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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-195096(P2021-195096A)
(43)【公開日】2021年12月27日
(54)【発明の名称】転舵制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20211129BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20211129BHJP
   B62D 5/06 20060101ALI20211129BHJP
   B60W 30/045 20120101ALI20211129BHJP
   B60W 40/114 20120101ALI20211129BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20211129BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20211129BHJP
   B62D 103/00 20060101ALN20211129BHJP
【FI】
   B62D6/00
   B62D5/04
   B62D5/06
   B60W30/045
   B60W40/114
   B62D113:00
   B62D119:00
   B62D103:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-105340(P2020-105340)
(22)【出願日】2020年6月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正隆
(72)【発明者】
【氏名】岡田 光太郎
【テーマコード(参考)】
3D232
3D241
3D333
【Fターム(参考)】
3D232CC12
3D232CC20
3D232DA03
3D232DA04
3D232DA15
3D232DA25
3D232DA63
3D232DC07
3D232DC22
3D232DC33
3D232DC34
3D232DD17
3D232EB04
3D232EB08
3D232EB16
3D232FF01
3D232GG01
3D241BA17
3D241BA51
3D241BB27
3D241BC04
3D241CC08
3D241CC17
3D241CD11
3D241DA49Z
3D241DA52Z
3D241DA55Z
3D241DA58Z
3D241DB32Z
3D333CB02
3D333CB13
3D333CE55
(57)【要約】
【課題】操舵の応答性を向上させることができる車両用操舵装置を提供する。
【解決手段】転舵制御装置は、左右の転舵輪21,22を転舵させるための転舵機構8と、左右の転舵輪に速度差を発生させる転舵輪速度差発生装置30と、転舵輪速度差発生装置を制御する制御部103とを備え、制御部103は、操舵状態が切り始め状態および切り返し状態のいずれかである場合に、あそびを詰めるためのあそび補償制御を実行するように構成されており、あそび補償制御では、転舵輪速度差発生装置によって、操舵予定方向と反対方向のトルクが発生するように、左右の転舵輪に車輪速度差が発生される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の転舵輪を転舵させるための転舵機構と、
前記左右の転舵輪に速度差を発生させる転舵輪速度差発生装置と、
前記転舵輪速度差発生装置を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、操舵状態が切り始め状態および切り返し状態のいずれかである場合に、あそびを詰めるためのあそび補償制御を実行するように構成されており、
前記あそび補償制御では、前記転舵輪速度差発生装置によって、操舵予定方向と反対方向のトルクが発生するように、前記左右の転舵輪に車輪速度差が発生される、転舵制御装置。
【請求項2】
前記転舵輪速度差発生装置は、前記左右の転舵輪に制動力の差を発生させることにより、前記左右の転舵輪に車輪速度差を発生させるものである、請求項1に記載の転舵制御装置。
【請求項3】
左右の非転舵輪に速度差を発生させる非転舵輪速度差発生装置を備え、
前記制御部は、前記あそび補償制御によって生じるヨーモーメントを低減するように、前記非転舵輪速度差発生装置を制御する、請求項1または2に記載の転舵制御装置。
【請求項4】
前記非転舵輪速度差発生装置は、前記左右の非転舵輪に制動力の差を発生させることにより、前記左右の非転舵輪に速度差を発生させるものである、請求項3に記載の転舵制御装置。
【請求項5】
前記転舵機構に転舵力を与えるためのアクチュエータと、
実操舵角が自動操舵のための目標操舵角に等しくなるように、前記アクチュエータを制御するアクチュエータ制御部とを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の転舵制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、転舵制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トラック、バス等の大型車両では、左右の車輪がアクスルビームで連結されているリジットアクスルサスペンションが広く用いられている。リジットアクスルサスペンションを有する車両では、ボールねじ式油圧パワーステアリング機構を備えた操舵装置が広く採用されている。このような大型車両の操舵装置は、ステアリングホイール、ステアリングコラム、ステアリングギアボックス、ピットマンアーム、ドラッグリング、ナックルアーム、タイロッド等を備えており、インデペンデントサスペンションが用いられている乗用車の操舵装置に比べて複雑である。また、大型車両の操舵装置は乗用車の操舵装置に比べて、ステアリングシャフト等の長さが長い。
【0003】
特許文献1には、前述のような大型車両の操舵装置のステアリングコラムに電動モータを追加し、この電動モータを使用して、目標軌道に沿って自動走行させる技術が開示されている。このような自動走行制御は、例えば、次のようにして行われる。すなわち、まず、目標軌跡と自車両位置との関係から、転舵輪の目標転舵角を算出し、その値にステアリングギア比(転舵角に対する操舵角の比)を乗算して目標操舵角を算出する。そして、目標操舵角と実操舵角との偏差が零になるように、電動モータに対して角度フィードバック制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-164622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、大型車両の操舵装置は、乗用車の操舵装置よりも複雑であり、ステアリングシャフトに生じる捻じれや撓みが比較的大きいため、ステアリングホイールから転舵輪までの間のあそび(allowance)が大きい。このため、操舵の応答性が悪いという問題がある。
したがって、大型車両の操舵装置に対して例えば前述のような自動走行制御を行った場合には、目標操舵角を与えても、あそびにより目標操舵角と転舵輪の転舵角との間にずれが生じるため、軌跡追従性が悪くなる。
【0006】
なお、乗用車においても、前述の大型車両ほどではないが、ステアリングホイールから転舵輪までの間にあそびが存在するので、操舵の応答性が悪いという問題がある。
この発明の目的は、操舵の応答性を向上させることができる車両用操舵装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一実施形態は、左右の転舵輪を転舵させるための転舵機構と、前記左右の転舵輪に速度差を発生させる転舵輪速度差発生装置と、前記転舵輪速度差発生装置を制御する制御部とを備え、前記制御部は、操舵状態が切り始め状態および切り返し状態のいずれかである場合に、あそびを詰めるためのあそび補償制御を実行するように構成されており、前記あそび補償制御では、前記転舵輪速度差発生装置によって、操舵予定方向と反対方向のトルクが発生するように、前記左右の転舵輪に車輪速度差が発生される、転舵制御装置を提供する。
【0008】
この構成では、操舵の応答性を向上させることができるようになる。
この発明の一実施形態では、前記転舵輪速度差発生装置は、前記左右の転舵輪に制動力の差を発生させることにより、前記左右の転舵輪に車輪速度差を発生させるものである。
この発明の一実施形態では、左右の非転舵輪に速度差を発生させる非転舵輪速度差発生装置を備え、前記制御部は、前記あそび補償制御によって生じるヨーモーメントを低減するように、前記非転舵輪速度差発生装置を制御する。
【0009】
この発明の一実施形態では、前記非転舵輪速度差発生装置は、前記左右の非転舵輪に制動力の差を発生させることにより、前記左右の非転舵輪に速度差を発生させるものである。
この発明の一実施形態では、前記転舵機構に転舵力を与えるためのアクチュエータと、実操舵角が自動操舵のための目標操舵角に等しくなるように、前記アクチュエータを制御するアクチュエータ制御部とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の転舵制御装置が適用されたパワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、操舵制御および制動制御を行うための電気的構成を示すブロック図である。
図3A図3Aは、制動用ECUの動作を説明するためのフローチャートの一部である。
図3B図3Bは、制動用ECUの動作を説明するためのフローチャートの一部である。
図4図4Aは、左右の転舵輪に制動力差を与えた場合にヨーモーメントが発生することを説明するための模式図であり、図4Bは、左右の非転舵輪に制動力差を与えた場合にヨーモーメントが発生することを説明するための模式図であり、図4Cは、左右の転舵輪に制動力差を与えるとともに左右の非転舵輪に制動力差を与えることにより、左右の転舵輪の制動力差に基づいて発生するヨーモーメントを低減できることを説明するための模式図である。
図5図5は、自動操舵によって車両が減速しながら幅寄せする場合の目標制動圧PTFL、PTFR、PTRLおよびPTRRの変化例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の転舵制御装置が適用されたパワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。図1において破線の左側は、車両を側方から見た側面図であり、破線の右側は、車両を上方から見た平面図である。
このパワーステアリング装置1は、ステアリングホイール2、ステアリングシャフト3を有するステアリングコラム4、ベベルギア部5、動力伝達軸6、ボールねじ式油圧パワーステアリング機構(以下、「油圧パワーステアリング機構7」という。)、転舵機構8、電動モータ9等を備えている。電動モータ9は、本発明の「アクチュエータ」の一例である。
【0012】
ステアリングホイール2は、ステアリングシャフト3を介してベベルギア部5の入力軸に連結されている。ベベルギア部5の出力軸は、動力伝達軸6を介して油圧パワーステアリング機構7の入力軸に連結されている。
転舵機構8は、ピットマンアーム11、ドラッグリンク12、ナックルアーム13、キングピン軸14,15、タイロッドアーム16およびタイロッド17を備える。
【0013】
ピットマンアーム11の一端は、油圧パワーステアリング機構7のセクターシャフトに連結されている。ピットマンアーム11の他端には、ドラッグリンク12の一端が連結されている。ドラッグリンク12の他端は、右転舵輪(右前輪)22のナックルアーム13の一端に連結されている。ナックルアーム13の他端は、右転舵輪22のキングピン軸14に連結されている。右転舵輪22のキングピン軸14と左転舵輪(左前輪)21のキングピン軸15とは、タイロッドアーム16およびタイロッド17によって連結されている。図の破線18は、アクスルビームである。
【0014】
電動モータ9は、ステアリングコラム4に設けられており、図示しない減速機を介してステアリングシャフト3に連結されている。減速機は、ウォームギヤと、このウォームギヤと噛み合うウォームホイールとを含むウォームギヤ機構からなる。以下において、減速機の減速比をiで表す。減速比iは、ウォームホイールの回転角であるウォームホイール角に対するウォームギヤの回転角であるウォームギヤ角の比として定義される。電動モータ9のロータ回転角θは、回転角センサ25によって検出される。
【0015】
ステアリングコラム4には、操舵トルクTを検出するためのトルクセンサ26が設けられている。この実施形態では、トルクセンサ26によって検出される操舵トルクTは、左方向への操舵のためのトルクが正の値として検出され、右方向への操舵のためのトルクが負の値として検出され、その絶対値が大きいほど操舵トルクTの大きさが大きくなる。
【0016】
また、パワーステアリング装置1は、転舵輪21,22の転舵角θを検出するための転舵角センサ27(図2参照)を備えている。この実施形態では、転舵角センサ27は、転舵輪21,22の中立位置(転舵中立位置)から左方向への旋回量を正の値として出力し、転舵中立位置から右方向への旋回量を負の値として出力する。
ステアリングホイール2が回転すると、この回転トルクが、ステアリングシャフト3、ベベルギア部5、動力伝達軸6およびボールねじ式油圧パワーステアリング機構7に伝達されて、ピットマンアーム11が揺動される。このピットマンアーム11の揺動により、ドラッグリンク12が前後方向に移動され、ナックルアーム13が揺動され、転舵輪21,22が転舵される。
【0017】
電動モータ9が回転されると、この回転トルクがステアリングシャフト3に伝達されるので、前述と同様な動力伝達経路を介して転舵輪21,22が転舵される。すなわち、電動モータ9によってステアリングシャフト3を回転させることにより、転舵輪21,22の転舵が可能となる。
図2は、操舵制御および制動制御を行うための電気的構成を示すブロック図である。
【0018】
車両には、自動操舵用ECU101、モータ制御用ECU102および制動用ECU103が設けられている。
自動操舵用ECU101は、操舵モードが自動操舵モードであるか手動操舵モードであるかを示すモード信号Smodeを出力する。また、自動操舵用ECU101は、自動操舵モードに、自動操舵のための目標操舵角θautoおよび自動操舵のための減速度aを生成する。
【0019】
目標操舵角θautoは、自動操舵モード時における操舵角θの目標値である。この実施形態では、操舵角θは、ステアリングホイール2の中立位置(操舵中立位置)からのステアリングシャフト3の正逆両方向の回転量(回転角)であり、操舵中立位置から左方向への回転量が正の値で表され、操舵中立位置から右方向への回転量が負の値で表される。操舵角θは、回転角センサ25によって検出されるロータ回転角θから求めることができる。
【0020】
モード信号Smodeおよび目標操舵角θautoは、モータ制御用ECU102および制動用ECU103に与えられる。減速度aは、制動用ECU103に与えられる。
モータ制御用ECU102は、自動操舵モード時に、目標操舵角θautoおよび回転角センサ25の出力信号に基づいて電動モータ9を駆動制御する。具体的には、モータ制御用ECU102は、回転角センサ25の出力信号に基づいてロータ回転角θを演算し、ロータ回転角θを減速比iで除算することによって操舵角θを演算する。そして、モータ制御用ECU102は、目標操舵角θautoと操舵角θとの差が零となるように、電動モータ9を角度フィードバック制御する。これにより、操舵角θが目標操舵角θautoに等しくなるように、電動モータ9が制御される。
【0021】
制動用ECU103は、左転舵輪(左前輪)21、右転舵輪(右前輪)22、左非転舵輪(左後輪)23(図4A参照)および右非転舵輪(右後輪)24(図4A参照)に対する制動力を制御する。
左転舵輪21、右転舵輪22、左非転舵輪23および右非転舵輪24には、それぞれブレーキチャンバー31FL、31FR、31RLおよび31RRが設けられている。各車輪21,22,23,24の制動力は、空圧回路30により31FL、31FR、31RLおよび31RR内の圧力である制動圧PFL、PFR、PRLおよびPRRが制御されることによって制御される。空圧回路30は、エアーポンプ、各種の弁装置などを含み、ブレーキアクチュエータとして機能する。空圧回路30およびブレーキチャンバー31FL、31FR、31RLおよび31RRは、本発明の「転舵輪速度差発生装置」および「非転舵輪速度差発生装置」の一例である。
【0022】
空圧回路30には、ブレーキペダル32の踏み込み操作に応じて駆動されるマスタシリンダ33が接続されている。マスタシリンダ33には、マスタシリンダの圧力を検出する圧力センサ34が設けられている。圧力センサ34によって検出されるマスタシリンダ圧力Pを示す信号は、制動用ECU103に与えられる。
制動用ECU103は、モード信号Smode、マスタシリンダ圧力P、減速度a、操舵角θ、転舵角θおよび目標操舵角θautoに基づいて、空圧回路30を制御することにより、制動圧PFL、PFR、PRLおよびPRRを制御する。
【0023】
制動用ECU103は、転舵状態が「切り始め状態」および「切り返し状態」のいずれかである場合には、ステアリングホイール2から転舵輪21,22までの間のあそびを詰めるためのあそび補償制御を実行する。「切り始め状態」とは、操舵角が変化していない状態から操舵角が変化し始める状態をいう。「切り返し状態」とは、操舵方向が逆転する状態をいう。
【0024】
あそび補償制御では、操舵されようとする方向(操舵予定方向)と反対方向のトルクが発生するように、左右の転舵輪21,22に制動力差(車輪速度差)を発生させる。あそび補償制御が行われる時間長は、あそびを詰めるのに十分な時間長に設定される。この実施形態では、あそび補償制御は、制動が行われる場合にのみ、実行される。
図3Aおよび図3Bは、制動用ECU103の動作を説明するためのフローチャートである。
【0025】
以下の説明において、車両は、図4Aに示すように、左右転舵輪21,22に、右転舵輪22の制動力FFRが左転舵輪21の制動力FFLよりも大きくなるような制動力差を与えることにより、転舵輪21,22に右転舵方向の転舵トルクが発生する車両であるとする。この場合、図4Aに示すように、車体には右回転方向のヨーモーメントMが発生する。
【0026】
なお、この車両では、図4Bに示すように、左右非転舵輪23,24に、左非転舵輪23の制動力FRLが右非転舵輪24の制動力FRRよりも大きくなるような制動力差を与えることにより、非転舵輪23,24に左転舵方向の転舵トルクが発生する。この場合、図4Bに示すように、車体には左回転方向のヨーモーメントMが発生する。
したがって、図4Cに示すように、左右転舵輪21,22に、右転舵輪22の制動力FFRが左転舵輪21の制動力FFLよりも大きくなるような制動力差を与える場合に、左右非転舵輪23,24に、左非転舵輪23の制動力FRLが右非転舵輪24の制動力FRRよりも大きくなるような制動力差を与えると、左右転舵輪21,22の制動力差に基づいて発生するヨーモーメントを低減できる。
【0027】
同様に、この車両では、左右転舵輪21,22に、左転舵輪21の制動力FFLが右転舵輪22の制動力FFRよりも大きくなるような制動力差を与えることにより、転舵輪21,22に左転舵方向の転舵トルクが発生する。また、左右非転舵輪23,24に、右非転舵輪24の制動力FRRが左非転舵輪23の制動力FRLよりも大きくなるような制動力差を与えることにより、非転舵輪23,24に右転舵方向の転舵トルクが発生する。
【0028】
したがって、左右転舵輪21,22に、左転舵輪21の制動力FFLが右転舵輪22の制動力FFRよりも大きくなるような制動力差を与える場合に、左右非転舵輪23,24に、右非転舵輪24の制動力FRRが左非転舵輪23の制動力FRLよりも大きくなるような制動力差を与えると、左右転舵輪21,22の制動力差に基づいて発生するヨーモーメントを低減できる。
【0029】
図3Aに戻り、制動用ECU103は、まず、モード信号Smodeに基づいて、操舵モードが自動操舵モードであるか、手動操舵モードであるかを判別する(ステップS1)。
自動操舵モードである場合には(ステップS1:YES)、制動用ECU103は、減速度a、目標操舵角θauto、マスタシリンダ圧力Pおよび転舵角θを取得する(ステップS2)。そして、制動用ECU103は、減速度aおよびマスタシリンダ圧力Pに基づいて、制動圧PBFL、PBFR、PBRLおよびPBRRの基本目標値である基本目標制動圧PBFL、PBFR、PBRLおよびPBRRを演算する(ステップS3)。なお、自動操舵モード時において、ブレーキペダル32が操作されていない場合には、減速度aのみに基づいて基本目標制動圧PBFL、PBFR、PBRLおよびPBRRが演算される。
【0030】
次に、制動用ECU103は、基本目標制動圧PBFL、PBFR、PBRLおよびPBRRの全てが0であるか否かを判別する(ステップS4)。基本目標制動圧の全てが0である場合には(ステップS4:YES)、制動用ECU103は、ステップS5に移行する。
ステップS5では、制動用ECU103は、基本目標制動圧PBFL、PBFR、PBRLおよびPBRRを目標制動圧PTFL、PTFR、PTRLおよびPTRRとし、制動圧PFL、PFR、PRLおよびPRRが、それぞれ目標制動圧PTFL、PTFR、PTRLおよびPTRRと等しくなるように空圧回路30を制御する。そして、制動用ECU103は、ステップS1に戻る。
【0031】
ステップS4において、基本目標制動圧PBFL、PBFR、PBRLおよびPBRRのいずれかが0ではないと判別された場合には(ステップS4:NO)、制動用ECU103は、操舵状態が「切り始め状態」および「切り返し状態」のいずれかの状態であるという第1条件を満たしているか否かを判別する(ステップS6)。
第1条件は、例えば、次のように設定される。今回取得した目標操舵角θauto,nと前回取得した目標操舵角θauto,n−1との差(θauto,n−θauto,n−1)をΔθautoとする。今回取得した転舵角θt,nと前回取得した転舵角θt,n−1との差(θt,n−θt,n−1)をΔθとする。第1条件は、|Δθauto|>Th1かつ|Δθ|<Th2であるという条件である。Th1およびTh2は、それぞれ0より大きな所定値である。なお、第1条件は、|Δθauto|>Th1であるという条件であってもよい。
【0032】
第1条件を満たしてない場合には(ステップS6:NO)、ステップS5に移行する。つまり、制動用ECU103は、基本目標制動圧PBFL、PBFR、PBRLおよびPBRRを目標制動圧PTFL、PTFR、PTRLおよびPTRRとして、空圧回路30を制御する。そして、制動用ECU103は、ステップS1に戻る。
一方、第1条件を満たしていると判別された場合には(ステップS6:YES)、制動用ECU103は、操舵予定方向が左操舵方向であるか否かを判別する(ステップS7)。具体的には、制動用ECU103は、Δθauto(=θauto,n−θauto,n−1)>0であれば、操舵予定方向が左操舵方向であると判別し、Δθauto<0であれば、操舵予定方向が右操舵方向であると判別する。
【0033】
図3Aおよび図3Bを参照して、操舵予定方向が左操舵方向である場合には(ステップS7:YES)、制動用ECU103は、あそびを詰めるために、左右転舵輪21,22に右転舵方向のトルクが発生するように、左右転舵輪21,22に対する基本目標制動圧PBFL、PBFRを補正する(ステップS8)。ステップS7およびステップS8の処理は、あそび補償制御処理である。
【0034】
具体的には、制動用ECU103は、補正後の基本目標制動圧PBFL、PBFRの合計値が補正前の基本目標制動圧PBFL、PBFRの合計値と同じでかつ右転舵輪22に対する補正後の基本目標制動圧PBFRが左転舵輪21に対する補正後の基本目標制動圧PBFLよりも所定の制動圧差ΔPaだけ大きくなるように、基本目標制動圧PBFL、PBFRを補正する。ΔPaは、零よりも大きな値であって、ステアリングホイール2から転舵輪21,22までの間のあそびを詰めることができる程度の大きさに設定される。
【0035】
ステップS7およびS8のあそび補償処理が実行された場合、左右転舵輪21,22の制動圧差によって右回転方向のヨーモーメントが発生する。そこで、左右転舵輪21,22の制動圧差に基づく右回転方向のヨーモーメントを抑制するために、制動用ECU103は、左右非転舵輪23,24に左転舵方向にトルクが発生するように、左右非転舵輪23,24に対する基本目標制動圧PBRL、PBRRを補正する(ステップS9)。
【0036】
具体的には、制動用ECU103は、補正後の基本目標制動圧PBRL、PBRRの合計値が補正前の基本目標制動圧PBRL、PBRRの合計値と同じでかつ左非転舵輪23に対する補正後の基本目標制動圧PBRLが右非転舵輪24に対する補正後の基本目標制動圧PBRRよりもΔPaだけ大きくなるように、基本目標制動圧PBRL、PBRRを補正する。
【0037】
そして、制動用ECU103は、補正後の基本目標制動圧PBFL、PBFR、PBRLおよびPBRRを目標制動圧PTFL、PTFR、PTRLおよびPTRRとし、制動圧PFL、PFR、PRLおよびPRRが、それぞれ目標制動圧PTFL、PTFR、PTRLおよびPTRRと等しくなるように空圧回路30を制御する(ステップS12)。なお、あそび補償制御の時間長さは、予め設定された時間長となるように制御される。この後、制動用ECU103は、ステップS1に戻る。
【0038】
ステップS7で、操舵予定方向が右操舵方向であると判別された場合には(ステップS7:NO)、制動用ECU103は、あそびを詰めるために、左右転舵輪21,22に左転舵方向のトルクが発生するように、左右転舵輪21,22に対する基本目標制動圧PBFL、PBFRを補正する(ステップS10)。ステップS7およびステップS10の処理は、あそび補償制御処理である。
【0039】
具体的には、制動用ECU103は、補正後の基本目標制動圧PBFL、PBFRの合計値が補正前の基本目標制動圧PBFL、PBFRの合計値と同じでかつ左転舵輪21に対する補正後の基本目標制動圧PBFLが右転舵輪22に対する補正後の基本目標制動圧PBFRよりも差ΔPaだけ大きくなるように、基本目標制動圧PBFL、PBFRを補正する。
【0040】
ステップS7およびS10のあそび補償処理が実行された場合、左右転舵輪21,22の制動圧差によって左回転方向のヨーモーメントが発生する。そこで、左右転舵輪21,22の制動圧差に基づく左回転方向のヨーモーメントを抑制するために、制動用ECU103は、左右非転舵輪23,24に右転舵方向にトルクが発生するように、左右非転舵輪23,24に対する基本目標制動圧PBRL、PBRRを補正する(ステップS11)。
【0041】
具体的には、制動用ECU103は、補正後の基本目標制動圧PBRL、PBRRの合計値が補正前の基本目標制動圧PBRL、PBRRの合計値と同じでかつ右非転舵輪24に対する補正後の基本目標制動圧PBRRが左非転舵輪23に対する補正後の基本目標制動圧PBRLよりもΔPaだけ大きくなるように、基本目標制動圧PBRL、PBRRを補正する。
【0042】
そして、制動用ECU103は、補正後の基本目標制動圧PBFL、PBFR、PBRLおよびPBRRを目標制動圧PTFL、PTFR、PTRLおよびPTRRとし、制動圧PFL、PFR、PRLおよびPRRが、それぞれ目標制動圧PTFL、PTFR、PTRLおよびPTRRと等しくなるように空圧回路30を制御する(ステップS12)。なお、あそび補償制御の時間長さは、予め設定された時間長となるように制御される。この後、制動用ECU103は、ステップS1に戻る。
【0043】
操舵モードが自動操舵モードである場合において操舵状態が「切り始め状態」および「切り返し状態」であると判別されたときには、ステップS7およびステップS8によるあそび補償処理またはステップS7およびステップS10によるあそび補償処理が行われる。これにより、あそびが詰められるので、操舵の応答性が向上する。また、ステップS9またはステップS11の処理によって、左右転舵輪21,22の制動力差によるヨーモーメントの発生が抑制される。
【0044】
図3Aを参照して、ステップS1において、操舵モードが手動操舵モードであると判別された場合には(ステップS1:NO)、制動用ECU103は、マスタシリンダ圧力P、操舵トルクTおよび転舵角θを取得する(ステップS13)。そして、制動用ECU103は、マスタシリンダ圧力Pに基づいて、ブレーキチャンバー31FL、31FR、31RLおよび31RRに対する基本目標制動圧PBFL、PBFR、PBRLおよびPBRRを演算する(ステップS14)。
【0045】
次に、制動用ECU103は、基本目標制動圧PBFL、PBFR、PBRLおよびPBRRの全てが0であるか否かを判別する(ステップS15)。基本目標制動圧の全てが0である場合には(ステップS15:YES)、制動用ECU103は、ステップS5に移行する。
ステップS5では、制動用ECU103は、基本目標制動圧PBFL、PBFR、PBRLおよびPBRRを目標制動圧PTFL、PTFR、PTRLおよびPTRRとし、制動圧PFL、PFR、PRLおよびPRRが、それぞれ目標制動圧PTFL、PTFR、PTRLおよびPTRRと等しくなるように空圧回路30を制御する。そして、制動用ECU103は、ステップS1に戻る。
【0046】
ステップS15において、基本目標制動圧PBFL、PBFR、PBRLおよびPBRRのいずれかが0ではないと判別された場合には(ステップS15:NO)、制動用ECU103は、操舵状態が「切り始め状態」および「切り返し状態」のいずれかの状態であるという第2条件を満たしているか否かを判別する(ステップS16)。
第2条件は、例えば、次のように設定される。今回取得した操舵トルクTd,nと前回取得した操舵トルクTd,n−1との差(Td,n−Td,n−1)をΔTとする。今回取得した転舵角θt,nと前回取得した転舵角θt,n−1との差(θt,n−θt,n−1)をΔθとする。第2条件は、|ΔT|>Th3かつ|Δθ|<Th4であるという条件である。Th3およびTh4は、それぞれ0より大きな所定値である。
【0047】
第2条件を満たしてない場合には(ステップS16:NO)、ステップS5に移行する。つまり、制動用ECU103は、基本目標制動圧PBFL、PBFR、PBRLおよびPBRRを目標制動圧PTFL、PTFR、PTRLおよびPTRRとして、空圧回路30を制御する。そして、制動用ECU103は、ステップS1に戻る。
一方、第2条件を満たしていると判別された場合には(ステップS16:YES)、制動用ECU103は、ステップS17に移行する。ステップS17では、制動用ECU103は、まず、操舵予定方向が左操舵方向であるか否かを判別する。具体的には、制動用ECU103は、T>0であれば、操舵予定方向が左操舵方向であると判別し、T<0であれば、操舵予定方向が右操舵方向であると判別する。
【0048】
図3Aおよび図3Bを参照して、操舵予定方向が左操舵方向である場合には(ステップS17:YES)、制動用ECU103は、前述したステップS8、S9およびS12の処理を行う。この後、制動用ECU103は、ステップS1に戻る。この場合、ステップS17およびステップS8の処理が、あそび補償制御処理である。
操舵予定方向が右操舵方向であると判別された場合には(ステップS17:NO)、前述したステップS10、S11およびS12の処理を行う。この後、制動用ECU103は、ステップS1に戻る。この場合、ステップS17およびステップS10の処理が、あそび補償制御処理である。
【0049】
操舵モードが手動操舵モードである場合において操舵状態が「切り始め状態」および「切り返し状態」であると判別されたときには、ステップS17およびステップS8によるあそび補償処理またはステップS17およびステップS10によるあそび補償処理が行われる。これにより、あそびが詰められるので、操舵の応答性が向上する。また、ステップS9またはステップS11の処理によって、左右転舵輪21,22の制動力差によるヨーモーメントの発生が抑制される。
【0050】
図5は、自動操舵によって車両が減速しながら幅寄せする場合の目標制動圧PTFL
TFR、PTRLおよびPTRRの変化例を示すタイムチャートである。図5において、横偏差は、車両位置から路肩までの横偏差を表している。
直進状態から時点t1で減速が開始される。このため、時点t1で、目標制動圧PTFL、PTFR、PTRLおよびPTRRが、それぞれ0から所定値に設定されている。図5では、説明の便宜上、目標制動圧PTFL、PTFR、PTRLおよびPTRRは、全て同じ値に設定されている。
【0051】
時点t2で操舵状態が左転舵方向への「切り始め状態」となり、左右転舵輪21,22に右転舵方向のトルクが発生するように、左右転舵輪21,22に対する目標制動圧PTFL,PTFRが設定される(あそび補償制御)。具体的には、左右転舵輪21,22に対する目標制動圧PTFL,PTFRの総和を変化させることなく、右転舵輪22に対する目標制動圧PTFRが左転舵輪21に対する目標制動圧PTFLよりもPaだけ大きくなるように、目標制動圧PTFL,PTFRが設定される。
【0052】
また、左右非転舵輪23,24に対する目標制動圧PTRL,PTRRの総和を変化させることなく、左非転舵輪23に対する目標制動圧PTRLが右非転舵輪24に対する目標制動圧PTRRよりもPaだけ大きくなるように、目標制動圧PTRL,PTRRが設定される。このような制御は、時点t2から所定時間経過後の時点t3まで行われる。
また、時点t4において、操舵状態が右転舵方向への「切り返し状態」となり、左右転舵輪21,22に左転舵方向のトルクが発生するように、左右転舵輪21,22に対する目標制動圧PTFL,PTFRが設定される(あそび補償制御)。具体的には、左右転舵輪21,22に対する目標制動圧PTFL,PTFRの総和を変化させることなく、左転舵輪21に対する目標制動圧PTFLが右転舵輪22に対する目標制動圧PTFRよりもPaだけ大きくなるように、目標制動圧PTFL,PTFRが設定される。
【0053】
また、左右非転舵輪23,24に対する目標制動圧PTRL,PTRRの総和を変化させることなく、右非転舵輪24に対する目標制動圧PTRRが左転舵輪23に対する目標制動圧PTRLよりもPaだけ大きくなるように、目標制動圧PTRL,PTRRが設定される。このような制御は、時点t4から所定時間経過後の時点t5まで行われる。
時点t6において、操舵状態が左転舵方向への「切り返し状態」となり、時点t2〜t3と同様なあそび補償制御制御が行われる(時点t6〜t7)。このようなあそび補償制御により、精度の高い正着制御が可能となる。
【0054】
前述の実施形態では、左右転舵輪21,22の制動力差を発生させることにより、左右転舵輪21,22の速度差を発生させて、あそびを詰めるようにしている。しかし、あそびを詰める方法としては、左右転舵輪21,22の速度差を発生させることができるのであれば、左右転舵輪21,22の制動力差を発生させる方法以外の方法を用いてもよい。例えば、左右転舵輪21,22にインホイールモータを設け、これらのインホイールモータを駆動制御することにより、左右転舵輪21,22の速度差を発生させてもよい。
【0055】
また、前述の実施形態では、あそび補償制御が行われる際に、左右転舵輪21,22の制動力差(速度差)によるヨーモーメントの発生を抑制するために、左右非転舵輪23,24に制動力差(速度差)を発生させている。しかし、あそび補償制御が行われる際に、左右非転舵輪23,24に制動力差(速度差)を発生させなくてもよい。この場合には、図3BのステップS9およびS11の処理は省略される。
【0056】
また、前述の実施形態では、あそび補償制御は、制動が行われる場合にのみ実行されるようになっているが、制動が行われていない場合にも、あそび補償制御が実行されるようにしてもよい。
その他、この発明は、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…パワーステアリング装置、8…転舵機構、9…電動モータ、21,22…転舵輪、23,24…非転舵輪、25…回転角センサ、26…トルクセンサ、27…転舵角センサ、30…空圧回路、31FL,31FR,31RL,31RR…ブレーキチャンバー、101…自動操舵用ECU、102…モータ制御用ECU、103…制動用ECU
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5