【課題】 本発明は、従来から用いられている汎用の基材(例えば、家具、外装材及び内装材など)表面に化粧シートを接着させることができると共に、基材の耐熱性能を向上させることができ、更に、粘度が低く、塗工性に優れた湿気硬化型ホットメルト接着剤を提供する。
【解決手段】 本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、ポリオールとポリイソシアネートとの反応物で且つ末端にイソシアネート基を含有しているウレタンプレポリマーと、ガラスフリットとを含有し、
上記ガラスフリットは、リン酸成分を主成分とせず且つアルカリ成分が15質量%以下であるガラスフリット(A)及び/又はリン酸成分を主成分とし且つアルカリ成分が25質量%以下であるガラスフリット(B)を含有していることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、
ポリオールとポリイソシアネートとの反応物で且つ末端にイソシアネート基を含有しているウレタンプレポリマーと、
ガラスフリットとを含有し、
上記ガラスフリットは、リン酸成分を主成分とせず且つアルカリ成分が15質量%以下であるガラスフリット(A)及び/又はリン酸成分を主成分とし且つアルカリ成分が25質量%以下であるガラスフリット(B)を含有している。
【0014】
[ウレタンプレポリマー]
湿気硬化型ホットメルト接着剤は、ポリオールとポリイソシアネートとの反応物で且つ末端にイソシアネート基を含有しているウレタンプレポリマーを含有している。
【0015】
湿気硬化型ホットメルト接着剤に含有されているウレタンプレポリマーは、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られ、イソシアネート基を分子鎖の両末端に有するウレタンプレポリマーが好ましく挙げられる。
【0016】
ポリオールは、ヒドロキシル基を一分子中に2個以上有する化合物である。ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリアルキレンポリオール、及びポリカーボネートポリオールが好ましく挙げられ、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールが好ましく、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールを含むことがより好ましい。これらのポリオールは、単独で用いられてもよく、二種以上を併用して用いてもよい。
【0017】
ポリエステルポリオールとしては、特に限定されず、多価カルボン酸とポリオールとを縮合重合させてなるポリエステルポリオールが挙げられる。多価カルボン酸としては、特に限定されず、例えば、コハク酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ドデカン二酸、1,5−ナフタル酸、2,6−ナフタル酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、及びドデカメチレンジカルボン酸などのジカルボン酸などが挙げられる。なかでも、多価カルボン酸としては、直鎖状ジカルボン酸が好ましい。直鎖状ジカルボン酸によれば、常態接着性に優れた湿気硬化型ホットメルト接着剤を得ることができる。
【0018】
直鎖状ジカルボン酸の炭素数は、4以上が好ましく、4〜12がより好ましい。また、直鎖状ジカルボン酸の炭素数は偶数であることが特に好ましい。このような直鎖状ジカルボン酸として、具体的には、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、及びドデカン二酸が挙げられる。炭素数が4〜12であり且つ偶数である直鎖状ジカルボン酸は結晶性が高いことから、これを用いてなる湿気硬化型ホットメルト接着剤の湿気硬化後の接着力を向上できる。
【0019】
ポリオールとしては、特に限定されず、例えば、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、及びシクロヘキサンジオールなどが挙げられる。多価カルボン酸及びポリオールは、それぞれ単独で用いられてもよく、二種以上を併用することもできる。
【0020】
ポリエステルポリオールの水酸基価は、湿気硬化型ホットメルト接着剤の常態接着性を向上させることができると共に、湿気硬化型ホットメルト接着剤の溶融粘度を低下させることができるので、2〜300mgKOH/gが好ましく、20〜200gKOH/gが好ましく、25〜150gKOH/gが好ましく、26〜100gKOH/gがより好ましい。
【0021】
なお、本発明において、ポリオールの水酸基価は、ポリオール1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数を意味する(JIS K0070:1992 2.1(5))。具体的には、無水酢酸によりポリオール中の水酸基をアセチル化した後、使われなかった無水酢酸を水酸化カリウムで滴定することにより測定できる(JIS K0070:1992 3.1(中和滴定法))。
【0022】
ポリエステルポリオールとしては、結晶性ポリエステルポリオール及び非晶性ポリエステルポリオールが好ましく、結晶性ポリエステルポリオール及び非晶性ポリエステルポリオールを含むことが好ましい。
【0023】
結晶性ポリエステルポリオールは、カルボキシ基(−COOH)中の炭素を除いた炭素数が2〜14であるポリカルボン酸と、炭素数が2〜8であるポリオールとの縮合重合体であることが好ましい。即ち、結晶性ポリエステルポリオールは、カルボキシ基中の炭素を除いた炭素数が2〜14であるポリカルボン酸と、炭素数が2〜8であるポリオールとが、ポリカルボン酸のカルボキシル基とポリオールの水酸基においてエステル反応を生じて縮合重合して得られる重合体であることが好ましい。ポリカルボン酸とポリオールとの縮合重合反応は汎用の方法を用いて行なわれればよい。なお、ポリカルボン酸において規定している、カルボキシ基中の炭素を除いた炭素数とは、分子中に含まれる炭素総数から全てのカルボキシ基中の炭素総数を引いて得られる炭素数をいう。
【0024】
ポリカルボン酸において、カルボキシ基中の炭素を除いた炭素数は2〜14が好ましく、10〜12がより好ましい。カルボキシ基中の炭素を除いた炭素数が2以上であると、結晶性ポリエステルポリオールの結晶性が向上し、湿気硬化型ホットメルト接着剤の初期接着性が向上し好ましい。カルボキシ基中の炭素を除いた炭素数が14以下であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の常態接着性が向上し好ましい。
【0025】
ポリカルボン酸は、2価のカルボン酸(HOOC−R
1−COOH)であることが好ましい。2価のカルボン酸であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の溶融粘度を低減することができる。R
1の炭素数は、2〜14が好ましく、10〜12がより好ましい。R
1の炭素数が上記範囲内であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の常態接着性が向上する。
【0026】
R
1は、脂肪族鎖であることが好ましく、直鎖状の脂肪族鎖であることがより好ましい。R
1が脂肪族鎖であると、結晶性ポリエステルポリオールの結晶性が向上し、湿気硬化型ホットメルト接着剤の初期接着性が向上し好ましい。R
1が直鎖状であると、結晶性ポリエステルポリオールの結晶性が向上し、湿気硬化型ホットメルト接着剤の初期接着性が向上し好ましい。R
1が直鎖状とは、炭素が分岐することなく直線状に結合していることをいう。R
1は、直鎖状のアルキレン基(−CnH
2n−)が好ましい。但し、nは自然数である。
【0027】
カルボキシ基(−COOH)中の炭素を除いた炭素数が2〜14であるポリカルボン酸は、特に限定されず、例えば、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸(1,10−デカンジカルボン酸)、1,14−テトラデカンジカルボン酸などが挙げられ、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸が好ましい。なお、ポリカルボン酸は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0028】
ポリオールの炭素数は2〜8が好ましく、2〜6がより好ましい。ポリオールの炭素数が2以上であると、結晶性ポリエステルポリオールの結晶性が向上し、湿気硬化型ホットメルト接着剤の初期接着性が向上し好ましい。ポリオールの炭素数が8以下であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の溶融粘度を低減できるので好ましい。
【0029】
ポリオールは、2価のアルコール(HO−R
2−OH)であることが好ましい。2価のアルコールであると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の溶融粘度を低減することができる。R
2の炭素数は2〜8が好ましく、2〜6がより好ましい。R
2の炭素数が上記範囲内であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の常態接着性が向上する。
【0030】
R
2は、脂肪族鎖であることが好ましく、直鎖状の脂肪族鎖であることがより好ましい。R
2が脂肪族鎖であると、結晶性ポリエステルポリオールの結晶性が向上し、湿気硬化型ホットメルト接着剤の初期接着性が向上し好ましい。R
2が直鎖状であると、結晶性ポリエステルポリオールの結晶性が向上し、湿気硬化型ホットメルト接着剤の初期接着性が向上し好ましい。R
2が直鎖状とは、炭素が分岐することなく直線状に結合していることをいう。R
2は、直鎖状のアルキレン基(−CmH
2m−)が好ましい。但し、mは自然数である。mは、結晶性ポリエステルポリオールの結晶性が向上し、湿気硬化型ホットメルト接着剤の初期接着性が向上するので、偶数が好ましい。
【0031】
炭素数が2〜8であるポリオールは、特に限定されず、1,2−エタンジオール(エチレングリコール)、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオールなどが挙げられ、1,6−ヘキサンジオール、1、2−エタンジオール(エチレングリコール)が好ましく、1,6−ヘキサンジオールがより好ましい。なお、ポリオールは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0032】
結晶性ポリエステルポリオールは結晶性である。結晶性ポリエステルポリオールとは、JIS K7121に規定される示差走査熱量測定(DSC)の測定において、10℃/分の昇温速度で測定した融解曲線の吸熱量(以下、単に「吸熱量」ということがある)が10cal/g(40J/g)以上であるポリエステルポリオールである。
【0033】
結晶性ポリエステルポリオールの数平均分子量は、1000〜20000が好ましく、1500〜10000がより好ましく、1800〜7000がより好ましく、2000〜6000がより好ましく、2500〜5000がより好ましく、3000〜4500がより好ましく、3200〜4000がより好ましい。結晶性ポリエステルポリオールの数平均分子量が1000以上であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の初期接着性及び常態接着性が向上する。結晶性ポリエステルポリオールの数平均分子量が20000以下であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の溶融粘度を低減できるので好ましい。
【0034】
本発明において、ポリオールの数平均分子量は下記の要領で測定された値をいう。ポリオールの数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法を用いて測定することができる。具体的には、試料を1.0質量%濃度となるようにテトラヒドロフラン(THF)に溶解させることにより試料溶液を調製する。この試料溶液を用いてGPC法により、標準ポリスチレンを基準として、屈折率検出計を用いてポリオールの数平均分子量を測定する。
【0035】
測定装置としては、例えば、送液装置がLC−9A、屈折率検出計がRID−6A、カラムオーブンがCTO−6A、データ解析装置がC−R4Aからなるシステム(いずれも島津製作所社製)を使用することができる。GPCカラムとしては、例えば、GPC−805(排除限界400万)3本、GPC−804(排除限界40万)1本(以上すべて島津製作所社製)をこの順に接続して使用することができる。又、測定条件は、試料注入量25μL(リットル)で、溶出液テトラヒドロフラン(THF)、送液量1.0mL/分、カラム温度45℃とする。
【0036】
結晶性ポリエステルポリオールの水酸基価は、20〜50mgKOH/gが好ましく、25〜45mgKOH/gがより好ましく、30〜35mgKOH/gが特に好ましい。結晶性ポリエステルポリオールの水酸基価が20mgKOH/g以上であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の常態接着性が向上する。結晶性ポリエステルポリオールの水酸基価が50mgKOH/g以下であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の溶融粘度を低減し、塗工性を向上させることができる。
【0037】
ポリオール中において、結晶性ポリエステルポリオールの含有量は、15〜35質量%が好ましく、18〜33質量%がより好ましく、20〜30質量%がより好ましい。結晶性ポリエステルポリオールの含有量が15質量%以上であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の初期接着性が向上する。結晶性ポリエステルポリオールの含有量が35質量%以下であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の常態接着性が向上する。
【0038】
非晶性ポリエステルポリオールは、ポリカルボン酸とポリオールとの縮合重合体である。即ち、非晶性ポリエステルポリオールは、ポリカルボン酸とポリオールとが、ポリカルボン酸のカルボキシル基とポリオールの水酸基においてエステル反応を生じて縮合重合して得られる重合体である。
【0039】
ポリカルボン酸としては、特に限定されず、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタル酸、2,6−ナフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸、ドデカメチレンジカルボン酸などが挙げられ、アジピン酸、テレフタル酸及びイソフタル酸が好ましく、テレフタル酸及びイソフタル酸がより好ましく、テレフタル酸及びイソフタル酸を含むことが好ましい。なお、ポリカルボン酸は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0040】
ポリオールとしては、特に限定されず、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオールなどが挙げられ、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール及びネオペンチルグリコールが好ましく、エチレングリコール及びネオペンチルグリコールがより好ましく、エチレングリコール及びネオペンチルグリコールを含むことが好ましい。なお、ポリオールは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0041】
非晶性ポリエステルポリオールとは、JIS K7121に規定される示差走査熱量測定(DSC)の測定において、10℃/分の昇温速度で測定した融解曲線の吸熱量が2.5cal/g(10J/g)未満であるポリエステルポリオールである。
【0042】
非晶性ポリエステルポリオールの数平均分子量は、1000〜6000が好ましく、1100〜4000がより好ましく、1200〜3500がより好ましい。非晶性ポリエステルポリオールの数平均分子量が1000以上であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の初期接着力が向上する。非晶性ポリエステルポリオールの数平均分子量が6000以下であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の溶融粘度を低減でき塗工性が向上する。
【0043】
非結晶性ポリエステルポリオールの水酸基価は、20〜150mgKOH/gが好ましく、30〜120mgKOH/gがより好ましく、50〜100mgKOH/gが特に好ましい。非結晶性ポリエステルポリオールの水酸基価が20mgKOH/g以上であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の常態接着性が向上する。非結晶性ポリエステルポリオールの水酸基価が150mgKOH/g以下であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の溶融粘度を低減できる。
【0044】
ポリオール中において、非晶性ポリエステルポリオールの含有量は、15〜35質量%が好ましく、18〜33質量%がより好ましく、20〜30質量%がより好ましい。非晶性ポリエステルポリオールの含有量が15質量%以上であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の常態接着性が向上する。非晶性ポリエステルポリオールの含有量が35質量%以下であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の常態接着性が向上する。
【0045】
ポリカプロラクトンポリオールとしては、ポリオールにラクトン化合物を開環付加重合して得られるポリカプロラクトンポリオールが挙げられる。ポリオールとしては、ポリエステルポリオールにおいて上述したポリオールと同様のものが挙げられる。また、ラクトン化合物としては、β−プロピオラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、メチル−ε−カプロラクトン、ジメチル−ε−カプロラクトン、トリメチル−ε−カプロラクトンなどが挙げられる。
【0046】
ポリエーテルポリオールとしては、特に限定されない。ポリエーテルポリオールとしては、一般式:HO−(R
3−O)p−H(式中、R
3は炭素数が1〜14のアルキレン基を表し、pは、繰り返し単位の数であって正の整数である。)で表される繰り返し単位を含有する重合体、ビスフェノールA分子骨格の活性水素部分にアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシドなど)を付加反応させて得られるポリエーテルポリオールが好ましい。ポリエーテルポリオールの主鎖骨格は一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位を含んでいてもよく、又、二種以上の重合体ブロックを含んでいてもよい。なお、ポリエーテルポリオールは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0047】
上述の一般式:HO−(R
3−O)p−Hで表される繰り返し単位を含有する重合体の主鎖骨格[−(R
3−O)p−]としては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド共重合体、及びポリプロピレンオキサイド−ポリブチレンオキサイド共重合体などが挙げられる。なかでも、湿気硬化型ホットメルト接着剤の常態接着性が向上するので、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド共重合体が好ましい。
【0048】
ビスフェノールA分子骨格の活性水素部分にアルキレンオキシドを付加反応させて得られるポリエーテルポリオールとしては、湿気硬化型ホットメルト接着剤の常態接着性が向上するので、ビスフェノールA分子骨格の活性水素部分にプロピレンオキシドを付加反応させて得られるポリエーテルポリオール、ビスフェノールA分子骨格の活性水素部分にエチレンオキシドを付加反応させて得られるポリエーテルポリオールが好ましい。
【0049】
ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、500〜7000が好ましく、600〜6000がより好ましく、650〜5000がより好ましく、700〜4000がより好ましく、750〜3000がより好ましく、760〜2500が特に好ましい。ポリエーテルポリオールの数平均分子量が500以上であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の常態接着性が向上し好ましい。ポリエーテルポリオールの数平均分子量が7000以下であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の溶融粘度を低減でき、塗工性を向上させることができる。
【0050】
ポリエーテルポリオールの水酸基価は、50〜300mgKOH/gが好ましく、80〜180mgKOH/gがより好ましく、100〜150mgKOH/gが特に好ましい。ポリエーテルポリオールの水酸基価が50mgKOH/g以上であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の常態接着性が向上する。ポリエーテルポリオールの水酸基価が300mgKOH/g以下であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の溶融粘度を低減でき、塗工性を向上させることができる。
【0051】
ポリオール中において、ポリエーテルポリオールの含有量は、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、45質量%以上がより好ましい。ポリオール中において、ポリエーテルポリオールの含有量は、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、55質量%以下がより好ましい。ポリエーテルポリオールの含有量が20質量%以上であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の常態接着性が向上する。ポリエーテルポリオールの含有量が70質量%以下であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の初期接着性が向上する。
【0052】
ビスフェノールAのポリオキシアルキレン変性体としては、例えば、ビスフェノールA骨格のヒドロキシ基などの活性水素部分にアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるポリエーテルポリオールなどが挙げられる。アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、及びイソブチレンオキサイドなどが挙げられる。ビスフェノールA骨格の両末端のそれぞれに、一種又は二種以上のアルキレンオキサイドが、モノマー単位にて1〜10モル修飾されていることが好ましい。
【0053】
ポリアルキレンポリオールとしては、例えば、ポリブタジエンポリオール、水素化ポリブタジエンポリオール、及び水素化ポリイソプレンポリオールなどが挙げられる。
【0054】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリヘキサメチレンカーボネートポリオール、及びポリシクロヘキサンジメチレンカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0055】
ポリオールとしては、湿気硬化型ホットメルト接着剤の常態接着性が向上すると共に、湿気硬化型ホットメルト接着剤の溶融粘度が低下するので、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールを含むことが好ましく、結晶性ポリエステルポリオール、非晶性ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールを含むことが好ましい。
【0056】
ポリイソシアネートは、イソシアネート基を一分子中に2個以上有する化合物である。ポリイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4−MDI)、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’−MDI)、カルボジイミド変成ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート、トリレンジイソオシアネート(TDI、2,4体、2,6体、もしくはこれらの混合物)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。これらのポリイソシアネートは単独で用いられてもよく、2種以上を混合して用いられてもよい。
【0057】
なかでも、湿気硬化型ホットメルト接着剤の常態接着性が向上するので、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。そして、ポリイソシアネートのうち、より優れた常態接着性を湿気硬化型ホットメルト接着剤に付与することができることから、ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましく用いられる。
【0058】
ウレタンプレポリマーの合成方法としては、ポリオールを80〜120℃に加熱して溶融させた後、これにより得られた溶融物を減圧下で脱水した上で、溶融物に窒素雰囲気下でポリイソシアネートを添加し、上記ポリオールと上記ポリイソシアネートを反応させる方法が好ましく用いられる。
【0059】
ウレタンプレポリマーを合成する際には、ポリイソシアネートが有するイソシアネート基(NCO)の合計と、ポリオールが有するヒドロキシル基(OH)の合計とのモル比([NCO]/[OH])を、1.5〜4.0とすることが好ましい。モル比([NCO]/[OH])が1.5以上であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の粘度を抑制して塗工性を向上させることができる。モル比([NCO]/[OH])が4.0以下であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の湿気硬化後の発泡が抑制されて好ましい。
【0060】
[ガラスフリット]
湿気硬化型ホットメルト接着剤は、特定のガラスフリットを含有している。湿気硬化型ホットメルト接着剤は、特定のガラスフリットを含有していることによって、湿気硬化して生成される硬化物は優れた耐熱性能を有している。更に、湿気硬化型ホットメルト接着剤は、経時的なゲル化が抑制されており貯蔵安定性に優れていると共に、粘度も低く抑えられ、優れた塗工性を有している。
【0061】
ガラスフリットは、B
2O
3、P
2O
5、ZnO、SiO
2、Bi
2O
3、Al
2O
3、BaO、CaO、MgO、MnO
2、ZrO
2、TiO
2、CeO
2、SrO、V
2O
5、SnO
2、Li
2O、Na
2O、K
2O、CuO、Fe
2O
3などを所定の成分割合で調整して得ることができる。なお、ガラスフリットは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0062】
ガラスフリットは、リン酸成分(P
2O
5)を主成分とせず且つアルカリ成分が15質量%以下であるガラスフリット(A)、及び/又は、リン酸成分(P
2O
5)を主成分とし且つアルカリ成分が25質量%以下であるガラスフリット(B)を含有している。
【0063】
本発明において、「主成分」とは、ガラスフリットを構成している成分において最も多く含まれている成分をいう。最も多く含まれている成分が複数ある場合は、それぞれの成分を「主成分」とする。リン酸成分とは、P
2O
5をいう。アルカリ成分とは、Li
2O、Na
2O及びK
2Oをいう。
【0064】
ガラスフリット(A)は、リン酸成分(P
2O
5)を主成分とせず且つアルカリ成分が15質量%以下である。ガラスフリット(A)において、アルカリ成分(Li
2O、Na
2O及びK
2Oの総量)は15質量%以下であり、12質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。アルカリ成分が15質量%以下であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤は、経時的なゲル化が抑制されて貯蔵安定性に優れていると共に、粘度も低く抑えられており塗工性に優れている。
【0065】
ガラスフリット(A)を構成しているガラスの軟化点は、600℃以上が好ましく、
620℃以上がより好ましく、670℃以上がより好ましい。ガラスフリット(A)を構成しているガラスの軟化点は、1000℃以下が好ましく、900℃以下がより好ましく、850℃以下がより好ましい。ガラスフリット(A)を構成しているガラスの軟化点が600℃以上であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤は、経時的なゲル化が抑制されて貯蔵安定性に優れていると共に、粘度も低く抑えられており塗工性に優れている。なお、ガラスフリットを構成しているガラスの軟化点は、ガラスの粘度が107.6dPa・s(logη=7.6)となる温度である。
【0066】
ガラスフリット(B)は、リン酸成分(P
2O
5)を主成分とし且つアルカリ成分が25質量%以下である。ガラスフリット(B)のアルカリ成分量は、ガラスフリット(A)のアルカリ成分量よりも相対的に多くなっているが、これは、酸性成分であるリン酸成分が主成分となっているためである。
【0067】
ガラスフリット(B)において、アルカリ成分(Li
2O、Na
2O及びK
2Oの総量)は25質量%以下であり、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がより好ましい。アルカリ成分が25質量%以下であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤は、経時的なゲル化が抑制されて貯蔵安定性に優れていると共に、粘度も低く抑えられており塗工性に優れている。
【0068】
湿気硬化型ホットメルト接着剤において、ガラスフリットの含有量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して50質量部以上が好ましく、70質量部以上がより好ましく、100質量部以上がより好ましい。ガラスフリットの含有量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して210質量部以下が好ましく、170質量部以下がより好ましく、150質量部以下がより好ましい。ガラスフリットの含有量が50質量部以上であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化物の耐熱性能が向上する。ガラスフリットの含有量が210質量部以下であると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の溶融粘度が低下して塗工性が向上する。
【0069】
[添加剤]
湿気硬化型ホットメルト接着剤は、ウレタンプレポリマー及びガラスフリットを含有しているが、ウレタンプレポリマー及びガラスフリット以外に添加剤が含有されていてもよい。
【0070】
添加剤としては、湿気硬化型ホットメルト接着剤の物性を損なわなければ、特に限定されず、例えば、粘着付与剤、オイル、可塑剤、熱可塑性樹脂、硬化触媒、安定剤、充填剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、香料、顔料、染料、及び、加水分解性シリル基を有するポリマーなどが挙げられる。なお、添加剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0071】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族石油樹脂、及び芳香族石油樹脂などが挙げられる。粘着付与剤の環球軟化点は90〜150℃が好ましい。環球軟化点は、JAI‐7−1999(日本接着剤工業会規格)に準拠して測定された温度をいう。粘着付与剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0072】
オイルとしては、プロセスオイル、エクステンダーオイル、ソフナー、ナフテン系オイル、パラフィン系オイルなどが挙げられる。オイルは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0073】
可塑剤としては、例えば、リン酸トリブチル、リン酸トリクレジルなどのリン酸エステル類、フタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステル、グリセリンモノオレイン酸エステルなどの脂肪酸−塩基酸エステル、アジピン酸ジオクチルなどの脂肪酸二塩基酸エステル、オレイン酸ブチル、アセチルリシリノール酸メチルなどの脂肪族エステル、トリメリット酸エステル、塩素化パラフィン、アルキルジフェニル、部分水添ターフェニルなどの炭化水素系油、プロセスオイル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジルのエポキシ可塑剤、ビニル系モノマーを重合して得られるビニル系重合体、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステルなどのポリアルキレングリコールのエステルなどが挙げられる。可塑剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0074】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン誘導体、ポリイソブテン、ポリオレフィン類、ポリアルキレンオキシド類、ポリウレタン類、ポリアミド類、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ニトロブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、水添ニトロブタジエンゴム(水添NBR)、水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(水添SBS)、水添スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(水添SIS)、及び水添スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(水添SEBS)などを挙げることができる。熱可塑性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0075】
硬化触媒は、湿気硬化型ホットメルト接着剤の湿気反応性を向上させるために用いられる。触媒としては、アミン系硬化触媒や錫系硬化触媒などが用いられる。アミン系硬化触媒としては、特に限定されないが、モルホリン系化合物が好ましい。モルホリン系化合物としては、具体的には、2,2’−ジモルホリノジエチルエーテル、ビス(2,6−ジメチルモルホリノエチル)エーテル、ビス(2−(2,6−ジメチル−4−モルホリノ)エチル)−(2−(4−モルホリノ)エチル)アミン、ビス(2−(2,6−ジメチル−4−モルホリノ)エチル)−(2−(2,6−ジエチル−4−モルホリノ)エチル)アミン、トリス(2−(4−モルホリノ)エチル)アミン、トリス(2−(4−モルホリノ)プロピル)アミン、トリス(2−(4−モルホリノ)ブチル)アミン、トリス(2−(2、6−ジメチル−4−モルホリノ)エチル)アミン、トリス(2−(2、6−ジエチル−4−モルホリノ)エチル)アミン、トリス(2−(2−エチル−4−モルホリノ)エチル)アミン、及びトリス(2−(2−エチル−4−モルホリノ)エチルアミンなどが挙げられる。錫系硬化触媒としては、特に限定されず、例えば、酸第1錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジアセテート、及びジオクタン酸第1錫などが挙げられる。硬化触媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0076】
安定剤は、特に限定されないが、有機燐系化合物が好ましい。有機燐系化合物としては、例えば、トリクレシルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)フォスフェート、トリブトキシエチルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、オクチルジフェニルフォスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)フォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、トリフェニルホスファイト、トリフェニルフォスフィン、トリフェニルフォスフィンオキサイド、芳香族リン酸縮合エステルが挙げられる。なかでも、常温で固体の有機燐系化合物が好ましく、トリフェニルホスファイト、トリフェニルフォスフィン、トリフェニルフォスフィンオキサイド、及び芳香族リン酸縮合エステルがより好ましい。有機燐系化合物によれば、湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化速度を低下させることなく、湿気硬化型ホットメルト接着剤の熱安定性を向上させることができる。安定剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0077】
充填剤の例としては、例えば、シリカ、タルク、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水珪素、含水珪素、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、カーボンブラック、ベントナイト、有機ベントナイト、シラスバルーン、ガラスミクロバルーン、フェノール樹脂及び塩化ビニリデン樹脂などから形成された有機ミクロバルーン、並びにPVC(ポリ塩化ビニル)及びPMMA(ポリメチルメタクリレート)などの樹脂から形成された粒子などが挙げられる。充填剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0078】
酸化防止剤としては、例えば、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、及びポリフェノール系酸化防止剤などが挙げられる。酸化防止剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0079】
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤が好適に用いられる。その中でもアミン部分が3級アミンであるヒンダードアミン系光安定剤がより好ましい。光安定剤としては、例えば、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、ビス(1,2,2,6,6,−ペンタメチル−4−ピペリジル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、及びビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートなどが挙げられる。光安定剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0080】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられる。紫外線吸収剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0081】
[湿気硬化型ホットメルト接着剤]
上述したウレタンプレポリマーの合成時において、ポリオールの溶融物に、ポリイソシアネートと共に、ガラスフリット(A)及び/又はガラスフリット(B)を添加することによって、ウレタンプレポリマーと、ガラスフリット(A)及び/又はガラスフリット(B)を含有するガラスフリットとを含有する湿気硬化型ホットメルト接着剤を製造することができる。
【0082】
ガラスフリットは、特定のガラスフリット(A)及び/又はガラスフリット(B)を含有するので、生成されるウレタンプレポリマー同士が架橋反応を生じて硬化するのを概ね防止することができ、得られる湿気硬化型ホットメルト接着剤は、貯蔵安定性に優れていると共に、粘度も低く、塗工性に優れている。
【0083】
湿気硬化型ホットメルト接着剤の使用要領を説明する。先ず、湿気硬化型ホットメルト接着剤をアルミニウムパックなどの収納容器から取り出す。
【0084】
次に、湿気硬化型ホットメルト接着剤を100〜130℃に加熱して溶融させた後、溶融状態の湿気硬化型ホットメルト接着剤を被着体に塗布する。被着体に塗布した湿気硬化型ホットメルト接着剤上に別の被着体を重ね合わせて、二つの被着体を湿気硬化型ホットメルト接着剤を介して重ね合わせる。
【0085】
しかる後、湿気硬化型ホットメルト接着剤を、好ましくは20〜25℃にて相対湿度50〜60%の環境下に120〜168時間に亘って放置する。湿気硬化型ホットメルト接着剤に含まれているウレタンプレポリマーが空気及び/又は被着体に含まれている水分によって架橋反応を生じ、湿気硬化型ホットメルト接着剤を硬化させて、二つの被着体を接着一体化することができる。ホットメルト接着剤は、硬化後に優れた常態接着強度を有していることから、二つの被着体は長期間に亘って安定的に接着一体化される。
【0086】
更に、湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化物は、優れた耐熱性能を有しており、被着体は、優れた耐火性能を有する硬化物によって、火災時などの熱から効果的に保護され、熱による機械的強度の低下が最小限に抑制される。
【0087】
[化粧材]
湿気硬化型ホットメルト接着剤は、化粧材の製造に好適に用いられる。湿気硬化型ホットメルト接着剤は、基材と化粧シートとを接着一体化させるために用いられることが好ましい。
【0088】
化粧材の構成としては、特に制限されず、従来公知の化粧材の構成が挙げられる。例えば、湿気硬化型ホットメルト接着剤によって基材と化粧シートとが接着一体化されてなる化粧材が挙げられる。
【0089】
湿気硬化型ホットメルト接着剤は、上記の如き構成を有しているので、湿気硬化型ホットメルト接着剤に求められる、基本性能である、常態接着性に優れている。
【0090】
そして、湿気硬化型ホットメルト接着剤の溶融粘度は120℃で40000mPa・s以下が好ましい。湿気硬化型ホットメルト接着剤の溶融粘度が40000mPa・s以下であると、優れた塗工性を有する。なお、湿気硬化型ホットメルト接着剤の溶融粘度は、B型粘度計を用いて日本接着剤工業会規格JAI−7−1999に準拠して温度120℃、回転速度20rpmの条件下にて測定して得られた溶融粘度をいう。なお、B型粘度計としては、例えば、ブルックフィールド社から商品名「B型粘度計デジタルレオメーターDVII(ローターNo.29)」にて市販されている。
【0091】
化粧材の製造方法としては、例えば、湿気硬化型ホットメルト接着剤を70〜160℃に加熱することで溶融させた後、基材又は化粧シートのうちの一方の上に塗布し、塗布した湿気硬化型ホットメルト接着剤に基材又は化粧シートのうちの他方を重ね合わせて積層体を作製し、この積層体を養生させることにより湿気硬化型ホットメルト接着剤を硬化させ、これにより接着剤層を形成すると共に、接着剤層によって基材と化粧シートとが接着一体化された化粧材を得る方法が挙げられる。
【0092】
加熱溶融させた湿気硬化型ホットメルト接着剤を基材又は化粧シートに塗布する方法としては、ロールコーター、スプレーコーター、Tダイコーター、及びナイフコーターなどが挙げられる。
【0093】
また、積層体の養生を行う前に、積層体にロールプレス、フラットプレス、ベルトプレスなどを行うことにより、基材、湿気硬化型ホットメルト接着剤、及び化粧シートを圧着させることが好ましい。
【0094】
化粧材に用いられる基材としては、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、及びメラミン樹脂などの合成樹脂からなる合成樹脂板;天然木材、合板、ミディアムデンシティファイバーボード(MDF)パーティクルボード、硬質ファイバーボード、半硬質ファイバーボード、及び集成材などの木材;無機ボードなどが挙げられる。基材において、接着剤層と接着一体化される面には、必要に応じて、プラズマ処理、アクリル系樹脂やメラミンアクリル系樹脂などの電着塗装処理、及びアルマイト処理などのプライマー処理が行われていてもよい。また、基材には、溝部の他、R部や逆R部などの曲面部が形成されていてもよい。
【0095】
化粧シートとしては、ポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリカーボネート、塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、及びポリプロピレンなどの合成樹脂からなるシート、紙などが挙げられる。化粧シートは、その表面に色や模様を付すことにより装飾性が高められていてもよい。
【0096】
本発明の化粧材は、例えば、フローリング、木質ドアの框や鏡板、窓枠、敷居、手すり、幅木、回り縁や、キッチン、及びクローゼットなどの外装材、内装材及び家具として好ましく用いられる。
【0097】
化粧材において、基材と化粧シートとを接着一体化している、湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化物は、優れた耐熱性能を有している。従って、火災時において、基材は、湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化物によって、火災時の熱から保護され、熱による機械的強度の低下が最小限に抑制されており、火災時において、被着体はその形状を保持し、崩壊することが阻止されている。従って、火災時において、被着体の崩落などによって隙間が生じ、この隙間を通じた延焼が生じるのを効果的に抑制することができる。
【実施例】
【0098】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0099】
先ず、後述する実施例及び比較例において湿気硬化型ホットメルト接着剤の製造に用いた各成分の詳細について記載する。
【0100】
[ポリオール]
・ポリエステルポリオール1(結晶性ポリエステルポリオール、セバシン酸(炭素数:10)と1,6−ヘキサンジオールとを縮合重合させてなるポリエステルポリオール(数平均分子量:3500、豊国製油社製 商品名「HS 2H−350S」、水酸基価:32mgKOH/g、吸熱量:25cal/g)
・ポリエステルポリオール2(非晶性ポリエステルポリオール、エチレングリコール及びネオペンチルグリコールを含むポリオールと、テレフタル酸及びイソフタル酸を含むポリオールとを縮合重合させてなるポリエステルポリオール(数平均分子量:1250、豊国製油社製 商品名「HS 2F−125P」、水酸基価:88mgKOH/g、吸熱量:2cal/g)
・ポリエーテルポリオール(ポリプロピレングリコール(数平均分子量:1000、AGC社製 商品名「エクセノール1020」、水酸基価:112mgKOH/g)
【0101】
[ポリイソシアネート]
・4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)
【0102】
[ガラスフリット]
・ガラスフリット(A1)(リン酸成分を主成分とせず且つアルカリ成分が10質量%、タカラスタンダード社製 商品名「CK0133」、軟化点:820℃)
・ガラスフリット(A2)(リン酸成分を主成分とせず且つアルカリ成分が10質量%、タカラスタンダード社製 商品名「CY5401」、軟化点:681℃)
・ガラスフリット(A3)(リン酸成分を主成分とせず且つアルカリ成分が0質量%、タカラスタンダード社製 商品名「CY0037」、軟化点:627℃)
・ガラスフリット(B1)(リン酸成分を主成分とし且つアルカリ成分が25質量%、タカラスタンダード社製 商品名「VQ0028」、軟化点:430℃)
・ガラスフリット(C1)(リン酸成分を主成分とし且つアルカリ成分が30質量%、タカラスタンダード社製 商品名「VY0144」、軟化点:404℃)
・ガラスフリット(C2)(リン酸成分を主成分とし且つアルカリ成分が30質量%、タカラスタンダード社製 商品名「VY0047」、軟化点:396℃)
・ガラスフリット(C3)(リン酸成分を主成分とし且つアルカリ成分が10質量%、タカラスタンダード社製 商品名「CY0086」、軟化点:569℃)
・ガラスフリット(C4)(リン酸成分を主成分とし且つアルカリ成分が5質量%、タカラスタンダード社製 商品名「CY0113」、軟化点:562℃)
【0103】
[充填剤]
・炭酸カルシウム(東洋ファインケミカル社製 商品名「P30」)
【0104】
[長石]
・準長石(平均粒子径:5μm、ネフェリンサイアナイト 白石カルシウム社製 商品名「ネスパー」)
【0105】
[脱水剤]
・モノイソシアネート(p−トルエンスルホニルイソシアネート、OMG社製 商品名「アディティブTi」)
【0106】
(難燃剤)
・リン酸エステル(大八化学工業社製 商品名「PX−200」)
【0107】
(実施例1〜4、比較例1〜6)
表1に示した所定量のポリオール、ガラスフリット、炭酸カルシウム、準長石及びリン酸エステルを撹拌羽を有する1リットル四つ口フラスコ内に投入し、140℃に加熱、溶融させて溶融状態の原料組成物を得た。
【0108】
得られた原料組成物に133.3Pa(1mmHg)以下の減圧下にて脱水処理を施した後、フラスコ内を窒素ガスでパージし、原料組成物を80℃まで冷却した。次に、フラスコ内の原料組成物に、表1に示した所定量の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを添加した。
【0109】
フラスコ内を窒素ガス雰囲気下で3時間に亘って攪拌して反応させた後、フラスコ内に表1に示した所定量のモノイソシアネートを添加して、末端にイソシアネート基を含有しているウレタンプレポリマー及びガラスフリットを含む湿気硬化型ホットメルト接着剤を得た。
【0110】
得られた湿気硬化型ホットメルト接着剤について、各成分の含有量を表2に示した。
【0111】
得られた湿気硬化型ホットメルト接着剤について、120℃での溶融粘度を上記の要領で測定し、その結果を表2に示した。
【0112】
得られた湿気硬化型ホットメルト接着剤について、貯蔵安定性、常態接着性、初期接着性及び耐熱性能を下記の要領で測定し、その結果を表2に示した。
【0113】
(貯蔵安定性)
湿気硬化型ホットメルト接着剤を23℃、相対湿度50%の雰囲気下に14日間に亘って放置した。放置後の湿気硬化型ホットメルト接着剤の120℃での溶融粘度を上述の要領で測定した。比較例1〜4及び6の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、硬化してしまい、溶融粘度を測定することができなかった。
【0114】
(常態接着性)
湿気硬化型ホットメルト接着剤を120℃に加熱して溶融させた後、溶融状態の湿気硬化型ホットメルト接着剤を、平面長方形状のオレフィンシート(厚み180μm)の一面に塗工厚み50μmで塗工した。その後、表面温度を40℃に調整した不燃ボード上に、オレフィンシートを、塗工した湿気硬化型ホットメルト接着剤を介して重ね合わせた後、オレフィンシート上にゴムロールを転動させて、オレフィンシートと不燃ボードとを圧着させることにより、試験片を得た。
【0115】
比較例1〜4及び6は、加熱溶融後に経時で著しく増粘したため、試験片を作製することができなかった。
【0116】
次に、試験片を、温度23℃、相対湿度55%環境下に1時間に亘って放置することにより、湿気硬化型ホットメルト接着剤を冷却固化させた。その後、試験片を温度23℃、相対湿度55%環境下に1週間に亘って放置することにより、湿気硬化型ホットメルト接着剤を湿気硬化させた。そして、不燃ボードからオレフィンシートを、剥離角度180度、剥離速度200mm/分で剥離し、この時の平均の剥離強度を「常態接着強度(N/25mm)」として測定した。
【0117】
(初期接着性)
湿気硬化型ホットメルト接着剤を120℃に加熱して溶融させた。溶融状態の湿気硬化型ホットメルト接着剤を平面長方形状(縦150cm×横50cm)で且つ厚みが180μmのポリオレフィン系樹脂シートの一面全面に塗工厚み50μmで塗工した。
【0118】
次に、表面温度を40℃に保持した板状の不燃ボード表面に、ポリオレフィン系樹脂シートを湿気硬化型ホットメルト接着剤が基材側となるように全面的に重ね合わせた後、オレフィンシート上にゴムロールを転動させて、オレフィンシートと不燃ボードとを圧着させることにより、試験片を得た。その後、試験片を温度23℃、相対湿度55%環境下に30分経過後に、ポリオレフィン系樹脂シートを板状の基材の表面から剥離し、剥離状態を目視観察した。基材の表面層が材料破壊している場合を「材料破壊」と、湿気硬化型ホットメルト接着剤において凝集破壊していた場合を「凝集破壊」と表記した。
【0119】
比較例1〜4及び6は、加熱溶融後に経時で著しく増粘したため、試験片を作製することができなかった。
【0120】
(耐熱性能)
常態接着性の評価の時と同様の要領で試験片を作製した。得られた試験片を一辺が50mmの平面正方形状に切断して試験体を作製した。試験体を電気炉にて800℃で30分間加熱した。加熱後の試験体を電気炉から取り出し、室温に3時間放置した後、試験体の外観を目視観察し、下記基準に基づいて判断した。なお、比較例1〜4及び6は、加熱溶融後に経時で著しく増粘したため、試験片を作製することができなかった。
○・・・試験片が形状を保持していた。
×・・・試験片の形状が崩れていた。
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】