【解決手段】 一般式(1)で表される単量体(a1)を必須構成単量体とする(共)重合体(A)を含有するホットメルト粘着剤であって、前記(共)重合体(A)の重量平均分子量が40万〜80万であり、前記(共)重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)が2.5〜4.0であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析の溶出曲線から得られる前記(共)重合体(A)の微分分子量分布曲線において、分子量が50,000以下の範囲のエリア面積の割合が、前記微分分子量分布曲線から得られるエリア全面積に対して1〜5%であり、ホットメルト粘着剤の重量を基準として残存モノマーの含有量が0.005〜0.15重量%であるホットメルト粘着剤。
ホットメルト粘着剤の重量を基準として前記モノカルボン酸(B)及び前記モノオール(C)の合計含有量が0.001〜10重量%である請求項2に記載のホットメルト粘着剤。
さらに酸化防止剤(D)を含有し、前記(共)重合体(A)と前記酸化防止剤(D)との重量比[(A):(D)]が100:0.001〜100:3である請求項1〜4のいずれか1項に記載のホットメルト粘着剤。
さらに連鎖移動剤(E)を含有し、前記(共)重合体(A)と前記連鎖移動剤(E)との重量比[(A):(E)]が100:0.01〜100:0.1である請求項1〜5のいずれか1項に記載のホットメルト粘着剤。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<ホットメルト粘着剤>
本発明は、下記一般式(1)で表される単量体(a1)を必須構成単量体とする(共)重合体(A)を含有するホットメルト粘着剤であって、前記(共)重合体(A)の重量平均分子量が40万〜80万であり、前記(共)重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)が2.5〜4.0であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析の溶出曲線から得られる前記(共)重合体(A)の微分分子量分布曲線において、分子量が50,000以下の範囲のエリア面積の割合が、前記微分分子量分布曲線から得られるエリア全面積に対して1〜5%であり、ホットメルト粘着剤の重量を基準として残存モノマーの含有量が0.005〜0.15重量%であるホットメルト粘着剤である。
【化1】
[一般式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基であり、R
2は炭素数4〜18の炭化水素基である。]
【0009】
<(共)重合体(A)>
本発明において、(共)重合体(A)は、上記一般式(1)で表される単量体(a1)を必須構成単量体とする。なお、本発明において、「(共)重合体」は「単量体を1種用いた重合体及び/又は2種以上用いた共重合体」を意味する。
一般式(1)において、R
1は水素原子又はメチル基であり、(共)重合体(A)の生産性の観点から、水素原子が好ましい。
一般式(1)において、R
2は炭素数4〜18の炭化水素基である。
炭素数4〜18の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基[例えば、直鎖脂肪族炭化水素基{例えば、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基等の直鎖アルキル基、オレイル基等の直鎖アルケニル基等}、分岐脂肪族炭化水素{例えば、iso−又はt−ブチル基、sec−、iso−又はネオペンチル基、2−エチルヘキシル基等の分岐アルキル基等}、脂環式炭化水素基(例えば、シクロヘキシル基等)]、芳香脂肪族炭化水素基(例えば、ベンジル基及びフェネチル基等)、芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基等)等が挙げられる。
これらの内、(共)重合体(A)の粘着力の観点から、好ましいのはn−ブチル基及び2−エチルヘキシル基である。(a1)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0010】
単量体(a1)として、具体的には、n−、iso−又はt−ブチル(メタ)アクリレート、n−、sec−、iso−又はネオペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、n−ヘキサデシル(メタ)アクリレート、n−オクタデシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの内、(共)重合体(A)の粘着力の観点から、好ましいのはn−ブチル(メタ)アクリレート及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートである。
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート及び/又はメタクリレート」を意味する。
【0011】
(共)重合体(A)は前記(a1)に加えて、(a1)以外の任意の重合性単量体(a2)を(共)重合体(A)の単量体成分としてもよい。(a2)としては例えば以下の重合性炭素−炭素二重結合を1つ有する重合性単量体(1)〜(10)等が挙げられる。(a2)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0012】
(1)ビニル系炭化水素(炭素数2〜20):
(1−1)脂肪族ビニル系炭化水素:炭素数2〜20のアルケン類[エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン及び前記以外のα−オレフィン等];炭素数4〜20のアルカジエン類[ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン及び1,7−オクタジエン等]等。
(1−2)脂環式ビニル系炭化水素:モノ又はジシクロアルケン及びアルカジエン類[シクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン等];テルペン類(ピネン及びリモネン等)等。
(1−3)芳香族ビニル系炭化水素(炭素数8〜20):スチレン及びその(アルキル、シクロアルキル、アラルキル及びアルケニル)置換体(α−メチルスチレン、ビニルトル
エン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン及びトリビニルベンゼン等);インデン及びビニルナフタレン等。
【0013】
(2)重合性不飽和カルボン酸(炭素数3〜130)及びこれらの塩:
炭素数3〜12の重合性不飽和モノカルボン酸[(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸及びビニル安息香酸等];炭素数4〜12の重合性不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸及びメサコン酸等);前記炭素数4〜12の重合性不飽和ジカルボン酸の炭化水素(炭素数1〜18)エステル;コハク酸の水酸基含有単量体モノエステル[炭素数8〜130、例えば2−ヒドロキシアルキル(炭素数2〜4)(メタ)アクリレートの無水コハク酸開環付加体、ポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(炭素数2〜4)グリコールモノ(メタ)アクリレートの無水コハク酸開環付加体及び2−ヒドロキシアルキル(アルキル基の炭素数2〜4)(メタ)アクリレートのカプロラクトン(1〜5モル)付加体の無水コハク酸開環付加体];並びにこれらの塩等。
【0014】
(3)スルホン基含有ビニル系単量体、ビニル系硫酸モノエステル化物及びこれらの塩:
炭素数2〜14のアルケンスルホン酸[ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸及びメチルビニルスルホン酸等];スチレンスルホン酸及びその炭素数1〜24のアルキル置換体[α−メチルスチレンスルホン酸等];スルホアルキル(炭素数1〜8)(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミド[スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸及び2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等];アルキル(炭素数3〜18)(メタ)アリルスルホコハク酸エステル;ポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(炭素数2〜4:オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレン:単独、ランダム、ブロックでもよい)モノ(メタ)アクリレートの硫酸エステル[ポリ(n=5〜15)オキシプロピレンモノメタクリレート硫酸エステル等];並びにこれらの塩。
【0015】
(4)燐酸基含有ビニル系単量体及びその塩:
(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1〜24)燐酸モノエステル[2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート及びフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等];(メタ)アクリロイルオキシアルカン(炭素数1〜24)ホスホン酸類[2−アクリロイルオキシエタンホスホン酸等];並びにこれらの塩等。
【0016】
前記(2)〜(4)の塩としては、アルカリ金属塩(ナトリウム塩及びカリウム塩等)及びアルカリ土類金属塩(カルシウム塩及びマグネシウム塩等)等の塩が挙げられる。
【0017】
(5)水酸基含有ビニル系単量体:
(5−1)炭素数2〜6のジオールの不飽和カルボン酸モノエステル[ヒドロキシアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート{ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート(以下、HEAと略記)、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等}及びそのラクトン(炭素数4〜20、例えばブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン及びラウロラクトン)1〜5モル付加体等];
(5−2)ポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(炭素数2〜4)(メタ)アクリレート[ポリ(n=10)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレート等];
(5−3)ポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(炭素数2〜4)(メタ)アリルエーテル[ポリ(n=10)オキシエチレン(メタ)アリルエーテル等];
(5−4)炭素数3〜8の不飽和アルコール[(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、1−ブテン−3−オール及び2−ブテン−1,4−ジオール等];
(5−5)炭素数8〜15のスチレン化合物[ヒドロキシスチレン等];
(5−6)炭素数5〜30のアルケニルエーテル[ヒドロキシアルキル(炭素数2〜6)アルケニル(炭素数3〜6)エーテル{2−ヒドロキシエチルプロぺニルエーテル等};蔗糖アリルエーテル等];
(5−7)炭素数4〜10の水酸基含有(メタ)アクリルアミド[N−メチロール(メタ)アクリルアミド等]等。
【0018】
(6)含窒素ビニル系単量体:
(6−1)アミド基含有ビニル系単量体(炭素数3〜30):(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレン−ビス(メタ)アクリルアミド、桂皮酸アミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジベンジル(メタ)アクリルアミド、メタクリルホルムアミド、N−メチルN−ビニルアセトアミド及びN−ビニルピロリドン等;
(6−2)ニトリル基含有ビニル系単量体(炭素数3〜15):(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン及びシアノアルキル(炭素数1〜4)(メタ)アクリレート等;
(6−3)ニトロ基含有ビニル系単量体(炭素数炭素数8〜16):ニトロスチレン等;
(6−4)炭素数4〜10の水酸基含有(メタ)アクリルアミドのアルキル(炭素数1〜4)エーテル化物[N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等];
(6−5)炭素数5〜15の1級、2級アミノ基含有(メタ)アクリレート[アミノアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート{アミノエチル(メタ)アクリレート等}、アルキル(炭素数1〜6)アミノアルキル(炭素数1〜6)(メタ)アクリレート{t−ブチルアミノエチルメタクリレート等}等];
(6−6)炭素数5〜10の1級又は2級アミノ基含有アクリルアミド[N−アミノアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリルアミド{N−アミノエチル(メタ)アクリルアミド等}及びアルキル(炭素数2〜6)アミノアルキル(炭素数1〜6)(メタ)アクリルアミド{t−ブチルアミノエチルアクリルアミド等}等]。
【0019】
(7)エポキシ基含有ビニル系単量体:グリシジル(メタ)アクリレート等。
(8)ハロゲン含有ビニル系単量体:
塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アリルクロライド、クロルスチレン、ブロムスチレン、ジクロルスチレン、クロロメチルスチレン、テトラフルオロスチレン、クロロプレン、フッ素化オレフィン(炭素数2〜10、フッ素原子数1〜20)及びフッ素化アルキル(炭素数2〜10、フッ素原子数1〜20)(メタ)アクリレート等。
【0020】
(9)ビニルエステル類:
炭素数2〜6の不飽和アルコール[ビニルアルコール、(メタ)アクリルアルコール及びイソプロペニルアルコール等]又はヒドロキシスチレンと炭素数1〜12のモノ又はポリカルボン酸とのエステル(酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、メチル−4−ビニルベンゾエート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート及びアセトキシスチレン等);アルキル(メタ)アクリレート(アルキルの炭素数1〜3又は19〜30)[メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート及びエイコシル(メタ)アクリレート等];多価(2〜3)アルコール不飽和カルボン酸エステル[エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等]等。
【0021】
(10)その他のビニル系単量体:
(10−1)ビニル(チオ)エーテル(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、2−メトキシエチルビニルエーテル、メトキシブタジエン、2−ブトキシエチルビニルエーテル、3,4−ジヒドロ1,2−ピラン、2−ブトキシ−2’−ビニロキシジエチルエーテル、2−エチルメルカプトエチルビニルエーテル、フェノキシスチレン、ジビニルサルファイド、p−ビニルジフェニルサルファイド及びエチルビニルサルファイド等);
(10−2)アリルエーテル[ポリ(ジ〜テトラ)(メタ)アリロキシアルカン(炭素数2〜6)類{ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン及びテトラメタアリロキシエタン等}等];
(10−3)ビニルケトン(ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン及びビニルフェニルケトン等);
(10−4)ビニルスルホン(ビニルエチルスルフォン、ジビニルスルフォン及びジビニルスルフォキシド等);
(10−5)ポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(炭素数2〜4)不飽和カルボン酸ジエステル[ポリ(n=10)オキシエチレンマレイン酸ジエステル等]等。
【0022】
(a2)の内、粘着剤の凝集力の観点から好ましいのは、炭素数3〜12の重合性不飽和モノカルボン酸、炭素数4〜12の重合性不飽和ジカルボン酸の炭化水素(炭素数1〜18)エステル、コハク酸の水酸基含有単量体モノエステル、炭素数3〜30のアミド基含有ビニル系単量体、アルキルの炭素数が1〜3のアルキル(メタ)アクリレート、炭素数2〜6の不飽和アルコール又はヒドロキシスチレンと炭素数1〜12のモノ又はポリカルボン酸とのエステル、炭素数2〜20のビニル系炭化水素、及び炭素数2〜6のジオールの不飽和カルボン酸モノエステルであり、更に好ましいのは(メタ)アクリル酸、アルキルの炭素数が1〜3のアルキル(メタ)アクリレート、炭素数2〜6の不飽和アルコールと炭素数1〜12のモノカルボン酸とのエステル、及びヒドロキシアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート、特に好ましいのは(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレートである。
【0023】
(共)重合体(A)において、単量体成分の合計重量を基準とする(a1)の量は、粘着力の観点から、60〜100重量%が好ましく、更に好ましくは70〜99.9重量%、特に好ましくは80〜99.9重量%である。
また、粘着力の観点から、(a1)の内の50重量%以上がn−ブチル(メタ)アクリレート及び/又は2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0024】
(共)重合体(A)において、単量体成分の合計重量を基準とする(a2)の量は、粘着剤の凝集力の観点から、40重量%以下が好ましく、更に好ましくは0.1〜30重量%、特に好ましくは0.1〜20重量%である。
【0025】
本発明における(共)重合体(A)の重量平均分子量(以下、Mwと略記)は、40万〜80万であり、好ましくは45万〜75万、更に好ましくは50万〜70万である。
(A)のMwが40万未満であると、凝集力が低く保持力が低下し、80万を超えるとタック性が低下する。
なお、(A)のMwは、後述する(共)重合体(A)の製造方法において、開始剤及び連鎖移動剤の濃度により調整することができる。具体的には、開始剤及び/又は連鎖移動剤の濃度を低くすることでMwを大きくすることができ、開始剤及び/又は連鎖移動剤の濃度を高くすることでMwを小さくすることができる。
【0026】
本発明における(共)重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、2.5〜4.0であり、好ましくは2.7〜3.8、更に好ましくは3.0〜3.5である。
分子量分布(Mw/Mn)が2.5未満では、タック性が低く被着体への濡れ性や段差追随性が低下し、4.0を超えると剥離時の糊残りが生じる。
なお、(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、後述する(共)重合体(A)の製造方法において、連鎖移動剤の種類や濃度により調整することができる。具体的には、連鎖移動剤として例えばジチオカルバマートやキサンタート類を用いると大きくなり、トリチオカルボナートやジチオベンゾアート類を用いると小さくなる傾向にある。また、連鎖移動剤の量を多くすることで小さくすることができ、少なくすることで大きくすることができる。
【0027】
本発明における(共)重合体(A)のMw及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、測定することができる。本発明においては、下記の測定条件で測定した値であり、実施例に示す値は、下記条件で測定した値である。
<GPC測定条件>
装置:「HLC−8120GPC」[東ソー(株)製]
カラム:「Guardcolumn HXL−H」(1本)、「TSKgel GMHXL」(2本)[いずれも東ソー(株)製]をこの順に直列で連結
試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:100μl
流量:1ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン
【0028】
本発明において、(共)重合体(A)は、上記測定条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析の溶出曲線から得られる(共)重合体(A)の微分分子量分布曲線において、分子量が50,000以下の範囲のエリア面積の割合が、前記微分分子量分布曲線から得られるエリア全面積に対して1〜5%であるものであり、好ましくは2〜4.2%である。
分子量が50,000以下の範囲のエリア面積の割合(以下において分子量5万以下の面積率(%)と記載することがある)が、1%未満であると、タック性が低く被着体への濡れ性や段差追随性が低下し、5%を超えると剥離時の糊残りが生じる。
なお、分子量が50,000以下の範囲のエリア面積の割合は、後述する(共)重合体(A)の製造方法において、連鎖移動剤の種類や濃度、開始剤の濃度により調整することができる。具体的には、連鎖移動剤として例えばジチオカルバマートやキサンタート類を用いると大きくなり、トリチオカルボナートやジチオベンゾアート類を用いると小さくなる傾向にある。また、連鎖移動剤の濃度を高くすることで小さくすることができ、連鎖移動剤の濃度を低くすることで大きくすることができる。また、開始剤の濃度を低くすることによって小さくすることができ、開始剤の濃度を高くすることによって大きくすることができる。
【0029】
ここで、
図1に、(共)重合体(A)のGPC溶出曲線の一例を示す。グラフの縦軸はRI(示差屈折)検出強度(mV)、グラフの横軸は溶出時間(分)である。
具体的には、まず、GPC測定で得られた溶出時間とRI(示差屈折検出器)による検出強度とから得られるGPC溶出曲線1に対してベースライン2を引き、ベースライン2とGPC溶出曲線1とが交わる点Aと点Bとを定める。点Aは、溶出時間初期のGPC溶出曲線1とベースライン2とが交わる点である。点Bは、溶出時間終期のGPC溶出曲線1とベースライン2とが交わる点である。
この点A、B間のGPC溶出曲線1と線分ABとで囲まれた斜線部分がGPC溶出曲線におけるエリア全体である。また、当該エリア内の面積が、GPC溶出曲線におけるエリア全体の面積である。高分子量成分から溶出されるカラムを用いることにより、溶出時間初期に高分子量成分が観測され、溶出時間終期に低分子量成分が観測されることになる。
【0030】
また、
図2に、
図1のGPC溶出曲線から得られる微分分子量分布曲線を示す。グラフの縦軸をdW/d(logM)、グラフの横軸をlogMとして(Wは(共)重合体(A)の濃度分率(モル分率)、Mは分子量を表わす)、
図1のGPC溶出曲線1を規格化したものが微分分子量分布曲線3である。微分分子量分布曲線の作成方法は、具体的には、まず、GPC溶出曲線グラフにおいてベースラインを引き、(共)重合体(A)のピークを指定する。次に、較正曲線を用いて溶出時間を分子量に換算する。続いて、GPC溶出曲線のピーク面積(エリア面積)を求めてそれぞれの溶出時間における濃度分率を算出した後、濃度分率を順次積算していき、横軸に分子量の対数値(logM)、縦軸に濃度分率の積算値(%)をプロットした積分分子量分布曲線を作成する。最後に、この積分分子量分布曲線の各分子量における微分値(積分分子量分布曲線の傾き)を求め、横軸に分子量の対数値(logM)、縦軸に微分値(dW/d(logM))をプロットすることにより、微分分子量分布曲線を作成することができる。なお、GPC溶出曲線グラフにおいてベースラインを引き、ピークを指定する最初の操作以降は、GPC機器のソフトウェアによる自動算出で求めることができる。
図1のGPC溶出曲線及び
図2の微分分子量分布曲線において、
図1の点Aは
図2の点A’に相当し、
図1の点Bは
図2の点B’に相当することになり、
図1のGPC溶出曲線1から得られる
図2の微分分子量分布曲線3におけるエリア全面積(100%)は、点A’、B’間の微分分子量分布曲線3と線分A’B’とで囲まれた部分の面積となる。このようにGPC溶出曲線から(共)重合体(A)のピークのみを選択して微分分子量分布曲線を求めることにより、一定の分子量範囲の(共)重合体(A)の全体におけるモル割合を、微分分子量分布曲線におけるエリア面積の割合として求めることができる。
ここで、GPC溶出曲線1から得られた微分分子量分布曲線3におけるエリア面積全体(100%)に対する分子量50000以下のエリア面積の割合(%)とは、
図2の点A’、B’間の微分分子量分布曲線3と線分A’B’とで囲まれた部分の面積(100%)に対する
図2の斜線部分の面積の割合(%)となる。
【0031】
(共)重合体(A)のガラス転移点(以下、Tgと略記)は、粘着剤の粘着性の観点から、好ましくは−80〜30℃、更に好ましくは−60〜20℃、特に好ましくは−40〜5℃である。
なお、本発明において、TgはDSC(走査型示差熱分析)法により、以下の条件で測定した値であり、実施例に示す値は、下記条件で測定した値である。
<Tg測定条件>
装置:「DSC210」「セイコー電子工業社製」
測定試料を−60℃から60℃まで昇温速度20℃/分で昇温して吸発熱変化を測定して、「吸発熱量」と「温度」とのグラフの最大ピーク温度以下でのベースラインの延長線と、最大ピークの立ち上がり部分から最大ピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点に対応する温度をガラス転移点とする。
【0032】
(共)重合体(A)の150℃での粘度は、塗工性の観点から、5,000〜1,000,000mPa・sであることが好ましく、更に好ましくは20,000〜200,000mPa・sである。
なお、本発明において、150℃での粘度は、JIS K7117−1:1999に準拠して(RB粘度型粘度計、RB6号スピンドル回転数2rpmの条件)測定した150℃での溶融粘度を意味する。
【0033】
<ホットメルト粘着剤>
本発明のホットメルト粘着剤は、前記(共)重合体(A)を含有するものであり、ホットメルト粘着剤中の残存モノマーの含有量が、ホットメルト粘着剤の重量を基準として0.005〜0.15重量%であり、0.006〜0.10重量%が好ましく、更に好ましくは0.007〜0.05重量%である。残存モノマーの含有量が0.005重量%未満であるとタック性が低下し、0.15重量%を超えると保持力が低下する。
なお、本発明において、残存モノマーとは、重合性炭素−炭素二重結合を1つ有する化合物であり、ホットメルト粘着剤中に含まれる未反応の前記単量体(a1)及び(a2)を意味し、後述する添加剤である多官能(メタ)アクリレートは含まれない。また、残存モノマーの量は、開始剤濃度を低く及び/又は連鎖移動剤濃度を高くすることにより少なくすることができ、開始剤濃度を高く及び/又は連鎖移動剤濃度を低くすることにより多くすることができる。 残存モノマーの含有量は、ホットメルト粘着剤を用いて下記測定を行うことにより求めることができる。
<残存モノマーの含有量の測定方法>
ホットメルト粘着剤0.6gをトルエン5g(沸点110.6℃)に溶解し、ブロモベンゼン(沸点156℃)を内部標準として0.02g加え、下記測定条件でガスクロマトグラフィーを用いて測定し、ブロモベンゼンのピークと各単量体のピーク面積比により求める。
<ガスクロマトグラフィー測定条件>
装置:「GC−2010」[島津製作所製]
検出器:FID
カラム:「InertCap−5」(長さ30m、内径0.25mm、液相の膜厚:1.0μm)ジーエルサイエンス(株)製]
カラム温度:40℃で5分保持し10℃/minで昇温;
最高到達温度300℃(保持時間9分)
スプリット比:50.0
【0034】
本発明のホットメルト粘着剤は、前記(共)重合体(A)及び残存モノマーを含有するものであるが、重合溶剤の脱揮工程中のゲル生成防止の観点から、炭素数2〜20のモノカルボン酸(B)及び/又は炭素数1〜20のモノオール(C)を含有してもよい。
【0035】
炭素数2〜20のモノカルボン酸(B)としては、飽和脂肪族モノカルボン酸[直鎖飽和脂肪族モノカルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びエイコサン酸等)、分岐飽和脂肪族モノカルボン酸(例えば、2−メチルプロパン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、2,2−ジメチルプロパン酸、2−メチルペンタン酸、3−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2,2−ジメチルブタン酸、2−エチルブタン酸、3,3−ジメチルブタン酸、2,2−ジメチルペンタン酸、2−メチル−2−エチルブタン酸、2,2,3−トリメチルブタン酸、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、3−メチルヘキサン酸、4−メチルヘキサン酸、5−メチルヘキサン酸、イソヘプタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,5−ジメチルヘキサン酸、2,2−ジメチルヘキサン酸、2−メチルヘプタン酸、3−メチルヘプタン酸、4−メチルヘプタン酸、2−プロピルペンタン酸、イソオクタン酸、2,2−ジメチルヘプタン酸、2,2,4,4−テトラメチルペンタン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、2−メチルオクタン酸、2−エチルヘプタン酸、3−メチルオクタン酸、イソノナン酸、ネオノナン酸、2,2−ジメチルオクタン酸、2−メチル−2−エチルヘプタン酸、2−メチル−2−プロピルヘキサン酸、イソデカン酸、ネオデカン酸、イソドデカン酸等)、環状の飽和脂肪族モノカルボン酸(例えば、シクロプロパンカルボン酸、シクロブタンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロへキサンカルボン酸、シクロヘプタンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸)等];芳香族モノカルボン酸(例えば、安息香酸、メチル安息香酸及びエチル安息香酸等);芳香脂肪族モノカルボン酸(例えば、フェニル酢酸及びフェニルプロピオン酸等)等が挙げられる。
【0036】
これらの内、ホットメルト粘着剤の臭気及び耐腐食性の観点から、好ましいのは炭素数2〜20の飽和脂肪族モノカルボン酸であり、より好ましいのは炭素数4〜18の飽和脂肪族モノカルボン酸、更に好ましいのは炭素数6〜10の飽和脂肪族モノカルボン酸、特に好ましいのは炭素数6〜9の直鎖又は分岐の飽和脂肪族モノカルボン酸(直鎖又は分岐のヘキサン酸、直鎖又は分岐のヘプタン酸、直鎖又は分岐のオクタン酸及び直鎖又は分岐のノナン酸)である。(B)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0037】
炭素数1〜20のモノオール(C)としては、脂肪族モノオール(C1)及び芳香脂肪族モノオール(C2)等が挙げられる。(C)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0038】
脂肪族モノオール(C1)としては、直鎖、分岐又は環状の脂肪族1価アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、ペンタノール、イソペンチルアルコール、ネオペンチルアルコール、ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、デカノール、ウンデカノール、オクタデカノール、イソオクタデカノール、オクタデセノール、ドコサノール、14−メチルヘキサデカノール、アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパルギルアルコール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、α−テレピネオール及びアビエチノール等)等が挙げられる。
【0039】
芳香脂肪族モノオール(C2)としては、ベンジルアルコール、サリチルアルコール、アニシルアルコール、シンナミルアルコール、ヒドロシンナミルアルコール、α−又はβ−フェニルエチルアルコール及びβ−フェニルプロピルアルコール等が挙げられる。
【0040】
これらの内、架橋物発生の抑制と臭気の観点から、好ましいのは炭素数4〜20の脂肪族モノオールであり、より好ましいのは炭素数6〜10の脂肪族モノオールである。
モノオール(C)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0041】
本発明のホットメルト粘着剤がモノカルボン酸(B)を含有する場合、(共)重合体(A)とモノカルボン酸(B)の重量比[(A):(B)]は、架橋物発生の抑制、臭気及び高温環境下での着色の観点から、好ましくは100:0.001〜100:3、更に好ましくは100:0.005〜100:1であり、特に好ましくは100:0.01〜100:0.5である。
【0042】
本発明のホットメルト粘着剤がモノオール(C)を含有する場合は、(共)重合体(A)とモノオール(C)との重量比[(A):(C)]は、架橋物発生の抑制及び臭気の観点から、好ましくは100:0.001〜100:3、更に好ましくは100:0.005〜100:1であり、特に好ましくは100:0.01〜100:0.5である。
【0043】
ホットメルト粘着剤中のモノカルボン酸(B)とモノオール(C)との合計含有量は、ホットメルト粘着剤の重量を基準として、架橋物発生の抑制、臭気及び高温環境下での着色の観点から、0.001〜10重量%が好ましく、更に好ましくは0.01〜1重量%である。
【0044】
ホットメルト粘着剤中のモノカルボン酸(B)とモノオール(C)との重量比率{(B)/(C)}は、架橋物発生の抑制、臭気及び高温環境下での着色の観点から、0.5〜1が好ましい。
【0045】
本発明のホットメルト粘着剤には、更に、酸化防止剤(D)を含有することができる。
ホットメルト粘着剤が酸化防止剤(D)を含有することで微小な架橋物の発生を更に抑制することができ、高温下での着色を抑制することができる。
【0046】
本発明における酸化防止剤(D)としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D1)、硫黄系酸化防止剤(D2)、リン系酸化防止剤(D3)、ラクトン系酸化防止剤(D4)及びアミン系酸化防止剤(D5)等が挙げられる。
【0047】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D1)としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(以下、BHTと略記)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t −ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](以下、IR10と略記)及びオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が挙げられる。
【0048】
硫黄系酸化防止剤(D2)としては、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート及びジステアリル3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0049】
リン系酸化防止剤(D3)(ハロゲンを有していてもよい有機ホスファイト)としては、トリフェニルホスファイト、トリイソデシルホスファイト(以下、TDPと略記)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト及びこれらのハロ置換体等が挙げられる。
【0050】
ラクトン系酸化防止剤(D4)としては、5,7−ジ−t−ブチル−3−ヒドロキシベンゾ[b]フラン−2(3H)−オンとo−キシレンとの反応生成物等が挙げられる。
【0051】
アミン系酸化防止剤(ヒンダード芳香族アミン)(D5)としては、オクチルジフェニルアミン、N−n−ブチル−p−アミノフェノール及びN,N−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0052】
これらの内、架橋物発生の抑制と着色の観点から好ましいのはヒンダードフェノール系酸化防止剤(D1)、リン系酸化防止剤(D3)及びラクトン系酸化防止剤(D4)、更に好ましいのは分子量が各700〜2000のヒンダードフェノール系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤であり、特に好ましいのは分子量が各700〜2000のヒンダードフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤との併用である。酸化防止剤(D)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0053】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D1)とリン系酸化防止剤(D3)とを併用する時の重量比[(D1):(D3)]は、架橋物発生の抑制及び高温下での着色の抑制の観点から、好ましくは1:1〜1:30、より好ましくは1:3〜1:20であり、特に好ましくは1:5〜1:15である。
【0054】
本発明のホットメルト粘着剤が酸化防止剤(D)を含有する場合は、(共)重合体(A)と酸化防止剤(D)との重量比[(A):(D)]は、架橋物発生の抑制の観点から、好ましくは100:0.001〜100:3、更に好ましくは100:0.005〜100:1であり、特に好ましくは100:0.01〜100:0.5である。
【0055】
本発明のホットメルト粘着剤は、更に、連鎖移動剤(E)を含有してもよい。
連鎖移動剤(E)としては、公知のものを用いることができ、例えば、特開2006−265461等に記載のものが挙げられる。
連鎖移動剤(E)の好ましい具体例としては、トリチオカルボナート{トリチオ炭酸=ビス[4−(アリルオキシカルボニル)ベンジル]、トリチオ炭酸=ビス{4−[エチル−(2−アセチルオキシエチル)カルバモイル]ベンジル}、トリチオ炭酸=ビス[4−(2,3−ジヒドロキシプロポキシカルボニル)ベンジル]、トリチオ炭酸=ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンジル]、ビス(ドデシルスルファニルチオカルボニル)ジスルフィド、4−[(2−カルボキシエチルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]−4−シアノペンタン酸、4−クロロ−3,5−ジメチルピラゾール−1−カルボジチオ酸2’−シアノブタン−2’−イル、2−(2−アルボキシエチルスルファニルチオカルボニルスルファニル)プロピオン酸、S,S−ジベンジルトリチオ炭酸、2−[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン酸、2−シアノ−2−[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン等}、ジチオカルバマート{3,5−ジメチルピラゾール−1−カルボジチオ酸2’−シアノブタン−2’−イル、メチル(フェニル)カルバモジチオ酸シアノメチル等}、等が挙げられる。
【0056】
これらの内、溶剤溶解性、生産性及び連鎖移動定数の観点から、S,S−ジベンジルトリチオ炭酸、2−[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン酸、2−シアノ−2−[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパンが好ましく、更に好ましくはS,S−ジベンジルトリチオ炭酸である。
【0057】
本発明のホットメルト粘着剤が連鎖移動剤(E)を含有する場合は、(共)重合体(A)と連鎖移動剤(E)との重量比[(A):(E)]は、架橋物発生の抑制の観点から、好ましくは100:0.01〜100:0.1、更に好ましくは100:0.02〜100:0・07であり、特に好ましくは100:0.03〜100:0.05である。
【0058】
本発明のホットメルト粘着剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて多官能(メタ)アクリレート、光重合開始剤、粘着性付与樹脂、可塑剤、充填剤、顔料及び紫外線吸収剤等の各種添加剤(H)の1種又は2種以上を更に含有することができる。
【0059】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,4−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,9−ノナンジオール、ジアクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ポリブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクレート、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド(以下、POと略記することがある)変性トリアクリレート、トリ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、テトラ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0060】
多官能(メタ)アクリレートは反応性二重結合を2つ以上有するものであり、中でも、反応性二重結合を2つ以上5つ未満有するものであることが好ましく、2つ以上4つ未満有するものであることがより好ましい。
【0061】
多官能(メタ)アクリレートとして、市販品を使用できる。市販品の例としては、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート{三洋化成工業(株)製「ネオマーTA505」、東亞合成(株)製「アロニックスM−310」等}等が挙げられる。
【0062】
ホットメルト粘着剤中の多官能(メタ)アクリレートの含有量は、ホットメルト粘着剤の重量を基準として、保持力、タック性及び糊残り性の観点から、0.1〜10重量%であることが好ましく、0.5〜5重量%であることがより好ましい。
【0063】
光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン系開始剤、ベンゾインエーテル系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、ヒドロキシアルキルフェノン系開始剤、チオキサントン系開始剤、アミン系開始剤、アシルフォスフィンオキシド系開始剤等が挙げられる。
アセトフェノン系開始剤として具体的には、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
ベンゾインエーテル系開始剤として具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等が挙げられる。
ベンゾフェノン系開始剤として具体的には、2、4、6ートリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル等が挙げられる。
ヒドロキシアルキルフェノン系開始剤として具体的には、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASFジャパン(株)製、IRGACURE184として市販)等が挙げられる。
チオキサントン系開始剤として具体的には、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン等が挙げられる。
アミン系開始剤として具体的には、トリエタノールアミン、4−ジメチル安息香酸エチル等が挙げられる。
アシルフォスフィンオキシド系開始剤として具体的には、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(BASFジャパン(株)製、IRGACURE819として市販)等が挙げられる。
【0064】
ホットメルト粘着剤中の光重合開始剤の含有量は、ホットメルト粘着剤の重量に対し、保持力、タック性及び糊残り性の観点から、0.1〜5重量%であることが好ましく、0.5〜1重量%であることがより好ましい。
【0065】
粘着性付与樹脂としては、例えばテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、フェノール樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、ロジン樹脂、変性ロジン樹脂、合成石油樹脂(脂肪族、芳香族又は脂環式合成石油樹脂等)、クマロン−インデン樹脂、キシレン樹脂、スチレン系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、及びこれらの中で水素添加可能な不飽和二重結合を有するものの水素添加物が挙げられる。粘着性付与樹脂は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
粘着性付与樹脂の使用量は、(A)の重量に基づいて、粘着剤の臭気及び着色の観点から、好ましくは20重量%以下、更に好ましくは5重量%以下、特に好ましくは0重量%である。
【0066】
可塑剤としては、例えば炭化水素系可塑剤[プロセスオイル、液状ポリブタジエン、液状ポリイソブチレン、液状ポリイソプレン、流動パラフィン、パラフィンワックス、エチレンとα−オレフィン(炭素数3〜20)の共重合(重量比99.9/0.1〜0.1/99.9)オリゴマー(Mw5,000〜100,000)及びプロピレンと、エチレンを除くα−オレフィン(炭素数4〜20)の共重合(重量比99.9/0.1〜0.1/99.9)オリゴマー(Mw5,000〜100,000)等];塩素化パラフィン;エステル系可塑剤、例えばフタル酸エステル(ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ジステアリルフタレート及びジイソノニルフタレート等)、アジピン酸エステル(ジオクチルアジペート等)、セバチン酸エステル(ジオクチルセバケート等)及び動植物油脂(例えばリノール酸及びリノレン酸);並びにこれらの中で水素添加可能な不飽和二重結合を有するものの水素添加物が挙げられる。可塑剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
可塑剤の使用量は、(A)の重量に基づいて、粘着剤の臭気及び着色の観点から、好ましくは30重量%以下、更に好ましくは5重量%以下である。
【0067】
充填剤としては、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、二硫化モリブデン、けい酸アルミニウム、けい酸カルシウム、珪藻土、珪石粉、タルク、シリカ及びゼオライト等が挙げられる。
充填剤は、体積平均粒子径が好ましくは0.01〜5μm程度の微粒子であり、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
充填剤の使用量は、(A)の重量に基づいて、粘着剤の粘着力及び凝集力の観点から、好ましくは30重量%以下、更に好ましくは0重量%である。
【0068】
顔料としては、無機顔料(アルミナホワイト、グラファイト、酸化チタン(超微粒子酸化チタン等)、亜鉛華、黒色酸化鉄、雲母状酸化鉄、鉛白、ホワイトカーボン、モリブデンホワイト、カーボンブラック、リサージ、リトポン、バライト、カドミウム赤、カドミウム水銀赤、ベンガラ、モリブデン赤、鉛丹、黄鉛、カドミウム黄、バリウム黄、ストロンチウム黄、チタン黄、チタンブラック、酸化クロム緑、酸化コバルト、コバルト緑、コバルト・クロム緑、群青、紺青、コバルト青、セルリアン青、マンガン紫及びコバルト紫等)及び有機顔料(シェラック、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、フタロシアニンブルー及び染色レーキ等)が挙げられる。
顔料は、体積平均粒子径が、好ましくは0.01〜5μm程度の微粒子であり、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
顔料の使用量は、(A)の重量に基づいて、粘着剤の粘着力及び凝集力の観点から、好ましくは10重量%以下であり、更に好ましくは0重量%である。
【0069】
紫外線吸収剤としては、サリチル酸誘導体(サリチル酸フェニル、サリチル酸−p−オクチルフェニル及びサリチル酸−p−tert−ブチルフェニル等)、ベンゾフェノン化合物[2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン・トリヒドレート、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシ)プロポキシベンゾフェノン及びビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン等]、ベンゾトリアゾール化合物{2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−n−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール及び2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等}、シアノアクリレート化合物(2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート及びエチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート等)等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
紫外線吸収剤の使用量は、(A)の重量に基づいて、粘着剤の粘着力の観点から、好ましくは1重量%以下である。
【0070】
(A)の重量に基づく該各種添加剤の合計含量は、粘着剤の粘着力の観点から、好ましくは150重量%以下、更に好ましくは120重量%以下である。
【0071】
<(共)重合体(A)の製造方法>
本発明における(共)重合体(A)は、単量体(a1)を含む単量体成分を水又は有機溶剤等の媒体(F)中で前記連鎖移動剤(E)を用いて溶液重合、乳化重合及び懸濁重合等の重合方法で重合することにより製造することができる。
【0072】
有機溶剤としては、炭素数2〜8のエステル(酢酸エチル、プロピオン酸エチル及び酢酸ブチル等)、炭素数1〜8のアルコール(メタノール、エタノール及びオクタノール等)、炭素数6〜10の炭化水素(シクロヘキサン、トルエン及び軽ナフサ等)及び炭素数3〜9のケトン(メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等)等が挙げられる。(F)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0073】
溶液重合における有機溶剤の使用量は、単量体成分の合計重量に基づいて、好ましくは5〜900重量%、更に好ましくは10〜400重量%である。
【0074】
乳化重合及び懸濁重合における媒体(F)(水及び有機溶剤の合計)の使用量は、単量体成分の合計重量に基づいて、好ましくは5〜900重量%、更に好ましくは10〜400重量%である。
また、乳化剤としてはオレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、エトキシ化テトラメチルデシンジオール及びメタクリル酸ジメチルアミノメチル等が挙げられる。更に、分散安定剤としてポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドン等を用いてもよい。
【0075】
連鎖移動剤(E)の使用量は、単量体成分の合計重量に基づいて、0.005〜1重量%が好ましく、更に好ましくは0.01〜0.1重量%である。
この範囲であると、(共)重合体(A)の分子量が50,000以下の範囲のエリア面積の割合を上記範囲にすることができ、さらに、残存モノマーの量を上記範囲とすることができる。
【0076】
重合に際しては、公知の重合開始剤(G)[アゾ系開始剤{2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル等)}及びパーオキシド系開始剤(ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド及びラウリルパーオキシド等)]を使用して行なうことができる。
重合開始剤(G)の使用量は、単量体成分の合計重量に基づいて、0.05〜1.5重量%が好ましく、更に好ましくは0.1〜1重量%である。この範囲内に調整することで、(共)重合体(A)のMwを上記範囲に調整することができる。
【0077】
重合反応の温度は、生産性、重合率及び副反応の進行の観点から、−5〜150℃が好ましく、更に好ましくは30〜120℃である。
反応時間は、生産性の観点から、0.1〜50時間が好ましく、更に好ましくは2〜24時間である。
反応の終点は、使用した単量体成分の合計重量を基準とした単量体残留率が、0.005〜0.15重量%、更に好ましくは0.005〜0.1重量%となることをガスクロマトグラフィ等で測定することにより確認することで判断できる。
【0078】
上記製造方法により得られた重合体組成物から媒体(F)を留去することにより、(共)重合体(A)が得られるが、高温下で媒体(F)を留去すると(A)中のエステル基部分がエステル交換により架橋する等の副反応により、架橋物の発生や粘着剤の粘度が異常に上昇してしまうことがあり、特に、(A)が水酸基を有する場合もしくは副反応により水酸基が発生する場合は、水酸基と(A)中のエステル基部分とのエステル交換等の副反応が起こりやすくなり、架橋による粘度上昇や微小な架橋物の発生が起こりやすくなる。従って、本発明においては媒体(F)の留去を前記炭素数2〜20のモノカルボン酸(B)の存在下で行うことが好ましい。(B)の存在下で媒体(F)を留去することにより、前記エステル交換等の副反応による微小な架橋物の発生や粘度上昇を抑えることができ、ハンドリング性が向上する。
【0079】
モノカルボン酸(B)の使用量は、架橋物発生の抑制と臭気の観点から、(共)重合体(A)とモノカルボン酸(B)の重量比[(A):(B)]は上記に記載の通りである。
【0080】
また、媒体(F)の留去を前記炭素数2〜20のモノカルボン酸(B)と前記酸化防止剤(D)との共存下で行うことにより、微小な架橋物の発生を更に抑制することができ、高温下での着色を抑制することができる。
【0081】
酸化防止剤(D)の使用量は、架橋物発生の抑制の観点から、(共)重合体(A)と酸化防止剤(D)の重量比[(A):(D)]は上記に記載の通りである。
【0082】
更に、媒体(F)の留去を前記炭素数2〜20のモノカルボン酸(B)と前記酸化防止剤(D)と前記炭素数1〜20のモノオール(C)との3物質共存下で行うことにより、微小な架橋物の発生を更に抑制することができ、高温下での着色を抑制することができる。
【0083】
モノオール(C)の使用量は、架橋物発生の抑制と臭気の観点から、(共)重合体(A)とモノオール(C)の重量比[(A):(C)]は上記に記載の通りである。
【0084】
(共)重合体(A)の溶液又は分散体から媒体(F)を留去する際の温度は、好ましくは70〜170℃、更に好ましくは100〜150℃である。
(共)重合体(A)の溶液又は分散体から媒体(F)を留去する際の圧力は、好ましくは2kPa〜0.4MPa、更に好ましくは2kPa〜0.1MPa(常圧)である。
反応時間は、好ましくは0.1〜10時間、更に好ましくは0.1〜5時間である。
【0085】
本発明の製造方法で得られるホットメルト粘着剤は、(A)、並びに必要によりモノカルボン酸(B)、モノオール(C)、酸化防止剤(D)及び各種添加剤を混合装置(撹拌機を付した混合槽、スタティックミキサー等)で均一に混合することにより製造できる。
モノカルボン酸(B)、モノオール(C)及び酸化防止剤(D)は、前述の通り、(A)の製造における媒体(F)の留去時に存在させることが好ましいが、留去時に使用した後、更にそれぞれを添加してホットメルト粘着剤における含有量を調整することができる。また、前記各種添加剤は、(A)の製造時に加えても(A)の製造後に混合してもよい。
【0086】
本発明のホットメルト粘着剤は、好ましくはディスプレイに使用される光学部材{例えば、フィルム[偏光板保護フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム、視野角拡大フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム及び輝度向上フィルム等]やディスプレイ(例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ及び電子ペーパー等のフラットパネルディスプレイ基板並びに液晶ディスプレイ、信号及びネオンサイン等のバックライト基板等)に用いられる粘着剤の原料として特に有用である。また、本発明のホットメルト粘着剤は、各種光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LD等)基板保護フィルムの粘着剤や、光ピックアップレンズ、カメラ用レンズ及びレンチキュラーレンズ等の光学レンズ並びにタッチパネル用基板及び導光板等の光学基板等の光学成形品の接着用の粘着剤の原料としても使用できる。
【0087】
<粘着シート>
本発明の粘着シートは、前記本発明のホットメルト粘着剤から形成される粘着剤層を有するものであり、粘着剤層と被着体とからなる粘着剤シートであることが好ましい。
【0088】
被着体の材質としては、ガラス、各種プラスチック[ポリオレフィン(ポリエチレン及びポリプロピレン等)、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、レーヨン及びポリアミド等]、紙(和紙及びクレープ紙等)金属及び木材等が挙げられる。
被着体の形状としては、フィルム、シート、フラットヤーン、板、フォーム、織布及び不織布等が挙げられる。
被着体の表面は、離型処理されていてもよい。離型処理された被着体を用いると形成された粘着剤層を他の被着体に転写することが容易に可能となる。
【0089】
本発明のホットメルト粘着剤から形成される粘着層を形成するする方法としては、(1)ホットメルト粘着剤を溶融して被着体に塗工する方法や、(2)フィルム状等にしたホットメルト粘着剤を被着体間に配置させてから加熱する方法等が挙げられる。溶融温度又は加熱温度は熱安定性の観点から、好ましくは80〜160℃、更に好ましくは80〜130℃である。
【0090】
塗工方法は特に限定されず、例えばスパイラル塗工、ロール塗工、スロットコート塗工、コントロールシーム塗工及びビード塗工等の公知の塗工方法を用いることができる。塗工装置としては、グラビアコータ、ロールコータ(グラビアロール及びリバースロール等)、リバースコータ、ドクターブレード、バーコータ、コンマコータ、ファウンテンダイコータ、リップコータ、ナイフコータ、カーテンコーター、ビード、スパイラル、スプレー、スロット及び押出機(単軸、二軸押出機及びニーダールーダー)等が挙げられる。
【0091】
本発明の粘着シートにおいて、ホットメルト粘着剤により形成される粘着剤層の厚みは、粘着力及び糊残りの観点から、1〜200μmが好ましく、更に好ましくは10〜100μmである。
【0092】
本発明のホットメルト粘着剤から形成される粘着剤層を有する粘着シートは、高温で使用しても微小な架橋物の発生がなく、形成した粘着層が均一でその外観が優れており、粘着剤が有するタック性に優れているので被着体への瞬間的な濡れ性に優れ、、保持力が優れており、剥離時の被着体への糊残りを少なくすることができ、さらに段差追従性にも優れているるので、被着体の光学特性を損なうことなく剥離による良好なリワーク性と十分な接着強度とを兼ね備えるという特長を活かして、例えば各種の携帯機器(ポータブル機器)、自動車、家電製品等を構成する光学部材に貼り付けられる態様で、該光学部材の固定、接合、成形、装飾、保護、支持等の用途に用いることができる。
【0093】
上記光学部材の少なくとも表面を構成する材質としては、例えば、無機材料{アルカリガラス板や無アルカリガラス等のガラス;ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等の金属材料;アルミナ、シリカ等のセラミック材料等};等
樹脂材料{アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、透明ポリイミド樹脂等;}等が挙げられる。
これらの内、密着性、透明性の観点から、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂及び透明ポリイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂材料並びに上記ガラス及び金属材料からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機材料が好ましい。
本発明の光学部材は、例えば、表面の少なくとも一部がこのような材料により構成されている光学部材と上記本発明の粘着シートとを含み、上記光学部材の表面に上記粘着シートの粘着面が接合された粘着シート付き光学部材等が挙げられる。
【0094】
ここに開示される技術における光学用途には、例えば、光学部材を貼り合わせる用途(光学部材貼り合わせ用)や上記光学部材が用いられた製品(光学製品)の製造用途等が挙げられる。そのような用途に用いられる光学用粘着シートとして、本発明の粘着シートを好ましく用いることができる。
【0095】
上記光学部材とは、光学的特性(例えば、偏光性、光屈折性、光散乱性、光反射性、光透過性、光吸収性、光回折性、旋光性、視認性等)を有する部材をいう。上記光学部材としては、光学的特性を有する部材であれば特に限定されないが、例えば、ディスプレイ(例えば、画像表示装置)、入力装置等の機器(例えば、光学機器)を構成する部材またはこれらの機器に用いられる部材が挙げられ、例えば、偏光板、波長板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、ハードコート(HC)フィルム、衝撃吸収フィルム、防汚フィルム、フォトクロミックフィルム、調光フィルム、透明導電フィルム(ITOフィルム)、意匠フィルム、装飾フィルム、表面保護板、プリズム、レンズ、カラーフィルター、透明基板や、さらにはこれらが積層されている部材(これらを総称して「機能性フィルム」と称する場合がある。)等が挙げられる。なお、上記の「板」および「フィルム」は、それぞれ板状、フィルム状、シート状等の形態を含むものとし、例えば「偏光フィルム」は「偏光板」、「偏光シート」等を含むものとする。
【0096】
上記ディスプレイとしては、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、PDP(プラズマディスプレイパネル)、フィールドエミッションディスプレイ、電子ペーパー等が挙げられ、また上記入力装置としては、タッチパネル等が挙げられる。
【0097】
上記光学部材としては、特に限定されず、例えばガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、金属薄膜等からなる部材(例えばシート状やフィルム状、板状の部材)等が挙げられる。なお、この明細書における「光学部材」には、表示装置や入力装置の視認性を保ちながら加飾や保護の役割を担う部材(意匠フィルム、装飾フィルムや表面保護フィルム等)も含むものとする。
【0098】
本発明の粘着シートを用いて光学部材を貼り合わせる態様としては、特に限定されず、例えば、(1)本発明の粘着シートを介して光学部材同士を貼り合わせる態様や、(2)本発明の粘着シートを介して光学部材を光学部材以外の部材に貼り合わせる態様であってもよいし、(3)本発明の粘着シートが光学部材を含む形態であって該粘着シートを光学部材または光学部材以外の部材に貼り合わせる態様であってもよい。なお、上記(3)の態様において、光学部材を含む形態の粘着シートは、例えば、支持体が光学部材(例えば光学フィルム)である粘着シートであり得る。このように支持体として光学部材を含む形態の粘着シートは、粘着型光学部材(例えば粘着型光学フィルム)としても把握され得る。また、本発明の粘着シートが支持体を有するタイプの粘着シートであって、上記支持体として上記機能性フィルムを用いた場合には、粘着シートは、機能性フィルムの少なくとも片面側にここに開示される粘着剤層を有する「粘着型機能性フィルム」としても把握され得る。
【実施例】
【0099】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において、「部」は重量部、「%」は重量%を示す。
【0100】
実施例1[ホットメルト粘着剤(Q−1)の製造]
撹拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、溶剤としての酢酸エチル100部、n−ブチルアクリレート95部、アクリル酸5部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.042部、S,S−ジベンジルトリチオ炭酸0.03部を仕込み昇温した。溶剤還流下、反応容器内に窒素を吹き込みながら、ラジカル重合を行った。還流開始から6時間後、n−オクチル酸0.05部、酸化防止剤[BASFジャパン(株)社製イルガノックス1010]を0.5部及び2−エチルヘキサノール0.05部を添加した。その後、減圧下、130℃まで加熱し、酢酸エチルを留去させた。その後、130℃、背圧0.5MPaにて目開き0.196mmの工業用織金網(JIS G3556)にてろ過し、共重合体(A−1)を含有するホットメルト粘着剤(Q−1)を得た。
【0101】
実施例2〜16及び比較例1〜7
単量体(a1)、単量体(a2)、モノカルボン酸(B)、モノオール(C)、酸化防止剤(D)、連鎖移動剤(E)、溶剤(F)、開始剤(G)を表1及び2に記載のものに変更する以外は実施例1と同様にして、ホットメルト粘着剤(Q)及び比較用のホットメルト粘着剤(Q’)を得た。
なお、実施例12〜13では、各共重合体(A)と、各添加剤(H)とを、表1にしたがって、ヘンシェルミキサーで3分間ブレンドし、ベント付き2軸押出機にて、150℃、100rpm、滞留時間3分の条件で溶融混練して、各粘着剤(Q)を得た。
【0102】
共重合体(A)の製造時のハンドリング性、Mw、Mn、分子量分布(Mw/Mn)、分子量が5万以下の面積率(%)、Tg、150℃での粘度、ホットメルト粘着剤中の残存モノマーの含量、粘着剤のボールタック、保持力、糊残り及び段差追従性の評価結果を表1及び2に示す。なお、比較例6は、製造時のハンドリング性が不良であったので、粘着剤のボールタック、保持力、糊残り及び段差追従性の評価を行わなかった。
【0103】
共重合体(A)及びホットメルト粘着剤の各物性は以下の測定方法で測定した。
<ホットメルト粘着剤の製造時のハンドリング性>
溶剤留去後のホットメルト粘着剤を目視により観察して架橋物に関して以下の基準で評価した。
○:ホットメルト粘着剤中に架橋物なし。
△:ホットメルト粘着剤中に架橋物が若干確認される。
×:ホットメルト粘着剤中に架橋物があり、流動性が低下した。
また、目開き0.196mmの工業用織金網にて、ろ過時の金網の詰まりに関して以下
の基準で評価した。
○:金網の詰まりなし。
△:取り出し可能であったが、金網の詰まりが見られ、取り出し速度が低下した。
×:金網が詰まってしまい、取り出し不可。
【0104】
[ホットメルト粘着剤中の残存モノマー含有量]
ガスクロマトグラフィーにより、以下の条件で測定した。
<測定法>
ホットメルト粘着剤0.6gをトルエン5g(沸点110.6℃)に溶解し、ブロモベンゼン(沸点156℃)を内部標準として0.02g加え、下記測定条件でガスクロマトグラフィーを用いて測定し、ブロモベンゼンのピークと、各単量体のピークとの面積比より残存モノマー(単量体(a1)及び(a2))含有量を測定した。
<測定機器>
装置:「GC−2010」[島津製作所製]
検出器:FID
カラム: 「InertCap−5 」(長さ30m、内径0.25mm、液相の膜厚:1.0μm)ジーエルサイエンス(株)製]
カラム温度:40℃で5分保持し10℃/minで昇温;
最高到達温度300℃(保持時間9分)
スプリット比:50.0
【0105】
[ボールタックの測定]
(1)粘着フィルムの作成
ホットメルト粘着剤(Q)又は(Q’)を150℃で溶融し、23℃の環境温度下で、25μmのポリエステルフィルム[東レ(株)製「ルミラー」タイプT、PET]面上にスロットコーターを用いて塗布量30g/m
2にて塗工し、厚さ30μmの粘着剤層を有する粘着フィルム作成した。
なお、実施例12〜13では、上記同様、塗工した後、UV照射装置[ウシオ電機(株)製、「UVC−02516S1AA01」]を用いて光源:メタルハライドランプ、1000mJ/cm
2照射して、粘着フィルムを作成した。
(2)ボールタックの測定
上記の粘着フィルムについて、JIS−Z−0237;2009に従い常温(23℃)でのボールタック(ボールNo.で表す)を測定した。なお、数値が大きいほど、タック性が高いことを意味し、10以上であればタック性が良好であることを意味する。
【0106】
[保持力の測定]
「ボールタックの測定」の(1)と同じ方法で作成した粘着フィルムを、貼り付け面積が12mm×12mmとなるように粘着フィルム試験片の粘着剤塗布面をステンレス鋼板に貼り付け、2kg荷重ローラー1往復にて圧着し、40℃雰囲気下に30分間静置した後1kgの荷重をかけ、40℃雰囲気下を維持し、24時間後のずれ距離(単位:cm)を測定した。なお、数値が小さいほど保持力が高いことを意味し、1.0cm以下であれば保持力が良好であることを意味する。
【0107】
[糊残りの評価]
「ボールタックの測定」の(1)と同じ方法で作成した粘着フィルムを50×100mmの面積に切り取り、ステンレス鋼板に50×100mmの面積の粘着フィルム試験片を貼り付け60℃×90%RHの条件で1週間静置した後、25℃×50RH%の条件下で試験片を剥がしステンレス鋼板の表面の曇り、糊残り等の汚染の有無を肉眼で観察し、下記の基準で評価した。
○:曇り及び糊残りともになし
△:曇り又は糊残りがわずかにあり
×:曇り又は糊残りが顕著にあり
【0108】
[段差追従性の評価]
(1)評価用段差ガラス板の作成
ガラス板の表面に、紫外線硬化型インク(帝国インキ社製,製品名「POS−911墨」)を塗布厚が20μmとなるように額縁状(外形:縦90mm×横50mm,幅5mm)にスクリーン印刷した。次いで、紫外線を80W/cm
2,メタルハライドランプ2灯,ランプ高さ15cm,ベルトスピード15m/分で照射して、印刷した上記紫外線硬化型インクを硬化させ、印刷による段差(段差の高さ:20μm)を有する評価用段差ガラス板を作製した。
(2)評価用サンプルの作成
粘着層の厚さを50μmにする以外は「ボールタックの測定」の(1)と同じ方法で作成した粘着フィルム(90mm×50mm)を粘着剤層が評価用段差ガラス板の段差面を覆うように貼り合わせ、評価用サンプルとした。
(3)段差追従性の評価
評価用サンプルを、40℃、0.5MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理した後、常圧、23℃、50%RHにて24時間放置した。次いで、85℃、85%RHの条件下で72時間静置し、下記の基準で段差追従性を評価した。
○:段差と粘着剤層との界面で気泡、浮き、剥がれなし
△:段差と粘着剤層との界面で気泡、浮き、剥がれがわずかにあり
×:段差と粘着剤層との界面で気泡、浮き、剥がれが顕著にあり
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
尚、表1及び2における酸化防止剤(D)として記載の「IR10」はヒンダードフェノール酸化防止剤[BASFジャパン(株)製「イルガノックス1010」(化学式量=1178)]、添加剤(H)として記載の「ネオマーTA−505」はトリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート[三洋化成工業(株)製]である。
【0112】
表1及び2の結果から、本発明のホットメルト粘着剤は、剥離時の被着体への糊残りが少なく、かつタック性が高く、保持力が高く、段差追従性にも優れることがわかる。特に、分子量分布が2.5〜3.3であり、かつ、分子量が5万以下の面積率が3.5〜4.2であり、残存モノマーの量が0.007〜0.052重量%であり、モノカルボン酸(B)、モノオール(C)及び酸化防止剤(D)を含む実施例2、5〜7、10、11及び13は、ハンドリング性、タック性、保持力、糊残り及び段差追従性の全ての評価において極めて優れており、ホットメルト粘着剤として極めて優れていることがわかる。