特開2021-195462(P2021-195462A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フェクトの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-195462(P2021-195462A)
(43)【公開日】2021年12月27日
(54)【発明の名称】抗菌/抗ウイルス塗料
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/04 20060101AFI20211129BHJP
   C09D 5/14 20060101ALI20211129BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20211129BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20211129BHJP
   A01N 43/40 20060101ALI20211129BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20211129BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20211129BHJP
【FI】
   C09D183/04
   C09D5/14
   C09D7/63
   C09D7/62
   A01N43/40 101K
   A01P1/00
   A01P3/00
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-103414(P2020-103414)
(22)【出願日】2020年6月15日
(11)【特許番号】特許第6792896号(P6792896)
(45)【特許公報発行日】2020年12月2日
(71)【出願人】
【識別番号】507381455
【氏名又は名称】株式会社フェクト
(74)【代理人】
【識別番号】100207066
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 毅
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】特許業務法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 海人
(72)【発明者】
【氏名】高田 康哲
(72)【発明者】
【氏名】大山 潤哉
【テーマコード(参考)】
4H011
4J038
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011AA04
4H011BB09
4H011BC16
4H011BC18
4H011BC19
4H011DH07
4J038DL051
4J038HA446
4J038JA18
4J038JB29
4J038JC32
4J038JC39
4J038KA04
4J038KA06
4J038MA14
4J038NA27
4J038PA20
(57)【要約】
【課題】既に形成されている塗膜を含め、多くの製品素材の表面に、室温下で、透明性(表面クリアー性)を有し、清潔感を付与することができるとともに、防汚性、耐薬品性、耐擦傷性などに優れた特性をも付与することができる抗菌/抗ウイルス塗料を提供する。
【解決手段】本発明の抗菌/抗ウイルス塗料は、湿気硬化型の1液性シリコーンアルコキシオリゴマーをバインダーとし、抗菌/抗ウイルス性成分として第4アンモニウム塩を含む抗菌/抗ウイルス塗料であって、前記第4アンモニウム塩含有量は、前記シリコーンアルコキシオリゴマーを含む塗料固形分100質量部に対して2〜10質量部であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿気硬化型の1液性シリコーンアルコキシオリゴマーをバインダーとし、抗菌/抗ウイルス性成分として第4アンモニウム塩を含む抗菌/抗ウイルス塗料であって、
前記第4アンモニウム塩含有量は、前記シリコーンアルコキシオリゴマーを含む塗料固形分100質量部に対して2〜10質量部であることを特徴とする抗菌/抗ウイルス塗料。
【請求項2】
前記第4アンモニウム塩は、
4,4'−(テトラメチレンジカルボニルジアミノ)ビス(1−デシルピリジニウムブロマイド)、
N,N'−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムブロマイド、
1,4−ビス[3,3'−(1−デシルピリジニウム)メチルオキシ]ブタンジブロマイド,
から選択された少なくとも1種のビス型構造のものであることを特徴とする、請求項1に記載の抗菌/抗ウイルス塗料。
【請求項3】
さらに、第4アンモニウム塩とナノシリカとの複合体を含んでいることを特徴とする、請求項1又は2に記載の抗菌/抗ウイルス塗料。
【請求項4】
前記第4アンモニウム塩とナノシリカとの複合体の含有量は、前記第4アンモニウム塩に対して20〜50質量%であることを特徴とする、請求項3に記載の抗菌/抗ウイルス塗料。
【請求項5】
前記ナノシリカの平均粒径は、10〜50nmであることを特徴とする、請求項3又は4に記載の抗菌/抗ウイルス塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既に形成されている塗膜を含め、多くの製品素材の表面に、室温下で、透明性(表面クリアー性)を有し、清潔感を付与することができるとともに、防汚性、耐薬品性、耐擦傷性などに優れた特性をも付与することができる抗菌/抗ウイルス塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の新型コロナウイルス騒動の広まりに伴い、手指や人が触れる可能性がある多種多様な製品素材の表面を消毒するための抗菌/抗ウイルス剤の要求が増大している。これらの抗菌/抗ウイルス剤は定着性がないため、人が触れる可能性がある多種多様な製品素材の表面に抗菌/抗ウイルス性を有する塗料を塗布することにより、これらの表面に直接抗菌/抗ウイルス性を有する塗膜を形成することが行われている。
【0003】
従来、製品素材の表面に抗菌性ないし抗ウイルス性を付与するための抗菌/抗ウイルス塗料として種々の組成のものが知られている。たとえば、下記特許文献1には、一般的なアクリル/メラミン系塗料、ポリエステル/メラミン系塗料、ポリウレタン系塗料やエポキシ塗料等からなる樹脂エマルジョン組成物と、光触媒型酸化チタンと、無機多孔質顔料と、を含む塗料組成物が開示されている。この塗料組成物では、無機多孔質顔料が塗膜に残留している添加剤や低分子オリゴマー等の残留物を吸着するため、光触媒がこれらの残留物を分解しにくくるので、塗膜形成直後でも光触媒機能の低下が少なくなって抗菌/抗ウイルス性が良好に発現されるようになるものである。
【0004】
また、下記特許文献2には、建築用塗料として多く用いられているアクリルメラミン塗料中に、抗菌/抗ウイルス性を発現するための有効成分である4級アンモニウム塩と、多価カルボン酸と、リン酸塩と、を含む、抗菌/抗ウイルス性コーティング剤が開示されている。このコーティング剤によれば、4級アンモニウム塩による塗膜の硬化不良が生じにくくなるとともに、水に接触しても4級アンモニウム塩が塗膜から溶出しにくくなり、しかも塗料中に沈殿物が生じにくくなるので、優れた外観を維持できる抗菌/抗ウイルス性塗膜を形成可能な抗菌/抗ウイルス性コーティング剤が得られるというものである。
【0005】
また、下記特許文献3には、2液型ポリウレタン樹脂塗料中に、汎用的な抗菌剤の添加量を、抗菌性が発現する範囲における抗菌剤の下限添加量よりも多くすることにより抗ウイルス機能をも発現させるようにした抗ウイルス用塗料組成物の発明が開示されている。さらに、下記特許文献4には、塗膜形成用塗料、紫外線硬化塗膜用塗料として使用可能な、アミノ基を有するポリビニルアルコールからなる抗菌/抗ウイルス性高分子化合物の発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019−011418号公報
【特許文献2】特開2017−014401号公報
【特許文献3】特開2017−025170号公報
【特許文献4】国際公開2017/171066号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】高麗寛紀「殺菌剤の定量的構造活性相関手法を用いた基礎的研究および実用化に関する研究」、防菌防黴誌、Vol.33,No.6,pp273〜285(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に開示されている塗料組成物の発明によれば、光触媒の有する良好な抗菌性ないし抗ウイルス性により、一般のアクリル/メラミン系塗料やポリエステル/メラミン系塗料、ポリウレタン系塗料やエポキシ塗料等からなる樹脂エマルジョン組成物を用いても、優れた抗菌/抗ウイルス性を有する塗膜が得られるようになる。しかしながら、これらの塗料組成物は、平均粒径数μmの粉末からなる光触媒や顔料を混錬したものからなるので、透明性に優れた高外観のクリアー塗膜を得ることができなかった。また、アクリル/メラミン系塗料やポリエステル/メラミン系塗料の塗装工程では150℃以上の焼付が必要となり、ポリウレタン系塗料やエポキシ塗料の塗装工程では、使用時に主剤と硬化剤を混合し、ポットライフの時間内に使用せねばならず、複雑な処理工程が必要である他、塗膜の性能上、15〜20μm以上の膜厚が必要であるという課題があった。
【0009】
また、上記特許文献2に開示されている抗菌/抗ウイルス性コーティング剤はアクリルメラミン系塗料を用いており、上記特許文献3に開示されている抗ウイルス用塗料組成物によれば2液型ポリウレタン樹脂塗料を用いているので、それぞれ上記特許文献1に開示されている発明と場合と同様の課題があった。
【0010】
さらに、特許文献4に開示されている塗料によれば、抗菌/抗ウイルス性を発現する高分子化合物がアミノ基を有するポリビニルアルコールであるため、塗膜形成にはポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール(ブチラール樹脂等)、セルロース類、アクリルウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂等を用いる必要があり、防汚性、耐薬品性、耐擦傷性等に課題があった。
【0011】
本発明は、上述のような従来技術の課題を解決すべくなされたものであり、既に形成されている塗膜を含め、多くの製品素材の表面に、室温下で、透明性(表面クリアー性)を有し、清潔感を付与することができるとともに、防汚性、耐薬品性、耐擦傷性などに優れた特性をも付与することができる抗菌/抗ウイルス塗料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明は、湿気硬化型の1液性シリコーンアルコキシオリゴマーをバインダーとし、抗菌/抗ウイルス性成分として第4アンモニウム塩を含む抗菌/抗ウイルス塗料であって、前記第4アンモニウム塩含有量は、前記シリコーンアルコキシオリゴマーを含む塗料固形分100質量部に対して2〜10質量部であることを特徴とする。
【0013】
本発明の抗菌/抗ウイルス塗料によれば、塗膜形成成分としてのバインダーが湿気硬化型の1液性シリコーンアルコキシオリゴマーからなるので、加熱操作を必要とせずに室温下で塗膜形成することができ、しかも得られた塗膜は透明性が良好なガラス質の膜となるので、既に形成されている塗膜の表面や多くの製品素材の表面にそれぞれの意匠を生かしながら清潔感を付与することができるようになる。また、得られる塗膜は硬質であるので、既に形成されている塗膜の表面や多くの製品素材の表面に防汚性、耐薬品性、耐擦傷性をも付与することができる。加えて、本発明の抗菌/抗ウイルス塗料によれば、スプレー法、、刷毛による塗布法、ローラー法や拭き上げ法などで塗装でき、数μm以下の膜厚の抗菌/抗ウイルス性を有する透明薄膜を形成することができる。特に、拭き上げ法では、1μm以下の膜厚の超薄膜塗装も可能となる。
【0014】
しかも、本発明の抗菌/抗ウイルス塗料においては、膜形成成分としての湿気硬化型の1液性シリコーンアルコキシオリゴマーと抗菌/抗ウイルス性成分としての第4アンモニウム塩を互いに相容性の溶剤(例えばアルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤等)に溶解させたものを用いることができ、互いの相容性も良好であるために均質に溶解させることができ、長期間に亘って優れた抗菌/抗ウイルス性を発揮できる塗膜が得られる。
【0015】
なお、無機抗菌剤として、光触媒以外にもゼオライト、ガラスやリン酸カルシウムなどに銀、銅あるいは亜鉛を担持させた製品が知られており、また、有機系抗菌剤としては、スルファミド系、ピリジン系、イソチアゾロン系、チアゾール系、イミダゾール系や第4アンモニウム塩系抗菌剤が知られている。しかしながら、無機系抗菌剤は、平均粒径が数μmの粉末であるため、透明性に劣り、薄膜状態で高品質の外観を有する塗膜を得ることが困難である。有機系抗菌剤では、抗菌/抗ウイルス効果に優れ、溶剤への溶解性が良好で、安全性や耐久持続性などの点から第4アンモニウム塩系抗菌剤が好適である
【0016】
なお、本発明の抗菌/抗ウイルス塗料は、少なくとも湿気硬化型の1液性シリコーンアルコキシオリゴマーと、アルコキシシランと、硬化触媒としての有機金属化合物を塗料固形分として含むものであり、以下の反応式に示すように、空気中の水分によりシラノール基が生成する脱アルコール縮合硬化タイプの塗料として周知のものである。
【化1】
上記半の式中、RおよびRは炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を示す。RおよびRのうち、少なくとも1つの基は性能上より炭素数1〜12のアルコキシ基であり、特に好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基である。
【0017】
アルコキシシランは、架橋剤として、また密着改良剤(シランカップリング剤)として作用するものであり、メチルトリメトキシシラン、ジメチルシリメトキシシラン、エチルトリメトキシシランやn-プロピルメトキシシランなどのアルキルアルコキシシランやアルキル基以外の官能基(ビニル基、エポキシ基、アミノ基など)を有するシランカップリング剤を用いることができる。アルコキシシランの量は、シリコーンアルコキシオリゴマー100質量部あたり5〜20質量部が好ましい。なお、塗膜の可撓性付与のために、適宜量のオルガノポリシロキサンを添加してもよい。
【0018】
硬化触媒は、金属脂肪酸塩や金属アルコラートであり、アミン化合物なども使用することができる。金属脂肪酸塩としてはスズ化合物やジルコニウム化合物、アルコラートとしてはチタン系化合物やアルミ系化合物が一般的である。
【0019】
なお、本発明の抗菌/抗ウイルス塗料においては、抗菌/抗ウイルス性成分としての第4アンモニウム塩含有量は、前記シリコーンアルコキシオリゴマーを含む塗料固形分100質量部に対して2〜10質量部とすることが必要である。第4アンモニウム塩含有量が塗料固形分100質量部に対して2質量部未満であると抗菌/抗ウイルス性が低下するが、特に抗ウイルス性が激減する。同じく10質量部を越えると、抗菌/抗ウイルス効果が飽和してしまうし、塗膜の硬度や耐擦傷性などの塗膜の強度が低下する他、低温時における塗料の保存性が低下する。
【0020】
なお、本発明の抗菌/抗ウイルス塗料を用いて形成された塗膜の抗菌/抗ウイルス性の存在は、得られた塗膜の表面にブロモフェノールブルー(BPB)を滴下すると、カチオン性の4級アンモニウムとカチオン性のBPBとが結合して無色の状態から青色へと変色するので、確認することができる。
【0021】
本発明の抗菌/抗ウイルス塗料においては、前記第4アンモニウム塩は、
4,4'−(テトラメチレンジカルボニルジアミノ)ビス(1−デシルピリジニウムブロマイド)、
N,N'−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムブロマイド、
1,4−ビス[3,3'−(1−デシルピリジニウム)メチルオキシ]ブタンジブロマイド、
から選択された少なくとも1種のビス型構造のものであることが好ましい。
【0022】
第4アンモニウム塩は、抗菌/抗ウイルス剤として、種々のものが広く市販されていおり、入手が容易であり、一応良好な抗菌/抗ウイルス性を示す塗膜が得られる。これらの第4アンモニウム塩としては、ピリジニウム基を有するものが好ましく、ピリジニウム基を有するもののうちピリジン核にアンモニウム長鎖アルキル基のようなかさ高い置換基が導入されたものが好ましく、モノ型構造のものよりもビス型構造のものがさらに好ましい。なお、モノ型構造の第4アンモニウム塩は、微生物の表面疎水性に依存して様々なMIC(最小発育阻止濃度)が測定され、殺菌力に限界がある(上記非特許文献1参照)。それに対し、ビス型構造の第4アンモニウム塩は、MICの比較で、多くの細菌に対して高い活性を示し、細菌芽胞に対して強い細胞破壊作用を有している。
【0023】
なお、モノ型構造の第4アンモニウム塩(臭素塩)の化学構造式の例を下記化2に、ビス型構造の第4アンモニウム塩(臭素塩)の化学構造式の例を下記化3に、それぞれ示した。
【化2】
【化3】
【0024】
また、本発明の抗菌/抗ウイルス塗料においては、さらに、第4アンモニウム塩とナノシリカとの複合体を含んでいてもよい。
【0025】
第4アンモニウム塩とナノシリカとの複合体は、カチオン性の第4アンモニウム塩がナノシリカの表面の水酸基と結合したものと考えられる。これにより、第4アンモニウム塩がナノシリカの表面に強固に結合した状態となるので、抗菌/抗ウイルス性の耐久持続性に優れた抗菌/抗ウイルス塗膜が得られるようになる。なお、第4アンモニウム塩単体の場合と比較すると、第4アンモニウム塩とナノシリカとの複合体の方が、抗菌/抗ウイルス性の耐久持続性だけでなく、抗菌/抗ウイルス性も良好となる。
【0026】
係る場合の前記第4アンモニウム塩とナノシリカとの複合体の含有量は、前記第四アンモニウム塩に対して、ナノシリカが20〜50質量%であることが好ましい。ナノシリカの含有量が20質量%未満では抗菌/抗ウイルス性の耐久持続性の向上効果が確認できず、50質量%を超えると塗料安定性が低下し、沈殿や粒状異物を発生することがある。
【0027】
さらに、係る態様の抗菌/抗ウイルス塗料においては、前記第4アンモニウム塩とナノシリカとの複合体を構成するナノシリカの平均粒径を10〜50nmとすることが好ましい。ナノシリカの平均粒径が小さいほど得られる抗菌/抗ウイルス塗膜の透明性及び表面平滑性が良好となるが、平均粒径が10nm未満のナノシリカは製造しがたい。また、ナノシリカの平均粒径が50nmを越えると、得られる抗菌/抗ウイルス塗膜の透明性及び表面平滑性が低下するほか、膜厚の薄い抗菌/抗ウイルス性塗膜を形成しがたくなる。
【発明の効果】
【0028】
以上述べたように、本発明によれば、既に形成されている塗膜を含め、多くの製品素材の表面に、室温下で、透明性(表面クリアー性)を有し、清潔感を付与することができるとともに、防汚性、耐薬品性、耐擦傷性などに優れた特性をも付与することができる抗菌/抗ウイルス塗料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る抗菌/抗ウイルス塗料について、各種実施例及び比較例を用いて詳細に説明する。ただし、以下に示す各種実施例は、本発明の技術思想を具体化するための例を示すものであって、本発明をこれらの実施例に示したものに特定することを意図するものではない。本発明は特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。
【0030】
[実施例1]
湿気硬化型の1液性シリコーンアルコキシオリゴマーとしてメトキシ基を28%含有するメチル系シリコーンアルコキシオリゴマー(KR−500、信越化学工業(株)製)を80質量部、アルコキシシランとしての3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(XIAMETER OFS−6040、ダウ・東レ(株)製)10質量部、硬化触媒としてのジオクチルスズラウレート2質量部を、イソプロピルアルコール40質量部及びノルマルプロピルアルコール40質量部からなる混合溶剤に均一に撹拌・混合して塗料を調整した。
【0031】
次に抗菌/抗ウイルス剤として、ビス型構造であるN,N'−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムブロマイド(N,N'-Hexamethylenebis(4-carbamoyl-1-decylpyridinium bromide))(ダイマー38、イヌイ(株)製)をノルマルプロピルアルコールに溶解して、前記塗料固形分中100質量部に対し、抗菌/抗ウイルス剤固形分3.5質量部となるように添加混合し、透明の実施例1の抗菌/抗ウイルス塗料を得た。
【0032】
実施例1の抗菌/抗ウイルス塗料を透明ポリカーボネート板にスプレー法により3〜5μmとなるよう塗装して、常温下で5日間放置して硬化乾燥させて実施例1の試験片を調製し、以下に示す抗菌/抗ウイルス性試験に供した。結果を纏めて表1に示した。
【0033】
[実施例2]
湿気硬化型の1液性シリコーンアルコキシオリゴマーとしてメトキシ基を35%含有するメチル系シリコーンアルコキシオリゴマー(XR31−B1410、モメンティブパフォーマンスマテリアルズジャパン合同会社製)65質量部、可撓性付与成分としてメトキシ基12%のオルガノポリシロキサン(X−40−9246、信越化学工業(株)製)15質量部、アルコキシシランとして3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン10質量部、硬化触媒としてジブチルスズジアセテート2質量部を、イソプロピルアルコール45質量部及びノルマルプロピルアルコール45質量部からなる混合溶剤に均一に撹拌・混合して塗料を調整した。
【0034】
次に抗菌/抗ウイルス剤として、ビス型構造である1,4−ビス[3,3'−(1−デシルピリジニウム)メチルオキシ]ブタンジブロマイド〔1,4'-bis[3,3'-(1-decylpyridinium)methyloxy]butandibromide)〕(ハイジェニアS−100、タマ化学工業(株)製)をノルマルプロピルアルコールに溶解し、前記塗料固形分100質量部に対し、抗菌/抗ウイルス剤固形分4.8質量部となるように添加混合し、透明の実施例2の抗菌/抗ウイルス塗料を得た。
【0035】
実施例2の抗菌/抗ウイルス塗料を用い、実施例1の場合と同様にして実施例2の試験片を調製し、以下に示す抗菌/抗ウイルス性試験に供した。結果を纏めて表1に示した。
【0036】
[実施例3]
〈第4アンモニウム塩/ナノシリカ複合体の調整〉
平均粒子径10〜15μmのナノシリカ液(IPA−ST、SiO30%、日産化学工業(株)製)をノルマルプロピルアルコールで希釈して、シリカ固形分を20%に調整した(ナノシリカ20%液)。このナノシリカ20%液を100gガラスビーカーに取り、撹拌機で撹拌しながら液温をヒーターで30〜40℃に保持した。
【0037】
第4アンモニウム塩として、実施例2で使用したのと同様の1,4−ビス[3,3'−(1−デシルピリジニウム)メチルオキシ]ブタンジブロマイド粉末40gを60分かけて少しずつ添加した。混合液は、無色透明から淡褐色透明の粘調な複合体溶液に変化した。これは、カチオン性の第4アンモニウム塩がナノリシカ表面の−OH基と結合したものと考えられる。
【0038】
(抗菌/抗ウイルス塗料の調製)
実施例2で調製した塗料の塗料固形分100質量部に対し、上述のようにして調製した第4アンモニウム塩/ナノシリカ複合体溶液を固形分7.0質量部(第4アンモニウム塩4質量部、ナノシリカ3質量部)となるように添加混合し、透明の実施例3の抗菌/抗ウイルス塗料を得た。
【0039】
実施例3の抗菌/抗ウイルス塗料を用い、実施例1の場合と同様にして実施例3の試験片を調製し、以下に示す抗菌/抗ウイルス性試験に供した。結果を纏めて表1に示した。
【0040】
[比較例]
実施例2の場合と同様にして調製した塗料の塗料固形分100質量部に対し、ヨウ素系抗菌/抗ウイルス剤(ヨードプロピニルブチルカルバメート、Iodopropynylbutylcarbamate(Omacide IPBC100、ロンザジャパン(株)製)をノルマルプロピルアルコールに溶解した溶液を、抗菌/抗ウイルス剤固形分3質量部となるように添加混合し、透明の比較例の抗菌/抗ウイルス塗料を得た。
【0041】
比較例の抗菌/抗ウイルス塗料を用い、実施例1の場合と同様にして比較例の試験片を調製し、以下に示す抗菌/抗ウイルス性試験に供した。結果を纏めて表1に示した。
【0042】
【表1】
【0043】
なお、表1における各試験項目は以下のようにして測定されたものである。
抗菌活性値(R):無加工試験片(薬剤無添加)の24時間培養後の菌数の対数値(Ut)と加工試験片(抗菌剤添加)の24時間培養後の菌数の対数値(At)の差(R=Ut−At)を示す。Rが2以上で合格と判定される。
抗ウイルス活性値(R):無加工試験片(薬剤無添加)の24時間後のウイルス感染価(Ut)と加工試験片(抗菌剤添加)の24時間後のウイルス感染価(At)の対数値の差(R=Ut−At)を示す。Rが2以上で合格とされる。
【0044】
表1に示した結果によれば、実施例1〜3及び比較例の試験片とも、緑膿菌及び大腸菌(O157)に関する抗菌活性値(R)は一応良好な結果が得られている。それに対し、A型インフルエンザ及びネコカリシウイルスに関する抗ウイルス活性値(R)は、実施例1〜3の試験片では良好な結果が得られているが、比較例の試験片では合格値に達しなかった。元々比較例で用いたヨードプロピニルブチルカルバメートは、抗真菌剤および抗菌剤として広く使用されている剤であって、抗ウイルス剤としてはほとんど使用されていない剤であるので、妥当な結果であると思われる。
【0045】
[耐湿性試験]
ここでは、抗菌/抗ウイルス試験で良好な結果が得られた実施例2及び3の試験片を用いて、抗菌/抗ウイルス性がどの程度の時間にわたって維持できるかを調べるため、耐湿試験を行った。なお、耐湿試験は、実施例2と実施例3の試験片を用い、それぞれの試験片を50℃×98%RHの条件下に100時間暴露を行い、上記と同様にしてネコカリシウイルスに対する抗ウイルス活性値(R)を測定した。結果を纏めて表2に示した。
【0046】
【表2】
【0047】
表2に示した結果によれば、実施例2の試験片では暴露試験後の抗ウイルス活性値(R)が「2」以下となっており、合格値よりも低くなっている。それに対し、実施例3の試験片では暴露試験後でも高い抗ウイルス活性値(R)を維持していた。実施例2の試験片と実施例3の試験片との構成の差異は、抗菌/抗ウイルス性塗膜中に第4アンモニウム塩/ナノシリカ複合体として添加されている抗菌/抗ウイルス剤を含まない(実施例2)か、あるいは含む(実施例3)かであるから、抗菌/抗ウイルス剤としての4級アンモニウム塩を第4アンモニウム塩/ナノシリカ複合体の形で添加する方が、第4アンモニウム塩がナノシリカに担持された形となり、持続耐久性に優れるようになることが分かる。
【0048】
[塗膜の各種性能の測定]
実験例1〜3で調製した抗菌/抗ウイルス塗料を用い、素材としてボンデ鋼板の表面にスプレー法によってそれぞれ膜厚:4〜6μmとなるように塗布し、常温下で5日間放置することにより硬化させて各種性能の測定用試料を得た。この測定試料を用い、目視により、硬度、付着性試験、耐衝撃性試験、耐酸試験、耐溶剤性、耐湿試験、耐汚染性試験を行った。なお、結果は、実験例1〜3で調製した抗菌/抗ウイルス塗料の何れを用いても同様の結果となったので、下記表3にはその結果のみを纏めて示した。
【0049】
なお、硬度は、三菱鉛筆製の「ユニ」(商品名)の鉛筆硬度H及び2Hのものを用い、測定用試料の表面をなぞった際に傷が付くか付かないかを目視により確認した。何れの測定用試料であっても全く傷が付かないことが確認できた。
【0050】
付着性試験は、測定用試料として、ボンデ鋼板の表面に2mm方眼の塗膜を100個作成し、市販のセロハンテープを貼り付けた後、セロハンテープを剥離し、目視によって塗膜が剥がれなかった個数を計数した。何れの測定用試料においても全く剥がれが生じなかった。
【0051】
耐衝撃試験は、直径25.4mm、300gの落下球を用い、JIS K 5600−5−3 落球試験に準ずる方法によって、500mmの高さから測定用試料の表面に落下させた際に傷が付くか付かないかを目視により確認した。何れの測定用試料においても全く異常は生じなかった。
【0052】
耐酸試験は、5%硫酸水溶液スポットテストとして測定用試料の表面に滴下し、23℃×6時間経過後の表面の状態を目視により確認した。何れの測定用試料においても全く異常は生じなかった。
【0053】
耐溶剤性試験は、溶剤としてエタノール、トルエン及びメチルエチルケトンの3種類についてそれぞれ単独で布製のラビング剤に含浸させ、測定用試料の表面を500gの荷重をを印加しつつ10往復ラビングし、表面に何等かの異常が生じるか否かを目視により確認した。何れの測定用試料においても、何れの溶剤を用いた場合でも、全く異常は生じなかった。
【0054】
耐湿試験は、測定試料を50℃×98%RHの条件下に100時間暴露し、表面に何等かの異常状態が生じるか否かを目視により確認した。何れの測定用試料においても全く異常は生じなかった。
【0055】
耐汚染性試験は、測定試料の表面に黒及び赤の油性マジックを塗布し、エタノールを含浸した布により拭き取った際に異常が生じるか否かを目視により確認した。何れの測定用試料においても全く異常は生じなかった。
【0056】
【表3】
【0057】
以上の表3に示した結果から、本発明による抗菌/抗ウイルス塗料により得られた塗膜は、防汚性、耐薬品性、耐擦傷性などに優れた特性を有していることが確認できた。
【手続補正書】
【提出日】2020年8月26日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿気硬化型の1液性シリコーンアルコキシオリゴマーをバインダーとし、抗菌/抗ウイルス性成分として第4アンモニウム塩を含む抗菌/抗ウイルス塗料であって、
前記第4アンモニウム塩は、
4,4'−(テトラメチレンジカルボニルジアミノ)ビス(1−デシルピリジニウムブロマイド)、
N,N'−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムブロマイド、
1,4−ビス[3,3'−(1−デシルピリジニウム)メチルオキシ]ブタンジブロマイド、
から選択された少なくとも1種のビス型構造のものであって、ナノシリカとの複合体を形成しており、
前記第4アンモニウム塩含有量は、前記シリコーンアルコキシオリゴマーを含む塗料固形分100質量部に対して2〜10質量部であることを特徴とする抗菌/抗ウイルス塗料。
【請求項2】
前記第4アンモニウム塩とナノシリカとの複合体の含有量は、前記第4アンモニウム塩に対してナノシリカが20〜50質量%であることを特徴とする、請求項に記載の抗菌/抗ウイルス塗料。
【請求項3】
前記ナノシリカの平均粒径は、10〜50nmであることを特徴とする、請求項又はに記載の抗菌/抗ウイルス塗料。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
すなわち、本発明は、湿気硬化型の1液性シリコーンアルコキシオリゴマーをバインダーとし、抗菌/抗ウイルス性成分として第4アンモニウム塩を含む抗菌/抗ウイルス塗料であって、
前記第4アンモニウム塩は、
4,4'−(テトラメチレンジカルボニルジアミノ)ビス(1−デシルピリジニウムブロマイド)、
N,N'−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムブロマイド、
1,4−ビス[3,3'−(1−デシルピリジニウム)メチルオキシ]ブタンジブロマイド、
から選択された少なくとも1種のビス型構造のものであって、ナノシリカとの複合体を形成しており、
前記第4アンモニウム塩含有量は、前記シリコーンアルコキシオリゴマーを含む塗料固形分100質量部に対して2〜10質量部であることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
しかも、本発明の抗菌/抗ウイルス塗料においては、膜形成成分としての湿気硬化型の1液性シリコーンアルコキシオリゴマーと抗菌/抗ウイルス性成分としての、4,4'−(テトラメチレンジカルボニルジアミノ)ビス(1−デシルピリジニウムブロマイド)、N,N'−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムブロマイド、1,4−ビス[3,3'−(1−デシルピリジニウム)メチルオキシ]ブタンジブロマイド、から選択された少なくとも1種のビス型構造のものであって、ナノシリカとの複合体を形成しているものを互いに相容性の溶剤(例えばアルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤等)に溶解させたものを用いることができ、互いの相容性も良好であるために均質に溶解させることができ、長期間に亘って優れた抗菌/抗ウイルス性を発揮できる塗膜が得られる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
本発明の抗菌/抗ウイルス塗料においては、前記第4アンモニウム塩としては、
4,4'−(テトラメチレンジカルボニルジアミノ)ビス(1−デシルピリジニウムブロマイド)、
N,N'−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムブロマイド、
1,4−ビス[3,3'−(1−デシルピリジニウム)メチルオキシ]ブタンジブロマイド、
から選択された少なくとも1種のビス型構造のものが用いられる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
第4アンモニウム塩は、抗菌/抗ウイルス剤として、種々のものが広く市販されていおり、入手が容易であり、一応良好な抗菌/抗ウイルス性を示す塗膜が得られる。しかしながら、モノ型構造の第4アンモニウム塩は、微生物の表面疎水性に依存して様々なMIC(最小発育阻止濃度)が測定され、殺菌力に限界がある(上記非特許文献1参照)。それに対し、ビス型構造の第4アンモニウム塩は、MICの比較で、多くの細菌に対して高い活性を示し、細菌芽胞に対して強い細胞破壊作用を有している。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
また、本発明の抗菌/抗ウイルス塗料においては、第4アンモニウム塩ナノシリカとの複合体からなっている。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
係る場合の前記第4アンモニウム塩とナノシリカとの複合体の含有量は、前記第4アンモニウム塩に対して、ナノシリカが20〜50質量%であることが好ましい。ナノシリカの含有量が20質量%未満では抗菌/抗ウイルス性の耐久持続性の向上効果が確認できず、50質量%を超えると塗料安定性が低下し、沈殿や粒状異物を発生することがある。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
以下、本発明に係る抗菌/抗ウイルス塗料について、各種実験例及び比較例を用いて詳細に説明する。ただし、以下に示す各種実験例は、本発明の技術思想を具体化するための例を示すものであって、本発明をこれらの実験例に示したものに特定することを意図するものではない。本発明は特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
実験例1]
湿気硬化型の1液性シリコーンアルコキシオリゴマーとしてメトキシ基を28%含有するメチル系シリコーンアルコキシオリゴマー(KR−500、信越化学工業(株)製)を80質量部、アルコキシシランとしての3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(XIAMETER OFS−6040、ダウ・東レ(株)製)10質量部、硬化触媒としてのジオクチルスズラウレート2質量部を、イソプロピルアルコール40質量部及びノルマルプロピルアルコール40質量部からなる混合溶剤に均一に撹拌・混合して塗料を調整した。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
次に抗菌/抗ウイルス剤として、ビス型構造であるN,N'−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムブロマイド(N,N'-Hexamethylenebis(4-carbamoyl-1-decylpyridinium bromide))(ダイマー38、イヌイ(株)製)をノルマルプロピルアルコールに溶解して、前記塗料固形分中100質量部に対し、抗菌/抗ウイルス剤固形分3.5質量部となるように添加混合し、透明の実験例1の抗菌/抗ウイルス塗料を得た。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
実験例1の抗菌/抗ウイルス塗料を透明ポリカーボネート板にスプレー法により3〜5μmとなるよう塗装して、常温下で5日間放置して硬化乾燥させて実験例1の試験片を調製し、以下に示す抗菌/抗ウイルス性試験に供した。結果を纏めて表1に示した。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
実験例2]
湿気硬化型の1液性シリコーンアルコキシオリゴマーとしてメトキシ基を35%含有するメチル系シリコーンアルコキシオリゴマー(XR31−B1410、モメンティブパフォーマンスマテリアルズジャパン合同会社製)65質量部、可撓性付与成分としてメトキシ基12%のオルガノポリシロキサン(X−40−9246、信越化学工業(株)製)15質量部、アルコキシシランとして3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン10質量部、硬化触媒としてジブチルスズジアセテート2質量部を、イソプロピルアルコール45質量部及びノルマルプロピルアルコール45質量部からなる混合溶剤に均一に撹拌・混合して塗料を調整した。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
次に抗菌/抗ウイルス剤として、ビス型構造である1,4−ビス[3,3'−(1−デシルピリジニウム)メチルオキシ]ブタンジブロマイド〔1,4'-bis[3,3'-(1-decylpyridinium)methyloxy]butandibromide)〕(ハイジェニアS−100、タマ化学工業(株)製)をノルマルプロピルアルコールに溶解し、前記塗料固形分100質量部に対し、抗菌/抗ウイルス剤固形分4.8質量部となるように添加混合し、透明の実験例2の抗菌/抗ウイルス塗料を得た。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
実験例2の抗菌/抗ウイルス塗料を用い、実験例1の場合と同様にして実験例2の試験片を調製し、以下に示す抗菌/抗ウイルス性試験に供した。結果を纏めて表1に示した。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
実験例3]
〈第4アンモニウム塩/ナノシリカ複合体の調整〉
平均粒子径10〜15μmのナノシリカ液(IPA−ST、SiO30%、日産化学工業(株)製)をノルマルプロピルアルコールで希釈して、シリカ固形分を20%に調整した(ナノシリカ20%液)。このナノシリカ20%液を100gガラスビーカーに取り、撹拌機で撹拌しながら液温をヒーターで30〜40℃に保持した。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
第4アンモニウム塩として、実験例2で使用したのと同様の1,4−ビス[3,3'−(1−デシルピリジニウム)メチルオキシ]ブタンジブロマイド粉末40gを60分かけて少しずつ添加した。混合液は、無色透明から淡褐色透明の粘調な複合体溶液に変化した。これは、カチオン性の第4アンモニウム塩がナノリシカ表面の−OH基と結合したものと考えられる。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
(抗菌/抗ウイルス塗料の調製)
実験例2で調製した塗料の塗料固形分100質量部に対し、上述のようにして調製した第4アンモニウム塩/ナノシリカ複合体溶液を固形分7.0質量部(第4アンモニウム塩4質量部、ナノシリカ3質量部)となるように添加混合し、透明の実験例3の抗菌/抗ウイルス塗料を得た。
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
実験例3の抗菌/抗ウイルス塗料を用い、実験例1の場合と同様にして実験例3の試験片を調製し、以下に示す抗菌/抗ウイルス性試験に供した。結果を纏めて表1に示した。
【手続補正20】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
[比較例]
実験例2の場合と同様にして調製した塗料の塗料固形分100質量部に対し、ヨウ素系抗菌/抗ウイルス剤(ヨードプロピニルブチルカルバメート、Iodopropynylbutylcarbamate(Omacide IPBC100、ロンザジャパン(株)製)をノルマルプロピルアルコールに溶解した溶液を、抗菌/抗ウイルス剤固形分3質量部となるように添加混合し、透明の比較例の抗菌/抗ウイルス塗料を得た。
【手続補正21】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
比較例の抗菌/抗ウイルス塗料を用い、実験例1の場合と同様にして比較例の試験片を
調製し、以下に示す抗菌/抗ウイルス性試験に供した。結果を纏めて表1に示した。
【手続補正22】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0042】
【表1】
【手続補正23】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
表1に示した結果によれば、実験例1〜3及び比較例の試験片とも、緑膿菌及び大腸菌(O157)に関する抗菌活性値(R)は一応良好な結果が得られている。それに対し、A型インフルエンザ及びネコカリシウイルスに関する抗ウイルス活性値(R)は、実験例1〜3の試験片では良好な結果が得られているが、比較例の試験片では合格値に達しなかった。元々比較例で用いたヨードプロピニルブチルカルバメートは、抗真菌剤および抗菌剤として広く使用されている剤であって、抗ウイルス剤としてはほとんど使用されていない剤であるので、妥当な結果であると思われる。
【手続補正24】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
[耐湿性試験]
ここでは、抗菌/抗ウイルス試験で良好な結果が得られた実験例2及び3の試験片を用いて、抗菌/抗ウイルス性がどの程度の時間にわたって維持できるかを調べるため、耐湿試験を行った。なお、耐湿試験は、実験例2と実験例3の試験片を用い、それぞれの試験片を50℃×98%RHの条件下に100時間暴露を行い、上記と同様にしてネコカリシウイルスに対する抗ウイルス活性値(R)を測定した。結果を纏めて表2に示した。
【手続補正25】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
【表2】
【手続補正26】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
表2に示した結果によれば、実験例2の試験片では暴露試験後の抗ウイルス活性値(R
)が「2」以下となっており、合格値よりも低くなっている。それに対し、実験例3の試験片では暴露試験後でも高い抗ウイルス活性値(R)を維持していた。実験例2の試験片と実験例3の試験片との構成の差異は、抗菌/抗ウイルス性塗膜中に第4アンモニウム塩/ナノシリカ複合体として添加されている抗菌/抗ウイルス剤を含まない(実験例2)か、あるいは含む(実験例3)かであるから、抗菌/抗ウイルス剤としての第4アンモニウム塩を第4アンモニウム塩/ナノシリカ複合体の形で添加する方が、第4アンモニウム塩がナノシリカに担持された形となり、持続耐久性に優れるようになることが分かる。