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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-195087(P2021-195087A)
(43)【公開日】2021年12月27日
(54)【発明の名称】操舵装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20211129BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20211129BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20211129BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20211129BHJP
【FI】
   B62D6/00
   B62D5/04
   B62D113:00
   B62D119:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-105197(P2020-105197)
(22)【出願日】2020年6月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】柿本 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】内野 義友輝
(72)【発明者】
【氏名】柴田 憲治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝文
【テーマコード(参考)】
3D232
3D333
【Fターム(参考)】
3D232CC08
3D232DA03
3D232DA04
3D232DA15
3D232DA19
3D232DA63
3D232DC28
3D232DC33
3D232DC34
3D232DD17
3D232EB04
3D232EB05
3D232EB08
3D232EC37
3D232GG01
3D333CB02
3D333CB31
3D333CB46
3D333CC06
3D333CE52
(57)【要約】
【課題】ステアリングホイールと転舵輪との位置関係の補正処理に対する運転者の違和感あるいはストレスを軽減することができる操舵装置を提供する。
【解決手段】操舵装置は反力モータを制御する反力制御部を備えている。反力制御部は、車両の電源がオンされたとき、転舵輪の転舵位置に対するステアリングホイールの回転位置のずれ量Δθが第1の角度しきい値θ1よりも小さい値であるとき(S102:YES)、処理を終了する。反力制御部は、ずれ量Δθが第2の角度しきい値θ2よりも大きい値であるとき(S103:YES)、第1の同期制御を実行する(S104)。第1の同期制御を通じてずれ量Δθは零となる。反力制御部は、ずれ量Δθが第1の角度しきい値θ1以上かつ第2の角度しきい値θ2以下であるとき(S103:NO)、第2の同期制御を実行する(スS105)。第2の同期制御を通じてずれ量Δθが第1の角度しきい値θ1まで減少される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の転舵輪との間の動力伝達が分離されるとともにステアリングホイールの操作に連動して回転するステアリングシャフトと、
前記ステアリングシャフトに付与される操舵方向と反対方向のトルクである操舵反力を発生する反力モータと、
前記反力モータを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、車両の電源がオンされた場合、前記ステアリングホイールの回転位置が前記転舵輪の転舵位置に対応する正しい回転位置と異なる位置であるとき、前記正しい回転位置に対する前記ステアリングホイールの回転位置のずれ量を減少させるべく前記反力モータを通じて前記ステアリングホイールを回転させる補正処理を実行する機能を有し、
前記制御装置は、前記ずれ量が定められた許容量以上である場合には前記補正処理を実行し、前記ずれ量が前記許容量未満である場合には前記補正処理を実行しない操舵装置。
【請求項2】
前記補正処理は、前記ずれ量が零となるように前記ステアリングホイールを回転させる第1の補正処理と、前記ずれ量が前記許容量となるように前記ステアリングホイールを回転させる第2の補正処理と、を含み、
前記制御装置は、前記ずれ量が定められた限界量を超える場合には前記第1の補正処理を実行し、前記ずれ量が前記許容量以上かつ前記限界量以下である場合には前記第2の補正処理を実行する請求項1に記載の操舵装置。
【請求項3】
前記補正処理は、前記ずれ量が零となるように前記ステアリングホイールを回転させる処理である請求項1に記載の操舵装置。
【請求項4】
前記補正処理は、前記ずれ量が前記許容量となるように前記ステアリングホイールを回転させる処理である請求項1に記載の操舵装置。
【請求項5】
前記ステアリングホイールとの間の動力伝達が分離されるとともに前記転舵輪を転舵させる転舵シャフトと、
前記転舵シャフトに付与されるトルクであって前記転舵輪を転舵させるためのトルクである転舵力を発生する転舵モータと、を備え、
前記制御装置は、車両が発進する際、前記ステアリングホイールの回転位置が前記転舵輪の転舵位置に対応する回転位置と異なる位置であるとき、前記転舵輪の転舵位置が前記ステアリングホイールの回転位置に対応する位置となるように前記転舵モータを制御する請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステアリングホイールと転舵輪との間の動力伝達を分離した、いわゆるステアバイワイヤ方式の操舵装置が存在する。操舵装置は、ステアリングシャフトに付与される操舵反力の発生源である反力モータを有する反力機構と、転舵輪を転舵させる転舵力の発生源である転舵モータを有する転舵機構とを備えている。車両の走行時、操舵装置の制御装置は、反力モータに対する給電制御を通じて操舵反力を発生させるとともに、転舵モータに対する給電制御を通じて転舵輪を転舵させる。
【0003】
ステアバイワイヤ方式の操舵装置では、ステアリングホイールが転舵機構からの制約を受けない。このため、車両の電源がオフされている状態でステアリングホイールに何らかの外力が加わった際、ステアリングホイールが回転するおそれがある。このとき、転舵輪は動作しないため、ステアリングホイールと転舵輪との位置関係が所定の舵角比に応じた本来の位置関係と異なる状況が生じる。ちなみに、舵角比とは、ステアリングホイールの操舵角と転舵輪の転舵角との比をいう。
【0004】
そこで、たとえば特許文献1の操舵装置では、車両の電源がオンされたとき、ステアリングホイールの回転位置の補正処理が実行される。操舵装置の制御装置は、車両の電源がオフされたときのステアリングホイールの回転位置を記憶している。制御装置は、車両の電源がオフされたときのステアリングホイールの回転位置と車両の電源がオンされたときのステアリングホイールの回転位置との比較を通じてステアリングホイールの回転位置のずれ量を演算し、このずれ量が0(零)になるように反力モータを駆動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−321434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の操舵装置によれば、確かにステアリングホイールと転舵輪との位置関係のずれが改善される。しかし、ステアリングホイールと転舵輪との位置関係を補正するために、車両の電源がオンされるタイミングでステアリングホイールが自動的に回転する。このステアリングホイールの自動回転に対して運転者が違和感を覚えるおそれがある。また、運転者は車両の電源をオンしてからステアリングホイールの回転位置の補正処理が完了するまでの期間、車両を発進させることができない。このため、運転者がストレスを感じるおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、ステアリングホイールと転舵輪との位置関係の補正処理に対する運転者の違和感あるいはストレスを軽減することができる操舵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成し得る操舵装置は、車両の転舵輪との間の動力伝達が分離されるとともにステアリングホイールの操作に連動して回転するステアリングシャフトと、前記ステアリングシャフトに付与される操舵方向と反対方向のトルクである操舵反力を発生する反力モータと、前記反力モータを制御する制御装置と、を備えている。前記制御装置は、車両の電源がオンされた場合、前記ステアリングホイールの回転位置が前記転舵輪の転舵位置に対応する正しい回転位置と異なる位置であるとき、前記正しい回転位置に対する前記ステアリングホイールの回転位置のずれ量を減少させるべく前記反力モータを通じて前記ステアリングホイールを回転させる補正処理を実行する機能を有している。前記制御装置は、前記ずれ量が定められた許容量以上である場合には前記補正処理を実行し、前記ずれ量が前記許容量未満である場合には前記補正処理を実行しない。
【0009】
この構成によれば、車両の電源がオンされた場合、転舵輪の転舵位置に対するステアリングホイールの回転位置のずれ量が定められた許容量以上であるとき、ステアリングホイールの回転位置の補正処理が実行される。一方、車両の電源がオンされた場合、転舵輪の転舵位置に対するステアリングホイールの回転位置のずれ量が定められた許容量未満であるとき、ステアリングホイールの回転位置の補正処理が実行されない。したがって、車両の電源がオンされた場合、ステアリングホイールが自動的に回転する機会が少なくなるため、運転者に違和感を与えることを軽減することができる。また、運転者はステアリングホイールの回転位置の補正処理の完了を待つ機会が少なくなるため、運転者がストレスを感じることを軽減することができる。
【0010】
上記の操舵装置において、前記補正処理は、前記ずれ量が零となるように前記ステアリングホイールを回転させる第1の補正処理と、前記ずれ量が前記許容量となるように前記ステアリングホイールを回転させる第2の補正処理と、を含んでいてもよい。この場合、前記制御装置は、前記ずれ量が定められた限界量を超える場合には前記第1の補正処理を実行し、前記ずれ量が前記許容量以上かつ前記限界量以下である場合には前記第2の補正処理を実行するようにしてもよい。
【0011】
この構成によれば、車両の電源がオンされた場合、転舵輪の転舵位置に対するステアリングホイールの回転位置のずれ量が定められた限界量を超える場合、第1の補正処理が実行される。この第1の補正処理の実行を通じて、ステアリングホイールの回転位置が転舵輪の転舵位置に対応する位置に同期される。このため、運転者に違和感を与えることなく、車両を円滑に発進させることができる。
【0012】
また、車両の電源がオンされた場合、転舵輪の転舵位置に対するステアリングホイールの回転位置のずれ量が許容量以上かつ限界量以下の値であるとき、第2の補正処理が実行される。この第2の補正処理の実行を通じて、転舵輪の転舵位置に対するステアリングホイールの回転位置のずれ量が許容量となるようにステアリングホイールの回転位置が補正される。ステアリングホイールの回転位置を転舵輪の転舵位置に対応する位置に完全同期させない分だけ、ステアリングホイールの自動回転の開始から停止までの期間が短縮される。ステアリングホイールの回転停止を待つ時間がより短くなるため、運転者のストレスを軽減することが可能である。
【0013】
上記の操舵装置において、前記補正処理は、前記ずれ量が零となるように前記ステアリングホイールを回転させる処理であってもよい。
この構成によれば、車両の電源がオンされた場合、転舵輪の転舵位置に対するステアリングホイールの回転位置のずれ量が定められた許容量以上であるとき、補正処理の実行を通じてステアリングホイールの回転位置が転舵輪の転舵位置に対応する位置に同期される。このため、運転者に違和感を与えることなく、車両を円滑に発進させることができる。
【0014】
上記の操舵装置において、前記補正処理は、前記ずれ量が前記許容量となるように前記ステアリングホイールを回転させる処理であってもよい。
この構成によれば、車両の電源がオンされた場合、転舵輪の転舵位置に対するステアリングホイールの回転位置のずれ量が定められた許容量以上であるとき、補正処理の実行を通じてステアリングホイールの回転位置のずれ量が許容量まで減少される。このため、運転者に与える違和感を抑えつつ、車両を円滑に発進させることができる。
【0015】
上記の操舵装置において、前記ステアリングホイールとの間の動力伝達が分離されるとともに前記転舵輪を転舵させる転舵シャフトと、前記転舵シャフトに付与されるトルクであって前記転舵輪を転舵させるためのトルクである転舵力を発生する転舵モータと、を備えていてもよい。この場合、前記制御装置は、車両が発進する際、前記ステアリングホイールの回転位置が前記転舵輪の転舵位置に対応する回転位置と異なる位置であるとき、前記転舵輪の転舵位置が前記ステアリングホイールの回転位置に対応する位置となるように前記転舵モータを制御するようにしてもよい。
【0016】
この構成によれば、車両が発進する際、ステアリングホイールの回転位置が転舵輪の転舵位置に同期していないとき、転舵輪の転舵位置がステアリングホイールの回転位置に対応する位置に補正される。このため、運転者に与える違和感を抑制しつつ、車両を発進させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の操舵装置によれば、ステアリングホイールと転舵輪との位置関係の補正処理に対する運転者の違和感あるいはストレスを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】操舵装置の一実施の形態を示す構成図。
図2】一実施の形態の反力制御部による同期制御の処理手順を示すフローチャート。
図3】(a),(b)は、一実施の形態における車両の電源がオンされた以降のステアリングホイールの回転位置の変化の第1の例を示す正面図。
図4】(a),(b)は、一実施の形態における車両の電源がオンされた以降のステアリングホイールの回転位置の変化の第2の例を示す正面図。
図5】(a),(b),(c)は、一実施の形態における車両の電源がオンされた以降のステアリングホイールの回転位置の変化の第3の例を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、操舵装置を具体化した一実施の形態を説明する。
図1に示すように、車両の操舵装置10は、車両のステアリングホイール11に操舵反力を付与する反力ユニット20、および車両の転舵輪12,12を転舵させる転舵ユニット30を有している。操舵反力とは、運転者によるステアリングホイール11の操作方向と反対方向へ向けて作用するトルクをいう。操舵反力をステアリングホイール11に付与することにより、運転者に適度な手応え感を与えることが可能である。
【0020】
反力ユニット20は、ステアリングホイール11が連結されたステアリングシャフト21、反力モータ22、減速機構23、回転角センサ24、トルクセンサ25、および反力制御部27を有している。
【0021】
反力モータ22は、操舵反力の発生源である。反力モータ22としては、たとえば三相のブラシレスモータが採用される。反力モータ22は、減速機構23を介して、ステアリングシャフト21に連結されている。反力モータ22が発生するトルクは、操舵反力としてステアリングシャフト21に付与される。
【0022】
回転角センサ24は反力モータ22に設けられている。回転角センサ24は反力モータ22の回転角θを検出する。
トルクセンサ25は、ステアリングシャフト21における減速機構23とステアリングホイール11との間の部分に設けられている。トルクセンサ25は、ステアリングホイール11の回転操作を通じてステアリングシャフト21に加わる操舵トルクTを検出する。
【0023】
反力制御部27は、回転角センサ24を通じて検出される反力モータ22の回転角θに基づきステアリングシャフト21の回転角である操舵角θを演算する。反力制御部27は、ステアリングホイール11の操舵中立位置に対応する反力モータ22の回転角θであるモータ中点を基準として反力モータ22の回転数をカウントしている。反力制御部27は、モータ中点を原点として回転角θを積算した角度である積算角を演算し、この演算される積算角に減速機構23の減速比に基づく換算係数を乗算することにより、ステアリングホイール11の操舵角θを演算する。ちなみに、モータ中点は舵角中点情報として反力制御部27に記憶されている。
【0024】
反力制御部27は、反力モータ22の駆動制御を通じて操舵トルクTに応じた操舵反力を発生させる反力制御を実行する。反力制御部27は、トルクセンサ25を通じて検出される操舵トルクTに基づき目標操舵反力を演算し、この演算される目標操舵反力および操舵トルクTに基づきステアリングホイール11の目標操舵角を演算する。反力制御部27は、反力モータ22の回転角θに基づき演算される操舵角θと目標操舵角との差を求め、当該差を無くすように反力モータ22に対する給電を制御する。反力制御部27は、回転角センサ24を通じて検出される反力モータ22の回転角θを使用して反力モータ22をベクトル制御する。
【0025】
転舵ユニット30は、転舵シャフト31、転舵モータ32、減速機構33、ピニオンシャフト34、回転角センサ35、および転舵制御部36を有している。
転舵シャフト31は、車幅方向(図1中の左右方向)に沿って延びている。転舵シャフト31の両端には、それぞれタイロッド13,13を介して左右の転舵輪12,12が連結されている。
【0026】
転舵モータ32は転舵力の発生源である。転舵モータ32としては、たとえば三相のブラシレスモータが採用される。転舵モータ32は、減速機構33を介してピニオンシャフト34に連結されている。ピニオンシャフト34のピニオン歯34aは、転舵シャフト31のラック歯31aに噛み合わされている。転舵モータ32が発生するトルクは、転舵力としてピニオンシャフト34を介して転舵シャフト31に付与される。転舵モータ32の回転に応じて、転舵シャフト31は車幅方向(図1中の左右方向)に沿って移動する。転舵シャフト31が移動することにより転舵輪12,12の転舵角θが変更される。
【0027】
回転角センサ35は転舵モータ32に設けられている。回転角センサ35は転舵モータ32の回転角θを検出する。
転舵制御部36は、転舵モータ32の駆動制御を通じて転舵輪12,12を操舵状態に応じて転舵させる転舵制御を実行する。転舵制御部36は、回転角センサ35を通じて検出される転舵モータ32の回転角θに基づきピニオンシャフト34の回転角θを演算する。また、転舵制御部36は、反力制御部27により演算される目標操舵角あるいは操舵角θを使用してピニオンシャフト34の目標回転角を演算する。ただし、ピニオンシャフト34の目標回転角は、所定の舵角比を実現する観点に基づき演算される。転舵制御部36は、ピニオンシャフト34の目標回転角と実際の回転角θとの差を求め、当該差を無くすように転舵モータ32に対する給電を制御する。転舵制御部36は、回転角センサ35を通じて検出される転舵モータ32の回転角θを使用して転舵モータ32をベクトル制御する。
【0028】
ここで、ステアバイワイヤ方式の操舵装置10においては、ステアリングホイール11が転舵ユニット30からの制約を受けないため、つぎのような事象が発生するおそれがある。
【0029】
すなわち、車両の電源がオンされているとき、ステアリングホイール11と転舵輪12,12とは同期する。このため、ステアリングホイール11と転舵輪12,12との位置関係は、所定の舵角比に応じた位置関係に維持される。ところが、車両の電源がオフされている状態でステアリングホイール11に何らかの外力が加わった際、ステアリングホイール11が回転するおそれがある。このとき、転舵シャフト31は動作しないため、ステアリングホイール11と転舵輪12,12との位置関係が所定の舵角比に応じた本来の位置関係と異なる状況が生じることが懸念される。
【0030】
このため、操舵装置10は、車両の電源が再びオンされたとき、初期動作としてステアリングホイール11の回転位置を転舵輪12,12の転舵位置に同期させる同期制御を実行する。操舵装置10は、同期制御の一例としてつぎのような処理を実行することが考えられる。
【0031】
たとえば車両の電源がオフされている期間にステアリングホイール11が反時計方向(正方向)へ向けて所定の角度だけ回転した場合、車両の電源が再びオンされたとき、反力モータ22の駆動制御を通じてステアリングホイール11を時計方向(負方向)へ向けて所定の角度だけ回転させる。これにより、ステアリングホイール11と転舵輪12,12との位置関係が所定の舵角比に応じた本来の位置関係に戻る。
【0032】
図1に示すように、反力制御部27は、記憶装置27aを有している。反力制御部27は、車両の電源がオンからオフへ切り替えられる際、その直前に演算される操舵角θを基準操舵角として記憶装置27aに格納する。この基準操舵角は、車両の電源がオフされている期間におけるステアリングホイール11の回転の有無を判定する際の基準となる。
【0033】
反力制御部27は、車両の電源がオフからオンへ切り替えられた場合、記憶装置27aに格納された基準操舵角と、車両の電源がオンされた直後に演算される操舵角θとの比較を通じて、ステアリングホイール11の位置調節の要否を判定する。
【0034】
反力制御部27は、車両の電源がオフされる直前の操舵角θである基準操舵角と車両の電源が再びオンされた直後の操舵角θとが互いに一致しているとき、ステアリングホイール11の位置調節は不要である旨判定する。車両の電源がオフされてから車両の電源が再びオンされるまでの期間、操舵角θが変化していないため、ステアリングホイール11が回転していないことが明らかである。反力制御部27は、操舵トルクTに応じて操舵反力を発生させる通常の反力制御を実行開始する。
【0035】
反力制御部27は、車両の電源がオフされる直前の操舵角θである基準操舵角と車両の電源が再びオンされた直後の操舵角θとが互いに一致していないとき、ステアリングホイール11の位置調節を行う必要がある旨判定して、ステアリングホイール11の位置調節を実行する。反力制御部27は、たとえば基準操舵角と車両の電源がオンされた直後の操舵角θとの差を求め、当該差を無くすように反力モータ22に対する給電を制御する。具体的には、反力制御部27は、基準操舵角を操舵角θの目標値である目標操舵角として設定し、この設定される目標操舵角に操舵角θを追従させるべく操舵角θのフィードバック制御を実行する。目標操舵角と現在の操舵角θとが互いに一致すれば、ステアリングホイール11の位置調節が完了となる。
【0036】
ちなみに、反力制御部27は、基準操舵角として、つぎの値を使用してもよい。すなわち、反力制御部27は、車両の電源がオフからオンへ切り替えられた直後のピニオンシャフト34の回転角θを転舵制御部36から取得し、この取得されるピニオンシャフト34の回転角θに対応する操舵角θを舵角比に基づき演算する。反力制御部27は、この演算されるピニオンシャフト34の回転角θに対応する操舵角θを基準操舵角として使用する。このようにしても、ステアリングホイール11の回転位置を転舵輪12,12の転舵位置に応じた位置に補正することができる。
【0037】
しかし、ステアリングホイール11と転舵輪12,12との位置関係を補正するために、車両の電源がオンされるタイミングでステアリングホイール11が自動的に回転する。このステアリングホイールの自動回転に対して運転者が違和感を覚えるおそれがある。また、運転者は車両の電源をオンしてからステアリングホイールの回転位置の補正処理が完了するまでの期間、車両を発進させることができない。このため、運転者がストレスを感じるおそれがある。
【0038】
そこで、本実施の形態では、ステアリングホイールと転舵輪との位置関係の補正処理に対する運転者の違和感あるいはストレスを軽減する観点に基づき、車両の電源がオフからオンへ切り替えられたときの初期動作として、つぎのような処理を実行する。
【0039】
図2のフローチャートに示すように、反力制御部27は、まず転舵輪12,12の転舵位置に対するステアリングホイール11の回転位置のずれ量Δθを演算する(ステップS101)。ずれ量Δθは、ステアリングホイール11の回転位置を転舵輪12,12の転舵位置に応じた回転位置へ補正するために必要とされるステアリングホイール11の回転量でもある。反力制御部27は、たとえば次式(A)を使用してずれ量Δθを演算する。
【0040】
Δθ=|θs0−θ| …(A)
ただし、「θs0」は、前回、車両の電源がオフされる直前に記憶装置27aに格納された基準操舵角である。「θ」は、車両の電源がオンされた直後の操舵角である。操舵角θの符号は、たとえばステアリングホイール11の操舵中立位置(θ=0°)を基準とする右操舵方向が負、左操舵方向が正である。
【0041】
つぎに、反力制御部27は、ずれ量Δθが第1の角度しきい値θ1よりも小さい値かどうかを判定する(ステップS102)。第1の角度しきい値θ1は、たとえば車両の発進時に転舵輪12,12の転舵位置をステアリングホイール11の回転位置に合わせるかたちで補正する場合、運転者に違和感を与えない程度の角度を基準として設定される。
【0042】
反力制御部27は、ずれ量Δθが第1の角度しきい値θ1よりも小さい値であるとき(ステップS102でYES)、処理を終了する。この場合、ステアリングホイール11が自動回転することはない。
【0043】
反力制御部27は、ずれ量Δθが第1の角度しきい値θ1よりも小さい値ではないとき(ステップS102でNO)、ずれ量Δθが第2の角度しきい値θ2よりも大きい値かどうかを判定する(ステップS103)。第2の角度しきい値θ2は、たとえば車両の発進時に転舵輪12,12の転舵位置をステアリングホイール11の回転位置に合わせるかたちで補正する場合、運転者に違和感を与えるおそれがある程度の角度を基準として設定される。
【0044】
反力制御部27は、ずれ量Δθが第2の角度しきい値θ2よりも大きい値であるとき(ステップS103でYES)、第1の同期制御を実行し(ステップS104)、処理を終了する。
第1の同期制御は、ステアリングホイール11の回転位置を転舵輪12,12の転舵位置に対応する位置に補正するための制御である。反力制御部27は、先のステップS101で演算されたずれ量Δθを「0」にすべく反力モータ22に対する給電を制御する。より具体的には、反力制御部27は、基準操舵角θs0を目標操舵角として設定し、この設定される目標操舵角に操舵角θを追従させるべく操舵角θのフィードバック制御を実行する。操舵角θが目標操舵角に一致すれば、第1の同期制御の実行完了となる。
【0045】
反力制御部27は、ずれ量Δθが第2の角度しきい値θ2よりも大きい値ではないとき(ステップS103でNO)、第2の同期制御を実行し(ステップS105)、処理を終了する。
第2の同期制御は、ずれ量Δθを「0」にするのではなく、ずれ量Δθをより小さい値に減少させるための制御である。第2の同期制御の実行を通じて、ステアリングホイール11の回転位置は、車両の発進時に転舵輪12,12の転舵位置をステアリングホイール11の回転位置に合わせるかたちで補正しても運転者に違和感を与えない程度の位置に補正される。反力制御部27は、たとえば操舵角θが第1の角度しきい値θ1となるようにステアリングホイール11の回転位置を補正する。反力制御部27は、第1の角度しきい値θ1を目標操舵角として設定し、この設定される目標操舵角に操舵角θを追従させるべく操舵角θのフィードバック制御を実行する。操舵角θが目標操舵角に一致すれば、第2の同期制御の実行完了となる。
【0046】
なお、転舵制御部36は、反力制御部27によるステアリングホイール11の回転位置の調節処理が完了した直後、反力制御部27により演算される操舵角θが現在のピニオンシャフト34の回転角θに対応していないときであれ、ピニオンシャフト34の回転角θを現在の回転角θに維持する。そして転舵制御部36は、たとえば車両が発進する際、ピニオンシャフト34の回転角θを操舵角θに対応する角度に補正すべく転舵モータ32への給電を制御する。転舵制御部36は、車速あるいは操舵トルクTに基づき車両が発進したかどうかを判定する。
【0047】
ちなみに、本実施の形態において、第1の角度しきい値θ1は、ずれ量Δθに対する許容量に相当する。第2の角度しきい値θ2は、ずれ量Δθに対する限界量に相当する。また、第1の同期制御は、ずれ量Δθが零になるようにステアリングホイール11を回転させる第1の補正処理に相当する。第2の同期制御は、ずれ量Δθが第1の角度しきい値(許容量)になるようにステアリングホイール11を回転させる第2の補正処理に相当する。
【0048】
つぎに、車両の電源がオンされてからステアリングホイール11の回転位置と転舵輪12,12の転舵位置とが同期するまでの期間におけるステアリングホイール11および転舵輪12,12の挙動を3つの状況に分けて説明する。
【0049】
ただし、前提として、車両の電源がオンされた直後、転舵輪12,12は車両の直進状態に対応する転舵中立位置(転舵角θ=0°)に位置している。ステアリングホイール11は、本来、車両の直進状態に対応する操舵中立位置(操舵角θ=0°)に位置すべきである。また、操舵角θと転舵角θとの比である舵角比は「1:1」、すなわち舵角比の値は「1」である。
【0050】
まず、第1の状況を説明する。
図3(a)に示すように、車両の電源がオンされた直後、ステアリングホイール11は転舵輪12,12の転舵位置に対して時計方向(負方向)へ向けて第1の角度しきい値θ1よりも小さい値を有する角度αだけ回転した位置に保持されている。すなわち、転舵輪12,12の転舵位置に対するステアリングホイール11の回転位置のずれ量Δθは角度αである。この場合、ステアリングホイール11の第1の同期制御および第2の同期制御はいずれも実行されず、操舵装置10の状態は通常の反力制御および転舵制御が実行可能な状態へ遷移する。そして図3(b)に示すように、たとえば車両が発進する際、転舵輪12,12の転舵位置がステアリングホイール11の回転位置に同期される。ここでは、舵角比の値が「1」であるため、転舵輪12,12が角度αだけ時計方向へ向けて転舵される。
【0051】
つぎに、第2の状況を説明する。
図4(a)に示すように、車両の電源がオンされた直後、ステアリングホイール11は転舵輪12,12の転舵位置に対して時計方向(負方向)へ向けて第2の角度しきい値θ2よりも大きい値を有する角度βだけ回転した位置に保持されている。すなわち、転舵輪12,12の転舵位置に対するステアリングホイール11の回転位置のずれ量Δθは角度βである。この場合、ステアリングホイール11の第1の同期制御が実行される。図4(b)に示すように、第1の同期制御の実行を通じて、ステアリングホイール11の回転位置が転舵輪12,12の転舵位置に同期される。ここでは、舵角比の値が「1」であるため、ステアリングホイール11がずれ量Δθである角度βだけ反時計方向へ向けて回転される。第1の同期制御の実行が完了した後、操舵装置10の状態は通常の反力制御および転舵制御が実行可能な状態へ遷移する。
【0052】
最後に、第3の状況を説明する。
図5(a)に示すように、車両の電源がオンされた直後、ステアリングホイール11は転舵輪12,12の転舵位置に対して時計方向(負方向)へ向けて第1の角度しきい値θ1以上かつ第2の角度しきい値θ2以下の値を有する角度γだけ回転した位置に保持されている。すなわち、転舵輪12,12の転舵位置に対するステアリングホイール11の回転位置のずれ量Δθは角度γである。この場合、ステアリングホイール11の第2の同期制御が実行される。図5(b)に示すように、ステアリングホイール11は第1の角度しきい値θ1と角度γとの差の絶対値の分だけ反時計方向(正方向)へ向けて回転される。この後、操舵装置10の状態は通常の反力制御および転舵制御が実行可能な状態へ遷移する。そして図5(c)に示すように、たとえば車両が発進する際、転舵輪12,12の転舵位置がステアリングホイール11の回転位置に同期される。ここでは、舵角比の値が「1」であるため、転舵輪12,12がずれ量Δθである第1の角度しきい値θ1と同じ角度だけ時計方向へ向けて転舵される。
【0053】
<実施の形態の効果>
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)車両の電源がオンされた場合、転舵輪12,12の転舵位置に対するステアリングホイール11の回転位置のずれ量Δθが第1の角度しきい値θ1よりも小さい値であるとき、同期制御が実行されない。車両の電源がオンされた場合、ずれ量Δθが第1の角度しきい値θ1よりも小さい値であるときの分だけ全体としてステアリングホイール11が自動的に回転する機会が少なくなる。このため、運転者に違和感を与えることを軽減することができる。また、運転者はステアリングホイール11の位置調節の完了を待つ機会が少なくなるため、運転者がストレスを感じることを軽減することができる。
【0054】
(2)車両の電源がオンされた場合、ずれ量Δθが第2の角度しきい値θ2よりも大きい値であるとき、第1の同期制御が実行される。この第1の同期制御の実行を通じて、ステアリングホイール11の回転位置が転舵輪12,12の転舵位置に対応する位置に完全同期される。このため、たとえば車両を発進させる際、転舵輪12,12の転舵位置がステアリングホイール11の回転位置に対応する位置へ向けて急激に変化することがない。したがって、運転者は違和感を覚えることなく、円滑に車両を発進させることができる。
【0055】
(3)車両の電源がオンされた場合、ずれ量Δθが第1の角度しきい値θ1以上かつ第2の角度しきい値θ2以下の値であるとき、第2の同期制御が実行される。この第2の同期制御の実行を通じて、操舵角θが第1の角度しきい値θ1となるようにステアリングホイール11の回転位置が調節される。ステアリングホイール11の回転位置が転舵輪12,12の転舵位置に対応する位置に完全同期させない分だけ、ステアリングホイール11の自動回転の開始から停止までの期間が短縮される。ステアリングホイール11の回転停止を待つ時間がより短くなるため、運転者のストレスを軽減することが可能である。
【0056】
(4)上記(1),(3)欄に記載されるように、車両の電源がオンされた場合、ずれ量Δθが第1の角度しきい値θ1未満であるときなど、ステアリングホイール11の回転位置を転舵輪12,12の転舵位置に完全同期させないとき、車両の発進時に転舵輪12,12の転舵位置がステアリングホイール11の回転位置に対応する位置へ変更される。ここで、第1の角度しきい値θ1は、車両の発進時に転舵輪12,12の転舵位置をステアリングホイール11の回転位置に合わせるかたちで補正する場合、運転者に違和感を与えない程度の角度を基準として設定される。このため、車両を発進させる際、運転者に与える違和感を抑制しつつ、転舵輪12,12の転舵位置をステアリングホイール11の回転位置に対応する位置へ変更することが可能である。
【0057】
<他の実施の形態>
なお、本実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
図1に二点鎖線で示すように、たとえば車室内に報知装置28が設けられる場合、反力制御部27は、報知装置28を通じて、ステアリングホイール11の位置調節の実行開始および実行完了を報知するようにしてもよい。報知装置28による報知動作としては、たとえば文字によるメッセージを表示させたり、音声によるメッセージを発したりすることが挙げられる。このようにすれば、運転者は、ステアリングホイール11が自動回転すること、および自動回転しているステアリングホイール11が自動停止することを認識することができるため、運転者に与える違和感が軽減される。
【0058】
・本実施の形態では、反力モータ22の回転角θに基づき演算される操舵角θを使用したが、操舵装置10として操舵角センサを有する構成が採用される場合、この操舵角センサを通じて検出される操舵角θを使用してもよい。
【0059】
・本実施の形態において、舵角比は製品仕様などに応じて適宜の値に設定される。舵角比は、たとえば「θ:θ=1:1」でもよいし「θ:θ=1:3」でもよい。たとえば舵角比が「θ:θ=1:3」の場合、操舵角θが10°だけずれているとき、転舵角θにして30°だけずれていることになる。このため、操舵角θと転舵角θとを正しく同期することがより望まれる。
【0060】
・本実施の形態では、車両の電源がオンされた場合、ずれ量Δθが第1の角度しきい値θ1以上かつ第2の角度しきい値θ2以下の値であるとき、第2の同期制御を実行するようにしたが、第1の同期制御を実行するようにしてもよい。この場合であれ、少なくとも上記(2)欄に記載の効果と同様の効果を得ることができる。
【0061】
・本実施の形態では、車両の電源がオンされた場合、ずれ量Δθが第2の角度しきい値θ2を超える値であるとき、第1の同期制御を実行するようにしたが、第2の同期制御を実行するようにしてもよい。この場合であれ、少なくとも上記(3),(4)欄に記載の効果を得ることができる。
【0062】
・本実施の形態では、車両の電源がオンされた場合、ずれ量Δθが第1の角度しきい値θ1未満であるときなど、ステアリングホイール11の回転位置を転舵輪12,12の転舵位置に完全同期させないとき、車両の発進時に転舵輪12,12の転舵位置をステアリングホイール11の回転位置に同期させるようにしたが、つぎのようにしてもよい。すなわち、第1の角度しきい値θ1が車両の走行を開始する際に運転者が違和感を覚えない程度のより小さい値に設定される場合、転舵制御部36は車両の発進時に転舵輪12,12の転舵位置をステアリングホイール11の回転位置に同期させる処理を行わないようにしてもよい。
【0063】
・本実施の形態において、車両の電源は、たとえばアクセサリ電源(ACC電源)あるいはイグニッション電源(IG電源)を含んでいてもよい。
・反力制御部27および転舵制御部36を単一の制御装置として構成してもよい。
【0064】
・本実施の形態では、車両の操舵装置10として、ステアリングシャフト21と転舵輪12との間の動力伝達が分離されたいわゆるリンクレス構造を採用した例を挙げたが、クラッチによりステアリングシャフト21と転舵輪12との間の動力伝達を分離可能とした構造を採用してもよい。クラッチが切断されるとき、ステアリングホイール11と転舵輪12との間の動力伝達が切断される。クラッチが接続されるとき、ステアリングホイール11と転舵輪12との間の動力伝達が連結される。
【符号の説明】
【0065】
10…操舵装置
11…ステアリングホイール
12…転舵輪
21…ステアリングシャフト
22…反力モータ
27…制御装置を構成する反力制御部
31…転舵シャフト
36…制御装置を構成する転舵制御部
図1
図2
図3
図4
図5