特開2021-195370(P2021-195370A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大正製薬株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-195370(P2021-195370A)
(43)【公開日】2021年12月27日
(54)【発明の名称】固形組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/192 20060101AFI20211129BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20211129BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20211129BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20211129BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20211129BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20211129BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20211129BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20211129BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20211129BHJP
【FI】
   A61K31/192
   A61K31/137
   A61K9/14
   A61K9/20
   A61K9/48
   A61P29/00
   A61P11/00
   A61K31/485
   A61K31/198
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2021-93325(P2021-93325)
(22)【出願日】2021年6月3日
(31)【優先権主張番号】特願2020-101852(P2020-101852)
(32)【優先日】2020年6月11日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】東 梢
(72)【発明者】
【氏名】西島 正道
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC03
4C076CC04
4C076DD67
4C076EE31
4C076FF65
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC27
4C086CB23
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086NA03
4C086NA05
4C086ZA07
4C086ZA08
4C086ZA21
4C086ZB11
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA24
4C206FA10
4C206FA31
4C206JA26
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA54
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA61
4C206MA63
4C206NA03
4C206NA05
4C206ZA07
4C206ZA08
4C206ZA21
4C206ZB11
(57)【要約】
【課題】
イブプロフェンとアンブロキソール又はその塩を含有する固形組成物であって、アンブロキソール又はその塩の経時的な含量低下及び製剤外観変化が抑制された固形組成物を提供すること。
【解決手段】
(a)イブプロフェン、(b)アンブロキソール又はその塩、及び(c)プソイドエフェドリン又はその塩を含有し、(a)イブプロフェンが、(b)アンブロキソール又はその塩1質量部に対し、11質量部以上であることを特徴とする固形組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)イブプロフェン、(b)アンブロキソール又はその塩、及び(c)プソイドエフェドリン又はその塩を含有し、(a)イブプロフェンが、(b)アンブロキソール又はその塩1質量部に対し、11質量部以上であることを特徴とする固形組成物。
【請求項2】
さらに、(d1)ジヒドロコデイン又はその塩、(d2)デキストロメトルファン又はその塩及び(d3)カルボシステインから選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1に記載の固形組成物。
【請求項3】
(b)アンブロキソール又はその塩がアンブロキソール塩酸塩である請求項1又は2に記載の固形組成物。
【請求項4】
(c)プソイドエフェドリン又はその塩がプソイドエフェドリン塩酸塩である請求項1〜3のいずれかに記載の固形組成物。
【請求項5】
錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、又はカプセル剤である請求項1〜4のいずれかに記載の固形組成物。
【請求項6】
(a)イブプロフェン及び(b)アンブロキソール又はその塩を含有する固形組成物において、(c)プソイドエフェドリン又はその塩を含有することを特徴とする、(b)アンブロキソール又はその塩の含量低下を抑制し、かつ、固形組成物の外観変化を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イブプロフェンとアンブロキソール又はその塩を含有する固形組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる「かぜ」の症状として、発熱、鼻炎症状及びのどの炎症を併発することは往々にして生じやすく、これらの症状を同時に改善することは患者のQOLを著しく改善するものである。
【0003】
イブプロフェンは非ステロイド系抗炎症薬であり、プロスタグランジンの生成を抑制することにより抗炎症作用、解熱作用、鎮痛作用を有し、急性上気道炎(風邪)の解熱・鎮痛等に有効であることから、総合感冒薬の解熱鎮痛成分として配合されている(非特許文献1)。かぜ罹患時の頭痛は特に患者にとって苦痛であり、速やかに緩和することが望まれる。この方法の一つとして、解熱鎮痛成分の配合量を増やし、血中濃度を高めることが考えられる。現在、市販品には、イブプロフェンの1日服薬量として450mgや600mgのものが存在している。
アンブロキソール塩酸塩は、気道潤滑型の去痰剤として知られており、医療用薬では急性及び慢性気管支炎や気管支喘息等の去痰の効能・効果を有する(非特許文献2)。
【0004】
これまで、イブプロフェンとアンブロキソール若しくはその塩を配合した固形製剤が知られており、特定量前記成分が共存した製剤では、外観変化が生じたり、アンブロキソールの安定性低下が生じることが知られている。しかしながら、かぜ症状の治療、緩和のため、イブプロフェン等の抗炎症・解熱鎮痛薬やアンブロキソール等の去痰薬を同時に配合することは、広く求められている。配合剤の安定性や服薬のし易さ等は技術の進歩と共に改善しているが、未だ十分とは言えず、また、症状の緩和を目的に、イブプロフェン等の抗炎症・解熱鎮痛成分をより多く含む医薬品が求められていることも事実である。
【0005】
特許文献1では、イブプロフェンとアンブロキソール塩酸塩を配合した際の配合変化(製剤外観変化)を、トラネキサム酸を共存させ,気密包装体に収容する方法で改善する方法が示されている。特許文献2では、イブプロフェンとアンブロキソール又はその塩の配合によるアンブロキソール又はその塩の安定性低下を、カルボシステインを共存させることで改善する方法が示されている。
【0006】
しかしながら、イブプロフェンとアンブロキソール又はその塩を含有した組成物において、製剤外観変化とアンブロキソール安定性低下が同時に生じた場合、製剤外観変化の改善とアンブロキソール安定性改善をともに満たす方法は知られていない。また、イブプロフェンとアンブロキソール又はその塩を含有させた組成物において、配合変化を改善できる方法が十分に存在するとは言えず、簡便に改善できる、さらなる方法が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】第17局改正日本薬局方解説書 株式会社廣川書店 第C−625頁
【非特許文献2】日本薬局方外医薬品規格2002 158頁
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019−38801
【特許文献2】特許6260736
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、イブプロフェン、アンブロキソール又はその塩を含有する固形組成物を製造したところ、アンブロキソール又はその塩1質量部に対し、イブプロフェンを11質量部以上配合すると、アンブロキソール又はその塩の含量の経時的低下と製剤の外観変化、特に色調変化が同時に生ずるという知見を得た。
【0010】
本発明は、前記背景、事情に鑑みなされたもので、イブプロフェンとアンブロキソール又はその塩を特定量含有した組成物であって、アンブロキソール又はその塩の経時的な含量低下が抑制され、かつ、組成物の外観変化が抑制された、優れた固形組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、イブプロフェン、アンブロキソール又はその塩を含有する固形組成物にプソイドエフェドリン又はその塩を含有させると、意外にもアンブロキソール又はその塩の経時的な含量低下、及び組成物外観変化の両方が抑えられることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は
(1)(a)イブプロフェン、(b)アンブロキソール又はその塩、及び(c)プソイドエフェドリン又はその塩を含有し、(a)イブプロフェンが、(b)アンブロキソール又はその塩1質量部に対し、11質量部以上であることを特徴とする固形組成物、
(2)さらに、(d1)ジヒドロコデイン又はその塩、(d2)デキストロメトルファン又はその塩及び(d3)カルボシステインから選ばれる少なくとも1種を含有する(1)に記載の固形組成物、
(3)(b)アンブロキソール又はその塩がアンブロキソール塩酸塩である(1)又は(2)に記載の固形組成物、
(4)(c)プソイドエフェドリン又はその塩がプソイドエフェドリン塩酸塩である(1)〜(3)のいずれかに記載の固形組成物、
(5)錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、又はカプセル剤である(1)〜(4)のいずれかに記載の固形組成物、
(6)(a)イブプロフェン及び(b)アンブロキソール又はその塩を含有する固形組成物において、(c)プソイドエフェドリン又はその塩を含有することを特徴とする、(b)アンブロキソール又はその塩の含量低下を抑制し、かつ、固形組成物の外観変化を抑制する方法、
(7)(a)イブプロフェン及び(b)アンブロキソール又はその塩を含有する固形組成物において、(c)プソイドエフェドリン又はその塩、並びに(d1)ジヒドロコデイン又はその塩、(d2)デキストロメトルファン又はその塩及び(d3)カルボシステインから選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする、(b)アンブロキソール又はその塩の含量低下を抑制し、かつ、固形組成物の外観変化を抑制する方法、
(8)(a)イブプロフェン及び(b)アンブロキソール又はその塩を含み、(b)アンブロキソール又はその塩が安定化され、かつ、組成物外観変化が抑制された固形組成物を製造するための、(c)プソイドエフェドリン又はその塩の使用、
(9)(a)イブプロフェン及び(b)アンブロキソール又はその塩を含む固形組成物中の(b)アンブロキソール又はその塩を安定化し、組成物外観変化を抑制するための、(c)プソイドエフェドリン又はその塩の使用、
である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、イブプロフェン及びアンブロキソール及びその塩を含有し、アンブロキソール又はその塩の安定性に優れ、組成物色調の変化が抑制された固形組成物の提供が可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に用いられるイブプロフェンは、化学式C1318で示される化合物であり、医薬的に許容されるものであれば特に限定はしない。イブプロフェンは、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。
【0015】
本発明の固形組成物中におけるイブプロフェンの含有量は、その薬効を示す量であれば特に限定されないが、通常1〜90質量%、好ましくは5〜80質量%、より好ましくは10〜70質量%である。解熱鎮痛作用を十分に発揮させるという観点では、1日当たりの量としては、特に限定されないが、通常、100mg以上、好ましくは300mg以上、さらに好ましくは500mg以上、特に好ましくは600mg以上である。
【0016】
本発明に用いられるアンブロキソール又はその塩は、化学式C1318BrOで示される化合物又はその塩であり、これらのうちの一種を単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。このようなアンブロキソール又はその塩としては、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。また、アンブロキソール又はその塩は医薬的に許容されるものであれば特に限定されないが、前記塩とは、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸の塩、及び酢酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、炭酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、特に好ましくは塩酸塩である。
【0017】
本発明の固形組成物中におけるアンブロキソール又はその塩の含有量(アンブロキソール又はその塩のうちの2種以上が含有される場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)は、その薬効を示す量であれば特に限定されないが、通常0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.5〜10質量%である。
【0018】
本発明に用いられるプソイドエフェドリン又はその塩は、化学式C1015NOで示される化合物又はその塩であり、これらのうちの一種を単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。このようなプソイドエフェドリン又はその塩としては、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。また、プソイドエフェドリン又はその塩は医薬的に許容されるものであれば特に限定されないが、前記塩とは、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸の塩、及び酢酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、炭酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、特に好ましくは塩酸塩である。
【0019】
本発明の固形組成物中におけるプソイドエフェドリン又はその塩の含有量(プソイドエフェドリン又はその塩のうちの2種以上が含有される場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)は、その薬効を示す量であれば特に限定されないが、通常0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%である。
【0020】
本発明に用いられるジヒドロコデイン又はその塩は、化学式C1823NOで示される化合物又はその塩であり、これらのうちの一種を単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。このようなジヒドロコデイン又はその塩としては、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。また、ジヒドロコデイン又はその塩は医薬的に許容されるものであれば特に限定されないが、前記塩とは、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸の塩、及び酢酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、炭酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、特に好ましくはリン酸塩である。
【0021】
本発明の固形組成物中におけるジヒドロコデイン又はその塩の含有量(ジヒドロコデイン又はその塩のうちの2種以上が含有される場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)は、その薬効を示す量であれば特に限定されないが、通常0.001〜30質量%、好ましくは0.005〜20質量%、より好ましくは0.01〜10質量%である。
【0022】
本発明に用いられるデキストロメトルファン又はその塩は、化学式C1825NOで示される化合物又はその塩であり、これらのうちの一種を単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。このようなデキストロメトルファン又はその塩としては、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。また、デキストロメトルファン又はその塩は医薬的に許容されるものであれば特に限定されないが、前記塩とは、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、フェノールフタリン酸塩、リン酸塩等の無機酸の塩、及び酢酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、炭酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、特に好ましくは臭化水素酸塩又はフェノールフタリン酸塩である。
【0023】
本発明の固形組成物中におけるデキストロメトルファン又はその塩の含有量(デキストロメトルファン又はその塩のうちの2種以上が含有される場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)は、その薬効を示す量であれば特に限定されないが、通常0.01〜30質量%、好ましくは0.05〜20質量%、より好ましくは0.1〜10質量%である。
【0024】
本発明に用いられるカルボシステインは、化学式CNOSで示される化合物であり、医薬的に許容されるものであれば特に限定はしないが、通常、L−カルボシステインが使用される。カルボシステインは、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。
【0025】
本発明の固形組成物中におけるカルボシステインの含有量は、特に限定されないが、通常1〜90質量%、好ましくは5〜70質量%、より好ましくは10〜50質量%である。
【0026】
(a)イブプロフェンと(b)アンブロキソール又はその塩の配合比は、(b)アンブロキソール又はその塩1質量部に対し、(a)イブプロフェンが11質量部以上、好ましくは12質量部以上、さらに好ましくは13質量部以上である。また、(a)イブプロフェンと(b)アンブロキソール又はその塩の配合比において、(b)アンブロキソール又はその塩1質量部に対する(a)イブプロフェンの上限は、特に限定されないが、好ましくは25質量部以下、より好ましくは24質量部以下、さらに好ましくは23質量部以下である。
【0027】
(b)アンブロキソール又はその塩と(c)プソイドエフェドリン又はその塩の配合比は、(b)アンブロキソール又はその塩1質量部に対し、(c)プソイドエフェドリン又はその塩が、特に限定されないが、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは1.3質量部以上であり、上限は特に限定されないが、好ましくは50質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
【0028】
(b)アンブロキソール又はその塩と(d1)ジヒドロコデイン又はその塩の配合比は、(b)アンブロキソール又はその塩1質量部に対し、(d1)ジヒドロコデイン又はその塩が、特に限定されないが、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上であり、上限は特に限定されないが、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。
【0029】
(b)アンブロキソール又はその塩と(d2)デキストロメトルファン又はその塩の配合比は、(b)アンブロキソール又はその塩1質量部に対し、(d2)デキストロメトルファン又はその塩が、特に限定されないが、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、上限は特に限定されないが、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。
【0030】
(b)アンブロキソール又はその塩と(d3)カルボシステインの配合比は、(b)アンブロキソール又はその塩1質量部に対し、(d3)カルボシステインが、特に限定されないが、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であり、上限は特に限定されないが、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。
【0031】
(a)イブプロフェンと(c)プソイドエフェドリン又はその塩の配合比は、(a)イブプロフェン1質量部に対し、(c)プソイドエフェドリン又はその塩が、特に限定されないが、好ましくは0.001〜10質量部、さらに好ましくは0.01〜5質量部である。
【0032】
本発明の固形組成物中には本発明の効果を損なわない質的、量的範囲で、通常用いられる他の有効成分、賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、清涼化剤、着色剤、矯味矯臭剤、香料、コーティング剤などを配合することができる。
【0033】
本発明の固形組成物に配合できる他の有効成分としては、例えば、解熱鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、ノスカピン類、気管支拡張剤、去痰剤、催眠鎮静剤、ビタミン類、抗炎症剤、胃粘膜保護剤、生薬類、漢方処方、カフェイン類等があげられ、これらからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有しても良い。
【0034】
本発明の固形組成物に配合できる賦形剤としては、例えば、乳糖、デンプン類、結晶セルロース、ショ糖、糖アルコール等が挙げられ、崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、アルファー化デンプン等が挙げられ、結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ゼラチン、アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、プルラン等が挙げられ、流動化剤としては、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素等が挙げられ、滑沢剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、硬化油、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等が挙げられ、清涼化剤としては、メントール、ハッカ油、ユーカリ油等が挙げられる。
【0035】
本発明の固形組成物は、常法により製造することができ、その方法は特に限定されるものではない。
例えば、(a)イブプロフェン(以下、(a)成分ともいう)、(b)アンブロキソール又はその塩(以下、(b)成分ともいう)、(c)プソイドエフェドリン又はその塩(以下、(c)成分ともいう)を単に混合するだけでも良く、混合後に造粒しても良く、得られた造粒物を被覆してもよい。また、(a)成分、(b)成分又は(c)成分は必ずしも同一の造粒物に含まれている必要はない。 例えば、(a)成分と(c)成分を含有する造粒物を製造後に、(b)成分を混合する、あるいは、(a)成分と(b)成分を含有する造粒物を製造後に、(c)成分を混合する、あるいは、(a)成分と(c)成分を含有する造粒物と、(b)成分と(c)成分を含有する造粒物を製造後、2つの造粒物を混合する、等である。
【0036】
また、(d1)ジヒドロコデイン又はその塩、(d2)デキストロメトルファン又はその塩、(d3)カルボシステイン((d1)(d2)(d3)を総称して、(d)成分とも言う)を配合する場合も、特に制限はなく、例えば、単に、(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分を混合するだけでも良く、混合後に造粒や被覆等しても良い。
【0037】
造粒方法も特に限定されず、湿式造粒法、乾式造粒法又は溶融造粒法などにより製造できるが、好ましくは湿式造粒法である。湿式造粒法には、例えば撹拌造粒法、流動層造粒法、練合造粒法、押し出し造粒法、転動流動造粒法、遠心流動造粒法が挙げられる。また得られた造粒物に適宜上記有効成分や賦形剤などの慣用の製剤添加剤を配合してもよい。また、このようにして得た混合物を打錠して錠剤とすることもできる。錠剤を製造する場合は、直接打錠法により製造してもよい。
【0038】
本発明の固形組成物は、通常、日本薬局方の製剤通則に規定されている剤形であれば特に限定されないが、好ましくは錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤である。日本薬局方の製剤通則に規定されている錠剤には、口腔内崩壊錠、チュアブル錠、発泡錠、分散錠及び溶解錠、フィルムコーティング錠、糖衣錠、有核錠、積層錠などが含まれる。また、錠剤に割線や識別性向上のためのマーク、刻印を設けることができる。さらに、本製剤の錠剤は、丸錠であってもよいし、異型錠であってもよい。
【実施例】
【0039】
以下に実施例、対照例及び比較例を挙げ、本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に限定されるものではない。
【0040】
(対照例1〜2、比較例1、実施例1〜5)
表1に示す処方に従い、各成分を量り取り、混合し、これに適量の水/エタノール混液を加え混合した後、乾燥し調製物を得た。
【0041】
(試験例1)
対照例1及び2、比較例1、実施例1〜5の調製物を65℃条件下で12日間保存した。保存後の固形組成物について、それぞれ組成物中のアンブロキソール含量を測定し残存率(%)を求めた。結果を表1に示した。
【0042】
(試験例2)
対照例1及び2、比較例1、実施例1〜5の調製物を5℃および65℃条件下で12日間保存した。保存後の固形組成物について、それぞれ、5℃保存品に対する、65℃保存品の外観変化度を目視で評価した。外観変化は、固形組成物の色調を以下の基準に従って評価した。結果を表1に示した。
【0043】
外観変化度
1:色調に変化なし
2:色調にわずかに変化あり
3:色調に変化あり
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示すように、対照例1ではアンブロキソール含量は低下せず、組成物の色調も変化しない。対照例2については、アンブロキソールの含量は低下するが、組成物の色調は変化しない。比較例1ではアンブロキソールの含量低下及び組成物の色調変化が認められた。一方、実施例1及び2では、アンブロキソールの含量低下及び組成物の外観変化を抑制することができた。また、実施例3〜5では、実施例2と同等またはそれ以上にアンブロキソールの含量低下及び組成物の外観変化を抑制することができた。すなわち、さらにジヒドロコデイン又はその塩、デキストロメトルファン又はその塩及びカルボシステインから選ばれる少なくとも1種を含有させると、アンブロキソール又はその塩の経時的な含量低下及び組成物外観変化を、これらを含有させない場合と同等以上に抑制されることが示された。特に、カルボシステインを含有させた実施例5では、アンブロキソール含量低下及び組成物の外観変化の抑制効果が著しかった。
【0046】
以下に製剤調製例を挙げる。
【0047】
(製剤例1)
表2の分量に基づき、造粒顆粒成分を湿式造粒した後、得られた造粒顆粒と後末添加成分を混合した後、1錠あたり約274.5mgの錠剤を調製し、1日あたり9錠服用とする製剤を製造した。
【0048】
【表2】
【0049】
(製剤例2)
表3の分量に基づき、造粒顆粒A成分を、湿式造粒して造粒顆粒Aを調製した。また、造粒顆粒B成分を、湿式造粒して造粒顆粒Bを調製した。得られた造粒顆粒A及び造粒顆粒Bと後末添加成分を混合した後、1錠あたり約300mgの錠剤を調製し、1日あたり9錠服用とする製剤を製造した。
【0050】
【表3】
【0051】
(製剤例3及び4)
表4の分量に基づき、造粒・コーティング顆粒成分を湿式造粒及びコーティングした後、得られた造粒・コーティング顆粒と後末添加成分を混合した後、製剤例3は1包あたり約1.34g、製剤例4は1包あたり約1.49gの顆粒剤を調製し、いずれも1日あたり3包服用とする製剤を製造した。
【0052】
【表4】
【0053】
(製剤例5〜20)
表5に製剤例を挙げる。
【0054】
【表5】
【0055】
製剤例5〜20における成分配合量、香料、包装形態、造粒方法、剤形は以下のとおりである。
各製剤例中の成分配合量は適宜増減可能である。例えば、D−マンニトールは製剤中に40〜70質量%が好ましく、50〜60質量%がより好ましい。軽質無水ケイ酸は製剤中に1〜15質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましい。有効成分は製剤中に10〜40質量%が好ましく、20〜30質量%がより好ましい。クロスポビドン、カルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースから選ばれる1種以上の合計は製剤中に3〜15質量%が好ましく、5〜10質量%がより好ましい。ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、硬化油、ステアリン酸カルシウムから選ばれる1種以上の合計は製剤中に0.5〜2質量%が好ましく、0.7〜1.8質量%がより好ましい。
香料は適宜選択し、配合可能である。有効成分の風味より、エチル−3−p−メンタン−3−カルボキサミドアセテート、バニラ様香料、緑茶様香料、ブラックティ様香料、チョコレート様香料、ミルク様香料が好ましい。
包装形態は医薬品に使用できるものであれば特に制限はなく、ビン等の密閉容器又はPTP等の気密容器が好ましく、ビン、PTPにピローをかけた密閉容器がより好ましい。 造粒方法は特に制限はなく、乾式造粒法、湿式造粒法でもよいが、好ましくは湿式造粒法である。湿式造粒法は撹拌造粒、流動層造粒、転動造粒、押し出し造粒が好ましく、流動層造粒がより好ましい。
剤形は固形製剤であれば特に制限はなく、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤が好ましく、錠剤が特に好ましい。錠剤はロータリー打錠機で製造できるものであれば特に制限はなく、発砲錠、多層錠、割線錠、ミニタブレット、カプレットでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明により、イブプロフェン及びアンブロキソール又はその塩を含有し、アンブロキソール又はその塩の安定性に優れ、製剤外観変化が抑制された固形組成物の提供が可能となった。また、本発明により、簡便な方法で、イブプロフェン及びアンブロキソールの又はその塩を含有する固形組成物の製剤安定性を保つことが可能となった。