ポリオレフィン系樹脂および造核剤を含有する樹脂組成物からなるフィルムであって、110℃で60分間加熱する前後の引張弾性率が、いずれも1000〜1500MPaの範囲内にあり、且つ110℃で60分間加熱後の引張破断伸度が100%以上を示すことを特徴とするポリオレフィン系樹脂フィルム。
ポリオレフィン系樹脂および造核剤を含有する樹脂組成物からなるフィルムであって、110℃で60分間加熱する前後の引張弾性率が、いずれも1000〜1500MPaの範囲内にあり、且つ、110℃で60分間加熱後の引張破断伸度が100%以上であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂フィルム。
ポリオレフィン系樹脂として、ポリエチレン系樹脂、ランダムポリプロピレン、及びオレフィン系エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含み、且つホモポリプロピレンを含有することを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂フィルム。
ホモポリプロピレンの含有量がポリオレフィン系樹脂の総重量を100質量%とした場合に70.0〜95.0質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリオレフィン系樹脂フィルム。
ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、造核剤を0.1〜0.28質量部含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂フィルム。
造核剤を含有しない外層と造核剤を含有する層の少なくとも2層以上で構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明について詳述するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。尚、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
【0014】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂および造核剤を含有する樹脂組成物からなるフィルムであって、110℃で60分間加熱する前後の引張弾性率が、いずれも1000〜1500MPaの範囲内にあり、且つ、110℃で60分間加熱後の引張破断伸度が100%以上であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂フィルムに関するものである(以下「本発明のポリオレフィン系樹脂」ともいう)。
【0015】
<ポリオレフィン系樹脂>
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムを製造するために用いられる樹脂組成物には、ポリオレフィン系樹脂が必須成分として含まれる。樹脂の入手のし易さや柔軟性、取り扱い性、経済性、適度な融点を有すること等の観点から、ポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマー、環状オレフィン系樹脂等が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂の中でも、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマーが入手のし易さや得られるフィルムへの柔軟性の付与の観点から好ましい。
【0016】
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレンの単独重合体、エチレンを主成分とするエチレンと共重合可能な他の単量体との共重合体(低密度ポリエチレン(LDPE)、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセン系触媒を用いて重合して得られるエチレン系共重合体(メタロセン系ポリエチレン)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレンー(メタ)アクリル酸共重合体の金属イオン架橋樹脂(アイオノマー)等が挙げられる。
中でも入手のし易さや樹脂の取り扱い性、得られるフィルムへの柔軟性の付与の観点から、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることが好ましい。
【0017】
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレンを主成分とするプロピレンと共重合可能な他の単量体との共重合体、これらの混合物等が例示できる。
前記プロピレンを主成分とするプロピレンと共重合可能な他の単量体との共重合体としては、プロピレンとエチレンまたは他のα−オレフィンとのランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)やブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)、ゴム成分を含むブロック共重合体あるいはグラフト共重合体等が挙げられる。
【0018】
前記プロピレンと共重合可能な他の単量体として用いられるα−オレフィンとしては、炭素原子数が4〜12のものが好ましく、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセン等が挙げられ、その1種または2種以上の混合物が用いられる。
【0019】
オレフィン系エラストマーとは、ポリオレフィン系樹脂とゴム成分とを含んでなる軟質樹脂であり、ポリオレフィン系樹脂にゴム成分が分散しているものでもよいし、互いが共重合されているものでもよい。
オレフィン系エラストマーの具体例としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体エラストマー、エチレン−1−ブテン共重合体エラストマー、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体エラストマー、エチレン−1−ヘキセン共重合体エラストマー、エチレン−1−オクテン共重合体エラストマー、エチレン−スチレン共重合体エラストマー、エチレン−ノルボルネン共重合体エラストマー、プロピレン−1−ブテン共重合体エラストマー、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体エラストマー、エチレン−1−ブテン−非共役ジエン共重合体エラストマー、及びエチレン−プロピレン−1−ブテン−非共役ジエン共重合体エラストマー等のオレフィンを主成分とする無定型の弾性共重合体、その誘導体及び酸変性誘導体等を挙げることができる。
【0020】
前述したポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマー等のメルトフローレイトは、その適用する成形方法や用途により適宜選択されるものの、190℃もしくは230℃の温度条件下、荷重2.16kgで測定した値が0.1〜50g/10分であることが好ましい。0.5g/10分以上であればフィルムの成形性が良好となり、50g/10分以下であればフィルムの厚み精度を良好に保つことが可能となる。より好ましくは0.5〜40g/10分、さらに好ましくは1.0〜30g/10分である。
【0021】
ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマー等の融点は、示差走査熱量測定により測定した値として、70℃以上170℃以下の範囲内にあることが好ましい。70℃以上170℃以下の範囲に融点を有することで、得られるフィルムの200℃以下の温度での加工性を良好とすることが可能となる。
ここで、示差走査熱量測定の条件としては、通常、昇温速度10℃/分で25℃から250℃まで昇温した後、冷却速度10℃/分で25℃まで降温し、再度、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温するものである。
【0022】
ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマー等の強度については、それらの樹脂単独で得られるフィルムの引張弾性率が100〜2000MPaの範囲内であることが好ましい。引張弾性率が100〜2000MPaの範囲内であれば、本発明のフィルムに適度な柔軟性を付与することが可能となる。より好ましくは150〜1900MPaの範囲内、さらに好ましくは200〜1800MPaの範囲内である。
【0023】
また、得られるフィルムへの剛性付与の観点から、ポリオレフィン系樹脂のなかでもホモポリプロピレンを含有することが好ましい。ホモポリプロピレンの含有量としては、ポリオレフィン系樹脂の総重量を100質量%とした際に、ホモポリプロピレンが70.0〜95.0質量%の範囲内であることが好ましい。ホモポリプロピレンを70.0〜95.0質量%以上とすることで得られるフィルムの十分な剛性と加工性を付与することが可能となる。より好ましくは71.0〜94.0質量%以上、さらに好ましくは72.0〜93.0質量%以上である。
ここで、フィルムが積層フィルムである場合は、積層フィルム全体のポリオレフィン系樹脂の総重量を100質量%とし、積層フィルム全体のホモポリプロピレンの総重量を求めて算出する。
【0024】
また、得られるフィルムの剛性の調整と十分な破断伸度を付与する目的で、前記ホモポリプロピレン以外のポリオレフィン系樹脂として、ポリエチレン系樹脂、ランダムポリプロピレン、オレフィン系エラストマーのいずれか1種以上を用いることが好ましい。
【0025】
また、上記のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマー以外の樹脂として、必要に応じて、スチレン系エラストマー、環状オレフィン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂等を添加することもできる。
【0026】
スチレン系エラストマーとは、下記式(I)または(II)で表されるブロック共重合体であることが好ましい。
X−(Y−X)n …(I)
(X−Y)n …(II)
一般式(I)および(II)におけるXはスチレンに代表される芳香族ビニル重合体ブロックで、式(I)においては分子鎖両末端で重合度が同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、Yとしてはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、ブタジエン/イソプレン共重合体ブロック、水添されたブタジエン重合体ブロック、水添されたイソプレン重合体ブロック、水添されたブタジエン/イソプレン共重合体ブロック、部分水添されたブタジエン重合体ブロック、部分水添されたイソプレン重合体ブロックおよび部分水添されたブタジエン/イソプレン共重合体ブロックの中から選ばれた少なくとも1種である。また、nは1以上の整数である。
【0027】
環状オレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体、ノルボルネン系単量体とエチレン等のα−オレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体等が挙げられる。また、これらの水素添加物も用いることができる。
【0028】
<造核剤>
本発明に用いられる樹脂組成物には、得られるフィルムへの剛性付与の目的で造核剤が必須成分として用いられる。
本発明に使用する造核剤は、ポリプロピレン系樹脂の透明性を向上させる効果が認められれば、その種類を特に制限されるものではない。例えばナトリウムベンゾエート、アルミニウム−p−tert−ブチルベンゾエート、リチウム−p−tert−ブチルベンゾエート等の安息香酸類の金属塩、2,2−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)リン酸エステルリチウムや2,2−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)リン酸エステルナトリウム等のリン酸エステル金属塩、ジベンジリデンソルビトール、ビス(4−メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(4−エチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(ジメチルベンジリデン)ソルビトール等のベンジリデンソルビトール類、グリセリン亜鉛等の金属アルコラート類;グルタミン酸亜鉛等のアミノ酸金属塩;ビシクロヘプタンジカルボン酸又はその塩等のビシクロ構造を有する脂肪族二塩基酸及びその金属塩、キナクリドン類、タルク等が挙げられる。中でも、透明性を向上させる観点から、ベンジリデンソルビトール類を使用することが好ましい。
【0029】
造核剤は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、0.1〜0.28質量部とすることが好ましい。造核剤を0.1質量部以上用いることで、得られるフィルムの結晶化を促進し、十分な剛性を付与することが可能となる。造核剤を0.28質量部以下用いることで、フィルムの成膜に問題がなく、添加量を抑えることができるので経済性の観点からも好ましい。より好ましくは、0.1〜0.26質量部、さらに好ましくは0.1〜0.24質量部である。
ここで、フィルムが積層フィルムである場合は、造核剤を含む層におけるポリオレフィン系樹脂を100質量部として、これに対する造核剤の含有量を算出する。
【0030】
<その他成分>
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムに用いられる樹脂組成物には、前述したポリオレフィン系樹脂や造核剤以外に耐熱性や耐候性等を付与するために各種添加剤を配合することができる。
具体例としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、中和剤、滑剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、染顔料、紫外線吸収剤、充填剤、剛性を付与する無機フィラー、及び柔軟性を付与するために前述したもの以外のエラストマー等を、本発明の効果を阻害しない範囲において用いてもよい。
【0031】
紫外線吸収剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等を挙げることができる。
【0032】
光安定剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤等を挙げることができる。
【0033】
帯電防止剤としては、公知のものを使用可能であるが、フィルムへの長期的な帯電防止性の付与と表面へのブリードアウトにより起こる不具合の抑制のため高分子型帯電防止剤を用いることが好ましい。高分子帯電防止剤の具体例としては、公知のものを使用することができ、例えば、疎水性ブロックと親水性ブロックとのブロック共重合体を用いることができ、疎水性ブロックと親水性ブロックとが、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合及びウレア結合等によってブロック共重合体を形成しているもの等を挙げることができる。
【0034】
滑剤やアンチブロッキング剤としては、前述したポリオレフィン系樹脂との相溶性に優れ、得られるフィルムの表面へのブリードアウトによる不具合や長期的な耐傷付き性や滑り性の付与を可能にすることから、シリコーン−オレフィン共重合体を用いることが好ましい。
【0035】
<ポリオレフィン系樹脂フィルム>
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムは、前述したポリオレフィン系樹脂と造核剤とを含む樹脂組成物を成形して得られる単層もしくは複層フィルムを指す。また、得られるフィルムは、110℃で60分間加熱する前後の引張弾性率が、いずれも1000〜1500MPaの範囲内であり、且つ、110℃で60分間加熱後の引張破断伸度が100%以上であることを特徴とするフィルムである。
【0036】
フィルムの厚みは50〜200μmであり、この範囲内であれば本発明で得られた剛性の高いフィルムであっても、後述する粘着層を積層する工程や印刷層を積層する工程においても十分な加工性を維持することが可能となる。より好ましくは60〜190μm、さらに好ましくは70〜180μmである。
【0037】
また、フィルムを110℃で60分間加熱した際の、加熱前の引張弾性率と加熱後の引張弾性率とが、いずれも1000〜1500MPaの範囲内であることが必要である。加熱前の引張弾性率が1000MPa以上であることで、後述する粘着層を積層する工程や印刷層を積層する工程においても、フィルムの変形や厚み変化を抑制することが可能となる。加熱前の引張弾性率が1500MPa以下であることで、フィルムの剛性を維持しながら、破断伸度の低下抑制をすることができる。より好ましくは1000〜1450MPa、さらに好ましくは1000〜1400MPaである。
さらに、加熱後の引張弾性率も1000〜1500MPaの範囲内にあることが必要となる。加熱後の引張弾性率が1000MPa以上であることで、フィルムの経時によるポリオレフィン系樹脂の結晶化が促進した場合においても、著しい剛性の変化が少なく経時の安定性に優れていると判断することが可能となる。加熱後の引張弾性率が1500MPa以下であることで、フィルムの剛性を維持しながら、破断伸度の低下抑制をすることができる。より好ましくは、1000〜1450MPa、さらに好ましくは1000〜1400MPaである。
【0038】
経時のフィルムの安定性の観点から、110℃で60分間加熱後のフィルムの引張破断伸度が100%以上であることも必要である。加熱後のフィルムの引張破断伸度が100%以上であれば、経時でオレフィン系樹脂の結晶化が促進した場合においても、該フィルムを加工する際にフィルムが破断することがなく、粘着層や印刷層を積層する工程においても、適度な伸びがあるのでフィルムが破断せずこれら工程での通過性を良好に保つことが可能となる。より好ましくは加熱後の引張破断伸度が200%以上、更に好ましくは300%以上である。引張破断伸度が大きくなれば、より破断リスクを下げることができる。
【0039】
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムは、単層のフィルムとしてもよいし、複層のフィルムとすることも可能である。
複層のフィルムとする場合は、前述の造核剤を含有しない外層と造核剤を含有する層の少なくとも2層以上で構成されることが好ましい。造核剤を含有しない層は製膜後の結晶化度が低く柔軟性に優れることから、フィルムの引張破断伸度の向上と粘着層や印刷層を積層する工程における加工性を良好に保つことが可能となるため好ましい。フィルムの破断を抑制する観点からは、造核剤を含有しない層をフィルムの表裏の両外層に用いることがより好ましい。
【0040】
フィルムの成形方法としては、公知の方法を用いることができるが、溶融押出成形法を用いることが好ましい。溶融押出成形法の中でも、Tダイを有する押出機より溶融状態の樹脂を押出し、冷却固化させてフィルムを得るTダイ成形法がより好ましい。
【0041】
フィルムを得るためには、複数の押出機を利用した共押出Tダイ成形法とすることが好ましい。複数の押し出し機を利用した共押出Tダイ成形法を用いることで、複層のフィルムを得ることが可能であり、さらに全ての押出機から同一の樹脂を押出すことで全層が同一の樹脂組成物からなる実質的に単層のフィルムを得ることも可能となる。
共押出Tダイ成形法としては、マルチマニホールドダイを用いて、複数の樹脂層をフィルム状としたのち、Tダイ内で接触させて複層化させてフィルムを得る方法と、フィードブロックと称する溶融状態の樹脂を合流させる装置を用い、複数の樹脂を合流させ密着した後、複層のフィルムを得る方法が挙げられる。
フィルムには必要に応じて、片面または両方の面にプラズマ処理やコロナ処理、オゾン処理および火炎処理等の方法による表面処理を行ってもよい。得られるフィルムの用途に応じて、片面または両方の面に表面処理を行うかを選択することができる。
また、複層フィルムとした場合には、外層の厚みが全体の厚みの5〜40%の範囲内とすることが好ましい。5%以上とすることで、各種添加剤を外層のみに添加した場合の添加剤の性能を十分に発現させることが可能となり、40%以下とすることで、複層フィルムを得る際の製膜性や経済性を良好に保つことが可能となり好ましい。より好ましくは5〜35%、さらに好ましくは5〜30%の範囲内である。
【0042】
<粘着フィルム>
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムには、少なくとも片方の面に粘着層を積層することで、粘着フィルムとすることができる(以下「本発明の粘着フィルム」ともいう)。
粘着剤層として用いられる粘着剤は特に限定されないが、例えば、天然ゴム系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等の各種粘着剤が用いられる。また粘着剤層の上にさらに接着剤層や熱硬化性樹脂層等の機能層を設けてもよい。
【0043】
本発明の粘着フィルムにおいて、粘着層を積層する前のフィルムの片面もしくは両方の面に、前述した表面処理を行ってもよい。また、本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムである基材フィルムと粘着層の間には、必要に応じて、プライマー層を設けてもよい。
粘着層やプライマー層の厚さは、必要に応じて適宜決めることができる。
【0044】
<化粧フィルム>
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムには、少なくとも片方の面に印刷層を積層し、化粧フィルムとすることができる(以下「本発明の化粧フィルム」ともいう)。
化粧フィルムを構成する、印刷層は、公知の方法で形成できる。例えば、オフセット印刷法、グラビア輪転印刷法、スクリーン印刷法等の公知の印刷法、ロールコート法、スプレーコート法等の公知のコート法、フレキソグラフ印刷法等が挙げられる。また、蒸着法を用いることもできる。
印刷の柄としては、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字、全面ベタ、メタリック等からなる絵柄が挙げられる。
印刷層の厚さは、必要に応じて適宜決めることができる。
本発明の化粧フィルムにおいて、印刷層を積層する前のフィルムの片面もしくは両方の面に、前述した表面処理を行ってもよい。また、基材フィルムと印刷層の間には、必要に応じて、プライマー層を設けてもよい。
印刷層やプライマー層の厚さは、必要に応じて適宜決めることができる。
【0045】
<化粧用粘着フィルム>
本発明の化粧フィルムには、必要に応じて、該印刷層にさらに粘着層を積層して化粧用粘着フィルムとすることができる。
該化粧用粘着フィルムを被着体に貼着させることで、被着体の美麗な外観を付与することが可能となり、自動車内外装の化粧用途、その他の成形体や積層体、建築内外装用途等に用いることが可能となる。
【0046】
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムは、優れた剛性と加工性、取扱性を有するものである。さらに、該フィルムに粘着層や印刷層を積層することで粘着フィルムや化粧フィルムを得ることも可能であり、それらのフィルムを自動車化粧用途にも好適に用いることができる
【実施例】
【0047】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して、具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例で使用した材料、評価した特性の測定方法等は、次の通りである。
【0048】
[使用材料]
<ポリオレフィン系樹脂>
ホモポリプロピレン(A):
日本ポリプロ社製、「MA3U」(ホモポリプロピレン、230℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト:15.0g/10分、融点:168℃、単独フィルムの引張弾性率:900MPa)
ホモポリプロピレン(B):
住友化学社製、「FLX80E4」(ホモポリプロピレン、230℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト:8.0g/10分、融点:163℃、単独フィルムの引張弾性率:900MPa)
【0049】
ランダムポリプロピレン:
サンアロマー社製、「PC630A」(ランダムポリプロピレン、230℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト:7.5g/10分、融点:135℃、単独フィルムの引張弾性率:600MPa)
オレフィン系エラストマー:
日本ポリプロ製、「ウェルネクスRFX4V」(オレフィン系エラストマー、230℃、2.16kgでのメルトフローレイト:6.0g/10分、融点:127℃、単独フィルムの引張弾性率:250MPa)
【0050】
低密度ポリエチレン:
日本ポリエチレン社製、「ノバテックLC500、190℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト:4.0g/10分、融点:106℃、単独フィルムの引張弾性率:140MPa)
直鎖状低密度ポリエチレン:
宇部丸善ポリエチレン社製、「ユメリット0540F、190℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト:4.0g/10分、融点:87および111℃、単独フィルムの引張弾性率:80MPa)
【0051】
<造核剤>
造核剤マスターバッチ:
大日精化工業社製、「クリアマスター PP−RM−SKZ H8020」(造核剤を20質量%含有するホモポリプロピレン系造核剤マスターバッチ)
【0052】
<樹脂組成物の調製>
上記のポリオレフィン系樹脂を用いて、表1に記載に基づき各層の配合量が合計で100質量部となるよう配合し、さらに造核剤をポリオレフィン系樹脂100質量部に対し表1に記載の通りの量を添加し、ドライブレンドにより混合した。目視にて均一に混合できていることを確認し、フィルム成形用の樹脂組成物を作成した。
【0053】
<複層フィルムの製膜方法>
3台の東芝機械製単軸押出機(外層用:35φmm,L/D=25mm、中間層用:50φmm,L/D=32、外層用:35φmm,L/D=25mm)のそれぞれのホッパーにドライブレンドした原料を投入し、外層用、中間層用それぞれの押出機温度を210〜230℃に設定し、フィードブロック部にて、外層/中間層/外層の3層構成に合流させ、650mm幅Tダイ(温度設定230℃ 、リップ開度0.5mm)から押出した。厚み構成は、16.5μm/132μm/16.5μmになるよう各押出機回転数を設定した。
押出された溶融樹脂は、鏡面状の冷却ロールを備えた巻き取り機(冷却ロール700mm幅×φ350mm、ロール温度約30℃)にて冷却固化後、両面にコロナ処理を実施し巻き取りを行い、厚みが約165μmの2種3層のフィルムと、1種3層となる実質的に単一の樹脂層からなるフィルムを得た。
【0054】
[ホモポリプロピレンの含有量]
両外層、中間層にそれぞれ含まれるポリプロピレンの配合量を、各層の厚みと総厚みを用いて計算し、算出した。
【0055】
[フィルムの厚み]
接触式厚み計にてフィルム中央部の厚みの測定を行った。
【0056】
[引張弾性率(加熱前)]
JIS K6732に準じて作成されたダンベル「SDK−600」を使用し、得られたフィルムからダンベル形状の試験片を採取した。得られたダンベル形状の試験片を、JIS K7127を参照し、得られたフィルムから1号ダンベル試験片を採取し、23℃、50%RHの雰囲気下、オートグラフ(島津製作所製AGS−X)を用いて、チャック間距離を40mmとし、引張速度50mm/分にて引張弾性率(MPa)を測定した。
試験片の採取および引張弾性率の測定は、フィルムの押出方向と直交する方向(TD方向)で行った。
【0057】
[引張弾性率(加熱後)]
得られたフィルムをA4サイズにカットし、そのフィルムを110℃に設定した熱風循環式乾燥機に60分間静置し、熱処理を行った。熱処理後、JIS K6732に準じて作成されたダンベル「SDK−600」を使用し、ダンベル形状の試験片を採取した。得られたダンベル形状の試験片を、JISK7127を参照し、23℃、50%RHの雰囲気下、オートグラフ(島津製作所製AGS−X)を用いて、チャック間距離を40mmとし、引張速度50mm/分にて引張弾性率(MPa)を測定した。
試験片の採取および引張弾性率の測定は、フィルムの押出方向と直交する方向(TD方向)で行った。
【0058】
[引張破断伸度(加熱前)]
JIS K6732に準じて作成されたダンベル「SDK−600」を使用し、得られたフィルムからダンベル形状の試験片を採取した。得られたダンベル形状の試験片を、JIS K7127を参照し、得られたフィルムから1号ダンベル試験片を採取し、23℃、50%RHの雰囲気下、小型卓上試験機(島津製作所製EZ−L)を用いて、チャック間距離を40mmとし、引張速度300mm/分にて引張破断伸度(%)を測定した。
試験片の採取および引張破断伸度の測定は、フィルムの押出方向と直交する方向(TD方向)で測定を行った。
【0059】
[引張破断伸度(加熱後)]
得られたフィルムをA4サイズにカットし、そのフィルムを110℃に設定した熱風循環式乾燥機に60分間静置し、熱処理を行った。熱処理後、JIS K6732に準じて作成されたダンベル「SDK−600」を使用し、ダンベル形状の試験片を採取した。得られたダンベル形状の試験片を、JISK7127を参照し、23℃、50%RHの雰囲気下、小型卓上試験機(島津製作所製EZ−L)を用いて、チャック間距離を40mmとし、引張速度300mm/分にて引張破断伸度(%)を測定した。
試験片の採取および引張破断伸度の測定は、フィルムの押出方向と直交する方向(TD方向)で測定を行った。
【0060】
[実施例1]
外層、中間層に用いるポリオレフィン系樹脂としてホモポリプロピレン(A)およびランダムポリプロピレンを用い、造核剤マスターバッチを中間層のみに配合し、2種3層からなるフィルムを得た。各種ポリオレフィン系樹脂、造核剤マスターバッチおよびマスターバッチ内の造核剤は、表1に記載の通りとした。
該複層フィルムに用いたポリオレフィン系樹脂中のホモポリプロピレンの含有量は74.0質量%であった。
得られたフィルムは、165μmであった。また、加熱前の引張弾性率は1020MPa、引張破断伸度は820%であり、加熱後の引張弾性率は1220MPa、引張破断伸度は600%であった。
加熱前後において引張弾性率が1000〜1500MPaの範囲内にあり、且つ、加熱後の引張破断伸度も100%以上を示していることから、良好な剛性と加工性の両立されたフィルムを得ることができた。
【0061】
[実施例2]
ホモポリプロピレン(B)、オレフィン系エラストマーを表1に記載の量とした以外は、実施例1と同様に行った。
該複層フィルムに用いたポリオレフィン系樹脂中のホモポリプロピレンの含有量は84.0質量%であった。
得られたフィルムは、165μmであった。また、加熱前の引張弾性率は1070MPa、引張破断伸度は840%であり、加熱後の引張弾性率は1180MPa、引張破断伸度は670%であった。
加熱前後において引張弾性率が1000〜1500MPaの範囲内にあり、且つ、加熱後の引張破断伸度も100%以上を示していることから、良好な剛性と加工性の両立されたフィルムを得ることができた。
【0062】
[実施例3]
ホモポリプロピレン(B)、オレフィン系エラストマーを表1に記載の量とした以外は、実施例2と同様に行った。
該複層フィルムに用いたポリオレフィン系樹脂中のホモポリプロピレンの含有量は94.0質量%であった。
得られたフィルムは、165μmであった。また、加熱前の引張弾性率は1280MPa、引張破断伸度は830%であり、加熱後の引張弾性率は1310MPa、引張破断伸度は570%であった。
加熱前後において引張弾性率が1000〜1500MPaの範囲内にあり、且つ、加熱後の引張破断伸度も100%以上を示していることから、良好な剛性と加工性の両立されたフィルムを得ることができた。
【0063】
[比較例1]
ポリオレフィン系樹脂をホモポリプロピレン(A)のみとし、さらに造核剤を配合せず、両外層および中間層が同一の樹脂からなる1種3層の実質的に単層のフィルムを得た。
該複層フィルムに用いたポリオレフィン系樹脂中のホモポリプロピレンの含有量は100質量%であった。
得られたフィルムは、165μmであり、加熱前の引張弾性率は900MPaを示した。造核剤が無いため、引張弾性率が1000〜1500MPaの範囲内を下回ることから、剛性に劣るフィルムであることが確認された。
【0064】
[比較例2]
中間層に造核剤を用いたこと以外は、比較例1と同様に行った。
該複層フィルムに用いたポリオレフィン系樹脂中のホモポリプロピレンの含有量は100質量%であった。
得られたフィルムは、165μmであった。また、加熱前の引張弾性率は1190MPa、引張破断伸度は730%であり、加熱後の引張弾性率は1530MPa、引張破断伸度は10%であった。
本複層フィルムは、加熱前の引張弾性率が1000〜1500MPaの範囲内にあり、且つ引張破断伸度も100%以上を示したが、加熱後において引張弾性率が1000〜1500MPaの範囲を超え、さらに引張破断伸度も100%以下であった。
よって、経時での弾性率や破断伸度の変化が大きく、加工性に劣る可能性の高いフィルムであった。
【0065】
[比較例3]
中間層のホモポリプロピレン(A)とランダムポリプロピレンの配合量を表1に記載のものとした以外は、実施例1と同様に行った。
該複層フィルムに用いたポリオレフィン系樹脂中のホモポリプロピレンの含有量は66.0質量%であった。
得られたフィルムは、165μmであり、加熱前の引張弾性率は940MPaを示した。ホモポリプロピレンの配合量が少なく、引張弾性率が1000〜1500MPaの範囲内を下回ることから、剛性に劣るフィルムであることが確認された。
【0066】
[比較例4]
外層、中間層に用いるポリオレフィン系樹脂として、ホモポリプロピレン(A)、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンを用い、造核剤マスターバッチを中間層のみに配合し、2種3層からなるフィルムを得た。各種ポリオレフィン系樹脂、造核剤マスターバッチおよびマスターバッチ内の造核剤は、表1に記載の通りとした。
該複層フィルムに用いたポリオレフィン系樹脂中のホモポリプロピレンの含有量は95.2質量%であった。
得られたフィルムは、165μmであった。また、加熱前の引張弾性率は1020MPa、引張破断伸度は560%であり、加熱後の引張弾性率は1250MPa、引張破断伸度は20%であった。
本複層フィルムは、加熱前後の引張弾性率は1000〜1500MPaの範囲内を示したが、ホモポリプロピレンが多いことにより加熱後の引張破断伸度が100%以下を示す結果となった。
よって、剛性は良好なものであったが、経時での破断伸度の変化が大きく、加工性に劣る可能性の高いフィルムであった。
【0067】
【表1】
【0068】
[実施例4]
実施例1で得られたフィルムの鏡面状の冷却ロール側の面に、アクリル系粘着剤(綜研化学(株)製SKダイン1502C)をセパレータ上にコンマコート法にて、乾燥後の粘着剤層の厚みが25μmになるように塗工し、80℃の熱風乾燥機にて5分間乾燥させた後、粘着剤層を形成し、鏡面状の冷却ロール側に、粘着剤層を貼り合わせることで粘着フィルムを得た。
【0069】
[実施例5]
実施例1で得られたフィルムの鏡面状の冷却ロール側の面に、以下に記載のDICグラフィックス(株)製のインキを倉敷紡績(株)製、グラビア印刷試験機「GP−2」、印刷プレート「54L6階調」を用い、フィルムに塗布を行った。塗布後のフィルムを40℃で5日間エージングし、インキによる印刷層が積層された化粧フィルムを得た。
<DICグラフィックス(株)製インキ>
「VTP−NT40黄(A)」を95質量%、「AT−NT溶剤」を5質量%
を混合・撹拌しインキを調製した。
「VTP−NT40黄(A)」:塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体およびアクリル系樹脂の混合物と溶剤としてメチルイソブチルケトンからなる塗料
「AT−NT溶剤」:酢酸ブチル/酢酸エチル/メチルエチルケトンの混合物
【0070】
[実施例6]
実施例5で得られた化粧フィルムの印刷層側に、アクリル系粘着剤(綜研化学(株)製SKダイン1502C)をセパレータ上にコンマコート法にて、乾燥後の粘着剤層の厚みが25μmになるように塗工し、80℃の熱風乾燥機にて5分間乾燥させた後、粘着剤層を形成し、実施例5で得た化粧フィルムの印刷層側の面に粘着剤層を貼り合わせることで化粧用粘着フィルムを得た。
【0071】
[産業上の利用可能性]
本発明のポリオレフィン系樹脂および造核剤を用いた樹脂組成物からなるフィルムを用いることで、フィルムの剛性と加工性、取扱性といった、これらの課題を解決したフィルムを得ることができる。また、該フィルムに粘着層や印刷層を積層することで粘着フィルムや化粧フィルムを得ることも可能であり、それらのフィルムを建築内外装用、自動車内外装や化粧用途にも好適に用いることができる。