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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-195308(P2021-195308A)
(43)【公開日】2021年12月27日
(54)【発明の名称】油中油型化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/33 20060101AFI20211129BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20211129BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20211129BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20211129BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20211129BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20211129BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20211129BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20211129BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20211129BHJP
   A61K 8/9794 20170101ALI20211129BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20211129BHJP
【FI】
   A61K8/33
   A61K8/31
   A61K8/37
   A61K8/891
   A61K8/81
   A61K8/34
   A61K8/06
   A61K8/42
   A61K8/9789
   A61K8/9794
   A61Q1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-100718(P2020-100718)
(22)【出願日】2020年6月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】櫛間 桃子
(72)【発明者】
【氏名】千葉 桐子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA121
4C083AB172
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC111
4C083AC351
4C083AC371
4C083AC372
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC641
4C083AC841
4C083AC851
4C083AD021
4C083AD022
4C083AD042
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD242
4C083AD531
4C083AD532
4C083DD30
4C083DD31
4C083EE01
4C083EE03
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】油中油型化粧料を密着性がありながらもたつきがなく、塗布後に、例えばジンジンとした温感のような感覚刺激が得られるものとする。
【解決手段】油中油型化粧料を、(A)非揮発性炭化水素油および/または非揮発性エステル油と、(B)非揮発性シリコーン油と、(C)温度感覚受容体チャネルを活性化するTRPチャネル活性化物質と、を含み、(A)非揮発性炭化水素油および/または非揮発性エステル油と(B)非揮発性シリコーン油とが、25℃で混合したときに分離するものとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)非揮発性炭化水素油および/または非揮発性エステル油と、
(B)非揮発性シリコーン油と、
(C)温度感覚受容体チャネルを活性化するTRPチャネル活性化物質と、
を含み、前記(A)非揮発性炭化水素油および/または非揮発性エステル油と前記(B)非揮発性シリコーン油とが、25℃で混合したときに分離するものである油中油型化粧料。
【請求項2】
前記(C)TRPチャネル活性化物質を化粧料全量に対し0.01〜0.2質量%含む請求項1記載の油中油型化粧料。
【請求項3】
前記(C)TRPチャネル活性化物質が、(C1)第一のTRPチャネル活性化物質と(C2)第二のTRPチャネル活性化物質との組み合わせであって、
前記(C1)第一のTRPチャネル活性化物質が、バニリルブチルエーテル、トウガラシチンキ、カプサイシン、ショウキョウチンキ、バニリルエチルエーテル、バニリルプロピルエーテル、バニリンプロピレングリコールアセタール、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、ギンゲロール、4−(l−メントキシメチル)−2−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、トウガラシ油、トウ ガラシオレオレジン、ジンジャーオレオレジン、ノニル酸バニリルアミド、ジャンブーオレオレジン、サンショウエキス、サンショール−I、サンショール−II、サンショウアミド、黒胡椒エキス、カビシン、ピペリンおよびスピラントールの中から選ばれる少なくとも1種であり、
前記(C2)第二のTRPチャネル活性化物質が、メントール、ハッカ油、l−メンチルグリセリルエーテル、乳酸メンチル、カンファー、イソプレゴール、ボルネオロール、シネオールメントン、スペアミント、ペパーミント、マロン酸メンチル、グリコシル−モノ−メンチル−O−アセテート、3−L−メントキシプロパン−1,2−ジオールおよび1−メンチル−3−ヒドロキシブチレートの中から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2記載の油中油型化粧料。
【請求項4】
前記(C1)第一のTRPチャネル活性化物質がバニリルブチルエーテル、トウガラシチンキ、カプサイシンおよびショウキョウチンキの中から選ばれる少なくとも1種である請求項3記載の油中油型化粧料。
【請求項5】
前記(A)非揮発性炭化水素油および/または非揮発性エステル油を化粧料全量に対し10〜75質量%含む請求項1〜4いずれか1項記載の油中油型化粧料。
【請求項6】
前記(B)非揮発性シリコーン油を化粧料全量に対し8〜70質量%含む請求項1〜5いずれか1項記載の油中油型化粧料。
【請求項7】
前記(A)非揮発性炭化水素油および/または非揮発性エステル油と前記(B)非揮発性シリコーン油の質量比が、(A)/{(A)+(B)}=0.19〜0.9である請求項1〜6いずれか1項記載の油中油型化粧料。
【請求項8】
粘度が1000〜65000mPa・sである請求項1〜7いずれか1項記載の油中油型化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中油型化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
唇を彩る口紅やグロス等の口唇化粧料、チーク(頬紅)あるいはアイシャドーといったメーキャップ化粧料は、その使用者の外観の印象を一変させる程の重要な化粧効果を発揮する化粧料である。このため、メーキャップ化粧料は色そのものや、みずみずしさ、つや等の質感といったものが製品を選択する上で大きな要素となっている。
【0003】
一方、上記要素以外にも、機能面からは、口紅を口唇に塗布した後、この口紅がカップなど口唇に接触する部位に転写されてしまういわゆる2次付着性を抑制することが可能な口唇化粧料も開発されている。例えば、特許文献1には、非揮発性炭化水素油とデキストリン脂肪酸エステルとメチルフェニルポリシロキサンを組み合わせた油中油型化粧料が記載されている。
【0004】
近年、消費者のニーズが多様化し、製品に本来的に要求される機能のほか、使用中あるいは使用後に清涼感が得られる機能が付与されたものが求められており、例えば特許文献2には、L−メントール、L−イソプレゴール、3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオールおよびパラメンタン−3,8−ジオールの少なくとも1種の冷感物質にバニリルブチルエーテルを配合することにより冷感効果の優れた冷感剤組成物が得られることが記載されている。
【0005】
一方、メーキャップ化粧料においては、塗布後にジンジンとした温感を感じられるものが、心地よい刺激を与えてくれるとともに、塗布面の内側からふっくらと潤うような感じが得られるとして、新たな訴求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4766720号公報
【特許文献2】特許第4017758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、メーキャップ化粧料を適用する部位の中でも、唇は角層が極めて薄く、皮脂腺も殆どなく、天然保湿因子(natural moisturizing factor:NMF成分)も少ない部位である。それゆえ、唇は他の皮膚に比べて非常に敏感である。特許文献2に記載されているような冷感物質を口唇化粧料に配合する場合、口唇化粧料の口唇との密着性が重要となるが、密着性が高い口唇化粧料はねとっとしたもたつきのあるものになってしまう。一方、べたつかず軽いタッチでのび広がる口唇化粧料の場合には、口唇化粧料の密着性が弱く、ジンジンとした温感が感じられにくくなると考えられる。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、密着性がありながらもたつきがなく、塗布後に、例えばジンジンとした温感のような感覚刺激が得られる油中油型化粧料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の油中油型化粧料は、
(A)非揮発性炭化水素油および/または非揮発性エステル油と、
(B)非揮発性シリコーン油と、
(C)温度感覚受容体チャネルを活性化するTRPチャネル活性化物質と、
を含み、(A)非揮発性炭化水素油および/または非揮発性エステル油と(B)非揮発性シリコーン油とが、25℃で混合したときに分離するものである。
【0010】
(C)TRPチャネル活性化物質は化粧料全量に対し0.01〜0.2質量%含むことが好ましい。
【0011】
(C)TRPチャネル活性化物質は、(C1)第一のTRPチャネル活性化物質と(C2)第二のTRPチャネル活性化物質との組み合わせであって、
(C1)第一のTRPチャネル活性化物質が、バニリルブチルエーテル、トウガラシチンキ、カプサイシン、ショウキョウチンキ、バニリルエチルエーテル、バニリルプロピルエーテル、バニリンプロピレングリコールアセタール、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、ギンゲロール、4−(l−メントキシメチル)−2−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、トウガラシ油、トウ ガラシオレオレジン、ジンジャーオレオレジン、ノニル酸バニリルアミド、ジャンブーオレオレジン、サンショウエキス、サンショール−I、サンショール−II、サンショウアミド、黒胡椒エキス、カビシン、ピペリンおよびスピラントールの中から選ばれる少なくとも1種であり、
(C2)第二のTRPチャネル活性化物質が、メントール、ハッカ油、l−メンチルグリセリルエーテル、乳酸メンチル、カンファー、イソプレゴール、ボルネオロール、シネオールメントン、スペアミント、ペパーミント、マロン酸メンチル、グリコシル−モノ−メンチル−O−アセテート、3−L−メントキシプロパン−1,2−ジオールおよび1−メンチル−3−ヒドロキシブチレートの中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0012】
(C1)第一のTRPチャネル活性化物質はバニリルブチルエーテル、トウガラシチンキ、カプサイシンおよびショウキョウチンキの中から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0013】
(A)非揮発性炭化水素油および/または非揮発性エステル油は化粧料全量に対し10〜75質量%含むことが好ましい。
【0014】
(B)非揮発性シリコーン油は化粧料全量に対し8〜70質量%含むことが好ましい。
【0015】
(A)非揮発性炭化水素油および/または非揮発性エステル油と(B)非揮発性シリコーン油の質量比は、(A)/{(A)+(B)}=0.19〜0.9であることが好ましい。
【0016】
本発明の油中油型化粧料の粘度は1000〜65000mPa・sであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の油中油型化粧料は、
(A)非揮発性炭化水素油および/または非揮発性エステル油と、
(B)非揮発性シリコーン油と、
(C)温度感覚受容体チャネルを活性化するTRPチャネル活性化物質と、
を含み、(A)非揮発性炭化水素油および/または非揮発性エステル油と(B)非揮発性シリコーン油とが、25℃で混合したときに分離するものであるので、密着性がありながらもたつきがなく、塗布後に、例えばジンジンとした温感のような感覚刺激が得られるものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の油中油型化粧料は、
(A)非揮発性炭化水素油および/または非揮発性エステル油と、
(B)非揮発性シリコーン油と、
(C)温度感覚受容体チャネルを活性化するTRPチャネル活性化物質と、
を含み、(A)非揮発性炭化水素油および/または非揮発性エステル油と(B)非揮発性シリコーン油とが、25℃で混合したときに分離するものである。
以下、各成分について詳細に説明する。
【0019】
(A)非揮発性炭化水素油および/または非揮発性エステル油
本発明で用いられる(A)非揮発性炭化水素油としては、例えば水添ポリイソブテン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、流動パラフィン、スクワラン、水添ポリデセン、ワセリン等が挙げられる。このうち特にポリブテンが好ましく、さらには分子量1000〜2650のポリブテンが好ましい。
【0020】
非揮発性エステル油としては、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル(商品名:コスモール168M)、(イソステアリン酸ポリグリセリル−2/ダイマージリノール酸)コポリマー(商品名:ハイルーセントISDA)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル(商品名:LUSPLAN DD−DA7)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)等のダイマージリノール酸エステル、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)、(ビス(ラウロイルグルタミン酸/ラウロイルサルコシン)ダイマージリノレイル)等のラウロイルグルタミン酸エステル等が挙げられる。これらの中で、特に、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、(イソステアリン酸ポリグリセリル−2/ダイマージリノール酸)コポリマー等が好ましく用いられる。
【0021】
(A)非揮発性炭化水素油および/または非揮発性エステル油(以下、単に(A)成分ともいう)の配合量は化粧料全量に対し10〜75質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜70質量%であり、さらには20〜60質量%であることが望ましい。非揮発性炭化水素油の配合量が10質量%以上であることで、より密着性を良好なものとすることができ、75質量%以下であることで、よりのびの良さを確保することができて、もたつきをより軽減することができる。
【0022】
(B)非揮発性シリコーン油
(B)非揮発性シリコーン油は(A)成分と25℃で混合したときに分離するものであればよく、同時に配合される(A)成分の種類によって油中油型となるように適宜選択される。かかる非揮発性シリコーン油としては、例えば、ジフェニルジメチコン(メチルフェニルポリシロキサンともいう )、ジメチコン、フッ素変性アルキルシリコーンなどが挙げられる。このうち特にジフェ ニルジメチコンが好ましく、さらには粘度が300〜500csのジフェニルジメチコン が好ましい。
【0023】
(B)非揮発性シリコーン油の配合量は化粧料全量に対し8〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜60質量%であり、さらには10〜50質量%であることが望ましい。非揮発性シリコーン油の配合量が8質量%以上であることで、(C)TRPチャネル活性化物質のジンジンとした温感効果のもちをより良好なものとすることができ、配合量を70質量%以下とすることで、もたつきのない、使用性をより良好なものとすることができる。
【0024】
本発明の油中油型化粧料は、25℃で混合したときに分離する(A)成分と(B)非揮発性シリコーン油とを組み合わせることで、(A)成分を含む相が密着性を発揮する(以下、本発明において密着相ともいう)ので、ジンジンとした温感が感じられやすく、また、(B)非揮発性シリコーン油を含む相は塗布した化粧料の表面にとどまる(以下、本発明において分散相ともいう)ので、べたつかず軽いタッチでのび広がり、密着相と分散相の両者が存在することで、密着性がありながらもたつきがなく、塗布後にジンジンとした温感を感じられるものとすることができる。なお、(A)成分と(B)非揮発性シリコーン油とを組み合わせることでジンジンとした温感効果のもちをより良好なものとすることができる、その作用機序は必ずしも明らかではないが、(C)TRPチャネル活性化物質は密着相と分散相のいずれにも存在し、時間の推移によって(C)TRPチャネル活性化物質の移行が、密着相と分散相の間で生じることが関係していると推測される。
【0025】
特に、(A)非揮発性炭化水素油および/または非揮発性エステル油と(B)非揮発性シリコーン油の質量比は、(A)/{(A)+(B)}=0.19〜0.9であることがより好ましく、0.3〜0.8であることがさらに好ましい。(A)/{(A)+(B)}=0.19〜0.9の範囲であることで、(C)TRPチャネル活性化物質のジンジンとした温感効果のもちをより良好なものとすることができるとともに、使用性をより良好なものとすることができる。
【0026】
(C)TRPチャネル活性化物質
(C)TRP(transient receptor potential)チャネル活性化物質は温度感覚受容体チャネルを活性化する物質である。(C)TRPチャネル活性化物質は、(C1)第一のTRPチャネル活性化物質と(C2)第二のTRPチャネル活性化物質との組み合わせであることが好ましい。
【0027】
(C1)第一のTRPチャネル活性化物質
(C1)第一のTRPチャネル活性化物質としては、バニリルブチルエーテル、トウガラシチンキ、カプサイシン、ショウキョウチンキ、バニリルエチルエーテル、バニリルプロピルエーテル、バニリンプロピレングリコールアセタール、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、ギンゲロール、4−(l−メントキシメチル)−2−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、トウガラシ油、トウ ガラシオレオレジン、ジンジャーオレオレジン、ノニル酸バニリルアミド、ジャンブーオレオレジン、サンショウエキス、サンショール−I、サンショール−II、サンショウアミド、黒胡椒エキス、カビシン、ピペリンおよびスピラントールの中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの(C1)第一のTRPチャネル活性化物質は単独で用いても、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0028】
上記の(C1)第一のTRPチャネル活性化物質の中でも、汎用性、ジンジンとした感覚の良好性の観点から、バニリルブチルエーテル、トウガラシチンキ、カプサイシンおよびショウキョウチンキの中から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0029】
(C2)第二のTRPチャネル活性化物質
(C2)第二のTRPチャネル活性化物質としては、メントール、ハッカ油、l−メンチルグリセリルエーテル、乳酸メンチル、カンファー、イソプレゴール、ボルネオロール、シネオールメントン、スペアミント、ペパーミント、マロン酸メンチル、グリコシル−モノ−メンチル−O−アセテート、3−L−メントキシプロパン−1,2−ジオールおよび1−メンチル−3−ヒドロキシブチレートの中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの(C2)第二のTRPチャネル活性化物質は単独で用いても、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0030】
(C)TRPチャネル活性化物質の配合量((C)TRPチャネル活性化物質が(C1)第一のTRPチャネル活性化物質と(C2)第二のTRPチャネル活性化物質との組み合わせである場合には、その合計の配合量)は、化粧料全量に対し0.01〜0.2質量%であることがより好ましく、0.02〜0.15質量%であることがさらに好ましい。(C)TRPチャネル活性化物質の配合量が0.01質量%以上であることで、よりジンジンとした温感効果を感じることができ、0.2質量%以下とすることで、例えば唇に塗布した場合であっても痛みではなく、温感として感じることができる。
【0031】
本発明の油中油型化粧料の粘度は30℃において1000〜65000mPa・sであることが好ましい。より好ましくは1100〜50000mPa・sであり、さらには1200〜45000mPa・sであることが望ましい。粘度が1000mPa・s以上であることで、また65000mPa・s以下であることで、使用性を良好なものとすることができる。ここで、粘度は30℃におけるB型粘度計(回転数10rpm、「ビスメトロン粘度計VS−H型」 芝浦システム(株)製)での測定値による。
【0032】
本発明の油中油型化粧料は、本発明の効果を損なわない範囲において、化粧料に配合し得る他の任意成分を含有していてもよい。特に、本発明の油中油型化粧料が唇に適用する口紅等の場合には、色材が配合される。色材は口紅に通常用いられる色材であれば良く、粉末状でもレーキ状(油を練り込んだ状態)でもよい。なお、無機顔料であっても、有機顔料であっても、パール剤であっても、(B)非揮発性シリコーン油に比較して、(A)成分のほうに濡れやすく、最終的には顔料は自発的に密着相である(A)成分に移行する。色材の配合量としては、0.01〜30質量%、好ましくは、0.1〜20質量%である。
【0033】
また、本発明の油中油型化粧料が唇に適用する口紅等の場合、さらに、半固形油((A)成分以外)またはマイクロクリスタリンワックスを含んでいてもよい。半固形油やマイクロクリスタリンワックスを配合すると、口紅等を塗布した後のべたつきが少なく、化粧もちにも優れる。
【0034】
半固形油とは、具体的には、25℃における硬度が0.1〜10Nである半固形状のものを指す。この硬度の測定には、レオテック社製レオメーターで、感圧軸5φ、針入速度2cm/min、針入度3mmで測定した値を用いた。したがって、ポリブテンなどの高粘度液状油や、硬化ヒマシ油、硬質ラノリンのような室温で硬い油剤は含まれない。
【0035】
半固形油としては、通常化粧品に使用されるワセリン、ラノリン、シア脂,部分水添ヤシ油など植物脂、部分水添ホホバ油等を使用してもよい。
【0036】
これらのうち、ワセリンがべたつきのなさと、化粧もちの点で特に好ましい。半固形油の配合量は、好ましくは3〜30質量%、さらに好ましくは6〜20質量%である。
マイクロクリスタリンワックスの配合量としては、好ましくは0.5〜6質量%、さらに好ましくは、1〜4質量%である。
【0037】
本発明の油中油型化粧料には、上記必須成分の他、通常の油中油型化粧料に用いられる油剤、その他のワックス、粉体、顔料、染料、高分子化合物、保湿剤、香料、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤、美容成分等を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。保湿剤としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコール等の多価アルコール系保湿剤が挙げられる。
【0038】
本発明の油中油型化粧料は、口紅、リップグロス、下地用のリップベース、口紅オーバーコート、リップクリームなどに応用することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例等における配合量は特に断らない限り質量%を示す。
下記各表に掲げた処方により油中油型化粧料を調製した。具体的には、(A)成分を含む連続相の構成成分を必要に応じて加熱しながら攪拌混合し、別途(B)非揮発性シリコーン油を含む分散相の構成成分を任意に加熱しながら攪拌混合し、連続相を攪拌しながら分散相を攪拌分散して製造した。
【0040】
(粘度)
各試料について、以下の手順で粘度を測定した。試料を30℃に調整したのち、B型粘度計(回転数10rpm、「ビスメトロン粘度計VS−H型」 芝浦システム(株)製)を用い、測定した。
【0041】
(評価試験)
10名の専門パネルにボトルに入った調製した化粧料をチップ(約1cm)にとり、上唇に1.5往復、再度チップにとり下唇に1.5往復塗布してもらい、評価試験を行った。評価項目は、唇に塗布した場合の感覚刺激の種類(ジンジン、ピリピリ、スースー)、塗った当初の感覚刺激の強さ、塗ってから約30秒〜5分以内の感覚刺激の強さ、塗布時のもたつき、感覚刺激の長持ち感について、下記の評価点基準に基づいて評価した。
【0042】
(塗った当初の感覚刺激の強さ)
<評価点>
+3:非常に強い刺激を感じる
+2:刺激を感じる
+1:刺激を少し感じる
0:刺激を全くまたはほとんど感じない
<評価基準>
A:パネル10名の評価の平均が+2.5以上
B:パネル10名の評価の平均が+1.5以上〜+2.5未満
C:パネル10名の評価の平均が+0.5以上〜+1.5未満
D:パネル10名の評価の平均が+0.5未満
【0043】
(塗ってから約30秒〜5分以内の感覚刺激の強さ)
<評価点>
+1: 塗った当初よりも刺激が強まった
0: 塗った当初の感覚刺激の強さと変わらない
−1: 塗った当初よりも刺激が弱まった
<評価基準>
A:パネル10名の評価の平均が0.3以上
B:パネル10名の評価の平均が−0.3以上〜0.3未満
C:パネル10名の評価の平均が−0.3未満
【0044】
(塗布時のもたつき)
<評価点>
+3:もたつきが感じられ、不快に感じる
+2:ややもたつきが感じられ、やや不快に感じる
+1:使用に問題ない
0:使用性が軽く、快適に感じる
<評価基準>
A:パネル10名の評価の平均が+0.5未満
B:パネル10名の評価の平均が+0.5以上〜+1.5未満
C:パネル10名の評価の平均が+1.5以上〜+2.5未満
D:パネル10名の評価の平均が+2.5以上
【0045】
(感覚刺激の長持ち感)
<評価点>
+2:長持ちしている
+1:やや長持ちしている
0:長持ちしている感覚がない
<評価基準>
A:パネル10名の評価の平均が+1.5以上
B:パネル10名の評価の平均が+1.0以上〜+1.5未満
C:パネル10名の評価の平均が+0.5以上〜+1.0未満
D:パネル10名の評価の平均が+0.5未満
【0046】
処方および評価結果を表1および2に示す。なお、表に示す下記化合物で使用した市販品は以下のとおりである。
パルミチン酸デキストリン:レオパールKL(岩瀬コスファ株式会社)
(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン:レオパールTT(岩瀬コスファ株式会社)
トリイソステアリン酸ポリグリセリル−2:コスモール43V(日清オイリオグループ株式会社)
ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル:コスモール168M(日清オイリオグループ株式会社)
ジメチルシリル化シリカ:アエロジルR972(東新化成株式会社)
ジフェニルジメチコン:シリコーンKF54(信越化学工業株式会社)
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
表1に示すように、実施例の油中油型化粧料は塗った当初の感覚刺激の強さ、塗ってから約30秒〜5分以内の感覚刺激の強さ、感覚刺激の長持ち感が良好であるとともに、塗布時のもたつきがなかった。なお、実施例1と、実施例12および13との比較から、(C)TRPチャネル活性化物質を組み合わせて用いた方が約30秒〜5分以内の感覚刺激の強さの減少が認められた。
【0050】
一方、表2に示すように、(B)非揮発性シリコーン油を含まない比較例1では、塗った直後の感覚刺激はよくても、約30秒〜5分以内の感覚刺激の強さの減少が認められ、また塗布時のもたつきが強かった。(A)成分を含まない比較例2は、もたつきはなく感覚刺激もあるものの、約30秒〜5分以内の感覚刺激の強さが減少し、長持ち感も劣った。比較例3および5はもたつきを軽減するために、ワックスや半固形油あるいは増粘剤を除いた処方であるが、もたつきは軽減されるものの、感覚刺激の強さの減少が認められた。塗った当初の感覚刺激を実施例と同程度に強くするためには、比較例4に示すように(C)TRPチャネル活性化物質を10倍量増量する必要があるが、それでも約30秒〜5分以内の感覚刺激の強さの減少が認められ、(A)成分と(B)非揮発性シリコーン油を組み合わせることで、感覚刺激の急激な消失を軽減することができると考えられる。
【0051】
次に実施例1、実施例5、実施例10の(C)TRPチャネル活性化物質の量を、0.05質量%(実施例14、18、22)、0.02質量%(実施例14、19、23)、0.01質量%(実施例16、20、24)、0.2質量%(実施例17、21、25)に変更して、同様に評価を行った。結果を表3に示す。表3に示すように、唇に適用する場合には、0.02質量%よりも多く塗った方が、感覚刺激がより良好であることがわかる。なお、(C)TRPチャネル活性化物質がバリニルブチルエーテルとメントールの組み合わせの場合、0.01質量%では塗った当初から感覚刺激が得られていないため、この組み合わせの場合に限れば、(C)TRPチャネル活性化物質の量は0.02〜0.2質量%が好ましいと考えられる。ただし、0.02質量%未満であっても、塗布量を多くすることで、感覚刺激は得られると考えられる。
【0052】
【表3】
【0053】
続いて、実施例1において(C)TRPチャネル活性化物質の種類を変更した実施例を表4に示す。表4に示すように、いずれの実施例においても、塗った当初の感覚刺激の強さ、塗ってから約30秒〜5分以内の感覚刺激の強さ、感覚刺激の長持ち感が良好であるとともに、塗布時のもたつきがなかった。
【0054】
【表4】