特開2021-195413(P2021-195413A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋ゴム工業株式会社の特許一覧

特開2021-195413ゴム−スチールコード複合体、及びそれを用いた空気入りタイヤ
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-195413(P2021-195413A)
(43)【公開日】2021年12月27日
(54)【発明の名称】ゴム−スチールコード複合体、及びそれを用いた空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 7/00 20060101AFI20211129BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20211129BHJP
   C08K 5/47 20060101ALI20211129BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20211129BHJP
   C08K 3/06 20060101ALI20211129BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20211129BHJP
   C08L 61/12 20060101ALI20211129BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20211129BHJP
【FI】
   C08L7/00
   C08L9/00
   C08K5/47
   C08K7/06
   C08K3/06
   C08K5/3492
   C08L61/12
   B60C1/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-101240(P2020-101240)
(22)【出願日】2020年6月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】西川 由真
(72)【発明者】
【氏名】箕内 則夫
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA13
3D131AA39
3D131BA18
3D131BC07
3D131BC36
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC091
4J002BB181
4J002CC062
4J002DA046
4J002DA089
4J002EU188
4J002EV327
4J002FA009
4J002FD010
4J002FD019
4J002FD146
4J002FD152
4J002FD158
4J002FD207
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドの使用量を削減しつつ、初期接着性、及び湿熱接着性に優れたゴム−スチールコード複合体を提供することを目的とする。
【解決手段】ゴム組成物とスチールコードとが加硫接着したゴム−スチールコード複合体であって、上記ゴム組成物が、天然ゴムを含有するジエン系ゴム100質量部に対して、加硫剤1〜10質量部と、N,N−ジベンジルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド0.1〜5質量部と、メラミン誘導体と、レゾルシン系化合物とを含有するものとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム組成物とスチールコードとが加硫接着したゴム−スチールコード複合体であって、
前記ゴム組成物が、天然ゴムを含有するジエン系ゴム100質量部に対して、加硫剤1〜10質量部と、N,N−ジベンジルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド0.1〜5質量部と、メラミン誘導体と、レゾルシン系化合物とを含有する、ゴム−スチールコード複合体。
【請求項2】
前記メラミン誘導体の含有量が、ジエン系ゴム100質量部に対して、0.1〜5質量部である、請求項1に記載のゴム−スチールコード複合体。
【請求項3】
前記レゾルシン系化合物の含有量が、ジエン系ゴム100質量部に対して、0.1〜5質量部である、請求項1又は2に記載のゴム−スチールコード複合体。
【請求項4】
前記メラミン誘導体が、ヘキサメトキシメチルメラミンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム−スチールコード複合体。
【請求項5】
前記レゾルシン系化合物が、レゾルシン及び/又はレゾルシン・アルキルフェノール・ホルマリン樹脂である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴム−スチールコード複合体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のゴム−スチールコード複合体を有する、空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム−スチールコード複合体、及びそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤのベルト層等における金属補強材−ゴム複合体が高い補強効果を発揮し、信頼性を得るためには、被覆ゴムと金属補強材との間に安定且つ強力な接着が必要である。被覆ゴムと金属補強材との間に安定且つ強力な接着性を有する金属補強材−ゴム複合体を得る方法として、亜鉛、真鍮等でめっきされたスチールコード等の金属補強材を天然ゴムに硫黄を配合した被覆ゴムに埋設し、加熱加硫時にゴムの加硫と同時にこれらを接着させる、いわゆる直接加硫接着が広く用いられている。
【0003】
スチールコード等の金属補強材との接着に用いられるゴム組成物には、加硫促進剤として、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドが一般的に用いられている。しかしながら、この化合物は人体や環境への影響から使用量の削減が求められている。
【0004】
このような問題に対して、例えば、特許文献1には、N,N−ジベンジルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドを用いたゴム組成物が開示されているが、初期接着性、及び湿熱接着性に関してさらなる改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−308632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドの使用量を削減しつつ、初期接着性、及び湿熱接着性に優れたゴム−スチールコード複合体、及びそれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るゴム−スチールコード複合体は、ゴム組成物とスチールコードとが加硫接着したゴム−スチールコード複合体であって、上記ゴム組成物が、天然ゴムを含有するジエン系ゴム100質量部に対して、加硫剤1〜10質量部と、N,N−ジベンジルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド0.1〜5質量部と、メラミン誘導体と、レゾルシン系化合物とを含有するものとする。
【0008】
上記メラミン誘導体の含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、0.1〜5質量部であるものとすることができる。
【0009】
上記レゾルシン系化合物の含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、0.1〜5質量部であるものとすることができる。
【0010】
上記メラミン誘導体は、ヘキサメトキシメチルメラミンであるものとすることができる。
【0011】
上記レゾルシン系化合物は、レゾルシン及び/又はレゾルシン−アルキルフェノール−ホルマリン樹脂であるものとすることができる。
【0012】
本発明に係る空気入りタイヤは、上記ゴム−スチールコード複合体を有するものとする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のゴム−スチールコード複合体によれば、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドの使用量を削減した場合であっても、優れた初期接着性、及び湿熱接着性が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0015】
本実施形態に係るゴム−スチールコード複合体は、ゴム組成物とスチールコードとが加硫接着したゴム−スチールコード複合体であって、上記ゴム組成物が、天然ゴムを含有するジエン系ゴム100質量部に対して、加硫剤1〜10質量部と、N,N−ジベンジルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド0.1〜5質量部と、メラミン誘導体と、レゾルシン系化合物とを含有するものとする。
【0016】
本実施形態に係るゴム組成物は、ゴム成分として天然ゴム(NR)を含有するものであるが、天然ゴム(NR)以外のジエン系ゴムを含有していてもよい。そのようなジエン系ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)などが挙げられる。これらの中でも、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)であることが好ましい。すなわち、上記ゴム成分は、天然ゴム単独であるか、天然ゴムとイソプレンゴム(IR)との併用、又は天然ゴムとスチレンブタジエンゴム(SBR)との併用であることが好ましい。
【0017】
本実施形態に係る加硫剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などの硫黄成分が挙げられ、その含有量はジエン系ゴム100質量部に対して1〜10質量部であれば特に限定されないが、好ましくは2〜8質量部である。
【0018】
本実施形態に係るゴム組成物は、N,N−ジベンジルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド(DBBS)(別名:2−[(ジベンジルアミノ)チオ]ベンゾチアゾール)を含有するものである。N,N−ジベンジル−2−ベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドは、下記式(1)で表される化合物であり、環境への影響が懸念されるN,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドに対して、加硫反応時に発生する2級アミンの環境への影響が少ない。
【0019】
【化1】
【0020】
N,N−ジベンジルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して0.1〜5質量部であれば特に限定されないが、0.5〜4質量部であることが好ましく、1〜3質量部であることがより好ましい。含有量が上記範囲内である場合、優れた初期接着性、及び湿熱接着性が得られやすい。
【0021】
本実施形態に係るゴム組成物は、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドを含有しないことが好ましく、含有する場合であっても、ジエン系ゴム100質量部に対して、1質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下であることがより好ましい。
【0022】
本実施形態に係るゴム組成物には、メラミン誘導体(メチレン供与体)とレゾルシン系化合物(メチレン受容体)とを配合することができる。レゾルシン系化合物の水酸基とメラミン誘導体のメチレン基とが反応することで、ゴムを硬化させて、ゴムとスチールコードの接着性を高め、タイヤ走行に伴う負荷や発熱による接着性の劣化を抑制することができる。
【0023】
上記メラミン誘導体としては、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ペンタメトキシメチロールメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサキス−(メトキシメチル)メラミン、N,N’,N’’−トリメチル−N,N’,N’’−トリメチロールメラミン、N,N’,N’’−トリメチロールメラミン、N−メチロールメラミン、N,N’−(メトキシメチル)メラミン、N,N’,N’’−トリブチル−N,N’,N’’−トリメチロールメラミン等が挙げられ、その中でもヘキサメトキシメチルメラミンが特に好ましい。
【0024】
メラミン誘導体の含有量は、特に限定されないが、ジエン系ゴム100質量部に対して0.1〜5質量部であることが好ましく、0.5〜4質量部であることがより好ましく、1〜3質量部であることがさらに好ましい。含有量が上記範囲内である場合、優れた初期接着性、及び湿熱接着性が得られやすい。
【0025】
レゾルシン系化合物としては、レゾルシン、レゾルシン誘導体が挙げられる。レゾルシン誘導体としては、レゾルシンとホルムアルデヒドとが縮合したレゾルシン・ホルマリン樹脂や、レゾルシン・ホルマリン樹脂の繰り返し単位の一部がアルキル化したレゾルシン・アルキルフェノール・ホルマリン樹脂(以下、変性レゾルシン・ホルマリン樹脂ともいう)だけでなく、フェノール類(フェノール、クレゾール等)とアルデヒドとが縮合したフェノール・ホルマリン樹脂、クレゾール・ホルマリン樹脂等のフェノール系樹脂を用いることもできる。変性レゾルシン・ホルマリン樹脂としては、住友化学工業(株)製のスミカノール620や、インドスペック社製のペナコライト樹脂B−16S、B−18S、B−19S、B−20などが挙げられる。ゴム成分や他の成分との相溶性や硬化後の樹脂の緻密さ及び信頼性の見地からはレゾルシン又はレゾルシン・アルキルフェノール・ホルマリン樹脂であることが好ましい。
【0026】
レゾルシン系化合物の含有量は、特に限定されないが、ジエン系ゴム100質量部に対して0.1〜5質量部であることが好ましく、0.5〜4質量部であることがより好ましく、1〜3質量部であることがさらに好ましい。含有量が上記範囲内である場合、優れた初期接着性、及び湿熱接着性が得られやすい。
【0027】
メラミン誘導体とレゾルシン系化合物との含有割合(メラミン誘導体/レゾルシン系化合物)は、特に限定されないが、0.25〜4であることが好ましく、0.5〜2であることがより好ましい。
【0028】
本実施形態に係るゴム組成物には、スチールコードとの接着性向上剤として有機酸コバルト塩を配合してもよい。有機酸コバルト塩としては、例えば、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルト、オレイン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ロジン酸コバルト、ホウ酸コバルト、マレイン酸コバルトなどが挙げられ、これらの中でも加工性の点からナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルトが特に好ましい。有機酸コバルト塩の含有量は、特に限定しないが、ジエン系ゴム100質量部に対し、金属分換算で0.03〜0.50質量部であることが好ましい。
【0029】
本実施形態に係るゴム組成物には、上記した各成分に加え、通常のゴム工業で使用されている補強性充填剤、プロセスオイル、亜鉛華、ステアリン酸、軟化剤、可塑剤、ワックス、老化防止剤、加硫促進剤などの配合薬品類を通常の範囲内で適宜配合することができる。
【0030】
補強性充填剤としては、カーボンブラック及び/又はシリカを用いることが好ましい。すなわち、補強性充填剤は、カーボンブラック単独でも、シリカ単独でも、カーボンブラックとシリカの併用でもよい。好ましくは、カーボンブラック単独、又はカーボンブラックとシリカの併用である。補強性充填剤の含有量は、特に限定されず、例えばジエン系ゴム100質量部に対して10〜140質量部であることが好ましく、より好ましくは20〜100質量部であり、さらに好ましくは30〜80質量部である。
【0031】
上記カーボンブラックとしては、特に限定されず、公知の種々の品種を用いることができる。カーボンブラックの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して5〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは20〜80質量部である。
【0032】
シリカとしても、特に限定されないが、湿式沈降法シリカや湿式ゲル法シリカなどの湿式シリカが好ましく用いられる。シリカを配合する場合、その含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して5〜40質量部であることが好ましく、より好ましくは5〜30質量部である。
【0033】
本実施形態に係るゴム組成物は、通常用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し調製することができる。
【0034】
本実施形態に係るゴム組成物は、空気入りタイヤのベルト層やカーカス層において、補強材として使用されるスチールコードの被覆(トッピング)ゴムとして用いられる。すなわち、ベルトコード及び/又はカーカスコードの被覆用ゴム組成物として用いられる。該ゴム組成物は、常法に従い、スチールカレンダーなどのトッピング装置によりスチールコードトッピング反を製造し、これをベルト層及び/又はカーカス層として用いて、未加硫タイヤを作製し、常法に従い加硫成形することにより空気入りタイヤを製造することができる。
【0035】
空気入りタイヤとしては、乗用車用タイヤでも重荷重用タイヤでもよく、特に限定されない。なお、空気入りタイヤの構造自体は周知であり、特に限定されない。一般には、空気入りタイヤは、左右一対のビード部及びサイドウォール部と、左右のサイドウォール部の径方向外方端部同士を連結するように両サイドウォール部間に設けられたトレッド部とを備え、左右一対のビード部間にまたがって延びる少なくとも1層のカーカス層を備える。カーカス層は、トレッド部からサイドウォール部をへて、両端がビード部にて係止されており、上記各部を補強するものである。また、ベルト層は、トレッド部におけるカーカス層の外周側においてトレッドゴムとの間に、通常2層以上にて設けられており、カーカス層の外周でトレッド部を補強するものである。本実施形態において、上記ゴム組成物をスチールコードの被覆ゴムに用いる場合、ベルト層とカーカス層のうちのいずれか一方に適用してもよく、双方に適用してもよい。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従い、まず、第一混合段階で、硫黄と加硫促進剤を除く成分を添加混合し(排出温度=160℃)、次いで、得られた混合物に、最終混合段階で硫黄と加硫促進剤を添加混合して(排出温度=90℃)、ゴム組成物を調製した。
【0038】
表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
・天然ゴム:RSS#3
・イソプレンゴム:JSR(株)製「IR2200」
・カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シースト300」
・シリカ:東ソー・シリカ(株)製「ニップシールAQ」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華3号」
・老化防止剤:フレキシス(株)製「サントフレックス6PPD」
・ステアリン酸コバルト:ジャパンエナジー(株)製「ステアリン酸コバルト」(Co含有率9.5質量%)
・メラミン誘導体:ヘキサメトキシメチルメラミン、三井サイテック(株)製「サイレッツ963L」
・レゾルシン系化合物1:レゾルシン−アルキルフェノール−ホルマリン樹脂、住友化学工業(株)製「スミカノール620」
・レゾルシン系化合物2:レゾルシン−ホルマリン樹脂、インドスペック社製「ペナコライト樹脂 B−19S」
・不溶性硫黄:フレキシス(株)製「クリステックHS OT−20」(硫黄分80質量%)
・加硫促進剤1:N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、大内新興化学工業(株)製「ノクセラーDZ−G」
・加硫促進剤2:N,N−ジベンジルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド
【0039】
得られた各ゴム組成物を用いて、ゴム−スチールコード複合体の未加硫試料を作製した。詳細には、ベルト用スチールコード(3×0.20+6×0.35mm構造、銅/亜鉛=64/36(質量比)、付着量5g/kgの真鍮めっき)を12本/25mmの打ち込み密度で平行配列したものの両面を、上記各ゴム組成物からなる厚さ1mmのゴムシートを用いて被覆し、この2枚をコードが平行になるように積層した剥離接着試験用の未加硫試料を作製した。得られた未加硫試料を用いて、初期接着性、及び湿熱接着性を評価した。評価方法は次の通りである。
【0040】
・初期接着性:上記未加硫試料を作製後、150℃×30分の条件で加硫し、島津製作所(株)製オートグラフ「DCS500」を用いて剥離接着試験を行い、剥離後のスチールコードのゴム被覆率を目視にて観察し、0〜100%で評価した。比較例2のゴム被覆率を100とした際の指数で表示し、数値が大きいほど初期接着性に優れることを示す。
【0041】
・湿熱接着性:上記未加硫試料を作成後、150℃×30分の条件で加硫し、加硫した試験片を105℃の飽和蒸気内で96時間放置した後、島津製作所(株)製オートグラフ「DCS500」を用いて2層のスチールコード間の剥離試験を行い、剥離後のスチールコードのゴム被覆率を目視にて観察し、0〜100%で評価した。比較例2のゴム被覆率を100とした際の指数で表示し、数値が大きいほど湿熱接着性に優れることを示す。
【0042】
【表1】
【0043】
結果は、表1に示す通りであり、比較例2は、比較例1の配合に、メラミン誘導体、及びレゾルシン系化合物を加えた例であり、比較例1と比較して、湿熱接着性は20%向上したものの、初期接着性は向上しなかった。
【0044】
比較例3は、比較例1の配合において、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドに代えて、N,N−ジベンジルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドを配合した例であり、比較例1と比較して、湿熱接着性が10%向上したものの、初期接着性は向上しなかった。
【0045】
一方、N,N−ジベンジルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドと、メラミン誘導体と、レゾルシン系化合物とを併用した実施例2は、比較例2と比較して、初期接着性が10%向上し、湿熱接着性が35%向上した。この結果から、N,N−ジベンジルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドと、メラミン誘導体と、レゾルシン系化合物とを併用する場合、相乗効果が得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のゴム−スチールコード複合体は、乗用車用タイヤのベルト層、トラック・バス用などの大型タイヤのベルト、カーカス、チェーハー層などに使用することができる。

【手続補正書】
【提出日】2021年5月12日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
本実施形態に係るゴム組成物は、N,N−ジベンジルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド(DBBS)(別名:2−[(ジベンジルアミノ)チオ]ベンゾチアゾール)を含有するものである。N,N−ジベンジルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドは、下記式(1)で表される化合物であり、環境への影響が懸念されるN,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドに対して、加硫反応時に発生する2級アミンの環境への影響が少ない。