンミスト併用形態」と称する。
図面では主に「エアコンミスト併用形態」の保護フレーム9が示されている。「エアコン形態」の保護フレーム9は、「エアコンミスト併用形態」のミスト供給構造を省略することにより得られる。「ミスト形態」の保護フレーム9は、「エアコンミスト併用形態」の空調風供給構造を省略することにより得られる。
【0030】
以下、保護フレーム9が有する空調風供給構造について先ず説明する。
図3〜
図5等に示すように、保護フレーム9には、エアコンユニット30が取り付けられている。エアコンユニット30は、運転席3に着座した運転者を冷却又は加温する空調風を発生させる。エアコンユニット30は、HVAC(Heating Ventilation and Air-Conditioning)ユニットから構成されている。
【0031】
図1に示すように、エアコンユニット(HVACユニット)30は、当該エアコンユニット30と別体に構成された空調作動装置45と、冷却通路46を介して接続されている。冷却通路46は、冷媒が流通(循環)する通路である。エアコンユニット(HVACユニット)30、空調作動装置45、冷媒通路46によって、空調風を生成して発生する空調装置が構成されている。
【0032】
空調作動装置45は、車体2のボンネット10内に配置されており、コンプレッサとコンデンサとを含む。コンプレッサは、原動機(エンジン)8により駆動される。エアコンユニット(HVACユニット)30は、筐体31と、エバポレータ、ヒータコア、ブロアファン、エアミックスドア、入口・出口の各切替ドアを含む。コンプレッサと、ブロワファンを駆動するファンモータと、各ドアのアクチュエータとは、ECU(Engine Control Unit)からの指令信号に基づき駆動される。
【0033】
エアコンユニット30は、バッテリや発電機(オルタネータ等)の電源から供給される電力によって駆動する構成としてもよい。電源は、車体2に搭載されているものであってもよいし、保護フレーム9に装着されているものであってもよい。
エアコンユニット30は、保護フレーム9の下連結部18に取り付けられている。
図1、
図2に示すように、エアコンユニット30は、運転席3の後方に配置される。具体的には、エアコンユニット30は、運転席3の背凭れ部3aの後方であって、後方から見て背凭れ部3aと重なる位置に配置される。
【0034】
エアコンユニット30にて発生した空調風は、空調風通路32に供給される。空調風通路32は、空調風が冷風である場合には冷風通路32となり、空調風が温風である場合には温風通路32となる。
図6に示すように、空調風通路32は、保護フレーム9の内部に設けられており、エアコンユニット30にて発生した空調風が通る。本実施形態の場合、保護フレーム9の内部空間が空調風通路32を構成している。つまり、保護フレーム9は、空調風通路32を構成するダクトとして機能する。
【0035】
本実施形態の場合、保護フレーム9の内部空間の一部が、エアコンユニット30にて発生した空調風が通る空調風通路32を構成している。具体的には、上部構造体19(左起立部15L、右起立部15R、上連結部17、下連結部18)の内部空間が、空調風通路32を構成している。エアコンユニット30にて発生した空調風は、空調風通路32を通って流れる。
図5,
図6において、空調風の流れを白抜き矢印で示している。エアコンユニット30にて発生した空調風は、下連結部18の内部空間に供給され、左起立部15L及び右起立部15Rを通って上連結部17へと流れる。
【0036】
保護フレーム9には、空調風送出部33が設けられている。空調風送出部33は、空調風通路32を通った空調風を運転席3側に向けて送り出す。空調風送出部33は、空調風が冷風である場合には冷風送出部33となり、空調風が温風である場合には温風送出部33となる。空調風送出部33は、空調風を吹き出す吹き出し口34(
図5、
図6参照)を有している。空調風送出部33は、起立部15に設けられた第1送出部35を有している。第1送出部35は、運転席3の後方から前方に向けて空調風を送り出す。
【0037】
図5に示すように、第1送出部35は、左起立部15Lと右起立部15Rにそれぞれ設けられている。第1送出部35は、上送出部35Aと下送出部35Bとを含む。上送出部35Aは、起立部15の上部に設けられている。下送出部35Bは、起立部15の下部に設けられている。
図1に示すように、上送出部35Aは、運転席3の背凭れ部3aの上端よりも高い位置にある。下送出部35Bは、運転席3の背凭れ部3aの上端よりも低い位置にある。上送出部35Aは、運転席3に着座した運転者OPの後上方から運転者の首や頭に向けて空調風を送り出すことができる。下送出部35Bは、運転席3に着座した運転者OPの後方から運転者の腕や背中に向けて空調風を送り出すことができる。
【0038】
第1送出部35の吹き出し口34の向きは、必要に応じて変更することができる。吹き出し口34の向きを変更することによって、空調風の流れ方向(送り出し方向)を変更することができる。吹き出し口34の向きの変更は、例えば、吹き出し口34に設けられたルーバ(導風板)の向きを変更する等の方法によって行うことができる。
図7及び
図8は、保護フレーム9の別の実施形態(第二実施形態)を示している。以下、第二実施形態の保護フレーム9が上述した第一実施形態の保護フレーム9と異なる点について説明する。
【0039】
第二実施形態の保護フレーム9は、起立部15の上部に、前上方に延びる前傾部25が形成されている。前傾部25は、左起立部15Lの上部に形成された左前傾部25Lと、右起立部15Rの上部に形成された右前傾部25Rと、を含む。上連結部17は、左前傾部25Lの上端と右前傾部25Rの上端とを連結している。
本実施形態(第二実施形態)の場合、左前傾部25Lを含む左起立部15L、右前傾部25Rを含む右起立部15R、上連結部17、下連結部18の内部空間が、空調風通路32を構成している。エアコンユニット30にて発生した空調風は、下連結部18の内部空間に供給され、左起立部15Lの下部及び右起立部15Rの下部に流れた後、左起立部15Lの上部に形成された左前傾部25L及び右起立部15Rの上部に形成された右前傾部25Rを通って、上連結部17へと流れる。
【0040】
本実施形態の場合、空調風送出部33は、上述した第1送出部35に加えて第2送出部36を有している。第2送出部36は、上連結部17に設けられている。第2送出部36は、第1送出部35よりも上方且つ前方に設けられている。
図9に示すように、第2送出部36は、運転席3の後上方から前下方に向けて空調風CWを送り出す。これにより、第2送出部36は、運転席3に着座した運転者OPの後上方から運転者の頭部に向けて空調風CWを送り出すことができる。
【0041】
第2送出部36の吹き出し口の向きは、第1送出部35と同様に、必要に応じて変更することができる。例えば、
図9に示すように、第2送出部36の吹き出し口の向きは、運転者OPの頭部に空調風CW(実線矢印参照)を当てるように設定することもできるし、運転者OPの前方に空調風(二点鎖線矢印参照)を送るように設定することもできる。前者の向きに設定した場合、運転者OPの頭部を効率よく冷やす又は暖めることができる。後者の向きに設定した場合、送り出された空調風がエアカーテンACとして機能し、作業中に発生する砂塵等が前方から運転者の顔に当たることを防止できる。
【0042】
第二実施形態の保護フレーム9によれば、第1送出部35と第2送出部36の両方から運転者に向けて冷気又は暖気を送り出すことによって、運転者に与える冷涼感又は温暖感を向上させることができるとともに、防塵効果を得ることもできる。また、運転席の周囲の環境(温度、風向き、作業の種類等)や運転者の好みに応じて、第1送出部35と第2送出部36のいずれか一方から選択的に空調風を送り出すこともできる。
【0043】
図10,
図11,
図12は、保護フレーム9のさらに別の実施形態(第三実施形態)を示している。以下、第三実施形態の保護フレーム9が上述した第一実施形態の保護フレーム9と異なる点について説明する。
第三実施形態の保護フレーム9は、屋根部26を有している。屋根部26は、起立部15の上部に取り付けられて運転席3の上方を覆う。屋根部26は、上連結部17の上部に取り付けられている。上連結部17には、当該上連結部17から前方に延びる前延部27が接続されている。前延部27は、屋根部26の下面(裏面)に沿って前方に延びている。前延部27の前端は、運転席3の上方に位置しており(
図20参照)、下方に向けて開口している。前延部27は、中空のパイプから構成されている。前延部27の内部空間は、上連結部17の内部空間と連通している。
【0044】
本実施形態(第三実施形態)の場合、前延部27、左起立部15L、右起立部15R、上連結部17、下連結部18の内部空間が、空調風通路32を構成している。エアコンユニット30にて発生した空調風は、下連結部18の内部空間に供給され、左起立部15L及び右起立部15Rから上連結部17を通って、前延部27へと流れる。
本実施形態の場合、空調風送出部33は、上述した第1送出部35に加えて第3送出部37を有している。第3送出部37は、前延部27に設けられている。詳しくは、前延部27の前端の下向きの開口が第3送出部37を構成している。
図13に示すように、第3送出部37は、運転席3の上方から下方に向けて空調風CWを送り出す。これにより、第3送出部37は、運転席3に着座した運転者OPの上方から運転者の頭部に向けて空調風CWを送り出すことができる。そのため、運転者OPの頭部を効率よく冷やす又は温めることができる。
【0045】
第3送出部37の吹き出し口の向きも、必要に応じて変更することができる。例えば、第3送出部37の吹き出し口の向きは、運転者の前方に空調風を送るように設定することもできる。この場合、空調風がエアカーテンとして機能し、作業中に発生する砂塵等が前方から運転者の顔に当たることを防止できる。
第三実施形態の保護フレーム9によれば、
図13に示すように、第1送出部35と第3送出部37の両方から運転者OPに向けて空調風を送り出すことによって、運転者OPの顔の周囲に冷気又は暖気が集中した集中領域CRを生成して、運転者OPに与える冷涼感又は温暖感を向上させることができる。また、運転者OPの顔の周囲に空調風によるエアカーテンを生成して防塵効果を得ることもできる。
【0046】
本発明に係る保護フレーム9は、上述した第1送出部35、第2送出部36、第3送出部37のうち、少なくともいずれか1つを備えていればよいが、2つ又は3つを備えていることが好ましい。
以下、保護フレーム9が有するミスト供給構造について説明する。以下に説明するミスト供給構造は、上述した全ての実施形態(第一、第二、第三実施形態)の保護フレーム9に対して適用することができる。
【0047】
図14に示すように、ミスト供給構造は、水を貯留するタンク40と、水を霧状に噴射する噴射ノズル50と、タンク40内の水を噴射ノズル50に供給する供給装置60と、を有している。
本実施形態の場合、タンク40は、第1タンク41と第2タンク42とを含む。但し、タンク40は、第1タンク41と第2タンク42のいずれか一方のみでもよい。例えば、水を長時間にわたって噴射可能な仕様とする場合、タンク40は第1タンク41と第2タンク42とを含むことが好ましい。水を短時間のみ噴射可能な仕様とする場合、タンク40は第1タンク41と第2タンク42のいずれか一方のみ(好ましくは、第1タンク41のみ)とすることができる。
【0048】
図6に示すように、保護フレーム9の内部空間が第1タンク41の貯水空間を構成している。言い換えれば、保護フレーム9の内部空間を第1タンク41の貯水空間として利用している。詳しくは、保護フレーム9の下部構造体20の内部空間が第1タンク41の貯水空間を構成している。具体的には、下部構造体20の脚部21(左脚部21L及び右脚部21R)の内部空間が第1タンク41の貯水空間を構成している。第1タンク41には、噴射ノズル50から噴射される水WTが貯留されている。
【0049】
図6に示すように、エアコンミスト併用形態の保護フレーム9の場合、保護フレーム9の内部に、空調風通路32を構成する第1空間38と、タンク(第1タンク41)の貯水空間を構成する第2空間39とが形成されている。第1空間38と第2空間39は、壁28により仕切られている。
第1空間38は保護フレーム9の上部構造体19の内部に形成され、第2空間39は保護フレーム9の下部構造体20の内部に形成されている。つまり、1つの保護フレーム9の内部に、空調風通路32を構成する空間(第1空間38)とタンク(第1タンク41)の貯水空間を構成する空間(第2空間39)とが形成されている。これにより、保護フレーム9の内部空間を空調風及びミストの流通のための空間として有効利用することができる。また、保護フレーム9の外部に空調風通路を構成するダクトや水を貯留するタンクを設置するためのスペースを別途確保する必要がない。また、保護フレーム9の上部を第1空間38、下部を第2空間39としたことにより、保護フレーム9の下部に水が貯留されて保護フレーム9の重心位置を低くすることができ、水の重量によって作業車両1が不安定となることを防止できる。
【0050】
図3,
図7,
図10等に示すように、第2タンク42は、保護フレーム9に取り付けられている。詳しくは、第2タンク42は、下部構造体20に取り付けられている。より詳しくは、第2タンク42は、脚部21に取り付けられた容器である。第2タンク42は、左脚部21Lと右脚部21Rとを連結している。このように、第2タンク42により左脚部21Lと右脚部21Rとを連結する構造を採ることで、脚部21の強度(剛性)が向上する。尚、第2タンク42とは別に、左脚部21Lと右脚部21Rとを連結する連結部材を設け、当該連結部材に第2タンク42を固定してもよい。
【0051】
第2タンク42は、第1タンク41のみでは必要な水量を確保できない場合に設けることが好ましい。例えば、第2タンク42を保護フレーム9に対して着脱可能に構成し、必要に応じて第1タンク41のみを有する形態と、第1タンク41と第2タンク42の両方を有する形態とを切り換え可能とすることができる。
第1タンク41と第2タンク42の両方を有する形態の場合、第1タンク41の内部空間(貯水空間)と第2タンク42の内部空間(貯水空間)とは、互いに独立していてもよいが、互いに連通していることが好ましい。例えば、第1タンク41の内部空間に貯留された水が減少した場合に、第2タンク42の内部空間に貯留された水が、第1タンク41の内部空間に流入するように構成することができる。
【0052】
噴射ノズル50は、粒子径10〜30μmの細粉ミストを噴射可能なノズルであることが好ましい。このような細粉ミストは、ドライミストとも呼ばれており、短時間で蒸発するために噴射の対象物が濡れない。また、蒸発する際の気化熱を利用して対象物を冷却することができる。また、空気中の粉塵(砂塵等)に衝突して落とすことができるため、防塵効果に優れている。
【0053】
図1等に示すように、噴射ノズル50は、運転席3の後方に配置される第1噴射ノズル51を含む。
図4,
図8,
図12等に示すように、第1噴射ノズル51は、保護フレーム9の起立部15に設けられている。第1噴射ノズル51は、運転席3の後方から運転席3側に向けて水を噴射可能である。
図5,
図11に示すように、第1噴射ノズル51は、左ノズル51L(以下、「第1左ノズル51L」という)と右ノズル51R(以下、「第1右ノズル51R」という)とを含む。第1左ノズル51Lは、車体幅方向において、運転席3よりも左方に配置される。第1右ノズル51Rは、車体幅方向において、運転席3よりも右方に配置される。第1左ノズル51Lは、左起立部15Lに設けられている。第1右ノズル51Rは、右起立部15Rに設けられている。
図1に示すように、第1噴射ノズル51は、運転席3の背凭れ部3aの上端より下方であって且つフェンダ11の上面よりも上方の高さに配置されている。但し、第1噴射ノズル51は、運転席3の背凭れ部3aの上端より上方の高さに配置してもよい。
【0054】
図14に示すように、供給装置60は、ポンプ61と通水管62とを有している。ポンプ61は、高圧力(例えば、4MPa以上)で水を供給することができる高圧ポンプである。ポンプ61は、タンク40内の水を通水管62へと供給する。ポンプ61は、保護フレーム9に取り付けられ、車体2の後方に配置される(
図2参照)。但し、ポンプ61を車体2に取り付けてもよい。
【0055】
通水管62は、ポンプ61により供給されたタンク40内の水を第1噴射ノズル51へと導く。通水管62は、例えば、可撓性を有するホースやチューブ等である。通水管62は、ポンプ61とタンク40とを接続する第1通水管63と、ポンプ61と第1噴射ノズル51とを接続する第2通水管64とを含む。
第1通水管63は、第1タンク41と第2タンク42の両方又はいずれか一方に接続される。
図14は、第1通水管63を第1タンク41に接続した例を示している。第2通水管64は、上部構造体19に設けられた管接続部67(
図3,
図7,
図10等参照)を介して第1噴射ノズル51と接続される。
【0056】
図14において、エアコンユニット30から供給される空調風の流れを白抜き矢印で示し、第1タンク41から供給される水の流れを二点鎖線の矢印で示している。
ポンプ61を駆動することによって、タンク40に貯留された水を第1通水管63により吸い出して、第2通水管64を介して第1噴射ノズル51へと供給し、第1噴射ノズル51から霧状に噴射することができる。
図14では、第1タンク41に貯留された水を第1噴射ノズル51へと供給する形態が示されているが、第2タンク42に貯留された水を第1噴射ノズル51へと供給してもよい。
【0057】
ポンプ61は、原動機8の駆動力によって駆動することができるが、電源からの電力供給によって駆動するものであってもよい。電源は、例えば、バッテリやオルタネータである。電源は、車体2に搭載されているものであってもよいし、保護フレーム9に装着されているものであってもよい。
第1噴射ノズル51は、水のみを吐出する一流体ノズルであることが好ましい。第1噴射ノズル51が一流体ノズルである場合、供給装置60は、上述した
図14に示すようなポンプ61と通水管62とを有する装置を使用することができる。第1噴射ノズル51として一流体ノズルを使用した場合、後述する二流体ノズルを使用した場合に比べて静粛性が高くなるため、水の吐出音(ミストの噴霧音)によって運転者の快適性を損なうことがない。
【0058】
但し、第1噴射ノズル51は、水と空気とを吐出する二流体ノズルであってもよい。二流体ノズルは、水を吐出する水ノズルと空気を吐出する空気ノズルとから構成されており、圧縮空気等を利用して水に空気を混合することによって水を微粒化することができる。
第1噴射ノズル51が二流体ノズルである場合、供給装置60はポンプ61の代わりに圧縮空気を生成するエアーコンプレッサ(図示略)を含むことができる。尚、エアーコンプレッサに代えてエアーブロワを使用してもよい。エアーコンプレッサやエアーブロワ(以下、「空気供給源」という)は、例えば原動機8の駆動力によって駆動することができる。空気供給源は、保護フレーム9に取り付けられ、車体2の後方に配置される。但し、空気供給源を車体2に取り付けてもよい。
【0059】
第1噴射ノズル51の空気ノズルには、空気供給源から供給される空気を通すエアホース66(
図6参照)が接続される。第1噴射ノズル51の水ノズルには、タンク40内の水を水ノズルに導く通水管65(以下、「第3通水管65」という)(
図6参照)が接続される。
図6において、エアコンユニット30から供給される空調風の流れを白抜き矢印A1で示し、タンク40(第1タンク41)から供給される水の流れを破線の矢印B1で示し、空気供給源から供給される空気の流れを二点鎖線の矢印F1で示している。
【0060】
空気供給源から供給される空気は、エアホース66を通って第1噴射ノズル51へと供給され、空気ノズルから吐出される。空気ノズルから空気が吐出されると、水ノズルの吐出口の周囲の圧力が低くなり、タンク40から第3通水管65を介して水が吸い上げられ、水ノズルから水が吐出される。この吐出された水に空気ノズルから吐出された空気が衝突することによって水が微粒化される。
【0061】
例えば、エアーコンプレッサを使用した場合、第1噴射ノズル51から噴射されるミストの粒径を10μm程度とすることができる。エアーブロワを使用した場合、第1噴射ノズル51から噴射されるミストの粒径を13〜30μm程度とすることができる。
上述した第1噴射ノズル51及び供給装置60に関する構成は、後述する第2噴射ノズル52に対しても適用することができる。例えば、第2噴射ノズル52は、一流体ノズルであってもよいし、二流体ノズルであってもよい。また、第2噴射ノズル52に水を供給する供給装置60は、ノズルの種類等に応じて選択することができ、ポンプ61、エアーコンプレッサ、エアーブロワのいずれを備えたものであってもよい。
【0062】
図6に示すように、第3通水管65は、保護フレーム9の内部に挿通される。第3通水管65は、壁28を貫通して下部構造体20の内部空間から上部構造体19の内部空間へと延びている。保護フレーム9の内面と第3通水管65の外面との間には、空間S1が形成される。保護フレーム9がエアコンミスト併用形態の保護フレームである場合、上部構造体19に形成された空間S1が空調風通路32として使用される。つまり、保護フレーム9の内面(上部構造体19の内面)と第3通水管65の外面との間に空調風通路32が形成される。
【0063】
なお、図示していないが、第2通水管64(
図14参照)の全部又は一部を保護フレーム9の内部に挿通してもよい。この場合、保護フレーム9の内面と第2通水管64の外面との間に形成される空間を空調風通路32として使用することができる。
保護フレーム9がエアコンミスト併用形態の保護フレームである場合、第1噴射ノズル51は、空調風送出部33(第1送出部35)の近傍に配置することが好ましい(
図5,
図6,
図11等参照)。詳しくは、
図6に示すように、第1噴射ノズル51から噴射されたミストMTが、空調風送出部33(第1送出部35)の吹き出し口34と、正面視においてオーバラップするように配置することが好ましい。このような配置によって、第1噴射ノズル51から噴射されるミストMTを、空調風送出部33(第1送出部35)から送り出される空調風によって拡散することができ、冷却効果を高めることができる。
【0064】
また、
図6に示すように、保護フレーム9がエアコンミスト併用形態の保護フレームである場合、エアコンユニット30の駆動に伴って発生した水をタンク40に導く導水部70と、導水部70を通ってタンク40へと導かれる水に含まれる夾雑物を除去するフィルタ71とを設けることができる。
導水部70は、エアコンユニット30から発生したドレン水をタンク40に導く第1導水部72と、保護フレーム9の表面に付着した結露水をタンク40に導く第2導水部73との少なくともいずれか一方を含む。第1導水部72は、エアコンユニット30から発生したドレン水を導くドレンホース72から構成されている。ドレンホース72は、一端側がエアコンユニット30に接続され、他端側が水受け部74に挿入されている。エアコンユニット30からドレンホース72に排出されたドレン水は、水受け部74に入ることができる。
図6において、ドレン水の流れを破線矢印C1で示している。
【0065】
水受け部74は、第1タンク41の上方に設けられている。水受け部74は、保護フレーム9の外周(脚部21の外周)を覆う円筒体である。水受け部74は、上部が保護フレーム9の外周面との間に隙間G1を有しており、下部が保護フレーム9の外周面と密接している。隙間G1の下部は、保護フレーム9に形成された入水孔9cを介して保護フレーム9の内部空間と連通している。隙間G1の上部は開放されており、保護フレーム9の表面に付着した結露水は、当該表面を伝って流下し、隙間G1の上部から水受け部74に入ることができる。つまり、水受け部74と保護フレーム9の隙間G1が第2導水部73を構成している。
図6において、結露水の流れを破線矢印C2で示している。
【0066】
フィルタ71は、水受け部74の内部に配置されている。フィルタ71は、入水孔9cよりも上方に配置されている。第1導水部72及び/又は第2導水部73を介して水受け部74に導入された水は、フィルタ71を通過した後、入水孔9cから第1タンク41に入る。これにより、ドレン水や結露水は、フィルタ71によって夾雑物が除去された後、第1タンク41に貯留されるため、噴射ノズル50から噴射されるミストとして利用することができる。
【0067】
図1に示すように、噴射ノズル50は、運転席3の前方に配置された第2噴射ノズル52を含むことができる。第2噴射ノズル52は、運転席3の前方から運転席3側に向けて水を噴射可能である。第2噴射ノズル52は、例えば、作業車両1のフロアステップ13の前部に取り付けることができる。但し、第2噴射ノズル52の取り付け位置は、フロアステップ13の前部には限定されず、運転席3の前方の他の位置(例えば、ボンネット10やステアリングコラム29等)であってもよい。
【0068】
図15に示すように、第2噴射ノズル52は、車体幅方向において、運転席3よりも左方に配置された左ノズル52L(以下、「第2左ノズル52L」という)と、運転席3よりも右方に配置された右ノズル52R(以下、「第2右ノズル52R」という)とを含む。第2左ノズル52Lは、フロアステップ13の左前部に設けられている。第2右ノズル52Rは、フロアステップ13の右前部に設けられている。
図1に示すように、第2噴射ノズル52は、運転席3よりも低い位置(運転者OPの足元付近)に配置されている。但し、第2噴射ノズル52は、運転席3の座面3b付近の高さ位置や、座面3bよりも高い位置に配置してもよい。
【0069】
第2噴射ノズル52には、タンク40(第1タンク41及び/又は第2タンク42)内の水を第2噴射ノズル52に導く通水管(図示略)が接続される。この通水管は、第2噴射ノズル52が一流体ノズルである場合は、ポンプ61(
図14参照)を介してタンク40と接続される。第2噴射ノズル52が二流体ノズルである場合は、水ノズルはタンク40と接続され、空気ノズルはエアーコンプレッサ等の空気供給源と接続される。
【0070】
保護フレーム9は、第1噴射ノズル51と第2噴射ノズル52の少なくともいずれか一方を備えていればよいが、両方を備えていることが好ましい。第1噴射ノズル51と第2噴射ノズル52とを併用することによって、運転席3に着座した運転者の後方と前方から運転者に向けてミストを噴射することができる。そのため、例えば、運転者の首筋と顔面を同時に冷却することが可能となり、優れた冷却効果を得ることができる。
【0071】
噴射ノズル50は、第1噴射ノズル51及び第2噴射ノズル52とは異なる位置に配置された他の噴射ノズルを含んでいてもよい。他の噴射ノズルは、例えば、第2送出部36の近傍、第3送出部37の近傍、運転席3の側方(左方、右方)等の任意の位置に配置することができる。
作業車両1は、噴射ノズル50(第1噴射ノズル51、第2噴射ノズル52)の向きを変更可能とする変更機構80を備えている。
図16は、変更機構80の一例を示す図である。
図16に示す変更機構80は、第1接続部材81と第2接続部材82とを有している。第1接続部材81は、屈曲可能な蛇腹状の筒体であって、タンク40内の水を噴射ノズル50に導く通水管(通水管62等)に接続される。第2接続部材82は、第1接続部材81と接続される第1部位82aと、噴射ノズル50と接続される第2部位82bとを有している。第2接続部材82の内部には、第1部位82aと第2部位82bを貫通する通路83が形成されている。通水管62から第1接続部材81に侵入した水は、第2接続部材82の内部の通路83を通って噴射ノズル50から噴射される。
【0072】
第2接続部材82は、矢印Z1に示すように、通水管62の軸心X1回りに回転可能である。第2接続部材82を軸心X1回りに回転することによって、噴射ノズル50の向きを軸心X1回りに変更することができる。また、第1接続部材81を屈曲することによって、噴射ノズル50の向きを軸心X1に対して傾けて変更することができる。例えば、
図16(a)は噴射ノズル50を前方に向けた状態、
図16(b)は噴射ノズル50を後方に向けた状態、
図16(c)は噴射ノズル50を斜め下向きに傾けた状態である。
【0073】
変更機構80の構成は、
図16に示した構成には限定されず、例えばモータや歯車等を使用した他の構成であってもよい。変更機構80を用いた噴射ノズル50の回転及び傾動は、手動で行ってもよいし、モータ等を使用して機械的に行ってもよい。
変更機構80は、第1噴射ノズル51の向きを、第1左ノズル51Lから噴射された水(ミスト)MTと第1右ノズル51Rから噴射された水(ミスト)MTとが運転席3の上方で合流する第1の向き(
図17参照)と、運転席3の上方で合流しない第2の向き(
図18参照)とに変更可能である。
図17に示すように、第1噴射ノズル51の向きを第1の向きとした場合、運転者OPに対して左斜め後方と右斜め後方からミストMTを集中して当てることができる。この場合、運転者OPの周囲にミストの集中領域MRを生成することができるため、運転者OPを効果的に冷却することが可能となる。
図18に示すように、第1噴射ノズル51の向きを第2の向きとした場合、運転者OPの側方及び前方にミストカーテン(ミストバリア)MCを生成することができるため、運転者OPを砂塵等から保護することが可能となる。
【0074】
また、変更機構80は、第2噴射ノズル52の向きを、第2左ノズル52Lから噴射された水(ミスト)MTと第2右ノズル52Rから噴射された水(ミスト)MTとが運転席3の上方で合流する第1の向き(
図15参照)と、運転席3の上方で合流しない第2の向き(
図19参照)とに変更可能である。
図15に示すように、第2噴射ノズル52の向きを第1の向きとした場合、運転者OPに対して左斜め前方と右斜め前方からミストMTを集中して当てることができる。この場合、運転者OPの周囲にミストの集中領域MRを生成することができるため、運転者OPを効果的に冷却することが可能となる。
図19に示すように、第2噴射ノズル52の向きを第2の向きとした場合、運転者OPの側方及び後方にミストカーテンMCを生成することができるため、運転者OPを砂塵等から保護することが可能となる。
【0075】
また、図示していないが、第1噴射ノズル51と第2噴射ノズル52とを併用して、両方のノズルを共に第1の向きとすることにより、運転者OPに対して4方向(左斜め後方、右斜め後方、左斜め前方、右斜め前方)からミストを集中して当てることができるため、運転者をさらに効果的に冷却することが可能となる。
また、図示していないが、第1噴射ノズル51と第2噴射ノズル52とを併用して、両方のノズルを共に第2の向きとすることにより、運転者OPの側方、前方及び後方にミストカーテンを生成することができるため、運転者OPを砂塵等からより効果的に保護することが可能となる。
【0076】
また、
図20に示すように、変更機構80は、第1噴射ノズル51の噴射方向を後方に変更することができる。
図20は、第1噴射ノズル51の噴射方向を後下方とした状態を示している。この場合、第1噴射ノズル51は、後装着部12Aに装着された作業装置W1側に向けて車体2よりも後方まで水を噴射することができる。そのため、後装着部12Aに作業装置W1(例えば、耕耘機等)を装着して作業を行う際に、作業装置W1の作業によって発生する砂塵の発生源に向けてミストを吹き付けることが可能となり、砂塵が飛散して運転者OPの周囲に到達することを防止できる。
【0077】
また、
図21に示すように、変更機構80は、第2噴射ノズル52の噴射方向を前方に変更することができる。
図21は、第2噴射ノズル52の噴射方向を前上方とした状態を示している。この場合、第2噴射ノズル52は、前装着部12Bに装着された作業装置W2側に向けて車体2よりも前方までミストMTを噴射することができる。そのため、前装着部12Bに作業装置W2(例えば、フロントローダ等)を装着して作業を行う際に、作業装置W2による作業(例えば土砂D1の運搬)によって発生する砂塵E1の発生源に向けてミストMTを吹き付けることが可能となり、砂塵が飛散して運転者OPの周囲に到達することを防止できる。
【0078】
また、
図22,
図23に示すように、第1噴射ノズル51と第2噴射ノズル52とを併用することによって、運転者OPに対する冷却効果と防塵効果の両方を得ることができる。
図22は、第1噴射ノズル51から運転者OPに対してミストMTを噴射し、第2噴射ノズル52から作業装置W2の作業で発生する砂塵E1の発生源に向けてミストMTを噴射している状態を示す。
図23は、第2噴射ノズル52から運転者OPに対してミストMTを噴射し、第1噴射ノズル51から作業装置W1の作業で発生する砂塵E1の発生源に向けてミストMTを噴射している状態を示す。このように、運転者OPの後方にある第1噴射ノズル51と運転者OPの前方にある第2噴射ノズル52とを併用することによって、運転者OPに対する冷却効果と防塵効果の両方を得ることができる。
【0079】
保護フレーム9がエアコンミスト併用形態の保護フレームである場合、運転者OPに空調風CWを当てる使用態様(空調風モード)(
図13参照)と、運転者OPをミストMTにより冷却する使用態様(ミストモード)(
図24参照)とを使い分けることができる。
図13に示すように、空調風モードの場合、運転者OPに対して局所的に空調風CWを当てることができる。例えば、第1送出部35から運転者OPの首に空調風CWを当て、第3送出部37から運転者OPの頭部に空調風CWを当てることができる。このように、冷涼感や温暖感が得られやすい部位である首や頭に対して局所的に空調風(冷風又は温風)を当てることによって、運転者OPに効果的に冷涼感又は温暖感を与えることができる。また、運転者OPの頭部の周囲に冷気又は暖気の集中領域CRを生成することもできるため、運転者OPに効果的に冷涼感又は温暖感を与えることができる。
【0080】
図24に示すように、ミストモードの場合、運転者OP側にミストMTを噴射することができる。例えば、第1噴射ノズル51から運転者OPの周囲にミストMTを噴射することによって、ミストが蒸発する際の気化熱を利用して運転者OPの周囲の温度を低下させることができる。また、運転者OPの周囲にミストカーテンMCが生成されることによって運転者OPを砂塵等から保護することもできる。
【0081】
空調風モードにて冷風を使用した場合、運転者OPの身体に対する局所的な冷却効果に優れている。一方、ミストモードは運転者OPの周囲の冷却効果に優れている。そのため、運転者OPは、暑さを感じたときには、外気温度や自分の好みに応じて空調風モードでの冷風使用とミストモードとを使い分けることができる。
運転者OPは、空調風モードでの冷風使用とミストモードとを併用することもできる。この場合、冷風とミストの両者による高い冷却効果を得ることができるとともに、ミストカーテンによる防塵効果やエアカーテンによる防塵効果も得ることもできる。
【0082】
このように、空調風モードとミストモードのいずれか一方又は両方の使用形態を採ることによって、キャビンを有さない(運転席3が外気に開放された状態にある)作業車両において、キャビンを有する作業車両と類似する快適性(清涼感又は暖かさ)や防塵効果を得ることができる。
図9に示すように、保護フレーム9には、ドリンクホルダ85を取り付けることができる。ドリンクホルダ85は、飲料水容器CN(例えば、PETボトルや水筒等)を保護フレーム9の外周面に当接又は近接させて保持可能なホルダである。ドリンクホルダ85は、例えば、下部が閉鎖されて上部が開放された箱体から構成され、上部から飲料水容器CNを出し入れすることができる。ドリンクホルダ85は、保護フレーム9のうち、内部に空調風通路32が形成された部分(例えば、起立部15)に取り付けられる。これによって、ドリンクホルダ85に保持された飲料を、空調風通路32を通る冷気又は暖気によって冷却又は加温することができる。
【0083】
上述した実施形態の保護フレーム9は、車体2に対して着脱可能であることが好ましい。これにより、既存の作業車両1の保護フレームを取り外して、当該保護フレームの代わりに、保護フレーム9を車体2に取り付けることができる。そのため、キャビン及び空調設備を有さない作業車両1に対して空調設備(空調風供給構造及び/又はミスト供給構造)を後付けすることができる。
【0084】
保護フレーム9が空調風供給構造を有する場合、保護フレーム9はエアコンユニット30と共に車体2に対して着脱可能であることが好ましい。これにより、既存の作業車両1の保護フレームを取り外して、当該保護フレームの代わりに、エアコンユニット30、空調風通路32、空調風送出部33を有する保護フレーム9を車体2に取り付けることができる。そのため、キャビン及び空調設備を有さない作業車両1に対して空調設備(空調風供給構造)を後付けすることができる。この場合、車体2に搭載されたバッテリやオルタネータ等の電源とエアコンユニット30とをワイヤハーネス等の電力供給線で接続する。
【0085】
保護フレーム9がミスト供給構造を有する場合、保護フレーム9はタンク40、噴射ノズル50、供給装置60と共に車体2に対して着脱可能であることが好ましい。これにより、既存の作業車両1の保護フレームを取り外して、当該保護フレームの代わりに、タンク40、噴射ノズル50、供給装置60を有する保護フレーム9を車体2に取り付けることができる。そのため、キャビン及び冷房設備を有さない作業車両1に対して冷房設備(ミスト供給構造)を後付けすることができる。この場合、車体2に搭載されたバッテリやオルタネータ等の電源と供給装置60(ポンプ61、エアーコンプレッサ、エアーブロワ等)とをワイヤハーネス等の電力供給線で接続する。
【0086】
保護フレーム9が空調風供給構造とミスト供給構造の両方を有する場合、保護フレーム9は、エアコンユニット30、タンク40、噴射ノズル50、供給装置60と共に車体2に対して着脱可能であることが好ましい。これにより、既存の作業車両1の保護フレームを取り外して、当該保護フレームの代わりに、エアコンユニット30、空調風通路32、空調風送出部33、タンク40、噴射ノズル50、供給装置60を有する保護フレーム9を車体2に取り付けることができる。そのため、キャビン及び空調設備を有さない作業車両1に対して空調設備(空調風供給構造とミスト供給構造)を後付けすることができる。この場合、車体2に搭載されたバッテリやオルタネータ等の電源と、エアコンユニット30及び供給装置60とをワイヤハーネス等の電力供給線で接続する。
【0087】
また、既存の保護フレーム(空調設備を有さない保護フレーム)に対して空調風供給構造及び/又はミスト供給構造を後付けすることによって、空調設備を有する保護フレーム9を構成してもよい。
作業車両1は、空調風供給構造による空調風の供給とミスト供給構造によるミストの噴射とを切り換えることができる。また、空調風の供給とミストの噴射の併用といずれか一方の使用とを切り換えることができる。また、空調風を送り出す空調風送出部の選択(第1送出部35、第2送出部36、第3送出部37のいずれか1つ又は2つ以上の選択)を行うことができる。また、ミストを噴射する噴射ノズルの選択(第1噴射ノズル51と第2噴射ノズル52のいずれか一方又は両方の選択)を行うことができる。また、噴射ノズル50(第1噴射ノズル51、第2噴射ノズル52)の向きの変更を行うことができる。これらの切り換え、選択、変更は、運転席3の近傍の操作部(スイッチ、レバー、ダイヤル等)の操作によって実行可能であることが好ましい。
【0088】
また、作業車両1に搭載された制御装置が、作業装置W1,W2の装着状況や作業装置の種類に基づいて、上述した切り換え、選択、変更の制御を自動的に行うようにしてもよい。また、車体2や作業装置W1,W2等に周辺環境(温度、湿度、風速、風向き等)を計測可能なセンサを取り付け、制御装置がセンサの計測値等に基づいて、上述した切り換え、選択、変更の制御を自動的に行うようにしてもよい。これらの制御を行う場合、作業装置W1,W2と制御装置との間の情報や制御信号等の通信は、ISOBUS等を介して行うことができる。
【0089】
図25は、作業車両1の他の実施形態を示す側面図である。本実施形態の作業車両1は、保護フレーム9を備えた建設機械であって、具体的にはバックホーである。
作業車両(バックホー)1は、車体2と、車体2に搭載された運転席3と、車体2を走行可能に支持する走行装置4とを備えている。
車体2は、上下方向の軸心回りに旋回可能な旋回台である。走行装置4は、クローラ式走行装置である。車体2の前部には、作業装置W2が装着された装着部12(前装着部12B)が設けられている。作業装置W2は、ブーム90、アーム91、作業具(バケット)92等を備えており、地面を掘削可能である。車体2の後上部には、原動機等を覆うボンネット10が配設されている。
【0090】
保護フレーム9は、車体2に取り付けられている。
図25では、第三実施形態の保護フレーム9を示しているが、第一実施形態又は第二実施形態の保護フレーム9であってもよい。また、保護フレーム9は、「エアコンミスト併用形態」、「ミスト形態」、「エアコンミスト併用形態」のいずれであってもよい。
また、
図25に示した作業車両(バックホー)1は、噴射ノズル50として第1噴射ノズル51を備えているが、第1噴射ノズル51と第2噴射ノズル52の両方を備えていてもよい。
【0091】
保護フレーム9は、起立部15が車体2上に起立している。脚部21は、起立部15の下部から後下方に延びている。車体2の後部に取り付けられている。但し、脚部21の形状は、図示した形状には限定されず、起立部15の下部から前下方に延びているものであってもよいし、起立部15の下部から左下方や右下方に延びているものであってもよい。また、取付部22の取り付け位置は、図示した位置には限定されず、車体2の側部や前部に取り付けてもよい。保護フレーム9の他の構成は、上述した通りである。
【0092】
上記実施形態の作業車両1によれば、以下に述べる効果を奏する。
本発明の一実施形態に係る作業車両1は、車体2と、車体2に搭載された運転席3と、運転席3よりも上方に延びるように起立した運転者保護用の保護フレーム9と、空調風を発生させるエアコンユニット30と、保護フレーム9の内部に設けられてエアコンユニット30にて発生した空調風が通る空調風通路32と、空調風通路32を通った空調風を運転席3側に向けて送り出す空調風送出部33と、を備えている。
【0093】
この構成によれば、運転者保護用の保護フレーム9を備えた作業車両1において、運転者OPに空調風を供給可能な空調風供給構造を付与することができる。そのため、運転者OPに対して快適な温度に調整された空調風を当てることが可能となり、運転者OPに快適性を与えて運転者OPの身体的負担を軽減することができる。また、キャビンを有さない(運転席3が外気に開放された状態にある)作業車両であっても、空調風により優れた空調効果が得られる作業車両1となる。
【0094】
また、保護フレーム9は、車体幅方向に間隔をあけて起立した左起立部15L及び右起立部15Rを含む起立部15と、左起立部15Lと左起立部15Lとを連結する連結部16と、を有し、空調風送出部33は、起立部15に設けられて運転席3の後方から前方に向けて空調風を送り出す第1送出部35を含む。
この構成によれば、運転席3に着座した運転者OPに対して後方から空調風を当てることができる。そのため、運転者OPを後方から冷却又は加温することができるとともに、作業や走行によって運転者の前方で発生した砂塵が運転者の顔に当たることを空調風によって阻止することができる。
【0095】
また、空調風送出部33は、連結部16に設けられて運転席3の後上方から前下方に向けて空調風を送り出す第2送出部36を含む。
この構成によれば、運転席3に着座した運転者OPに対して後上方から空調風を当てることができる。そのため、冷涼感や温暖感が得られやすい部位である首筋や後頭部などに対して空調風を当てることによって、運転者OPに効果的に冷涼感や温暖感を与えることができる。
【0096】
また、保護フレーム9は、起立部15の上部に取り付けられて運転席3の上方を覆う屋根部26と、連結部16から屋根部26の下面に沿って前方に延びる前延部27と、を有し、空調風送出部33は、前延部27に設けられて運転席3の上方から下方に向けて空調風を送り出す第3送出部37を含む。
この構成によれば、運転席3に着座した運転者OPに対して上方から空調風を当てることができる。そのため、冷涼感や温暖感が得られやすい部位である頭頂部などに対して空調風を当てることによって、運転者OPに効果的に冷涼感や温暖感を与えることができる。また、運転者OPの前方に空調風によるエアカーテンを生成して防塵効果を得ることもできる。
【0097】
また、エアコンユニット30は、保護フレーム9に取り付けられている。
この構成によれば、エアコンユニット30を設置するためのスペースを車体2上に確保する必要が無い。また、エアコンユニット30と保護フレーム9とが一体化されることによって、保護フレーム9を車体2に対して取り付ける際に、エアコンユニット30も保護フレーム9と一体物として取り付けることができる。
【0098】
また、連結部16は、左起立部15Lの上端と左起立部15Lの上端とを連結する上連結部17と、上連結部17よりも下方において左起立部15Lと左起立部15Lとを連結する下連結部18と、を含み、エアコンユニット30は、運転席3の後方において下連結部18に取り付けられている。
この構成によれば、エアコンユニット30が運転席3の後方に配置されるため、エアコンユニット30が運転者の邪魔にならない。また、エアコンユニット30が保護フレーム9の下連結部18に取り付けられることにより、エアコンユニット30によって作業車両1の重心位置が高くなることを抑制できる。
【0099】
また、保護フレーム9は、エアコンユニット30と共に車体2に対して着脱可能である。
この構成によれば、既存の作業車両1の保護フレームを取り外して、当該保護フレームの代わりに、保護フレーム9を車体2に取り付けることができる。そのため、キャビン及び空調設備を有さない作業車両1に対して空調設備(空調風供給構造)を後付けすることができる。
【0100】
また、作業車両1は、水を貯留するタンク40と、水を霧状に噴射する噴射ノズル50と、タンク40内の水を噴射ノズル50に供給する供給装置60と、を備え、噴射ノズル50は、保護フレーム9に設けられて運転席3側に向けて水を噴射可能である。
この構成によれば、空調風供給構造に加えてミスト供給構造を備えた作業車両1を得ることができる。そのため、冷風とミストの両方を使用して冷却効果と防塵効果を得ることができる。これにより、キャビンを有さずともキャビンを有する作業車両と類似する快適性(清涼感)が得られる作業車両1を提供することができる。
【0101】
本発明の一実施形態に係る作業車両1は、車体2と、車体2に搭載された運転席3と、運転席3よりも上方に延びるように起立した運転者保護用の保護フレーム9と、水を貯留するタンク40と、水を霧状に噴射する噴射ノズル50と、タンク40内の水を噴射ノズル50に供給する供給装置60と、を備え、保護フレーム9の内部空間がタンク40の貯水空間を構成している。
【0102】
この構成によれば、運転者保護用の保護フレーム9を備えて運転者に霧状の水を噴射可能なミスト供給構造を備えた作業車両1において、水を貯留するタンクの設置スペースを確実に確保することができる。具体的には、保護フレーム9の内部空間がタンク40の貯水空間を構成するため、保護フレーム9の近傍に設置スペースを確保しなくてもタンク40の設置スペースを確実に確保することができる。また、キャビンを有さない(運転席3が外気に開放された状態にある)作業車両であってもミストにより優れた冷却効果を得ることができる。
【0103】
また、保護フレーム9は、運転席3の後方において起立する起立部15と、起立部15から下方に延びて車体2の後方に配置される脚部21とを有し、脚部21の内部空間がタンク40の貯水空間を構成している。
この構成によれば、タンク40を構成する脚部21が車体2の後方に配置されることにより、タンク40の設置スペースを容易に確保することができる。また、タンク40の設置によって作業車両1の重心が高くなることを防止することができる。
【0104】
また、脚部21は、車体幅方向に間隔をあけて配置された左脚部21Lと右脚部21Rとを含み、タンク40は第1タンク41と第2タンク42とを含み、第1タンク41は保護フレーム9の内部空間を貯水空間として構成され、第2タンク42は左脚部21Lと右脚部21Rとを連結している。
この構成によれば、第1タンク41と第2タンク42によって十分な貯水量を確保することができるため、長時間にわたってミストを噴射することが可能となる。また、第2タンク42が脚部21を補強する補強材として機能することによって、左脚部21Lと右脚部21Rとを連結する補強材を設けることなく保護フレーム9の剛性を向上させることができる。
【0105】
また、噴射ノズル50は、起立部15に設けられて運転席3の後方から運転席3側に向けて水を噴射可能な第1噴射ノズル51を含む。
この構成によれば、第1噴射ノズル51によって運転席3に着座した運転者OPに対して後方からミストを噴射することができる。そのため、運転者OPの首筋、後頭部、腕等を後方からミストにより冷却することができる。また、運転者OPの前方にミストカーテン(ミストバリア)を生成して防塵効果を得ることもできる。
【0106】
また、噴射ノズル50は、運転席3の前方に配置された第2噴射ノズル52を含み、第2噴射ノズル52は、運転席3の前方から運転席3側に向けて水を噴射可能である。
この構成によれば、第2噴射ノズル52によって運転席3に着座した運転者OPに対して前方からミストを噴射することができる。そのため、運転者OPの顔や胸等を前方からミストにより冷却することができる。また、運転者OPの後方にミストカーテン(ミストバリア)を生成して防塵効果を得ることもできる。
【0107】
また、作業車両1は、車体2の後方に作業装置W1を装着可能な後装着部12Aを備え、第1噴射ノズル51は、後装着部12Aに装着された作業装置W1側に向けて車体2よりも後方まで水を噴射可能である。
この構成によれば、後装着部12Aに作業装置W1を装着して作業を行う際に、作業装置W1の作業によって発生する砂塵の発生源に向けてミストを吹き付けることが可能となり、砂塵が飛散して運転者の周囲に到達することを防止できる。
【0108】
また、作業車両1は、車体2の前方に作業装置W2を装着可能な前装着部12Bを備え、第2噴射ノズル52は、前装着部12Bに装着された作業装置W2側に向けて車体2よりも前方まで水を噴射可能である。
この構成によれば、前装着部12Bに作業装置W2を装着して作業を行う際に、作業装置W2による作業によって発生する砂塵の発生源に向けてミストを吹き付けることが可能となり、砂塵が飛散して運転者の周囲に到達することを防止できる。
【0109】
また、作業車両1は、噴射ノズル50の向きを変更可能とする変更機構80を備え、噴射ノズル50は、車体幅方向において、運転席3よりも左方に配置された左ノズル51L,52Lと、運転席3よりも右方に配置された右ノズル51R,52Rとを含み、変更機構80は、噴射ノズル50の向きを、左ノズル51L,52Lから噴射された水と右ノズル51R,52Rから噴射された水とが運転席3の上方で合流する第1の向きと運転席3の上方で合流しない第2の向きとに変更可能である。
【0110】
この構成によれば、噴射ノズル50の向きを第1の向きとした場合、運転者OPに対してミストMTを集中して当てることができるため、運転者OPを効果的に冷却することが可能となる。また、噴射ノズル50の向きを第2の向きとした場合、運転者OPの近傍にミストカーテン(ミストバリア)を生成することができるため、運転者OPを砂塵等から保護することが可能となる。
【0111】
また、保護フレーム9は、タンク40、噴射ノズル50、供給装置60と共に、車体2に対して着脱可能である。
この構成によれば、既存の作業車両1の保護フレームを取り外して、当該保護フレームの代わりに、保護フレーム9を車体2に取り付けることができる。そのため、キャビン及び冷房設備を有さない作業車両1に対して冷房設備(ミスト供給構造)を後付けすることができる。
【0112】
また、作業車両1は、運転席3に着座した運転者OPを冷却する冷風を発生させるエアコンユニット30と、保護フレーム9の内部に設けられてエアコンユニット30にて発生した冷風が通る冷風通路32と、冷風通路32を通った冷風を運転席3に向けて送り出す冷風送出部33と、を備えている。
この構成によれば、ミスト供給構造に加えて冷風供給構造を備えた作業車両1を得ることができる。そのため、冷風とミストの両方を使用して冷却効果と防塵効果を得ることができる。これにより、キャビンを有さずともキャビンを有する作業車両と類似する快適性(清涼感)が得られる作業車両1を提供することができる。
【0113】
また、保護フレーム9の内部には、空調風通路(冷風通路)32を構成する第1空間38と、タンク40の貯水空間を構成する第2空間39が形成されている。
この構成によれば、保護フレーム9の内部空間を空調風(冷風)及びミストの流通のための空間として有効利用することができる。また、保護フレーム9の外部に空調風通路(冷風通路)を構成するダクトや水を貯留するタンクを設置するための広いスペースを確保する必要がない。また、保護フレーム9の上部を第1空間38、下部を第2空間39としたことにより、保護フレーム9の重心位置が低くなり、作業車両1を安定させることができる。
【0114】
また、供給装置60は、タンク40内の水を噴射ノズルへと導く通水管62を有し、通水管62は、保護フレーム9の内部に挿通されており、空調風通路(冷風通路)32は、保護フレーム9の内面と通水管62の外面との間に形成されている。
この構成によれば、保護フレーム9の内部に通水管62と空調風通路(冷風通路)32とを二重管路(通水管62が内管、空調風通路(冷風通路)32が外管)として構成することができる。そのため、保護フレーム9の内部を有効利用することができるとともに、空調風通路(冷風通路)32に冷風を流すことによって通水管62を流れる水を冷却することができる。
【0115】
また、噴射ノズル50は、空調風送出部(冷風送出部)33の近傍に配置されている。
この構成によれば、噴射ノズル50から噴射されるミストを、空調風送出部(冷風送出部)33から送り出される空調風によって拡散することができ、冷却効果を高めることができる。
また、作業車両1は、エアコンユニット30から発生したドレン水をタンク40に導く第1導水部72と、第1導水部72を通ってタンク40へと導かれる水に含まれる夾雑物を除去するフィルタ71と、を備えている。
【0116】
この構成によれば、エアコンユニット30から発生したドレン水を、フィルタ71によって夾雑物を除去した後、タンク40に貯留し、噴射ノズル50から噴射されるミストとして利用することができる。
また、作業車両1は、保護フレーム9の表面に付着した結露水をタンク40に導く第2導水部73と、第2導水部73を通ってタンク40へと導かれる水に含まれる夾雑物を除去するフィルタ71と、を備えている。
【0117】
この構成によれば、保護フレーム9の表面に付着した結露水を、フィルタ71によって夾雑物を除去した後、タンク40に貯留し、噴射ノズル50から噴射されるミストとして利用することができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。