【解決手段】下記式(5)で表される化合物等から選択される化合物又はその塩を含む低酸素誘導因子阻害剤。前記低酸素誘導因子阻害剤を含む、網膜変性疾患、網脈絡膜病的血管新生疾患、がん、神経変性又は自己免疫疾患の治療又は予防剤。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<定義>
本明細書において、「HIF」とは、細胞に対する酸素供給が不足状態に陥った際に誘導されるタンパク質であり、転写因子として機能するものである。HIFは数種類存在するが、特に言及しない限り、本明細書ではそれらをまとめてHIFとして取り扱う。HIF−αにはHIF−1α、HIF−2α及びHIF−3αが存在するが、これらはいずれも細胞内に構成的に発現しているHIF−1βとヘテロ二量体と結合する能力を持つ。HIF−1αは正常酸素圧下でも産生はされるが、タンパク質分解酵素複合体である26Sプロテアソームにより分解されるため機能しないとされている。HIFは任意の動物のものであり得るが、好ましくは哺乳動物のものであり得、より好ましくは霊長類(ヒトであり得る)のものであり得る。
【0013】
本明細書において、「HIF阻害」とは、HIFによる転写制御を阻害することを指す。
【0014】
本明細書において、「HIF阻害剤」とは、HIFを阻害し得る任意の因子を指す。
【0015】
本明細書において、「HIFと関連する疾患、障害又は症状」とは、HIFと関連する任意の疾患、障害又は症状をいい、具体的には、網膜変性疾患、網脈絡膜病的血管新生疾患、がん、神経変性、自己免疫疾患、糖尿病、慢性心疾患等を挙げることができる。
【0016】
本明細書において、「有効成分」とは、HIFと関連する疾患、障害又は症状の治療又は予防効果を得るために必要な量で含有される成分を指し、効果が所望のレベル未満にまで損なわれない限りにおいて、他の成分も含有されてよい。また、本明細書における治療又は予防剤は、本明細書に記載される特定の物質そのものを治療又は予防剤としてもよいが、製剤化されたものであってもよい。また、治療又は予防剤の投与経路は、経口又は非経口のいずれであってもよく、治療又は予防剤の形態等に応じて適宜設定することができる。
【0017】
「患者」または「被験体」は、ヒト又はヒトを除く哺乳動物(例えば、マウス、モルモット、ハムスター、ラット、ネズミ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、マーモセット、サル又はチンパンジー等の1種以上)を含む。
【0018】
<HIF阻害剤>
本開示では、HIF阻害剤が提供される。本開示のHIF阻害剤は、きのこ由来物質を含む。HIFは、核内へ移行した後にHIF−1βとのヘテロ二量体を形成したり、CBP/p300等のヒストンアセチル化酵素と結合し、これらの複合体がDNA上の低酸素応答性領域(Hypoxia Responsive Element、HRE)と呼ばれる応答エレメント(5’−ACGTG−3’)に結合することにより、転写因子として作用したりする。本明細書において、「HIF阻害」は、HIFによる転写制御を阻害することにより測定することができる。かかる転写制御の阻害は、HIF自体の阻害に加えて、HIFと複合体を形成する因子、または下流に存在する因子の阻害を含み得る。
【0019】
ある化合物又は混合物がHIF阻害活性を有していることは、当業者は、本明細書の実施例に記載された方法により確認することが可能である。例えば、HREの下流にルシフェラーゼを連結したコンストラクトを細胞に導入し、塩化コバルト又はDMOG(ジメチルオキサロイルグリシン)等でHIFを誘導し、被験試料を細胞に添加することで、HIF阻害活性の確認が可能である。
【0020】
本開示のHIF阻害剤とは、下記式(1)〜(6)で表される化合物から選択される一以上の化合物又はその塩を意味する。
【0022】
式(1)で表される化合物は、2−アザヒポキサンチン(AHX)であり、植物成長調節作用を有することが知られている(特許第4565018号公報)。
【0023】
式(2)で表される化合物は、AHXの代謝産物であり、AHXと同様に、植物成長調節作用を有することが知られている(特許第5915982号公報)。
【0024】
式(3)で表される化合物は、(2S,3S,4S)−2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル 4−クロロ−3,5−ジメトキシベンゾエート(FLY−5)であり、植物成長調節作用を有することが知られている(特開2020−029428号公報)。
【0025】
式(4)で表される化合物は、N−(4−シンナムアミドブチル)−3−フェニルオキシラン−2−カルボキサミド(KinaT−6)である。本発明者らがキナメツムタケ子実体から抽出した化合物であり、抗癌剤耐性抑制作用を有することを既に見出している(特願2019−151529号)。キナメツムタケ子実体を破砕し、エタノール、次いでアセトンで抽出した後、減圧下で濃縮する。次いで、抽出液をn−ヘキサン及び水で液−液分配することにより、水可溶部及びヘキサン可溶部を取得する。得られた水可溶部を、次いで酢酸エチル及び水で液−液分配して、更なる水可溶部及び酢酸エチル可溶部を得る。得られた酢酸エチル可溶部をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60N(関東化学株式会社),ジクロロメタン:アセトン=95:5,90:10,80:20,70:30,60:40,50:50;ジクロロメタン:酢酸エチル=9:1,0:10)により溶出させて分画して10画分を取得する。画分5を更にフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60N,ジクロロメタン:メタノール=100:0,98:2,95:5,92:8,90:10,80:20,50:50,0:100)、MPLC(シリカ)、Sep−pakクロマトグラフィー(ODS)、逆相HPLC(フェニル)に供して分画することでKinaT−6を得られる。
【0026】
式(5)で表される化合物は、N−(4−(2,3−ジヒドロキシ−3−フェニルプロパノイド)ブチル)シンナムアミド(KinaT−8)である。本発明者らがキナメツムタケ子実体から抽出した化合物である。
【0027】
式(6)で表される化合物は、(3R,6S)−3−ベンジル−3−ヒドロキシ−6−イソブチル−6−メチルピペラジン−2,5−ジオン(KOM−S−1)であり、抗マラリア作用を有することが知られている。コムラサキシメジ菌糸体から抽出可能な化合物である。コムラサキシメジ菌糸体培養濾液酢酸エチル可溶部を各種クロマトグラフィーに供することによって、単離することができる。
【0028】
上記化合物は、塩の形態であってもよい。塩は薬剤学的に許容される塩であればよく、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸との塩;ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸との塩;ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属との塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩;アルミニウム塩;アンモニウム塩;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン]、tert−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン等の有機塩基との塩;アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸との塩;アルギニン、リジン、オルニチン等の塩基性アミノ酸との塩等が挙げられる。
【0029】
<治療又は予防剤>
本開示のHIF阻害剤は、HIFと関連する疾患、障害又は症状の治療又は予防剤として利用可能であることが期待される。したがって、本開示によれば、例えば、上記HIF阻害剤を含む、網膜変性疾患、網脈絡膜病的血管新生疾患、がん、神経変性又は自己免疫疾患の治療又は予防剤が提供され得る。本開示によれば、例えば、上記HIF阻害剤を、それを必要とする患者に投与することを含む、網膜変性疾患、網脈絡膜病的血管新生疾患、がん、神経変性又は自己免疫疾患の治療又は予防方法が提供され得る。本開示によれば、例えば、網膜変性疾患、網脈絡膜病的血管新生疾患、がん、神経変性又は自己免疫疾患の治療又は予防に使用するための、上記HIF阻害剤が提供され得る。本開示によれば、例えば、網膜変性疾患、網脈絡膜病的血管新生疾患、がん、神経変性又は自己免疫疾患の治療又は予防剤を製造するための、上記HIF阻害剤の使用が提供され得る。
【0030】
特に、本開示のHIF阻害剤は、細胞毒性が低い点において有用であり得る。
【0031】
また、本開示のHIF阻害剤は、例えば、眼科領域の疾患(眼のがん、網膜変性疾患、網脈絡膜病的血管新生疾患等)等の治療又は予防に用いられ得る。
【0032】
本開示のHIF阻害剤は、網膜変性疾患の治療又は予防に用いられ得る。網膜変性疾患は、特に限定されないが、萎縮型加齢黄斑変性、網膜色素変性、遺伝性黄斑ジストロフィ等が挙げられる。
【0033】
本開示のHIF阻害剤は、脈絡膜病的血管新生の治療又は予防に用いられ得る。本開示のHIF阻害剤は、血管新生抑制効果を有し、血管新生の抑制のために用いられ得る。本開示のHIF阻害剤は、線維性組織増殖の抑制効果を有し、線維性組織増殖(瘢痕形成)の抑制に用いられ得る。網脈絡膜病的血管新生疾患は、特に限定されないが、未熟児網膜症、糖尿病網膜症、増殖硝子体網膜症、加齢黄斑変性、VHL(Von Hippel−Lindau)病等が挙げられる。
【0034】
本開示のHIF阻害剤は、がんの治療又は予防に用いられ得る。がんは、特に限定されないが、眼瞼悪性腫瘍、角・結膜悪性腫瘍、眼内悪性腫瘍、眼窩悪性腫瘍、肺がん、前立腺がん、乳がん、肝がん、胃がん、大腸がん、甲状腺がん、腎臓がん、子宮がん、卵巣がん、骨肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、悪性リンパ腫、急性・慢性白血病、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性腫瘍等が挙げられる。
【0035】
本開示のHIF阻害剤は、神経変性の治療又は予防に用いられ得る。神経変性は、特に限定されないが、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン症候群、アルツハイマー病、進行性核上性麻痺、ハンチントン病、多系統萎縮症、脊髄小脳変性等が挙げられる。
【0036】
本開示のHIF阻害剤は、自己免疫疾患の治療又は予防に用いられ得る。自己免疫疾患は、特に限定されないが、ぶどう膜炎、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、抗リン脂質抗体症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎、強皮症、シェーグレン症候群、IgG4関連疾患、血管炎症候群、混合性結合組織病、臓器特異的自己免疫疾患等が挙げられる。
【0037】
<製剤>
本開示のHIF阻害剤、治療又は予防剤等の医薬又は組成物は、その適用に合わせた形態に製剤化されて提供され得る。製剤化は、日本薬局方記載の方法等の医薬製剤の製造法として自体公知の方法に従って行うことができる。例えば、本開示におけるHIF阻害剤、治療又は予防剤等の医薬又は組成物が眼科用組成物である場合は、眼注射液、眼軟膏、点眼剤又は眼灌流液として、経口投与用組成物である場合は、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤として製剤化され得る。
【0038】
製剤化の際に、製剤中に一般に使用される結合剤、包含剤、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤等の添加剤を含有させてもよい。また、経口投与用組成物の場合は、内用水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等の液体状態として製剤化してもよく、使用時に再溶解される乾燥状態のものとして製剤化してもよい。
【0039】
非経口投与用組成物の場合、有効成分が含まれるように単位投与量アンプルもしくは多投与量容器又はチューブ内に収容された状態に製剤化してもよく、また、安定剤、緩衝剤、保存剤、等張化剤等の添加剤も含有させてもよい。また、非経口投与用組成物の場合、使用時に、適当な担体(滅菌水等)で再溶解可能な粉体に製剤化されてもよい。非経口投与としては、硝子体内投与、結膜下投与、前房内投与、点眼投与、腹腔内投与等が挙げられる。患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。その投与量は、年齢、投与経路、投与回数により異なり、当業者であれば適宜選択できる。
【0040】
製剤化の際に添加される添加剤としては、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤、防腐剤、抗酸化剤等が挙げられる。 賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、D−マンニトール、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸が挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカが挙げられる。結合剤としては、例えば、結晶セルロース、白糖、D−マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デンプン、ショ糖、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムが挙げられる。崩壊剤としては、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、L−ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。溶剤としては、例えば、注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油が挙げられる。溶解補助剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムが挙げられる。懸濁化剤としては、例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤;例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子が挙げられる。等張化剤としては、例えば、ブドウ糖、D−ソルビトール、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトールが挙げられる。緩衝剤としては、例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液が挙げられる。無痛化剤としては、例えば、ベンジルアルコールが挙げられる。防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸が挙げられる。抗酸化剤としては、例えば、亜硫酸塩、アスコルビン酸、α−トコフェロールが挙げられる。
【実施例】
【0041】
実施例1:KinaT−8の単離
【化4】
キナメツムタケ子実体17.0kgを破砕し、エタノール、次いでアセトンで抽出した後、減圧下で濃縮した。次いで、抽出液をn−ヘキサン及び水で液−液分配することにより、水可溶部及びヘキサン可溶部を取得した。得られた水可溶部を、次いで酢酸エチル及び水で液−液分配して、更なる水可溶部及び酢酸エチル可溶部を得た。得られた酢酸エチル可溶部をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60N(関東化学株式会社),ジクロロメタン:アセトン=95:5,90:10,80:20,70:30,60:40,50:50;ジクロロメタン:酢酸エチル=9:1,0:10)により溶出させて分画して10画分を取得した。画分8を更にフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60N,ジクロロメタン:メタノール=100:0,98:2,95:5,92:8,90:10,80:20,50:50,0:100)、MPLC(シリカ)、Sep−pakクロマトグラフィー(ODS)、逆相HPLC(フェニル)に供して分画することで24.6mgのKinaT−8を得た。
1H−NMR及び
13C−NMRなどの物性データを
図8に示す。
【0042】
試験例1:レポーターアッセイ系の確立
国際公開第2018/088566号に記載された方法と同様の方法により、マウス繊維芽細胞株(NIH−3T3)、マウス網膜錐体細胞株(661W)及びヒト網膜色素上皮細胞株(ARPE19)対しレンチウイルスを用いてHIF活性依存的−Firefly−Luciferaseと内在性コントロールCMV−Renilla−Luciferaseをともに遺伝子導入し安定発現株(RH−3T3、RH−661W及びRH−ARPE19)を作成した。
【0043】
これらの細胞に塩化コバルト(CoCl
2)を添加することによりHIFが誘導され、さらにルシフェリンを加えることによりHIF活性と相関する発光シグナルを得ることができる。この細胞に対して種々の試料を添加し、HIF阻害活性を有する物質の探索を行った。なお、ポジティブコントロールとして、既知のHIF阻害剤であるトポテカン(Topo)、ドキソルビシン(DXR)、ケトミンを使用した。
【0044】
試験例2:HIF阻害活性を有する物質のスクリーニング1
国際公開第2018/088566号に記載された方法と同様の方法により、AHX、AOH、ICA(イミダゾール−4−カルボキシアミド)、エリナシンA、ヘリセノンC、ヘリセノンD、ヘリセノンE、FLY−1、FLY−4、FLY−5、グリフォリン及びネグリフォリンのHIF阻害活性を調べた。なお、これらの化合物の濃度は1mg/mLとした。
【0045】
RH−3T3を用いたアッセイの結果を
図1に、RH−661Wを用いたアッセイの結果を
図2に、RH−ARPE19を用いたアッセイの結果を
図3に示す。
図1〜3に示した結果から明らかなように、AHX、AOH及びFLY−5はHIF阻害活性を示し、特にAHX及びFLY−5は強いHIF阻害活性を示した。
【0046】
試験例3:HIF阻害活性を有する物質のスクリーニング2
試験例2と同様に、Oshiro O−1、Oshiro O−2、ShirooniK−3、ShirooniK−6、KinaT−8、KinaT−10、KOM−S−1、ヘリセンB、SugiA−14及びKinaT−6のHIF阻害活性を調べた。なお、これらの化合物の濃度は1mg/mLとした。
【0047】
RH−3T3を用いたアッセイの結果を
図4に、RH−661Wを用いたアッセイの結果を
図5に、RH−ARPE19を用いたアッセイの結果を
図6に示す。
図4〜6に示した結果から明らかなように、KinaT−6及びKinaT−8はHIF阻害活性を示した。
【0048】
試験例4:酸素誘導網膜症(OIR)モデルマウスによるアッセイ
以下の常法にしたがって、OIRモデルマウスを作製した。新生仔マウス(C57BL/6J)を生後8日から11日まで高酸素(85%)下で飼育した。生後11日から17日まで通常酸素条件下で飼育した。生後12日から16日まで、AHX300mg/kg又はビークルを1日1回経口投与した。
【0049】
生後17日にマウスの眼球を摘出し、4%パラホルムアルデヒド溶液で15分間固定した。網膜のホールマウントを4%パラホルムアルデヒド溶液で1時間、後固定した。洗浄後、Alexa Fluor 594が結合したGriffonia simplicifoliaのイソレクチンGS-IB4で、4℃にて3日間、組織を染色した。封入後、網膜血管を蛍光顕微鏡で観察した。
【0050】
蛍光顕微鏡で観察した網膜画像をPhotoshop(登録商標)で読み込み、自動選択ツールを用いて病的血管新生(Tufts)と無血管領域(Vaso-obliteration)のピクセル数をカウントした。その結果を
図7に示す。
図7の上段は、病的血管新生と無血管領域のピクセル数を表すグラフであり、下段は病的血管新生と無血管領域のピクセル数を網膜全体のピクセル数で割った数値を表すグラフである。AHX投与群では、病的血管新生の有意な抑制が認められた。また、AHX投与群とビークル投与群では無血管領域に有意な変化が認められなかった。さらに、AHX投与群とビークル投与群では体重変化に差は認めらなかった。